ほたる「そらのサカナ」 (47)




―――――このSSを椎名もたさんおよび白菊ほたるPだった友人に捧ぐ






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492437240

「………………」

おはようございます、プロデューサーさん

あの日から早いものでもう四ヶ月もたっちゃいました

本当に早いです

そういえばやっとオフ取れたんですよ

プロデューサーさんと約束していたピラクルを見に行くって話

やっと守れそうですよ

………………………

プロデューサーさん

私は、貴方に






何を残せましたか?










ちいさな此の地球で
僕は何を残せただろう





―――八ヶ月前

それは桜の散り始めた春の駅前でのことです

「白菊ほたるちゃん、だね」

「え、は、はい、そうです」

突然声をかけられて思わずビクッとしてしまいました

振り向くとそこにはスーツを着た少しだけ怖そうな男の人が

「え、えっと、何か御用でしょうか?」

「あ、ごめん。オレはこういうものだけど」

そう言って彼は名刺をくれました

「CGプロダクション?」

「そ、アイドルプロダクションなんだけど知ってるかな?」

シンデレラガールズプロダクション、通称CGプロ

最近どんどん力をつけているプロダクション、だったよね?

「立ち話もなんだし、ちょっとそこの喫茶店で話を聞いてくれないかな?」

―――喫茶店

「あ、申し遅れたね。オレの名前はP、名刺にある通りCGプロのプロデューサーをやってる」

「はぁ・・・・・・・・・」

「早速だけど、本題にあって大丈夫かな?」

「あ、はい」

「うん、わかってるかも知れないけど君をスカウトに来た」

やっぱり………ありがたい話だけど、

「あの、これは私のことを知ってての話ですか?」

「ん?一応下調べはしてきたつもりだけど・・・・・・なんか裏のありそうないいかただね」

やっぱり知らないんだ・・・・・・私の、体質を

「私は、疫病神です」

「・・・・・・・・・は?」

「私は、今まで三つのプロダクションに入ってきました」

「ああ、知ってる」

「ではそのプロダクションが三つとも倒産していることも知っていますね?」

「・・・・・・ああ」

「私が入る前は三つとても順調に経営できていたプロダクションなんです」

「三つとも、私が入ってから経営が急に悪くなって、その…」

「んで?」

「えっと、この話はありがたいのですがお断りしようかと・・・・・・」

やっぱり、私は疫病神だから。これ以上他人に迷惑は―――

「……一つ聞いても良いかな」

「え?」

「その話の流れからして君は俺たちに迷惑をかけたくないからこの話を断ろうとしてる。違う?」

「え、は、はい。その通りです……」

「んじゃさ、君自身の気持ちはどうなの?」

「え?」

私自身の、気持ち?

「迷惑とかさ、ジンクスとかそーいうの全部抜きにした時の気持ち」

「私は……」

アイドルを……

「まだ諦め切れないんじゃないかな?アイドルになることを」

「……!」

「その顔は図星かな?」

「そ、それは……その……」

「今すぐにとは言わないからさ、気持ちの整理がついたら連絡くれないかな?」

そういって彼は私がテーブルに置いた名刺を指差しました

「そんじゃ、今日のところはおいとまさせて貰おうかね」

そう言って彼は伝票を持って席を立ちました

「あ、御代……」

「ここは奢らせてよ。突然押しかけちゃった迷惑料としてさ」

「で、でも」

「いいからいいから、ね?」

「はぁ………」

「それじゃ返事、待ってるから」

「……………」

家に戻り部屋に戻って、私は悩んでいました

彼の言う通り、アイドルはまだ続けたい

ですが私は疫病神、周りを不幸にします

「うぅ…………」

ベッドにうつ伏せで寝転がり考え込む

私は……………







そんなうわ言を浮かべては

ぷかりぷかりそらのかなた





とりあえず今日はここまで
ほたるの誕生日に間に合うかわかんなかったので少しフライング

聞いたこともないようなニコニコのゴミカスが何匹死のうがどうでもいいからモバマスと無理やり絡ませるなよ

面白そうじゃん
期待するじゃん

投下します

―――翌日 喫茶店

「……………」

「……………」

「………そっか」

「………はい」

「………正直OK貰えるとは思ってなかったから、ビックリしちゃったよ」

「………すみません」

「理由」

「え?」

「理由聞いてもいいかな」

「………」

「………私は」

「………」

「………疫病神です」

「………」

「周りの人を不幸にします」

「………」

「………でも」

それでも






「それは私がアイドルを諦める理由にはなりません」

「アイドルは、私の夢ですから」




「………なーんだ、思ってた以上に強い娘じゃないか」

「え?」

「いや、なんでもない」

(なあ、見てるか?)

(お前の育てたアイドルは)

(こんなに強い娘になったぞ)

「…………………」

「……………?」

「うん、そうと決まれば話が早い。名刺にもあるとおり事務所は東京だ、こっちでの転校手続きとか引越しとかの手続きが済み次第こっちにきてくれ」

「は、はい!」

「うん!良い返事だ!」





おおきなサカナに乗って

流れ星を眺め流れて



それからはとにかくめまぐるしい日々でした

引越しを済ませた次の日からプロデューサーさんはどんどん仕事を

バラエティーにドラマ、LIVEツアーやトーク、モデルのお仕事なんてのもやりました

牧場行ってLIVEなんてのも………

ああ、そういえばあの約束もあの時バスが止まってしまった時にしたんですね

「ホントはさ、水族館の仕事を取ってきたかったんだ」

バスの故障が直るのを待ってる時、唐突にプロデューサーさんは言いました

「水族館…ですか?」

「そ、水族館。けど別の事務所の娘に取られちゃってね」

「はぁ」

「ついでに見たかったなぁ、ピラクル」

「ピラクル………」

「うん、世界最大の淡水魚」

なぜその時プロデューサーさんが急にそんなことを言い出したのかは分かりません

けどその顔が少し寂しそうに見えたから、私は―――

「…じゃあ見に行きませんか?」

「へ?」

「今度おやすみが取れたら、一緒に行きましょうよ。水族館」

「………」

「………」

「今度、か」

「ダメ……ですか?」

「いやいいね、行こうよ今度オフ作ってさ」

「…!はい!」







白い旗に墨を零して、
ふわりふわりそらのかなた










そんな日々を過ごしながら季節は移ろい夏へ









事件は夏祭りでの撮影で起きました





今日はここまで
また明日

諸事情によりながらになります
あと今日中に終わらないかもしれません

ざわめく人だかりの中、異様に目立つ人影が一つ私の目に止まります

「し、白菊ほたるさん、で、ですよね」

「え?は、はぁ………」

プロデューサーさんが打ち合わせで席を外してる間に一人の人が私に話しかけてきました

こんなに暑いのによれよれのコートを着込んでニヤニヤと

………少し不気味さを感じます

「鳥取で、か、活動してた頃からお、お、応援してます………デュヒヒ」

「はぁ、ありがとうございます…」

不気味さを拭えず若干口ごもってしまう返事

緊張で渇いてゆく喉

「よ、よ、良ければあ、あ、あ、あ、握手してください、デュヒヒヒヒヒヒヒヒ」

「あっ………」

伸ばされる手に私は―――

「はいストップ、そういうのは事務所通してねー」

不意に現れる背中にホッとしました

「プロデューサー………」

「ゴメンゴメン、打ち合わせ長引いちゃって。そんじゃそろそろ撮影始まるから向こうに―――」

「な!なんだよお前!!!」

唐突にに放たれた怒声に私もプロデューサーさんも思わず振り返ります

「お前!!!お前は!!ほたるちゃんのなんなんだよ!!!」

「あ?プロデューサーだよ、アンタこそなんなんだこんなクソ暑ぃ中コートなんて着て」

「ボクは、ボクがほたるちゃんのことを一番知ってるんだ………お前なんかよりボクの方がずっとずっとほたるちゃんのことを知ってるんだ………」

「え?何?なんて?」

「ボクのほたるちゃんは………」

「ボクのほたるちゃんはそんな顔で笑わない!!!!!!」

周りに響く怒声、その右手にはギラリと光る―――

「危ねえ!!!」

不意に来た衝撃によろめく

プロデューサーさんに突き飛ばされたと気付いたのは倒れた後でした

「………え?」

顔を上げた私の目に映ったものは






真っ赤な、真っ赤な、赤





「フーッ…!フーッ…!」

「んにゃろう………!」

プロデューサーさんが密着していた男の人を突き飛ばし、そのままバランスを崩して仰向けに倒れました

そのお腹には―――包丁が

「プロデューサーさん!!!」

頭が真っ白に、響き渡った悲鳴が自分のものだと気付くのに数秒

「プロデューサーさん!!!プロデューサーさん!!!」

「ハー………ハー………ほたる………」

「プロデューサーさん!!しっかりしてください!!!」

「………ハハ……………んな………悲しい…顔………するなよ………」

「けど…だって!!」

「なあ………ほたる………」

「グスッ………なんですか………」

「笑顔を………見せてくれよ………」

「……………グスッ」

「お前は………アイドルだろ…?だったら………笑ってなきゃ…ダメだ………」

「……………!」

「だから………笑顔を………見せてくれよ………」

「……………グスッ……………はい」

このときちゃんと笑えていたのか、いまだに分かりません

でもプロデューサーさんは

「………うん………………それで………いい」

そういって少しだけ微笑みました

消えてゆく景色の色、色づいているのは

プロデューサーさんとその周りをぬらす血の色だけ

そのプロデューサーさんもだんだん見えなくなってゆく

そして残ったのは、血の赤だけ







その日、プロデューサーさんが亡くなりました











眠る私は思い出す

ステレオな思い出から





そのあとのことはあまり覚えていません

後になって川島さんたちに聞いたことですが撮影は中止

プロデューサーさんを刺したあの人はその場で取り押さえられて警察に突き出されたそうです

そして私はプロデューサーさんの死を間近で見たショックで一ヶ月ほど引きこもっていました







そして時は三ヶ月ほど過ぎ冬へ





なんとか復帰できた私は事務所を再び移りアイドル活動を再開しました

最初は周りに煙たがれていましたが必死さが伝わったのでしょうか、今では前と変わらずにやっていけてます

そんな忙しい日々で取れたオフ

私は水族館にやってきました

プロデューサーさん、約束を果たしに来ましたよ

ピラクルを見に少し遠いところまで来たんです

……………

こうやって見ていると………何ででしょうね、初めて出会ったあの日を思い出します

あの日を思い出せば、自然とそれまでの日々も甦ってきて

どの思い出のプロデューサーさんも………笑顔がまぶしくて………

……………

ダメだなぁ

笑顔でいようって決めたのに

涙が止まらない









眠る私は思い出す

















ああ、プロデューサーさん




















さよなら!

































































プロデューサーさん

私、もっと輝きます

そうすればきっと

きっと貴方にも届きますよね


























―――――了

以上となります
誕生日おめでとうほたる
最後にこのSSを書くきっかけとなった曲を貼って終わります
短いSSでしたがご視聴ありがとうございました

https://www.youtube.com/watch?v=VqtCFvaBi5Y

乙でございました

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