【R-18】春の訪れ。 (122)
このSSはR-18要素を含みます。
皆様からのコメントはモチベーションに繋がりますので、ぜひよろしくお願い致します。
春。
四月より私は学校の先生になります。
きっかけはほんの小さな憧れ。
学校の先生が羨ましかったからです。
生徒の質問に答えるあの姿。
先生は光り輝いて見えました。
ここだけの話。
「せんせいはなんでもしってるの?」
なんて。
質問をしたこともあります。あ、内緒ですよ?
まぁとにかく。
私はそんな光り輝く先生に憧れて先生を志しました。
もちろんその道は生半可な気持ちではダメでした。
次第に難しくなっていく授業内容。
ついていくのに必死で、お勉強、お勉強、お勉強。
学校でも家でも、高校の通学に使う電車の中でも。
ずーっとお勉強をしていました。
......あ、無理のない範囲です!
ご飯も睡眠も、部活もやっていました。
ずーっと勉強というのは語弊がありました。
ここに謝罪申し上げます。
まぁ程々に、人一倍努力しました。
明確な目標が決まっているからこそ。
中学校に通う当時の私は大学を決めていました。
なかなかいないですよね、大学まで決めるなんて。
でも、私はそれだけ必死でした。
私が教壇の上で輝けるその姿を待ち焦がれて。
他でもない私がずっと待っていました。
だから。
先生になれると決まったときは嬉しかったです。
思わず羽目を外しちゃいました。
あまり得意ではないお酒を無理矢理飲んで。
次の日に頭が酷く痛かったのは今でも忘れてません。
ぼんやりと、つまらない私を振り返ったところで。
ようやく始まります。
とてもとても、希望に満ち溢れた────
────私と可愛い生徒のお話が。
「私の名前は宮永綾音と申します」
私が青春時代を過ごした高校は黒板だったけれど。
この学校の板書はホワイトボードのようで。
黒のペンで真っ白な板に書き慣れた名前を書き綴る。
うん、我ながら綺麗な字で書けた。
書き終えると、改めて前を向く私。
目の前には約30名の男子生徒。
全員が、男子生徒である。
偶然に偶然が重なって、とかではなく。
なるべくして、このクラス構成となった。
なぜならこの学校は男子校だから。
育ち盛りな男の子の学び舎。
私は、男子高校に赴任したのです。
「大学を卒業後、そのままこの学校に来ました」
ありがたいことに声がかかったのです。
もしよければ我が校に来ませんか、と。
招かれては断れないし、至極恐縮なことで。
私は二つ返事で引き受けさせて貰いました。
「なので未熟な点が多々あると思いますが」
いんたーねっとを使っていっぱい調べた。
新任の先生が心得ておくべきこと、とか。
自己紹介は家で練習したから大丈夫。
今のところは完璧なはずです。
でも、これから先、慌ててしまうことがあるだろう。
初めてで慣れないことが続くのだから。
「どうぞよろしくお願い致します」
私は深々と頭を下げた。
彼らは私に教わる立場であり。
彼らは私の失敗を見守る立場でもあるのだから。
次の瞬間、盛大な拍手が私の耳に届く。
頭を上げ、辺りを見渡すと。
「......ありがとう、ございます」
それだけでもう泣きそうになってしまいます。
だって暖かい光景が広がっているのですから。
よかった、と思えた。
この学校に、このクラスを請け負えて、よかった。
私が再びお礼の言葉と共に頭を下げると、
「せんせー、質問いいですかー?」
と。
さっそく私に興味を持ってくれた子が。
この後で質問を受け付けようと思っていたのに。
質問がゼロの時のために心の準備をしておいたのに。
ありがたく、質問をしてくれた。
「はい、どうぞ」
私は名前も分からぬ子に、質問の許可を与える。
「趣味はなんですかー?」
ありきたりな質問。
もちろん、考えてきていますとも。
ありきたりな質問に対して、ありきたりな回答で。
「料理、とか好きです。あくまで趣味の範囲ですが」
そう私が答えると、ちょっとした歓声が湧き上がる。
今度作って来てよ、とか。
何が得意なの、とか。
私に興味を持ってくれているようで、何よりです。
でも、少しだけプレッシャーかもしれません。
興味と期待に応えられるか、どうか。
数々の声が上がる中、一際大きい声が上がりました。
「先生、僕からもいいですか? 質問」
さっきの子とは別の子が、質問をしてくれました。
もちろん私は許可を出します。
「先生は彼氏とかいるんですかー?」
す、少しだけ予想外でした。
出会い頭にプライベートに突っ込んでくるとは。
ふふ、でも私は割り切っているので答えます。
清廉潔白のこの身を主張します。
「残念ながら、お付き合いしている人はいません」
また、声が上がります。
ざわざわとした空気。
男の子らしい話題に、男の子らしい反応。
思わず笑みが溢れてしまいます。
「告白されたことはあるんですかー?」
「の、ノーコメントで!」
咄嗟のことで声を大きくしてしまいました。
そこはあまり触れて欲しくなかったものですので。
「告白されたことあるに決まってんだろ」
「あんなに美人なんだぜ」
「黒髪ロングの眼鏡とかよー」
「しかもスーツをピシっと着て、黒のタイツで」
「k....にゅ....で、色も白くて」
「...ろ...像でしか見たことないぜ」
耳を澄ませば、様々な声が聞こえてきました。
後ろの席の子達の話は聞こえなかったけれど。
褒めてくれているようで、曖昧な気持ちになります。
嬉しいような、でも少しからかわれているような。
私は苦笑いを浮かべながら。
ざわつきが収まるを待ちました。
待つといってもそれほど長い時間ではなく。
ほんの10秒程度の短時間です。
静まってきた頃合いで、
「他に質問ある子、いますか?」
私の問い掛けに、何人かの生徒が反応を見せます。
手を挙げてくれた4名。
右側の席から順に、指名していきます。
「なんの質問でもいいですかー?」
「はい、なんでもお答えします」
「怒ったりしないですか?」
「怒りません。あまりにもしつこい質問とか以外は」
「じゃあ......先生の胸は何カップですか?」
「っ!?」
ガタッと私は教壇の上を一歩下がります。
誰だってそうなると思います。
そんな質問を急にされたら。
数秒間、脳内の思考が停止しました。
しかしすぐに復帰した私は、
「こ、答えないとダメ......かな?」
苦笑いを浮かべながら聞いてみます。
もし彼が答えろ、と言ったら答えましょう。
可愛い生徒からの質問なのですから。
それに......男子高校生なら、それくらいは。
うん、一応私は女性だし、彼は男の子だし。
気になって貰えているのは、嬉しいことなのかな......。
健全な年頃の男の子なら、尚更。
「答えて貰えると嬉しいかなーって」
うんうん、と同調して頷く彼の周りの生徒。
それは次第に広がり。
気が付けば全員の熱い眼差しが私に突き刺さる。
「じ、Gカップ......です?」
どうしてか疑問形で。
私は正直に答えた。
我ながら、バカなことをした。
自嘲する私と、一層に大きく歓声をあげる生徒君。
なんともこの空間に居難い空気に圧倒される。
「つ、次の質問! は、何かな......?」
少しだけ声を大きくして残りの3人に聞いてみる。
しかし返ってきたのは、
「もう知れたので大丈夫です」
という声が3つ。
つまり質問のある4人が全員、同じ質問内容だった。
そういう訳で、より一層気まずくなってしまった。
はぁ...。どうなることやら、この教師生活。
期待に胸を膨らませていた私は何処かへ。
いつしか不安でいっぱいな、私でした。
「最初の挨拶は如何でしたかな、宮永先生」
初日は午前中だけで生徒さん達は帰宅。
昼食を終え、職員室の机で書類に目を通していた時。
いかにも。
といった雰囲気の男性が声をかけてきました。
「あ...教頭先生。まぁまぁ上手に出来たと思います」
若干目を逸らし気味に言ったのは。
つまり、自分でも思う節があったということです。
「男の子が考えていることは分かりませんから...」
そう付け加えると教頭先生は、
「はっはっは。先生は思いつめ過ぎですよ」
わざとらしく笑ってみせました。
「思いつめ過ぎ、とは?」
「いやなに。簡単なことですよ」
「...?」
「男子高校生は一桁の足し算より単純な生き物です」
「は、はい」
「思いつめず、適当にやってみてはどうでしょうか」
「......」
適当に。
その一言は私の胸の奥に大きな傷として残った。
精一杯、勉学に励む生徒の裏で。
そんな風に思っていたのか、と。
悲しく、哀しく、可哀想。
私は。
私だけでも、絶対に。
生徒と一緒に歩んで、ゴールである卒業まで。
心身ともに生徒達と一緒に在り続けることを。
ここに誓いました。
二日目の朝、私は校門に立っていました。
晴々しく登校してくる生徒に、挨拶をするために。
「おはようございます」
挨拶を返してくれるのは半々といったところ。
少し残念だけれど、こんなものでしょう。
むしろ半分の生徒が挨拶を返してくれただけでも。
私は恵まれているのかもしれない。
「おい、あれ...」
「あれが噂の......?」
「見ろよ、めっちゃky...にゅ...だろ?」
「...ってるとしか思えないよな」
校門を通り過ぎ、昇降口に向かう彼らの話し声。
見たところ新二年生でしょうか。
どこか初々しさを残しつつ、先輩らしい姿。
一年も通えば慣れ親しんだ足取りで歩いています。
会話の内容は聞こえませんでしたが、仲が良さそう。
なによりです。
せっかくの高校生活ですからね。
学業と両立して楽しんでいただきたいものです。
と、そんなところで。
朝の職員会議10分前になりました。
ここより後に来た人と挨拶できないのは心苦しい。
けれど、私も先生としての仕事を全うしなければ。
早速問題が起きたとかの報告が無ければいいけれど。
結果から言ってしまえば朝の会議は特別何事もなく。
今日の予定を一通り説明されて、終わった。
具体的には学校案内のスケジュール。
私のクラスは二時間目にあるらしいです。
つまりそれまでに色々と済ませておかなければ。
具体的には、
「......このくらいかな」
学校での注意や行事。
そして明日から始まる授業についての説明。
私自身が数年前に席について聞いていたことの数々。
共学と男子校ではかなりの差があると思ったけれど。
案外そうでもなく、普通なことばかりでした。
「じゃあ次は......」
思ったよりもみんなが静かに聞いてくれたおかげで。
半分以上も時間が余ってしまいました。
となると、やっぱりアレかなぁ。
「みんなの自己紹介の時間に、する?」
定番でしょう。
二年生や三年生はともかく。
新一年生のみんなは。
前後の席の人の名前すら分からないのですから。
しかし気が進まない人もいるでしょう。
私だってそうでしたから。
今でこそ出来るけれど、中学高校の頃は。
人前に出て話すことを苦手としていました。
でもやらないといけません。
もしかしたら自己紹介がきっかけになるかも。
「お名前と出身中学、あとは趣味とか」
もちろん名前も学校も覚えれないはずです。
でも共通の趣味を持った『誰』を見つけてくれれば。
あとは、改めて個人同士で自己紹介してくれるはず。
「じゃあ......申し訳ないけど、前から。お願いします」
私の呼び声に、出席番号一番の方が教壇に立つ。
私は、入れ替わるように後ろへと下がった。
そして始まる自己紹介。
一人一人の趣味を聴き漏らさず。
尚且つ、ノートにメモを取っていく。
今年度が終わる頃には。
個人のページが文字でいっぱいになってるはずです。
「じゃあ次。二番の方」
一人当たり三十秒程度。
少し短めだけれど、最初は誰でもこんなもの。
私だって...ううん、十五秒くらいだったかもしれない。
「次。三番の方」
次々と、自己紹介が終わっていく。
自己紹介だけでなく。
この一時間目も終わりを迎える。
そして二時間目。
生徒たちが引率の先生に学校案内を受けている間。
私は、私自身の人生史に残る一人の男性と出会う。
時には私を困らせ。
時には私を泣かせ。
時には私を笑わせ。
時には私を虐め。
時には私を犯し。
時には私を恥辱し。
時には私を凌辱をし。
ある時は、私を優しく抱きしめてくれた。
そんな素敵な男性に。
二時間目。
私は教師人生初めての休みの時間でした。
本来なら職員室に居るべきだと思います。
でも、気になったので許可を得て出てきました。
私が興味を持ったのは、授業風景です。
教室の扉のガラス張りになっている部分。
そこから覗ける新鮮な授業風景。
たまーに授業中に廊下を歩いて回る先生。
それを今からやろうというわけです。
二年生と三年生は早速授業。
学校案内を受けている生徒と出くわさないように。
慎重に廊下を見て回ります。
あ。
あれは...数学かな?
数字使ってるもんね。
難易度が急激に上がることを知っているからこそ。
今のうちに基礎をしっかり学んでおくと便利だよ。
と、授業中の彼らに言い出せるはずもなく。
私は道なりに廊下を進んでいると、
「あれ...」
ふと見てみた外。
制服姿の人影があります。
今は授業中のはずなのに...。
これは先生として、見逃せません。
私は予定を中断し、外へと向かった。
いわゆる校舎の裏。
人目につきにくく、人の出入りが少ない場所。
そこに彼らはいました。
制服を着崩し、髪を染め、タバコを持った三人。
もちろん私は注意をしにやってきたのです。
「授業中だよ。なにやってるの?」
サボってる、というのは目に見えて分かります。
しかし一応確認です。
「ッチ」
三人のうちの一人が舌打ちをしました。
むっとなる私。
しかし湧き上がる感情を抑え、
「...タバコは見逃してあげるから」
精一杯の譲歩をした上で、彼らを戻そうとします。
「見逃してくれんの? 珍しい」
「そうでも言わないと戻ってくれそうにないから」
「ふーん」
擁護するわけではありません。
ですが事実をここに伝えておきます。
彼らは未遂で終わりました。
タバコに火を点ける一歩手前でしたから。
「まだ学生なんだから」
私は手を伸ばし、一人のタバコを取り上げます。
「これはやめよう? ね?」
「結局説教じゃねぇか......」
出会い頭に舌打ちをした彼が言います。
「そのつもりはなかったんだけど...」
そのつもりはなかったけれど。
聞く側がそう感じたのなら、そうなのでしょう。
私はお説教をしてしまったようです。
「かえ...しちゃってもいいのかな」
私は取り上げたタバコを返します。
「ごめんなさい」
私は深々とお辞儀をし、誠心誠意謝罪しました。
私は悪いことをした。
なら、深く反省しなければいけません。
「......もういい。お前らは戻れ」
ここまで一言も発していなかった彼が言いました。
グループのリーダーでしょうか。
二人は私からタバコを取り返すと。
おとなしく校舎の方へと戻っていきました。
私はその後ろ姿を見送っていると、
「変わってるな、アンタ」
リーダーらしき男の子がそう言います。
私は振り返り、彼の目を見て話します。
「真面目であることは、変わってるのかな?」
「生真面目というか、バカらしい」
「...そんなこと言われると、傷ついちゃうよ」
学生時代、私は周りから真面目と言われ続けてきた。
世間一般から見たら私はその部類に属します。
私だって、多少の自覚はあります。
ノリが悪い、ということに。
ですが幸いなことに友人には恵まれ。
いじめられるようなことはありませんでした。
「ほんと真面目なんだから」
と、言われることは多々ありましたが。
しかし生真面目でバカらしい、とは初めてです。
馬鹿にされていることは明らかです。
でも一応、確認を。
「もしかして馬鹿にしてる?」
「ありのままを言っただけだが?」
キッと睨まれてしまいました。
ただ、その眼差しに怒りの感情は見られません。
少しだけ鬱陶しいとでも思ったのでしょうか。
「と、とにかく。早くあなたも教室に戻りなさい」
今更ですが、彼を教室に戻そうとします。
「あぁ、戻るよ。こんなエロい女に言われたらな」
「えっ、えっ? な、なに...!?」
「お前、噂の新入りだろ。広まってるぞ」
「噂......?」
「一年担当の教師にエロい女がいるってな」
「う、うぅ...」
反応に困ります。
なんて反応をしたらいいか、困ります。
そして私自身がどう表現していいか分かりません。
今私は、どんなことを思っているのでしょうか。
「う、噂って...どれくらい?」
「お前だけだろ、知らないの。知らねぇけど」
「私、だけ......」
「Gカップってことも事実として広まってるからな」
「えぇっ!?」
「聞かれたのか?」
「う、うん...」
「生真面目というか、ただのバカだな」
呆れてため息も出ない、と。
彼は項垂れてくれました。
私に、呆れて。
でも......そんなことになっていたなんて。
噂を塞きとめる、とかは現実的じゃないよね。
人の噂は七十五日、というけれど。
あと二ヶ月もこんな恥ずかしい思いをするの...?
「あ、ありがとう。聞かせてくれて」
「俺が言わなくても、時間の問題だっただろ」
「そうだけど...。お礼は大事、だから」
「......」
私より、低い目線で座っていた彼が。
おもむろに男の子らしい手を伸ばしました。
私の、右側の胸に。
「......!」
咄嗟のことに私は反応できませんでした。
そのせいで意識外で数回を許してしまいます。
「な、なにやって......!」
「言葉より先に手を振り払えよ」
「そ、そっか。うん、そうだ...って!」
ここでようやく彼に手を振り払い、距離を取ります。
顔が熱くなってきているのが分かります。
「立派なセクハラだよ!」
「嫌だったのか?」
「い、嫌っていうか...常識が...欠けていたというか...」
「......」
彼は私の言葉が届いていないかのように。
立ち上がり、校舎の方を向きました。
「そろそろ教室戻るか。うるせぇしな」
「ちょ、ちょっと! 話、まだ終わってないから...!」
「さっきは戻れって言ったのに」
「う、うぅ...」
言い負かされてしまいました。
何も言い返せません。
彼は校舎に向かって足を動かし始めました。
「あ、ちょっと待って。少しだけ!」
「なんだよ」
「髪。この学校、染めるのダメだよ?」
「地毛だよ」
「え? そ、そうなの? じゃあ...ごめんなさい」
「少しは人の言葉を疑え、生真面目巨乳バカ」
「そ、そんなこと言わないでよ!」
次第に小さくなっていく彼の背中。
そして思い返せば、私はまるで対等な立場のように。
彼と少しだけ楽しげに会話をしてしまっていた。
イジられて、馬鹿にされて、セクハラをされて。
しかし心の何処かでは。
教師と生徒の垣根を越えて。
友達になれたんじゃないかな、って。
考えてしまう私がいました。
翌日。
昨日通り校門に立って挨拶をしていました。
そしてなんと驚くことに。
全員が私に挨拶を返してくれるのです。
三割程度の少数派が、今や全員に。
とても向上心があって良いことです。
ただ、どうしてこの二日間で劇的に変わったのか。
その理由は不良生徒の台詞に答えがあるのでしょう。
私の存在が全校生徒に認知された。
一年を担当している、え、えろ......い女教師という噂。
確かに私自身がそれを認知することにより、
「ほんっと巨乳だよな、あの女」
「スーツの上からでも身体のエロさがわかるぜ」
「いやいや、スーツだからこそだろ」
「眼鏡と黒タイツとか」
「誘われるのを待ってるんじゃないか?」
「真面目な女と思いきや、ビッチだってか」
「ただの清純より良いじゃねぇか」
「何人とヤってきたんだろうな」
なんて話し声がヒソヒソと聞こえてきます。
心の中でため息を吐くことしかできません。
彼らの期待に添えるようなことは全く無いのです。
それに、それを言い出せないのが私を苦しめる。
確証のない噂がどんどん広がっていくのですから。
事実無根の噂が放課後までにどうなっているのか。
今の様子だと、......でも。
私はただ真面目に生徒に勉強を教えるだけです。
誰一人として見捨てず。
適当にやらず。
いつだって真面目に。
それが私の、信条なのですから。
今朝の職員会議では一つの話題が挙がった。
一人の不良男子生徒が髪を黒に染め直した噂です。
彼は三年生だそうで。
一年、二年の間に何十回と指導されてきたようです。
しかしそれでも染め直さなかった彼が、染め直した。
そしてどんな風の吹き回しか。
遅刻気味な彼が余裕を持って登校してきた。
私が校門に立つよりもずっと前のことらしいです。
昨日まで不良の象徴であった彼の変化に。
新人として入った私を含めた複数の教師以外が。
何を企んでる、などと。
勘繰り始めました。
生徒のことを疑うのは良くない。
けれど、疑わざるをえない程。
あの生徒は問題児として注目されてきたのでしょう。
うん。
確かに不良でセクハラをする問題児っぽかったです。
更生...させるのも、教師の仕事でしょう。
お昼休み。
私は彼の姿を外で見かけました。
人目につきにくい、校舎の裏です。
今日の彼は一人でした。
「こんにちは」
私の呼び声に、彼は反応しません。
イヤホンをつけて音楽を聴いています。
「隣、座らせて貰うね」
私は隣に座りました。
ようやく私の存在を認めざるをえなかったのか。
彼はイヤホンを外し、ため息を吐きました。
「またセクハラされにきたのか」
「改心した君とご飯を食べにきたの」
「...勝手にしろ」
そんな訳で許しを得て。
私は持参したお弁当箱を開きます。
「あれ、お昼ご飯は?」
彼の手元には自販機で買ったと思われるお茶。
炭酸ジュースとかではなく、お茶です。
「持ってきてねぇよ」
「お母さんが作ってくれたりしないの?」
「親父とお袋は朝から夜まで仕事仕事仕事だ」
「朝早くに作ってくれたり、とかは...」
「無いな。一度も」
「そ、そっか......」
複雑な家庭の事情が彼にはあるようです。
これ以上踏み込むのは野暮というものでしょう。
「じゃあ私のご飯、分けてあげる」
「いらねぇよ」
「食べないとダメだよ。育ち盛りなんだから」
「余計なお世話だ」
なんてやり取りを何十回と繰り返して遂に。
彼は私の要望を呑んでくれました。
「まぁ、なかなかだな」
「私、料理ちょっとだけするから」
少しだけ自慢げに言ってやりました。
それからは私のお弁当の八割を彼に分け与え。
私は二割のご飯で、昼食は終わりました。
残りお昼休みは、まだ三十分以上あります。
「ね、お話しよう?」
「勝手にしろ」
「ふふっ。じゃあ一つ目。髪、染めたんだね」
いきなり核心をついた話題をします。
「あぁ。誰かが染めろとか言うからな」
「これまで他の先生にも言われ続けてきたのに?」
「なんとなく思い出しただけだ」
「そう。なら、それでいいけど」
これ以上の追求はしません。
彼だって気恥ずかしいのでしょうから。
そして今度は彼から、私に質問です。
「お前、処女だろ?」
「......」
なんとなくセクハラされることは予想していました。
しかし今朝の今で、この話題。
もしかして私が複数の男性経験がある、などと。
根拠のかけらもない噂が広まっているのでしょうか。
「ノーコメントです」
「そうか。じゃあヤリマンのビッチって言いふらす」
「やり......なに?」
「ただのバカというか知識不足のバカだな」
「またバカって言った」
これで何度目でしょうか。
彼に馬鹿にされるのは。
しかし、それほど嫌な気持ちにはなりませんでした。
早くも耐性が出来始めているのでしょうか。
「今まで何人の男に言い寄られた」
「これもノーコメントで!」
「つまんねぇな。処女な生真面目巨乳バカ」
「や、やめてよ! 付け加えていくのっ!」
これでは半年後には大変なことになっていそうです。
と、ここで。
彼はスマートフォンを取り出しました。
私は彼のスマートフォンから目を逸らします。
他人の重要機密を覗くのはダメなことなのですから。
「あ、そうだ。彼女とかいるの?」
「少し前までな。面倒になったから捨てた」
「振られたんじゃなくて?」
「俺が捨てた。それだけだ」
「......そっか」
人付き合いはそれなりに。
しかし切り捨てる時はバッサリと切り捨てる。
人として在るべき生き方を彼はしているようです。
とは言っても度合いが分かりませんけどね。
些細な喧嘩で別れたのか、大きな喧嘩で別れたのか。
そこまで追求する資格は私にはありません。
「私が隣に居ることは、嫌だったりする?」
「鬱陶しいとは思うが、美人が隣に居るのは良い」
「美人......」
「今すぐにでも犯したい、って思うほどにな」
「おか...し? お菓子は持ってないかな...」
彼はスマートフォンをポケットにしまい、
「わざとやってるのか?」
ため息を吐きがちに、そう言いました。
「?」
私は首を傾げます。
と、その瞬間。
ドン、と。
彼は私を優しく押し倒しました。
そして彼は私の眼鏡を奪いました。
「ちょ、ちょっと...」
「コンタクトにはしないのか?」
彼は私に跨るような状態で、言います。
「似合うって友達から言われたから...」
「だが、こっちも可愛いぞ」
「か、かわ...」
カァーッと顔が赤くなるのが分かります。
伴って、心臓の鼓動が一段と早くなります。
彼は私の髪を撫で下ろします。
「さらさらだな」
「手入れは、してるから...」
そして彼は彼自身の顔を私の耳元に近づけました。
「今日の夜、時間あるか?」
この時の私の頭の中は真っ白になっていて。
なにも考えられませんでした。
「あ、空いて...ます」
「そうか」
つい敬語になってしまった私に。
彼は素っ気なく返事をし、私から離れました。
ようやく私は解放され、起き上がります。
「......眼鏡、返して」
「ほら」
無事、返して貰いました。
私は少し躊躇って、眼鏡をかけ直します。
それからはずっと気まずく。
私は彼と話すことが、出来なくなりました。
お昼休みの終了間際、彼と連絡先を交換しました。
夜に、彼と待ち合わせる。
この胸の高揚感は、つまり。
そういうことなのでしょう。
私は話して一時間程度の彼に恋をしてしまいました。
名前も知らない、彼に。
今回はここまでで終了とさせていただきます。
この作品はそんなに長くさせる予定はありません。
程々に、それなりにやれればいいなって思ってます。
エロ要素は今後出していくつもりです。
感想や質問、希望の話題等も。
ぜひ、お願いします。
電車を乗り継ぐこと30分程度。
ちょっとした街外れまでやってきました。
私も働くに当たって学校近辺は散策してきたけれど。
この辺りまでやって来るのは初めてです。
見たところ、居酒屋が多いようですが...。
未成年を同伴しても大丈夫なのでしょうか。
とは言っても、彼のことなら飲みかねません。
不良ですから。
うん。
などと、駅前の目立つ場所で辺りを見回していると。
「案外早かったな」
噂の彼が遅れてやってきました。
どうやら一度家に帰ったらしく、私服です。
高校生の男の子らしい...?
どうかは分かりませんが、お洒落でかっこいいです。
都内の大学生でも十分に通ると思います。
「あ...うん。残ってやる仕事もなかったからね」
私が事実を話すと、
「暇なんだな」
相変わらずの毒舌です。
もう慣れましたが。
彼の言うことに耳を傾ける必要はありません。
私は聞こえなかったフリをし、話します。
「それで用ってなに?」
お昼休みに言っていた『用』。
いえ、『用がある』とは言ってませんでした。
ただ『時間あるか』と聞かれただけです。
しかしそれを『用があるから呼んだ』と。
解釈しても何の不思議はありません。
誰だってそうでしょう。
「とりあえず飯でも行くか」
「ご飯? うん、そうだね」
お昼ご飯をあまり食べていなかったせいか。
午後七時前のこの時間でも空腹を感じる。
とてもお腹が空いているという訳ではないけれど。
あれば食べるし、そこそこ食べれるくらいに。
「案内してくれるの?」
先に行く彼の後を駆け足で追いかけ、聞いてみる。
「めちゃくちゃ卑猥な店にな」
「えぇっ!?」
私は両手で胸を隠すようにし、距離をとります。
「冗談だって気付けよ。そろそろ」
「うーん...。また...」
また騙された、と。
私は敏感になってるセンサーを切ろうと心がけます。
「ただ、お前のガードが薄かったらあり得るかもな」
「はいはい。冗談ね」
ふふん、と鼻を鳴らして、彼の冗談を見抜きます。
さぞこの私は誇らしげで、楽しそうだったでしょう。
「......ないんだけどな」
ボソッと彼の言った言葉は聞き取れず。
歩みを止めない彼にの発言に重大性は無いと判断し。
何も聞かずに、ただただ私は彼についていきました。
案内されたのは、小さなお店の小さな個室でした。
木製のテーブルを隔てた対面式のソファに座ります。
引き戸の扉を閉めてしまえば二人きりです。
「お洒落なお店だね」
「こういう店じゃないとゆっくり出来ないからな」
お洒落とゆっくりは接点が薄い気がするけれど。
あまり深堀はせず、メニューを開きます。
お魚の料理、お肉の料理、おつまみ、その他。
色々な需要を網羅してる、って印象を受けました。
うーん、と。
お肉も捨てがたいけど、今はお魚の気分かな。
「決まった?」
「お前待ちだ」
「あ、そうなんだ。うん、決まったよ」
店員さんを呼びます。
各々の注文を済ませると、改めて二人きりに。
料理が運ばれて来るのを待ちます。
何事もなく、食事会は終わりました。
しかし事が起きたのは、そのしばらく後でした。
お会計を済ませて、駅へと戻る帰路で。
私は彼の半歩後ろを歩いていた訳ですが。
彼との話に夢中で。
気が付けば薄暗い路地へと誘導されていたのです。
「ね、ねぇ...。近道、とか? 暗くない?」
いくら近くに男の子がいるとはいえ、怖いです。
複数人に襲われたらどうしようもないし。
それに、今にも怪異現象が起こりそうな雰囲気です。
私は一人で居るのが寂しく、耐えきれず。
無意識に彼の裾を手で握ってしまいます。
「その...近くに居てもいい?」
私の言葉に、彼は答えません。
ただただ真っ直ぐ歩き、時折方向を変えるだけです。
必然と私もそれに従い、歩き続けると。
居酒屋などが軒並む一帯から、一転して。
左も右も、その先もずっと。
ピンク色の光を灯したホテルが並んでいました。
「あ、あの! ね、あの...ここは...その...」
彼の足は止まりません。
ホテル街をガツガツと、歩いていきます。
目もくれず、ひたすらに。
対して私はチラホラと見てしまいました。
案外安い値段で泊まれることや。
ビジネスホテルのような内装の部屋があること。
テレビとかでよく見る高級な広い内装の部屋。
また、何かを売っているらしいお店もありました。
「そ、そういう...つもりなの?」
いけません。
私と彼は教師と生徒の関係なのですから。
恋に落ちるのは仕方なくても、体の関係だけは。
少なくとも良い影響を与えられるとは思えません。
「何か、言ってよ...」
しかし私自身が一番理解しています。
ここまで一歩も歩みを止めない私。
そういう期待があるのだと、察しています。
頭ではダメだと分かっていても体が引き返しません。
そして、もう。
そんなこんなで、あたふたしている内に。
手遅れなところまで来てしまったようです。
居酒屋街からもホテル街からも外れた路地裏で。
私は薄汚れた壁を背にして。
月の明かりでしか見えない彼の顔を見上げています。
半歩、そして半歩。
段々と迫られると、鼓動が一層に速くなりました。
胸の奥が熱く、締め付けられるように痛いです。
「......ぁ」
彼の右手がすっと上がると、私の頭を撫でました。
優しく、子供をあやすように。
何も言わずに、私に安心を与えてくれます。
「もう...。なにか、言って欲しいな」
「相変わらず髪、さらさらだな」
「褒めてくれてるの?」
「お前の解釈次第だ」
「...ありがと」
私は褒められていると解釈しました。
そして、おもむろに眼鏡を外します。
彼が『かわいい』と言ってくれた、その姿に。
私は自主的になろうとしました。
「本当に、か、かわ...いい?」
「あぁ、昼に言った通りだ」
「眼鏡をかけているままだと?」
「それでもかわいいよ、お前は」
「そ、そっか...」
こんな風に褒められることは初めてなので。
なんだか照れ恥ずかしく、直視できません。
「ここまでついてきたってことは」
「......うん」
「いいのか? 出会って間もない俺と」
「分からない...。けど、今はそうしたいから」
「知らない男にほいほいついていく淫乱娘だな」
「い、いん...? ごめんね、分からなくって...」
「たっぷりと教えてやる。後悔するくらいにな」
と。
その瞬間。
私は走馬灯のように人生を振り返りました。
私が真面目に勉強をしていた学生時代。
人付き合いが少なからずあった私は。
友人の話を聞いていた。
昨日、彼氏とデートをした話。
昨日、彼氏にコーヒーを奢ってもらった話。
昨日、彼氏とキスをした話。
昨日、彼氏と彼氏の家でエッチなことをした話。
昨日、彼氏と別れた話。
時に誇らしげに、自慢をしてくる彼女。
時に虚しそうに、涙を見せてくる彼女。
異性と付き合うということは、一筋縄ではいかない。
そう理解していた。
そう理解していたつもりで。
三十代を前にしたところで結婚を予定していました。
仕事にも慣れ始めてきた頃に付き合い、結婚を考え。
三十代前半で子供をつくれたらいいな、と。
今の私には早い。
そう思い続けてきたけれど、彼に。
その予定はめちゃくちゃにされ、この始末。
私は教師と生徒の関係でありながら。
彼に恋をしてしまっています。
予定を繰り上げるつもりはありませんが。
こんな時くらいは、自分の気持ちに正直になって。
想いをそのまま、行動に移しても。
「────」
私は彼に体重を預けます。
彼は私を抱きしめてくれます。
苦しいくらいに、ぎゅっと。
その苦しさは痛みとはまた異なり。
普段なら弱音をあげていたところですが。
不思議と心が暖まる、幸せなものでした。
これが異性の魅力なのでしょうか。
「外寒いし、中入ろうよ」
「いや、今日はあと少しだ」
「あと少し?」
と、私が聞き返すのとほぼ同時に。
キスをされてしまいました。
初めてのキスを、屋外で、生徒と。
人に見られているかもしれない。
そんな淫らで倫理的によろしくない行為が。
より一層、私の体を火照らせます。
「ん......」
とても長いキスです。
苦しい。
けどそれ以上に、気持ちいい。
そんな感情が湧いて出てしまうようになりました。
「...次は、舌を絡めるぞ」
雑誌や友達からの情報で、それは知っています。
さっきの普通のがフレンチキスに対して。
今からするのはディープキス。
さぞかし、えっちなものなのでしょう。
そして今度は。
「ね、」
私の方から背伸びをして彼の首回りに腕をやり。
少しだけ無理やり屈ませ。
自発的にキスをしてみます。
さっきのキスをしてから、口を開きます。
すると彼も合わせてくれて。
触れる舌。
彼のは少し硬いようです。
唾液と唾液が絡み合い、エッチな音が聞こえます。
「ん...ちゅ...っ...ぁむ......」
時折、普通のキスを濃厚に。
お互いの唇が相手の唾液で濡れるまで。
また、キスをしながら。
彼は空いている両手で私の肢体を触り始めました。
スーツの上に着ているコートの上からだけれど。
慣れた手つきで、いやらしく。
「あ、そこ...んちゅ...だ、だめだよ...」
「まぁ、そろそろか」
私の言葉に反応したのか。
彼はキスをやめ、半歩ほどの距離を置きました。
「も、もう...終わり?」
「もう終わりって言っても、20分はしていたぞ」
「えぇっ!?」
左手につけたお気に入りの時計を月光に照らします。
確かに、お店を出てから歩いた時間を計算しても。
約20分ほどの謎の時間が経っていました。
私は初めてにして、夢中になっていたのです。
「今日はここまでだ」
「そ、そう? てっきり...」
体を重ねるものだと、期待をしていました。
不安もあるけれど、それ以上に期待を。
そして頭の中に靄がかかったこの感じ。
いわゆるあれなのでしょう。
ムラムラしている、というやつです。
性的な行為をしたい、と。
体が勝手に動きます。
「...次はいつ、してくれる?」
私は彼に抱きつき、問います。
「明日の夜だ。空けておけよ?」
「...うん」
明日の夜までお預けです。
次は何をしてくれるのか。
次は何を教えてくれるのか。
すっかりと私の煩悩は彼のことでいっぱいでした。
「あ、そうだ」
私は抱きつくのをやめ、改めて距離をとります。
「お弁当、明日から作ってこようか?」
「...好きにしてくれ」
「ふふっ、はーい」
まるで恋人同士のようなやり取り。
幸せとはこういうことを言うのだと。
実感した初めての夜でした。
今回は少し短めですがここまでです。
今のところは微エロ程度でしょうか。
次回はもう一、二歩踏み込んだところをやります。
感想や質問、希望のプレイや話題等も。
ぜひ、お願いします。
次の日の夜。
私たちは約束通り、禁断の密会を果たしていました。
教師と生徒の関係でありながら。
淫らな関係でもあることは知られてはいけない。
昨日のような屋外では見られるのでは、という。
危機感と焦燥を帰路の電車の中で気付き。
今日は彼を私の家へ招待していました。
この辺りに引っ越してきて日も浅く。
かつ私には物欲があまり無いため必要最低限な部屋。
どちらかと言えばやはり女性らしい、けれど。
それほど女性らしくもないシンプルなお部屋です。
「じゃあ私、着替えてくるから待ってて」
いつまでも室内でコートを着てはいられません。
それにスーツもシワになってしまいます。
彼をリビングに残し、私は私室へ。
いつもの場所にコートをかけ。
今ではもうすっかり慣れたクローゼットを開きます。
「...私服、見せるのは初めてだよね」
変に意識してしまいます。
不恰好だとか似合わないだとか。
言われないといいのだけど。
「お待たせ」
リビングの扉を開けると、彼は本棚の前にいました。
私の数少ない趣味のうちの一つ。
読書という分野において。
私の好みがバレてしまいます。
彼は小説...特にミステリーなどを読むのでしょうか。
もし読んでいるのなら、夜通し話したいものです。
「な、なに? じーっと見て」
彼は私を穴があくほど見つめています。
その視線の中にはいやらしい物を感じました。
「その服、エロいなって」
「え、エロい言わないでっ!」
つい声を大きくしてしまいます。
いえ、誰でもこのような反応はするでしょう。
突然こんなことを言われた暁には。
「お前がどれほど巨乳なのかがよくわかった」
「ぅ...」
確かに私の服装は明るめなニットです。
こうやって足元を見ようとすると。
胸の形がくっきりと出て、足元が見えません。
スーツの時と比べて、見えにくいというだけですが。
「わざとその服を選んだのか?」
「わざと...じゃない...」
「俺に見て欲しかったのか?」
「ち、違うもん...」
「じゃあどうして?」
「無難かな、って...思ったから」
言い寄られています。
みるみると距離を詰められ、私の背後には扉です。
逃げ場がなくなってしまいました。
私よりもずっと背の高い彼の顔を見ようと。
見上げると、彼はじっと私の顔を見ていました。
「うぅ...」
弱音を吐き、顔を伏せてしまいます。
まともに直視することができません。
「俺を誘うためだろ?」
耳元でそんなことを口にされて。
これではそんなつもりでなかったのに。
私は自分に正直になれず。
彼の言われるがままに、白状してしまいます。
「自分の卑猥な身体を見せたかったんだろ?」
「そう...です。あなたを、意識して...見せたくって...」
「まったく。エロい女だな、お前は」
「い、いじわるしないで! もう...!」
私は彼を手で突き放そうとしましたが、
「きゃっ...」
それよりも早く抱きしめられ、頭を撫でられました。
これでは怒る気にもなれません。
私の熱くなった心は一瞬にして鎮火してしまいます。
「ずるいよ、こんなこと...」
「お前の反応が可愛いから悪いんだ」
「...じゃあもう少し、このままでいさせて?」
「あぁ、いいよ。巨乳の感触が心地良いからな」
「馬鹿...!」
密着しているので当然私の胸は彼に当たっています。
ぎゅうっと形を歪ませています。
彼曰く、卑猥だとか。
...もしブラをしていなかったら。
もっと彼は喜んでくれたでしょうか。
そして、もっといじめてくれるでしょうか。
私は彼に、卑猥だと言われて嬉しい。
一人の女として意識されているのが嬉しい。
性的な目で見られているのが嬉しい。
そうでなくては。
私も彼のことをそういう風に見られないからです。
「そろそろいいか?」
「んーん。まだだめ」
「年上のくせに、随分と甘えん坊だな」
「だって、あなたに抱かれていると安心するから」
「俺はお前とキスをしたいんだがな」
「き、キス...」
魅力的な提案です。
私は抱きしめられ、頭を撫でられるのが好きです。
しかしそれと同じくらいキスをするのが好きです。
ど、どちらかと言うと、えっちなやつの方が...。
「うん、じゃあ...キス、しよっか」
彼は私を離しました。
途端に感じる孤独感。
抱かれている時と、いない時では差を感じます。
彼に手を取られ、ソファへ。
二人がけのソファに並んで座るのかと思いきや。
普通に腰をかけた彼の上に私が跨ります。
彼のほうに向かって、改めて身体を密着させて。
近いです、かなり。
「これでキスしやすいだろ?」
「そう、だけど...重くない? 大丈夫?」
「エロく実った巨乳は重そうだけどな」
「そ、そういうことを言わないで!」
はいはい、と彼は私の頭を撫でた後。
優しく唇に重ねてくれました。
頭が真っ白になって、何も考えられません。
しかしやることは身体が理解しています。
とにかく濃厚なキス。
お互いの唇が相手の唾液で濡れるまで。
そして唾液の交換さながらに、舌を絡めます。
「んっ...んち...ゅ...ん...」
少し離れると、唾液の糸が伸びます。
どちらの唾液か、それとも私たちの唾液か。
艶っぽく光に照らされたそれが落ちるよりも早く。
本能的にキスを再開しました。
くちゅくちゅと、えっちな音が響きます。
その音は心地良く、私の身体を火照らせました。
「んっ、はぁ...それ、反則...んっ...ん...」
キスをしながら、舌を絡めながら。
頭を撫でられるのは一層の格別です。
私たちは時間を忘れてこの行為をし続けました。
違和感を感じる、この時までは。
「ん。ねぇ、あの...その...あなたの下半身がね」
キスを中止し、先程からの異変を指摘します。
ズボン越しに、太ももに触れるそれ。
跨ったときから気付いてはいたけれど。
もう無視できないほど、それは硬くなっていました。
狭いズボンの中では、とても苦しいでしょう。
「だ、大丈夫? 痛かったりしない?」
「お前がエロいから悪いのは、分かるか?」
「え? え、ぁ、う、うん? 私が、悪い...の?」
「なら、きっちり責任取らないとな」
都合良く乗せられていた気はするけれど。
それでも、それは嫌ではなかった。
愛する人のためにこの身を尽くすのは。
心の底から喜ばしく、嬉しいことなのですから。
私は床に膝立ちをし、彼のズボンを脱がせます。
手惑いながらもベルトを外し、チャックを下ろし。
まずはズボンだけを脱がせると、もう分かります。
とてもとても、大きくなっているそれに。
私は下着の上からそれに指先で触れてみました。
すると、ピクンと反応を見せるではないですか。
私は小さな笑いが漏れるのを堪え、脱がせます。
「ぁ......」
遂に露わになった彼の生殖器。
教科書に載っていたイラストとは比べものにならず。
また、想像よりもずっと大きくて。
なんというか怖くて不思議な形をしていました。
私は恐る恐る、右手で優しく握ってみます。
「ぅ...」
彼の声が漏れました。
気持ち良かったのでしょうか。
「いや、お前の手が思ったよりも冷たくてな」
そうではなかったようです。
しかしそう言われてみると、これは熱いです。
とてもとても熱くて、火傷をしそうなくらい。
私が冷え性ということもあり。
相当冷たい思いをしたのだと思われます。
そのお詫び、ではありませんが。
探り探り、右手を上下に摩ってみます。
「こ、こんな感じ...?」
「あぁ、上手だ」
頭を撫でられます。
上手にやったご褒美でしょうか。
私のモチベーションもこれで上がりました。
右手で摩りながら、左手は先端に触れます。
小さな穴から出てきた半透明な液体。
左手の人差し指でそれを掬うと、粘りを感じます。
匂いは、決して刺激臭というわけでもありません。
「もう少し早くしても大丈夫だぞ」
「そ、そう? 痛かったら、言ってね?」
言われた通り、右手の運動を早くします。
雑すぎず、かつ要望通りに、丁寧に。
すると先程の液体がみるみると出てきました。
いつしかくちゃくちゃと言うまでになり。
私の右手はすっかり粘液に汚れてしまいました。
「ね、下のも触っていい?」
私は興味本位で、袋に触れる許可を貰います。
二つ返事で了承してくれたので、触ってみました。
「これ...丸い、玉?」
「子供の種を作る役割だな」
「赤ちゃんの......せい...えき...だよね?」
「あぁ。お前を孕ませるやつだ」
「な...ぅぅ......」
彼の顔を直視できず、視線を落としました。
そして何の気もなしに。
なんとなく、そうしてみたいと思ったから。
私は口を開けれるだけ開けて、咥えてみました。
「あむ...」
粘液に塗れた先端から、とても太くて長い部分まで。
苦しくない範囲までで、挿れてみました。
「んぐ...ん...ろう...? ひもひい...?」
興味本位でした行為に、彼は音をあげます。
手でしている時よりも気持ち良さそうです。
口ですることにより粘液の分泌がすぐに分かり。
また唾液によってスムーズな上下運動が可能です。
チラッと彼の方を見ると、悶えているっぽいです。
ふふ、可愛いなぁ。
ようやく私が優位に立てるところまできました。
これまではやられっぱなしだったので。
ここらで反撃です。
「ぐ...ぅ...で、出そうだ...!」
「れ、れそう? んっ...出そうって、...もしかして」
彼の言葉に、つい咥えるのをやめてしまいます。
出そうとは、つまり、私の少ない性知識によると。
「精液...だよね?」
「あぁ。たっぷりと出してやるから、また咥えろ」
命令口調でそう言われ、私は服従します。
自分の意思で改めてするのではなく。
彼が言ったからそうする。
私は脈打つそれを再び咥えました。
また自分のペースで頑張ろうと思いきや。
彼は私の頭を両手で掴み彼のペースでし始めました。
「んっ、ぐ...んっ、ぐっ、ん、こほっ...」
息ができなくて、とても苦しいです。
でも悪い気はしません。
無理やりされて気持ち良くなっている自分がいます。
私が自分の意識でしていた頃の二倍近いペースで。
それをただただ繰り返していると、遂に。
「ぅ...出すぞ、一滴も零すなよ!」
私は頭を固定されていながらも顔を縦に振ります。
「全部口の中に残しておけ、飲むな!」
同様に、私は彼の言いなりになろうとします。
「っ...出るッ...! クッ......!」
それは大きく脈を打ちました。
先端から出てくるのは先程と違う液体。
ドロドロとしていて、熱くて、濃厚で、魅力的な。
一瞬で理性が飛んでしまいそうなほどの威力です。
女はこれで孕む。
そう考えると、考えているうちに。
ジワァっと。
下着が濡れるのを感じました。
「まだっ、出るぞッ!」
ドロドロというより、プリプリとした。
ゼラチン質のような液体は私の口内を犯します。
私の口から溢れ出そうになる一歩手前で。
脈打つのを、それはやめました。
全部吐き出し切ったということでしょうか。
「ぅ...ふぅ。...飲んでないな? 見せてみろ」
私は口を開けます。
たっぷりと私の口に満たされた液体を確認して、
「その味を一回で覚えろよ」
コクコク、と私は頷きます。
「覚えたら、飲め」
目を閉じて、言われた通りに。
彼の子供の種の味を分析します。
なんと表現したらいいか分からない味だけど。
決して嫌ではなく。
一度味わったら忘れられられなく。
かつ癖になってしまいそうなこの味を。
私はよく堪能してから、喉を通して胃へ運ぶ。
「んっ...こく...ごく...ん...はぁ」
私は飲み切った証拠として空になった口を見せます。
彼は笑顔を見せ、私の頭を撫でてくれました。
そんなことをされたら、
「ん、おい...?」
私はみるみると小さくなりつつあるそれを咥えます。
再び、自分の意思で。
「ん、ずっ...んく...これでいい?」
尿道に残った精液を吸い出します。
残ったままでは気持ち悪いかもしれない、と。
私は考えて、自主的にしてみました。
すると彼は改めて私の頭を撫でてくれました。
「ほんっとお前はエロくて、良い女だな」
「エロくて、は余計だよ」
「初めてであんなに上手だったんだ。素質あるぞ」
「褒められても...。私は、あなたにしかしないし...」
「俺専用、ってことでいいのか?」
「私専用の、だよ。少しは年上を敬いなさい」
私は年上らしく、威厳を発揮して見せました。
彼のは私専用。
誰であろうと触らせも、咥えさせたりもしません。
「だ、だからね」
「なんだ?」
「もし...その...気分になったら、私が...」
若い男の子の性欲は底無しと聞いています。
なら、すぐにそういう気分になるのでしょう。
その時は毎回私が駆けつけ、私がする。
そうすれば他の誰にも渡さなくて済むし、それに。
「あなたの...味、癖になっちゃったから...」
短いスパンで定期的に更新し続けたい。
一時たりとも、その確かな味を忘れないように。
「またその気になったら、口でさせて?」
私の希望に。
彼の答えは、イエスでした。
今回はここまでです。
初めてのフェラ編でした。
次回も、続けて二人でイチャイチャします。
感想等、よろしく御願い致します。
つい一週間前までの私なら。
夢にも思わなかった男性との性的な行為。
それも彼が生徒なのだから、言い逃れはできません。
しかし今この瞬間は。
至福の時間であり、感受性豊かな時間です。
他の何事にも変えられないこの時間。
こうして再び彼の膝に乗ってキスをしている瞬間は。
本当に本当に、幸せです。
「本当にキス好きだな」
「ん...もっとしたい...」
彼との会話よりも、私は愛を結びたかったのです。
自分勝手なのは重々承知ですが。
身体が勝手に動いてしまいます。
二十二年間、愛に飢えたこの身体が。
「んっ...んぃ...もっと唾液...欲しい...ん...ちゅ...」
たくさんの唾液を貰います。
彼の赤ちゃんの種同様、味を覚えました。
癖になって、下腹部の辺りが熱くなります。
じんじんと、ぽかぽかと。
「お前、顔赤いぞ。大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ちょっとお腹が熱いだけ」
「発情しきった雌だな」
「発情...?」
「つまり子宮が欲しがってるんだろ」
「あ...そう...なのかな?」
そう言われてみると。
下腹部の辺りには子宮があったことを思い出します。
女性の身体の部位の中で最も重大な。
女性としての役割を果たすための器官です。
そこに赤ちゃんの種を流し込んで貰えば、あとは運。
授かれるか、授かれないかが決まるそうです。
「じゃあ私はあなたのせーえきを欲しいってこと?」
「俺に聞かれても困るが、そういうことだろ」
「ね。まだ出る? さっきはいっぱい出してたけど」
「まだ出る。だが、出さない。お前のためにな」
頭を撫でられます。
どうして出してくれないの。
という質問を先行して封じられます。
「少しは冷静になれ。今子供ができたら困るだろ?」
「......うん」
感情的になっていたようです。
彼の言う通り私は発情し彼の子種を求めていました。
後先のことなど一切考えず、今だけを大事にして。
しかし冷静になって考えてみると。
教員生活が始まって間もない頃に妊娠。
今年が終わる頃には、嫌でもバレるのでしょうか。
年明けからは夢だった教員生活の道を閉ざされ。
しっかりと栄養を摂って、家で安静にして。
そんな予定とは別の幸せな未来が出来てしまいます。
冷静な私が求めるのは、やはり先生の道でした。
「ごめんなさい。ありがとう、教えてくれて」
私は彼の膝から降りて、隣に座ろうとします。
しかし彼はそれを許さず。
私を正面に向けて座らせ直しました。
「えっ、な、なに?」
「まぁ見てれば分かるさ」
彼は手元にあったテレビのリモコンを操作します。
電源オンになるテレビ。
そして慣れた手つきで短い操作を終えて。
再生されたのはタイトルを見る限り。
えっちなビデオでしょうか。
いつの間にディスクを入れられていたのでしょうか。
「ね、...これは...」
「今から鑑賞会だ。大人しく観てろよ」
「......うん」
私は頷いてしまいます。
なぜなら、少しだけ興味があったからです。
それに勉強になるかもしれません。
さっきの行為の勉強、更にはそれ以上の行為まで。
彼を満足させるためのテクニックが詰まっています。
「ひゃっ...も、もう...!」
彼は後ろから私の胸に触れました。
ニットとブラ越しに、優しく、撫で回すように。
「お前は観るのに集中してろ」
「そ、そんなこと言っても...」
「タイミング見計らって脱がせるからな」
「ぬ、脱がせる...」
「いいな?」
と、私の胸をわしづかみにします。
「んっ、う、うん。いい...よ。あなたになら」
「すっかり従順な雌じゃないか」
「雌って言わないで! なんかいやらしいから...」
「こんなに乳首を勃たせても言えるのか?」
彼はニットとブラ越しに私の乳首を摘みます。
場所を特定され、好き放題されています。
両方を、それぞれ両手の親指と人差し指で。
じっくりと、こりこりと。
「んっ...そ、ぁあっ...!」
「もう感じてるのか。変態だな」
「だって、これ...おかしい...から...!」
身体を洗う際に触れるよりもずっと気持ち良いです。
先端から走る電流のようなものが快感に直結します。
「ほら、始まるぞ」
彼のセリフの通り、始まりました。
一人のかっこいい男性と、一人の可愛い女性。
ホテルのような部屋でイチャイチャしています。
主に男性が女性の身体を触り、キスをしたり。
やっていることは私達とあまり変わりませんでした。
七、八分程度の弄り合い。
それが終わると、男性は女性の服を脱がせます。
それと同時に、彼は私のニットを脱がせました。
テレビの中の女性の上半身が露わになります。
下着を着けていますが、その身体は綺麗でした。
女性らしいくびれに、豊満な胸。
そしてスラッと伸びた脚に、綺麗な肌。
釘付けになる私も同様に、脱がされています。
テレビの中の彼女同様、上も下も下着姿です。
「お前の方がエロい身体してるぞ」
耳元で彼が囁きます。
そう...でしょうか。
実感はないけれど、褒められると悪い気はしません。
テレビの中の男性が女性の胸を改めて触ります。
まずは両手で胸を持ち上げ、落とす。
ぷるるんと弾力のあるそれで遊んでいるようです。
もちろん私も同じことをされます。
彼の遊びで、ぷるるんと。
そしてブラ越しに触り、谷間に指を入れたりします。
一通り遊び尽くしたら、ブラを外します。
「思ったよりもハリがあるな。全然垂れてない」
「そ、そう...?」
「あぁ。綺麗だ、どんなものよりも」
ついに一糸纏わぬ私の胸を彼は弄ります。
揉みしだき、撫で回し、摘み、自由自在に歪む胸を。
テレビの中の彼ら以上のことをされています。
「ていうかお前、乳輪小さいな。乳首もピンク色で」
「そうなの? そんなものだと、んっ、思うけど」
「世界一エロいおっぱいだ」
「んっ、う、うんっ......」
私は目を背けます。
いえ、胸を揉まれていることとかではなく。
もっと別の、あっちのことに。
うぅ...恥ずかしい。
もうあんなになってしまっていると知ったら。
彼は幻滅するでしょうか。
と言ったところで。
私の願いも虚しく。
テレビの中の彼は女性の股辺りを触れました。
同時に、彼は私の秘所を下着越しに触れます。
「ぐちょぐちょになってるじゃないか」
「っ...知られたくなかったのに...」
「これじゃあシミになって使い物にならないな」
「お気に入り、なのに...」
「俺に見せるために、お気に入りを着てきたのか」
私の返答は、ここに記さないでおきます。
ただ彼の気分が良くなたっとだけ、記します。
「今度新しいの買ってやるから、今は」
卑猥な水音を立てながら、彼は私の秘所を弄ります。
わざとらしく、お気に入りの下着を濡らすように。
消えないシミを作ろうとしているのが分かります。
「ゆ、指...いれないで...っ!」
「下着越しだから大丈夫だろ?」
「だ、だから...。...んんっ...だめなのぉ...」
「ほら、AVに集中しろよ」
「はぁっ...はぁ...」
頭の中が真っ白になりかけ、意識すら失いそうです。
でも、彼の巧みな指遣いは多少おさまりました。
今は、割れ目に沿ってなぞっています。
それだけでも十分な刺激ですが、まだ耐えれます。
彼に言われた通り、テレビを見ます。
少し目を離していた隙に。
女性は本当に一糸纏わぬ姿に変貌していました。
つまり、私も。
「脱がせるぞ」
コクリ、と頷きます。
私は受け入れました。
とてもとても恥ずかしいけど、我慢します。
「毛は薄いな。でも、今度全部剃るか」
「えぇっ!? そ、それは...」
「いいだろ? 俺以外には見せないんだし」
「それはそうだけど...さ...」
「まぁ、とりあえず今は。こっちだな」
彼はたっぷりと液を指ですくい、私に見せました。
「お前のえろい愛液だぞ」
「み、見せないでいいから...!」
「これが潤滑油になって、チンポがスムーズに入る」
「ぅ...」
想像してしまいます。
さっきのアレが、私の膣内に。
えっちな液体がそれを滑らせ、誘う。
奥へ、奥に。
その姿を想像するだけで一層に高揚してしまいます。
「それにしてもお前は、多いな。かなり多いぞ」
「言われても、分からないよ...理由なんて」
「俺のためにずっとためていてくれたのか?」
「...あなたしか、いないから」
私をここまでさせたのは彼以外いません。
必然と、彼のためとなってしまいます。
「まぁ多ければ多いほどやり易いし、な」
指ですくったそれを私の左胸の先端に塗り込みます。
「な、何やってるのっ?」
「こっちの方が気持ち良いだろ?」
何もしていない右胸の先端を摘まれるのと。
愛液を塗られた左胸の先端を摘まれるのは。
左の方が、指が滑るようで。
「きもちい...ぃ...です」
「こんだけたくさんあれば、困らないだろ?」
彼曰く、すくってもすくっても。
奥から湧き出てくるようです。
それだけ私は欲しているのでしょうか。
私はテレビの方に、目を向けます。
女性の膣は男性の中指を呑み込んでいました。
そして激しく出し入れされ。
女性は喘ぎ、喘いで。
『イく』という言葉と共に。
身体を大きく痙攣させ、膣は何かを吹き出しました。
愛液のような、何かです。
「あれは潮吹きだな。まぁ今はいい」
「潮吹き...?」
「お前もいつか出来るようにしてやるから」
とてもとても気持ち良くなった時に。
あんな風になるのでしょうか。
興味は尽きません。
性的な、私の知らない世界は。
「潮吹き...潮吹き...。うん、覚えた」
「お前はこんな時でも真面目だな」
「あなたはえっちな私を好きなんじゃないの?」
「健全な男子高生たるもの、エロいものは好きだ」
「......」
「ただ俺はどっちも好きだ。真面目でもエロくても」
「褒め...てくれてるの?」
「さぁな」
と言って、彼は私の膣に指をいれます。
「んっぅ...指、大きい...!」
「く...キツイな。おい、目を閉じろ」
「て、テレビは?」
「今はいい。早く目を閉じて、膣に力を入れろ」
「う、うん」
私は目を閉じて、下腹部に力を入れます。
彼の指の大きさが鮮明に分かりました。
その上で、私のえっちな穴の形も。
彼の第二関節までの中指の形になっています。
「形、分かるように覚えておけよ」
「い、意味ある...んっ...のっ...?」
「俺のチンポを良く覚えられるってだけだが」
それは大事だ、と私は思う。
彼の形を覚え、彼の形になったあそこは。
彼を最も気持ち良くさせる専用になるでしょう。
そして私も気持ち良くなれるはずです。
身体の相性を完璧にするために。
これは前準備という訳でしょうか。
「っ...あー、クソ」
「ど、どうし...たの?」
彼の男の子らしい低い声。
少し、苛ついているような声色です。
「お前を犯したい。お前が泣き叫んでも、ずっと」
「ぁっ...う、うん...」
「だが、まだ早い。...チッ、おい」
「ぇ...?」
彼は私を膝の上から降ろします。
すっかり彼のズボンには愛液が染みていて。
降ろされた私の秘所からはポタ、...ポタ、と。
愛液が床に水たまりを作ります。
「二回目だ。咥えろ」
豹変した彼の、命令口調。
それは私の心に響いて。
ぞくぞくっ、と。
子宮が悦ぶのが分かりました。
ジュワッと湧き出る愛液は量を増します。
彼は自分でズボンと下着を脱ぎ捨て。
私の前にそれを改めて出しました。
「早くしろ、雌犬」
「は、はぃ...!」
私は盛った雌犬のように。
それを舌で舐め回し。
それを口で咥えます。
さきほどよりも一回り大きくなったそれ。
とても苦しいけれど、気持ち良いです。
耳を澄ませれば。
今私がしているような音が後方から聞こえます。
あちらも今、同じことをしているのでしょうか。
テクニックでは劣っていても、愛では負けていない。
と、私はいつになく張り切って気持ち良くさせます。
必死に、必死に。
彼の男としての匂いが鼻腔をくすぐられ。
彼の男としての逞しさをこの身に擦り付けるように。
「う、...さっきよりうまいぞ...!」
彼のそれはまた一段と大きくなります。
私の数少ない経験上、近いのでしょう。
ラストスパートをかけるように、早く、適切に。
それを深く、喉まで咥えるのを徹底します。
「っ...イくぞッ! ...ッ、綾音、全部、零すなよッ!」
名前を呼び捨てにされ、私は。
思考が停止してしまいました。
しかし身体は求めて動き、それを受け入れます。
一滴も飲まず、零さないよう口の中に含めて。
かつ、弱い刺激を与え続けて。
快適に出し切るよう、促します。
何発、何十発とそれは繰り返し。
二回目だというのに、一回目以上の量を。
私の口内へ、赤ちゃんの種を吐き出しました。
「ず...ん...っ...」
尿道に残ったせーえきも吸い出します。
そして彼のを口から出して、彼に見せつけます。
たっぷりと溜まった彼自身の遺伝子の数々を。
「よし。飲んでいいぞ」
彼の許しを得てから、私は少しずつ、飲みます。
大事に、大切に、よく味わって。
「ん、ごく...ごく...んっ、はぁ」
空っぽになった口を見せると。
彼は頭を撫でてくれます。
優しく、さっきの姿とはまた変わって。
いつも通りの彼、でしょうか。
「上手だったぞ」
「そ、そう? ありがと...」
「しかし苦しかっただろう? 何かお詫びしないとな」
「い、いいよ。好きで...やれたんだから」
「...でもな」
「なら。...あの、私のこと...綾音って呼んでくれる?」
「それだけでいいのか?」
「あと、命令っぽく、強く、怒鳴る感じで」
「......」
彼はぽかーんとしました。
あれ、私、何か変なことを言ったでしょうか。
と思ったら、彼は笑い始めます。
「ね、ね。どうしたの?」
「いや、お前は」
一呼吸置いて、言います。
あれを。
「綾音は処女で生真面目で巨乳な馬鹿で、ドMだな」
嬉しいような、貶されているような。
なんとも言えない、気持ちになりました。
「それにしても綾音、それ」
「あっ...。うぅ...バカっ...!」
床には愛液の水溜りが出来上がっていました。
今回はここまでです。
書き殴りましたので文章がおかしいかもしれません。
次回は、ゴールデンウィーク編です。
綾音は一人でアダルトショップに行かされ...!
ゴールデンウィーク編と夏休み編で終わる予定です。
(夏休み編はただ汗だくセックスがしたいだけです。)
感想等、よろしくお願い致します。
「えっ、東京に?」
「ゴールデンウィーク暇だろ?」
「ええと...四日間くらいは休みあったかな...?」
四月下旬。
彼と出会って、半月以上が経ちました。
最初は先生と生徒の関係であったけれど。
その関係は着々と発展し、彼曰くセフレらしいです。
セフレとは、何でしょうか。
聞いても教えてくれません。
また、調べるのも禁止されています。
私は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらも。
彼に精一杯尽くしてきました。
ほぼ毎日彼のアレを咥え、イかせて。
赤ちゃんの種を美味しく頂いています。
過ぎてしまえばあっという間でしたが。
この三週間はえっちな思い出しかありません。
毎日咥えて、毎日えっちなビデオを観て。
一緒にお風呂に入って洗いあったり。
...言いにくいのですが、剃ってもらいました。
こっちの方が良く見えるだとか、言われて。
えっちな身体にされてしまいました。
胸もなんだか敏感になった気がします。
それから、下腹部がうずうずして仕方がありません。
私は、まだ女性の絶頂というものを知らないのです。
いつも頭がおかしくなりそうになる直前で。
彼の手は止まり、寸止めされてしまいます。
また、自分でするのも禁止されています。
律儀に私は、この命令を遵守して。
お陰様で。
今ではもう器から溢れ出しそうなくらいに。
私の性欲は満ちています。
表面張力と言っても過言ではありません。
このままでは仕事に影響を及ぼしてしまう、と。
結論に至ったある日の夜、彼は言いました。
ゴールデンウィークの連休に、東京へ行くと。
私が勤めている学校はこの期間約十連休です。
憂鬱な平日も休日にしてしまおうと。
少し前の学校での偉い人がそうしたそうです。
教師としての仕事も六日間ほどだけ。
それ以外の日なら、彼の意向に従うことも可能です。
「でも、東京です何をするの?」
「少しくらいは贅沢なラブホでも行こうと思ってな」
「らぶ...ほ?」
「セックスをするホテルのことだ」
と、彼は。
私に教授しながら、私の右胸の先を摘みます。
「んっ」と声を漏らしながらも、会話を続けます。
「せ、せっくす...」
「つまり、セックスしようって訳だ」
「......!」
「そんな時くらいは良い部屋でしたいだろ?」
「そう...だね」
「まぁここでしてもいいが、片付けが面倒だからな」
「そんなに汚れたりするものなの?」
「お前の愛液が多すぎるんだよ」
「う...」
「どんだけチンポを欲しがってるんだかな」
「や、やめてよ...。そんなに言わないで」
「糸を引くくらいの本気汁だからな」
私が赤面している裏で、彼は私の秘所に触れます。
クチャ、という音がして。
彼は指で掬いました。
「ほら、見ろよ」
私は薄目でそれを視界に入れます。
親指と人差し指の間にできた糸の橋。
とても粘質があって、そしてキラキラとしています。
「まぁ、そんな訳だ。東京でやるからな」
「う、うん...。わかった」
「今日を含めて、その日までは抜かなくていい」
「ぬく...? あ、...うん」
「ちょうどお前も安全日だし、中に出してやるよ」
と言われて、子宮が疼くのが分かりました。
赤ちゃんの種を求めて仕方がない身体の一部が。
その言葉に、敏感な反応をみせます。
彼は毎日、たくさんの精液を出してくれます。
今日から数日間、溜めていたらどうなるのでしょう。
いくら安全日とはいえ。
などと、考えてしまいます。
「滅茶苦茶濃厚なやつで孕ませてやるからな」
耳元で囁かれて。
安全日と言ったのは彼でも。
そんな戯言に。
ちょうど子宮の真上を手で撫でられていては。
身も心も更に惚れてしまいます。
これ以上ないくらい彼のことは愛していますけどね。
朝早い電車で、彼と一緒に東京に赴きました。
私は心の何処かで期待していたのか。
着いてすぐホテルに向かうと思っていましたが。
そんな事はなく、まずご飯を食べに行きました。
ちょうど着いたのがお昼頃だったこともあり。
お洒落な飲食店でのランチを済ませます。
次はどうするのか、と。
訊いてみると彼は、もう少し遊んでからと言います。
観光をしたいのでしょうか。
それとも私を焦らしたいのでしょうか。
その真意はハッキリしませんが、そうなりました。
せっかくの都会の名所を周りながら、楽しみます。
さながらデートのように。
若い同年代のカップルのように、歩き回りました。
彼は、いよいよ私の待ち望んでいた言葉を発します。
「まぁ、こんなところか」
観光の時間はこんなところです。
つまり、これから。
夜の時間帯に相応しいことをするのでしょう。
彼の行く先に、私は着いて行きます。
えっと...確か、ラブホへ向かっているのだと思います。
意気揚々と、私は。
望んでいます、この身体が。
また一つ、大人になることを。
連れてこられたのはお店でした。
入口の扉に十八禁と書かれているお店です。
ここは...ホテルではないようですが。
いったい、何をするのでしょうか。
「アダルトグッズ専門の店だ。行ってこい」
「ぇ...え? せ、せめて一緒とか、じゃなくて?」
「お前一人でだ。気になったのがあれば買ってこい」
「...本当に一人じゃないとダメ?」
「お前が一人で見て、判断しろ」
「うぅ......」
「今晩使ってやるから、そのためにもな?」
耳元で囁かれると、その気になってしまいます。
確か、女性専用のアダルトグッズもあるとか。
ビデオで観たのを参考に、ろーたーとかばいぶなど。
画面越しの彼女らは本当に気持ち良さそうでした。
ほんの少しだけ、体験してみたい願望があります。
「一時間半後にここ集合な」
「そ、そんなに!?」
「じっくりと見てこいよ」
と言い残して、彼は何処かへ行ってしまいました。
残された私には、もう選択肢が残されていません。
緊張気味に、人目を気にしながら。
自動ドアをくぐりました。
このお店は五階建てになっているらしく。
その階に応じた商品が販売されているそうです。
荷物を持ったまま階段を登るのは非効率的だと考え。
一番上の階から見て回ることにしました。
若干呼吸を乱しながら、階段を登ります。
店内にいるお客さんの層は圧倒的に男性が多いです。
痛いほどの視線を感じながらも、私は五階へ到着。
ここは...コスプレの商品が多く販売されています。
アニメや漫画の衣装。
スクール水着やメイド服、巫女さん。
チャイナ服やウェイトレス。
そして学校の制服など。
幅広いニーズに応えた品揃えです。
どの衣装も可愛らしく、興味が湧いてしまいます。
でも、私のような人間が着ても良いのでしょうか。
こういうのはもっと若い子が着るべきだと思います。
もちろん大学生くらいの若い子らが。
ああでも、不純な異性交友は...推奨できませんが。
とにかく、二十二である私には相応しくありません。
ここは見て回るだけにしましょう。
時間はたっぷりあるのですから、時間をかけて。
四階に降りてきました。
この階はセクシーなランジェリーコーナーです。
色鮮やかで可愛らしい下着が並んでいます。
...こ、こんなのって大丈夫なの?
下着としての役割を果たしているか微妙です。
でも、この辺りは完全にそれ用なのでしょうか。
パートナーに喜んで貰うための商品なのかもです。
えっちな下着、彼は喜んでくれるかな...?
うーん。
...あ、ブラあるかな。
あんまり私のサイズって売ってないから。
少しえっちなのでも、彼にしか見せないし大丈夫。
上から衣服を着てしまえば分からないですよね。
彼にはイジられるかもしれませんが。
えろい下着を買って見せたかったのか、とか。
それもある、なんて言ったら彼は驚くでしょうか。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするでしょうか。
ふふ、楽しみです。
私が気に入った下着があれば、ですが。
次は三階です。
ここまでくるともう羞恥心はほとんど消えて。
今では好奇心の方が大きく、私は高揚しています。
一つ上の階で満足のいく買い物が出来ただけあって。
この階にも期待が寄せられます。
ここは...。
女性専用のアダルトグッズ売り場でしょうか。
ろーたーやばいぶといったポップが見えます。
私は興味本位でばいぶのコーナーへ。
人気ナンバーワンの試供品が置いてあります。
といっても、手で触るだけのようですが。
こ、これが...実物の...。
男性のそれとは違いますが、良い造りをしています。
研究に研究を重ねたのでしょう。
挿入したら、ビデオの中のように...。
あ、あと。
スイッチを入れると...。
ぶ、ぶ、ぶ、と大きな振動を始めました。
比較的ゆっくりですが、それもまた味が出ています。
焦らすため、でしょうか。
こんなことをされたら...。
スイッチを切り替えます。
次の切り替えは先ほどの振動に加えて。
全長十五センチ程度はあるそれが動き始めました。
ぐるぐると中を掻き回すような動きです。
彼に指でされた時を思い出してしまいます。
でも、指よりもずっと太くて大きくて。
それでいて、この振動は...。
「ん...」
想像しただけでも、全身に電流が走ります。
あぁ...気持ち良さそう...。
これ、買っちゃおうかな...。
で、でも。
その前に、もう一つのスイッチを...。
とてもとても、今晩が更に楽しみになりました。
入店する前とは全く違う期待が高まります。
三階で購入した数は六つ。
購入するのは少し恥ずかしかったけれど。
それは一時のもので、良い買い物をしたと思えます。
続く二階では、男性専用の商品が並んでいました。
あ、これが...ろーしょん?
潤滑剤として使う...だっけ。
でも彼は要らないって言っていたような...。
わ、私のが多い...から。
う、うん。
ろーしょんは買わなくてもいいかな。
次は、おなほーる...?
私は目に付いた商品を一つ、手に取ります。
背面の説明欄を読むと、すぐに理解できました。
つまり女性にとってのばいぶのようなもの。
自分でする用の商品のようです。
き、気持ちよくなれるように出来てるのかな。
彼のために買っておいてあげた方が...。
ううん。
私が、そ、その役割というか...。
私がしてあげるんだから、要らないよね。
...あ、でも買っちゃった。
私だけ有るのはちょっと不公平...かな。
うぅ...でも私がしてあげたいし...。
だ、ダメ!
ぜーーったい、私がしてあげる!
道具に頼らず、私が...するから。
それでいい...よね。
私がお店から出ると、彼はもう待っていました。
スマホに夢中で、私には気付いていない様子。
でも、なんだか話しかけ辛いです。
いっぱい買ったの、引かれたりしないよね...?
見限られちゃったりしたら、私...。
「ね、ねぇ...」
「ん。...どうして涙目なんだ?」
「な、泣いてない!」
眼鏡を避けて、目元を拭います。
私は、ちょっとだけ泣いていたようです。
想像しただけでも、涙を流しそうになってしまう。
本当に、本当に。
私は彼のことを愛しているようです。
「ま、買い物はできたようだな」
コクリ、と私は頷きます。
「じゃあまずは...夕飯からだな」
「あ、もうそんな時間だね」
気が付けば夜も更けてくる手前です。
また、若干の空腹も感じられます。
私は彼の提案に賛成しました。
「移動も面倒だし、ホテルの近くで食べるか」
「近くにあるの?」
「飯屋なんていくらでもあるだろう」
あまりにも無計画で大雑把ですが。
私は自然と、彼に着いて行くのが普通になりました。
頼り甲斐のある彼に、私は惚れたのかもしれません。
「えぇ!? ちょ、ちょっと...!」
目的のホテルの最寄り駅へと向かう前に。
私たちは豊かな自然に囲まれた公園を見つけました。
彼がトイレに行きたいと言ったので。
私も近くまで行って待機しようと思ったら。
男性用のお手洗いの奥の個室へと連れ込まれました。
「せ、狭...じゃなくって、ど、どういうこと?」
「あんまり声を出しすぎるとバレるかもだぞ」
「ぅ...」
それだけは避けなくてはなりません。
痴女扱いされるのは心外で、憤りよりも悲しいです。
「買った物を出せ」
囁く声を聞き入れて、鞄の中から袋を取り出します。
真っ黒な袋を開け、彼は中を一瞬だけ見渡し。
「お前はいやらしい女だな、ほんと」
一つの商品を取り出し、袋を閉じました。
私はその袋を受け取り、改めて鞄に入れます。
「あ、それ...」
彼の目当ての物はリモコン式のろーたーでした。
これをいったい、どうするつもりでしょうか。
「今からホテルまで、これを付けろ」
「ぇ......」
私は息を呑み、固まってしまいます。
「どうせ...ほら、もう濡らしてるじゃないか」
スカートの中に手を入れられ、割れ目を沿われます。
「ん...」
「ちょうど黒のタイツだしな。固定も容易だろう」
と言って、取り掛かりました。
ろーたーが動くことを確認してから。
下着とタイツの間に小さめな球体を挟みます。
また、球体に有線で繋がったバッテリーも挟みます。
左の太もも辺りに触れる違和感は拭えません。
「まぁこんなところか」
カチッ、という音がしました。
少し遅れて振動する球体。
それに、その場所は...。
「んっ..んぁ...っ!」
「そこ、なんて言ったか覚えてるか?」
「ん...はぁ...く、くり...とりす...ぅ」
「正解だ。よく出来たな」
ろーたーは止められ、私は頭を撫でられます。
「これからホテルまで俺のタイミングで動くからな。
「ん...ずるい、よ...」
「でも嫌いじゃないだろ?」
まさか首を横にも振れず。
私は、首を縦に振りました。
今回は短いですがここまでです。
次回から、本番となります。
感想等、よろしくお願いいたします。
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