【モバマス】P「雨に唄えば」 (46)
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未熟者ゆえ、人称等でミスがあるかもしれません。
どうかご了承ください。
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私のプロデューサーは、いつも口ずさんでいる歌がある。
聞き覚えはない上に、英歌詞をやけにネイティヴに歌うものだからフレーズも聞き取れず、それがなんという歌なのか調べることもできない。
ただ、なんとなく耳に残る音楽だった。
その日も、彼は私が来ていることに気づくまで、例の曲を小声で気持ちよさそうに歌っていた。
「~~♪~♪…………、?……あ、比奈。来てたのか」
「はい、今しがた」
「来た時は挨拶してくれな。できるだけ」
「しようかとは思ったんスけど。気分良さそうに歌ってたんで憚られまして」
ほんの少しだけ、プロデューサーの顔が赤くなる。周りを気にせず歌っているわけではないようで、他に誰かがいるとプロデューサーは歌うのをやめる。
あまり気配なんかに敏感ではないらしく、入社して間もない私でも、耳に残るぐらいに何度も歌っているところに遭遇していた。
「そっか。ま、次からは気にしなくていいからな」
「了解っス」
二十歳になった私が入社したのは、多くのアイドルを擁する芸能プロダクション。業界でもそれなりに名の知れているところで、流行りに疎い私でも名前ぐらいは知っていた。
芸能プロダクション、という言葉に笑いがこみ上げそうになる。
私は何も、事務員として雇われたわけではない。
よって、スーツを着ているわけでもない。私服に袖を通している。
アイドルたちが多くいるだけあって、やはり身だしなみには気を使う人が多いのだろう。
事務所の、今私とプロデューサーがいる休憩スペースには、姿見が置いてあった。
鏡の中に映る自分と目があって、今度こそ小さく笑ってしまった。
ボサボサの髪。
野暮ったいメガネ。
化粧っ気もない顔。
しまいには、上下揃った緑の芋ジャージだ。
こんな私を、アイドルに、とは。
笑みの意味は、ほとんど自嘲だった。
「……どうかしたか?」
と、突然吹き出した私に、プロデューサーが不思議そうな目を向けた。
「いえ、何も。……で、今日はどういう予定なんスか?」
「……? ……ま、とりあえず今日もレッスンだな。やっぱ基礎は大事だし」
「そうっスね。……えっと、いつもんとこでスよね?」
「ああ。今日時間あるし、送っていこうか」
「え、いやいや、イイっスよ。そんな遠いわけじゃありませんし。時間あるって言っても、やることはたくさんあるんでしょ?」
「……まあ、そりゃあ」
「ならヘーキっス。……んじゃ、行ってきまスね」
「わかった。じゃ、気をつけてな」
「はーい」
軽く返事をして、事務所から出て行く。
入ったばかりの私は、基本的に事務所には用がない。自宅から事務所を経由して、レッスン場へ。それを繰り返す毎日。
予定のある日は基本としてまず事務所に顔を出すこと、というルールがなければ、特に事務所へ行く意味もなかった。
我ながら、どうして誘いに乗ったんだろうか。
こんな身なりをしている私を、あの鼻唄プロデューサーはスカウトしてきた。
『アイドルにならないか』。
そう言って名刺を渡してきた彼。
冗談か詐欺か、とまず思った。
スカウトされたその時も、私は今と同じ格好をしていた。
ジャージを着て都会の街中を歩いていれば自衛隊からスカウトされる、なんて噂が地元であったけれど、私はまさかまさかのアイドルだ。
見るからに日陰者で、表舞台なんてものはずいぶん遠かった私。
家に帰って、持って帰った名刺を調べた。そうしたら、詐欺ではなさそうだということがわかった。
それで、一気に悩んでしまった。
もしそんなことになっても、当然私には無理だと突っぱねるに決まってる、と。その日まで、私はそう思っていた。
だけど、いざ手を差し伸べられてしまうと、それを握りたくなってしまった。
輝くような愛らしい女の子になりたい。
とうの昔に捨て去っただろうと思い込んでいた乙女な私は、まだ心にしっかりと残っていたらしくて。
気づけば名刺に記された電話番号を、ゆっくりとスマートフォンに打ち込んでいた。
私は、女性としての私を諦めたくなかったんだ。
スカウトされたからには、私にも何か輝くものがあるのかもしれない。
しかし、そんな淡い期待は、入社してすぐに木っ端のように砕けてしまった。
ダンスレッスン。
ボーカルレッスン。
ビジュアルレッスン。
どれ一つとして、満足にはこなせなかった。
当然だ。
ほぼ引きこもりのような生活。体力はない。
たまのカラオケや風呂場でアニソンを歌う程度。歌唱力もない。
人と接することも少ない。表現力だってない。
熱心に付き合ってくれるトレーナーさん曰く徐々に良くはなっているらしいが、まだまだ使い物にはならないだろう。
同僚の存在も、私の期待を壊すのに一役買った。
入社してから出会った女の子たちは、みんな。
可愛い。愛くるしい。綺麗。美しい。
絵に描いたように眩しい存在だった。
これぞまさにアイドル、とでも言うように。
それでも私がすぐに事務所を辞めなかったのは、スカウトされたという事実に基づくささやかな自信と、もしかしたら自分も同僚たちのようになれるかも、という色の薄い希望。
それから、レッスンをしているだけでも生活手当が出る、という浅ましい事情があったからだ。
たどり着いたレッスン場のドアを押し開ける。
今日はダンスレッスンの日だ。
「……あ、来ましたね。おはようございます、荒木さん」
中に立っていたのは、見知らぬ女性だった。
いつも担当してくれていたトレーナーさんじゃない。
「……あれ?……えっと、おはよう、ございます。……あれ?」
ぽりぽり、と後頭部を荒らす。
「……あ、もしかして聞いてないですか?今日からは担当が私になります。よろしくお願いしますね」
「あ、そうだったんスか。よろしくお願いしまス」
「はい。妹から聞いてます、見込みがある人だ、って。ビシバシいかせてもらいますね?」
「あ、妹さんなんスか。通りで似てる……って、え?……あの、それは人違いじゃ」
「ないですよ。じゃ、アップ始めましょうか」
にっこり、と笑う姉トレーナーさん。
ビシバシという言葉は伊達じゃなかった。
たぶん、明日は初レッスンの時と同じぐらいの筋肉痛になる。
レッスンを終え、ヘトヘトになった体を引きずって事務所に戻った。
ドアを開けると、
「おかえりなさい!」
という声が飛んでくる。
迎えてくれたのは、同僚である島村卯月ちゃんと三村かな子ちゃんだった。
「……どうも。ただいまっス」
「わっ、だいぶお疲れみたいですね。大丈夫ですか?」
「甘いもの、食べますか?クッキー焼いてきたんです!」
卯月ちゃんが開けてくれたソファのスペースに腰を下ろした。かな子ちゃんが差し出しているクッキーに手を伸ばす。
「ありがとうございまス、いただくっス。……いや、もうヘトヘトでスね」
「厳しかったんですか?今日のレッスンは」
「普段のでも全然しんどかったのに、なんか今日から担当さん変わったみたいで。よりキツくなったっス」
「あー……トレーナーさんが変わっちゃったんですね」
苦笑いをしながら、卯月ちゃんがそう言った。
「そうなんスよ。……あ、トレーナーさんって姉妹なんでスってね。今日からお姉さんの方でした。いやもうキツイのなんのって。……さすが姉ってとこでスかね」
「……えーっと」
「言いづらいんですけど、比奈さん」
私の言葉を聞いて、二人揃ってさらに濃い苦笑いを浮かべる。
クッキーをかじった。
うん、とてもおいしい。
「……? なんスか?」
「たぶんですけど、今日比奈さんを担当したのは三女の方ですよ」
「トレーナーさん一家は四姉妹なんです。……で、全員トレーナーをやってまして」
「……え?」
ということは。
まだ次女と長女が残っている、と?
「あと二回進化するってことスか……?」
「い、言い方がちょっと……」
二人が遠慮がちに言う。
もし長女のレッスンを受けたら、私は生きて帰れないんじゃないだろうか。冗談は抜きで、だ。
「ええ、と、あなたは……」
「あ、急にごめんなさい!聞き覚えのあるメロディが聞こえたもので、つい……」
あはは、と目の前の少女は苦笑しながら頬をかく。
パッと見では気づかなかったが、見覚えがあった。
このプロダクションで別のプロデューサーの下、活躍しているアイドルだ。
「安部さん……でスよね」
「あっ、ご存知でしたか」
「そりゃ知ってまス。有名じゃないでスか」
そう、何かと有名なアイドルだ。
若々しい見た目に反してヤケに『おばあちゃんの知恵袋』的な知識が豊富だったり、ウサミン星なる星からやってきたと公言したり、永遠の十七歳を自称したりと、話題には事欠かない。
ともあれ、人気アイドルであることは間違いない。お茶の間の知名度も高いから、ネットで親しんでなくてもたぶん名前ぐらいは知っていただろう。
「恐縮です……」
と照れたように言う彼女は、やはり可愛らしい。
「そちらは、荒木比奈さん、ですよね?」
と言われ、目を丸くする。
私の名前が知られているわけがないのに。
「……そうっスけど、どうして知ってるんでス?」
「だって、同じプロダクションの同僚じゃないですか!何回かお見かけしてましたし、知ってますよー」
「そうでしたか。それはどうもでス」
「いえいえ、そんな。……ミュージカルとか、お好きなんですか?」
「え?……いえ、別にそんなことはないスけど」
「あれ?そうなんですか。でも、さっきの鼻唄はミュージカルのやつですよね?」
そう言うと、安部さんは目を閉じて思い出すように歌い始めた。
「I'm singing in the rain , just singing in the rainーー……♪ って。なんでしたっけ、タイトルど忘れしちゃいましたけど」
「あー、それっスね。……いや、ウチのプロデューサーがよく歌ってまして。それで、ちょっと思い出してつい、って感じで」
「そうだったんですか。昔観たミュージカル映画があって、それの主題歌だったんですよ!」
「タイトルがですね……あ、そう!」
安部さんは思い出したようにパン、と手を打ち、
「『雨に唄えば』です!」
そう教えてくれた。
家に帰ってから自宅のPCで検索したところ、プロデューサーの歌っていた曲はズバリ安部さんから教えてもらったそれだった。
(随分古い曲が好きなんスね、プロデューサー……てか、安部さん『昔観た』ってこれ……えぇー?)
いや、まあおそらくはレンタルショップでDVDを借りて、ということなのだろうが。
あの人が言うと、もしかしたら、という気持ちにならなくもない。
(雨の中をただ歌って踊って、なんて幸せ、なんて素晴らしい、嬉しさがこみ上げる……っスか)
PCに映る文字を流し読みしながら、ぼんやりと思う。
(私がこんな気分になれる日は、来るんスかね?)
ドナルド・オコナーいいよね期待
>>16
タイトルとして有名なミュージカルの題を借りましたが、話の筋にそこまで大きくは関わらないです。紛らわしくてゴメンナサイ。
入社してからおよそ三ヶ月。プロデューサーのご機嫌な歌のタイトルが判明してから数週間が経った。
その間も、私は変わらずレッスンに励む日々。
仕事の話はまるでない。
先輩アイドルたちの話を聞く限り、大抵の子たちは入社から三ヶ月以内に何かしらの仕事でデビューを果たすらしい。
(こりゃーダメだったってことなんスかねえ……)
だから、そう思ってしまったのも無理はないだろう。
若干の憂鬱を抱えつつ、それでも私は事務所に向かった。
事務所の扉を開けると、『雨に唄えば』が聞こえてきた。プロデューサーのデスクに顔を出すと、ミュージックは止まる。
「お、比奈。おはよう」
「おはようございまス。今日もレッスンっスよね?」
「ああ」
「うっス。じゃあ行ってきまスね」
「あ、ちょっと待て」
「はい?」
振り返ると、プロデューサーは神妙そうな顔つきをこちらに向けていた。
「……戻ってきたら、ちょっと残ってくれな。話があるんだ」
「えー、と。……了解っス」
(最後通告ってヤツっスかねえ……)
レッスン場への道すがら、そんなことをつれづれと思った。
到着すると、見慣れた三女のトレーナーが待っている。死ぬほどキツいと思っていたレッスンも、今では少しばかりの余裕を残して終えることができるようになった。
だけど、結局。
(……最終進化どころか、三段階目にもたどり着けなかったっスね)
ステップを踏む足に力が入る。
ちょっと強いです、もっと軽やかに、という指示が聞こえた。
(何がダメだったんスかね。レッスンは真面目に受けたし、自主練も自分なりにやった)
練習の成果あって、私は以前よりもはるかに自分の体を思うように扱えるようになった。
ダンッ、という強い音が響く。私が足を踏み下ろした音だ。
(やっぱ、無理だったってことなんでしょうね。私みたいな日陰者には。はは、そりゃそうっス。アイドルなんかとは、対極の存在だったんスから)
強いですよ、力を抜いて。
そんな指示は、耳には届いても、脳で処理できなかった。
『アイドルにならないか』。
そう言われた三ヶ月前を思い出す。
斜に構えて、自分じゃ無理だ、なんて思ってても。
それでもやっぱり、嬉しかったんだ、私は。
自分も輝けるんじゃないかって。
もしかしたらって。
思った。
でも、結局こうなるくらいなら。
(はじめっから、期待させんなって話っスよ……。…………クソっ)
ほんの少し、視界がにじむ。
汗が目に入ったんだろう。
(……………………悔しいッ……!!!)
その日のレッスンでは、ちょっとしたお小言をもらってしまった。
「……力が入る気持ちはわかりますけど、ちゃんと集中して。指示は聞いてくださいね」
「……ハイ。……スミマセンっス」
別に、気にする必要もないんだろう。
その事実が物悲しい。
重い足取りをなんとか動かして、事務所まで帰った。脚が重いのは、身体的な原因か、精神的な原因か。どっちだろう。どっちもかな。
事務所の前まで戻ると、すれ違いで卯月ちゃんが出てきた。
「あっ、比奈さん!お疲れ様です!」
「……お疲れっス。お帰りっスか?」
「いえ、今からまだお仕事の打ち合わせがあって……比奈さんはアガリですか?」
「や、……プロデューサーにこの後残れって言われてるんスよ」
「あっ、そうなんですね。えへへ、頑張ってくださいね!」
「……どうもっス。そちらも、頑張って」
眩しい笑顔を見せて、卯月ちゃんは走って行った。
『頑張ってください』か。
今の私には、皮肉ならこれほどキツいものもない。
でも、あの子はなんの裏もなく、そう言ったんだろうな。それがわかるくらいには親しくなった。
事務所に入っても、『雨に唄えば』は聞こえなかった。代わりに、真面目そうなトーンで話すプロデューサーの声。
チラリとデスクの方を覗くと、別の部署のプロデューサーらしき人と打ち合わせをしていた。
(……待ちまスか。私が邪魔するのも、ね)
誰もいない休憩スペースに戻り、ソファに腰掛けた。静かな室内では、プロデューサーたちの声が楽に聞こえる。
どうも、近い時期に行われるライブの話をしているらしい。
(……酷いイジメっスねコレ)
渇いた笑いが漏れる。
気を紛らわそう、とテーブルに置きっ放しになっている雑誌に手を伸ばした。漫画雑誌と、ファッション雑誌。伸ばした手が止まって揺れる。
(……まさか、この二択で私が迷う日が来るなんて。三ヶ月前ならありえないないなあ)
結局、私が取ったのは漫画雑誌だったけれど。
一時間ほど待つと、プロデューサーたちの会話は終わった。
顔に特に覚えのないスーツ姿の男性が事務所から出て行く。
改めてデスクに顔を出し、プロデューサーに声をかける。
「お疲れ様っス」
「おう、比奈。ナイスタイミングだな」
「や、たっぷり一時間ぐらい待ったんスけどね」
「えっ、マジか。すまん。言ってくれたらよかったのに」
「邪魔すんのもどうかと思いまして。……で、どーいう要件でス?」
「ああ、ちょっと待ってな。……あ、そこ座ってくれ」
促された椅子に腰掛けた。
プロデューサーは机の引き出しをごそごそと漁っている。色んな書類が出てくるが、お目当てのものは中々見つからないらしい。
机の上が散らかるくらいにものを出した後、ようやく探し物が見つかったようで、改めてプロデューサーは私に向き直った。
「よし。……とりあえず、三ヶ月ぐらいか。お疲れ様だったな。どうだった?」
「どう……っスか。……そうでスね、キツかったっスけど、なんだかんだ楽しかったっスよ。色んな人たちと会って、歌ったり、踊ったり。いままでに経験のないことでした」
そう。
楽しかった。
だからこそ、今は悔しいし、苦しい。
「そうかそうか。それは何よりだ。……で、だな。ちょっと言わないといけないことがあって」
「……なんスか?」
「ちょっと言いにくいんだけどな。とりあえず先にコレ、渡しとく」
手渡された封筒を受け取った。
「……遠慮なく言ってくれていいっスよ」
そっちの方が、焦らされるよりも楽だ。
「そうか?じゃあ早速」
そうプロデューサーが言うなり、
ーーパァン!!!
という強烈な炸裂音が鳴った。
驚きで腰が一瞬浮かぶ。
目を白黒させている私とは対照的に、プロデューサーはいつも通りの真剣な顔で口を開いた。その手には、小さなクラッカーを持っている。
「おめでとう。初仕事が決まったぞ」
「……………………は?」
「ん、聞こえなかったか?すまん、クラッカーのせいか。初仕事が決まったんだ。お前の。ライブだぞ」
「……………………え?」
「とりあえずその封筒開けてみ。資料入ってるから」
「……………………えー、と」
「固まり過ぎだろ。そんなにビックリしたか?クラッカーはやり過ぎだったか、もしかして」
「……………………仕事?」
「だからそうだって」
「…………え、クビじゃないんスか?」
「クビ!?誰が!……え、俺がか!?」
「……や、私が」
「なんでだよ。んなわけあるか」
「ええーー……?」
「何にビックリしてるんだねお前さんは一体」
「……なるほどな」
私の思うところを一通り説明すると、真剣な顔つきだったプロデューサーは小さく呟いて、
「……すまん」
と深く頭を下げた。
「……や、謝られるようなことじゃ。私の早とちりでスし……」
「いや、そんな不安にさせてるとは思ってなかった。ちゃんと事前に説明すべきだった。ごめん」
「……その、とりあえず顔上げて欲しいっス」
「うん。……そうか。そんな風に思われても仕方ないか。ごめんな、ほんとに」
謝罪を言い終わると、プロデューサーは私の扱いについて説明してくれた。
三ヶ月間どっぷりレッスン漬けにしたのは、私の実力不足があったから、だけではない。
自分に自信がなさそうだった私に、確かな練習によって自信をつけさせるため。
仕事の話をまるでしなかったのは、変にプレッシャーを与えないため。
トレーナーさん進化過程が三女止まりだったのも、当然らしい。長女と次女のトレーナーさんは各所で多忙だから、直接レッスンに携わることは少ないそうだ。
ついでに、仕事の件が言い出しにくいと言ったのは、取った仕事が思っていたよりも小さかったから、だと。
「…………そーだったんスか」
「そうだったんだよ。ライブの話も、もっと早くに言うべきだったな」
「結構前から決まってたんスか?」
「ほら、トレーナーさん変わったときあるだろ。あのときぐらいに」
「めっちゃ前じゃないスか」
「うん。でも、正式に決まったのは今日なんだぞ。これも本当」
「そうスか」
「うん。……やれそうか?」
やれそうか。
どうだろう。自信をつけられるようにってレッスンさせてもらっていたようだけれど、ここで大丈夫だと断言できるほどのものは身についてない。
でも、私の心には、さっきまではなかった感情があった。
私でも、アイドルをやっていいんだと。
「……できるかは、わかんないスけど」
そう言ってもらえたのが、本当に嬉しい。
「やりまス。……骨は、拾ってくださいね」
「死なせないから平気だぞ」
そう言って、プロデューサーはにへらと笑った。
気の持ちようで日々の送り方は変わる。
そんな言葉は昔から何度も聞いていたけれど、ここまで身にしみて感じるのは初めてだ。
我ながら現金だな、とも思う。
力を抜いているつもりはなかったレッスンだって、もっと頑張れるようになった。
「腕、下がってますよ!キツくてもしっかり上げて!」
「はい!」
「顔が固いです!笑って!」
「……っ、はい!」
息が切れる。
しんどいし、溜まる疲れだって半端なものじゃない。
それでも、心は晴れやかだった。
初仕事のライブまでの一月。
時間は矢のように過ぎていく。
光陰矢の如しとはよく言ったものだと思う。
(残念っスけど、描いてる余裕がないっス。余裕できるまではガマンっスね)
趣味の漫画執筆も、少し抑えることにした。
勢いが乗るとついつい睡眠時間を削ったりしがちだ。レッスンに身が入らなくなるし、ただでさえ自信のない見た目により自信が持てなくなるおそれもある。
ライブ、と大仰に言ってもそれはデビューイベントらしくこぢんまりとしたもので、場所は近隣のショッピングモールの屋上。
そこに特設ステージを作って執り行うらしい。
楽曲も、私の持ち歌なんて当然ない。
だから、先輩たちの歌を借りて披露する。
予定では三曲プラスミニMC。
振り付けのアドバイスなんかのために、卯月ちゃんやかな子ちゃんがわざわざレッスンに付き合ってくれたりもした。
忙しい中、本当に頭が下がる思いだった。
私のプロデューサーの担当外からは、なぜか安部さんもアドバイスに来てくれた。
「合縁奇縁と言いますからね!」
とキリッとした顔で言っていたけれど、安部さん、今時の女子高生は合縁奇縁なんて言葉を使うんですか。
「えっと、それはほら!私、国語得意なので!」
「母国語じゃないでしょうに、凄いっス」
「えっ?いや、普通に日本語は母国語……あっ、違います!!そうでしょう!必死に覚えたんですよ、日本語!!」
「頭が下がるっスね。ところで安部さん、『雨に唄えば』を昔観たって言ってましたけど、あれ六十年以上前の映画だったっスよ……?」
「ちょっ、それは違いますよ!?DVDで観たってだけです!!」
「『それは』?」
「……この話は終わりです!」
あれやこれやとしている間に、ついに運命のデビューまでは一週間を切った。
歌とダンスの仕上がりは、自分では上々。
プロデューサーとトレーナーさんの評価はまずまず。
MCはその場の流れでなるようにしかならないとして、一つ心配事があった。
「……やっぱ、見た目に自信が持てないっス」
不安はないか、と事務所でプロデューサーに尋ねられ、そう答えた。
メガネをおしゃれなものに換えようか、ボサボサの髪にせめてストレートパーマでもかけようか、と提案してみたことがあるが、何もしなくていいとプロデューサーは首を横に振った。
「うむ。言うと思った」
「……ホントにどうもしなくてよかったんスか?」
「うん、いい。いいか、比奈」
「はい?」
「それは俺の仕事だ。シンデレラが自分で魔法使っちゃ、興ざめだろ?」
そう言って、プロデューサーはゴツいメイクボックスを取り出した。
男性には不似合いな化粧箱にツッコむ間も無く、プロデューサーは私のメガネを外して色々といじりだした。
「動くなよ。ちょっと我慢してろ」
その手つきに淀みはない。
ずいぶん手馴れている。少なくとも、私が自分でやるよりは数段手際が良かった。
かかった時間は三十分ほど。
されるがままにされていた私に、
「よし、完成」
という達成感溢れるプロデューサーの呟きが聞こえた。
手渡された手鏡を覗き込む。
「どうだ?」
「…………すごい。これが本当の私……?
…………なーんてことは言わないっスけど……」
「あれ、言わないのか」
「漫画じゃないんスから。いや、でも」
パチクリと瞬きをして、もう一度そこに映る自分を見た。
「……変われば、変わるもんなんスね。…………アイドルみたいっス」
「まあ、アイドルだからな。お前は」
うんうん、と頷き、プロデューサーは不器用にウインクした。
「俺の目は確かだったろう。自信、持てそうか?」
「……持ちまス。ちゃんと本番も、これやってくださいね」
「任せろ」
目立つ心配事を拭い取ってもらった。
あとは本番、そこでミスのないように全力を尽くすだけ。
そうやって意気込む私に、新しい不安が舞い込んだ。
「……雨っぽいな。当日」
プロデューサーが呟く。
どうもそうらしく、天気予報では、私のライブの予定日とその前後一日が雨模様。
「……私のデビューイベントの時も、そういえば雨でしたね」
と、今度は卯月ちゃんが呟いた。
それを聞いたかな子ちゃんも反応を見せる。
「卯月ちゃんも?……私も、確か雨だったような気がするよ」
「……そういえば、俺が担当する子のデビュー日は雨が多い。気がしなくもない」
「……プロデューサー、雨男なんじゃないスか?」
「いや待て、でも卯月の時もかな子の時も、天気は悪かったけど雨はギリギリ保ったはずだぞ」
「えーっと、……そうだったかな?卯月ちゃん」
「……そんな気も、しますね。言われてみれば」
「うん。雨の予報だったけど、雨は降らなかった。つまり俺は究極の晴れ男なのかもしれない」
「……だといいんスけど」
まあ、天気の問題はどう足掻いてもどうにもならない。
プロデューサーの究極の晴れ男が発揮されるのを祈るばかりだ。
ライブの前日を迎えた日、私は事務所に顔を出した。例によって慣れ親しんだ歌が聞こえる。
「プロデューサー。お疲れ様っス」
「あ、お疲れ様。……微妙だなあ、天気」
空はどんより黒いが、まだ雫は落ちてきていない。
雨が一日二日ずれ込むかも、という曖昧な予報を昨日聞いた。
「っスね。保つといいんスけど」
「な。……しかし、ホントにこーいうこと多いな、俺」
「……毎日雨の歌ばっかり歌ってるからじゃないスか?」
「あ、俺が歌ってる曲知ってたのか」
「まあ、一応。歌うの『晴れ色』とかに変えてみたらどうスか?」
「いや、それはできない。『晴れ色』は好きだしいい曲だけど、この歌は特別だからな」
「……特別」
「ああ。俺がプロデューサーになった理由なんだ」
「……そうなんスか?」
「うん。……観たことあるか?『雨に唄えば』のミュージカル」
「や、ないっス」
「そうか。俺はあるんだけど、これが凄く面白かったんだ。めちゃくちゃ影響受けた」
「……だったら俳優とか目指すんじゃ?」
「それは現実的じゃないと思った」
特に感慨もなさそうに、プロデューサーはさらりと言った。
「……俺がその映画で一番好きなシーンは、土砂降りの雨の中、主演がすごい楽しそうにダンスをしてるとこなんだ。あんなに楽しそうにしてる人って、その時まで俺見たことなくてな」
思い出を振り返るように、プロデューサーは目を閉じた。
「で、それを観たちょっと後に、とあるアイドルのライブを生で見る機会があってさ。それがまためちゃくちゃ楽しそうに踊ってた。……で、被ったんだよな、その二つが」
「それで、アイドル関係の仕事にってなったんスか」
「そういうことだな。安直だって思われるかもしれないけど、俺はここを選んでよかったと思ってるぞ」
プロデューサーは再び目を開けて、真っ直ぐに私を見つめた。
「楽しそうにしてる奴見る方が楽しいだろ。この仕事は、そーいう奴たくさん見れるからな」
「……そうスか。ま、楽しんでみまスよ。……楽しむような余裕があれば、っスけどね。自信はあんまないっス」
「うん。楽しむのが一番大事だと思うぞ俺は。なんだかんだ言ってもな」
そして、その日は、ついにやってきた。
色んな人たちに支えてもらって、助けてもらって。
とうとう私はアイドルとしてデビューする日を迎えた。
一晩でこしらえられた簡易ステージ脇にある小さなテントの中で、私はその時を待っていた。
プロデューサーにメイクをバッチリしてもらって、私用に作ってもらったアイドル衣装を着て。
準備は万端。
胸が張り裂けそうなぐらいに心臓が脈打っているし、正直緊張し過ぎて身体が震えそうだった。
だけど、本当に嬉しかった。
今からアイドルとして、その舞台に立つことができるということが。
幸い、雨はまだ降っていない。
ファンなんて皆無のはずだけれど、それなりに見に来てくれているお客さんもいる。
「大丈夫か、比奈」
プロデューサーにそう声をかけられる。
「……わかんないっス」
「おい」
「……でも、覚悟は決まってるっスから。ちゃんと見ててくださいね」
「……ならよし」
「そろそろ、始めちゃっていいっすかね?」
と、スタッフさんがテントに顔を入れてたずねてきた。
「はい、OKです。……行くぞ、比奈」
「はいっ」
「よし、じゃあアナウンスを……って、あれ、うわー……」
スタッフさんが顔をしかめる。
その理由はすぐにわかった。
サーーー……という軽やかな音が耳に届いた。
「……降ってきたのか。……マジか…………」
「……みたい、っスね」
ひょこっとテントから顔を出した。
土砂降りとまでは言わないが、傘がないと外を歩くのに困る程度の雨が降っている。
「……くそ、あとちょっとだったのに。もうちょっとぐらい頑張ってくれよ」
誰に対して言っているわけでもない愚痴が、プロデューサーの口から漏れる。
さっき来たスタッフさんとはまた別の人が、テントの外から声をかけてきた。
「すみません、ちょっといいですかね?責任者の方、いらっしゃいます?」
「ああ、私です」
と言って、プロデューサーが出て行った。
たぶん、ライブを中止にするかどうかの話をするんだろう。空は依然として黒い。もっと雨が強くなる可能性だってある。
客席の方を見ると、さっきまでそれなりにいたギャラリーはすっかり減ってしまっていた。
ほんの数人が、まばらに傘をさしながらステージの方を見て佇んでいる。
そのうちの三人は、先輩アイドルだ。
卯月ちゃん、かな子ちゃん、菜々ちゃん。
一つの傘に縮こまりながら入って、不安そうに話しているみたいだ。
せっかくのオフの日に、わざわざ時間を作って来てくれた。
何度もレッスンを見てもらった。
手伝ってもらった。
曲を借りた。
アドバイスをもらった。
プロデューサーたちの方を見た。
揃ってしかめ面で首を振っている。
ここまできて、結末が、中止なんて結果で終わるなんて。
(……嫌っス!!)
「……プロデューサー!」
「あ……比奈か。あー、その、残念なんだけどな、今日のところは……」
眉をハの字にしながら、プロデューサーは言葉を濁す。
その先は、必要ない。
「嫌っス」
「え?」
「嫌っスよ、中止は」
「ちょっと待て比奈、でもな……」
「ぜんっぜん楽しそうじゃないじゃないスか。プロデューサーも、スタッフさんたちも、ちょーっとだけいるお客さんも」
「…………」
「私だって、全然楽しくないっス。こんなんじゃ。……だから」
プロデューサーからスタッフさんたちの方へ向き直る。
思い切り頭を下げた。
「お願いします!!……やらせてください!!」
反応は、すぐには帰ってこなかった。
雨の音だけが耳に届く中、弛緩したような雰囲気を感じて、おそるおそる顔を上げた。
「……ま、こっちとしてもね。延期されたりするよりは、やっちゃってくれた方がいいんだけどさ。……どうするんすか?プロデューサーさん」
「…………」
スタッフさんにそう言われても、プロデューサーは何も返事をしなかった。ただ考え込むように腕を組んでいる。
プロデューサー、と声をかけようとしたが、それよりも先にプロデューサーが口を開いた。
「……比奈」
「っ、はい」
「……お前は、いいのか?デビューがこんな形で。……ギャラリーはほぼなし、天候はダメ、雨の中じゃパフォーマンスだって落ちるだろ。だいたい、四ヶ月か。ずっと頑張ってきたのに、それの披露がこんな形で、本当にいいのか」
プロデューサーは、やけに重々しくそう言った。
「……考えるまでもないっス。いいに決まってまスよ」
「……ほんの少しっスけど、私のステージを待ってくれてる人がいて。そこには舞台があって、私は準備万端で控えてるんス」
こんなセリフを、私が言うことになるなんて。
思ったことはあっても、実現するなんてちょっと前まであり得なかった。
「だったら、私はちゃんとやり遂げたい。……だって、そうでしょ」
人生は数奇だ。
事実は小説よりも奇だ。
……そんな言葉じゃ、足りないな。
「……私は、アイドルなんスから」
はぁー、と、プロデューサーは大きなため息をついた。それからくるりと体を翻し、スタッフさんたちの方を向いて、ぺこりと頭を下げた。
「……雨の中、申し訳ない。……セッティング、お願いします」
「……了解です」
そう言い残し、スタッフさんたちは散り散りに動き始めてくれた。
屋上にアナウンスが流れる。
『えー、ただいま雨のため、一時開催を見合わせていた屋上でのライブイベントですが、相談の結果、間も無く執り行うことに決定いたしました。……繰り返します……』
「……ありがとうございます、プロデューサー」
「……お礼を言われることじゃない。……比奈」
「はい」
「やるからには、ちゃんと楽しんで、楽しませて、な。わかってるよな?」
「……はいっ!」
依然として降り続ける雨の中、私はステージの上に立っていた。
見晴らしは、別に良くはない。
雨のせいで見通しだって悪い。
アナウンスのおかげで多少人が戻ってきてくれたが、観客は全然少ない。見える景色だって、他の人からしたらイマイチに感じるだろう。
それでも。
四ヶ月間聴き続けた音楽が、ステージ脇のスピーカーから流れ始めた。
頭はクリアだった。
振り付けも歌詞も問題ない。
身体は流れるように動き出した。
今この瞬間が、私にとっては最高のひと時。
卯月ちゃんたちの、ホッとしたような笑顔が見える。
他の観客さんたちは、まだまだ真顔だ。
(ちゃんと、『楽しい』って笑顔になってもらえるように……)
私自身、笑顔で。
レッスンで教えてもらったことは大丈夫、忘れてない。
(……楽しみまス!!)
*
雨の中を、
ただ歌って、踊って。
なんて幸せ。
なんて素晴らしい。
嬉しさがこみ上げるよ。
*
「…………げほっ、こほ。……ぁー……」
全身がだるくて重い。
喉が痛いし、鼻も詰まっていて呼吸さえ苦しい。
「………………さいあくの気分っス……」
「お前がやるって言ったんだぞ。まったく」
「…………わかってまスよぉ……」
ひどい風邪をひいてしまった。
原因はわかりきっている。三十分以上も雨に打たれていれば、こうなるのも無理はない。
デビューイベントの翌日。
私は床に伏せってしまっていた。
自宅にまでわざわざ来てくれたプロデューサーの看病が身に染みる。
「ほれ、りんご食うか?剥いたぞ」
「……剥く前に聞きましょうよ。食べまスけど」
うん、おいしい。
しゃりしゃりとりんごを咀嚼しながら、ベッドの脇にすわるプロデューサーを見る。表情も仕草も、いつもとなんら変わらないけれど。
(呆れられてたり、しないっスかね。自分勝手しちゃいましたし……)
昨日は身体がずぶ濡れだったこともあって、ライブ後は即刻解散の運びとなった。ライブの出来は客観的に見てどうだったか、なんてことも、私の行動をどう思っているのか、なんてことも聞けずじまい。
「……あのー、プロデューサー?」
「なんだ」
「えっと、でスね。……昨日の、ライブ……どうでした?」
たずねると、プロデューサーは、ふん、と一度鼻を鳴らした。
「レッスンの成果が全部出せたとは言い難いな。雨のせいもあるだろうけど、ステップが怪しいとことか結構あったし」
「……う」
「せっかくの歌もノイズが入った。あれも残念」
「…………うぅ」
「お客さんももっと来るはずだったしな。イベント的にはそれも痛い。延期は印象よくはないけど、長い目で見るならそっちにすべきだったと思う。もっと色んな人に知ってもらえるチャンスだった」
「…………」
ぼろくそだ。
こんなに言われるとは思ってなかった。
「まあ、でも」
ちょっとだけ泣きそうになっていると、プロデューサーはそう言って寝ている私の頭の上に手を置いた。
「……楽しそうだったし。楽しかったし、卯月たちも楽しんでた。……だからまあ、成功ってことでいいだろ」
「……ほんとっスか」
「ホントホント。それにな、えーと……これを見ろ」
プロデューサーは、持ち込んで来ていた雑誌を開いて私の目の前に広げた。
「……なんスか?これ」
「アイドル雑誌。ここな、ここ」
プロデューサーが指差したのは、小さな記事。
煽り文は、『雨に唄う 新人アイドル!』
小さいけれど、写真も載っていた。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira133382.png
「……あの、これもしかして私っスか」
「お前以外誰に見えるんだ」
「……とても、普段の私には見えないっス。……いい笑顔、してまスね」
「楽しそうだろ」
「そうっスね。…………凄く。楽しかったです」
「……何よりだな」
おしまい。
ちょっと長くなりましたけど、これで完結です。
あれ、画像貼れてない……?
やり方よくわかってないことはやるもんじゃないですね。
素人なんでお許しくださいませ。
ご覧いただいた方、ありがとうございました。
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