ありす「……なんなんですかこのアニメは」

ありす「コスプレの仕事が来たので、予習のためにと１話を見てみましたが……」

ありす「CGはお粗末、ヒロインは棒読み、展開は何がしたいのかよく分からない」

ありす「本当にこれが大人気アニメなのですか？」

ありす「プロデューサーさんには『先入観なしで見て欲しいから、見終わるまでネットで調べるの禁止』と言われてしまいましたし……うーん」

ありす「ひとまず、続きを見ましょう。タブレットがあればいつでもどこでも見れますから」

『2話「じゃんぐるちほー」』



ありす「あ、カワウソの石遊びは動物番組で見たことあります」

ありす「間に動物解説のコーナーもありますし、かなり動物の生態を調べて作ってるみたいですね」

ありす「ええ……？　バス持って渡ったら橋沈んじゃうんじゃあ……？」

ありす「エンディングは、なんでしょうかこれ。遊園地？雰囲気が内容と全然違うような……。何か意味がありそうです」

『３話「こうざん」』


ありす「なんだかボスが可愛く見えてきました。ふふっ」

ありす「あれ……ひょっとして、面白くなってきてますか？」

ありす「お話がすごく上手いですね。トキとアルパカの悩みを一気に解決しました。すごいです」

ありす「あの、えと、バスに轢かれたのに笑ってていいんですか……？」

ありす「CGの稚拙さにも慣れてきましたし、雰囲気といいますか、このノリが少しわかってきました」

ありす「それにしても、アライさん達は何が目的なんでしょう？」

『4話「さばくちほー」』


ありす「バイパス……？　急に文明のレベルが上がったというかなんだか雰囲気が怖いんですけど」

ありす「ツチノコ、って。実在の動物じゃなくてもいいんですか」

ありす「結局、セルリアンとは一体何なんでしょう。最近の流行りで考えたら、元々はフレンズや人間だった、ということもあり得そうですね」

ありす「ボスから聞こえる内容が不穏すぎるのですが……。かつてここには人間がいたけど、今はいない……？」

ありす「『絶滅』！？　え！？　え！？」

ありす「……」

ありす「……なんだか上手く乗せられてるようなのが納得いきませんが、とりあえず次を見ましょう」

『5話「こはん」』


ありす「ふふっ。プレーリーさんも、ビーバーさんも可愛いですね」

ありす「わ……いい話にまとまりました。出てくる皆さんがいい人ばかりなので、見てて安心します」

ありす「台詞で何度か出てくる『博士』というのが気になります。ひょっとして、博士は私がコスプレするミミズクでしょうか。ミミズクとフクロウは生物学的には同じで、フクロウは知恵の象徴とも言われていますし」

ありす「む……またいいところで終わりますね」

『6話「へいげん」』


ありす「かばんちゃん、あんなに『食べないでください』って言い続けてたのに……かばんちゃんの中で、サーバルちゃんは大切な存在になったんですね」

ありす「なるほど。わかってきました。この、一切緊張感を感じない作風を好む人に人気なんですね」

ありす「『ヒト』……！？　って、ここで終わるんですか！？」

ありす「うぅ……悔しいですが、引きが上手いです」

『7話「じゃぱりとしょかん」』


ありす「これは簡単です。ラクダのコブには水ではなく脂肪が入っているんです」

ありす「あっ！　ミミズク！」

ありす「やっと出てきました！　目のくりくりした感じがとても特徴を捉えていて可愛いですね」

ありす「料理でしたら、私がいちごのフルコースを振る舞ってあげますよ」

ありす「なんとなくここ、火というより火を使いこなすかばんちゃんを怖がっているようにも見えてしまいます」

ありす「結局食べてるじゃないですか！」

ありす「はい。知ってました。かばんちゃんは『ヒト』です」

ありす「絶滅！？　やっぱりここに人はもういない……？　じゃあ、かばんちゃんは何者……？」

ありす「アイドル……？　この世界にもアイドルという概念があるんですね」

ありす「この首の動きは、フクロウの首の動きの再現でしょうか」

ありす「フレンズの賢者……私にぴったりのキャラクターですね。『我々は賢いので』……ふふっ」

『8話「ぺぱぷらいぶ」』


ありす「聞き慣れてくると、このオープニングもいいですよね。『姿かたちも十人十色だから魅かれ合うの』と言う歌詞が、まるでこのプロダクションみたいです」

ありす「なるほど、１話の唐突な木登りはここで成長を描く伏線だったんですね」

ありす「うう……MCのぎこちない感じが身に覚えありすぎて、見てて恥ずかしいです……」

ありす「プリンセスさん、先代がいなかったとか、そんなに気にすることはありませんよ。歌の力を信じていれば、歌が好きだと思う気持ちがあれば、いいと思います」

ありす「ああ……良かった。上手くいきました」

ありす「……な、泣いてなんかいませんよ！　こんな子供だましのアニメに！」

『9話「ゆきやまちほー」』


ありす「キャラの中では、実はボスのことが一番好きかもしれません。親近感が湧くといいますか。あの足音も可愛いです」

ありす「あ、服のまま温泉に入るんですか。まあ、確かに、このアニメに脱ぐシーンは似合いませんから。それか、CGの予算の都合かも」

ありす「それ脱げるんですか!？」

『10話「ろっじ」』


ありす「今回はミステリーですか。まかせてください」

ありす「……」

ありす「……全然わかりませんでした。ボスが出した映像だったんですね。確かに辻褄は合います」

ありす「あっ……サーバルちゃん、泣かないでください……」

ありす「ミライさんと、別のサーバルちゃん……しかもおそらくかなり前の映像」

ありす「多分、セルリアンを倒すことに失敗していて、今現在はヒトがいない、泣いたサーバルちゃん」

ありす「これらから導き出される結論は……」

ありす「……」

ありす「次を見ましょう」

『11話「せるりあん」』


ありす「人とロボが心を通わせる展開というのは、ゲームとかではベタですけど、やっぱり良いものですね。噴火口というのがまた見映えがします」

ありす「そうですよね、ボスは一人で、パークのためにずっと頑張ってたんですよね」

ありす「……」

ありす「作戦は、大丈夫です。かばんちゃんのプランは完璧なはずです」

ありす「あっ……サーバルちゃん！　そんな……」

ありす「お願いです、かばんちゃん、サーバルちゃんを助けて……！」

ありす「木登り、上手くなってる……！」

ありす「サーバルちゃんに教えて貰った木登り……ううう……ぐすっ……画面が、よく見えないじゃないですか……」

ありす「あの、ばんちゃん、松明つけて、そんな、遺言みたいな、ちょっと、何を」

ありす「あっ、ああああああああああっ!!!!」

ありす「……」

ありす「……ううう……うぐっ……ひぐっ……なんで……」

ありす「馬鹿ですか、馬鹿なんですか。非合理的で、自己犠牲だなんて、まさにヒトですけど……ううう……」

『12話「ゆうえんち」』


ありす「ついに最終回ですか……見たいけど、見たくないような」

ありす「今までの優しいお話であれば、最後もきっとハッピーエンドだと思います」

ありす「でも、人がいないこととか、セルリアンのこととか、かばんちゃんのこととか色々考えると、バッドエンドやビターエンドになっても決して非論理的ではありません」

ありす「ふぅ……ここはもう、覚悟を決めて、見ます」

ありす「……」

ありす「サ゛ー゛バル゛ち゛ゃ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」

ありす「……」

ありす「博士！　博士！」

ありす「……」

ありす「か゛ばん゛ち゛ゃ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」

ありす「……」

ありす「ボス!?　ボスうううううう!!!!」

ありす「……」

ありす「……」

ありす「……」

ありす「終わっちゃった……」

ありす「……」

ありす「……」

ありす「……」

翌日

ありす「文香さん！」

文香「ありすちゃん……どうかしましたか」

ありす「けものフレンズというアニメをご存じですか!?　今度、仕事でコスプレをするんです！」

文香「そうなのですか……すみません、そういったものには疎くて……」

文香「ですが、ありすちゃんが素敵な物語に出会えたということは、顔を見ればわかります」

ありす「そうなんです！　けものフレンズは多くの人に見て欲しい名作なんです！　文香さんもぜひ見てください！」


後日、コスプレ撮影後にけものフレンズについて熱弁したインタビュー記事は、瞬く間にネットで話題となった。




おわり