勇者「嘘だったんだ」(13)

勇者「そんな…」

この物語はとある国で起きた
悲しいお話なのです…

・ ・ ・ ・ ・

~とある王国、城内~

勇者「王様、ただいま戻りました」

王「おぉ勇者よ、傷だらけではないか」

勇者「はい、ですが一刻も早く報告せねばと思いまして」

王「うむ、そうじゃな。お主の口から聞かねばな…勇者よ、申してみよ」

勇者「はっ。この勇者、王の命である魔王討伐を…魔王討伐を!果たしました!」

ザワザワ

王「うむ…大儀で…大儀であった!」

ウォォォォォ!

兵「やった!勇者様はやってくれた!」

大臣「王国は救われたのだぁぁぁ!」

ウォォォォォ!

王「うむ、うむ…ようやく平和が来る…魔王に怯えて眠れぬ夜が終わる…」

勇者「はい!」

王「よくやってくれた勇者よ…国を治める者として感謝する」

ペコリ

勇者「王様!僕なんかにそんな!」

王「いや、感謝しても感謝しきれぬよ…勇者よ、本当に有り難う…」

勇者「王様…」

テクテクテク

?「勇者様…」

勇者「あ…姫様…」

姫「そんな傷だらけで…早く治療をしなくては…」

王「そうじゃったな、姫よ、頼めるか」

姫「はい。では勇者様、行きましょう」

勇者「は、はい…」

テクテクテク…

~姫の部屋~

姫「…」

カチャカチャ
ショウドク ショウドク

勇者「っ!」

姫「あっ、申し訳ありません勇者様!」

勇者「だ、大丈夫です。少ししみただけですから」

姫「手当の仕方を教えては貰っているのですが、実際にするのは初めてで…上手く出来なくてご免なさい」

勇者「そんな、姫様にしてもらえるなんて恐れ多いですよ」

姫「ふふっ…」

勇者「?」

姫「貴方は変わりませんね…初めて会った時から、眩しいくらいに真面目で素直…それが可笑しくて…少し、悲しいです…」

勇者「悲…しい…?」

姫「はい。私は…あの頃より…貴方に会う度…変わっていきました」

勇者「…」

姫「勇者様を…お慕い申し…」

勇者「いけません、姫様」

姫「え…」

勇者「私は平民の生まれ。そんな私に姫様はあまりにも神々しい…決して手の届かぬ…存在です」

姫「そんな…そんな事は…」

勇者「それに姫様には隣国の王子…オーク王子がおられるではないですか」

姫「あんなのはお父様が勝手に決めた…嫌です!オーク王子なんて…あんな下品な男!」

勇者「姫様…」

姫「勇者様…お願いです…私を…私を…」

ウルッ

勇者「姫様…」

姫「…」

スッ…

勇者(姫様が目を閉じた…これは…これはまさか!)

勇者(幼い頃からりぼんを読んでいた私には分かる…これはキス待ち!)

勇者(だが私ごときが姫様に…いいのか?いや、いい筈が無い…いくら魔王を倒したとはいえ、そんな事は…!)

勇者(…)

勇者(いや、そんなに駄目な事だろうか…?)

勇者(よく考えたら、魔王討伐はとんでもない偉業…なんたって王国の危機を救ったんだ。私は英雄であるといっても過言ではない)

勇者(ならば私に褒美があってもいい筈…ある程度無茶な望みも聞き入れて貰えるかもしれない…ならば)

勇者(やってやる…やぁってやるぜ!)

ガシッ

勇者(姫様の肩を掴んだ私!多少強引なくらいのキスのほうがいいとりぼんで知ったからな!)

姫「んっ…」

勇者(姫様はまだ目を閉じたまま…ならさ!)

ムチュッ

勇者(くちびる、キスモード!ぶっちゅぅぅぅってしてやる!)

ズイッ

勇者(秒速5センチメートルで進んでやる!)

ズイッ

勇者(姫様のくちびるまで、あと少し…カウントダウン開始ぃぃぃ!)

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