(待って！！)




サターニャ「……」ﾋﾟﾀｯ


サターニャ「え？この声は……」




(お願い！私を食べて！)




サターニャ「……？」ｷｮﾛｷｮﾛ

(ここ！ここよ！)



サターニャ「……まさか」





メロンパン「……」





サターニャ「メロンパン！？」

メロンパン(良かった……気付いてくれたのね、サターニャ)


サターニャ「メロンパン……あなた、どうして急に？」


メロンパン(もう、忘れちゃったの？)


サターニャ「え？」


メロンパン(今日は私を食べてくれるって約束だったじゃない)


サターニャ「そうだったかしら」


メロンパン(そうよ！昨日言ってたでしょ！明日の昼はメロンパンを食べようって！)

サターニャ「あー、そう言えば……」


メロンパン(……私、ずっと待ってたんだよ？あなたに食べてもらえるの、すごく楽しみにしてたのに)


サターニャ「メロンパン……」


メロンパン(なのに、なんで！なんでクリームパンを先に食べちゃうの！？私のことなんかどうでもいいって言うの！？)


サターニャ「ち、違うわよ。あなたのことも、ちゃんと後で食べるつもりで……」ｱｾｱｾ


メロンパン(今食べて！今じゃなきゃイヤ！)


サターニャ「でも、今はクリームパンが……」


メロンパン(そんなの、後で食べればいいじゃない！私というパンがありながら、どうして他のパンにうつつを抜かすの！？)

サターニャ「お、落ち着いてメロンパン。お願いだから」


メロンパン(……いいわよ。どうせ私のことなんか、いつでも食べられる都合のいいパンだと思ってるんでしょ)


サターニャ「ちが……そんなつもりじゃ……！」


メロンパン(私のこと、好きだって言ってくれたのに。あの言葉は嘘だったんだ？)


サターニャ「好きよ！大好きだけど！でも！」


メロンパン(なら、食べて)


サターニャ「それは……」


メロンパン(……)

サターニャ「……」


メロンパン(……やっぱり、食べてくれないんだね)


サターニャ「……」


メロンパン(……私ね、あなたに食べて貰えると知って、すごく嬉しかったんだ)


サターニャ「……」


メロンパン(いつも犬に邪魔されながらも、懸命に私を求めてくれるサターニャに、私は憧れていたの)

メロンパン(何度も何度も、犬に私を奪われて……それでも今日、やっとあなたに食べてもらえると分かったとき、私はどれだけ喜んだか)

メロンパン(あなたに優しく手を取られ、その温かい口の中に運んで貰うことを、私はずっと夢見ていたの)

メロンパン(……でも、もういい)


サターニャ「……っ」


メロンパン(今のサターニャは、メロンパンじゃなくてクリームパンのことが好きなんだよね)

メロンパン(分かってた。私なんかじゃクリームパンには勝てないって。ありきたりなパンより、新しいパンの方が魅力的なんだって)

メロンパン(……いいよ。クリームパンを食べて。その代わり、もう私には戻って来ないでね)


サターニャ「メロンパン……」



メロンパン(……信じてたのに)



サターニャ「っ！！」


メロンパン(……)


サターニャ「くっ……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

サターニャ「……」



サターニャ「……分かったわ」


メロンパン(……)




サターニャ「私の負けよ、メロンパン。あんたを先に食べてあげる」


メロンパン(えっ？)

サターニャ「悪かったわね、約束を破るようなこと言って」


メロンパン(サターニャ……いいの？)


サターニャ「いいのよ。クリームパンだってすぐに傷むわけじゃないんだし、そこまで言われたんじゃ食べない訳にはいかないもの」


メロンパン(……嬉しい。ありがとう、サターニャ)


サターニャ「私の目も節穴だったようね……こんな近くに良いパンが居るのに気付かないなんて」


メロンパン(ふふっ。褒めてもイースト菌くらいしか出ないわよ？)


サターニャ「……さあメロンパン。私の口に飛び込んで来なさい！」


メロンパン(はい！サターニャ！)

サターニャ「あーん……」




(ふーん……やっぱりメロンパンが良いんだ？)




サターニャ「！？」ﾋﾟﾀｯ


クリームパン(さっきまであんなに私に夢中だったのに……)


サターニャ「なっ……クリームパン！？」

クリームパン(あーあ、楽しみにしたんだけどなぁ)


サターニャ「そんな、あんたまで……」


クリームパン(ま、所詮私との関係は遊びだったってことね)


サターニャ「あ、遊びじゃないわよ！」


クリームパン(じゃあ何だって言うの？)


サターニャ「食事よ！」


クリームパン(ふん、耳触りの良いことばかり言って……そうやって他のパンも誑かしてきたんでしょ)


サターニャ「くっ……」

メロンパン(どうしたのサターニャ？早く私を食べて……)


サターニャ「分かってるわ。とりあえず先にメロンパンを……」


クリームパン(言っとくけど)


サターニャ「え？」


クリームパン(メロンパンを先に食べるなら、私は食べないでよね)


サターニャ「なっ……」


クリームパン(私、二股かけるような人に食べられるほど、安いパンじゃないの)


サターニャ「ど、どうしてそんなこと言うのよ！？」

クリームパン(どうして？つくづく、パン心が分からないんだね。サターニャは)


サターニャ「パン心ですって……？」


クリームパン(好きな人には早く食べて貰いたい。そんなの、パンにとっては当然の願いじゃない)


サターニャ「えっ……それじゃあ、クリームパンは私のことが……」


クリームパン(……言わせないでよ。恥ずかしいんだから)


サターニャ「クリームパン……」


メロンパン(サターニャ、耳を貸してはダメ！早く私を食べて！)


サターニャ「メロンパン……」

クリームパン(ほら、私の身体は美味しいよ……とろとろの甘ぁいカスタードが入ってるんだから)

メロンパン(黙りなさいこの痴パン！サクサクふわふわな私の方が良いに決まってるでしょ！)


サターニャ「うぅ……どっちを選べば」


メロンパン(私よね！サターニャ！)

クリームパン(私でしょ？サターニャ)


サターニャ「うぐぐ……こうなったら……！」



ﾊﾞｯ!



サターニャ「あんたらまとめて一緒に食べてやるわ！！」

メロンパン(えっ！？)

クリームパン(なっ……2P(パン)する気なの！？)


サターニャ「そうよ！2P(パン)よ！」


メロンパン(でも、そんなことをしたらサターニャの胃が！)


サターニャ「大丈夫よ。たかがパン2つくらい食べられないようじゃ、大悪魔は名乗れないわ！」


クリームパン(サ、サターニャ……！)


サターニャ「さあ、行くわよ！いっただきまー……」

(どうせ、私なんて眼中にありませんよね)




サターニャ「はっ！？」ﾋﾟﾀｯ


チーズ蒸しパン(私は干からびるまでここに居る運命なんですよね……分かります)


サターニャ「チーズ蒸しパン！？」


チーズ蒸しパン(ああ、一口でいいからサターニャさんに食べて貰いたかったなぁ)


サターニャ「……」ﾜﾅﾜﾅ

チーズ蒸しパン(ぐすん……)


サターニャ「……ああもう、こうなったらヤケよ！3P(パン)してやる！」


チーズ蒸しパン(！)

メロンパン(サターニャ、無茶よ！そんなことしたら……)


サターニャ「うるさーい！するったらするの！」


クリームパン(あなた、そこまで私達のことを……)

チーズ蒸しパン(サターニャさん……！ありがとうございます！)


サターニャ「ふん、礼は要らないわ！行くわよ！せーのっ！」

サターニャ「いっただっきまーす！！」



ﾊﾟｸｯ






3パン(ああああああああっ♪)






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-教室-

サターニャ「……ということがあってね」

ガヴ「……」

サターニャ「いやー、実に充実した休日だったわ！」

ヴィーネ「……」

サターニャ「私を求めて争う3つのパン……ああ、思い出しただけでもよだれが出そう」

ラフィ「……」

サターニャ「みんなもそう思……って、何よその顔は」

ガヴ「サターニャ……」




ガヴ「ごめんな。そこまでお前が深刻に悩んでいることに気付けなくて……」

サターニャ「え？」

ヴィーネ「まさかメロンパンの声が聞こえるなんて……相当思いつめていたのね」

サターニャ「いや、その」

ラフィ「サターニャさん、何かあったのなら、遠慮なく私達を頼ってくれていいんですよ」

サターニャ「」



ガヴ「そうだよ。だって私達……友達じゃないか」

サターニャ「なんでそうなるのよ！！」



-おしまい-