孤独のエルマ (32)

第一話「異世界のクリームパン」

――――とにかく、私は腹が減っていた。


しかし、果たすべき使命があり、そんな事も悠長に言ってられない。

ここは日本、トールが落ち延びた平和な異世界。
私はトールが作り出した次元の穴を通じて、日本へとやってきた。
ドラゴンは世界の秩序と調和を乱す危険な存在だ。早急に連れ帰る必要がある。

エルマ「まさか、こんな所に落ち延びていたとはな、トール!」

エルマ「お前は掟を忘れたのか!ドラゴンはこの世界の秩序を乱す!今すぐ私と帰るんだ!」

トール「相変わらずクソ真面目な堅物ですね、私帰りませんよ?」

強情な奴だ。だが、私とトールの実力は互角。
無理矢理にでも連れて帰る!ってあれ?体の言うことが……効かな……

エルマ「うぅ……」

空腹の所為で、倒れてしまった。情けない……

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小林「あらら……もしかして昨日から何も食べてない?」

エルマ「わ、私はこちらの世界の者ではないので…干渉するわけには…」

小林「流石にこれくらいは大丈夫でしょ?はい、食べる?クリームパン」

エルマ「で、では…英気を養うためにも、ご厚意に甘えて」

私はクリームパンなるものを人間さんから受け取った。
その瞬間、常識全てを塗り替えられることになる。

あれ?パンってこんなに柔らかかったっけ…?
私が暮らしていた世界のパンと言ったら、どれもパサパサで、ワインが欠かせなかったはずだ。
しかし、このクリームパンからはパサツキが感じられない

これが異世界のクリームパン…!実に美味そうだ…!

エルマ「い、頂きます……!」

そのまま、一気に口へとクリームパンを放り込む。


――なにこれ!?なにこれ!?めっちゃおいし~!ほっぺた落ちる!

……どんどん食べ進めたくなる。これはいい。
うん、うまい……いかにもクリームって味だ。
そして、私は気がつくと、3つ目のクリームパンに手を伸ばしていた。
な、何か忘れているような……ハッ!!

エルマ「よ、よし!元気が出た!改めて勝負だ!トール!」

トール「帰ってくれたら、今の全部上げますよ?」

エルマ「え……?」

全部か……ここはトールの提案に乗ってみてもいいかもしれん……

エルマ「おじゃましました~♪」

私は袋いっぱいに詰まったクリームパンを手に玄関を後にした。

第2話「先輩のコロッケ」

次は数時間後

第2話「先輩のコロッケ」

エルマ「今日からお世話になります、上井エルマと申します」

エルマ「宜しくお願いします」

私は生活費を稼ぐために、就職を決意した。
適当に人間としての経歴と名前を作り、地元で評判の良い企業へと就職した。
ドラゴンの力を持ってすれば、仕事せずとも生活費を稼げるのだが、これでも調和勢の端くれだ。
なるべく人間界に干渉せず、人間界のルールに従って行動する必要がある。

小林「で、どうしたここにいるの?」

エルマ「に、人間さんこそ!どうしてここに!?」

驚いた。
トールがメイドとして使えている主人の人間さんが同僚だなんて…!
人の縁とは、どこでどう役に立ってくるかわかったものではないな。

小林「私はここで働いているの…って事は偶然なの?なんで?」

エルマ「ちょ、調査だ!文化体系を見極め、本当に異世界の者が溶け込めるのか調べるのだ!」

ドラゴンとしての威厳を見せるためにも、そんなことを言ってのける。
生活費を稼ぐため…だけでは、威厳も何もない。

小林「なるほど、調和勢とか言ってたもんね」

小林「でもさ、この仕事できるの?魔法とか使っちゃ駄目だよ?」

エルマ「ふっ!愚問だ!人間の作業が私にできないはずがないっ!」

エルマ「まあ見ててくれ!人間さんっ!!」

なにせ、私はドラゴンなのだから、
ドラゴンの作業が人間にできないことはあっても、その逆はありえない…

と、思っている時期が私にもありました。

エルマ「な、なんだこれ……さっぱりわからん……!」

第一に、この大きな箱!人間さんは一体、これで何をしているのだ?

小林「まずはここを押すんだよ」

エルマ「うぉっ!なんか出てきたぞ!」

目の前にある大きな鏡に、何やら映りだす。
んー……よくわからんっ!

小林「で、ここをこうするんだよ」

私は人間さんがやっていることを必死に目で追う。
きちんと覚えて、みんなの役にたたなければな……!

――――

エルマ「うぅ……人間さん、貴方は難しい仕事をしていたのだな」

エルマ「しかし、私もローマ字入力?とやらは覚えたからな!遅れは取らんぞ!」

異世界の言語を一日でマスターしたのだ。
やはり私はできる子だな!

小林「そっかそっか」

エルマ「それでだな…今日の分の報酬はいつ貰えるのだ?」

小林「えっと、一ヶ月後かな?」

エルマ「あ、明日貰えるわけにはいかないのか?」

この流れはまずい……非常にまずい……!

小林「うん、うちは月末締めで、今は月初めだからね」

エルマ「や、家賃とご飯はどうすればいい……?」

小林「向こうの世界と行き来したら?」

エルマ「うっ……」

痛いところをついてくるな、人間さん……!

小林「もしかして戻れないの?」

エルマ「私は世界の門を開くほどの力を持っていないのだ……」

小林「トールと同格じゃないの?」

エルマ「強さは一緒だ……しかし生まれが違う」

小林「ふーん?あっ!待って!」

小林「…………はい、これ」

人間さんに熱いから気をつけてと、優しい配慮と共に、食べ物を渡された。
ああ……温かい。二重の意味で。

エルマ「こ、これはなんだ?」

小林「それはコロッケだよ」

コロッケと言われるそれを見る限り、どうやら揚げ物のようだった。
少し匂いを嗅いでみよう……

エルマ「しまった!鼻に油がっ!」

うわぁ……なんだか大変なことになってしまった。
しかし、油と肉の甘ったるい匂いが、ハーモニーを醸し出していて、食欲がそそられる。

はふっはふっ……むしゃっ…むしゃ

衣がパリパリしていて中々いけるぞ!
咀嚼するごとに、肉汁が溢れ出し、表面がどんどんコーティングされていく!
うん、うまい!ご飯があればどれだけ良かったか……悔いるばかりだ。

小林「喜んでくれて何よりだよ」

小林「まあ色々あるだろうけど、これからも頑張って」

小林「仕事仲間になってくれるって言うなら仕事沢山覚えてもらうことになるしね」

エルマ「かたじけない……」

小林「それじゃ!」

私は改めて、優しさと、美味しい物に触れ、人間界に来て良かったと感じたのだった。

第2話「先輩のコロッケ」終わり


第3話「先輩と一緒の甘栗」

次は数時間後

ドラゴンズレイプするか

ちょっとアンケート

ドラゴンレズレイプいる or いらない

昼くらいまで

第3話「先輩と一緒の甘栗」

――数日後

エルマ「小林先輩!お疲れ様でした!」

小林「お疲れ、結構PC操作覚えてきたね?エルマ?」

エルマ「ふっ!任せておけ!このまま仕事の役に立ってやる!」

小林「まあ、まだまだだけどね」

すっかりパソコンの操作も板についてきた、と自分で感じる。
言うまでもなく、小林先輩や、他の同僚にはまだ遠く及ぼないが、それなりに頑張ってきたつもりだ。
そんな自分に、ご褒美を与えたいと思う。

何を隠そう、今日は初任給の日だったのだ!
働いたら働いた分だけ、頑張った成果が金額となって返ってくる。
資本主義社会万歳!これで好きなモノがなんでも買える!

そうだ!小林先輩に常日頃からお世話になっているのだから、何かお礼をしないと!

エルマ「小林先輩!甘栗!甘栗食べて帰ろう!あれは美味いぞ!」

小林「はいはい」

――

会社近くのちょっと大きめの商店街へと私たちは来ていた。
近隣にデパートがあるにも関わらず、ここは毎日のように賑わっている。
よほど地元の人間たちに愛されているのだろう。

野菜や果物、魚を取り扱う商店を通り過ぎて行き、あった……甘栗を売っている露店!

エルマ「小林先輩!着いたぞ!」

小林「ここか、ここの甘栗って結構美味しいよね」

小林「トールやカンナちゃんにも買って帰ろうかな…」

むっ!今は私といるのに、事もあろうか他の女の話とは!
妬けてしまうではないか!
おっと、いかんいかん、私としたことが…食べ物に集中しなければ!

エルマ「小林先輩!今日は私の奢りだ!常日頃からお世話になっているしな!」

小林「バカ言うんじゃないよ、どこの世界に後輩に奢られる先輩がいるんだ」

そう言いながら小林先輩は軽めのデコピンをしてきた。
私は痛くなかったが、あえて額をさすってみせる。

小林「全然痛くなかったでしょ?演技はやめなさい」

エルマ「ただのおちゃらけだ、しかし、確かに後輩が奢るのはおかしいな」

場合によっては失礼にあたるまである。
我ながら出過ぎた真似をしてしまった。

小林「分かったならよろしい、それじゃ、私の奢りでいいよ」

エルマ「なっ!?そこまでしてくれなくてもいいぞ!」

小林「初任給のお祝いってことでね?」

エルマ「そ、それなら別に構わんが……」

小林先輩のご厚意に甘えることにした。
しかしなんて優しい方なんだ…!これが所謂仏なのだろうか?
そう思えてならない……

店員「合計で800円となります」

小林「ありがとうございます」

早く来ないかなぁ。
私のお腹が甘栗を食したいと、さっきからぐうぐう鳴っている。

小林「はい、エルマの分ね」

お……きたきた、来ましたよ!

エルマ「感謝するぞ!小林先輩!!」

そう言い放ち、即座に小包を受け取る。

さて、まずは封を慎重に開けないと…
でないと、甘栗の香ばしい匂いが逃げてしまう。

小林「エ、エルマ……何してんの……?」

エルマ「見てわからないか?今から甘栗の香りを堪能するのだ!」

そして、一気に封を開け、小包に顔を突っ込む!
丁寧に丁寧に、大切によく、嗅いで堪能しなければ。

スゥ…スゥ……ハッハッ…

うぉォン、私はまるで空気清浄機だ。

うぉォン、私はまるで空気清浄機だ!

まだアンケート受け付けてます
>>12

小林「と、とりあえず食べよ?」

小林先輩が引き気味なのが分かる。
そんな目で見ないでくれ…!ただ、食欲の前に逆らえなかっただけなのだ…!

私は若干の興奮とほとばしりを覚えつつ、早速甘栗を食べることにした。

エルマ「いただきまーす……」

皮を剥きながら食べるのも、また風情があっていいかもしれないが、
いざ目の前にしたとき、食欲のあまり皮ごと食らいつく自信がある。
そう考えると、最初から剥かれている栗がやはりいい。
こういうのでいいんだ、こういうので。

エルマ「~~~~っ!!!!」

ううおお~~~っ、これはっ!
止まらない!舌が甘栗をどんどん求めている!
うん、いい味でてる、いい感じだ!

店員「お持ち帰りはいかがですか?」

持ち帰り!そういうのもあるのか…
でも、ほくほくして美味しいのが甘栗の魅力。
冷めてしまっては元も子もない。

エルマ「遠慮しておきます」

小林「私もう帰るね?また明日、エルマ」

エルマ「うむ!今日は本当にありがとう小林先輩!」

小林「いいっていいって」

そう言って、小林先輩は踵を返す。
なんだろう、この感じ……
先輩の後ろ姿を見ながら食べる甘栗は、何故か糖度が減っている気がしてならない。

もぐっ…もぐっ…もぐもぐ…

私は説明しようのない気持ちに疑問を持ちながら、帰路へと着いた。

第3話「先輩と一緒の甘栗」 終わり

第4話「二択のたい焼き」

意見が割れているのでドラゴンレズレイプは一旦保留です

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