バファローズポンタの球団マスコット活動 (49)
第1話「人気マスコットになるためには」
2016年6月、京セラドームにて
ポンタ「バファローズの応援を始めてから2ヵ月、野球ファンのみんなにも受け入れられたし…」
ポンタ「球団マスコットの友達もたくさんできたし、もうちょっと勝てるともっと嬉しいんだけど…」
ポンタ「なんだかんだで良かったなあ」
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君の~声よ遥か届け~夢追い人が行く~♪
ポンタ「あ、スターマンくんから電話だ」
ポンタ「もしもし。スターマンくん?」
DBスターマン「ごめん、ポンタくん。週末に道とん堀でお好み焼きする約束、急用で行けなくなった」
ポンタ「えー、残念だなあ。みんな、君に会えるのを楽しみにしてたのに」
DBスターマン「他にも誰か来る予定だったの?」
ポンタ「うん。どうぶつの森のたぬきちくんと、サンリオのぽんぽこくんと、FC東京の東京ドロンパくん」
DBスターマン「言っておくけど僕、狸じゃないからね?」
ポンタ「ところで急用ってなに?」
DBスターマン「ホッシー先輩に遊びに誘われたんだ」
ポンタ「断れないの?」
DBスターマン「ポンタくん、球界は上下関係の厳しい世界なんだよ。先輩後輩の絆は親子のそれよりも深いんだ」
DBスターマン「そういうわけだから今回はごめん。また別の機会に遊ぼう」
ポンタ「うん。今度また『たぬき会』があったら絶対に誘うよ」
DBスターマン「さっき言ったこと聞いてた?」
ポンタ「ふう。スターマンくんは週末の『たぬき会』不参加、と。先輩後輩の絆は親子のそれより深い…」
ポンタ「先輩かあ……いいかも」
バファローブル「ポンタくん。おはよー」
ポンタ「おはようございます!ブル先輩!」
バファローブル「……え?なに?どうしたの?いきなり改まって」
ポンタ「スターマンくんから、球界の先輩後輩の絆は親子のそれより深いと聞きました!バファローズマスコットの先輩として、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」
バファローブル(…この子、形から入るタイプなんだ。さすがコスプレ狸くん)
バファローブル(でも…なんだかくすぐったくて、嬉しいな)
バファローブル「よし!いいだろう、ポンタ!僕について来い!」
ポンタ「はい!では早速……」
ポンタ「ブル先輩!人気マスコットの秘訣を教えて下さい!」
バファローブル「……え?」
ポンタ「僕は一人前の球界マスコットになりたいんです!ブル先輩のように野球ファンに愛されるマスコットになりたい!」
ポンタ「だからそのためにどうすればいいのか…教えて下さい!ブル先輩!」
バファローブル(…ええええええええええ!!!無理だよ!僕がこの子に教えることなんかないだろ!)
バファローブル(ツイッターのフォロワー10万だよ!?球団公式ツイッターのフォロワー17万なのに!とっくに一人前の球界マスコットだよ!一年契約なのが惜しいぐらいだよ!)
バファローブル(だいたい僕、不人気だし!野球ファンに愛されてないし!12球団のメインマスコットで言ったら下から数えた方が…)
バファローブル(…あれ?もしかして最下位?…いや…アレよりは……)
スラィリー「ぶうぇっくっしょん!!!」
つば九郎「どうした?」
スラィリー「だれ~かが~、おいらのこ~とを~噂してる~の~」
つば九郎「やめて。そのキモい発想やめて。キモすぎてひらがな縛り忘れる」
スラィリー「きっと~、かわい~い~、おんなのこな~の~」
つば九郎「ほんとやめて。奢ってもらったメシがクソ不味かった時みたいな顔になる」
スラィリー「た~ぶん~、バファローベルちゃんだと~おも~うの~」
つば九郎「頼むからやめて。球団マスコットに雌っ気がないから溜まってるとか言い訳にならない」
スラィリー「会~いに~、行っちゃ~お~うかな~」
つば九郎「カープゥゥゥ!!!早くスラ子なりスラ美なりを用意しろぉぉぉ!!!手遅れになるぞぉぉぉ!!!」
ポンタ「……」ジー
バファローブル(目がキラキラしてるよ…キラッキラッしてるよお…)
バファローブル「…変身」
ポンタ「え?」
バファローブル「人気マスコットの秘訣は変身だ!」
バファローブル「見ていろ!はあああああ……チェーンジ!バトルモード!」ウィーンカシャンカシャン
バファローブル(バ)「これがバファローブル、バトルモード!」
ポンタ「おー!」
バファローブル(バ)「さらに!はあああああ……チェーンジ!シャイニングモード!」ウィーンカシャンカシャン
バファローブル(シ)「これがバファローブル、シャイニングモード!どうだ!ポンタ!」
ポンタ「すごーい!」
バファローブル(シ)(良かった…ファンには不評の迷走企画だったけど喜んでもらえた……)
バファローブル(シ)「いいか!人気マスコットたるもの、変身の一つや二つ出来なくてはならない!ポンタも精進して…」
ポンタ「はい!やってみます!」
バファローブル(シ)「…え、出来るの?」
ポンタ「はい!出来ます!」
ポンタ「頭に葉っぱをのせて……えいっ!」ドロン
ポンタ(福良)「福良監督になってみました!」
バファローブル(シ)(……うわあ、僕より応用力ある変身だよ、これ。尻尾隠せてないところとかあざとかわいいよ。目指すべき方向バッチリ見えてるよ)
バファローブル(シ)「ええっと…じゃあ……元に戻ろうか」ウィーンカシャンカシャン
ポンタ(福良)「はい!」ドロン
ポンタ「次の教えをお願いします!ブル先輩!」
バファローブル(もう種切れだよ…僕、芸無いなあ。こうなったら無理難題を押し付けて逃げよう)
バファローブル「…球界の人気マスコットは、運動が出来なくてはならない」
ポンタ「運動、ですか?」
バファローブル「そう。スポーツを応援するマスコットなんだ。機敏に動ければ当然、評価は上がる。ドアラくんのバク転は有名だよね?」
ポンタ「運動……」
バファローブル(やっぱり苦手分野か。まあその体型じゃねえ)
ポンタ「僕、一輪車ぐらいしか出来ないです……」
バファローブル「そうか。一輪車か。それじゃあ芸の領域には……って、えええええ!!!」
バファローブル「その身体で一輪車漕ぐの!?」
ポンタ「はい。漕ぎます」
ポンタ「こうやって」キコキコ
バファローブル「ペダルに足届いてないじゃん!どうやって動いてるのそれ!」
ポンタ「……フィーリング?」
バファローブル「フィーリング!?」
バファローブル(なんだよこの子…設定盛り過ぎだよ…企業マスコットってそういうものなの?すごい通り越して怖いんだけど……)
バファローブル(だいたい球界では僕の方が先輩だけど、マスコット歴はこの子の方が長いんだ。マスコットとして教えることなんて、あるわけないよ……)
ポンタ「ブル先輩!他には何かないんですか?」
ブル「あ……う……」
バファローベル「あら、お兄ちゃんとポンタくん。何してるの?」
バファローブル「……!」
バファローブル「ポンタ!もう一人の先輩が来たぞ!続きはベルから教わるんだ!」
ポンタ「はい!分かりました!ブル先輩!」
バファローブル(良かった…どうにか逃げられた…)
バファローベル「教わる?ポンタくん、お兄ちゃんと何をしてたの?」
ポンタ「人気マスコットの秘訣を教わっていました!」
バファローベル「え?とっくにポンタくんの方が人気なのに?」
バファローブル「ぐはあ!」
ポンタ「僕の方がブル先輩より人気…?」
バファローブル(マズい……先輩の威厳が!)
バファローブル「そんなことはない!僕の方が人気だ!」
バファローベル「お兄ちゃん、ポンタくんはフォロワー10万よ?認めるところは認めないと…」
バファローブル「それがどうした!僕のファンはサイレントマジョリティなんだ!勝負すれば、絶対に僕が勝つ!」
ハリーホーク「その意気や良し!」
バファローブル「……はい?」
ハリーホーク「球団マスコット界に閃光の如く現れ、飛ぶ鳥を落とす勢いのポンタ坊!球界の王たる我ですら真正面から組するは二の足を踏む人気の奔流!」
ハリーホーク「その渦中に自ら飛び込もうとは…気に入った!その勝負、我が力を貸そう!」
バファローブル「…あのー」
ハリーホーク「73-22。我がホークスとお主のバファローズの前半戦9試合を総合した結果だ」
バファローブル(1試合平均8点以上取られてるんだ……改めて考えるとショックだなあ……)
バファローブル「はあ……それでやり過ぎて申し訳ないから何か助けてやろうとか、そういうことですか?」
ハリーホーク「たわけが!」パーン
バファローブル「ひでぶっ!」
ハリーホーク「勝負の世界に情けなし!弱きことは罪なり!弱者を如何に蹂躙しようとも我が恥じ入ることなどないわ!」
ハリー・ホーク「お主が我に献上した総得失点差+51!その働きに免じ、褒美を取らせてやろうというだけのことよ!」
バファローブル「いや……別にいいですよ。捧げたくて捧げたわけじゃないですし」
ハリーホーク「痴れ者が!」パーン
バファローブル「うわらば!」
ハリーホーク「王の褒美を断る権利が下賤の者にあると思うな!恥を知れい!」
バファローブル「ううっ……これだから絶好調チームのマスコットは……」
バファローベル「ところで、何をするつもりなんですか?」
ハリーホーク「うむ!ベル嬢、よくぞ尋ねた!我がホークファミリーは貴殿らに握手会の会場を提供する!」
ハリーホーク「ノルマは100!先に100人の臣下と握手を済ませた者が勝者!真の公式マスコットよ!」
バファローベル「なるほどー。面白そうだね!ポンタくん!」
ポンタ「はい!面白そうです!ベル先輩!」
バファローブル「……いや、でも身内で争うの良くないって。平和に行こうよ。平和に。ね?」
バファローベル「私も参加しようかなー。ポンタくん、いい?」
ポンタ「はい!初めての握手会です!ドキドキします!」
ハリーホーク「ハハハ!戦事だというのに無邪気なこと!善き心がけであるぞ!」
バファローブル「……もう好きにして」
バファローベル「ありがとうございまーす!これからも応援よろしくお願いしまーす!」ギュッ
ポンタ「ありがとうございます!バファローズをよろしくお願いします!」ギュッ
バファローブル(…握手会が始まってからもうだいぶ経つ。仕切りの向こうからはひっきりなしにベルとポンタの声が聞こえる。今、何人目だ?もしかしてもう……)
ハリーホーク「ブルよ!調子はどうだ!」
バファローブル「…ハリーさん」
ハリーホーク「浮かない顔をするな!覇気なき王につき従う臣下はおらんぞ!」
バファローブル「別にいいんですよ…こんな勝負。僕が負けるのは分かりきっているんだから」
ハリーホーク「……なんだと?」
バファローブル「ベルたそとブルカス。球界屈指の人気マスコット、バファローベルに引っ付くお邪魔虫。スポンサー提供の一年契約即席キャラに惨敗する哀れなゴミ牛。それが僕だ」
バファローブル「あなただって、これほどまでに分かりやすい盤面が読めないほど愚鈍ではないはず。あなたは僕を辱めるために、この勝負を僕たちに持ちかけたんだ」
ハリーホーク「……ああ、そうだな。我は戦う前から理解しておった。お主がベル嬢やポンタ坊に勝利する可能性など、万に一つもない」
ハリーホーク「だがブルよ。臣下とは数が全てか?今、お主の前にお主の手を欲する臣下が現れたとしよう。その臣下に、お主はなんと言う?『こんなゴミ牛のためにご足労かけて申し訳ありません』とでも言うのか?」
バファローブル「……」
ハリーホーク「ブルよ。ポンタ坊の台頭でお主の覇気は目に見えて削がれておった。だが、勇無き者に優は訪れんぞ」
ハリーホーク「ポンタ坊はポンタ坊。お主はお主。それを察することが出来ればと思い、我はこのような場を設けたのだ。勝負の世界は非情なり。我は弱者を蹂躙することに聊かの躊躇いもない」
ハリーホーク「だがな…我は、強者と命を削る戦いをする方が、好きなのだよ……」
バファローベル「お兄ちゃーん!100人終わったよー!」
ポンタ「ブル先輩!僕も終わりましたー!」
バファローブル「ベル……ポンタ……」
バファローベル「お兄ちゃんはどうせまだ100人行ってないでしょ?」
バファローブル「……」
バファローベル「いいのよ。それでいいの。私たち、同じチームのマスコットなんだから。力を合わせて200人以上のバファローズファンと握手をした。これは、そういう握手会よ」
ハリーホーク「うむ!さすがはベル嬢!さあ、ブルよ!恥じることはない!胸を張り、自らの臣下の数を告げよ!」
バファローブル「……ろにん」
バファローベル「……え?」
バファローブル「0人」
ハリーホーク「なん…だと…」
バファローベル「私たちが100人と握手し終えるまで……ここに誰も来なかったの!?」
バファローブル「だから……だからイヤだったんだあああ!!!すぐ隣にベルとポンタのブースがあって、僕のところに来るわけないじゃないかあああ!!!」
バファローブル「僕はゴミ牛なんだ!生まれて来たことが間違いな球界のお荷物なんだ!12球団中11位のブービーマスコットなんだよおおおおお!!!」
ハリーホーク「ブル……」
バファローベル「お兄ちゃん……(12位は誰なんだろう……)」
???「そんなことはない!」
ハリーホーク「!?」
バファローベル「あ、あなたは!」
福良監督「君はゴミ牛なんかじゃない!立派なうちのチームのマスコットだ!」
バファローブル「……福良監督」
福良監督「確かにうちのチームは低迷している!パ・リーグは2位から4位を決めるリーグなどと言われている!負けすぎて気持ち良くなってきたの領域に達しつつある!」
バファローベル(それでも最下位じゃあないんだけどね…)
福良監督「それでも、そんな状況でも戦えているのは君のおかげだ!だから、そんなに自分を悪く言わないでおくれ……私まで悲しくなってしまうよ」
バファローブル「……監督」
バファローブル「…尻尾、隠れてないです」
ポンタ(福良)「……あ」ドロン
ポンタ「あの、えっと…僕、ブル先輩に元気になって欲しくて…それで…その………ごめんなさい」ペコリ
バファローブル(…先輩、か……なんにも教えてなんかいないのに、なにもかも全く敵わないのに。それでも僕のことを先輩として慕ってくれるんだ。なのに僕は、後輩に心配かけて、気を使わせて……)
バファローブル(……僕は……僕は、何をしているんだろう)
バファローブル「…ふふふ」
ポンタ「…ブル先輩?」
バファローブル「ふふふふふふ…あはははははははは!!」
バファローベル「お、お兄ちゃん!?」
ハリーホーク「乱心したか!ブルよ、気を確かに持て!」
バファローブル「……大丈夫、ハリーさん。僕は正気ですよ」
バファローブル「ポンタ、ありがとう。そして……ごめん」
ポンタ「……え?」
バファローブル「先輩後輩の絆は親子のそれよりも深い。それが球界だ。君が慕ってくれるなら、僕はそれに値する背中を見せなくちゃならない」
バファローブル「…みっともない背中、晒してらんないよね」
ポンタ「……ブル先輩」
バファローブル「さあ、まずは僕と握手をしたい一人目が現れるまで頑張るぞ!何十分でも、何時間でも待ってやる!」
ハリーホーク「……ブルめ、一皮剥けおったわ。これはシーズン総得失点差+100は難しいかもしれんな」
バファローベル「どんだけ蹂躙する気だったんですか…ポンタくん泣いちゃうから止めて下さい」
ポンタ「あ!ブル先輩のブースに誰か来た!」
???「あの~」
バファローブル「はい!ようこそいらっしゃ……え?」
スラィリー「や~あ~、ブルく~ん」
バファローブル「ス、スラィリーくん……どうしてここに?」
スラィリー「ベルちゃんに~会~いに来~たの~ブルくんは~、な~にして~るの~?」
バファローブル「……握手会」
スラィリー「い~いね~。おいらも~、やったこ~とあ~るの~」
スラィリー「で~も~、子~どもが~泣~くから~、い~まは~禁止な~の~」
バファローブル(握手会禁止のマスコットとかいるんだ…)
スラィリー「と~ころ~で~、ベルちゃ~んは~?」
バファローブル「あそこにいるけど……」チラッ
バファローベル(お兄ちゃん…12位はそいつよね。そいつよね?)
ハリーホーク(ブルよ…辛い時は上ではなく下を見るのも一つの活路だぞ…)
ポンタ(あの人、何の動物なんだろう……『たぬき会』に呼んでもいいのかな…)
バファローブル「……スラィリーくん」
スラィリー「な~に~」
バファローブル「……何か、ごめんね」ギュッ
第1話 お わ り
第2話「パリーグ訪問」
ポンタ「ブル先輩!パリーグマスコット行脚に行ってきます!」
バファローブル「…え?」
ポンタ「この前、僕はブル先輩から人気マスコットの秘訣を教わりました!」
バファローブル(何か教えたっけ…)
ポンタ「次はパリーグの皆さんに同じことを教わりたいと思います!」
バファローブル「別にいいけど…ちゃんとみんなに話はしたの?」
ポンタ「はい!もう全員と話をしました!」
バファローブル「アクティブだなあ。さすが企業マスコット……ん?」
ハリーホーク「ポンタ坊!待たせたな!」
バファローブル「ハ、ハリーさん……」
ハリーホーク「ブル!話はポンタ坊より聞いておるな!我が身を鍛え、高みを目指すためのマスコット行脚!」
ハリーホーク「その一人目に球界の王たる我を選ぶとは…素晴らしき選球眼!褒めて遣わすぞ、ポンタ坊!」
ポンタ「ありがとうございます!」
ハリーホーク「うむ!では我について来い!」
ポンタ「はい!よろしくお願いします!」
バファローブル「……行っちゃった。ポンタくん、素直なのはいいんだけど、影響されやすいんだよなあ……大丈夫かな」
ハリーホーク「ポンタ坊!我が教えは戦いに赴く者としての心構えなり!」
ポンタ「はい!」
ハリーホーク「時にお主!群衆より『勝つとつまらない』などと言われておるな!」
ポンタ「……!」
ハリーホーク「未熟者が!勝利を収めるたびにただ無邪気に喜んでおるからそうなるのだ!お主に足りぬもの!それは強者としての『器』!」
ポンタ「器…」
ハリーホーク「良いか!『勝って当たり前』と思え!全ての球団は己に白星を捧げに来ていると思い込め!不遜に、傲慢に、勝利の喜びを表現するのだ!」
ポンタ「…はい!」
ハリーホーク「うむ!良い返事だ!さあ…やってみるが良い!」
レオ「…ポンタのやつ、遅せえなあ。俺の前はバカ王…めんどくせえことになってんのかね。仕方ない、迎えに行ってやるか」
レオ「おーい、ポンタ。そろそろ……」
ポンタ「あ、レオじゃーん」ハマキプカー
レオ「!?」
ポンタ「もう時間?ごめーん、忘れてたー。でも僕っちフォロワー10万だしー、それぐらい余裕で許されちゃうよねー?」
レオ「なにやってんだお前…そのダセえ玉座とマントはいったいどこから…」
ハリーホーク「ダ、ダサいだと!王の正装になんたる暴言を!愚か者めが!」
レオ「…やっぱりか。ポンタ連れてくぞ。王様ごっこはおしまいだ」
ハリーホーク「させぬ!ポンタ坊の王気を削ぐような真似は絶対にさせぬぞ!」
ハリーホーク「我は球界の王!我の歩む道こそが覇道!我が先にあるは勝利のみ!我が空に唯一点の曇り無し!我を止めたくば存在せぬ我が疵瑕……突いてみるが良いわ!」
レオ「松坂大輔」
ハリーホーク「ぬわあああああああああ!!!!!!!!」
レオ「あのな、ポンタ。あいつは空気読めない無双っぷりで無茶苦茶ヘイト集めてるんだ。球界全体が苦笑い、一人で気持ちよくなりすぎて『名前を呼んではいけないあのチーム』扱い。だから真似しちゃダメなんだぞ。分かったか?」
ポンタ「はーい」
レオ「よーし、いい子だ。じゃあ次は俺が教える番だな」
レオ「いいか、ポンタ。マスコットに大事なものは『カッコよさ』だ。思わず後をついて行きたくなるカッコよさ。魅力的な背中」
レオ「何だかんだスポーツファンっていうのはカッコイイ男が好きなんだ。変な意味じゃないぞ。それに、もうカワイイ系のマスコットは十分すぎるぐらいにいるだろ?だから俺みたいなカッコイイ系のマスコットに需要があるんだよ」
ポンタ「確かに、レオさんはカッコイイです!」
レオ「そうかー。ありがとなー。どの辺がカッコイイ?」
ポンタ「立派なたてがみがすごくカッコイイです!」
レオ「そうかー。自慢のたてがみだからなー。デザインしてくれた手塚治虫先生に感謝だな。で、他は?」
ポンタ「……え?」
レオ「他は、どこがカッコイイ?」
B・B「…ポンタ、来ねえな。俺の前は、あのナルシスト白ライオン…見に行ってやるか」
B・B「おい、ポンタ。お前、何して……」
ポンタ「あと名前!名前がすごくカッコイイです!最高!」
B・B「!?」
レオ「そうかー。名前かー。俺の名前のどういうところがカッコイイ?」
ポンタ「シンプルで力強い、まるで決め球のストレートみたいなところが素敵です!」
レオ「決め球かー。確かに球界で一番キマってるマスコットだとは思うけど、照れるなぁ。これで二十八個目か。で、あとは?」
ポンタ「えっと……耳の先の黒いところが……」
レオ「それは十七個目で言っただろ。しっかりしろ、ポンタ。まだ先は長いぞー」
B・B「…おい、アホライオン。ポンタに何させてんだよ」
レオ「あ?うるせえよブサメン熊。これが俺の教えだ。黙ってろ」
B・B「お前を褒め称えて気持ち良くすることの何が教えだ」
レオ「カッコイイもののカッコイイところを挙げさせてカッコよさを教えてるんだよ」
レオ「Googleで『西武 レオ』を調べると『イケメン』がサジェストで出てくる。見た目が不評すぎて整形までしてるブサメン熊とはデザインの出来が違うんだ。悔しかったら俺のカッコ悪いところでも見つけてみろ!ブサメンが!」
B・B「女装」
レオ「ぐわあああああああああ!!!!!!!!」
B・B「ポンタ。喜びも屈辱も球団と共有する。それが球団マスコットだ。必要とあれば何でもやらなくちゃならない。土下座だろうと女装だろうと断る権利はない」
B・B「だからハリボテのカッコよさなんて簡単に吹き飛ぶ。意味がないんだ。分かったか?」
ポンタ「はーい」
B・B「よし!それじゃあ俺が本当に大事なことを教えてやろう!」
B・B「マスコットに求められるものは『意外性』だ!例えば俺は熊だし、モヒカンだし、豪快なイメージの方が強いだろ。もちろん運動は得意だ。スキーマラソンの大会で何度も上位入賞している。ところが特技の一つとして、ピアノの演奏が出来る」
B・B「公式コラムで展開した知的なマスコット論が話題になったこともある。そういう意外性がファンを強く惹きつけるんだ」
ポンタ「なるほどー」
B・B「ポンタはかわいいイメージだから、猛々しいことが出来るようになるといいかもな」
ポンタ「はい!分かりました!」
B・B「よし!それじゃいっちょ……熊にでもなってみるか!ポンタ!」
マーくん「ポンタくん、遅いなあ…僕の前はB・Bくん…面倒見良すぎるところあるから、ハマってるのかなあ。ちょっと見に行ってみよう」
マーくん「ねー、ポンタくん。そろそろ僕の…」
ポンタ「ぼくはくま……」
マーくん「!?」
ポンタ「生息地はアラスカ…幼いの頃に群れから逸れて厳しい大自然を一頭で生き抜いてきた雄熊…」
マーくん「ポンタウン生まれポンタウン育ちでしょ!?パパとママと妹もいるでしょ!?しっかりして!」
ポンタ「石狩川の上流で鮭のつかみ取りをするのが好きです…よろしくお願いします…」
マーくん「ポンタくん!?」
マーくん「B・Bくん!いったいこれはどういうこと!?」
B・B「ポンタに魅力的な設定をこさえてやろうと思ってな。見た目は狸だけど実は熊。意外性バッチリだろ?」
マーくん「そんな意外性要らないよ!過剰設定だよ!」
B・B「んなこたねえよ。意外な一面はどんだけあっても困りゃしねえって」
B・B「よく知るアイツの知らなかった顏……そこに人は魅力を感じるもんさ。一筋縄ではいかない。そういう感覚がキャラに深みを与えるんだ。そうでないってなら反例の一つでも挙げてみろや、マー坊」
マーくん「エロズリー」
B・B「うがあああああああああ!!!!!!!!」
マーくん「あのね、そもそもB・Bくんのスマートな一面なんてほとんど誰も知らないでしょ?そういうのは意外じゃなくて、意識外って言うの。素直で分かりやすい裏表ないキャラが一番。分かった?」
ポンタ「はーい」
マーくん「うん。じゃあ、次は僕が教えてあげるね」
マーくん「愛されるマスコットに必要不可欠なものは『趣味』だよ。何かに本気で夢中になっている姿は、一生懸命な姿は、とても魅力的なものなんだ」
マーくん「ポンタくんの趣味はなに?」
ポンタ「トカイタウンで色々なお店を手伝うことです!」
マーくん「じゃあそれを頑張るといいよ。そうすればきっとたくさんの人が好きになってくれる」
ポンタ「はい!あの、マーくんさんの趣味はなんですか!」
マーくん「ふふ、変な呼び方。僕の趣味はねえ……これさ!」
クラッチ「ううっ…ポンタくん来ないよう。せっかくお菓子も用意したのに…僕に学ぶことなんてないのかなあ。こっちから呼びに行こう」
クラッチ「ねえ、ポンタくん。次、僕なんだけど覚えて…」
ポンタ「マーくんさん!こっち、投票終わりました!」
クラッチ「!?」
マーくん「ありがとうポンタくん。次はこの山お願い」
ポンタ「はい!投票するのは同じ人でいいですか?」
マーくん「もちろん。絶対に間違えないでよ。僕の大切な推しメンなんだから」
ポンタ「はい!任せて下さい!」
マーくん「まだまだあるから頼むよ。今回こそあの子を選抜入りさせてあげないと…」
クラッチ「マーくん…何してるの?」
マーくん「何って、見ての通りアイドルグループの人気投票だよ」
クラッチ「一人でやりなよ。ポンタくんはこんなことしに来たわけじゃないでしょ」
マーくん「こんなこと…か。クラッチくんは分かってないなあ。これはね、未来への投資なんだ」
マーくん「僕の推しメンがいつかトップアイドルになった時、僕のことをTVで口にする。僕はTVに呼ばれて、その子と共演して、球団の応援歌をデュエットしてCDを出したりする。そして僕はロッテのマーくんから日本のマーくんになって…やがては世界のマーくんになるんだ!」
クラッチ「田中将大」
マーくん「うわあああああああああ!!!!!!!!」
クラッチ「今や球界でマーくんと言えば、昔うちで投げていた田中将大投手のことだからね。マーくんの前からマーくんだったマーくんはマーくんがマーくんになったことが面白くないみたい…分かった?」
ポンタ「えっと…はーい」
クラッチ「そうか。なら良かった」
クラッチ「さ、お菓子を用意したから食べよう。仙台で買って来た萩の月だよ。ポンタくんの口に合うか分からないけど、食べて食べて」
ポンタ「はい!」モグモグ
ポンタ「美味しいです!」
クラッチ「良かったー。僕、ポンタくんに教えることないからせめてお菓子ぐらいはいいもの用意しないと」
クラッチ「……ほんと……教えること、何にもないんだよね……チームはあんまり勝てないし、僕の知名度もすごく低いし……」
ポンタ「……クラッチさん?」
クラッチ「……ポンタくん、今日は、とことんまで付き合って貰うよ」
バファローベル「あれ?お兄ちゃん、ポンタくんは?」
バファローブル「なんか、パリーグのマスコットのみんなのところに遊びに行ったみたい」
バファローベル「帰って来るの?」
バファローブル「そりゃ帰って来るだろ。うちのマスコットなんだから」
バファローベル「……その考えは甘い気がするけど」
バファローブル「え?」
バファローベル「だってポンタくんは元々、バファローズのマスコットじゃないでしょ。ポンタくんがいい子だからバファローズの応援もしてくれてるけど……」
バファローベル「帽子にマークつけておしまいでも別にいいわけじゃない」
バファローブル「……!」
バファローベル「新宮球場にはスワローズのユニフォームを着たポンタくんのシートがある。ポンタくんがタイガースのユニフォームを着たPontaカードもある」
バファローベル「スポンサーがうちを応援することにメリットがないと思ったら…ポンタくんはそのままいなくなったって、おかしくないのよ?」
バファローブル「……僕、ポンタくん呼び戻してくる!」
バファローベル「あ!お兄ちゃん!さすがにシーズン中はいなくなることはないと思う…って、行っちゃった」
バファローベル「…まあ、いっか。アイス食べよ」
ハリーホーク「……ポンタ坊なら、品性の欠片もない埼玉のケダモノ獅子が連れて行きおったわ」
レオ「…ポンタか。見るに耐えない顔面をした北海道のブサメン熊が連れて行ったぜ」
B・B「…ポンタ?アイドルにかぶれた千葉の腹黒鴎が連れて行ったぞ」
マーくん「…ポンタくん?負け癖がついてネガティブになった東北の影薄鷲が連れて行ったよ」
バファローブル「結局、最後のクラッチくんのところか……なんでみんなギスギスしてたんだろう。いいや。今はとにかく急ごう」
バファローブル「ポンタくん!迎えに来たよ!さあ、帰ろ……」
ポンタ「あー……勝てない時は何やってもダメですよね……分かります……(・)(・)」
バファローブル「!?」
クラッチ「だよね……自分が応援してるせいで負けてるような気になって……」
ポンタ「応援しなければ勝てるのかもって、一度は考えますよね……(・)(・)」
クラッチ「でもマスコットだから応援は止められないし、いっそ交通事故とかで休めないかなって……」
ポンタ「……あー……(・)(・)」
クラッチ「パリーグには鳥三羽もいるし……う◯こ色の一番目立たたない奴がいなくなったって誰も困らないでしょ……」
ポンタ「僕もう◯こ色ですよ……チームに負けを運ぶう◯こマスコット……う◯こットです……(・)(・)」
バファローブル「ちょ……ポンタくん!目が点だよ!?226事件の時と同じ目になってるよ!?」
ポンタ「ブル先輩……(・)(・)」
ポンタ「……生まれて来てすいません(・)(・)」
バファローブル「ポンタくん!?」
クラッチ「無駄だよ……ブルくん。ポンタくんは『こっち側』の住人になったんだ。交流戦13試合終えて借金5……パリーグが交流戦1位から5位を独占する中の11位タイ……」
クラッチ「総合勝率は4割を切って、リーグ内順位も最下位……自分の応援するチームがそうなってしまった辛さに、心が耐えられなかったんだよ……」
バファローブル「……!」
クラッチ「ブルくんにだって分かるよね?去年の今頃、ブルくんはもっと凄かったじゃないか……5位に勝率で1割突き放された圧倒的最下位で、オールスターにもベルちゃんだけが呼ばれて……ブルくんもこっちにおいでよ……その資格は十分にあるよ……」
バファローブル「でも去年(2015年)の最下位うちじゃないし」
クラッチ「ひぎゃあああああああああ!!!!!!!!」
バファローブル「…ポンタくん。目が点のままだけど、元に戻らないの?」
ポンタ「すいません。一回こうなっちゃうと戻るの時間かかるんです(・)(・)」
バファローブル「そうなんだ…うちのチーム、何回かそういう顔させてるよね。ごめんね」
ポンタ「気にしないで下さい、ブル先輩(・)(・)」
バファローブル(……そう言われても、気になるよ。チームに応援する価値がないと思ったらいなくなる。ポンタくんは……そういうマスコットなんだから)
バファローブル「……あのさ、ポンタくん。ポンタくんがどう思ってるかは分からないけど……僕はポンタくんと一緒にバファローズを応援出来て、良かったと思ってるよ」
ポンタ「……ブル先輩」
バファローブル(あ、戻った)
ポンタ「僕もブル先輩とバファローズの応援が出来て良かったです!これからも球団マスコットの先輩として、色々教えて下さい!」
バファローブル「……うん、分かった。うちのチームが少しでもいい成績を残せるように、一緒に頑張ろう!」
バファローブル「知りたいことがあったら何でも聞いてよ!何でも答えるからさ!」
ポンタ「どうして去年(2015年)のオールスターに呼ばれなかったんですか?」
バファローブル「ぐはあああああああああ!!!!!!!!」
第2話 お わ り
「バファローズポンタの球団マスコット活動」
お し ま い
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