ヴィーネ「びっしょびしょじゃない!」(百合) (28)

前スレ
ガヴリール「悪魔的所業?」(百合)
の続き(アニメ8話までのネタバレ含む)





「最悪かよ」

昨晩の涙ぐましい努力空しく、結局、お小遣いは増えずじまい。
今日は今日で学校から帰宅しようとした所で、雨も降ってきて、最悪の極み。

「ヴィーネがスーパーの安売りに間に合わないとか言うからこんなことに」

お前はどこの主婦だよ。
そんなんだから、貧乏になるんだっての。

「はあ、走るか」

面倒だな。誰か高級車で送ってくれないものか。
最近の運動不足のせいで、天使の力もろくにコントロールできなくなって瞬間移動できないし、マジないわ。
と、屋根の下から駆けだそうとした瞬間、

「あら、ガヴリールさん」

雨粒が前髪をかすめた。
この声は、

「あれ、まちこ、なに?」

「傘、ないのなら一緒に入っていく?」

「ほんと!? やった! 天使!」

「大げさねえ……あはは」


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訂正:委員長「あら、天真さん」

さすが私、神に愛された女。ついてる。

「あと、まちこじゃなくて委員長でいいわよ?」

「いいじゃん、まちこ。可愛いじゃん、まちこ。私は気に入ったよ、まちこ」

人間臭い名前でいいと思う。

「逆に連呼されると他意を感じてしまうんだけど……」

「ごめんて、委員長」

「それより、最近料理部来てないけど、何か用事?」

「え」

あ、しまった。

「もー、その顔、忘れてたのね」

「ああ、帰宅部のつもりで帰る所だった」

「入った意味ないじゃない」

ヴィーネがちょこちょこご飯食べさせてくれるから、すっかり忘れてた。

「試食部でもいいから、顔出してね。あの二人、天真さんが食べてる姿見たいって言ってたから」

「私は、動物園のパンダか何かか」

まあ、空腹を満たしてくれるなら、なんだっていい。

「明日は行くって、伝えてくれ」

「うん、喜ぶわよ。さて、帰りましょ」

パンッと音が響く。
少女らしい傘を曇天に広げた委員長の横にお邪魔した。

ヴィーネの財布事情もいつ尽きるか分からないし、尽きたら、やはり試食部でタダ飯食べさせてもらうのが最良の選択かも。
そう言えば、あいつが最近安売り行くようになってから、一日一食は栄養あるものを食べているような。
うん、私に従順なできた悪魔だ、ホントに。

「天真さんの家って、どっち?」

「あっち」

「え」

「どうしたの。まさか、方角が違うなんて凡ミスするわけ」

ぎこちなく笑う委員長。
嘘だろ。
私は委員長の腕に素早くしがみつく。

「くーんっ、くーんっ」

「ええ?! 可愛いけど、人間として悲しいことしないで」

こいつ意外と失礼な奴だ。

「大丈夫、ちゃんと送り届けてあげるわ」

そう言えば、ヴィーネがスーパーにいるはずだ。
どうせ、今日もあいつの家にお世話になりに行くし、ちょうどいい。

「知り合いがいるスーパーまで送り届けてもらえたら大丈夫」

訂正:料理部→調理部

数分後。

「ほんとに、ここで大丈夫?」

「ああ、悪いね委員長」

委員長は少し心配そうにしていたが、ややあって帰って行った。

「さっき、別れたばっかりだしまだうろうろしてるだろ」

店内に入って、レジの方を見渡す。
ヴィーネはいないようだ。
お惣菜の所か。
はたまた、冷食コーナーか。
そう言えば、安売りって言ってたしなあ。
入口付近の自動ドアに、『本日の安売り!!』と書かれた広告。

「肉……か」

精肉コーナーに小走りで向かう。
夕方になるとこの時間帯は人でごった返す。
お惣菜に貼られていく半額シールを今か今かと待ちわびる人々。
シールを張る人間が糸を垂らす神に見えてくるな。
泣けてきたわ。
ピンク色の肉類が並ぶ場所に出たものの、ヴィーネはいなかった。
どういうことだ。
とりあえず一周してみるか。
そう広い店内でもない。

「はあっ……ぜーっ……」

やばい。いない。
帰ったようだ。
レジの脇から外を見る。
雨粒がガラスを叩いていた。
おいおい、さっきより雨足強くなってないか。

「傘……」

を買うくらいなら課金するって!
しょうがない。
私はパーカーのフードを目深に被って、店の外へ出た。

「く……ッ」

寒いし、冷たいし、絶対風邪ひくだろこれ。
ん?
そうすると堂々と学校を休み、ゲームができるのでは。
悪くないな。
私はスーパーから飛び出した。

「びっしょびしょじゃない!」

ヴィーネにそう言って迎え入れられたのが数分前だ。

「いやあー、助かった」

タオルを借りて、犬みたいにぶるぶる頭を振った。

「水滴が飛散するからやめい。今、お風呂入れてきたからね」

頭を掴まれ、がしがしと揉みくちゃにされる。

「あんた、なんで雨の中来ちゃったのよ」

「たかりにきた」

「はー、そんなことだろうと思いました」

「この借りは返す」

「返す気もないのによくまあそんなことが言えるわね……それより、お風呂入るでしょ?」

「え、いい」

風邪ひかないといけないし。

「え、いや、そこ遠慮しないでよ。なんでよ、風邪ひくでしょ」

「風邪ひいて学校休むつもりだから別にいい」

「はあ? 子どもみたいなこと言ってないで、入るわよ」

「断る」

ヴィーネに腕を掴まれる。

「あのさ、誰が看病すると思ってるのよ」

私は人差し指を正面の人物へびしっと向けた。
予想はしていたが、指をへしおらんばかりに握りしめられた。

「いたたっ!? 背中っ、流してくれるんなら、入るけどっおお?! いたいって、マジで!?」

「……背中ねえ」

何様のつもり?
とか、蔑んだ目で言われると思ったのだが、

「まあ、別にいいけどー」

と意外な返答。
前も後ろも逃げ場がないなら、観念するっきゃない。
ラッキー、ついでに髪も洗ってもらおう。
ほんと、乾かすにしろ、切りたいくらいめんどくさいんだよね最近。

お風呂のお湯が張った頃に、いつも通り部屋で全裸になった。
ヴィーネがなぜか後ろ向きで着替えていたので手伝ってやったのだけど、真っ赤になって怒られた。
慌てて浴室に退散したが、結局向かう所は同じだったので、こってり絞られた。

「もお、びっくりしたじゃない!」

「パンツ下ろすの手伝っただけだろ」

「最低」

鏡越しに睨まれる。
うへえ。

「あんたは黙って磨かれてなさい」

口では文句を言いつつも、手は優しくスポンジを体に当てていた。
温かくて、ぬるぬるして気持ちいかも。

「天国……」

「……そりゃ、どーも」

悪魔が天国作り出してどうするんだよ、とはあえて言わなかった。

「腕上げて」

「ん」

腋の下に、スポンジが滑り込んだ。
ひっ。体がわずかに跳ねた。
良かった。ヴィーネは気づいていない――うん?
ヴィーネが下を向いて、顔を抑えている。

「ヴィーネさん?」

「……うん」

「あの、どうなさいましたか」

「なんでもありません」

と、脇と腕を洗う作業に戻る。
右側は慣れたせいか、体が反応しなくなっていた。
良かった。またからかわれる所だった。
いやー、でも人に洗ってもらうのって最高だわ。

「次、左ね」

「うーい」

そして、また脇に差し込まれるスポンジ。

「ぁん……っ」

やばい。
今度は声に出た。
しかし、ヴィーネは洗い続けてる。
問題ない――うん?
ヴィーネが上を向いて、鼻を抑えている。

「ヴィーネさん、度々聞くけど、どうした?」

「気にしないで」


様子がおかしいが、気にするなと言うなら放っておこう。
と、腕を洗い続けるヴィーネにふと疑問が沸いた。

「ヴィーネ、そろそろ後ろはいいんじゃないか」

彼女の動きが止まる。

「ええ、そうね」

「前もやってくれ」

狭いバスルームのため、しょうがなく私が振り向いた。

「っしょ、これでいいだろ。ヴィーネ?」

目線どこよ。

「待って、ガウ。あの、足、足が邪魔だから、後ろから洗うわっ」

「ああ、悪い」

もう一度壁に埋め込まれた鏡の方へ方向転換。
どうしたんだ。

「上せたのか? なら、ささっと洗って出るぞ」

訂正 待って、ガウ→待って、ガヴ

眠くなってきた。
欠伸をしながらヴィーネの様子を伺う。
そろそろと、後ろから前側に腕が伸びて、お腹にスポンジがあてがわれた。
中心から上下に擦られて、ぬるぬるが広がっていく。
白い泡で下腹部が埋め尽くされた。
と、そこでまた気づく。

「いつまで、お腹洗ってんの」

「分かってるわよ」

分かってるなら早くしろって。
なに、のろのろ――。

「……あ、ヴィーネもしかして胸とか洗うのが恥ずかしいんだろ」

「ち、ちが」

鏡の中のヴィーネが慌てていた。
図星か。

「やっぱり」

「だ、だから違うって」

「いっつも自分の洗ってるくせに、何恥ずかしがってんだ」

ヴィーネの腕を掴んで、私の胸を触らせる。

「ほら、自分で言うのも悲しいが、大草原と小さな家しかないぞ? 気にするな」

彼女の手の平にすっぽり収まる我が胸。

「一応、脂肪の塊だから、それなりに柔らかいけども」

ヴィーネの手の甲の上から自分の胸を揉む。

(百合)って必要ないんじゃ…

「そう言えば、人間界には揉めば大きくなるとかって都市伝説があるってさ……ヴィーネ?」

先ほどから相槌が聞こえない。
肩越しにヴィーネを確認する。
今にも、蒸発しそうな真っ赤な顔をしている。
おわっ、これ本格的に上せたのかも。
彼女の顔を両手で挟んで覗き込んだ。
とろんとした目。

「もしもし?」

「ガヴリール……」

「お前さ、お風呂出た方がよくね?」

「へいき……ちょっとくらっと」

私はヴィーネの頭を抱いて肩に乗せてやった。

「ほら、深呼吸」

「だ、ダメダメっ、これ余計に大変っ」

どうしろっちゅーのか。

「ヴィーネに倒れられたら困るんだよ」

「ご、ごめんね、ガヴ」

肩にヴィーネの声が響く。


「もしかしてさ、私の美しすぎる体見て興奮した? なーんて」

ぴくりとも動かないヴィーネ。
と、ぼそぼそと言葉が聞こえた。

「そ、そんなわけないし……」

「ヴィーネ……お前」

「なによ」

「変態だったのか」

「ち、違う!」

弾けるように顔を上げた。

「落ち着け、またくらっとするって」

「だって、ガヴが変なこと言うから!」

「いやいや、私くらいの美しすぎる天使になると男女問わずそうなるって。うむ、悪い気はしない」

「いっつも髪ぼっさぼさのゆるゆるパーカー着てだらだら歩いてるくせに何言ってんのよ……」

言ってくれるな。

「それだけ言える元気があるなら大丈夫だろ」

「バカな事ほざいたバカ天使のおかげでね」

「よし、じゃあ再開な」

「う、うん」

意を決したように、ヴィーネが洗い始める。
足のつま先から徐々に上に上に。

「ガヴって、ほんとつるつるの陶器みたいね」

「当たり前だ、天使だぞ」

太ももが泡で見えなくなるくらいになり、
漸く胸の方にも手もといスポンジが伸びた。

「洗うわよ」

「はいはい」

いちいち聞かんでいい。
生唾を飲み込むような音が聞こえた。
気のせいだろう。
泡が下乳を押し上げ、スポンジによってゆっくりと乳房の形が変わっていくのが分かった。
産毛一本一本をかき分けて慎重に進む。
スポンジが優しく胸の突起をかいた。

「んっ……ぁ」

はっ。

「ガ、ガヴっ、変な声出すな、バカっ」

いやいやいや。
今のは触り方がおかしいですって。

「もっとさ、ごしごしって洗えないのかよ!?」

「だって、ガヴのおっぱい洗ってるって思ったら、もったいなくて……」

何言ってんだこいつ。

チョップを入れようとしたら、反対の胸をまた優しく包むように擦られた。

「ゃ……んぅ」

「ガヴ……、ガヴリール」

私の名前を何度か呼びながら、先ほどよりも強く擦る。
体を捩って逃れようとしたら、他方の腕で肩を固定された。

「ヴィ、ヴィーネさん、ちょっと、待って!?」

「ごめん……」

ごめんじゃなくてね?

「優しくするから」

吐息というか獣のような呼吸のヴィーネ。
ひいいい。
いつの間にかスポンジは床のタイルの上に転がっていた。
細い指がそこをつま弾く度に、私は腰掛椅子と共に跳ねる。
このままだとやられるやばいマジで。
とっさに、シャワーの栓を捻った。
勢いよくお湯が頭上に降りかかる。

「きゃ?!」

ヴィーネの手が止まった。
すかさず、私は浴槽の方に逃げた。
泡が多少ついていたけど気にせずに避難。

震える子羊のように、ガチガチ歯を鳴らしてヴィーネを見た。

「ヴィ、ヴィーネさんや、どうしたんですか」

「あ、あのガブ……」

この間は優しくして、などと柄にも無く弱気な発言してたのに。
まあ、術の効果ではあるけど。

「食われる? 私、食われる?」

「た、食べないわよっ」

「ホントに?」

ガクガクブルブルしながら、もう一度上目遣いで聞く。

「う、うん……たぶん」

目を逸らしながら、ヴィーネは言った。

「目逸らしたっ!? この、悪魔めっ!!」

「悪魔だってば!」

「若い女の天使の血を求める悪魔がいるって聞いたことあるけど」

「私、吸血鬼じゃないって」

何度か暴言を互いに吐きかけつつ、やっとネタ切れした所で、

「よっと……」

ヴィーネも浴槽に入って来た。

「待てよ、何もしない?」

「悪かった。何もしない……たぶん」

「たぶん?!」

慄いて仰け反っていると、あれよあれよと体を掴まれて足の間にはめ込まれた。

「なんですかねこれ」

ヴィーネに聞く。
ネジがさっきから一本ぶっ飛んで見当たらないらしい彼女は、

「なんとなく」

と理由にすらなってない事を呟いていたので、顎に頭突きしてやった。




終わり

>>15
まあ一応

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