モバP「プリティフェイス」 (37)

・細かいことは気にしないでください

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P「……う……ここは……?」


P(ふと気が付いたら、見覚えのない部屋のベッドの中)

P(頭がなんだかボーッとする……確か、俺は……ロケの帰りの車で……)

P(帰り道で……バスが事故に……)



P「……そうだっ! みんなはっ!?」ガバッ



「あー、起きたんだー?」

P(声の方に振り向くと、白衣を着た女の子が立っていた)

P(……状況が状況じゃなかったら、多分スカウトしていただろう)



P「……キミは?」

「んー。キミの主治医というか、研究者みたいなー?」

P「主治医?」

「そ。事故のせいで一年も寝たきりでさ。もー色々ガマンするのがタイヘンでねー」

P「い、一年!?」

「うん。見る? 当時の写真」ピラッ

P「うげっ!? 」

「にゃっははー。ちなみにグロテスク注意かも」

P「遅いわ……小梅の好きな映画に出てきそうな顏だわ……」

「あ、安心してね? ちゃんとそこは治してるから。ハイこれ」

P「あ、ああ……」

P(この子の言う通りなら、俺は交通事故で酷い怪我を負っていたらしい)

P(今は痛みとかはないけど……渡された手鏡を、恐る恐る覗き込むと――)

P(俺の担当アイドルの、塩見周子がそこにいた)

P「は……え?」



P(鏡の中の周子が、間抜けな顔をする)

P(ためしに頬っぺたを抓ってみると……痛い)



「どう? カンペキでしょー」


P「……」ペタペタ


「キミの持ち物、ぜーんぶ燃えちゃったんだって」

「スマホも他のも、みーんな全部復元不可能」

「唯一残ってたのが、胸ポケットの写真だけだったんだよねー」

「コレも所々焦げちゃってるけど、顔のトコはセーフでさー」

P(女の子が色々言ってるけど、ちっとも耳に入らない)


P(俺が右の頬っぺたを触ると、鏡の中の周子も頬っぺたを触る)ペタペタ

P(軽く口角を上げると、鏡の中の周子も口角を上げる)ニッ


P(……)

P(コレが鏡ってことは……この顔は……)

P(紛れもなく……つまり……)

P(オレの顔が、シューコの顔に……?)フラッ



ドサッ

「あれれ、もうおネム?」


「んー。試したい事あったのになー」


「ま、いっか」


「それじゃ、実験開始ー」


「まずは、そのニオイを鼻腔で解析~♪」

P「――はっ!?」

P「か、鏡……っ!」

P「……夢じゃ、なかった」


P(髪の色とか、髪型の細かいトコとかで違いはあるけど……本当に、周子にウリ一つの顔だ)

P(……ってまさか!)ガバッ


P「よかった……ちゃんとついてる……胸も男のままだ……」

「おっはよー。朝から本能的だねー」

P「うわぁっ!? こ、これは違っ」

「まあまあ。コーヒー淹れたけど飲む?」

P「……」


P(さらっと流されると、余計恥ずかしい)

P(コーヒーを啜りながら、状況を確認しよう)

P(ロケ帰りの交通事故で生死をさまよい、この子に助けられて)

P(そこまでは良かったんだが……)



「へぇー。キミは元々アイドルのプロデューサーで、その写真は担当の子ってコト?」

P「ああ……てか、フツウに有名だったと思うんだけどなあ、シューコ」

「今までそっち方面にはキョーミなかったからねー」

P「そっか……」ズズッ

P「……苦い」

「ブラックだからねー」


P「……なあ。助けてくれたのは本当に感謝してるんだけど、顔は戻せないのか?」

「んー……いいけど。あの写真になるよ?」

P「あぁ……そうか。そうだよなぁ」

「ま、元の顔がわかるものがあれば戻せるんじゃないかなぁ」

P「まじかっ」

「また同じことするだけだからねー」

「うん、キミの家とココ近いみたいだし。服なら貸したげるから行ってくれば?」

P「おおお……なにから何まで面目ない……」

「にゃっははー。ギブ・アンド・テイクだしね」

P「ん?」

「わかんないならいいよー。うん、そうと決まれば走ってゴー♪ なるべく急いでった方がいいと思うな」

P「わかった! ありがとう!」ダダダッ

「Good luck♪」



「……じゅるり」

P「――と、意気込んで来たはいいが」


『××号室のPさん? 随分前に引き払われてるよ』


P「としか教えてくれなかった……」

P「……冷静に考えたら、そりゃそうだよなぁ」

P「一年行方不明、交通事故、側から見たら部外者だもんなぁ……」

P「……となると」


・衣――無し
・食――無し
・住――無し


P「さらに身分証も何も無し」

P「コレ、詰んでね……?」


「アレ、シューコちゃん?」

P「……やっぱあの子に頭下げるしかないのか……」ブツブツ


「あれー? もしもーし?」


P「……でも頼ってばっかなのも悪いし……」ブツブツ


「おハロー? ぼんじゅーる?」


P「……かといって背に腹は……」ブツブツ


「……」


P「うーん……」ブツブツ


「耳元にフーッとな☆」


P「わひゃっ!?」

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