神谷奈緒「チョコの中の本音」 (15)
アイドルマスターシンデレラガールズ 神谷奈緒のSSです
アイドルそれぞれに担当Pがいる設定
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あたしの名前は神谷奈緒
あたしは今、年に一度のイベント「バレンタインデー」と戦っている最中だ
今の戦場は自宅のキッチン。あたしの両手には、溶かしたチョコが入ったボウルとゴムべら
見てろよ~! 今年も美味しいチョコを作ってやる!!
【 数日前 】
加蓮「はぁ……」
凛「加蓮、どうしたの? さっきから顔が暗いけど」
奈緒「ま、まさか!? どこか悪いのか!? きゅ、救急車!!」
加蓮「違うって! そういう事じゃなくて!」
凛・奈緒「 ?? 」
加蓮「バレンタイン、近いでしょ? どうしようかなーって思って」
午前のレッスンがようやく終わって、ゆっくりお喋りしながらご飯を食べていたのに……
加蓮が言った「バレンタイン」の言葉とともに、あたしの前には大きな壁が立ちふさがった
奈緒「あー……」
凛「んー……」
加蓮「プロデューサーさん、毎年楽しみにしてるからなー。2人はどんなチョコ作るの?」
凛「私は……いつもどおり、かな。去年と同じチョコレートケーキ。味は進化させてるつもりだけどね」」
奈緒「凛Pさん、ケーキが好きなんだっけ?」
凛「うん。この前もね、一緒にケーキバイキングに行ったんだ。そしたらプロデューサー、お皿一杯にケーキを乗せちゃってさ、
そんな量食べられるの? って思ってたらあっという間に全部食べちゃって。ふふっ! プロデューサー、ほっぺにクリームが
付いたままだったから私が拭き取ってあげたんだ。まるで子供みたいで、ちょっとかわいいって思っちゃって」
加蓮「り、凛! もう分かったから。凛はチョコケーキって事ね。がんばろ!」
奈緒「……凛は凛Pさんの事になると途端に喋りだすよな……」
凛「そ、そうかな? 気のせいじゃないかな……あ、加蓮はどうなの?」
加蓮「んーと……私は今年もハート型にしようかなー」
奈緒「加蓮はホント健気だなぁ。」
加蓮「今年はもう少し攻めてみようって思ってるんだ。私のプロデューサーさん、いっつもはぐらかしちゃうから」
凛「加蓮Pさん、シャイだよね」
加蓮「そこが良いんだけどねー。…………さぁて」ニヤ
加蓮があたしの方を向いてニヤリとする
あ、嫌な予感
加蓮「奈緒は今年のチョコ、どうするのー?」ニヤニヤ
凛「あ、それ私も聞きたい」ニヤニヤ
奈緒「あたしぃ!? あ、あたしもいつもと同じだよ! そんだけ!」
加蓮「えー? ホントぉ?」ニヤニヤ
凛「絶対嘘ついてるよね。じゃあ奈緒の尋問、始めようか」
奈緒「な、なんだよ尋問って!?」
凛「私たちだって本音を言ったんだから、奈緒からも聞かないとね」
加蓮「奈緒Pさんへの気持ち、聞かせてもらうよ~奈緒~」
奈緒「や、やめろ! やーめーろー!!」
___
そんな数日前のやり取りを思い出す
あの時は結局、本音を言うまで解放されなかった
は、恥ずかしかった……
奈緒「……今はチョコに集中だ!」
今年のチョコは、いつもより気合いが入っている
チョコのレシピを探していたら、とっても素敵なチョコを見つけたんだ
作るのは大変だけど、Pさんの為だしな!
世話になってるし………それに……
あ、顔が赤くなってる。忘れろ忘れろ……
奈緒「……こんなもんかな?」
スマホでレシピを確認
……うん、大体同じくらいか
さっすがあたし! やればできるんだよな!
奈緒「クッキーも完成だ! あとは…………」
震える手で記す、あたしの気持ち
その気持ちをこのチョコレートにそっと閉じ込める
奈緒「……」
喜んでくれるだろうか
これを見たPさんはどんな反応をするんだろう
もし拒絶されたらと思うと、泣きそうになる
でも
それでも
あたしの気持ちを知ってほしい
そして……Pさんも、あたしと同じ気持ちだったら嬉しいな
奈緒「よし! 完成だ!!」
___
バレンタイン当日
早めに事務所に行くと、既にアイドル仲間が数人来ていた
みんなどこかソワソワしている
理由は考える前に分かる
みんな自分のプロデューサーにチョコを渡すんだろう
すぐにあたしもその中の一人になった
P「おはようございまーす。……あれ、奈緒」
奈緒「あ、お、おはよ!」
P「おはよう。今日は早いな。午前のレッスンまで、まだ時間あるけど」
奈緒「あー、まあアレだよ。とにかく! Pさんの机に行こうよ」
P「ん? おう」
各プロデューサーごとにパーテーションで仕切られた個室
ここなら誰にも見られないで済む
P「奈緒、用があるんだろ? 言ってみな」
奈緒「な、なんで分かったの!?」
P「奈緒のプロデューサーだからさ! ……って言いたいけど、本当は奈緒がソワソワしてたからね」
奈緒「あたし、そんなに態度に出てた?」
P「出てたよ。かわいかった」ニヤニヤ
奈緒「い、いきなりかわいいはやめろ!」
P「あっはは! ……さて、そんなかわいい奈緒は俺になんの用かな?」
奈緒「……えーと……」
P「……」
奈緒「…………」
P「……毎年渡してるのに、まだ慣れないか?」
奈緒「!!!」
P「今日が何の日くらいは知ってるよ。そして奈緒が何をしたいのかもね」
奈緒「……そりゃ、そうだよな。事務所の雰囲気がそうだもんな」
P「今年もチョコを期待しても良いのかな?」
奈緒「……あ、あまり良い出来じゃないけど……」
P「そんな事はないよ。美味しいし、毎年楽しみにしているんだ」
奈緒「あ、ありがと。ばか。…………はい、Pさん」
P「いつもありがとう、奈緒」
奈緒「……」
P「今年も四角い箱だ。中は去年と同じハート、かな」
奈緒「……おう」
P「このチョコはまるで奈緒みたいだ。素直になれない外側の奈緒はこの箱。素直な内側の奈緒は、中のチョコって感じで」
奈緒「ん? んー、よくわかんないや」
P「俺もちょっと恥ずかしくなった」
奈緒「アハハッ! Pさんのばーか。………………あの、さ。 Pさん、あたし……いっつもPさんにお世話になってるから。
あたしは素直じゃないからさ、こんな事しか出来ないけど……た、たくさん気持ちは……込めたから」
P「うん」
奈緒「……開けないのか?」
P「いいのか? いつもは家で開けろって言うのに」
奈緒「い、いいよ。開けても」
P「今年は特別って事かな。それじゃあお言葉に甘えて」
心臓が……ヤバい
中を見られたら……どうなっちゃうんだろ
うぁ……顔が、熱くなって……
奈緒「や、やっぱ待って!」
P「え?」
奈緒「ごめん……やっぱり、恥ずかしい……ほんと、ごめん」
P「気にしなくていいよ。奈緒、改めてありがとう。すごく嬉しいよ」
そういってPさんはあたしの頭を撫でてくれた
撫でられると落ち着く……いつもは恥ずかしいからやめさせるけど、今は……いいよね?
P「落ち着いたか? 顔真っ赤だったから」
奈緒「……多分、今も真っ赤だよな」
P「うん、超赤い」
奈緒「Pさんのせいだな、絶対」
P「奈緒の顔を赤くさせるのは俺の仕事だからね」ニヤニヤ
奈緒「笑うなよぉ……ったく」
P「奈緒はかわいいなぁ」
奈緒「かわいいは禁止!」
P「かわいいよ、奈緒」
奈緒「もういいから!は、恥ずかしいから!」
P「……」
奈緒「……ねぇ、Pさん」
P「ん?」
奈緒「チョコ見ても、嫌いにならない?」
P「……ならないよ。嫌いになんかなるもんか」
奈緒「そ、それなら、いいよ」
P「別に無理しなくても」
奈緒「大丈夫。もう大丈夫だから」
P「……」
Pさんは無言で包み紙を開ける
四角い箱の中はハートのチョコ
去年と同じ。見た目だけは
P「かわいらしいハートだ。去年よりも良くなってるな」
奈緒「ん……た、食べてみてよ」
P「うん。いただくよ……っとその前に」
奈緒「?」
P「この形を残しておかないと」カシャー
奈緒「!? と、撮るなよ!」
P「記念だよ。毎年写真に撮って残してるんだ」
奈緒「そ、そんなの聞いてないし!!」
P「言ってないからな」
奈緒「はぁ…………ばか。早く食べちゃえ」
P「かわいい奈緒のかわいいチョコ、いただきます」
奈緒「黙って食べてよ!」
P「…………おいしい……程よく甘くて食べやすいよ」
奈緒「そ、そっか。良かった、へへっ」
P「頑張ったな。奈緒、ありがとう」
奈緒「……もう一口、食べてよ」
P「お? わかった。…………ん? 中に何か入ってるのか?」
奈緒「……」
P「……クッキー、か? なんだろ」
奈緒「……」
Pさんがそれを手に取る
緊張で、鼓動がすごく早い
今にも倒れそうだ
Pさんの顔を見れない
P「……! 奈緒、これは……!?」
奈緒「レ、レッスン行ってくる!!!!!」
P「え!? おい、奈緒ーー!」
限界
あたしはその場から逃げだした
やっぱ無理! 無理だよ!
……ごめんね、Pさん
まだあたしは素直になれないみたい
___
P「奈緒……」
奈緒に逃げられた……顔真っ赤にして……
無理もない、か
……確かにこれは恥ずかしい
P「…………あー、ヤバい。顔がニヤける。かわいすぎるだろ……奈緒」
チョコの中のクッキーには "大好き" の文字
P「……俺も、同じ気持ちなんだけどね」
奈緒の気持ちを一口で食べる
今まで味わったことのない甘さ
P「……ホワイトデーは、気合い入れるか」
甘い甘いバレンタインをくれた奈緒にはたっぷりお返しをしないと
まずはレッスンルームに行って、奈緒の顔を更に真っ赤にしてやろう
……そう悪だくみをする俺の顔も、真っ赤になっているはずだ
終わりです
短くてごめんなさい
奈緒かわいい
依頼出してきます
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