―――泰葉'sルーム
李衣菜「えーそれでは、第……何回だっけ。まぁいいや、バレンタイン会議を始めまーす」
加蓮「はーい。もう恒例だよね」
泰葉「今年もこの季節が来たね。どうしましょうか、Pさんへのプレゼント」
李衣菜「毎年チョコじゃ芸がないよね。もっと刺激的でロックなプレゼントじゃないと!」
加蓮「あっ、じゃあはいはいっ。いい考えがあるのっ」
李衣菜「はい、加蓮さん」
加蓮「『今年のプレゼントは……私たちだよPさん♡』」
泰葉「ねぇ李衣菜、この前ドールハウスの材料を探しに雑貨屋さんへ行ったんだけどね」
李衣菜「お、なんかいいのあった?」
加蓮「無視はつらいよー?」
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泰葉「良さそうな毛糸がたくさん置いてあったの。それで、マフラーとか編めたらいいかな……って」
李衣菜「へー、マフラーかぁ。いいね、Pさんも喜んでくれそう!」
加蓮「りーいなっ。妹分が寂しがってるよー?」ムギュー
李衣菜「あ、でも私編み物ってやったことないんだよね……。2人みたいに普段から細かいこともやってないし」
泰葉「私も編み物は初めてだよ。だから3人で分担したらいいと思うの、途中で毛糸の色を変えたりして」
加蓮「やーすはっ。加蓮ちゃんかまってほしいなー?」コシコシ
李衣菜「そっか、それなら負担も軽くなるし見た目的にもいいかも。それでいこっか?」
泰葉「あ、いいの? あっさり決めて」
李衣菜「善は急げって言うしさ。他のアイデアが浮かんだら来年に持ち越しってことで♪」
泰葉「ふふ、そう言ってくれるなら。じゃあ今年は手作りマフラーね♪」
李衣菜「おー♪」
加蓮「…………」プクー
泰葉「加蓮もそれでいい?」
加蓮「……どうせ私の意見なんて無視するでしょ。ふんだ」プイ
李衣菜「最初に変なこと言うからだよ。拗ねない拗ねない」
加蓮「せっかくこういうイベントなんだから2人も素直になればいいのに」
李衣菜「そんな簡単に自分をプレゼントなんてロックじゃないね」
泰葉「いくらプライベートでもアイドルってことを忘れちゃダメでしょう?」
加蓮「うぐ。かっこいいし正論だし……」
泰葉「まぁ……年々想いは膨れ上がってるんだけど」
李衣菜「私も最近お仕事でPさんに見られてると変に気合入っちゃって……」
加蓮「ほ、ほら。2人だって本音はそうなんじゃない」
李衣菜「だ、だからこそこういうイベントで発散させるんだよ。行き過ぎないように」
泰葉「そ、そう。ちょっとずつ想いを伝えるの。伝え方を間違えないようにしないと」
加蓮「むー。自由な恋愛って憧れるけど」
李衣菜「うん、でも私たちはアイドルだから。応援してくれる人たちのためにも自由にはできないよ。恋愛以外でもさ」
加蓮「んー……、なんだか大変な道歩いてる気がするなぁ。今更だけど」
李衣菜「あはは、今更すぎだよ。それでも私たちは選んだんだから」
泰葉「うん。しっかりコントロールして付き合わなきゃ、自分の気持ちと」
加蓮「そうだよね……頑張ろっか。私たちとPさんのアイドル生活のためにっ」
李衣菜「へへ、うん!」
泰葉「ふふっ。そんな話をしたところで悪いんだけど……Pさんへのプレゼントのこと決めないと」
加蓮「あ、マフラーだっけ。私も賛成……ってこんな話、ファンのみんなに罪悪感ある……」
李衣菜「ま、まぁオフレコってことで」
泰葉「内緒にしましょう、内緒に。秘密はしっかり共有してお互い釘を刺しておくの」
加蓮「うわ、そういうこと言う~? 泰葉アンタ、強かっていうか……」
李衣菜「敵に回したら絶対やばいやつだ……」
泰葉「ふふふ。ありがとう」ニコ
((褒めてない……))
泰葉「あ、褒めてないって顔してる。ふふっ」
李衣菜「……泰葉には逆らわないようにしよう」
加蓮「ほんとアンタは出会ったときから……。はぁ、身内で良かった……」
泰葉「さ、マフラーについて一緒に考えましょう。……敵にならないように、ね?」
李衣菜「わ、分かりました泰葉さんっ」
加蓮「り、りょーかい……泰葉先輩」
泰葉「うん、頑張りましょう♪♪」
―――
――
―
―――手芸雑貨店、編み物コーナー
李衣菜「――うわー……。毛糸いっぱいだ」
泰葉「ね、たくさんあるでしょう? ここなら思った通りの色も揃うと思うよ」
李衣菜「こんなファンシーな空間……ロックだねぇ」
泰葉「雰囲気に飲まれて変なこと言ってる」クスクス
李衣菜「えへへ。……ってあれ? 加蓮どこ行ったの?」
泰葉「え? あれ……さっきまで隣に」
加蓮「~~♪ ~~~♪」フラフラー トテトテー
李衣菜「……なんか色々興味持ちすぎてうわついてる」
泰葉「迷子にならないでね……?」
加蓮「見て見て、この子! かわいくない?」
李衣菜「なにそれ、マスコット? 包帯巻いてるけど怪我してるの?」
加蓮「ボコられグマのボコだって。喧嘩っ早いのにすっごく弱いらしいの」
李衣菜「なにその設定……」
加蓮「買っちゃおうかなー♪」
李衣菜「まぁ気に入ったんならいいけど。ってそれより、毛糸とか編み針とか見ないと」
泰葉「……もう編み針とか必要な物は見つけました。あとは毛糸だけ。どこかの加蓮さんがふらふらしてる間にね?」ジトッ
加蓮「うっ、ごめんなさーい……」
李衣菜「ほら見なよ……」
泰葉「――さて。どんな色にしましょうか」
李衣菜「色々あるねー。虹色マフラーとかもできそうなくらい」
加蓮「ちょっと、作る手間考えてよ?」
李衣菜「あは、ですよねー」
泰葉「ふふ、とりあえず私たち3人で3色ね。んー、色は……」
加蓮「普通にパーソナルカラーでいいんじゃない? 私ミントグリーン、李衣菜サンセットスカイ、泰葉ナイトブルー、とか」
泰葉「……合う?」
加蓮「言ってから考えたけど……びみょい?」
泰葉「寒色暖色混じってると……」
加蓮「だからってエバーリースの常磐色1色だけじゃ……」
李衣菜「……んー、その3色でいいんじゃない? 私たちらしくて。ありふれた色じゃ特別感ないしさ」
泰葉「私たちらしさ……」
加蓮「ん……特別感、か」
李衣菜「うん。誰も真似しないような色で作ったら、きっと世界でたった1つのマフラーになるよ」
李衣菜「せっかくPさんに贈るんだから私たちだけの贈り物にしよう。ね?」
泰葉「、…………」
加蓮「……はぁー……」
李衣菜「え、あれ? なんかダメだった……?」
加蓮「李衣菜ってほんと……。ほんと、もう」ペシ
李衣菜「あいた。な、なんで?」
泰葉「……うん。李衣菜。李衣菜っ」ペシ ペシ
李衣菜「だ、だからなんでっ、いたいっ」
加蓮「よしっ、ミントグリーンどこかなー。爽やかな薄荷色~♪」
泰葉「私も。えっと、紺色……星空みたいな濃紺……♪」
李衣菜「え、ええ~……。たまに2人がよく分かんなくなるよぉ。わ、私も夕焼け色探そ……」
「「ふふふっ♪」」
―――
――
―
―――帰り道
てくてく……
李衣菜「――袋、結構かさばるね。……なんか毛糸多くない?」ガサッ
泰葉「失敗したら作り直せるようにね。編み物の本も買ったし、ちゃんとやれば大丈夫だと思うけど」
加蓮「まぁ私に任せてよ。ネイリングで鍛えた指さばき、見せてあげるっ」
泰葉「私も細かい作業は得意だし、なんとかなりそうね」
李衣菜「私はイチから2人に教えてもらう感じだね。よろしく、先生」
加蓮「ふふん。料理は李衣菜に任せてた分、ここで女子力見せないと」
泰葉「ね。李衣菜に甘えてばかりじゃいられないもの」
李衣菜「へへ、頼もしいなー」
加蓮「Pさん、喜んでくれるかな」
泰葉「喜ばせるの。私たちで」
李衣菜「そだよ、いつも色んなものをもらってるんだから。これはPさんってファンへの恩返しだよ、愛情を返すのは当然っ」
加蓮「あ、大義名分ってやつ? 李衣菜もワルだね」
泰葉「ふふ……言葉遊びね。悪い政治家さんみたい」
李衣菜「い、言いたい放題だね……。2人にも付き合ってもらうよ?」
泰葉「ええ、元よりそのつもり。いつまでも一緒だから」
加蓮「ずっと3人で、Pさんのところでアイドルしよ。ねっ」
泰葉「一蓮托生いいじゃない?」
加蓮「繋がって、離れない?」
李衣菜「……使用料取るよ?」
「「ふふ♪」」
李衣菜「もー、へへへ――♪」
てくてく……
―――それから
加蓮「――はいはーい、練習終わり。李衣菜頑張れー♪」
李衣菜「うぅ、目がチカチカする……!」セッセセッセ
泰葉「大丈夫、李衣菜? ちゃんと休憩しながらね」
李衣菜「も、もうあんまり時間ないし……やるよ、すぐ泰葉にバトンタッチするからっ」
加蓮「早くねー。……さてと、私は……」ゴソゴソ
泰葉「加蓮? あ、それ……羊毛フェルト?」
加蓮「あ、気にしないでー。手持無沙汰だからちょっとね」
李衣菜「くっ、ふ、はっ……!」セッセセッセ
―――
――
―
―――
李衣菜「――で、できた……ふひぃ……」プシュー…
泰葉「ありがとう李衣菜、ここからは私の番……!」セッセ セッセ…
加蓮「お疲れさまー。すごいね李衣菜、初めてとは思えない出来じゃん♪」
李衣菜「で、でしょうに……。Pさんを想って、へへ、へへへ……!」
加蓮「その間に私も羊毛フェルトでボコ作っちゃったけど。ほらかわいい」ポンッ
ボコ(羊毛フェルト)「」
李衣菜「そんなことしてたの!? ていうかいつの間に材料を……」
加蓮「どさくさに紛れて買っちゃった。袋持ってくれてありがと李衣菜♪」
李衣菜「どーりで毛糸にしちゃ多いと思った……!」
―――
――
―
―――
泰葉「――ふう。うん、私の分は終わり。最後、加蓮。よろしくね」
李衣菜「羊毛ボコも応援してるよー。アンカー頑張れー」クイクイ
ボコ「」ノシ
加蓮「ちょっと、人の傑作で遊ばないでよ……ま、すぐ終わらせちゃうけど♪」セッセ セッセ
李衣菜「余裕そうなのがムカつくなぁ……」
泰葉「そんなこと言ってあげないで、李衣菜。ずっとそわそわしてたんだから、加蓮ったら」
李衣菜「へぇ。そんな早く編みたかったんだ、Pさんのために。だからこの子作って気を紛らわせてた、と」
加蓮「ふ、ふーん。聞こえなーい」セッセ セッセ
泰葉「ふふ……♪」
ボコ「」コテン
―――
――
―
―――事務所
がちゃり
P「おはようございます――おお寒っ、手袋くらい買おうかな……」
李衣菜「――Pさんっ!」
P「え――」
泰葉「ハッピー♪」
加蓮「バレンタインっ♪」
P(突然首に巻かれたのは……優しくてあたたかくて)
P(そして愛しいこの子たちの匂いが微かに香る、素敵な贈り物だった――)
おわり
―――Pの自宅
がちゃ
P「ただいま~」
ぴにゃ(ペット)「ピニャーン!」トテチコ
P「おー、出迎えご苦労さん。ご飯ちゃんと食ったか?」ナデナデ
ぴにゃ「ピーニャァ♪」ピョーン グリグリ
P「うおっと。はは、甘えんぼめ」
ぴにゃ「ピッ? ピーニャ、ピニャピ?」
P「ん? あぁこれか。あの子たちにもらったんだ。あったかいぞ」
ぴにゃ「ピー…ピニャ、ピニャァン♡」モフモフモフ
P「マフラーって言うんだ、マフラー。お前も巻いてみるか?」
ぴにゃ「ピッ! ピーニャ、ピーニャー!」コクコク
P「よしよし。それじゃあ……よっと」
毛玉ぴにゃ「ピニャ…」ウットリ
P「あはは、巻いたら毛糸の塊みたいになったな」
毛玉ぴにゃ「ピニャァン…ピニャピーニャ」
P「3人の匂いがするって? そっか、お前も分かるか」
毛玉ぴにゃ「ピーニャー、ピニャピニャー?」
P「……ああ、嬉しいよ。俺は幸せ者だ」
毛玉ぴにゃ「ピーニャ♪」
P「ほら、もういいだろ? そろそろ――」
毛玉ぴにゃ「…ビニャア!」テテテー
P「あっ!? こら待て、返せ!」
毛玉ぴにゃ「ピーニャー♪」
P「こんにゃろ、ご主人の言うこと聞けっ!」ダッ
毛玉ぴにゃ「ピーニャピニャニャ、ピニャーン!」タタタッ
P「やめろ咥えるんじゃないほつれるだろ!」ドタドタ
壁「どんっ!」
P「あっすみません!」
オチ
というお話だったのさ
今年もアイドルからチョコもらいました
モバP「だりやすかれんの電池切れ」
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