ヘレン「Vの悲喜劇」 (17)
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事務所
李衣菜「ふぅ…もうすぐバレンタインだね」
七海「そうれすねぇ。皆さんにお魚チョコを作って日頃の感謝の気持ちを伝えたいれす」
美世「お、お魚チョコ!? それはちょっと不安だけど…」
七海「ん~、確かに生魚だと今の季節はノロとかが気になるれすねぇ」
李衣菜「衛生的にやっちゃダメなやつだよ……」
七海「んじゃ、しょうがないんで焼き魚にチョコをコーティングするとしますれす」
李衣菜「そういう問題!?」
七海「甘じょっぱいのはティーンの流行りれすからねぇ。皆ハマると思うれす」
李衣菜「ティーンって? とりあえず魚は候補から外した方がいいよ…」
美世「じゃあ、あたしも車型のチョコを作っちゃおうかな」
李衣菜「あー、美世ちゃんは車好きだもんね。車の形のチョコケーキとか可愛いと思うよ」
美世「うーん…でも、形だけのありきたりなチョコじゃみんなもPさんも満足できないよね」
李衣菜「いやいやいやいや全然ありきたりでいいんじゃない? それに十分美世ちゃんの個性が出てるし」
美世「やっぱりここは車に対して敬意を払うためにも、タイヤに直にチョコをコーティングしてタイヤの味を知ってもらうとか」
李衣菜「もうそれはチョコじゃないよ…というか美世ちゃんタイヤ食べたことあるの!?」
美世「車好きなら食べてるよね?」
李衣菜「死ぬから!!」
七海美世『むぅ~~』
ヘレン「……このように、日本ではバレンタインとは海外に比べても一大イベントになっているようね」
ヘレン「この地に降り立ったからには、私も世界レベルのチョコレートを作らないと」
ヘレン「感謝の気持ちを伝えられるような究極のチョコレートとは、どうやったら完成させられるのかしら」
ヘレン「技能、そして心持ちーーー」
ヘレン「……ふふ」
ヘレン「……世界レベルのチョコレートを作るには、やはりアレしかないわね」
そしてヘレンはバレンタインに間に合うように準備を重ねた
ヘレンは、自分の身体を磨き上げた
人目をひくほど美しいボディ
彼女は一途にバレンタインを追い求めたーーー
李衣菜「あっ、ヘレンさん!」
ヘレン「あら、どうしたのかしら。李衣菜」
李衣菜「あのさ、もうすぐバレンタインデーじゃない?」
ヘレン「そうね。心なしか、街中も華やかになっているように見えるわ」
李衣菜「それで、その…相談なんだけど」
ヘレン「ええ。私でよければ相談に乗るわ。世界に通じる答えをあなたにあげる」
李衣菜「そ、そんな大層なことじゃないんだけど」
ヘレン「それで、あなたの相談とは何なのかしら」
李衣菜「その、どんなチョコを作ったら一番ロックかなって」
ヘレン「ロック?」
李衣菜「いや、あのねっ…Pさんによろこんでもらえるようなチョコを作りたいなって……うぅ。恥ずかしいんだけど」
ヘレン「なるほど…李衣菜、恥ずかしがるようなことではないわ。好意を持つ相手に対して喜んでもらいたいと思う気持ちは素晴らしいことだから」
李衣菜「ヘレンさん…」
ヘレン「いいわ。あなたの望むロックで素敵なチョコの作り方を教えてあげる」
李衣菜「あ、ありがとうございます!」
ヘレン「世界のチョコを教えるのも、私の役目なのよ」
李衣菜「そ、それで…どんなチョコをヘレンさんは作るの?」
ヘレン「いいわ。教えましょう」
李衣菜「は、はい」
ヘレン「世界的には古典的な方法たけどーーー」
李衣菜「古典的?」
ヘレン「ずばりーーー自分の身体をチョコにすることよ」
李衣菜「……」
ヘレン「……理解できたかしら? この世界を」
李衣菜「ゴメン……よ、よく分かんない」
ヘレン「やはりね。しかし、この方法が一番魅力的なチョコだと思うわ」
李衣菜「世界レベルに飛躍しすぎてるよ…」
ヘレン「一歩踏み出す勇気よ。李衣菜」
李衣菜「え?」
ヘレン「世界でも全身にチョコを塗りたくって自分の身体を愛する者に献上したという言い伝えがあるくらい、チョコのコーティングとはバレンタインにおいて相手への愛を示す最上の行為だと思うわ」
李衣菜「そ、そうなのかなぁ」
ヘレン「そう。そして最もロックなチョコの渡し方だといえるーーー自分自身がチョコになるなんて、これ以上ないくらいの愛情表現だから」
李衣菜「な、何かヘレンさんに言われるとそれっぽく聞こえてくるよ…」
ヘレン「やるかやらないかはあなた次第よ。私は方法だけ伝えておくわ」
李衣菜「……」
ヘレン「ただのチョコの塊と、チョコでコーティングされた女体ーーーあの人はどちらを選ぶかしらね」
ヘレン「では、アデュー。李衣菜」
李衣菜「……」
李衣菜「……た、確かに身体にチョココーティングは考えたことなかったなぁ」
李衣菜「それに、ちょっとロックなんだよね」
李衣菜「……やっちゃおうかなぁ」
そして、バレンタイン当日ーーー
モバP「どうした皆。何か賑わってるな」
ちひろ「皆チョコを作ってきたみたいですよ」
モバP「なるほど!」
ちひろ「今日はバレンタインデーですからね」
チョコレート・タイムーーーー
これは緑の女も思わず微笑んでしまう一年のうちの和みイベントである
この時間は緑の女もプロデューサーの休憩を赦すパーフェクト・タイム
それほどの和みを出すということだ
七海「プロデューサー。七海もチョコを持ってきたれす」
モバP「七海。ありがとう!」
七海「ふふ~。力作れす~」
モバP「ラッピングも可愛らしいな」
七海「えへへ。開けてみてくらさい~」
モバP「オッケー。オープン!」
モバP「これはーーー」
七海「新鮮なお魚をチョコでコーティングしました~。やっぱり生じゃないとダメれすよねぇ」
モバP「うん。この生臭さ、見た目からしていかにも衛生的に良くなさそうな感じーーー七海。腕を上げたな」
七海「むふふ~。どうぞお食べくらさい~!」
モバP「うむ。いただこう」
ナポ……
モバP「パーフェクトォッ」
七海「やったれす~。嬉しいなっ」
モバP「もう涙が出そうな味だな。明日にでも腹を壊しそうだ。ありがとう七海!」
七海「喜んでもらえて光栄れす~」
美世「あたしもPさんにチョコを作ってきたよ!」
モバP「美世。ありがとう!」
美世「はい。どうぞ!」
モバP「これはーーー」
美世「タイヤコーティングチョコだよ! このタイヤが付いていた車……覚えてる?」
モバP「美世ーーこれは、お前を初めて事務所に連れて行った時の車のタイヤじゃないか?」
美世「うん……覚えててくれたんだね。Pさん」
モバP「今は別の車になったが、美世が走り抜けた時代を彩った車のタイヤだ。忘れるもんか」
美世「Pさん……!」
モバP「あのタイヤ…どこに消えたかと思ったら、美世が持ってたのか」
美世「どうしても捨てられなくて…いつかPさんに食べてもらうために、取っておいたんだ」
モバP「そうか……」
美世「食べてくれる?」
モバP「もちろん。いただきます」
モニュ……
モバP「パーフェクトォッ」
美世「よかったぁ~」
モバP「チョコタイヤの味がクセになりそうなのが良い感じだな。すぐに腹を壊しそうだ。ありがとう美世!」
美世「うんっ。またタイヤ料理作ってくるね!」
そして、ドアが開き誰かが入ってくる音が聞こえたーーー
その姿に事務所が一気にざわつき始めた
プロデューサーが振り向くと、そこにはチョコにまみれた1人のアイドルの姿があった
チョコの下から、顔が赤くなっているのが見えたーー
そのチョコに覆われた身体はとても艶かしく、美しかったーーーー
モバP「その姿はーーーー李衣菜か?」
李衣菜「う、うん。Pさん、私……恥ずかしいんだけど、チョココーティングしてきたんだ」
モバP「……」
李衣菜「Pさんに一番気持ちを伝えられるチョコーーーー私を、受け取ってくれる?」
モバP「……」
モバP「もちろんだ」
李衣菜「Pさん!」
モバP「李衣菜のロックな気持ち、しかと感じたよ」
李衣菜「え、えへへ……じゃあ、食べてくれる?」
モバP「あぁーーーーしかし」
李衣菜「え?」
モバP「この貴重なチョコを自分だけで食べるのはもったいないな」
李衣菜「い、いいよっ。Pさんに食べてもらうために作ってきたんだし」
モバP「李衣菜チョコはみんなで分け合うことにしよう。おーい、みんな」
七海「ふふふ……李衣菜ちゃん、お魚チョコよりも大胆なチョコを作っちゃったんれすねぇ」
美世「この身体……チョコでぬらぬらしてて車のボディの光沢みたいだよぉ?」
モバP「じゃ、みんなで楽しんでくれよ。そろそろチョコレート・タイムも終了間近だし、仕事に戻んないと」
李衣菜「ちょ、ちょっとPさん!?」
七海「えへへぇ。七海たちが食べ終わるまでに帰ってくるんれすかね~?」
美世「うふふ。李衣菜ちゃんのチョコ、とっても美味しいよ……?」
七海「ぺろり」
美世「ぺろり」
七海美世『ぺろぺろり』
李衣菜「あ、ああっ!! ダメっ、こんなの……!!」
ぺろりんちょーーーーー
チョコと化した李衣菜は、アイドルから美味しいと評判だったそうだ
自分自身をチョココーティング、これも一つのロックなのたろう
これは、後にロック・バレンタインと称されることになるーーー
ヘレン「李衣菜も、世界レベルのマニアックな快感を覚えてしまったようね」
ヘレン「しかしこれも世界に到達してしまった者の定めーー強く生きなさい。李衣菜」
ヘレン「さて、私もPに世界レベルのチョコレートをあげないと」
ヘレン「もちろん……私手作りのね」
ヘレン「やはりチョコというのは手作りが世界的にも一番よ。ふふっ」
世にも世界レベルな物語・Vの悲喜劇
完
完結でぃ!
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