宮本「フラレデリカ」 (13)

5作目です。
地の文メインです。
すごく短いです。

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夜の街を歩く。
街の雑踏はとうに途絶え、昼間の喧騒はともかく、絢爛と闇夜に輝く楼閣は一時を過ぎるや途端に姿を消した。

かつて輝いた楼閣は墓碑銘のごとくただ立ちそびえるのみである。
夜の街には無機質な額縁に収まった空が広がる。
だがしかし星々は己の輝きを誇ることはない。

夜の街に星は流れない。

風の噂が流れた。
彼がとある人と交際をしている、と。

そりゃもう事務所の中はてんやわんやさ。

彼に真偽のほどを問う者、放心する者、はたまたいつもと変わらない者。
いつもと変わらない者は、そうでないものを慰めていたり、と。

彼女は後者だった。

彼の机の下で丸くなる少女。
少女に声をかけ、彼女はその少女を照らす。

そして、傘の下に隠れる少女のもとへ、と。

電灯は、導線のつながれた先へ先へと、灯りをともしていった。

立ち尽くす信号機が明かりを照らす。
歩みを進め、夜の街の谷間を進む。

星々は己の位置を変える、そこには意志はなく、ただ機械的な自転運動によって。
額縁に飾られた絵はただ灰被り。

きっとそこに意味はないのだろう。
ただ、星の光が絶えることもない。

三方に壁。
道を照らす明かりもなければ、道もない。

行くあてのない袋小路。
見上げた空は、さらに切り取られ、幾分狭くなった。

歩くにつれ彼女が巻き起こす風も、行くあてをなくし、宙に上る。

星の光は大気に散乱し、一筋を描く。

「ふんふんふふーん、フラレデリカー」

暗がりに放たれた一筋の光。
紡がれた言葉を伴なって。
頰を伝うその光は天体運動のイレギュラー。

夜の空に星が流れた。

流れ星は熱を帯び、火を灯し、光る。
そしてその熱は、あたかも氷を溶かすかのように。

来た道を進む。
流れ星は己の道を自ずから照らし、足跡を残す。
そう、見るものを魅了する軌跡。

夜の街に星が流れる。
ただ、己の意思にのみよって。

おしまいなのです。
雰囲気的にフレちゃんを新宿の東口の奥まったところでしんみりさせたいなぁ、って思って書いてみました。
お付き合いいただけたらありがとうございました。
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