穂乃果「その顔が気になって」 (103)

穂乃果「ああ~もうっ!雪穂め~~っ」

穂乃果「確かに食べたよ!ケーキ食べちゃったよ!」

穂乃果「でも雪穂のだなんて思わないじゃん、名前も書いてなかったし!」

穂乃果「それなのに…それなのに……、あんなに言うことないじゃんかーーっ!」

穂乃果「はぁ……雪穂のばか……」

穂乃果「………そして私のばか」

穂乃果「はぁ……」


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トコトコトコ

穂乃果「そういえばこの辺はあんまり来ないな~」

穂乃果「友達もこの辺に住んでる子居なかったし」



穂乃果「あ、公園だ。丁度良いしちょっと休憩でもしていこう」

穂乃果「ベンチベンチ~っと」キョロキョロ

穂乃果「よっ」ストン

穂乃果「ふぅ……」

「早く早くー」
「お姉ちゃん待ってよー」

穂乃果「ふふっ、かわいい」

穂乃果(昔は雪穂とああやってよく遊んだな~。懐かしい…)

穂乃果(喧嘩なんてしなかったのに…)

「そこのお嬢さん、隣いいかな?」

穂乃果「へ?…あ、どうぞどうz――」チラッ

希「やっほ~穂乃果ちゃん」ヒラヒラ

穂乃果「って!希ちゃん!?」

穂乃果「な、なんでこんなところに?」

希「それはウチのセリフよ?穂乃果ちゃんこそ何してるん、こんなところで?」

穂乃果「え~と、私は…………何してるんだろうね」

希「…………ふむ」ジー

穂乃果「あはは……」

希「……まあええか。それでウチが何故こんなところにいるか…やったね」

穂乃果「う…うん」

希「それは簡単なことや、実はな……」ピッ

希「ウチ彼処のマンションに住んでるんよ~」

穂乃果「……ええ~~っ、希ちゃんの家ここなの!?」

希「うん、そうなんよ」

穂乃果「へ~、知らなかったよ~」

希「まあ誰にも言ってないしね。あ、絵里ちは知ってるけど」

希「こんなところで会ったのも何かの縁やし寄ってく?」

希「お茶とお菓子くらいは出してあげよう♪」

穂乃果「本当?わ~い、いくいく!」

希「ふふっ、それじゃあついておいで~」

穂乃果「はーい!」トットットッ

穂乃果「えいっ」ギュ

希「……穂乃果ちゃん」

穂乃果「ん?」

希「……なにナチュラルに腕組んでるん?」

穂乃果「え~、だめ~?」

希「……まあええけどね」

穂乃果「よかった♪」

穂乃果「……………」ギュッ

希「……」

……………

希「それじゃあお茶準備してくるから適当に座っててな」

穂乃果「あ、うん…」ストン

穂乃果「」キョロキョロ

希「ふふっ、随分ものが少ないな~とか思ってる?」

穂乃果「う…うん。あの……希ちゃんってお母さんとかは……?」

希「ウチの両親は昔から転勤が多くてね、それで今は別に暮らしててウチは独り暮らしなんよ」

穂乃果「そうだったんだ」

希「まあたまに手紙とかも来るし、今は……ピラニアでも釣ってるんやないかな?」

穂乃果「って海外!?しかもえ~と……アフリカ!?」

希「……ピラニアは海を越えたんか、すごいね」

穂乃果「でも独り暮らしなんて大変だね、全部自分でやらなきゃいけないし」

穂乃果「それに……少し寂しそう」

希「……ふふ、もうなれちゃったよ」カチャ

希「はい、お茶どうぞ」

穂乃果「ありがと~」

希「お菓子はクッキーとチョコレートね」

希「チョコレートは美味しいと思うよ~。この前お母さんが送ってくれたんよ、…………ベルギーから」

穂乃果「って今度は………べるぎーってどこだっけ?」

希「ヨーロッパやね」

穂乃果「そう!よーろっぱ!」

穂乃果「希ちゃんのお母さん達っていったい何してるの?」

希「ふふっ、それは秘密♪」

希「……というかそれより穂乃果ちゃんの頭の世界地図の方が気になるんやけど」

穂乃果「ふっふっふ~、秘密だよ」

穂乃果「ふぁ~、このチョコレートおいし~♪」パクパク

穂乃果「こっちのクッキーも色んな形でおもしろ~い♪」

希「ふふっ、喜んでもらえたみたいでよかった」

穂乃果「あれ?希ちゃんは食べないの?」

希「ん?別に食べとるよ?」

穂乃果「でもさっきから私ばっかり食べてる気が……」

希「いいんよ、気にしないで好きなだけ食べて」

希「それにウチは今穂乃果ちゃんを見てる方が楽しいから」

穂乃果「ん?それってどういう……」

希「いや~、穂乃果ちゃんは美味しそうに食べるな~と」

希「それに表情がコロコロ変わって見てて面白いんよ」

穂乃果「うう……よくわかりやすいって言われます…」ショボン

希「も~そんな顔せんといて、ほめてるんだから」

希「感情を素直に表現できるって素敵なことやん?」

希「嬉しそうな穂乃果ちゃん見てるとこっちまで嬉しくなってくるんよ」

希「だからそれは穂乃果ちゃんの良いところやと思うよ?」

穂乃果「そうなのかな~?………まあいっか」

穂乃果「希ちゃんが喜んでくれるなら私も嬉しいし」

希「そうそう、単純なのが一番よ」ズズズ

穂乃果「……あれ?今ちょっとバカにされた?」

希「してないしてない♪」

穂乃果「ほんとかな~?」

希「あ、このチョコ中がとろっとろになってておいしいんよ。食べてみて」ヒョイ

穂乃果「そうなの?わ~い、食べる食べる~♪」パクッ

穂乃果「ん~♪おいし~っ♪」

希「ふふふっ」

穂乃果「ズズズ、はぁ~……幸せだよ~」ポケー

希「ふふふっ、その様子なら大丈夫そうやね」

穂乃果「?」

希「何か悩み事でもあったんかな~と思ったんよ、公園で会ったとき少し元気無かったから」

穂乃果「あ……もしかしてそれを気にして誘ってくれたの?」

希「まあ要らぬ心配だったみたいやけどね」

穂乃果「希ちゃん……ありがとう」

希「いいんよ、それに運命的なものも感じたし」

穂乃果「運命?」

希「そ、たまたま穂乃果ちゃんがウチの家の前の公園にいて、そしてたまたま帰る途中だったウチがそれを見つけた」

希「まるで神様が巡り会わせたみたいに、偶然という名の奇跡………………な~んてね」

穂乃果「おおっ、なんかスピリチュアルだ!」

希「そうそう、スピリチュアルやろ?」

のぞほの「………ぷっ、ふふふふふっ」

穂乃果「ふふふ…………はぁ、それなら雪穂との喧嘩も神様のいたずらだったらいいのに」

希「雪穂ちゃんと喧嘩したの?」

穂乃果「……うん、まあ悪いのは神様でもなんでもなくて私なんだけどね」

穂乃果「いつもそうなんだ。私我が儘でいつも雪穂に甘えてばかりで……」

穂乃果「お姉ちゃんなのにね、……あはは」

希「……ふふっ、ふふふふふっ」

穂乃果「……希ちゃん?」

希「ふふっ…ごめんな。穂乃果ちゃんもそういうので悩んだりするんだな~と思ってね」

穂乃果「わ…私だって悩むことくらいあるよぉ……」

希「そうだよね、お姉ちゃんやもんね」

希「ウチにはわからん悩みだったからついね」

穂乃果「希ちゃんは兄弟はいないんだ」

希「うん、独りっ子」

希「だから兄弟、姉妹って言うのはよくわからないんやけど……」

希「でも穂乃果ちゃんはそのままでいいんやないかな?」

穂乃果「そのままで?」

希「そう、姉妹の形なんてそれぞれやない?」

希「例えば絵里ち。彼処はあんまり喧嘩もしない、絵里ちはいかにもお姉さんって感じで亜里沙ちゃんもそんな絵里ちに甘えてて」

希「ウチにはとっても仲の良い姉妹に見える」

穂乃果「う…うん、そうだね……確かに絵里ちゃん達は喧嘩とかしてなさそう……」

穂乃果「仲良しだよね……」

希「そして穂乃果ちゃんと雪穂ちゃん」

希「穂乃果ちゃんの家に行くとよく大きな声で言い合ってる」

穂乃果「うっ……」

希「そしてよく穂乃果ちゃんにお小言言ったり、『まったくお姉ちゃんは~』なんてのをよく聞く」

穂乃果「うぅ……」

希「みんなには丁寧に接するのに穂乃果ちゃんにはトゲがあること言ったりもしてたかな?」

穂乃果「…………………」チーン

希「……ふふ。でもウチには仲良しの姉妹に見えるんよ」

穂乃果「………え?」

希「喧嘩してるのも仲の良い証拠、お小言も穂乃果ちゃんのことを考えて色々言ってるし」

希「それに穂乃果ちゃんが甘えれば何だかんだでやってくれる事もあるんやない?」

穂乃果「……た、確かに何か頼んだりお願いするとやってくれる」

希「そしていつも穂乃果ちゃんを見る目はとっても優しそうだよ」

希「だから雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんが大好きなはずや」

希「そして、穂乃果ちゃんは雪穂ちゃんのことどう思ってるん?」

穂乃果「…………もちろん大好きだよ」

希「ほら、仲良し姉妹やん」

穂乃果「で、でも絵里ちゃんの所は亜里沙ちゃんが甘えたりしてるよね?でもうちは……」

希「ちゃんと甘えてると思うけど?」

穂乃果「え?」

希「他の人と違って穂乃果ちゃんだけにはたまにトゲがある言い方してるって言ったやろ?」

希「雪穂ちゃんの甘え方はちょっと素直じゃないんよ、きっとね」

希「しっかりしてて大人っぽい雪穂ちゃんも穂乃果ちゃんの前だと年相応な所がある」

希「雪穂ちゃんにとって穂乃果ちゃんは特別なんよ」

希「……な~んてね、ウチが見た印象だけだから本当の所はわからないけど」

希「でもやっぱり、姉妹なんやな~って思うで」

穂乃果「………希ちゃん」

希「ん?」

穂乃果「……ありがとう、なんか元気出た!」

穂乃果「そうだよね、私達には私達の姉妹の形がある!」

穂乃果「不安になる事なんて無かったんだ、うん!」

希「ふふ、そうそう そのいきや」

穂乃果「帰ったらちゃんと謝る!だめなお姉ちゃんでごめんなさいって!」

穂乃果「でも雪穂のこと大好きだからだめなお姉ちゃんだけど見捨てないでって!」

希「……うん、まあいいんやないかな?」

希「すっごく情けないこと言ってるけど……」ボソッ

穂乃果「それじゃあそろそろ帰るね」

希「もう暗くなり始めてるし気を付けて帰ってな」

穂乃果「うん、ありがと」

穂乃果「……ねえねえ、また遊びに来ても良いかな?」

希「おっ?どうしたん?そんなにここが気に入った?」

穂乃果「そうじゃなくて……えへへ、希ちゃん優しいからまたこうやってお話したいな~って」

希「ふふ、ウチなんかで良ければいつでもお話しよ」

希「だからまた来てな」ナデナデ

穂乃果「えへへ、よかった」

ガチャ

穂乃果「それじゃあまた明日ね~、希ちゃん」

希「うん、明日の練習遅刻せんようにな~」

穂乃果「しませんよーーっだ」

希「ふふふっ」

穂乃果「ふふっ、じゃあね」ヒョイ

ギギギギ……

穂乃果「」フリフリ

希「」フリフリ

ギギギ……

希「………っ」

穂乃果「え?」

ガチャン

ガチャッ!

穂乃果「希ちゃん!?」

希「わっ!ど、どうしたん?」

穂乃果「え……あ、あれ?」

穂乃果(いつもの希ちゃんだ……)

穂乃果(ドアが閉まる前、笑ってたのに最後一瞬だけ変わって……)

穂乃果(な…なんだろう?わからないけどなんか心がざわっとしてつい……)

希「もう、穂乃果ちゃんどうしたん?」

希「あ、もしかして忘れ物?」

穂乃果「えっと……違くて……」

希「?」

穂乃果「……あはは、ごめんごめん。なんか気のせいだったみたい」

希「そう?」

穂乃果「うん、それじゃ今度こそ」

希「雪穂ちゃんと仲直り頑張ってな~」

穂乃果「ありがと、じゃあまた明日ね」

希「うん、また明日」

ガチャン

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー



ボフンッ

穂乃果「はぁ……」

穂乃果(取り合えず雪穂とは仲直り出来て良かった……)

穂乃果(ケーキ作戦成功だったな、……出費は大きかったけど)

穂乃果(でも一緒に食べて雪穂も喜んでくれたし、安いものだよね……あの笑顔が見れるなら)

穂乃果(雪穂が嬉しそうにしてるのを見ると私も嬉しくなって、つい笑っちゃって)

穂乃果(希ちゃんもこんな感じだったのかな?)

穂乃果「…………希ちゃんか」

穂乃果「あのとき見た顔は何だったんだろう?」

穂乃果「笑顔……ではあったよね?でも少し違和感があって……」

穂乃果「う~ん……。でもどこかで似たような表情を見たことがある気がするんだよね」

穂乃果「どこだったけな~?いつだったけ?」




「穂乃果~~、お風呂入っちゃいなさい!」




穂乃果「あ、はーーーい!」

穂乃果「……お風呂入りながら考えよ」

トットットットッ

穂乃果「お母さん、それじゃあお風呂先もらうね」

ほのママ「ん?」チラッ

ほのママ「ええ、入って来ちゃいなさい」パサッ

穂乃果「ん?お母さんなに見てたの?」

ほのママ「ああ、これ?」スッ

ほのママ「アルバムよ、穂乃果と雪穂のね」

穂乃果「私達の?」

ほのママ「小さい時のやつだけどね、お父さんが昔張り切って撮ってたから」

穂乃果「へ~、何で急に?」

ほのママ「ふふ、何となくよ。あなた達が喧嘩して、でもすぐ仲直りして」

ほのママ「それ見てたらつい見たくなったのよ」

穂乃果「そっか……」チラッ

穂乃果「ん?……あれ?」

ほのママ「どうかした?」

穂乃果「こ、この写真!」

ほのママ「ん?この雪穂の写真のこと?」

穂乃果「そう!」

穂乃果(この写真の雪穂、さっきの希ちゃんの表情とそっくり!?)

ほのママ「ふふ、懐かしいわね。小さい時の雪穂はよくこんな顔してたわ」

穂乃果「……え、そうだったけ?」

ほのママ「穂乃果は覚えてないかもしれないけど、よくしてたのよ……穂乃果を見送るときね」

穂乃果「私を見送るとき?」

ほのママ「ええ、穂乃果がことりちゃんや海未ちゃんと遊ぶようになった頃かしら?」

ほのママ「友達と遊ぶため外に飛び出してくあなたを小さい雪穂はただ見ているしか出来なくて」

ほのママ「雪穂は昔から少し大人しい子だったから、穂乃果から『帰ったら遊ぼうね』と言われるといつもこうして寂しそうに笑うのよ」

穂乃果「寂しい……」

ほのママ「今まで自分とだけ遊んでたお姉ちゃんが他の人と遊ぶようになって、一緒にいられる時間が減って……寂しかったんでしょうね」

ほのママ「あんたは気付かなかったでしょうけど」

穂乃果「……全然気付かなかった」

穂乃果「確かにこんな顔をしてたのは覚えてる、けどそんなこと思ってたなんて……」

ほのママ「雪穂は我が儘も言わなかったからね、……あんたと違って」

穂乃果「あ、あはは……」

ほのママ「だからあの時はそうするしかなかったのよ」

ほのママ「まあ構ってもらうために今は色々言うようになったのだけど……」ボソッ

穂乃果「?」

ほのママ「何でもないわ。それより早くお風呂入って来ちゃいなさい」

ほのママ「私だってその後入るんだから」

穂乃果「わわっ、そうだった!」

穂乃果「それじゃあ行ってきまーす!」

タッタッタッタッ

チャプン――

穂乃果「寂しい……か」

穂乃果(雪穂のあの顔は寂しかったんだ……)

穂乃果(でも着いていけない、そして我が儘を言わない雪穂はああして笑って見送るしか無かったんだね……)

穂乃果(ということは希ちゃんも?)

穂乃果(希ちゃんも寂しいの?でもそれを言うことは出来ないからああして寂しそうに笑ったの?)

穂乃果(それまでは普通だったのに最後の一瞬だけ?)

穂乃果「………うう~~、わかんないよぉ~」

穂乃果「私なら寂しかったら寂しいって言っちゃうもん、希ちゃんの気持ちがわからないよ……」

穂乃果「う~ん…………………よし!」スクッ

ザバンッ

穂乃果「悩んだってわからないもん、それなら行動あるのみだよね!」

穂乃果「でもその前に今日は………」

ダッダッダッダッダッ

バーーン!!

穂乃果「雪穂!」

雪穂「うひゃぁ!?」

雪穂「お、お、お姉ちゃん!?急になに!?」

雪穂「というかノックしてって何度も――」

穂乃果「今日一緒に寝ようよ!」

雪穂「言って――………へ?」

穂乃果「だ~か~ら~、たまには一緒に寝よ?」

雪穂「え?いや……何でそうなるの?」

穂乃果「今日は雪穂と一緒に寝たい気分なの!ねっ、いいでしょ?」

雪穂「や…やだよ、なんでこんな年でお姉ちゃんと一緒に寝なきゃなんないのさ……」

穂乃果「いいじゃんか~~、雪穂おねがい!」

雪穂「やだって――」

穂乃果「おねがぁい!」

雪穂「………………はぁ、もう……わかったよ」

穂乃果「本当!?やったーーっ」ピョンピョン

雪穂「でも布団とか取らないでよ?寝相悪いんだから」

穂乃果「わかってるよ~~。それじゃあ枕持ってくるから待っててね!」

雪穂「はいはい」

タタタタッ

穂乃果(罪滅ぼしって訳じゃないけど今日からもっと雪穂といる時間を増やそ)

穂乃果(小さい時寂しくさせちゃったのはもうどうしようもないけど、これからは寂しくさせないようにするんだもん)

穂乃果(一緒にいれば寂しくならないよね)

穂乃果(希ちゃんだってきっとそうだよ、うん!)

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー



絵里「はい、それでは今日の練習はここまでにしましょう」

「「はーーーい」」






穂乃果「ねえねえ希ちゃん?」

希「ん?どうしたん?」

穂乃果「今日も希ちゃんのお家行ってもいい?」

希「これから来るん?」

穂乃果「うん、でも一旦家帰ってからお邪魔したいな~って」

希「別にええけど……でもそれだと居れる時間少なくなるで?」

穂乃果「大丈夫!お泊まりセット持っていくから!」

希「って、泊まるつもりなん!?」

穂乃果「うん、…………やっぱりだめかな?」

希「別にだめやないけど……でもええの?明日学校やん?」

穂乃果「……えへへ、希ちゃんと登校するの楽しみ」

希「……はぁ、まあそういうのもたまには良いかな?」ナデナデ

穂乃果「えへへ」

穂乃果「それじゃあ荷物取ったら行くからね、またあとで~~」

希「はいはい、待っとるよ~」

タッタッタッタッ

ピーンポーン

希『はーい』

穂乃果「穂乃果だよ~開けて~」

希『その前に合言葉は~?』

穂乃果「へ?合言葉!?」

希『そうやで~合言葉言わんと開かないよ~』クフフ

穂乃果「そんなの聞いてないよ~……」

希『はい、10…9…8…7……』

穂乃果「わわわっ、え~っと……え~っと……」

希『6…5…4…3……』

穂乃果「ああっもうっ」サッ

穂乃果「希パワー注入!は~い、ぷしゅっ」

希『…………』

穂乃果「…………っ///」プルプル

希『……イタダキマシター』

穂乃果「…………正解なんてわからないよ!///」

希『いや、うん…まあ、今開けるね』

穂乃果「ぅぅ~///」

穂乃果「むぅ~……」プク~

希「穂乃果ちゃんごめんて、な?」

穂乃果「意地悪さんな希ちゃんなんてしりませんよ~だ」

希「もう、そんなほっぺ膨らませちゃって……えいっ」プニ

穂乃果「なぁにするのさ~……」

希「お饅頭みたいでおいしそうやな~と思って」

穂乃果「ど~せ、お饅頭屋の娘は頬っぺたもお饅頭みたいですよ~」

希「ふふ、なんかおいしそうな穂乃果ちゃんの頬っぺた見てたら、ウチお腹空いてきたんやけど……穂乃果ちゃんはどう?」

穂乃果「お腹……………」グゥ~

穂乃果「………///」

希「正直やね、よろしい」

希「それじゃあご飯の準備と行きますか」

希「おいしいご飯作るから機嫌直してな?」ナデナデ

穂乃果「………///」コクコク

トントントントン

穂乃果「…………」ソロ~

希「ん?」チラッ

希「ふふ、もうちょっとで出来るから待っててね~」

穂乃果「ぅ~、でもやることないし……何か手伝うことないかな?」

希「ん~そうやねぇ……それじゃあお皿出してもらおうかな?」

穂乃果「うん!どこにあるの?」

希「そこの棚にあるやつおねが~い」

穂乃果「は~い」

穂乃果「それにしても希ちゃん料理出来たんだね~」カチャン

希「まっ、これでも独り暮らし歴は長いからね~」

希「ある程度自炊は出来ないと……お金的に不味いんよ」

穂乃果「おお……現実的な理由だ」

希「といってもめんどくさい時は買ってきちゃったり、外で食べちゃったりするんやけどね」

穂乃果「あはは、でも仕方ないよね。μ'sの練習もやって、巫女さんのバイトもあるんだよね?それは大変だよ~」

希「大変やけどこの忙しいのがちょっと楽しいんよ」

穂乃果「そうなの?」

希「うん、昔は独りで本を読むとか勉強するしかなかったから、今とっても充実しとるんよ」

穂乃果「…………」

希「ふふ、μ'sのみんなといると毎日何かしら起こるからね。もう楽しくて楽しくて――あ、お皿もらえる?」

穂乃果「……あ、はーい!」カチャカチャ

希「ありがとう。だから忙しくてもへっちゃらやね~」

希「むしろ……このくらいが丁度いいんよ……」フッ

穂乃果(あ……またあの顔だ……)

穂乃果「希ちゃ」

希「はいっ、かんせ~い!」

希「ウチ特製スペシャルチャーハンや!」

希「一杯食べてな♪」

穂乃果「…………」

希「ん?どうしたんぼーっとして?」

穂乃果「……あ、ううん」

穂乃果「おいしそう!早く食べよ希ちゃん!」

希「ふふ、先食べててもええよ~。ウチ料理で使った道具洗っちゃうから」

穂乃果「だめだよ希ちゃん!」

希「え?」

穂乃果「ご飯はね、みんなで揃って食べるものなんだから!」

希「…………そうやったね」

希「それじゃあ待っててな!今急いで洗っちゃうから!」

穂乃果「私も手伝うよ!早く洗って一緒に食べよ♪」

希「……ふふ、ありがとな~」


ハイコレオネガイ
ウン!
ツギコレナ~
ハーイ


穂乃果「それでは!」

希「うん!」

「「いただきまーーす!」」

ーーーーーーーーーーーー




穂乃果「う~ん…う~ん……」

希「さあさあ穂乃果ちゃん!」

穂乃果「ちょ、ちょっと待って!」

希「ふたつにひとつ!女は度胸や!」

穂乃果「ババ抜きに度胸もくそもないよぉ!」

穂乃果「う~ん……こっち?」チラッ

希「くふふ」ニヤニヤ

穂乃果「むむむ…………それともこっち?」チラッ

希「むふふ」ニヤニヤ

穂乃果「もーっわかんないよー!」

希「そりゃそういうゲームやし、顔に出すわけないやん?」

穂乃果「海未ちゃんならすぐわかるのに……」

希「あ~海未ちゃんかぁ、たしかに顔に出そうやね~」

穂乃果「むむむ…、ここでババを引いたら絶対負けちゃう……」

希「ウチはこういうゲーム得意やからね~」クフフ

希「さあ穂乃果ちゃんはどっちを選ぶ?」

穂乃果「…………こうなったら考えたって仕方ない」

希「おっ」

穂乃果「ふたつにひとつ!私が選ぶのは……こっち!」ピッ

希「…………ふふ」

希「まったく~、勝負強いな~穂乃果ちゃんは」

穂乃果「やった~~っ!あがりーー!」

希「も~いけると思ったんやけどな~」

穂乃果「えへへ、ブイッ」

穂乃果「ねえねえ、次どうする?」

希「う~ん……、もう結構いい時間やしそろそろお風呂入らないと」

穂乃果「あっ、確かに!」

穂乃果「もうこんな時間なんて何かあっという間だね~」

希「そうやね、明日学校もあるし気を付けんとね」

穂乃果「うん!」

穂乃果「それじゃあお風呂行こー!」

希「うんっ、…………うん?」

希「いやいや待って、何かおかしかったよ?」

穂乃果「へ?」

希「なんか……一緒に入る感じになってなかった?」

穂乃果「え?違うの?」

希「いやいやいや、普通入らないやん!」

穂乃果「そうかな?お泊まりの時はいつもことりちゃんと入るけど」

希「本当に仲ええね……ふたりは」

希「ん?ということは海未ちゃんも一緒に入るん?」

穂乃果「ん~、そういえばしばらく入ってないな~」

穂乃果「大体私とことりちゃんが入った後に一人で入るね」

穂乃果「うちのお風呂そんな大きくないから3人じゃ入れないし」

希「それ絶対一緒に入らないようにしてるやん!」

穂乃果「そんなことないよ~、だから一緒に入ろうよ!」

希「ええ~……」

穂乃果「ほら、裸の付き合いだよ!」グイグイ

希「いーやーやー!」

穂乃果「ええ~、なんでそんなに嫌がるのさ~」

穂乃果「別に女の子同士なんだから恥ずかしくないじゃん」

希「…………」

穂乃果「……え?もしかして恥ずかしいの?」

希「…………っ///」

穂乃果「ええっ!?なんでなんで?」

穂乃果「前μ'sで合宿行ったときみんなで入ったじゃん!」

希「そ、それとはまた違うっていうか……」

希「ほら、広いお風呂にみんなでってのと家のお風呂にふたりで入るんじゃなんか違うやん?」

穂乃果「ん~そうかな~?」

希「そ、それにいいんかなぁ?」

穂乃果「え?なにが?」

希「ウチと一緒に入るってことは……その身体を堪能してええってことやんなぁ」ワキワキ

穂乃果「え……」

希「にしし」ワキワキ

穂乃果「えっと……」モジモジ

希「ん?」

穂乃果「その……希ちゃんにならいいよ?///」

希「…………はいっ!?」

穂乃果「で、でも……優しくしてね///」

希「なっ、なっ、なっ、なっ////」

希「い、いや穂乃果ちゃん…ええっと、その……////」タジタジ

穂乃果「………………ぷっ」

希「……………………へ?」

穂乃果「ぷぷっ、あははは!希ちゃん顔真っ赤~!」

希「なぁっ!?////」

希「か、からかったな~~!」

穂乃果「だって希ちゃん入ってくれないんだも~ん」サッ

希「こら待て~~っ!」

穂乃果「待ってるよ~、お風呂でね♪」

トットットッ

希「もう……本当穂乃果ちゃん相手だと調子狂うなぁ……」

希「はぁ、お風呂いこ……」

穂乃果「希ちゃ~ん、まだ~?」

「……今行くよ~」

ガチャ

希「……」ヒョコ

穂乃果「やっと来た~、遅いから私もう洗い終わっちゃったよ」

希「ごめんごめん」

ガチャン

穂乃果「…………」ジー

希「な、なに?」プヨン

穂乃果「……うん、ダイナマイト!」

希「もうっ、穂乃果ちゃん!」

穂乃果「あはは、ごめんごめん」

穂乃果「ささ、座って座って」

希「う、うん」ストン

穂乃果「それじゃあ髪洗っちゃうね」

希「え?穂乃果ちゃんが洗ってくれるん?」

穂乃果「もちろんだよ!私に任せて!」

希「なんか不安やな~」

穂乃果「大丈夫ですぅ~、いつもことりちゃんの髪洗ってあげてるもん」

希「そうなん?」

穂乃果「そうだよ~、お互いに洗いっこしたりするんだ」

穂乃果「今度希ちゃんも私の髪洗ってね?」

希「まあ機会があればね」

穂乃果「あるよ~、また泊まりに来るも~ん」

希「……そうやね」

穂乃果「はぁ……気持ちよかった~」

希「ちょっと狭かったけどね」

穂乃果「でも楽しかったじゃんか~」

希「ふふっ、確かにな。あ、穂乃果ちゃん牛乳のむ?」

穂乃果「飲む飲む~!」






のぞほの「ゴクゴクゴク…………ぷはぁ」

穂乃果「やっぱりお風呂あがりは」

希「これやんなぁ」

穂乃果「ねー」

希「そうだ、穂乃果ちゃん牛乳飲んだら髪乾かすやろ?」

穂乃果「うん」

希「じゃあさっき髪洗ってくれたお礼にウチが乾かしてあげるわ~」

穂乃果「本当?わ~い、嬉しい!」

希「ふふっ」

穂乃果「ゴクゴクゴクぷはぁ、よし!希ちゃんお願いします!」

希「はやっ!そんな急がんでもいいのに」

穂乃果「えへへ、だって嬉しいんだも~ん」

穂乃果「さあ早く早く!」グイグイ

希「待って~まだウチ飲んでるから~~」

ゴォォォォォォ~~

穂乃果「ほへぇ~~」

希「ふふ、穂乃果ちゃんの髪さらさらやね」

穂乃果「そうかな?」

希「うん、羨ましいわ~」

穂乃果「えへへ、ありがと」

穂乃果「でも希ちゃんの髪も艶々で長くてすっごく綺麗だよ?」

希「ふふ、ありがとな」

穂乃果「やっぱり長い髪って綺麗だよね、私も伸ばそうかな?」

希「穂乃果ちゃんは今のが似合ってると思うけどなぁ」

ゴォォォォォォ~~

穂乃果「ほへぇ~~」

希「ふふ、穂乃果ちゃんの髪さらさらやね」

穂乃果「そうかな?」

希「うん、羨ましいわ~」

穂乃果「えへへ、ありがと」

穂乃果「でも希ちゃんの髪も艶々で長くてすっごく綺麗だよ?」

希「ふふ、ありがとな」

穂乃果「やっぱり長い髪って綺麗だよね、私も伸ばそうかな?」

希「穂乃果ちゃんは今のが似合ってると思うけどなぁ」

希「昔からこのくらいなん?」

穂乃果「そうだね~小さいときからこのくらいだね、髪型もずっとサイドテールだし」

希「サイドテールもなんか~、何か拘りがあるん?」

穂乃果「う~ん拘りというか……昔ことりちゃんにやってもらって、それが気に入ってそれからずっとだね」

希「へー、ことりちゃんが発案者なんやね」

穂乃果「うん、昔からことりちゃんはおしゃれ大好きだから」

穂乃果「海未ちゃんもよく髪弄られてたな~」

希「海未ちゃんもなんか、じゃあ海未ちゃんもサイドテールにしてた時があったん?」

穂乃果「ん~確か3人でお揃い~とか言ってやってた時期があった気がする、恥ずかしがって海未ちゃんはすぐ止めちゃったけど」

希「ふふっ、その海未ちゃんは見てみたいな~」

穂乃果「本当?それなら確か家にその時の写真があったはずだから今度見に来なよ!」

希「う~ん……行ってもいいん?」

穂乃果「もちろん!希ちゃんなら大歓迎!」

希「ふふ、それなら今度お邪魔しようかな?」

穂乃果「うんうん、約束だからね!」

希「うん、約束――っと。はい、髪乾いたよ」

カチッ

穂乃果「ありがと~希ちゃん」

希「どういたしまして」

穂乃果「それじゃあ次は――」

希「ウチの番、になるんかな?」

穂乃果「えへへ、その通り!」

希「じゃあお言葉に甘えてお願いしようかな?髪長いとひとりで乾かすんも大変でね」

穂乃果「うん、甘えて甘えて!」

希「ふふ、よろしくね」

ゴォォォォォォ~~

穂乃果「やっぱり希ちゃんの髪綺麗だね~」

穂乃果「毛の感じは海未ちゃんに似てるかな?癖がなくて艶々」

希「よく知ってるな~、海未ちゃん髪もよく乾かすん?」

穂乃果「うん、さっき言った通り海未ちゃんはあとからひとりで入る事が多いからね」

穂乃果「だから先に出た私とことりちゃんで出てきた海未ちゃんを捕まえて乾かすんだ~」

希「捕まえるって……」

穂乃果「だってさ『いいです、私はひとりで出来ます!』って言って逃げるんだもん」

穂乃果「逃げたら捕まえたくなるよね!」

希「ふふ、穂乃果ちゃんらしいな~。海未ちゃんもお気の毒に」

穂乃果「大丈夫大丈夫、それになんだかんだ言っても海未ちゃんも髪乾かしてもらうの嫌いじゃないもん」

穂乃果「何ていうの?こういうパターンというか……恒例行事?」

希「恒例行事って……そんなのあるん?」

穂乃果「うん、だって前本当に嫌なのかな~って思ってことりちゃんとやらないでみたんだよ」

希「うんうん」

穂乃果「そうしたら海未ちゃん『あれ?今日はないの?』って感じで私達の方をチラチラ見てくるの!」

希「ふふっ、海未ちゃん……」

穂乃果「完全に構ってほしいオーラ駄々漏れでね、もう可愛くて可愛くて」

穂乃果「結局私とことりちゃんが我慢できなくていつも通り髪を乾かしてあげるのでした。ちゃんちゃん」

希「ふふふっ面白いな~、なんか海未ちゃんの意外な一面を聞いた感じや」

穂乃果「でしょでしょ」

希「うんうん、意外と素直じゃないんやな~海未ちゃんも」

穂乃果「本当にね――っと」

カチッ

希「お、もう乾いたん?」

穂乃果「うん、乾いたよ~」

希「なんかあっという間やね、いつもひとりだとやたら時間かかるな~って思うのに」

穂乃果「………ねえ、さっきの話だけどもっと素直でもいいと思わない?」

希「ん?海未ちゃんの話?」

穂乃果「うん、もっと素直に言ってくれれば私だって喜んでやるのにさ」

穂乃果「なんで素直に言ってくれないんだろう?」

希「……どうやろね?大きくなるにつれて素直に言えない事って増えてくると思うし」

穂乃果「そういうものなのかな~、私なんかすぐ言っちゃうのに………ハッ、私大きくなれてない!?」

希「ふふ、でもそこが穂乃果ちゃんの良いところやん?」

希「素直に言いたいことを、伝えたいことを伝えるってそう簡単に出来ないんよ」

穂乃果「…………」

希「さて、それじゃあドライヤー片付けて来るなぁ~」ヒュッ トコトコ

穂乃果「希ちゃん!」

希「ん?」クルッ

穂乃果「……希ちゃんも、言いたいけど言えない事ってあるの?」

希「…………さあどうやろなぁ」

希「ふふ、秘密ってことにしとこうかな」クルッ

トコトコトコ

穂乃果「…………やっぱり」ボソッ

穂乃果「希ちゃんも、素直じゃないんだね……」

穂乃果「とぉ~~~うっ!」

ボフン

穂乃果「私ここ~♪」

希「ふふ、ここもなにもウチのベットしかないやん」

穂乃果「えへへ、そうなんだけどね」

希「ほらつめて、ウチも入るんやから」

穂乃果「えっ、一緒に寝てくれるの!」

希「うん、だめだった?」

穂乃果「そんなことない!大歓迎!大歓迎だよ!」

希「ふふふ、よかった」

希「穂乃果ちゃんならそう言ってくれると思ってな」

穂乃果「もちろん!そもそも一緒に寝ようって言うつもりだったし」

希「やっぱり」

穂乃果「あれ、バレてた?」

希「バレてたというより分かってきたって感じかな?」

穂乃果「…………えへへへ~」

希「……なんでそこで嬉しそうになるん?」

穂乃果「だってさ、希ちゃん私のこと分かってくれたんだよね?なんかそれが嬉しくて」

希「ふふ、そっか」

穂乃果「うん♪」

穂乃果「あ、ごめんね。今つめるから」ススス ギュイ

穂乃果「ん?何かある?」

希「あ、たぶんそれクッションやね。最初はふたりで寝るつもり無かったから片すの忘れてたわ~」

穂乃果「本当だ、いっぱいあるね」

希「片付けちゃうから投げてもらってもいい?」

穂乃果「うん、いくよ~……ほいっ」ポーイ

希「はっ……よっと、次」

穂乃果「ほいっ」ポーイ

希「よっ」

穂乃果「ほいっほいっ」ポポーイ

希「よっよっと」

穂乃果「……むふふ、えーーーいっ!」シュパッ

希「甘い!」ガシ

穂乃果「おおっ!」

希「お返しや!」バシュッ

穂乃果「え…………へぶっ」ボフーーン

希「ふっふっふっ~、まだまだやね」

穂乃果「うぅ……よくわかったね、強く投げるって」サスサス

希「ふふ、言ったやろ?穂乃果ちゃんの事が分かってきたってな♪」

穂乃果「流石希ちゃん……もう穂乃果マスターだよ……」

希「ふふふ。あ、今投げたクッションちょうだい」

穂乃果「はぁい……」ポーイ

希「よっ、ありがと」

希「それじゃあ寝ようか」

穂乃果「うん」

希「電気消すよ~」

穂乃果「はーい」

カチッ

モゾモゾ

穂乃果「そういえばさっきのクッション」

希「ん?クッションがどうかしたん?」

穂乃果「いや、やけにいっぱいあったなーと思って」

希「ああ……まあ、確かにそうやね」

穂乃果「希ちゃん実はクッション集めるのが趣味だったり?」

希「別にそういう訳じゃないんやけど……」

穂乃果「けど?」

希「ん~……何ていうかな~、その……こう寝るときギュッってしてると落ち着くやん?」

穂乃果「ああ、抱き枕みたいに?」

希「……まあそうやね」

穂乃果「ふ~ん、ふふふふっなんか希ちゃん可愛いね」

希「い、いいやん別に///」

穂乃果「いやーなんか普段のイメージと違くて」

穂乃果「あ、そうだ!」

希「?」

穂乃果「ギュッてするのが好きなら……はいっ」

穂乃果「今日は私をギュッてしていいよ!」

希「なっ///」

穂乃果「ほらほら~」

希「べ、別にいらんよ///」

穂乃果「なんで?穂乃果抱き枕だよ?あったかいよ~?」

希「ぅ…………っ」クルン

穂乃果「あれれ?なんで背中向けちゃうのさ~」

希「いいの、ほらもう寝よう?明日は学校なんやから」

穂乃果「ええ~、もっとお話ししたいよ~」

希「だ~め。はい、おやすみなさ~い」

穂乃果「ぶぅ~、……まあ仕方ないか」

穂乃果「ねえ希ちゃん」

希「ん?」

穂乃果「……おやすみなさい」

希「……うん、おやすみ」

………………………



穂乃果(今日一緒に居てみたけど、希ちゃんはやっぱり……寂しいんだよね?)

穂乃果(希ちゃん大人っぽいけど、よく考えたら私とひとつしか違わないんだもん)

穂乃果(それなのにひとりで暮らして……ご飯もお風呂もひとりきりで、寂しくないわけないよね)

穂乃果(私だったら堪えられないよ……)

穂乃果(でもそれを我慢出来ちゃうのが希ちゃんなんだね)

穂乃果(昔からお母さん達が忙しくて、転勤も多くて、きっと友達と仲良くなってもすぐお別れが来ちゃう……)

穂乃果(……ひとりの時間が多かったのかな?だから……我慢出来ちゃうの?)

穂乃果(私とは正反対だ、お母さん達は忙しかったけどそばに居てくれた。雪穂もいた、ことりちゃん海未ちゃんも居てくれた)

穂乃果(寂しいなんて思ったことなかった……)

穂乃果(ねえ希ちゃん、どうすれば頼ってくれる?素直になってくれる?)

穂乃果(寂しく……なくなってくれる?)

穂乃果(私バカだからわからないよ……)

希「…………」

穂乃果(こんなに近いのに、手を伸ばせば触るのに……なんであの背中がこんなにも遠くに感じるの?)

穂乃果(私とあまりにも違うから?)

穂乃果(やっぱり私じゃ……ダメなのかな)

穂乃果(……でも……でも)

穂乃果「…………いやだよ」

穂乃果「あんな顔……もうしないで欲しいよ」

穂乃果「させたくないよぉ……」

ぎゅっ

穂乃果「抱き締めるだけじゃダメなのかな……」

穂乃果「そばにいるだけじゃ……足りないのかなぁ……」ポロポロ

穂乃果「うぅ……わかんないよ、希ちゃん……」

希「ぅ……うん?」

穂乃果「……っ」

希「穂乃果……ちゃん?」

穂乃果「ひくっ……ご、ごめんね。起こしちゃって……」

希「……泣いてるん?」

穂乃果「う…ううん、ごめんね。大丈夫だから……」

希「……もう、そんなわけないやん」クルン

穂乃果「あ……」

希「よしよし、どうしたの?怖い夢でもみた?」ナデナデ

穂乃果「う…ぅぅ……」

希「ほら、ウチがいるから大丈夫やで~」ナデナデ

穂乃果「……なんで」

希「ん?」

穂乃果「なんで希ちゃんはそんなに優しいの?」

穂乃果「なんで……他の人にそんなに優しく出来るの……」

希「……穂乃果ちゃん?」

穂乃果「希ちゃんの方が……辛いはずなのに……」

希「えっと、それって……?」

穂乃果「希ちゃん……寂しくないの?」

希「……っ」

穂乃果「私ね、気になったんだ。希ちゃんの顔を見て」

希「ウチの……顔?」

穂乃果「うん、希ちゃんのふとした時に見せる表情が誰かに似ている気がして」

穂乃果「それで…気が付いたの。昔の雪穂に似ているんだって」

希「雪穂ちゃんに?」

穂乃果「そう、昔の雪穂はね私のせいで寂しそうに笑うの事があったんだ……」

穂乃果「その時の雪穂の顔と希ちゃんの顔が……似てるって気付いたの」

穂乃果「だからなんとかしてあげなきゃって、寂しくならないようにしてあげなきゃって思ったんだけど……全然だめで…」

希「…………」

穂乃果「ごめんね。勝手にそんなこと思って、押し付けてるだけかもしれないのに……」

穂乃果「それで勝手に悩んで……勝手に泣いて、希ちゃんになだめてもらって……」

穂乃果「なにやってるんだろうね私、あはは……」

希「…………」

穂乃果「あはは……は…は……」

穂乃果「…………」

希「……そんなこと考えてたんやね」

穂乃果「……うん」

希「泊まりに来たのもそれで?」

穂乃果「……うん、一緒にいてあげれば寂しくなくなるかなって」

穂乃果「私じゃ、これくらいしか出来ないから……」

希「そっか……」

穂乃果「…………」

希「…………穂乃果ちゃん」スッ

穂乃果「…っ」ビクッ

ぎゅっ

穂乃果「ぁ……」

希「ありがとう、ありがとな穂乃果ちゃん」

穂乃果「希……ちゃん?」

希「ウチの事、そんなに考えてくれて……ありがとう」

穂乃果「ううん、私が勝手に――」

希「違うんよ……穂乃果ちゃんが言う通りなんよ……」

穂乃果「希ちゃ――」ピト

希「聞いてくれる?いや、聞いて欲しいな」

穂乃果「……」コクコク

希「ウチな……昔から両親は忙しいし、転勤ばっかで友達もいなくてね」

希「ずっと……ひとりだったんよ、家でも……学校でも」

希「でも音ノ木坂に入って、絵里ちという友達……ううん、親友が出来た」

希「μ'sに入ってからはたくさんの仲間、友達が出来た」

希「ウチ本当に幸せなんよ」

希「昔は勉強か本を読むしかなかった学校が……今はみんなに囲まれて、ご飯食べて、練習して、ちょっとおバカなことをやったりして」

希「毎日が楽しくて楽しくて……夢なんじゃないかってくらい充実してる」

希「でも楽しい学校が終わって家に帰ると……静かな時間が待ってるんよ」

希「ご飯食べて、お風呂入って、本を読んで……昔みたいに家にポツンとひとりきりでね」

希「朝起きたら本当は全部夢なんじゃないか?なんて考えちゃうこともあったんよ」

希「そんなわけないのにね、ふふ……」

希「でもそう考えちゃうくらい、ひとりの時間は辛くて……怖くて……寂しくてね」

穂乃果「……なんで、そんなの言ってくれれば私が………ううん、みんなだって……」

希「そうなんだけどね……なんでかな」

希「ひとりの時間が多かったせいか、感情を隠すのが、言いたいことを言わないのが当たり前になってたんよ……」

希「だからこの前穂乃果ちゃんを公園で見かけたときは……嬉かった」

希「寂しいから遊びに来てとは言えないけど、ちょっとそこだから寄っていかない?なら自然に誘える……」

希「自分勝手やろ?あの時もそんなこと思ってたんよ」

穂乃果「……自分勝手なんかじゃないよ。だってあの時も希ちゃん私に優しくしてくれた、相談に乗ってくれたもん」

穂乃果「喧嘩して、ひとりで寂しかった私に声をかけてくれて、一緒にいてくれた」

穂乃果「本当に本当に嬉しかった。ひとりじゃないってだけで、一緒にいてくれる人がいるだけで心強かった」

穂乃果「でも……希ちゃんは一緒にいるだけじゃダメなのかな?寂しくなくならない?」

希「……ウチもわかんないよ、でも……」

希「穂乃果ちゃんが今日泊まりに来てくれて、一緒にいてくれて……とっても嬉しかった、なんか心が温かくなって……」

希「でもそれと同時に怖くもあったんよ、また明日からはひとりに戻っちゃうから……」

希「ほんとごめんな……ウチすごい面倒くさいね、……あはは」

穂乃果「……面倒くさくたっていいんだよ」

ぎゅっ

希「あ……」

穂乃果「寂しくなくなる方法一緒に考えよう?」

希「でも……そんなん迷惑じゃ……」

穂乃果「迷惑なんて思わないよ」

穂乃果「だって希ちゃんは大切な仲間で、大切な友達で」

穂乃果「なにより……私が大好きな人だもん!」

穂乃果「好きな人の為なら、なんだってしてあげたくなるんだよ!うん!」

希「…………穂乃果ちゃん」

穂乃果「えへへ」

希「……なんか告白されたみたい」

穂乃果「へ?…………ああっ///」バッ

穂乃果「違っ///違くてっ、そういうんじゃなくて///」

希「……ふふふっ」スッ

ぎゅっ

穂乃果「わわわっ///」

希「…………ほんとにありがと」

穂乃果「……希ちゃん」

希「ウチも穂乃果ちゃんの事、大好きや」

希「本当に…惚れちゃいそう」ボソッ

穂乃果「?今なんて――」

希「ふふ、なんでもないんよ~」

ぎゅぅ~~

穂乃果「わわわっ、希ちゃん苦し~よ~」

希「ねえ穂乃果ちゃん?」

穂乃果「うん?」

希「今日はこのままギュッてしながら寝てもいい?」

穂乃果「もちろんだよ!好きなだけギュッてして!」

希「ふふ、よかった」

希「さっきいっぱいクッションあったやろ?あれもね、いつも寝るときギュッて抱き締めて少しでも寂しさを紛らわす為にベットに置いてるんよ」

穂乃果「あ……そうだったんだ」

希「うん、だから穂乃果ちゃんが自分を抱き枕にしていいよって言ってくれたときすごくギュッてしたかったんよね」

希「でもやっぱり明日からの事を考えると……」

穂乃果「怖くて出来なかった?」

希「…………うん」

希「でも明日からまた寂しくなったら穂乃果ちゃんを頼る事に決めたから……」

ぎゅぅ

希「抱き締めてもいいかなって」

穂乃果「うんうん、それでいいんだよ」

希「ふふ、ありがと」

希「ウチ相当面倒だと思うけど……見捨てんといてね」

穂乃果「大丈夫、私も希ちゃんにう~~んと甘えるつもりだから!覚悟しててね♪」

希「ふふふ、それならお互い様かな?」

穂乃果「うん、そうかも♪」

のぞほの「………ふふふっ」

穂乃果「それじゃあ希ちゃん」

希「うん、そろそろ寝ようか」

穂乃果「希ちゃん、一緒にいるから安心してね」

希「……うん、ありがとう」

希「今日は良い夢が見れそう……やね……」

穂乃果「ふふ、だと良いな」

希「うん、それじゃあ……」

「「おやすみなさい」」

~~~~~~

チュンチュンチュン

トントントントン

穂乃果「ぅ……ん、……あさ?」チラッ

穂乃果「あ、あれ?希ちゃん?」

穂乃果(うそ……隣にいない……)

穂乃果「希ちゃん!?」ガバッ

穂乃果「わわわっ」

どてーーん

穂乃果「ぅぅ……いたい……」

トットットッ

ガラッ

希「ど、どうしたん?すごい音したけど……」

穂乃果「…………希…ちゃん」

穂乃果「うわーーん、よかったよーーっ」ダキッ

希「きゃっ、……えっ?えっ?」

穂乃果「うぅ……起きたら希ちゃんいなかったから……心配になっちゃって……」

希「……ふふ、そういう事だったんか」

希「ごめんな、ちょっと先に起きたから」

穂乃果「ううん、私こそ騒いじゃってごめんね。でも…いてよかった~」ギュゥ~

希「ふふふ」ナデナデ

乃果「ところで先に起きて何かやってたの?……あっ!もしかしてもう学校行く時間!?私寝坊しちゃった!?」

希「大丈夫、まだ行くには早い時間やね」

穂乃果「……あれ?そうなの?」

穂乃果「それじゃあいったい…………ん?」クンクン

希「お、気付いたかな?」

穂乃果「……良い匂い、もしかして希ちゃん……」

希「そういうことや♪」

希「穂乃果ちゃんと一緒に朝ごはん食べたいな~と思って作ってたんよ」

希「もう少しで出来るから、その前に学校行く仕度しといてな」

穂乃果「…………はーい!」ピョン

希「ふふ、それじゃ急いでな~」スッ

穂乃果「あ、希ちゃん待って」

希「ん?」

穂乃果「おはよう、希ちゃん!」

希「……うん!おはよ!」

穂乃果「ふぅ~満腹満腹」ポンポン

希「朝からいっぱい食べたな~」

穂乃果「おいしかったんだもん♪」

希「ふふ、ありがとう」

希「それじゃあ学校行こうか。忘れ物はない?」

穂乃果「うん、大丈夫だよ!希ちゃんは?」

希「ウチも平気」

穂乃果「よし!それではいざ学校へ!」

ガチャッ

穂乃果「よっと!」タン

ギギギギギ……

希「ちょ、ちょっと待ってウチまだ靴が……」

ギギギ………ガゴン

穂乃果「大丈夫、待ってるよ」

穂乃果「一緒に行くんだもんね」

希「穂乃果ちゃん……うん!」ニコッ

タタン

ギギギ……

希「」クルッ

希「……ふふ、行ってきます」

ガチャン







おわり

読んでくれた方ありがとうございました。
のぞほの好きなんでもしかしたら続きも書くかもしれないです。

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