提督「忍術と空手を合わせた、最強の武術だ」 (158)




艦娘達が忍空を使うssです。


※アニメ版忍空の時系列ですが、技や忍空の流派は漫画版を参考にしています。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1484484090




【海軍本部・会議室】



海軍大将A「深海棲艦の本拠地を発見した…だと?」


海軍大将B「ああ」


海軍大将C「だが、場所が最悪だ…」


海軍大将A「場所?海上にある限り我々に攻められぬ場所など無いだろ」




海軍大将A「……おい、まさか…」




海軍大将B「深海棲艦の本拠地を孤島……陸地で確認したらしい」



海軍大将A「バカな!深海から現れる者が…陸地で生まれていただと!?」

海軍大将B「…むしろ本当に深海からではなくて安心したがな」

海軍大将C「海の底では我々の手が届きにくい…潜水艦のみで戦うわけにはいかんからな」



海軍大将A「ぐぅ…おのれぇぇ……」

海軍大将B「気持ちは分かるが落ち着け」

海軍大将C「陸地で戦闘ができない艦娘は無力…しかし我々人類が敵う相手でもない…」

海軍大将B「どうしたものか……」






ガチャッ…ギィィィ……


スタスタスタ、ザッ!




海軍元帥「遅れてすまない…そして深海棲艦の件だが、既に手は打ってある」




海軍大将B「手……何か策がおありなのですか?」



海軍元帥「深海棲艦の本拠地…今まで不明であったその場所の割り出しさえ出来たのなら、我々の勝利は揺るぎない物となる」


海軍元帥「それが陸ならば尚の事…な」


海軍大将C「それは…どういう事でしょう」





海軍元帥「……君達は数百年前、帝国府に盾突いた数十名の集団を知っているか?」


海軍大将A「我々帝国府に?御冗談を」

海軍大将B「そもそも我々は帝国府の直下…帝国軍の海軍組織です。そのような話があったのなら記録にも残ってるはず」

海軍大将C「そのような記録、我々は見たことがありません」






海軍元帥「記録は無いよ。何せ…帝国軍が壊滅寸前まで追い詰められた記録など、残せるわけがない」



大将『か、壊滅寸前!!?』





海軍元帥「こちらは陸海空…合わせて万を超える大部隊。それを数十名の集団に敗北しかけたなど……大きすぎる汚点だ」


海軍大将A「そんな…相手はどんな特殊兵器を…!!」


海軍元帥「忍術と空手を合わせた武術、それが集団の攻撃手段であり…武器などは一切使われていない」


海軍大将C「武器を使わず、ですか…?」

海軍大将A「忍術と空手?そんな集団が……」


海軍大将B「…!まさか元帥、手を打ったと言うのは……」










海軍元帥「その武術…『忍空』の後継者が既に動いている」





【某鎮守府】




「艦娘12名、全員揃いました」




提督「…分かった」






提督「…では、全員に報告がある」


提督「先程本部から連絡があった」


提督「深海棲艦の本拠地を発見したらしい」




ザワザワ…ザワザワ…





提督「だが、その所在が陸にあり……一般的な艦娘では手が出せない」




提督「つまり、忍空使いである我々しか出撃できない」





提督「……私は君達に忍空を教える時にこう伝えた」


提督「『忍空は殺すための武術ではなく、人を守るための武術である』…と」



提督「守るための戦い…それがこの戦いの先に通じていると私は信じている」


提督「今、全ての人を守れるのは…我々しかいない」


提督「そして忍空を完全に修得した君達ならば…敵はいない」





提督「…全員に告ぐ!!」



提督「私と共に出撃し敵を殲滅、及び敵本拠地を破壊する!!」


提督「尚、出撃部隊は二つに分け行動!!」

提督「孤島に上陸し深海棲艦を殲滅する『上陸組』!」

提督「背後防衛のため海で待機し迎撃する『海上組』!」


提督「部隊編成は移動しながら説明する!!各人、警戒は怠らないように!!!」





【深海棲艦本拠地・近海】



ザザァァァァ……ザバァァァァン…




「クソッ…敵ニ本拠地ガ……」


「合流デキル深海棲艦ハ連レテ来レタンダ…大丈夫ダロウ」


「ソモソモ陸デ戦エル艦娘ナドイナイ…焦ラズトモ……」






ゴゴゴゴゴゴゴゴ……




「ナ、ナンダ…!?」




ズォォォォォォォォ!!!



「ウ、ウズシオダト!?」

「コンナ…何故急ニ…!!」











「干支忍、12番隊亥忍は水を自由に操ることが出来るでち」





「!!?」



ザバァッ!!





伊58「この孤島近海全域にこれと同等の渦潮を展開しているでち」



「干支忍……亥忍…?」


伊58「まあ、時間を掛ければ渦潮を乗り越えてこれるかもしれないけど…」


伊58「それを眺めているほど、ゴーヤは甘くないでち」ババッ!!




伊58『空亥牙濤』




ザッッバァァァァァァァァァン!!!!





《空亥牙濤》

亥忍忍空技の1つ。
大量の水を操り巨大な波を作り出し、相手を飲み込む技である。





「グゥ…!?」


「ナンダ、急ニ波ガ!!」


「貴様…艦娘ナノカ…!?」


「何者ダ…貴様ハ!!?」








伊58「忍空組12番隊亥忍…海の伊58」



伊58「艦娘でありながら、艦娘を超えた存在でち」






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





ザバァァァァン……チャプン






「ウズシオノセイデ遅レヲトッタガ…乗リ越エテシマエバドウトイウコトハナイ」

「コノママ島ノ周リニ我々ハ散開シ、敵ノ侵入ヲ……」

「……待テ!遠方ニ艦娘2体…!!」











チャプン……ザザァァァァン……







「確かに、敵空母が大量なら私達がここに派遣されるのも頷けるわね~」


「飛来数が凄いなら酉忍より私達の方が適任ですしね」








「チッ!!」ガシャン!

「発艦セヨッ!!」ババッ!!


バシュシュシュン!!!!








「噂をすればなんとやら」スッ…

「フフッ…せっかちさんですね~」スッ…





不知火「では…始めましょう」ボゥ!!

愛宕「そうしましょう…不知火ちゃん」ピキーン!!








不知火・愛宕『空炎氷弾』



スダダダダダダダダァァァァァァァァン!!!!





《空炎氷弾》

辰忍と午忍の合体技。
午忍が作り出した氷の礫を辰忍の炎で爆発的なスピードを生み出させ相手に飛ばす、対広域の忍空技である。





「!?馬鹿ナ、砲撃モセズ撃チ落トサレタダト!?」



愛宕「はいは~い、落ち着いてー」

不知火「貴女方には選択権があります」





不知火「私に焼豚にされるか」ボォゥ!!

愛宕「私に冷凍マグロにされるか」ピキィィン!!




不知火・愛宕『生きてるうちに決め(てください)なさい』






「貴様達ハ…艦娘、ナノカ……?」






不知火「忍空組5番隊辰忍…炎の不知火」

愛宕「同じく、忍空組7番隊午忍…氷の愛宕」




不知火「艦娘かと問われますと…」

愛宕「形式上…と言った所かしら?」






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――――――――――――

―――――――





ザザァァァァァ……





「…渦潮通過」

「油断スルナ…コノ渦潮、敵ノ新タナ兵装カモシレン」




「…!敵影確認、数ハ1ツ」


「1ツ…敵地デハグレタマヌケ艦ダナ」

「軽巡、空母。魚雷ト同時ニ艦載機ヲ発艦」

『了解』



バシュシュン!!

バシュシュン!!







「……遅いです」スッ…





ヒュッ!!!






『!!?』


「キ、消エタ!!?」

「ドコニ…!?」





ゴォォォォォ……





雲龍「目視で分かる範囲なら、酉忍の感覚で把握出来るんですよ」スッ…








「!!?」ガバッ!!




「…!?ソ、ソンナ……」


「艦娘ガ…空ヲ、飛ンデ……」







雲龍『空飛拳』ヒュッ!!




ズドォォォォン!!ズドォォォォォォン!!!





《空飛拳》

酉忍忍空技の1つ。
空高く跳躍し、急降下で相手に攻撃する忍空技である。
相手に攻撃した反動でまた空へと跳躍し更に追撃をする事も可能である。(忍空アニメOP参照)





「グゥ……ガハッ」

「ッッ……!!」



「軽巡!空母!!」

「貴様……」






雲龍「私の名前は貴様ではありません」スチャッ





雲龍「忍空組10番隊酉忍…空の雲龍」






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チャポン……パシャン



「…コノ海流ナラ気付カレズ本拠地マデ戻レル」

「他ノ深海棲艦モ気付カレナイ間ニココヘ誘導シマショウ」






「いーや、誘導は止めた方がいいね」

「死体の数を増やすだけになりますし…ね」






『!!?』



「…やっとこっちの存在に気付きましたね」

「じゃあ、先に名乗っとこうか」















川内「忍空組9番隊申忍…雷鳴の川内」


神通「同じく、忍空組4番隊卯忍…光の神通」





「何故…コノルートヲ……」

神通「卯忍は光を操る技を得意とします…つまり、光届く範囲は全て私の領域」

川内「光が当たる所はそのまま神通の視野の中って事だ」


「フ、フザケルナヨ…艦娘風情ガァッ!!」



ダダダダァァァァァン!!!!






川内「そして私は…」バチチッ!




ピシャァァァァァァァァァァァン!!!!






「カ、雷ガ砲弾ヲ撃チ落トシタ…ダト!?」



川内「雷を操る事が出来るんだよ」バリバリッ!


「光…雷…!?クッ、ワケガワカラン…!!」

「全艦砲撃開始!!タカガニ体ダトアナドルナッ!!」




川内「神通、補助を頼む」バチチッ!!

神通「他の海域からも敵援軍が来ています…早めに片付けましょう」スッ…





【深海棲艦本拠地孤島・浜辺】




…ゴボボッ……ザバァァァァン!!!




提督「…孤島に侵入成功」ピチャチャッ…

提督「上陸している他の者達はそれぞれ別の場所から侵入しているはずだが…」

提督「敵本拠地の場所は誰が一番近いか分かるか?」チラッ






犬『ん~…島の中心だから距離的にはみんな似たりよったりっぽい』


提督「そうか……さすが干支忍随一の諜報力だ」

犬『11番隊戌忍はそういう力に特化してるって言ったのは提督っぽい』

提督「ああ、そうだったな。だがこうまで『声幻身の術』が上手いのはお前くらいだよ」

犬『そういう褒め言葉は直接言ってほしいっぽい』





《声幻身の術》

戌忍忍空技の1つ。
戌忍のみが使える“自分から離れた場所の動物を複数使役する力”からの合わせ技。
動物の声帯を利用し、自分の意思をその動物に喋らせることができる。





犬『…上陸した他のみんなにもあたしが付いてるから道案内は大丈夫っぽい』

提督「…当然だが、私が最後か……」

犬『艦娘と違って泳いで来といてあたし達のが遅かったら少し凹むっぽい』

提督「ははっ、それもそうか」



提督「…ここからはさらに危険地帯だ、心して攻めろ」

犬『了解、みんなにも伝えるっぽい』





【本拠地孤島・森林】



ザザザ!!ガサガサガサ!!



「イタカ!!」

「コッチダ!コッチニイタゾ!!」




「ほぅ、こうも簡単に見つかるとは……夕立、これで全部ではなかろう?」

犬『そりゃもう、まだまだたくさん…』

「…やれやれ、陽動組としては骨が折れそうじゃ」



「イタゾ!ウゴクナッ!!」

「艦娘ノ分際デ陸ニ上ガルトハ…自殺願望者カ?」



「……ふふふっ」













初春「わらわと言う花に醜き蝶が飛んで来る…これも1つの美、やもしれぬな」



犬『陽動なんだから来てもらわないと困るっぽい…』





「ハッ!追イ詰メラレテ頭ガ狂ッタカ!?」

「セメテ楽ニ殺シテヤル…ダカラ動クナヨ」




初春「…この植物に囲まれた森林で、わらわが追い詰められた?」


初春「深海棲艦は冗談も達者じゃのう」パチン!



初春『空縛茎』



ザザザザザザッ!!!
ギュルルルルッッ!!!





《空縛茎》

羊忍忍空技の1つ。
植物を操り、無数の蔦で相手の動きを封じる技である。





「!!?」ギシシッ!!


「身体ガ……!?」ギシギシッ!




初春「駆逐の女が犬を連れて歩いてる…ただそれだけで何も警戒せずわらわの前に来てしまった」


初春「考え足らずの愚か者よのぅ」クイッ



ググググッ……



「グッ…ガァッ……!」


初春「ああ、言い忘れておったが…その蔦、徐々に絞まる力が強くなるから援軍を呼んだ方がよいぞ?」

『!!?』



初春「よいよい、わらわは気の長い方じゃ…来るまで待っててやろう」





初春「忍空組8番隊未忍…植物の初春に勝てるならの話じゃがのう」







【本拠地孤島・敵本部付近】



「…おい夕立、提督はちゃんと来ているのだろうな?」

犬『ちゃんと来てるっぽい』

「そうか……と言うか提督はともかく敵本部潜入組の三人はどこにいるんだ?」



犬『…来ていると言うより、提督含めてもう四人とも本部に侵入してるっぽい』



「なに?……しまったな、待ってたつもりがまさか出遅れた形になるとは」


「…まあいい、初春が本部の外回りを動いているんだ。私も陽動組として動くぞ」ザッ!

犬『夕立は応援してるっぽい!』

「ああ、しっかり応援しててくれ」ザザッ!!





【敵本部前】




「…オイ、門番交代ノ時間ダ」

「分カッタ」


「…ナア、私達ガ門番スル意味…アルノカ?」

「ココガ海軍ニバレタラシイ…艦娘ガ来ルコトハナイガ、人間ニ潜入サレテモ厄介ダ」

「ナルホド」















長門「じゃあ、その艦娘が潜入させてもらおうか」スッ…


『ッ!!?』バッ!!





長門『空蛇裂』



ビシッ!!ミシシシシシッ!!!

ズガァァァァァァァァァァン!!!!





《空蛇裂》

巳忍忍空技の1つ。
大地に拳を叩き突ける事により地割れを起こす技である。





長門「……しまった。生かして逃がさんと援軍を呼ばせる事ができん」

犬『(脳筋すぎるなぁ…)』



ナンダイマノオトハ!!

ソトカラキコエテキタゾ!!オウエンヲヨンデカケツケロ!!!





長門「…ふむ、まあ結果オーライか」

犬『………』



長門「さあ、さっさと来るがいい!」


長門「忍空組6番隊巳忍…大地の長門はここにいるぞ!!!」







【敵本部・一階】



カツカツカツ……




「(…陽動組のおかげで侵入は簡単でしたが……)」



「…どうにも、この施設には既視感を覚えますね……」



ダダダダダッ!!



「ヤハリ内部ニ侵入者ガイタカ!!」

「丸腰ノ艦娘ガノコノコト…馬鹿ナ奴メ!!」

「ククッ!シカモ旧式ノ古ビタ空母トハ…提督ニ捨テラレタノカ?」















鳳翔「………」





「サア、死ヌ前ニ吐イテモラオウカ」

「貴様ラハ何人デ来タ…イヤ、増援ハ何部隊来ル?」

「答エレバ楽ニ殺シテヤルヨ」






鳳翔「…情けない」


「ア?」



鳳翔「…艦装を展開していない相手だからと驕り慢心する貴女達」


鳳翔「それにより唯一の攻撃の好機を逃す……実に情けない」



「口ダケハ達者ナヨウダナ!!」ガキィン!!



ダンダダァァァァァン!!!





ヒュゥゥゥゥ………






……ピタッ!





「………エ?」



「弾ガ…空中デ止マッテ……」










鳳翔『空霊魂』グッ…





《空霊魂》

寅忍忍空技の1つ。
造られた物の魂を呼び覚まし、その物質を意のままに操り攻撃する技である。





鳳翔「万物全て、造られし物には魂が宿ります」

鳳翔「それが例え…敵を倒す兵器であろうとも」



「ナ…何ヲ言ッテ……!!?」


鳳翔「貴女達の贈り物…そのまま御返しします」クイッ




ズダダァァァァァァァン!!!






…ドササッ!




鳳翔「…いくら陽動があったとはいえ、基地の警備がこんなに少ないわけ……」





ミシミシミシッ!!!


ドコォォォォォォォン!!!















武蔵「床板が脆すぎないか?2階から下に抜け落ちるとは……ん?ああ、鳳翔か」パラパラッ…






鳳翔「…二階の捜索は終わったのですか?武蔵さん」



武蔵「見かけた敵は全員ブッ飛ばしたからな…たぶん大丈夫だろう」



ダダダダダダ!!!


「イタゾ!!死ネェーー!!!」


ドドォォォォン!!!





武蔵「…しまった、私の取り零しか」

鳳翔「姫戦艦に目を付けられるなんて災難ですね」スッ…

武蔵「いや、鳳翔は下がってろ」ズイッ




ドゴゴォォォォォォン!!!



「ヨシッ!!ソノママモウ一体……」







武蔵「ふむ…姫戦艦の砲撃も『空鉛砕』で防げるか」ミシシッ

鳳翔「ああ、試したかったんですね」





《空鉛砕》

丑忍忍空技の1つ。
血液中の鉄分を固まらせ、鉄と同等の硬さの身体にする技である。





「バ、バカナ…直撃ダゾ!?無傷ナドアリエルワケガ……」



武蔵「説明しても理解できんだろうと思うが……2番隊丑忍は血液の鉄分…もしくは大気の中にある元素を体内に吸収して身体を鉱物化する事が出来るんだよ」




「身体ヲ…鉱物化……?」



武蔵「だから我々を倒すならしっかり考えて掛かってこい。そうだろ、鳳しょ……」





鳳翔「…殲滅が命じられているとは言え、できれば貴女達を苦しませたくありません」

鳳翔「投降するなら提督に掛け合っても…」

武蔵「おい待て鳳翔、それは命令違反……」




ダダダダダダ!!!


「増援ダ!工廠カラモ全員呼べッ!!」

「ナラバ数デ押セバイイダケヨ!!!」






鳳翔「…残念です」

鳳翔「武蔵さん、先程の言葉は聞かなかった事にしてください」




武蔵「…酒の肴にイカ焼きが出たら、この軽口は塞がれるらしいぞ」ニッ

鳳翔「…分かりました」クスッ








武蔵「忍空組2番隊丑忍…鉱の武蔵が相手する」


鳳翔「同じく忍空組3番隊寅忍…精霊の鳳翔、手加減はしません」




武蔵「背中は任せるぞ、鳳翔」スッ


鳳翔「分かりました。では、私の背中はそちらにお任せしますね」スッ


武蔵「ハハッ!ああ、任せておけ」

武蔵「建物も鎮守府と似ていて助かる…お陰で思わぬ所から奇襲される事がない」


鳳翔「…!!」





鳳翔「(この既視感…そうか、この建物は……)」







【敵本部・別棟】



提督「………訓練施設、食堂、風呂、司令室……まさか、ここは…」スタスタ






スタタタタタ!


島風「うちの鎮守府みたーい」スタッ!




提督「…島風、そっちはどうだった?」

島風「部屋の間取りも全部うちと一緒だったよー」


提督「…敵が深海棲艦、その本部が鎮守府……いや、だが……」




島風「…提督、窓から見える向こうの建物…工廠だよね?」

提督「うちと同じなら、恐らくそうだろう」

島風「深海棲艦が出て来てるよー」

提督「!」バッ!


島風「あれ?でもその横にある建物はなんだろ?」


提督「(造りは全て鎮守府と同じ…にも関わらず一ヵ所だけ違う建物……)」




提督「……島風。工廠の破壊、及び敵の殲滅を頼む」

提督「私はその隣の建物に行く」ザッ!


島風「りょーかーい!」タタッ!


シュバッ!!





提督「………」






【敵本部・工廠】



「海域、孤島、鎮守府…全テノ場所デ交戦ガ始マッテイル!」

「出撃デキル者ハ急ゲ!コレ以上中二入ラセルナ!!」

「アノ男達ノ逃ゲル時間ヲ稼グノダ!」








島風「島風いっちばーん!」スタッ!



『!!?』



島風「うわぁ…敵がいっぱい」


「クッ…ココマデ来テイタカ!!」

「工廠デ暴レルノハマズイ!戦艦ハ外ニ出テ援護ヲ!ココハ駆逐ト軽巡デ…」






島風「何言ってるの?逃がすわけないじゃん」スッ…




島風『空子旋』




ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!!


ガシャシャシャァァァァァァン!!!





《空子旋》

子忍忍空技の1つ。
自分を中心に巨大な竜巻を発生させる忍空技である。
この技は中心にいる使用者にも危険があるため、下手すると大きな傷を負うことになる。





ドササササッ!!!




「ッナ……ナン……カゼ………」



島風「…ぃいったぁーい……張り切りすぎたかも……」クラクラ…





ガラッ…ズシャァァァン!!


「…ッ!?サッキノ風デ…扉ガ……」





島風「ふぅ……だーかーらー、逃がさないって言ったでしょ?」スクッ



島風「提督の命令は“殲滅”…だから生かしたまま帰る気は無いよ?」



「オ前ハ…一体……」









島風「忍空組1番隊子忍…風の島風」





島風「あ、でも覚えなくていいよー」

島風「どうせ誰かに伝える事もできないだろうしね!」バッ!!







【敵本部・工廠隣接施設】



研究員A「海域警備、並びに孤島の警備に回している深海棲艦から侵入者の報告有り」


研究員A「艦娘による一方的な蹂躙が行われていると…」


研究員B「陸でも戦える新たな艦娘か…研究材料としてはとても興味深いが……」


研究員C「命あっての物種だ」


研究員B「…深海棲艦にはもう少し時間稼ぎをして欲しかったが、仕方があるまい」


研究員D「少なくとも研究データを第二施設に転送出来ただけでも十分かと」


研究員B「よし、全員地下の脱出用潜水艇に乗りここから…」











提督「脱出できると、本気で思っているのか?」



研究員『!!?』バッ!!





提督「造りが鎮守府と同じなら、そこに人間が住んでいてもおかしくない…嫌な予感が当たったな」


研究員A「人間…その制服、提督か!!」


研究員B「バカな!一番厳重な警備があるこの場所にどうやって…!!」

研究員C「いや、そもそもこの孤島に何故外部の人間が…!!」

研究員D「こちら研究施設!すぐに見廻り組の姫、鬼級をこちらに送れ!!」




提督「無駄だ。工廠、及び施設内の深海棲艦は私の艦娘と交戦している…殲滅し終えるのも時間の問題だ」


研究員B「クッ…」






研究員B「!!……随分と余裕を見せるな、提督さんよ」


提督「たかが研究員に遅れを取るほど鈍ってはいないからな」








研究員B「その傲りが身を滅ぼすんだぞ?」ニヤッ






ヒュッ!ズダァァァン!!!






提督「グッ…!?」ズサァァァ!





「ソコマデダ……人間」


研究員B「ここは非戦闘員しかいない?中に警備の深海棲艦がいないわけないだろ」

研究員C「姫戦艦を配置していた事にすら気付かなかったのですか?愚かな……」




提督「……」ヨロッ…





研究員C「…姫戦艦の拳を喰らって立ち上がる?この男、一体……」

研究員B「だがその強がり、いつまで耐えれ……」









「ッ!?ガァァァァァ!!?」ガクン!!



研究員B「な…っ!おい、どうした…!?」










提督『空受折』



研究員B「な、なに…?」



提督「忍空には、わざと殴られる事により相手の骨を折る受け身の技があるんだよ」





研究員A「に、忍空…!?」


研究員B「まさか…そんなバカな!!忍空は数百年前に歴史と共に消え去ったはず……!!」


研究員C「じゃあ…まさか艦娘が陸で戦っているのは…!!」


研究員D「帝国軍を壊滅寸前まで追い詰めた集団…あの噂が本当なら我々に勝てるわけが……」









提督「……」ザッ!



研究員B「…た、頼む!我々を助けてくれ!!今までの研究も全部人類のためにやって来た事なんだ!!」ガバッ!


研究員C「そ、そうだ!!深海棲艦の出自を研究した結果、人間と敵対する事になってしまったが…」


研究員B「元々は人間と艦娘、そして深海棲艦の共存を目指していたんだ…頼む!もう少しでみんなが幸せになれる世界が出来るんだ!!」






提督「………」スタスタ…





提督「……もう、人間や艦娘を襲わせないと誓えるか?」グイッ


研究員B「あ、ああ!必ずや研究を成し遂げ、争いの無い世界を作ってみせる!!!」






提督「…元帥からの命令は本拠地の破壊と深海棲艦の殲滅」

提督「そこに人間は入っていない」




提督「……不服だが、お前達を保護し元帥に口添えをしておく」

提督「各海域から深海棲艦を下がらせろ」クルッ









研究員B「はい、嫌です」カチャッ









提督「……貴様…」


研究員B「いくら忍空使いでも、頭に銃口を押し付けられたら…変な術は使えんだろ?」



提督「…さっきの言葉は嘘だったのか?」


研究員B「そもそも、お前達は勘違いしている」



研究員B「深海棲艦の上位に位置する姫級と鬼級…コイツらは沈んだ艦娘を私達が改造して造り上げた物だ」



提督「………」


研究員B「どうせ死ぬ命なら有効活用出来るか研究していたが…ここまで人類に対抗できるとは思ってなかったよ」


研究員B「俺達はコイツらを使い世界を掌握する…」



提督「…戯れ言だな」


研究員B「いーや、海を制圧すれば自ずと世界が手に入る」



研究員B「なんせ…地球の七割が海で出来ているんだ。その海を失って生きていけるやつはいない」


提督「…そのために苦しむ人間や艦娘がいるのを、分かって言っているのか?」


研究員B「俺達が幸せなら周りがどうなろうと知ったことじゃない」



研究員B「だから…お前には死体になってもらい、表の艦娘達を引き付けてもらう」

研究員B「あばよ、提督さん」カチッ




パァァン!!





ドサッ





研究員B「おら、逃げるぞ」

研究員A「は、はい!!」ダッ!















提督「忍空は人を傷付ける武術じゃない…私は彼女達にそう教えてきた」



『!!?』バッ!!




研究員C「ば、バカな!頭を撃ち抜かれて何故…!!」


研究員D「…!?し、死体が丸太に……」





提督「だが、お前達はもう…人間じゃない」



研究員B「クッ…クソッ!!」カチャッ!!

















提督「人間の…クズだ」








【数日後・海軍本部会議室】



海軍大将A「敵本拠地を制圧…いや、破壊しただとぉ!?」


海軍大将B「バカな…本拠地の発見から3日と経っていないぞ」


海軍大将C「…帝国軍が壊滅寸前まで攻められた話もどうやら嘘ではない…という事ですか」




海軍元帥「…フム、まさかこうも簡単に落ちるとはな……」


海軍大将B「艦娘12体に人間1人でこの作戦を成功…もはや艦娘の枠に入っていない」

海軍大将A「忍空……艦娘すら凌駕する力って事か」

海軍大将C「…………」





海軍大将B「…そう言えば、元帥は何処で忍空使いと?」




海軍元帥「……あれは解体施設の視察に行った時だ」


海軍元帥「海辺から解体施設が見える崖に、あの男は居た」






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





海軍元帥『おい、ここは一般人立ち入り禁止だ』


『………』


海軍元帥『聞いているのか!!』





島風『……あの人、何か言ってるよー?』

海軍元帥『島風…!?馬鹿な、ならばお前は提督か…?どこの所属だ!?』

『…違う。この子は……いや、それより聞きたい事がある』



『…あの施設は何だ?』


海軍元帥『貴様…私は海軍元帥だぞ!上官に向かってその口の……』

『俺は提督じゃない』


海軍元帥『なにぃ?ならば何故…いや、貴様は……』




『…あの施設は何だと聞いている』ギロッ


海軍元帥『!?』ゾクッ!





海軍元帥『(……この男、何者だ…?)』





海軍元帥『……艦娘を解体する施設だ』


『…解体?』

島風『!』ビクッ


海軍元帥『不要となった艦娘の装備を解体し、人と装備に分離する…そう言えば分かるか?』



『……戦うために生まれた者に、戦いの術を手離させるのか?』

島風『…………』ギュッ



海軍元帥『そんな事が貴様と何の関係がある?さっさと失せろ…でなければ』



『……お前、海軍元帥とか言ってたな』



海軍元帥『それがどうした。貴様に何の関係がある』







『取引をしないか、元帥さん』






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





海軍大将B「その取引が…」

海軍元帥「敵の本拠地を落とす代わりに、鎮守府1つと解体施設に入る艦娘の使用許可」



海軍大将C「…よくそんな得体の知れない男と取引しましたね」


海軍元帥「その後に忍空を名乗ってこなければ鼻で笑って終わらせていた」


海軍元帥「だが、取引としてはこちらに然程痛手は無い」

海軍元帥「成功すれば良し、何かしでかしたら握りつぶせばいい」


海軍大将A「ハハッ!怖ぇー怖ぇー」




海軍元帥「だが敵本拠地が壊滅した今、あの男との契約も終わってしまった……」

海軍大将B「忍空…この力を逃すのは惜しいですね…」

海軍大将C「どうせ解体予定だった艦娘なのですから、実験体として隅々まで調べてみたいですねぇ」

海軍大将A「俺の艦隊も、その武術が使えりゃあ…いや、そうすれば海軍だけで帝国の軍権を……」



海軍元帥「…とりあえず、まずは祝賀会でも開くとしよう」ニコッ

海軍大将B「……!そうですね、彼等の健闘を称え…食事会でも開きましょう」

海軍大将C「……フフッ、それは素敵な話ですね」

海軍大将A「!なるほど、そいつはいい考えだ……おい、薬品の準備は任せるぞ」

海軍大将B「分かってますよ」






ニャー




海軍元帥「なんだ、来てたのかクロ」


クロ「ニャー」


海軍元帥「ほらほら、会議は終わった…御飯にしよう」スッ

クロ「ニャォッ」ヨジヨジ




大将『(元帥は本当に猫好きだよなぁ…)』






【某鎮守府】



提督「…疲れている所、集まってもらってすまないと思っている」

島風「なになに?また戦うの?」

武蔵「新たな敵…つまり裏ボスでもいたのか?」

鳳翔「二人とも、まずは提督の話を聞きましょう」



提督「……今回の作戦勝利について、元帥から呼び出しがあった」

提督「祝賀会を開き、皆に表彰と栄誉の贈呈がしたいらしい」

提督「最高の食事も用意すると書いてあった」


雲龍「…食事?」ピクッ

長門「本部待遇の食事か…少しそそられるな」

初春「いらぬ艦娘と捨て置いたわらわ達に表彰や栄誉を与えると思えんが…何かの罠かのう」クスクスッ








犬『初春の言う通り、これはたぶん…罠っぽい』




不知火「…どういう意味です?」


犬『夕立が聞いた情報だと…食事に薬を入れるって言ってたっぽい』



川内「薬物…ねぇ」

神通「提督、これは…」



提督「忍空の解明、そのための捕縛だろうな」

犬『元々解体予定の艦娘だし…拷問や解剖とかもありえるっぽい』




提督「…良くも悪くも、我々は先の戦いで活躍してしまった」

提督「こうなる事も多少考慮していたが…実際にされると、辛い物があるな」



伊58「…提督、どうするでちか?」

愛宕「返り討ちにしますか?今の私達ならできるかもしれません」フンス!

不知火「余裕です」フンス!





提督「…あそこにいた研究員が“第二施設にデータを送った”と言っていた」


提督「…その言葉からして、第二だけではなく第三や第四の施設がある可能性も出てきた」



犬『…つまり?』

提督「これから各地に移動し情報を集め、敵の全本拠地を潰す」



川内「……?え、どういう事?」

初春「…要は“まだ敵の本拠地があるかもしれないから勲章や祝賀会に参加できません”って事じゃの」


雲龍「食事…」シュン

鳳翔「後で美味しい物でも作りましょうか」クスッ



長門「転々と移動する事により捕縛される危険性も減らすわけか…」

不知火「いつ襲われようとも艦娘や海兵程度に遅れを取る事はありません」

島風「慢心!ダメ!絶対!!」

武蔵「!島風に諭される日が来るとは……」




神通「しかし提督。元帥直属の命令だとやはり行かないのは…」


提督「元帥との契約は“敵本拠地を潰す代わりに鎮守府の借り受けと解体施設に入る艦娘の勧誘”のみ。向こうの命令権は入ってない」

提督「…そもそも、厳密に言うと私は提督ではないと会った時に言っただろう」


愛宕「…正直、冗談だと思ってました」

伊58「(元帥もとんでもない人と契約したなー…)」





提督「この鎮守府から去る事になるが…何日欲しい?」


長門「…準備と世話になった人達への挨拶回り……3日は欲しいな」


提督「分かった、では出発は3日後に」





犬『…フフッ。なら夕立は本部の動きを逐一報告するっぽい!』


川内「なんだ、夕立も来ないのか?」

雲龍「…会ってみたい」

武蔵「一度も会ったことないんだ、この機会に合流するのもいいんじゃないのか?」



犬『…11番隊戌忍は諜報活動を専門とする部隊』

犬『だから何があろうとみんなの前に顔を出せないし、夕立の顔を知ってるのは提督さんだけ…それが夕立の誇りっぽい』



神通「…そうなんですか、提督」

提督「ああ……だが夕立。我々に平和が訪れた時には顔を出してもいいと個人的には思うぞ」




夕立『…うん!その時は夕立もみんなと遊びたいっぽい!!』


長門「ああ、喜んで歓迎しよう」


鳳翔「早く、戦の無い世界にしないといけませんね…」



提督「では、各自3日以内に出立の準備をする事……解散!!」パン!






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





提督「……2人だけになったか」

犬『正確には1人と1匹っぽい』




提督「………すまないな、夕立。お前も合流できれば…」

犬『提督さんは気にすること無いっぽい』


犬『海軍がどう動こうとも、その動きを知ってるのと知らないとではかなり違うっぽい』

提督「ああ、その通りだ…」







犬『……私達は元々、様々な理由で解体予定だった艦娘でした』


犬『燃費が悪い…同じ艦娘が居る…お前である必要性は無い…それはもう、理不尽な理由で解体施設に送られました』

提督「………」



犬『そんな時、提督が手を差し伸べてくれました……』




犬『凄く、嬉しかった……』




提督「…感謝するのは止めろ。戦いをやめて普通の女の子になる道を閉ざした張本人だぞ?それにお前の場合は…」




犬『それでも嬉しかったんです』


犬『戦うために生まれた私達に生きる理由を与えてくれました…』


犬『私もあの時に声をかけてもらえなかったら…ずっと本部で飼い殺され…惰性で生きてたかもしれません……』



犬『だから提督』

犬『私は何があろうとも提督の味方ですし、私にできること全てやって…提督の力になりたいです』




提督「……ありがとう」


犬『…フフッ。提督と同じように、感謝はいりませんよ♪』


提督「……フッ、言ってくれる」





提督「さて、3日後出発するが…第二施設について本部に情報はあるか?」

犬『提督達が攻めた場所すら私が集めた情報をそれとなく流した物なので、本部がそれ以上を知ってるとは思えません』


提督「ふむ、ならばどこから回るか……」

犬『各地に潜ませてる戌忍の元艦娘の子達に不審な出来事があったか聞いてみます』

提督「お前、いつの間に…」

犬『諜報活動するにはやっぱり人数が必要になりますから…3日あれば絞り込む事もできますので』



提督「…頼りにさせてもらう」



提督「だからお前も何かあったら頼れよ、夕立」











提督「……いや、明石」






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





【海軍本部・雑貨屋】




明石「…はい」ニコッ






ニャー


明石「あ、ごめんねクロ…はい、オヤツ」


クロ「ニャー」モグモグ




海軍元帥「なんだクロ、お前は私より明石がいいのか」


明石「違いますよ元帥。クロは新しいオヤツに釣られて来ただけです」

海軍元帥「むぅ…新しいオヤツ?」

明石「一袋500円のお得パックです」

海軍元帥「相変わらず商売が上手い…五袋貰おう」

明石「毎度ありがとうございまーす」



ニャー


海軍元帥「じゃあ行こうか、クロ」

クロ「ニャー」


明石「またの御来店お待ちしています」






明石「…またよろしくね、クロちゃん♪」





【3日後・某鎮守府前】



提督「……お前達、いつの間にこんな車を買ったんだ…?」


武蔵「こんな事もあろうかと…ってやつだ」

長門「15人乗りの乗用車とトラック…二台あれば旅に支障は無いだろ」

愛宕「みんなー!荷物は載せたー?」



提督「…免許はあるのか?」

初春「免許は武蔵達が取ってる故、何の心配もいらぬ」

不知火「免許持ってる雲龍さんは既に車の中で寝てますが」



雲龍「……zzz」



島風「はやーい…」

川内「なら私が運転するか?」

神通「姉さんはスピード出しすぎますので武蔵さんか長門さんに任せましょう」

伊58「早く乗るでち!」

鳳翔「そう言えば行き先は決まっているのですか?」

長門「第二施設…その情報が得られる場所がいいが……」


犬『夕立情報網では雛見沢って村が怪しいっぽい。でもここからの距離的には夜見山経由が理想っぽい』

武蔵「ほぅ、戌忍の情報網は伊達では無いか」



ワイワイガヤガヤ…ワイワイガヤガヤ…






提督「…なあ、島風」


島風「なーにー?」





提督「心強い仲間がこんなにもいると…頼もしいな」フッ



島風「…うん!」ニコッ






~ 深海棲艦攻略編 ~


END





~ 艦娘達のちょっとだけafter(後日編) ~





《島風》





【森の中】





ザザッ!!バッ!!ババッ!!!




島風「島風いっちばーん!」スタッ!






提督「(島風もそうだが、全員成長スピードが早いな……)」


島風「ていとくー、今日の修行メニュー終わったよー?」ザッ、ザッ




提督「…よし、島風」ザッ!


ススッ…




提督「お前の成長が見たい……全力で突いて来い」


島風「!分かったー!!」ザザッ!!





武蔵「ほぅ、提督が両手を前に出してるって事は…」

神通「島風さんの力を測るつもりでしょうか…」

川内「事故らなければいいけどね」ケラケラ





島風「島風、いっきまーす!!」


提督「…来い!」



シュッ…




島風「えいッ!!」ヒュッ!







ミシィッ!!!





武蔵「あ」


神通「あ」


川内「うわ、股間…」







提督「」













提督「いっってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」






バブリッッッ!!!!






島風「くっっせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」





イッテェェェェェェェ!!!!


クッセェェェェェェェ!!!!






武蔵「…神通、初春と鳳翔はどこにいる?」

神通「……二人とも近くにいますね」

川内「ちょっと二人呼んで来る」タタッ!

武蔵「初春には打撲系の薬を持って来るように伝えてくれ」


ワカッター!







武蔵「…提督のアレが生きてることを願おう」ナム…





《武蔵》





【宿泊所】



提督「巷では、最近女性を狙う変質者が出ているらしいが…」


武蔵「愚問だな提督。我々が変質者程度に遅れを取るとでも?」

提督「いや、過剰防衛しそうだから忠告しただけだ」


提督「まあ、武蔵なら身体を鉱物化出来るから大丈夫だろう」





武蔵「…ほぅ?それはつまり…私が鉄のような女だと言いたいわけだな?」


提督「いや、そういうつもりは…」

武蔵「ならば試してみるがいい…まぐわうのは初めてだが知識はある」シュルッ…パサッ

提督「おい!ちょ、まっ…!!」





「そこまでじゃ!」





武蔵「!」




初春「丑忍武蔵…わらわの顔を忘れたか」

武蔵「…初春だろ?」



初春「……わらわが今日の秘書艦だと知りながら提督をその豊満でたわわな胸で誘惑し、貞操を奪おうとした罪…断じて許容出来ぬ。潔く今は身を引けぃ」

提督「(今まで秘書艦を設けた覚えが無いんだが…)」

武蔵「…嫌だと言ったら?」





初春「……者共!出合え出合え!!この者は生娘を騙る淫乱じゃ!!」ババッ!!

初春『空分身!』


ヒュヒュヒュ!!


ワーワー!!ワーワー!!





《空分身》

忍空技の1つ。
自分の分身を出し、相手を撹乱させる技である。





武蔵「…淫乱とは酷い言い種だ」


提督「初春、さては暴れん坊将軍見たな」










犬「(と言うより、宿屋の中で暴れるのはどうかと思います)」






《鳳翔》





【宿泊所】



鳳翔「提督…私は感謝しています」


鳳翔「忍空を使えるようになって、旧式で使えないと言われた私の世界は更に広がりました」



提督「……そうか」


鳳翔「忍空は今でも料理する時や洗濯する時にも私を支えてくれます」



提督「…そうか」




提督「ところでだ……鳳翔」


鳳翔「はい」











提督(パンツ一枚)「さすがに服を持ってかれては寒いんだが」

鳳翔「パンツがあるから大丈夫です♪」




提督「急に呼ばれたから何かと思ったが、寒いしせめてシャツを……」


鳳翔「ここにいる子達はみんな提督を慕って付いて来ています…勿論、私も」

提督「(ああ、無理そうだな…)」



鳳翔「みんなが慕い、だけど縮めようとしないこの距離感がとても心地好く…このままでいいと私は思ってました」


提督「ならまずシャツを…」






鳳翔「武蔵さんがお酒を飲みながら愚痴を溢しまして…」

提督「あー…」




鳳翔「未遂とはいえ、このまま乗り遅れるくらいなら…一番乗りは私がいただこうかと」シュルッ…パサッ


提督「ちょ、まっ…」





「そこまでじゃ!」




鳳翔「!」



初春「寅忍鳳翔…わらわの顔を忘れたか?」


鳳翔「初春さん、どうかしましたか?」



初春「……今回は秘書艦ではないが、そのきめ細やかな肌と艶かしい雰囲気で提督を誘惑する行動…断じて許すことは出来ん。即刻服を着直し、司令に衣服を返すのじゃ」ジーッ…

鳳翔「…ふふっ。御断りします」ニコッ

提督「(何故か初春の目線はこっちに来てるんだよなぁ…)」





初春「かくなる上は……先生!先生ー!」


提督「先生?」






ノッシ…ノッシ…










武蔵「………」






提督「む、武蔵…」


武蔵「悪いな鳳翔、提督とは未遂なのは知ってるだろう?」ゴキキッ!


鳳翔「………」


初春「ほっほっほっ、さすがの鳳翔も戦艦武蔵が相手では…」





鳳翔「…ふぐヒレ酒に、ふぐ刺し」


武蔵「!」ピクッ!





鳳翔「イカ焼きの材料と一緒に仕入れたのですが…この後、一緒にどうですか?提督」

提督「ん?むぅ…それはいただきたいが……イカ焼きは武蔵との約束だと言ってなかったか?」


鳳翔「ええ。ですのでフグの方を…最も、本当はイカ焼きと一緒に武蔵さんに出す予定だったのですが……」チラッ






武蔵「……」ウズウズウズ

初春「ま、負けるな武蔵!わらわはお主を信じておるぞ!!」









鳳翔「あ、名古屋コーチンも手に入ったので唐揚げも一緒に…」

武蔵「鳳翔、お前の次でいいから混ざってもいいか?」

初春「武蔵ーーー!!!」



オイ、マテホウショウ…ココロノジュンビガ…

フフフ…コウミエテ、ワタシモケイケンガマッタク…

ホゥ、イガイダナ…ナラバコノムサシ、テイトクノ……

マテムサシ!キュウニ……









初春「…………」







初春「は、初春!推して参る!!」バサッ!!


提督・鳳翔・武蔵『!?』




チョ、ハツハル…!!

ココマデキタラフタリモサンニンモカワランダロ

エイユウイロコノム…フフフッ♪

ワラワトテ…ワラワトテー!!
















犬『……グッドラック、提督』





《神通》





【草原】



バシバシッ!ザザッ!

ブォン!!パシッッ!!!




提督「…強くなったな、神通」スタッ


神通「いえ、まだまだです」スタッ





神通「…そう言えば、提督は何故私と姉さんが解体施設に送られたか知っていますか?」

提督「いや、知らないが…一々聞くほど野暮な事はしない」



神通「…フフッ。女心としては少しくらい興味を持っていただけると嬉しいんですよ?」

提督「…女心は難しいな」







神通「…前の鎮守府には私と姉さん……そして妹の那珂が居たんです」



提督「…………」



神通「那珂は凄く明るい子で…よく、“平和になったらアイドルとして有名になってやる!”ってはしゃいでました…」



神通「そんな那珂を…私と姉さんは微笑ましく見守っていました」



神通「みんなで改二になった時…いつか来る平和な未来を夢見て……笑ってました」








神通「ですが…そんな未来を見れず、那珂は沈みました」






提督「…………」




神通「戦争だから仕方がない…しょうがないと…私と姉さんは言い聞かせながら那珂の死を受け入れようとしました」




神通「だけど…段々と、私と姉さんの砲弾が……当たらなくなりました」




神通「…どんなに強くなった艦娘でも、攻撃が当たらないのならいないのと同じ……そう言われて私と姉さんは解体施設に送られました」


提督「………」






神通「…提督。実は私達……解体されたら海に身投げしようと思ってたんですよ?」




神通「…でも、その前に提督と出会えました」


提督「……………」






神通「戦えない…砲撃が当たらない…そう嘆いてた私達の頭を、提督は優しく撫でてくれました……」






神通「“誰も沈まない、平和な世界にするから力を貸してほしい”……提督の言葉を、私はずっと忘れません」



提督「…神通」



神通「その言葉通り、私達は深海棲艦の本拠地を1つ…潰しました」



神通「私達の願いを…叶えてくれました」







提督「…叶えたのは私じゃない。お前達がいたから叶ったんだ」




神通「…フフッ。ありがとうございます……提督」





提督「よし、修行再開と行こう」


神通「はい!…ですが提督、その前に1つよろしいでしょうか」

提督「なんだ?」





神通「卯忍は光を操り…光ある場所を視野とする事が出来ます」

提督「…?ああ、そうだな」













神通「……鳳翔さん、武蔵さん、初春さんと睦まじい様子が見れて私は驚きました」ニコニコ





提督「………え、あ…いや、あれは……」


神通「“英雄色好む”と言いますが、三人同時にというのは…どうなんでしょうか?」ニコォ…

提督「(ヤバい、神通の背中に鬼が見える)」





提督「…ん?待ってくれ神通」

神通「はい、待ちますよ」ニコニコ







提督「俺が襲われるのを見て、なんで止めに来なかった?」

神通「」ピタッ









神通「それは…その……だ、男女の同衾というものを見たことがないので……///」カァァ





提督「…興味があったと」


神通「……///」コクン






提督「………」


神通「そ、そんな目で見ないでください!!」ガァー!



神通「コホン…とにかく!鳳翔さん達三人と閨を過ごしたのですから、私と川内姉さん二人を相手してもらいますからね!!!」

提督「あ、ああ」コクン


神通「では提督、また夜にお邪魔します」スッ…



ヒュバッ!!






提督「……ん、あれ?」


犬『(提督、流されやすいなぁ…)』







《不知火》





【キャンプ場】



提督「…不知火、なんで呼んだか分かってるな?」


不知火「…………」セイザ




提督「…キャンプでテンションが上がるのはいい」

提督「お前も年相応だと私は安心した」



不知火「……年齢?艦娘に年齢は…」

提督「見た目の判断だ、そこは重要じゃない」




提督「…長門に火が欲しいと言われ、喜んだのも……まあ、分かる。お前の得意分野だしな」



不知火「…………」





提督「だがな…不知火」




提督「何故………」














提督「何故、『空炎乱』を使った?」





《空炎乱》

辰忍忍空技の1つ。
周囲に炎の柱を発生させる広域攻撃技である。





不知火「………」



提督「たぶん…長門は『空炎掌』だと思ったんだろうな」





《空炎掌》

辰忍忍空技の1つ。
手の周辺の空気を急激に燃焼させ炎を作り出す技である。





不知火「…………」



提督「それなのに周りから火柱が立つ……さすがに私も驚いた」




不知火「…………」



提督「近くにいた愛宕が火柱を凍らせてくれたから大きな問題にならなかったが……」




提督「不知火、何か言うことは?」
















不知火「不知火に落ち度でも?」キリッ


提督「落ち度しかなかったんだよ」





《長門》





【宿泊所】



長門「むぅ…」




提督「どうした長門」


長門「!提督か」



長門「なに、巳忍の忍空技は土の中に入る事が多いから服がすぐに汚れてな……」


提督「…洗濯に困っていると?」

長門「歴代の巳忍忍空使いの方々はどんな服装をしていたのか…」




提督「…分かった、知ってそうな者に当たってみよう」

長門「なに?」

提督「忍空使いが最も修行に適したと言われる場所…“忍空の里”の守り人なら知っているかもしれない」



長門「忍空の里…初めて聞くな」

提督「今度近くに行ったら寄ってみようか?」

長門「ああ……所でその守り人と連絡は取れるのか?」






提督「夕立、取れるか?」

犬『ポチの事だよね?聞いてみるっぽい!』




長門「……ポチ?」

提督「…ペスじゃなかったか?」

犬『もー、そんな事言うとポチに言い付けるよー?』

提督「……ポチだったか」



長門「…提督、そのポチとは?」

提督「……喋る犬だ」

犬『夕立と違って普通に喋る犬っぽい』



長門「(凄く会ってみたい…)」





【数日後】



提督「まさか巳忍の隊長が着ていた服を送ってくれるとは…」

長門「(犬が郵送手続きを…)」

犬『さっそく見るっぽい!』






ガサゴソ…ガサゴソ……









提督「…ん?」ピタッ


長門「お…?」














犬『フンドシ…』





長門「…フンドシか。確かに衣服の汚れは気にならないな」

犬『え、着るの?』

長門「胸はサラシを巻けばいいし…何より動きやすそうだ」

提督「お前はもう少し羞恥心という物をだな……」











武蔵「ほぅ、今夜はフンドシプレイを御所望か」ズイッ



長門「!?」バッ!

提督「……武蔵か」

長門「いつの間に背後に…」

武蔵「身内しかいないからと油断しすぎだ、長門」


武蔵「まあ、それを望むのならソレを着てお邪魔しよう…では、今夜にまた」スタスタ…








提督「…有無言わさず誤解して行ってしまったな」

犬『むしろ夕立はフンドシを持ってるっぽい事にビックリしてるっぽい』











長門「……提督、“今夜にまた”とはどういう意味だろうか…?」ゴゴゴゴゴ…



提督・犬『あ』





長門「…その話を詳しく、今夜寝室で聞かせてもらおう」ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


提督・犬『!?』







《愛宕》





【湖の畔】



シャーーー…



島風「ていとくー!アイススケートおもしろーい!!」キャッキャ!

不知火「氷の上を滑るのは今までに無い体験です…」シュバッ!


初春「こ…これは海の上より立つのがむずか…し、のわぁ!?」ズテーン!

伊58「なんで海では立てて氷上では立てないんでちか」スイーッ



ワーワー!

キャー、ツメターイ…





提督「…ありがとう、愛宕」


愛宕「ふふっ♪お役に立てて何よりです」ニコッ





愛宕「…提督、ありがとうございます」


提督「…何がだ?」






愛宕「……私、実は間違えて解体施設に送られたんです」


提督「………」



愛宕「重巡としてそこそこ活躍してた私ですが、残念ながら仲間の方々には嫌われていたみたいで…」


愛宕「間違って解体依頼を書かれたと知りながら…艦隊の皆さんは止めようとしてくれませんでした」




提督「…間違っていたのなら、その提督に抗議しなかったのか?」

愛宕「勿論、するつもりでした」


愛宕「でも…司令室の前で聞いちゃったんです……」








『あ、間違えて愛宕を……まあいっか。どうせ建造ですぐに出るし』








愛宕「…私と言う戦力は、“まあ、いっか”程度だった……」



愛宕「仲間だと思ってたみんなにも嫌われていて、提督にも軽く扱われて……」






愛宕「だから私は、何も言わず…解体施設まで……」




提督「………………」







愛宕「…ですが、そこで提督と出会い…忍空と、本当の仲間と呼べるみんなにも出会えた」






アタゴー!スベラナイノー?

ココデホノオヲダシタラ…

ヤメンカ!

…メガマジダッタデチ

アタゴー!コッチダヨー!!




愛宕「…みんなと笑いあえる幸せに、そしてそれに出会わせてくれた提督に感謝しています」フリフリ



愛宕「ただ…また急に嫌われるかもしれないと思うと、少し怖くも思いますけどね」クスッ






提督「……私は当事者ではないから、愛宕がどうして嫌われていたかは分からない」




提督「だが、ここにいる者がお前を嫌うことはない」


提督「それぐらいは信じていいと…私は思う」



愛宕「……はい」ニコッ





テイトクー!イッショニスベローヨー!!




提督「…行くか、愛宕」スクッ


愛宕「はーい♪」スッ

愛宕「っと!?」グラッ!





ガシッ



愛宕「……へ?」


提督「足でも痺れたか?お前らしくもない」


愛宕「あ、あの提督?手、手を握って…///」カァァ

提督「手袋してても冷えてるな…もっと身体を大事にしろ」


愛宕「て、提督///だ、大丈夫ですから…!///」アワアワ






島風「あー!愛宕いいなー!!」

不知火「司令、私も手が冷えたのでお願いします」キリッ

初春「(今夜も閨に行こうかのう…)」

伊58「いつまでもイチャついてないで早く滑るでち」ビシビシッ

提督「痛い痛い、地味に痛い」






愛宕「……フフッ♪」ギュッ!

提督「愛宕…?」





愛宕「みんなー!順番に…ね♪」



ハーイ!!







《初春》





【宿泊所前】



スタスタ……



初春「…うむ、ここなら日もよく当たるのう」ザッ


ゴソッ…ジョロロロ


初春「ジョウロも特注じゃ…元気に育つのじゃぞ~♪」シャー…






提督「植木を持ってたのか」

初春「おや、気付かれたか」



提督「たまに姿を見せなくなると思ったら…」

初春「鎮守府におった頃からの子での…ちょうど水をあげてる所じゃ」



提督「…何かの花か?」

初春「うむ、何かの花じゃ」


提督「……何か?」

初春「種を複数買ったのはよいが、それが混ざってしまっての」


初春「ま、日が経てばそれもわかるじゃろうて」ホホホ





提督「初春、忍空を使えば花は…」

初春「すぐに咲くじゃろうな」




初春「じゃが、それよりもわらわは…この子達が自然に咲くのを見たいのじゃ」


初春「人も花も、年相応に成長するのが一番じゃろうて」ニコッ






提督「…その考えに至ってなかった私もまだまだ、だな」

初春「よいよい、もっとわらわを敬うがよい」ホホホ


提督「…なら、教授して戴いた御礼として何か贈り物をさせてもらえるかな?」

初春「ふむ…別に物が欲しくて言うたわけではないが、贈り物ならありがたく受け取ろうかの」


提督「…要望は?」

初春「そこは自分で考えてほしい所じゃが…むぅ」フム…




初春「…おお!そう言えば1つ、買おうか迷ってた物が……」ポン!

提督「ほぅ…それは?」












初春「暴れん坊将軍のDVDBOX」


提督「…お前のソレは年相応か迷う所があるな」





《川内》





【深夜・浜辺】




ザザァーーン……ザザァーーン……



川内「…………」




提督「ここにいたか、川内」スタッ


川内「提督……」





提督「……暗いな。波音しか聞こえん」


川内「夜戦はいつもこの暗さだよ」ケラケラ





川内「…提督。私が夜戦好きの理由…知ってるかい?」


提督「…いや、聞いたことないな」










川内「…暗闇から狙い撃つのが、たまらなく興奮するからさ」






提督「…………」



川内「夜戦になると目が冴えて相手の気配が分かる…それが川内型の特徴でね」


川内「潜み、狙い、沈める…そのスリルが堪らなく好きだった」











川内「…好きだったんだ、那珂が沈むまでは」




提督「…………」




川内「那珂が沈んだのも夜戦でね…気付いたらいなくなってた」





川内「那珂が沈んでから…理解したんだ」




川内「暗闇から狙い撃たれるのは、私達も一緒だって」




川内「それからは…まぁ、神通から聞いてるだろ?」




提督「…命中率が下がった、か」


川内「そう。むしろ狙えなくなったってのが正しいね」





川内「…でも、提督と忍空に出逢って……その考えが変わったんだ」




川内「申忍の技は雷を操る…それってさ、夜戦では凄い目立つよね?」


川内「深夜に轟く雷光…それを見た敵は全員こっちを向くんだよ」



川内「照明灯より強烈な光を見たら…当然、敵も私を狙ってくる」





提督「海で雷を操る囮か…強烈だな」フッ

川内「忍空を教えたのは提督だよー?」ニヤッ





川内「…だから私は、二度と那珂と同じように誰かを沈ませる事はしない」



川内「それを私は…許さない」グッ






提督「…夜風は身体を冷やす。海戦中じゃないんだ…戻って身体を休ませろ」


川内「はーい」




川内「…あ、提督。1ついいかい?」

提督「なんだ?」




川内「光もないこの夜の波打ち際…さすがの神通も見ることは出来ない」


提督「…だろうな」



川内「そして他の艦娘達も寝静まってる…」


提督「………」




川内「つまり、今起きてるのは私と提督だけだ」ススッ…


提督「…おい、まさか……」

川内「提督……」














川内「夜戦…しよっか♪」ペロッ





《雲龍》





【森林・河原】




雲龍「………zzz」








武蔵「…いつ見ても寝てるな、雲龍」

長門「…提督、前から気になっていたんだが」

提督「なんだ?」













雲龍「………zzz」


島風「……zzz」





長門「雲龍は出会う前からああだったのか?」

提督「ああ、とは?」

武蔵「(増えてる…)」



長門「基本的に私は雲龍が寝ている所しか見た事が無いんだが…」


提督「前の鎮守府では帰還したらバケツ被ってすぐ出撃、寝る間も無く戦いに駆り出されていたらしいからな」

武蔵「さらっと言える内容ではない気がするんだが」





提督「……“安心して寝れる場所があるなら、それ以上幸せな場所はない”と、雲龍が言っていたな」




武蔵「…つまり、ここは安心して寝れる場所か」


長門「そう言われると、悪い気はしないな」フフッ





ミンナー!ゴハンデキマシタヨー!



雲龍「!!」ガバッ!

島風「!」ガバッ!


島風「私がいっちばーん!!」ヒュン!!

雲龍「!!」ババッ!!

バシュン!!



アー!ソラトンデルー!!ズルーイ!!!









提督「……寝れる場所と、飯も…だな」


長門「…………………」


武蔵「……飯行くか、2人とも」





【海上】




ザザァァーン……チャプン







雲龍「…………」ボケーッ




ヒュッ!!



島風「雲龍ー!……何してるのー?」ザザッ!







雲龍「…空を、見てた」


島風「空?何かあるの?」キョロキョロ





雲龍「空を見ると…敵が来るか、分かる」




雲龍「今は、何も変わらない……だから、何も起こらない……」


雲龍「空が、全て教えてくれる……」



島風「ふーん……」ジーッ…








雲龍「……何も変わらない空が好き」




雲龍「……私は、空が一番好き………」






―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





『戦う時以外は空を見て…やる気があるんですか?』






違う……私は、みんなが沈まないために……戦いに集中できるように……






『雲龍!!お前が普段からやる気を出してれば他の艦娘が沈む事は無かったのに…!!』






私は……精一杯……できる限りの手は尽くして……空を見てて………






『いつもいつも空ばかり見てて…貴女、気持ち悪いわよ』






みんなが沈まないように……私は…………






『武勲を積んで調子に乗らないでよ!!寝る暇もない?寝ない貴女が悪いのよ!』





………私は………わたし、は………………





『ダメだな…お前は優秀だが、協調性が欠ける。新しく入った雲龍に戦いは任せてお前は解体されてろ』






協調性って………なんですか…?……みんなが生きるより……大切な事なのですか………?






『よかったじゃない。これで思う存分…空を眺めることができるわよ?』






私が………空を見てたせいで………でも、みんなを守るため……



みんな………みんなって……だれ…?








私は……空が好き……






…でも、空は……私の事を…好きじゃないのでしょうか……











『そんな悲しそうな顔しないでくれ……大丈夫だ』


















提督『…君は、空に好かれてるよ』








―――――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――





雲龍「…………」



島風「…難しい話はよくわかんなーい」ブーブー


雲龍「……そうだね」クスッ



島風「…あ!でも島風分かった事があるー!!」


雲龍「……?」










島風「空は変わらないけど雲は変わるよ!」



島風「…雲龍は変わった?」



雲龍「!!」












雲龍「……私は………」






私は、空が好き……





雲龍『私が…空を飛んで……!!』


提督『飲み込みが早いな……雲龍』



雲龍『そう、なのでしょうか……』


島風『雲龍すごーい!!』


提督『もう少ししたら島風乗せて飛べるようになれるな』


島風『!!?』キラキラキラキラ










空だけじゃない……私の側にいる、みんなも好き……











雲龍『…提督』


提督『なんだ?』



雲龍『……私は、ここにいてもいいのですか……?』













提督『何を言っている。当たり前だろ』









空と一緒になれる術を教えてくれた、提督も好き……






雲龍「……島風」


島風「なにー?」











雲龍「……私は、変わったよ」ニコッ







《明石》





【平原】



提督「…受け取り場所はここでいいんだな?」

犬『ちゃんと指定したから問題ないっぽい』


提督「…だが、みんなから離れてこの場所で受け取る荷物……爆薬か?」

犬『提督は夕立を何だと思ってるっぽい』




ブゥーーーン…キキッ!




犬『…あ、来たっぽい!』

提督「(バイク便…こんな所まで来るのか)」



タッタッタッ…





配送員「すいません、提督さんでよろしかったですか?」

提督「!」




提督「………」


配送員「あの……」















提督「随分手の込んだ事をするな……明石」






配送員「……やっぱり、バレちゃいます?」クスッ


バサッ…




明石「お久しぶりです…提督」


提督「お前の犬と一緒にいるから久しぶりって感じはしないがな」フッ…




明石「でも…やっぱり、肌で提督を感じられるのは違いますよ」ギュッ…




提督「…世話をかけるな、明石」ギュッ


明石「世話なんて……」



提督「いつも助けられている」



明石「救われたのは私です……」



明石「…出撃できず、雑貨屋として腐っていた工作艦である私に……戦いの術を教えてくださいました」







明石「…まあ、それでも犬が喋った時は心臓が止まるかと思いましたけどね……提督も戌忍だったんですか?」

提督「戌忍の忍空も使える…と言った所か。でなければお前達に忍空を教えれないしな」




提督「他の人間に感付かれた…って事はないか?」


明石「一介の工作艦に一々目を光らせる程、海軍本部は暇じゃないらしいです」クスッ



提督「そうか……危ない橋は渡るなよ」



明石「渡らなければならない時以外なら、そうします」












明石「…よし!提督分は補給完了です!」パッ!

明石「夜伽もあれば嬉しかったんですが…それは後日に」フフッ


提督「あ、ああ……分かった」フイッ


明石「もう…今更何人増えても変わらないでしょうに」クスッ






明石「……では、そろそろ戻ります」


提督「…何かあったらすぐに伝えろ」

明石「はい、こちらに動きがありましたらすぐに伝えますので安心してください」



提督「いや、そっちじゃない」

明石「?」








提督「お前の身に何かあったらすぐに伝えろ」


提督「何があろうと…すぐに駆け付ける」











明石「……はい!」ニコッ!






【宿泊所前】



提督「………」スタスタスタ





ヒュッ…スタッ


雲龍「………お帰りなさい、提督」スッ…


提督「!雲龍…空から出迎えに来てくれたのか」



雲龍「…空を飛ぶの、好きだから」


提督「ハハッ…だったな」





雲龍「………夕立の所?」


提督「!…バレてたか」


雲龍「……なんとなく、そう思った」





雲龍「……提督」


提督「なんだ?」


雲龍「…戦いが終わったら、夕立に会えるかな?」




提督「…ああ、会える」






提督「会えるし、会った時に驚くぞ」クスッ




雲龍「……?」







《伊58》





【海】



ザザァァァァン……ザザァァァァ………




伊58「………」プカー…








伊58「…また修行でちか、提督」




ザバァァァァン





提督「…ダメだな、鯨に乗りながら逆立ち腕立てができる回数が減った」ポタポタッ

伊58「…いつか死ぬでち」

提督「この程度で死ぬほど柔な鍛え方はしていない」






伊58「…提督」


提督「どうした?」






伊58「みんなに降ってる雨は、いつか止むのかな?」



提督「……?」






伊58「…艦娘はね、建造された当初はやる気で満ち溢れているけど……それは本当に、最初だけ」



伊58「先が見えない戦いに心と身体が磨り減って……どんどん、何も考えられなくなるの」













伊58「そしてね…心の中に、雨が降るの」







伊58「降ってないはずの雨を肌に感じて…心と身体がより一層冷えていく……」





提督「………」




伊58「ゴーヤは雨に耐えられなくなって、解体を希望した…」







伊58「でも、今もまだ戦ってる子達の中に降る雨は……止むのかな…」







提督「…止むさ」


伊58「!」





提督「その雨を止ませるために私達がいる…太陽を出させるために私達は戦っている……そうだろ?」


伊58「…うん」




提督「……使い古された言葉だが、“止まない雨は無い”とも言うしな」


伊58「その言葉はダシが絞られ過ぎて味がしないでち」

提督「…そこまで言うか」







提督「ああ、それなら……」

伊58「?」


提督「これは、知り合いからの受け売りなんだがな……」















提督「“雨はきっと、虹を連れてくる”」








提督「…私達の手で、雨が降ってる子達に虹を見せよう」









伊58「…うん!」ニコッ






《島風その2》







崩れた鎮守府




壊れた工廠




焼き付いた死肉












『………間に合わなかったか』









そして深海棲艦を素手で倒してた…男の人







それが、私が生まれて初めて見た光景だった







ギィィ……ガタン



『……!誰かいるのか!?』






私が起きた音に反応して、その男の人は振り向いた






『艦娘…?』





艦娘かどうか聞いくるって事は、きっと提督ではないのだろう




でも、提督であってほしいと願った



私を、1人にしないでほしいと…心から願った



だから聞いた……『貴方は提督ですか?』と…








『……いや、私は提督ではない』







提督じゃない……分かりきってた答え




でも……じゃあ、この人は…誰なんだろう?







『…その様子からしてお前は、建造されたばかりの艦娘なのか?』





その問いに…私は答えた






『……駆逐艦、島風です』







『島風……島風型1番艦の駆逐艦か』






提督じゃない人が、私を知っていた…





なんで?どうして知ってるの?





私はその疑問を、その男の人にそのままぶつけた







『深海棲艦の調査を独自でやっていれば、お前さん程有名な駆逐艦の話も流れてくる』





調査と言う言葉に、私はピクリと反応した



独自…1人で調査?



なんで?



どうして?




…私には、それしか浮かばなかった


…聞いてばかりだな、私……







『深海棲艦を倒し、平和な世界を目指すために…敵の本拠地を探している』





『……だが、ここに来るのが一歩…遅れてしまった』


『すまない、島風…』





誰のせいでもない…




この男の人のせいでもない…





だから、私は気丈には振る舞えなかったけど……なんとか、『大丈夫』って言葉だけは言えた……








ふと、男の人が深海棲艦を倒した事を認識した私は、更なる疑問に包まれた





なんで人間が深海棲艦を倒せたんだろう




なんでこの人は平然としてるんだろう








なんでこの人の近くにいると、安心できるんだろう…





その疑問を胸に秘めて、私はどうやって深海棲艦を倒したのか聞いた






『ああ。忍空と言って…忍者の技と速さ、空手の力を組み合わせた武術だ』






忍空……その武術を身に付ければ、私は強くなれるのかな…






この男の人の側にいれるのかな……









断られるのが怖い……




だけど、この人が離れていってしまう事の方が…もっと怖い……








私は、震えながら……その男の人にお願いをした








『…あの、さ……お願いしてもいいかな…』


『なんだ?』















『島風に、忍空を教えて』








出会いは荒れた場所に血塗れた風景だった





だけど私はその日……私の提督に出会った






その後は海軍元帥さんと会ったり、解体施設に送られる子達を助けたり、辛い修行をしたり……





色々あって、今はたくさん仲間ができて……提督の側にいる







【宿泊所】



提督「…………」ペラッ…


島風「えへへ…どう?」


提督「…島風、これは活動報告というより回想日記だな」


島風「えー、違うのー?」


提督「珍しく活動報告すると聞いたから驚いたが…書き方を今度教えよう」


島風「はーい…」





島風「あ、……それでね、提督…言いたい事があるんだけど…」モジモジ…

提督「なんだ?」














島風「…島風を拾ってくれて……ありがとう!!」


島風「これからもよろしくねっ!!」












提督「…ああ、こちらこそ……よろしくな、島風」ニッ


島風「うん!!」ニッ!





《提督》





【海岸】



ザザァァァァァン……ザァァァァ……


ザバァァァァァン……





提督「…全員、集まったな」




提督「先程、夕立の情報網から第二施設の場所を確認した」




提督「これが最後の戦いになるかもしれないし、まだ第三、第四の施設があるかもしれない」




提督「…気を引き締め、私と共に敵地に向かって欲しい」








提督「そして全部終わったら……一晩中、飲んで食って…楽しもう」ニッ















提督「忍空組…出撃する!!!」











海戦の最中、わずか数十名の部隊で深海棲艦の全本拠地を壊滅させた集団があった




その名は『忍空組』




その強さを欲した海軍は、彼女達の捜索と捕縛に乗り出した








今、本当の忍空を知る者は…少ない









以上です

艦娘に忍空を使わせたいがために書いたssが、こんなにも長くなるとは思ってませんでした


このメンバーで最近流行の異世界漂流ファンタジーとか書いてみたいですね

そうなると最早忍空なのか艦これなのか分からなくなりそうですが……




長い時間のお付き合い、ありがとうございました!




このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年12月03日 (月) 19:49:23   ID: 6as79pN9

なつかしい
アニメ見てた

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