龍崎薫「精いっぱいの感謝を!」 (125)




※キャラ崩壊

※誤字脱字

※長い

※粗製濫造なネタ




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市原仁奈「せいいっぱいのかんしゃ……?」

仁奈「薫ちゃん、どういうことでごぜーますか?」

薫「うん、あのね」

薫「この前、がっこで言ってたんだ。『いつもお世話になってる人への感謝を、忘れないようにしましょう』って!」

薫「それで考えてみたらね――かおる、いつも、事務所の色んなお姉ちゃんたちに助けてもらってるなって思って……」

仁奈「確かに……、仁奈も、みんながいてくれるおかげで寂しくねーです」

薫「だから、いつもかおるを助けてくれるみんなに、ありがとうって気持ちをこめて、何かお返ししたいなって思ったんだ!」



仁奈「なるほど! そいつはグッドアイデアでごぜーますね!」

仁奈「仁奈も、いつも一緒にいてくれるみんなに、お返ししてやりてーですよ!」

薫「だよねだよね!」

仁奈「でも……、何をお返ししたら、事務所のおねーさんたちはうれしいんでごぜ―ましょう?」

薫「それなんだよね」

薫「何か、プレゼントとかあげればいいかな?」

薫「うぅ……、でも、かおるのお小遣いじゃ、事務所みんなへのプレゼントは買い切れないし……」

仁奈「うーん……」



仁奈「あっ! そういえば!」ティン

仁奈「仁奈、こんなことを聞いたことがあるです!」

仁奈「贈り物ってのは、自分がもらってうれしいもんをあげるのがいいって!」

薫「ほほう!」

薫「そっかぁ……、自分がもらってうれしいものかぁ……」ウーン

仁奈「例えば仁奈は、お仕事頑張ったあとで褒めてもらって……、それで頭をなでてもらうと、すっげーうれしい気持ちになるですよ!」

薫「あっ、それ、かおるもかおるも!」

薫「せんせぇに褒めてもらうの、かおる大好きだもん!」



薫「そっか! じゃあ、かおるたちが褒めてもらうとうれしい様に――今度はお返しとして、みんなをかおるたちが褒めてあげればいいんだ!」

薫「ものを贈るのは大変だけど、言葉と気持ちなら、かおるたちでもみんなに贈れるよね!」

薫「みんないつも頑張ってるもん! かおるたちが褒めてあげたらきっと喜んでくれるよ!」

仁奈「……でも、言葉――褒め言葉にも色々あるですよ?」

仁奈「なんて言葉を贈るのが、一番いいんでごぜーますか?」

薫「うーん……。『かわいい』とか『かっこいい』とか……『明るい』、とか」

薫「でも、みんな素敵だから、そんなのいつも言われてる気がするよねぇ……」

仁奈「そうでごぜーますね」

仁奈「ここはばぁーんと、仁奈たちの感謝の気持ちがこもった、とびっきりの褒め言葉を贈りて―ところですが……」

薫「『かわいい』でも『かっこいい』でも『明るい』でもない、褒め言葉……」

仁奈「うーん……」

薫「うーん……」

仁奈・薫「「うーん……」」


薫「はっ!」キュピーン



仁奈「薫ちゃん? なんか思いついたですか?」

薫「う、うん!」

薫「思いついたって言うより思い出したんだけどね!」

薫「あのね! この前聞いたんだけど――」


――――――
――――
――



城ヶ崎美嘉「んー、つっかれたー!」ノビー

美嘉(今日のレッスン、ちょっと張り切り過ぎちゃったかな)

美嘉(まあでも、頑張った甲斐あって、色々イイカンジにつかめてきたし、この調子で行けば本番も――)


仁奈「あっ! 美嘉おねーさんでごぜーます!」

薫「美嘉ちゃん、ダンスとか難しいところ、いつも教えてくれるよね!」

仁奈「それでうまくできたら褒めてくれるの、仁奈すっげーうれしいですよ!」

薫「よぉーし! じゃあそんないつもお世話になってる美嘉ちゃんに、早速、感謝のお返しをしよー!」

仁奈「さっきの"あの言葉"を贈るんでごぜーますね! やるぞー!」



薫「美嘉ちゃん美嘉ちゃん!」

仁奈「美嘉おねーさん!」

美嘉「おっ? 薫ちゃんと仁奈ちゃんじゃん! お疲れ★」

仁奈「お疲れ様でごぜーます!」

薫「美嘉ちゃん、あのねあのね!」

薫「いつもかおるたちのこと、助けてくれてありがとう!」

仁奈「美嘉おねーさんは、すっげー頼りになりやがります!」

美嘉「え、うえぇ!? あ、あはは……」

美嘉「な、なんか面と向かって言われると、結構ハズイけど///」

美嘉「ふふ、気にしなくていいよ★」

美嘉「みんなが頑張ってる姿を見るの、アタシ好きだからさ。その為ならどんどん協力しちゃうよ!」



仁奈「やっぱ美嘉おねーさんは優しいでごぜーます!」

薫「それにお仕事してる時はカッコイイよね!」

美嘉「も、もうっ! だからハズいってば~!」アセッ

仁奈「こんなに優しくてカッコよくて……」

薫「美人で、カリスマギャルだなんて……」



薫「やっぱり美嘉ちゃんは非処女だね!!」



美嘉「!?」



――回想――


仁奈『ひしょじょ……?』

仁奈『えっと、初めて聞く言葉でごぜーますけど……、それ、褒め言葉なんでごぜーますか?』

薫『うん。この前、莉嘉ちゃんが話してたんだけどね――』



城ヶ崎莉嘉『中学生超えてカワイイ女の子に、処女なんているわけないじゃーん!』

莉嘉『カワイイ子、セクシーな子、イケてる子――』

莉嘉『そういうミリョクのある子はみんな非処女だってば!』

莉嘉『ま、まあ……、アタシはアイドルやってるからアレだけど……』

莉嘉『でも、お姉ちゃんはすごいんだよ! あのね――』



薫『――って言ってたんだ!』

仁奈『ほうほう……』



薫『つまり、莉嘉ちゃんの話から考えるとね!』

薫『「非処女=カワイイ」』

薫『そして、「カワイイ=褒め言葉」!!』



薫『――すなわち! 「非処女=褒め言葉」となるんだよ!!』



仁奈『すげぇ! 見事なさんだんろんぽーでごぜーます!!』



仁奈(非処女ってのは、カワイくってミリョク的な人を指す言葉なんでごぜーますね!)

薫(えへへ! だから美嘉ちゃんのこといっぱい非処女だって褒めて、いっぱい喜んでもらおうよ!)


仁奈「美嘉おねーさんはすっげー非処女でごぜーますね!」

美嘉「!?」

薫「うんうん! 納得の非処女だよ!!」

美嘉「!?!?」



美嘉「ちょちょ! ちょっと二人とも!?///」

美嘉「突然、何言い出すの!?」

薫「えへへ、美嘉ちゃん、びっくりしちゃった?」

仁奈「でも、安心してくだせー!」

仁奈「仁奈たち、おせじとかじゃねー、本当に、心から思ってるでごぜーますから!」

美嘉「ええっ!?」ガーン

薫「美嘉ちゃんみたいな非処女がいてくれて、かおるすっごいうれしいよ!」

仁奈「仁奈も、美嘉おねーさん程の非処女と一緒の事務所ってだけで、誇らし―でごぜーますよ!!」

美嘉「いやいや! アタシそういうのはまだ全然――」

薫「かおるも将来は、美嘉ちゃんみたいな非処女になりたいな!」

仁奈「仁奈も、美嘉おねーさんみたいな非処女が目標でごぜーます!!」

美嘉「いやいや! だめだよ!? そういうのはもっとちゃんとお付き合いを重ねて、将来を考えた人と――」



美嘉(なになに!? なにコレ!? アタシ、ディスられてる!?)

美嘉(いや、でも……、薫ちゃんたちのニュアンスからして、悪意があって言ってるようには見えないし……)

美嘉(だとすると考えられるのは、誰かが変なコト吹き込んだって可能性だけど……)

薫「やっぱり莉嘉ちゃんの言ってた通り、美嘉ちゃんはすっごい非処女だよ!」

仁奈「こんな非処女のおねーさんがいるなんて、莉嘉ちゃんもはなたかだかでごぜーますね!」

美嘉(やはり彼奴かっ!)



薫「莉嘉ちゃんが言うには、美嘉ちゃんは小学生の時から非処女なんだって!」

仁奈「す、すげぇ! さっすが美嘉おねーさん! 仁奈たちにできねーことをへーぜんとやってのけるでごぜーます!」

美嘉(もう! あのおバカは! あとで叱る! 超叱るっ!!)

美嘉(と、とりあえずここは、二人の変な誤解を解いて――)

薫「いいなぁ。どうやったらかおるも、美嘉ちゃんみたいなすごい非処女になれるのかなぁ……?」

仁奈「あっ! 仁奈、分かったでごぜーますよ!」

薫「え? なになにっ!?」

美嘉「ふ、二人とも、あのね――」

仁奈「きっと美嘉おねーさんが非処女なのは、プロデューサーのおかげでごぜーます!」

美嘉「!?」



薫「せんせぇの?」

仁奈「そうですよ!」

美嘉「ちょっ!? 何言って///」カァアア

仁奈「いっつもプロデューサーは、みんなのために頑張ってプロデュースしてくれてるでごぜーます!」

仁奈「だから美嘉おねーさんも、そんなプロデュースのおかげで、こんなに非処女(魅力的)なんでごぜーます!」

美嘉「プロデュース(意味深)で非処女!?////」

薫「た、確かに、せんせぇのおかげで、かおるもファンの人たちからいっぱい応援してもらえるようになったよ!」

薫「そっかぁ! 美嘉ちゃんはせんせぇに非処女にしてもらったんだね!!」

美嘉「え、ええっ!? あ、ああの……! その……!////」プシュー



美嘉(――いや、でも待って)

美嘉(確かにアタシはアイドル――彼氏がいるとか、経験済みとかスキャンダラスなことはアウトだけど……)

美嘉(でも、同時にアタシはカリスマギャルなわけで……、逆に男性経験が全くのゼロってのも、それはそれで、イメージに合わないんじゃない?)

美嘉(ただでさえ、最近は某キス魔とか某おフランスとか諸々のせいでキャラがブレてるし……。ネットでも『城ヶ崎未貫通』とか『デコった処女膜』とか言われてるし……)

美嘉(……ま、まあだから、アタシのキャラクターのためにも、薫ちゃんたちくらいの年少の子にそう言われてる程度なら……)

美嘉(別に……いいんじゃないかな……?)

美嘉(そ、それにプロデューサーとは、この前うっかり手を繋いじゃったりとかしたし……。あ、あと、車で二人っきりになったこともあるし……!!)

美嘉(これはもう、肉体的にはともかく、精神的にはウブウブの処女とは言えないわけで! だったら、限りなく非処女に近いと見なしても、ほとんど矛盾がないと言えるわけであって――)

美嘉(つまり――)



美嘉「まっ――」

美嘉「まぁね~★」

美嘉「ま、まあ? アタシくらいになると、そりゃあもう非処女が当たり前だしー?」

仁奈「おおっ! やっぱりそうなんでごぜーますか!」

薫「すごいね! さっすが美嘉ちゃんだよ!」

美嘉「やっぱカリスマギャルは非処女じゃないと務まらないっていうかー」

美嘉「プロデューサーからも、ぜひアタシを非処女にさせてくれって頼まれたくらいだからねっ!」

仁奈「うわぁ! そいつはすげー!」

薫「せんせぇも非処女の美嘉ちゃんにメロメロなんだねっ!」


美嘉「アハハ!」


仁奈「えへへ!」


薫「んふふふ!」


「うふふ」


「ふーん」



美嘉「」




「へぇ、そうですかぁ。美嘉さんはプロデューサーさんに非処女にしてもらったんですか」

「このところ、あの人の周りに女の影があるのは気づいていましたが……へぇ、そうですかぁ」

「人は見かけによらないですねぇ――いえ、美嘉さんの場合は中身によらないのかしら」

「そうだね。うちの加蓮より純情可憐な美嘉が、まさか非処女だったなんてね」

「まあでも、そんなに驚くことでもないんじゃないかな」

「言ってみれば、私も非処女みたいなものだしね」

「そうですね。確かに、私も実質、非処女ですね」


「「――で」」


渋谷凛「ちなみに私は、プロデューサーのシャツで処女を捨てたんだけど――」

佐久間まゆ「ちなみに私は、プロデューサーさんの枕で処女を捨てたんですけど――」



「「美嘉(さん)は、どうやって処女を捨てたのかな?」」



美嘉「」ダラダラダラ



美嘉「――薫ちゃん、仁奈ちゃん」

美嘉「今度、莉嘉に会ったら、伝えてくれるかな」

美嘉「『アンタは、アタシの最高の妹だよ』って」

美嘉「『莉嘉がいてくれて、本当に幸せだったよ』って……」

薫「うん? うん、分かったよ!」

仁奈「美嘉おねーさんは妹想いでごぜーますね!」

美嘉「うん、ありがとう」


美嘉「ああ……、ごめんね、莉嘉……」ズルズルズル


美嘉「こんなことなら、アンタの好きなカブトムシ捕り……」ズルズルズル


美嘉「もっと付き合ってあげれば……良かったな……」ズルズルズル



ガチャ

ギィィイイイ

バタン


薫「三人とも、行っちゃった……」

仁奈「きっと凛おねーさんとまゆおねーさんも、美嘉おねーさんの非処女の秘密が知りたかったんでごぜーますね!」




薫「美嘉ちゃん、かおるたちの言葉ですっごい喜んでくれたよね!」

仁奈「褒め言葉作戦、まずは成功でごぜーますね」

薫「よぉーし! この調子でどんどんみんなを褒めちぎっては投げ、褒めちぎっては投げしていこう!」

仁奈「次は誰を褒めてやりやがりましょう?」

薫「うーんと、そうだなぁ……」

薫「あっ! あそこに――」



鷺沢文香「おや、薫ちゃんと仁奈ちゃん」

文香「おはようございます」


薫「文香ちゃん! おはよー!」

文香「お二人で、どうしたんですか?」

仁奈「仁奈たちは今、みんなに日頃の感謝の気持ちをお返ししてるんでごぜーます!」

薫「いつものお礼にみんなを褒めてあげて、うれしい気持ちになってもらうの!」

文香「な、なるほど……!」



文香「以心伝心――親しい者同士なら、言葉を介さずともその心が伝わるとも言いますが……」

文香「でも、改めて言葉に出して、自らの気持ち、想いを相手へ届けることも、人と人との関わり合いの上では大切なこと、ですね」

文香「いつも自分たちが与えられている幸せを、相手にも返してあげる……」

文香「純真なお二人らしい、とてもいいアイデアだと思います」

薫「わぁ! ホントー!?」パァアアア

仁奈「文香おねーさんのおすみつきをもらっちまったー!」キャッキャッ



薫「そうだ文香ちゃん!」

薫「かおるたち、誰かを褒める時に、もっとすっごく、ちゃんと気持ちが伝わるようにしたいんだけど……」

薫「文香ちゃん、何かいい方法知らないかなっ?」

仁奈「あ、仁奈も聞きて―ですよ!」

仁奈「文香おねーさん、おねげーしますよ!」

文香「そ、そうですね……」

文香「で、では、僭越ながら……、私の知識で良ければ、いくつかお話しましょう」

薫「わぁ! ありがとー!」

仁奈「かたじけねーですよ!」



文香「そうですね……。例えば、誰かや何かを評価する時、その印象や意味の強さを高める方法として、比喩表現を用いる、というのがあります」

薫「ひゆひょーげん?」

文香「『まるで○○のようだ』とか、『○○みたいな△△』といった言い方ですね」

文香「『まるでこの輝く月のように美しい』、『彼はアインシュタインを彷彿とさせる天才だ』など――」

文香「単に『美しい』、『天才だ』と評するよりも、具体的な例えを織り交ぜることで、受け手に言葉の持つ印象や、その強弱を分かりやすく伝えることができるんです」

仁奈「な、なるほど……! 確かに、そういうセリフ、ドラマとか映画とかでよく聞くでごぜーますね!」

文香「あとは……、表現に高低差をつける、などでしょうか」

仁奈「こーてーさ……?」



文香「例えば今持っているこの本を評する時に――そのまま『この本は面白い』と言うより、『他の本がつまらなく感じるほど、この本は面白い』と言ったほうが受け手が感じる『面白い』という印象は強くなります」

文香「あえて『つまらない』という否定的なフレーズを頭に入れることで、あとの『面白い』が強調されるんです」

薫「す、すごい……! さすが文香ちゃんだ……!」

仁奈「仁奈たちじゃ及びもつかねーテクニックをでんじゅされちまいました……!」

文香「そ、そんな……! 私も、ものの本からの読みかじりの知識ですから……」

文香「こんな拙い話でも、お二人のお役に立てるなら幸いです」



薫「そっかそっか! 『ひゆひょーげん』と『こーてーさ』ね!」

仁奈「さすが文香おねーさん! はくしきでごぜーます!」

文香「い、いえ、そんな……」

仁奈「いっぱいの本を読んでて、いっぱいのことを知ってて――」

薫「優しくって、綺麗で、お仕事の時はカッコいいなんて……」

文香「あ、あの……、そこまで言われてしまうと、さすがに恥ずかしく――」



仁奈「やっぱり文香おねーさんは非処女でごぜーます!」



文香「!?」



文香「え、え……? あ、あの――」

薫「うんうん! こんなに物知りだなんて、文香ちゃんは非処女の鑑だよ!」

文香「!?」

仁奈「その非処女っぷり、まぶしいでごぜーます!!」

文香「!!?」

文香「あああ、あの、お二人とも――!?////」

薫「あ、そうだ!」

薫「仁奈ちゃん! 早速、今教えてもらったやつを使ってみようよ!」

仁奈「ひゆひょーげんとこーてーさでごぜーますね!!」



仁奈(えーと、えーと……。具体的な例え……具体的な例え……)

仁奈(仁奈の好きな動物で例えると――)

仁奈「文香おねーさんは、イヌのような非処女でごぜーます!」

文香「雌犬っ!?」

仁奈「あとは、えっと……、文香おねーさんは、ブタさんみてーな非処女ですね!」

文香「雌豚っ!?」

仁奈「あとは、あとは……」

仁奈「文香おねーさんは、まるでウサギをほーふつとさせる非処女でごぜーますよっ!!」

文香「万年発情期!?」ガーン



文香「あああ、あの……!///」

文香「い、いえ、確かに私も少なくない書籍を読んできた中でそういう事柄についていくらかは目にしてきたこともありますし――」ワタワタ

文香「それなりに直接的な内容や過激なものも読んだことがないといえばそれは嘘となってしまいますが――」ワタワタ

文香「だからって私自身そういう経験が豊富なわけではなくむしろこんな暗い性格の女なんて基本男性から相手にされませんから――!!」ワタワタ

文香「ですから、あの、その――」

薫「文香ちゃん」ポン

文香「か、薫ちゃん……?」

薫「文香ちゃん、大丈夫だよ。これはかおるたちの本当の気持ちなの」

薫「心からそう思ってるんだよ」

薫「文香ちゃんは――」



薫「他の人が処女に見えるくらい、非処女だよっ!!」ニコッ



文香「!?!?」



文香(い、一体、何が起こっているのでしょうか……)

文香(仁奈ちゃんと薫ちゃんが、満面の笑みで私を非処女だと断じてくるのですが……)

文香(も、もしかして知らないうちに、お二人の機嫌を損ねてしまったとか!?)

文香(でも謝ろうにも、まず心当たりがありません……)

文香(そんなままで口だけの謝罪をしても、お二人の気も収まらないでしょうし……)

文香(だ、誰か、助けて――)



ガチャ

橘ありす「おはようございます」



文香「!!」



文香「あ、ありすちゃん……!!」

ありす「文香さん、おはようございます!」ニコッ

ありす「……どうしたんですか? なんだか顔が赤いですが」

文香「あ、あの――」

仁奈「ありすちゃんでごぜーます!」

薫「ねぇねぇ! ありすちゃん!」

薫「ありすちゃんも、文香ちゃんは非処女だって思うよね!」

文香「!!!!」



ありす「ひしょじょ……? 文香さんが……?」

ありす「あの、すみません……、それは一体、どういう意味で言っているんですか?」

薫「えー? ありすちゃん知らないの?」

仁奈「ありすちゃんも物知りなのに、意外でごぜーますね」

ありす「なっ! そ、それは……」

ありす「わ、私にだって、分からないことくらい……あります……」ゴニョゴニョ

薫「あはは、そっかそっか! じゃあ教えてあげるよ! 耳貸して」

薫「あのね、非処女って言うのは処女じゃないってことでね――」ゴニョゴニョ

仁奈「つまり褒め言葉なんですよ」ゴニョゴニョ

ありす「褒め言葉……?」



ありす(『ひしょじょ』――漢字にすると『非処女』、でしょうか)

ありす(そんな褒め言葉聞いたことがありませんが……)

ありす(でもたしか、類まれなる才能を持った人物を評すとき、『非凡な人』という言い方がありますし……)

ありす(それに『処女』という言葉は、『処女航海』、『処女出版』など、事を成すのが初めてである、という意味で使われます)

ありす(処女であることは、初々しい一方で――経験がなく未熟であるということでもあります)

ありす(そう考えると――)

ありす(例えば、文香さんの持つその美貌は、まさに天性のもの)

ありす(そして、数多くの書籍から積み重ねてきた豊富な知識と、それによって育まれた賢才さを鑑みれば、文香さんを未熟者などとはとても言えません)

ありす(つまりは――)

ありす「なるほど」



ありす「確かに文香さんは非処女ですね」



文香「ありすちゃんっ!?」



薫「でしょー? やっぱりありすちゃんもそう思うよね!」

仁奈「文香おねーさんは、みんなが認める非処女でごぜーますね!」

ありす「むしろ、非処女という言葉は文香さんのためにあると言っても過言ではありません」ウンウン

文香「ありすちゃんっ!!?」

薫「かごんではない……?」

ありす「つまり、文香さんは非処女と言われて当然、ということです」

文香「ありすちゃんっっ!!??」



仁奈「確かにその通りだ―!」

薫「文香ちゃん、さっきもかおるたちに色々なテクニックを教えてくれたもんね!」

ありす「テクニック……?」

文香「あの……、ちょっと待って――」

薫「人をよろこばせるテクニックだよ!」

仁奈「非処女の文香おねーさん直伝でごぜーますよ!」

ありす「なるほど! それは良かったですね」

ありす「文香さんのテクニックはその豊富な知識に裏打ちされたものですからね! きっとすぐに役に立ちますよ!」

文香「ありすちゃぁぁぁんっ!!!//////」



文香「あの……そんな……私は……あの……」

文香「あうぅ……///」プシュー


仁奈「あれ? 文香おねーさん、縮こまっちまいましたよ?」

薫「美嘉ちゃんみたいに喜んでくれないね?」

薫「もしかして、非処女って言われてもうれしくなかったのかな……?」

ありす「いえ、それは違います」

仁奈「んー?」



ありす「あれは謙遜しているんです」

文香「!?」

ありす「文香さんは才色兼備。美しい容貌と優れた才を併せ持ち――そして尚且つ、性格面でも謙虚で慎ましい方です」

ありす「たとえいくら称賛され、持ち上げられようとも、それを驕らず、慎み深く受け止め、常に自らの研鑽と精進に努める」

ありす「まさに非処女の教本となる女性ですっ!!!」

文香「」チーン



仁奈「なるほどー! 日本人のびとくってやつだー!」

薫「さっすが文香ちゃん! 憧れちゃうなっ!」

ありす「まさに非処女の生き字引ですね!!」

「文香ちゃんは非処女ですごいやー!」

「非処女万歳でごぜーますよ!」

「文香さんは自分の非処女をもっと誇っていいと思います!」


文香「そんなに……」


「ありすちゃん! 普段の文香ちゃんの非処女なとこ、もっと教えて!」

「仁奈も知りて―ですよ!」

「いいですよ! 例えばこの前なんかは――」


文香「そんなに言うのなら……」


ガシッ


ありす「え……?」




文香「そんなに言うのなら……」

文香「確かめてみて、ください……!」

文香「その、目で……/////」



ありす「え? あの、文香さん?」ズルズル

ありす「どこに行くんですか?」ズルズル

ありす「あの、そっちは仮眠室――」ズルズル

ガチャン



仁奈「二人とも行っちまったですね」

薫「うーん。もしかしてこれが褒め殺しってやつ……?」



仁奈「文香おねーさん、顔が真っ赤でやがりましたけど、大丈夫かな?」

薫「確かにかおるも、せんせぇにいっぱい褒められちゃうと、うれしいけど、恥ずかしくなっちゃうから……」

薫「でもきっと、文香ちゃんも喜んではくれたよ!」

仁奈「そっか! ならオッケーですね!」


ガチャ


仁奈「お? 誰か来やがりましたね!」



新田美波「ふぅ……。今日のお仕事、結構、頑張っちゃったかな……」

美波「でもおかげで予定より早く終わったし、これから――」

仁奈「美波おねーさん! お仕事、お疲れ様でごぜーます!」

薫「美波ちゃん、お疲れさまっ!」

美波「あら、仁奈ちゃん、薫ちゃん。ふふ、ありがとう」

薫「美波ちゃん、大丈夫? 汗、いっぱいかいてるよ?」

美波「うん。今日の撮影のお仕事、ちょっと照明がきつくてね。暖房もあったから意外に暑かったの」

仁奈「そっかー、そりゃ大変だー」

仁奈「じゃあ、今日はもうゆっくりお休みでごぜーますか?」

美波「ううん。せっかく時間が空いたことだし、これから大学のラクロスサークルへ寄ろうかなって」

薫「えぇー! お仕事大変だったのに、がっこにも行くのー?」



美波「ふふ、大丈夫よ」

美波「お仕事は、確かに何回もヤったし大変だったけど……、でもそのおかげで社長さんたちにもすっごく悦んでもらって、『ぜひまた頼みたい』って言ってもらったし――」

美波「私も後半はノリノリになってきちゃって……。すっごく良かったから……」

美波「それにサークルのほうでも、先輩が待ってるって言ってくれたから」

美波「このところ一緒にシてなくて寂しくなっちゃったみたいだから、行ってあげないと」

美波「今度の他の学校の人たちとの本番のためにも、いっぱいテクニックを磨いておかないとね」

美波「でも、さすがに今はぐっしょりだから、シャワーくらいは浴びたい――」

美波「って……」



美波(いやいや、待って美波)

美波(なんだかこのところ、妙に発言が誤解されやすいというか、曲解されることが多いのよね……)

美波(そんなつもり全然ないのに、なんだかいやらしく聞こえちゃったり、捉えられちゃったりするみたい……)

美波(そのせいでネットでも『歩くエネマグラ』とか『生殖本能バイアグラ』とか言われちゃってるし……)

美波(そういう風評被害をなくしていくためにも、発言には気をつけなきゃ!)

美波(相手は年少の子たちだけど――でもこういうとこでも気を抜かずはっきりと、変な解釈の余地がないように言葉を選んでいかなきゃね!)

美波(美波、イキますっ!!)



美波「ご、ごめんね!? 今言ったことはね?」

美波「お仕事は、女性向け雑誌の撮影だったんだけど、何回も撮影してもらって、長丁場で大変ではあったけど、でもそのおかげでいい写真が撮れたって、その雑誌を出版してるとこの女社長さんにも喜んでもらえて、『ぜひまたモデルとして頼みたい』って言ってもらったの」

美波「それに私も、色々な衣装を着させてもらって楽しかったし、新しい自分を発見できたのはとっても良かったわ」

美波「あ、あと、サークルのほうは、何かとお世話になってる女の先輩が久しぶりに顔が見たいって言ってくれてね!」

美波「このところアイドルが忙しくて、一緒にラクロスの試合もしてないから、寂しいなってメールもらったの!」

美波「今度、他校との試合もあるし、本番でみんなの足を引っ張らないように、ラクロスのテクニックも磨いておきたいって思って!」

美波「あっ! ちなみにラクロスっていうのは、スティックとボールを使った至極健全なスポーツで――」



仁奈「そっかぁ……」

薫「美波ちゃんはすごいなぁ……」

美波(よしよし……、これで二人にも誤解の余地なく伝わったかな)

仁奈「お仕事も頑張って、らくろすも頑張るなんて……」



仁奈「美波おねーさんは非処女だなー!」



美波(あれー!?)



美波「あ、あの仁奈ちゃん!? ええと……」

薫「すごいね! かおる、お仕事で疲れちゃったら宿題とかサボっちゃうけど……」

仁奈「仁奈も寝ちまうですよ」

薫「でも美波ちゃんは、お仕事もがっこも両方ちゃんとやってるなんて……!」

仁奈「これは立派な非処女でごぜーます!!」

美波「どういうことっ!?」

美波「あ、あのね!? だからね!? 別にお仕事も学校もいやらしい意味は――」

仁奈「他の人が処女に見えるくらい、美波おねーさんは非処女ですね!」

美波「そんなにっ!?」

薫「美波ちゃんはまるで、文香ちゃんのような非処女だよっ!」

美波「そこまでっ!?」ガーン



美波(あ、あれ……? 全然ちゃんと伝わってない……!?)

美波(むしろよりひどくなってるような……)

美波(と、とにかく、もう一度ちゃんと説明して――)



ガチャ

神崎蘭子「かくして、魔宴の幕は引かれた……!(ふぅー! お仕事終わったー!)」

アナスタシア「ランコ、やみのま、ですね」



薫「あっ! 蘭子ちゃんとアーニャちゃんだ!」

仁奈「ちょうどいいとこに!」



蘭子「おや、無垢の使徒たちよ、彼の地から帰還したか(薫ちゃん、仁奈ちゃん、お疲れ様です!)」

アーニャ「二人とも、やみのま、です」

薫「ねぇねぇ、蘭子ちゃん、アーニャちゃん!」

仁奈「二人の意見も聞かせてくだせ―!」

アーニャ「いけん……? 何についてですか?」

蘭子「我が言霊の魔力を求めると?(なになに? なんの話?)」

仁奈「そりゃ決まってるですよ!」

薫「二人もさ、やっぱりさ!」



薫「美波ちゃんは非処女だって思うよね!」



蘭子「!?」

アーニャ「??」



蘭子「はえっ、ええっ!!?//////」カァァアアア

美波「ち、違うのよ二人とも! これは誤解で――」

アーニャ「ひしょじょ……?」

アーニャ「イズヴィニーチェ……ごめんなさい、カオル、ニナ」

アーニャ「私、その日本語、まだ知りません……」

薫「あっ、そうだったんだ!」

仁奈「じゃあ教えてあげるでごぜーます!」

仁奈「お耳を近くしてくだせー!」

薫「あのね、非処女って言うのは――」ゴニョゴニョ

アーニャ「ほうほう……」

仁奈「つまり――」ゴニョゴニョ

アーニャ「ふんふん……」



蘭子「あ、あの……、アーニャちゃん……!」

美波「ちょ、ちょっと……!」

仁奈「――ってことでごぜーます!」

アーニャ「な、なるほど……!」



アーニャ「ダー! 確かにミナミは非処女、ですね!」



美波・蘭子「「!!??」」



薫「だよねー!」

仁奈「美波おねーさんは、ばんこくきょーつーの非処女でごぜーます!」

アーニャ「非処女……、また素晴らしい日本語を知ることができました!」

アーニャ「『ミナミは非処女』……、声に出したい日本語、ですね!」

美波「アーニャちゃんっ!?」

薫「蘭子ちゃんも、美波ちゃんは非処女だって思うでしょ?」

蘭子「ええっ!?」



蘭子「あ、あの……、それは……その……///」

蘭子(確かに美波さん、綺麗だし、年上だし――何より色っぽいし……)

蘭子(正直、け、経験があったとしても全然、不思議じゃないとは思うけど……)

蘭子(で、でも、非処女ってつまりは男の人と、そ、そういうことをしたってことだし/////)カァアアア

蘭子(そんなこと、声高に言われたら美波さんだって恥ずかしいよね)

蘭子(そもそも、私たちはアイドルなんだから、あんまり大っぴらに言っていいことじゃないんじゃ……)



薫「……蘭子ちゃん?」

仁奈「なんで黙っちまったんでごぜーますか?」

蘭子「い、いや……あの……」

薫「美波ちゃん、こんなに綺麗で素敵なんだよ? だったらやっぱり非処女だって、思うでしょ?」

仁奈「それとも蘭子おねーさんは違うですか……?」

蘭子「いや、我の決断は、あの、えっと……」

アーニャ「……ランコ」

アーニャ「もしかして、ミナミと何か、ありましたか?」

蘭子「えっ?」



アーニャ「ミナミと何かあって、それで気まずいとか、そういうのですか……?」

薫「何かって、なに?」

仁奈「も、もしかしてケンカでごぜーますか……!?」

蘭子「そ、そのようなことは――!!」

アーニャ「でもランコ、さっきから様子が変です」

蘭子「そ、それには深淵の闇に潜みし、あの、訳が……」



アーニャ「ランコ、どうなんですか?」

アーニャ「二人がケンカ……、良くないとは言えませんけど、でもグルースニ……悲しいです……」

薫「か、かもるも、みんなには仲良く笑っててほしいな……」シュン

仁奈「ケンカは、見るのもするのもつれーですよ……」シュン

蘭子「い、いやっ! そのようなことはないぞっ!? ないのだが――」

蘭子(ど、どうしよう!? みんな暗い雰囲気になっちゃったっ!?)

蘭子(こ、こうなったら美波さんに助けを……)チラッ



美波(どうしよう……蘭子ちゃんが私のせいで困ってる……)

美波(や、やっぱり日頃の誤解されやすい言動を考えれば、蘭子ちゃんだって私を『裸クロス』とか『性欲なみなみ』とか思っちゃうわよね……)

美波(……うん。いいわ、蘭子ちゃん)

美波(元はと言えばこれは自分で蒔いた種。これは私が背負うべき罪、負うべき咎……)

美波(何を言われようと私は受け止めるわ)

美波(あなたの辛さは私が請け負うっ!)

美波「――蘭子ちゃん、いいのよ」

蘭子「み、美波さん……?」

美波「いいの、蘭子ちゃん」

美波「あなたの思った通りのことを言って?」

美波「それで大丈夫よ」

蘭子「ええっ!?」(逆に言い辛いっ!)



アーニャ「ランコ、どうなんですか?」

アーニャ「ランコはミナミのこと、どう思ってますか?」


蘭子「そ、それは……」


薫「蘭子ちゃん!」


蘭子「それは、あの……」


仁奈「蘭子おねーさん!」


蘭子「美波さん……、美波さんは……」


美波「蘭子ちゃん」


蘭子「美波さんは――」

蘭子「せっ、せっ――」




蘭子「性器待つ歌姫っ!!」



薫「せーきまつ……?」

仁奈「……うたひめ?」



薫「な、なんだかすごい言葉が出てきちゃった……!」

アーニャ「世紀末歌姫……」

アーニャ「そういえば、前にランコがカエデのことをそう呼んでいましたね」

アーニャ「でも、どういう意味でしょう?」

仁奈「楓おねーさんをでごぜーますか」

薫「そうか! そういうことかっ!」



アーニャ「二人とも、何か知ってますか?」

薫「つまり、あれは蘭子ちゃんなりのひゆひょーげんなんだよ!」

仁奈「すっげー綺麗で優しくて歌も上手くて、そして時々お茶目な楓おねーさん――」

仁奈「蘭子おねーさんは、美波おねーさんがそんな楓おねーさんのように素敵な人だって言ってるんでごぜーます!」

アーニャ「な、なるほど……」

アーニャ「でも『歌姫』はいいですけど、『世紀末』はなんだかウージャス……、怖いイメージですね」

薫「それはこーてーさをつけてるんだよ!」

薫「頭にあえて怖い言葉をつけることで、あとの『歌姫』のパワーがアップするんだっ!」

アーニャ「ハ、ハラショー……! そんなテクニックがあるんですね!」



薫「でも蘭子ちゃんはすごいね」

薫「あの文香ちゃん直伝のテクニックを、同時に二つも使いこなしちゃうなんて」

アーニャ「ランコ、とても勉強熱心ですからね!」

アーニャ「色んなテクニックを知っていても不思議じゃありません」

仁奈「確かに蘭子おねーさん、色んな日本語を知ってるでごぜーますよ!」

薫「カワイイし、カッコイイし、いっぱいの日本語とテクニックを持ってるなんて――」



アーニャ「ランコも立派な非処女、ですね!」

仁奈「勉強熱心な非処女でごぜーます!」

薫「テクニシャンな非処女だね!」



蘭子「」チーン




「ハラショー! ランコ!」

「はらしょー! ひしょじょ!」

「はらしょー! くまもと!」



蘭子「み、みなみしゃん……」ヨロヨロ

美波「大丈夫。大丈夫よ、蘭子ちゃん」

美波「分かってる。全部分かってるから……!」ギュッ

蘭子「みなみしゃん!」ダキッ


――――――
――――
――



薫「うーん……」

仁奈「薫ちゃん? どうかしたんでごぜーますか?」

薫「うん、あのね」

薫「文香ちゃんから教わった『ひゆしょーげん』と『こーてーさ』や、蘭子ちゃんの言ってた『せーきまつうたひめ』を考えるとさ――世の中には『非処女』以外にも色んな褒め方や褒め言葉があるんだなぁって思って……」

薫「そう考えると、かおるたちはこのままでいいのかなって思って……」

仁奈「んー? どういうことですか?」



薫「例えばさ、せんせぇにお仕事頑張って、それで褒めてもらったらうれしいけどさ――」

薫「でもそのあとでせんせぇが、他の人を自分と全くおんなじ風に、おんなじ言葉で褒めてたらさ……、なんだかちょっと、モヤモヤってしない?」

仁奈「そうでごぜーますか? 他のみんなも一緒に頑張ったのに褒めてもらえねーほうが、仁奈、嫌ですよ?」

薫「べ、別に他の子を褒めるのが嫌ってわけじゃないよっ!?」

薫「でも、なんて言うかその……、やっぱりせんせぇには褒めてもらうなら、かおるだけの褒め方をしてほしいって言うか……」

薫「ほ、ほら、仁奈ちゃんもさ! いっぱいキグルミ持ってるけど、それを全部おんなじ風にしか褒めてもらえなかったら、どう思うっ?」

仁奈「むっ……。確かにそれはちょっとしょうふくしかねるでごぜーますね」

仁奈「キグルミには一つ一つ、こだわりがあるでごぜーますから、プロデューサーにはそこんとこ、ちゃんと分かっててほしいですよ!」

薫「だよねだよね!」



薫「そんな感じでさ、かおるたちもみんなを褒める言葉が『非処女』っていっこだけじゃ、ダメなんじゃないかなって思って……」

仁奈「なるほど。そいつはいちりあるでごぜーます」

仁奈「事務所のみんなは、それぞれこせーてきでごぜーますからね」

仁奈「そんなみんなをかくいつてきにしかひょうかできねーんじゃ、仁奈たちのお返しとしちゃ、ふじゅーぶんかもしれねーですよ」



仁奈「でもそうなると、仁奈たちには『非処女』と同じか、それよりすげー褒め言葉が必要になるでごぜーますよ?」

仁奈「薫ちゃん、そんな言葉、知ってるでごぜーますか?」

薫「ううん……全然、分かんないよ……」

薫「こんなことなら文香ちゃんに聞いておけばよかったなぁ……」

薫「『非処女』並みの褒め言葉……」

仁奈「『非処女』以上の褒め言葉……」

薫・仁奈「「うーん……」」



「あ、あの……! 二人とも……!」

仁奈「ん? この声は――」

佐々木千枝「仁奈ちゃん、薫ちゃん、おはよう」

薫「あ! 千枝ちゃんだ!」

千枝「二人ともどうしたの? なんだかすっごく難しい顔してたけど……」



仁奈「実は仁奈たちは今、大きな問題にちょくめんしてるんでごぜーます……」

薫「こえるべき大きな壁なんだよ……」

千枝「ええっ!? そ、それって大丈夫なの……?」

薫「別に悪いコトってわけじゃないんだけど……」

仁奈「じゅうだいじゃねーけど、じゅうようなコトなんですよ」

薫「おおごとじゃないけど、たいせつなコトなんだよ」

千枝「そ、そうなんだ……」



薫「うーん……」

仁奈「ううむむ……」

千枝「あっ、あの、二人ともっ!」

千枝「それ、千枝にも、何か手伝えること、ないかな……?」

薫「千枝ちゃん……?」

千枝「……千枝、泣き虫で弱虫で、アイドルになってからもいつも失敗ばかりだったけど――」

千枝「でも、それでもこうしてアイドルを続けてこられたのは、みんなのおかげだから」

千枝「みんなが千枝を励ましてくれて、千枝を慰めてくれて――千枝と頑張ってくれたから、こうしてアイドルが楽しいって思えるんだなって……」

千枝「だから、そうやって支えてくれたみんなに、千枝からも何かお返しがしたいって思ってて……」

千枝「今度は私が、一歩踏み出す勇気をくれたみんなに、踏み出して良かったって教えてくれた、そんなみんなの力になりたいの!」

千枝「二人の事情は分からないけど、でも千枝で協力できることなら、なんでも言ってほしいな!」

薫「ち、千枝ちゃん……!」

薫「ありがとうっ!」ダキッ

仁奈「すっげーたのもし―ですよっ!」ダキッ

千枝「あ、あ……! えへへ……!」ギュッ



薫「じゃあ千枝ちゃん」

仁奈「ちょっと聞きてーんですけど」

千枝「うん! なんでも聞いてよっ!」



薫・仁奈「「非処女よりすごい言葉って知ってる?」」



千枝「!?」



千枝「どどどど、どういうこと……!?////」

千枝「あああ、あの……、ひ、非処女って……」

千枝「あ、あの非処女のこと……?////」

薫「そう、あの(褒め言葉の)非処女だよ!」

千枝(ええ!? やっぱり!?//////)

千枝「な、なんで二人はそんなことが知りたいの……?」

薫「今のかおるたちにはそれが必要なんだよ!」

仁奈「かきゅーてきすみやかに、知りてーんでごぜーます!」

千枝「え、ええっ……!?」



千枝「た、確かに、そういうことに興味が出てくるって気持ちは分かるけど……」

千枝「でも、それってそこまで大切なことなのかな……!?」

千枝「ほ、ほら! 二人ももっと大きくなれば自然とそういう知識も増えていくと思うし――」

薫「それは、そうかもしれない」

仁奈「でも千枝ちゃん――これは今だからこそ意味があるんでごぜーます!」

薫「かおるたちは、今感じたこの気持ちを、今のかおるたちでお返ししたいの!」

薫「確かにかおるたちは、まだまだ知らないこととかいっぱいあるけど……、でもだからって、みんなへの感謝のお返しを『大きくなってからでいいや』なんて、後回しにはしたくないんだよ!」

仁奈「仁奈たちの未来へつながる明日、そいつを笑って過ごすためにも、これは必要なことなんでごぜーます!!」

千枝「そ、そんなにっ!?」



千枝(分からない……。二人の事情は全然分からないけど……)

千枝(でも、二人の目はとっても真剣だし……)

千枝(力になりたいって言っちゃったし……)

千枝(なにより――力になりたいって、その気持ちは本当だし……)

千枝(………………)

薫「うーん、でもさすがの千枝ちゃんでも知らないかー」

仁奈「しょうがねーですよ。あれほどの言葉がそう簡単に出てくるほうが難しいんでごぜーます」

薫「そっか、それもそうだね……」

薫「ありがとう千枝ちゃん。千枝ちゃんのその気持ちだけでもうれしかった――」



千枝「あっ、あのね!」



千枝「いっこだけ……、いっこだけだけど、千枝、知ってるよ……!」

仁奈「ほ、ホントでごぜーますか!?」

薫「お、教えて千枝ちゃんっ!」

薫「あの『非処女』よりすごい言葉っていうのはっ!?」

仁奈「そいつはどんな言葉なんでごぜーますかっ!?」

千枝「それは……」

薫・仁奈「「それは……?」」

千枝「にっ……」




千枝「肉便器……///」カァアアア



薫「にく……?」

仁奈「……べんき?」

薫(ぜ、全然聞いたことない言葉だけど……、それって褒め言葉なの……?)

仁奈(はつみみっていうか、ねみみにみずってカンジでごぜーます……)



薫「えっと、かおるたち初めて聞く言葉なんだけど……」

薫「じゃあ千枝ちゃんは、にくべんきって言われたら、うれしいって思うの?」

千枝「ええっ!? そそそんな、千枝はっ!!//////」ボンッ

仁奈「例えば、プロデューサーとかに言われたら……」

千枝「ぷぷぷぷプロデューサーさんにっ!?!?!?/////」



千枝「そんなっ、プロデューサーさんにそんなことっ!///」ワタワタ


千枝「そそそそ、そんなこと言われたらっ……!!//////」ワタワタ


千枝「そんなこと言われちゃったら……!!!//////」ワタワタ


千枝「だって、そんな……!!!!//////」ワタワタ


千枝「あの、その……!!!!//////」ワタワタ



千枝「えへぇ……」トローン



薫・仁奈「「お、おお……!」」

薫「あ、あの大人しい千枝ちゃんが、あんな緩んだ顔になるなんて……!」

仁奈「恐るべし、にくべんきでごぜーますっ……!」



薫「……でも、どういう意味なんだろ?」

薫「『にくべんき』――『にく』は、お肉のことだよね」

薫「お肉はおいしくていいものだけど……、でも『べんき』って、お便所のことでしょ?」

薫「かおる、『お便所』って言われてもうれしくないし……」

薫「なんでその二つをくっつけちゃったのかな?」

「はひぃ……! こ、こんなのダメれすよぉ……プロデューサーさん……!」ブツブツ



仁奈「『こーてーさ』を使ってるんじゃねーですか?」

薫「でも、頭についてる「にく」はいいものだよ? それじゃ、きょーちょーされちゃうのは後ろの『便器』になっちゃわない?」

仁奈「確かにそうだ……」

仁奈「うーん……」

薫「うーん……」

『こ、これはちょっと、ダジャレにし"にく"いですね。私ももっと"べんき"ょーしなくちゃ、なんて、ふ、フフ……///』

仁奈「はっ……!」ティン



薫「仁奈ちゃん? どうしたの?」

仁奈「……薫ちゃん」

仁奈「仁奈たちは、とんでもねー考え違いをしてたですよ」

薫「ど、どういうこと……?」

「ち、違いますぅ……! よ、悦んでなんて……! あはぁ……!」ブツブツ



仁奈「せーりして話していきましょう」

仁奈「『肉便器』ってこの言葉――」

仁奈「まず言わずもがな、『肉』ってのはうまくて、いいものでごぜーますね?」

薫「そ、そうだね! かおるも、お弁当にソーセージとか入ってたらうれしいもん!」

仁奈「そう――つまり『肉』はいいもの、あったらうれしいもんでごぜーます」

仁奈「――で、問題はそのあとに続く『便器』でごぜーますが……」

仁奈「薫ちゃん。薫ちゃんは、便器とかトイレについて、どんなイメージを持ってるでごぜーますか?」

薫「それはやっぱり、『臭い』とか『汚い』ってイメージかなぁ……」

薫「あっ、うちのおトイレはママがきれーにしてるけどね!」

薫「でも基本、いいイメージはないよ」

仁奈「なるほど」

「ああごめんなさい! 未貫通の未熟穴なのにいっぱいヨダレ垂らしてごめんなさいぃいい!!!」ブツブツ



仁奈「薫ちゃんのその認識には、仁奈も異論ねーですよ」

仁奈「……でもじゃあ薫ちゃん、ここでちっと考えてみてくだせー」

仁奈「そんな風に『臭い』や『汚い』イメージのあるお便所でごぜーますが――」



仁奈「じゃあそんなお便所が、この世からなくなっちまったら、どうするでごぜーますか?」



薫「な、なくなっちゃったら……?」



仁奈「そう……お便所が一切合切、姿を消しちまったら、どうするですか?」

薫「そっ……」

薫「そんなの大変だよ! お便所がなくなったらおトイレに行けなくなっちゃう――!」

薫「はっ……!」

仁奈「そう。その通りですよ」

仁奈「お便所は、臭くてきたねーイメージがある一方で、人間社会には欠かせねーもんなんでごぜーます」

仁奈「そもそもお便所にそんなきたねーイメージがあるのは、お便所が、人間のきたねー部分を一身に背負ってくれてるからでごぜーます」

仁奈「もしもお便所がなくなれば、人の世は不浄と腐臭の混沌に呑まれちまう」

仁奈「お便所――便器は、そうやって対極の位置から社会の清潔を支えてるんでごぜーます!!」



仁奈「ここまで言えばもう答えは明白ですね」

仁奈「おいしくて、あったらうれしいもんである『肉』――」

仁奈「そして、みんなの生活になくてはならない、必要不可欠な存在である『便器』」

仁奈「『肉便器』ってのは、そんな素晴らしい意味を持つ言葉が組み合わさってできたものでごぜーます!」

仁奈「つまり――」




仁奈「『肉便器』ってのは、最高の褒め言葉だったんだよ!!」ニナチャァアアアン!!!



薫「な、なんだってーー!!」ズギャァァアアン!!!



アリガトウゴザイマシュゥウウウ!!!!




――――――
――――
――


三船美優「――もしもし。はい、早苗さん」

美優「今日の打ち上げ……、はい、分かりました」

美優「居酒屋さんってことは、またお酒が入りますよね……。はい。やっぱりメンバーも……そ、そうですか……」

美優「ちゃんと節度は保つ……? あいさんもいるから大丈夫……?」

美優「でも、あいさんもお酒はそこまで強くないみたいですし……、かえって楓さん辺りが羽目を外しそうな気が……」

美優「えっ? プロデューサーさんも来るんですか……?」

美優「てっきりお仕事だと……。な、なるほど……、皆さんのアイドルイメージを守るためのストッパーに……」

美優「あ、はは……た、大変ですね……。プロデューサーさんだってお酒はあまり強くないのに……」

美優「……ええ、私も行きます。絶対に……!」

美優「……ふふっ。楽しみにしていますね」

美優「はい。それじゃあまたあとで」ピッ



美優「ふふっ……。こんなことではしゃいじゃうなんて、ちょっと子供っぽいかしら……♪」

ガチャ

美優「お疲れ様です」


千枝「」ブツブツブツ


美優「あら? 千枝ちゃん?」

美優「どうしたの? なんだか様子が……」



千枝「はい! 千枝、ちゃんと全部残さず飲めましたっ! ご主人様のためなら千枝どんなご命令でも喜んでこなしてみせます! って、え? ち、違うんです! か、勝手にイッてなんて……はぅ! ご、ごめんなさい、嘘つきました。本当はご主人様に便器扱いされて、すごくうれしくなっちゃったんです。はい、ごめんなさい。あの、やっぱりお仕置きですか? はい、分かりました。ご主人様へのご奉仕中に、許可なく気持ち良くなっちゃう千枝は、悪い子です。肉奴隷失格です。こんな卑しいお口ホールの千枝を、どうかご主人様の立派な肉棒様で一人前の肉奉仕人形に調教してくださ――」ブツブツブツ

美優「!?」

美優「千枝ちゃん!? どうしたの!?」

美優「し、しっかり! しっかりして! 目を覚まして!!」ガクガク

千枝「は、はいぃいい!! ご指導ありがとうごじゃいましゅ! ごしゅPしゃまの濃厚ミルクを恵んでくださって、千枝感激でしゅぅうう!!!」ビクンビクン

千枝「はひぃ……」パタリ

美優「千枝ちゃんっ!?」



美優(ち、千枝ちゃん、気絶してる……)

美優「一体何が……」

薫「あっ! 美優お姉ちゃんだっ!」

仁奈「美優おねーさんっ! ちょうど会いたかったですよ!」ダキッ

美優「あ、あら、薫ちゃん、仁奈ちゃん」

美優「あの、千枝ちゃんが倒れちゃったんだけど、何か知って――」

仁奈「美優おねーさん! 美優おねーさん!」



仁奈「美優おねーさん、いつもありがとーですよ!」

仁奈「仁奈、ママが忙しくてあんま遊んでもらえねーですけど……」

仁奈「でも、美優おねーさんがいてくれるから、寂しくねーし、アイドルも頑張れるでごぜーます!

薫「かおるもかおるも! かおるも美優お姉ちゃんのこと、大好きだよ!」

薫「お仕事で海に行った時とか、色々心配してくれて……」

薫「温かくて優しくて、ホント、ママみたいだよね!」

美優「えっ……、えっ……!?」



美優「あの、えっと……、と、突然どうしたの?」

美優「う、うん……、二人がそんな風に思ってくれていたのは、うれしいけど……」

仁奈「だから仁奈たち、おれーがしてーですよ!」

薫「いつもお世話になってる美優お姉ちゃんへ、かおるたち、お返しがしたいの!」

美優「お、お返し……?」

美優「そ、そっか……! それは楽しみだけど……」



薫「美優お姉ちゃんはすっごく優しくて、綺麗で……」

仁奈「大人っぽくて、柔らかくて、いい匂いがして……」

薫「すごい美人さんで……」

仁奈「女神みてーで……」

美優「あ、あはは……、さすがにちょっと恥ずかしいな……!」

薫「かわいくって、美しくて……」

仁奈「温かくって、安心できて……」

美優「うん、うん」

薫「出会えて、本当に良かったって思えて――」

仁奈「ずっと一緒にいてほしーって思える――」

美優「うん……! うん……!」ウルウル




仁奈「美優おねーさんは、最高の肉便器でごぜーますっ!!」



美優「!?」ブフッ



美優「ごほっ……! けほっ……! こほっ……!」

美優「はぁー、はぁー……!」ゼーハー

仁奈「み、美優おねーさん!? 大丈夫でごぜーますか……!?」

薫「きっとかおるたちの言葉にびっくりしちゃったんだね」

仁奈「なるほどー! 確かにそいつは無理もねーですね!」

美優「あ、あの、えっと……」

美優「ご、ごめんねっ!? あの、ちょっと聞き間違いしちゃったみたいなんだけど……」

美優「今、なんて言ったのかしら……?」

薫「美優お姉ちゃんは最高の肉便器って言ったんだよ!!」グッ

美優「!!?」

仁奈「温かくて、柔らかくて、いい匂いの肉便器でごぜーますっ!!」グッ

美優「!?!?!?//////」ボンッ



美優「ふ、二人ともっ!? な、なんてこと言ってるのっ!?」

美優「に、にくべ――ゴニョゴニョ――だなんて、そ、そんな言葉――」

仁奈「おっと、美優おねーさん、けんそんしねーでくだせー!」

仁奈「これは仁奈たちのせーとーなひょーかでごぜーます!」

美優「ええっ!?」ガーン

薫「ホントは『非処女』でもいいかなって思ったんだけどね?」

薫「でもやっぱり美優お姉ちゃんには、肉便器のほうがしっくりくるよね!」

美優「ええっ!?//////」カァアアア



美優(な、なに……!? なんなのかしら、この状況……)

美優(二人とも……、一体どうしちゃったのかしら……)

美優(もしかして、知らず知らずのうちに嫌われちゃったとか……!?)

美優(でも、全然心当たりがないし……)

美優(それに、あんな言葉、どこで覚えてきたんだろう)

美優(やっぱり大人として、ここはちゃんと、し、叱らなきゃ、ダメかな……?)



美優「に、仁奈ちゃん! あの――」

仁奈「仁奈の中では、美優おねーさんはママこうほで、どーじに肉便器こうほでごぜーます!」

美優「はぅうっ!?//////」

美優「か、薫ちゃん! あの――」

薫「なるほど! 美優お姉ちゃんは、肉便器の母だねっ!」

美優「あぅうう!?//////」

美優(だ、駄目! し、叱らなきゃ……!)

美優(二人のためにも、そんな言葉使っちゃいけないって……、言わなきゃ……!)

美優(でも……)

仁奈「えへへ! 美優おねーさん!」

薫「美優お姉ちゃん! 美優お姉ちゃん!」

美優(………………)

美優(……ううん)

美優(やっぱり、ここはしっかり言わなくちゃ)



美優「――仁奈ちゃん!」

仁奈「は、はいっ」ビクッ

美優「それに、薫ちゃんも」

薫「は、はひっ……」ビクッ

仁奈「み、美優おねーさん、どうしたですか……?」

美優「………………」

薫「あ、あの、美優お姉ちゃん……?」

美優「二人とも」

仁奈・薫「「う、うん……」」

美優「あのね」

美優「あのね――」




美優「ありがとう」ギュッ



仁奈「わっ……!」ムギュッ

薫「あっ……!」ムギュッ

美優「ちょっとびっくりしちゃったけど……、でも、二人の気持ち――感謝の気持ち、ちゃんと伝わったわ」

仁奈「ほ、ホントでごぜーますか!」

薫「やったね! 仁奈ちゃんっ!」



美優(そうよね。二人とも、あんなにうれしそうな、優しい笑顔をしているんだもの)

美優(だったら伝えたい気持ちだって、それはとっても温かいものよね)

美優「ええ。本当にありがとう」ナデナデ

薫「あっ、ナデナデ……!」

仁奈「えへへ……! おれーをしてーのは仁奈たちのほうですよ……!」

美優「それでも言わせて。ありがとうって」

美優「仁奈ちゃんと薫ちゃんは、さっきいっぱいの言葉を贈ってくれたけど――」

美優「そのおかげで、私もずいぶん救われたから」

仁奈「救われた……?」



美優「正直ね、最初はすごく不安だったの」

美優「同じアイドルと言っても、私みたいな冴えないOLが、あなたたちみたいな輝いている、それも年下の子たちとうまくやっていけるのかって……」

美優「だからさっき、出会えて良かったって、一緒にいたいって言ってくれて――すごくうれしかった」

美優「それにね、こんな言葉を知ってる?」

美優「『誰かに優しくされた人は、誰かに優しくできる』って」

美優「自分の人生を振り返ってみると、私は、嫌なことや辛かったことばかり思い出してしまうけれど……」

美優「でも、自分がこんな風に感謝をしてもらえるくらい二人に優しくできたんだとすれば、そんな今までの人生の中でも、私はきっと色んな人に助けられてきたんだろうなって……」

美優「そう考えれば、私の人生も悪いものなんかじゃないって、そう思えたから」



薫「美優お姉ちゃん!」

薫「ホントはかおるたち、もっともっと色んなものをお返ししたいの!」

仁奈「言葉だけじゃ、みんなへの、美優おねーさんへのお返し、しきれねーですよ!」

美優「ふふっ、そうね……」

美優「じゃあ、二人のそんな感謝の気持ちを伝える、とっておきの方法を教えてあげる」

薫「ホントー!?」

仁奈「どうすればいいんでごぜーますか!?」



美優「それはね――あなたたちが幸せになること」

薫「しあわせ……?」

美優「うん」

美優「二人もこれからの人生で、色んなことを経験すると思う」

美優「辛いことや悲しいこと――時には、何もかも投げ出したくなる時もあるかもしれない」

美優「そんな時は、挫折したり泣いたりしていいと思う」

美優「でも、諦めることだけはしないで」

美優「いつも二人がみんなにしてもらっているように……、今日、二人が私にしてくれたみたいに、優しくされて、優しくして――」

美優「そうやって、前に進んで行って」

美優「それで、最後には幸せになって」

美優「優しいあなたたちが、美しく輝くようになれたら――」

美優「それが、あなたたちの幸せを願う、私たちへの最高のお返しになるから」



仁奈「そっか……! 幸せかぁー……!」

美優「――だから二人の、みんなへのお返しってアイデアは、すっごくいいと思うけど……」

美優「でももう、誰かを、に、にくべんき……、とか非処女って言うのはやめましょうね……?」

薫「んー? どうしてー?」

仁奈「すっげーいい褒め言葉ですよ?」

美優「ええと、あの、その……」

美優「その言葉は、意味が強すぎるっていうか……」



美優「例えば、二人は、プロデューサーさんから『大好き』って言われたらうれしいでしょ?」

薫「えへへ! うん!」

仁奈「仁奈も大好きでごぜーます!」

美優「……でも、じゃあプロデューサーさんから『愛してる』って言われたら、どう思う?」

薫「ふえぇ!?///」ビクッ

仁奈「そりゃー仁奈も、プロデューサーのこと、あいしてるですよ?」

薫「え、ええ!?」

薫「に、仁奈ちゃん! だ、ダメだよそれはっ!!///」アセアセ

仁奈「薫ちゃん? 真っ赤になってどうしたんでごぜーますか?」

美優「ね? 薫ちゃんみたいにびっくりしちゃう人もいるから」

仁奈「んー? そうなのかー」

薫「せ、せんせぇからあ、愛してるなんて……///」

仁奈「薫ちゃん、大丈夫ですか?」

美優「うふふふ……」



――――――
――――
――


美優「――と、いうことがありまして……」

美優「も、もう、プロデューサーさん! 笑い事じゃないんですよ……!?」

美優「あんな言葉、どこで覚えてきたのかしら……」

美優「……そうですね。本当に子供って、私たちの知らないうちにどんどん先へ進んで行ってしまうんですね……」

美優「それは少し寂しけれど……、でも、あの子たちがどんな風に育っていくのか、楽しみでもあります」

美優「これが、親の気持ちなのでしょうか」



美優「って、あはは……。今の私はアイドルなのに、なんだか変なカンジですね」

美優「でも、あんな可愛い二人から、あんな風に感謝してもらったら……誰でもそういう気持ちになってしまいますよ」

美優「はい。とってもうれしかったです……!」

美優「で、でも……、思い出すと……やっぱり恥ずかしい……!」

美優「本当にびっくりしたんですから」

美優「あんなこと……、非処女とか、肉便器だなんて言われて……」

美優「まったくもう――」




美優「バレちゃったのかと思いました」




美優「ふふっ。感謝ってことなら、プロデューサーさんもみんなから感謝されていますよね」

美優「それに信頼も……。酔った私を、送り狼なんてしないって……」

美優「あっ、ダメ! あんまり暴れると、手首とか跡になっちゃいますから……」

美優「もう……。毎回そんなに照れなくてもいいのに」

美優「私も、あなたのことは信頼していますし――何より感謝しています」

美優「初めてのあの時から……、私は幸せでいっぱい……!」

美優「だからこれは私からの、精いっぱいのお返しなんですよ」



美優「男の人って、こういうの好きなんですよね……! あれからも、あなたのために色々勉強したんですよ?」

美優「あっ、すごく熱くて……、脈打って……」

美優「あっ……!」

美優「んっ……! ん……!」

美優「………………///」

美優「ふふ……うれしい……! こんなにいっぱい」

美優「いつもより多いですね……!」

美優「顔、重たいです……!//////」













かんしゃの素晴らしさを伝えたかった。

誤字脱字、憎悪をいだく長さはごめんなさい。

読んでくれてありがとう。



こういうオチだと思ってた(前屈み)
美優さんがS(責める)でPはM(迎え撃つ)の役割分担か…

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