フレデリカ「怪談ごっこ、その2」 (28)

これはモバマスssです

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フレデリカ「ふんふんふふーん、恐怖」


杏「ついにFが最後にいったね」


文香「ラストF…なかなか、悪くない響きですね」


フレデリカ「ねーねー、怪談しよ?」


杏「そんな可愛い感じで上目遣いで言われても特に何も起こらないよ?」


フレデリカ「怖い話しよー?前の続きって事で!」


杏「え、あの怪談シリーズ続くの?」


文香「あら…今日は、まだネタを考えていないんですが…」


杏「じゃー杏からいこっかな」



杏「実は杏ね、怖いとかそういう体験した事全然ないんだ」


フレデリカ「怖いもの知らずって事?」


杏「語弊あるけどまぁいいや」


文香「それ、饅頭


杏「文香ちゃん黙ってて」


フレデリカ「杏ちゃん。怖いものとかないの?」


杏「無くはないけどねー。うーん、言っていいのかなぁ」


文香「饅


杏「お黙り」



杏「実は杏ねー、飴が怖いんだ」


フレデリカ「わぁお、じゃあフレちゃん沢山飴プレゼントしちゃう!」


杏「あー困ったなー、凄く怖いぞー」


フレデリカ「この飴玉、茄子さん特製だってさー」


杏「マジで怖い…」


文香「…杏さん、今欲しいものは?」


杏「ツッコミ的に肇ちゃんが欲しいかな」


ガチャ


肇「おはようございます」


フレデリカ「わぁお、ナイスタイミング!」






杏「助かったよ肇ちゃん、あとはよろしく…バタンッ」


肇「杏ちゃん…?杏ちゃん!!」


文香「…ついに…逝ってしまったのですね…」


杏「ところで何時もより遅いけどどしたの?」


肇「昨晩、祖父と長話してしまって…ふふっ、おじいちゃんったら、一緒になって喋ってたのに早く寝なきゃダメだろうだなんて」


杏「ほーん。じゃ、次は肇ちゃんね」


肇「…何かを説明して下さい…」


フレデリカ「今ねー、怪談ごっこしてるんだー」


文香「肇さん以外の三人は既に終わっています…肇さん、貴女のターンです」




肇「怪談、ですか。あまり得意ではありませんし、そう言った経験もありませんが…」


杏「普通怪談が得意な人なんてそーそー居ないんだよなぁ」


文香「そう言った経験が多い人も、そうはいませんから…」


肇「それに、文香さん程上手く出来るかどうか…」


フレデリカ「文香ちゃんが上手すぎたねー」


文香「作り話で大丈夫ですよ」


肇「そうですね…でしたら」



コトン


湯飲みを机に置き、肇はふぅと一息ついた。
たった、それだけで。
風も無く外気が吹き込んできたかの様に、冷たい空気が場を埋め尽くす。
動いているはずの暖房はゴウゴウと音を鳴らして、しかし役割を果たさない。
まるで、世界からこの部屋だけが解離されてしまったかの様な空間で。


「…少し、長くなるかもしれませんが…」


肇がニコリと笑い、口を開いた。
場の空気に似合わないその笑顔は、逆に不気味さを帯びている。
いつの間にか、暖房の音すら消えている。
いや、そんな気がしてしまう。
それ程に、肇の発する空気感が場を支配していた。


くるり、と。
首を軽く回して、一度部屋内を見回して。
たったそれだけの動作で、余計に不気味さを増し。


そして、続けた。


「これは…そうですね。私ではない誰かの、一人の女の子の体験談とでも思って聞いて下さい」



「…はぁ…もっと上手く出来たのに…」


その日は、私が初めてステージに立った日でした。
ステージと言ってもテレビで放送されている様な大きな会場ではなく、レジャー施設やデパートの屋上にある様な小さなステージ。
ステージに小さいも大きいもありませんけれどね。


人生初の、舞台に立って誰かの前で何かをする仕事を終え、家に着く頃はクタクタでした。
そうしてシャワーを浴びて一息ついてから、ようやく今日の自分を振り返って自己嫌悪の様なものに襲われたんです。
緊張してしまって、いつも通りのトークが出来ていなかった気がする。
焦らず、もっと落ち着いて話せれば。


見て下さった方々は、満足してくれただろうか。
飽き飽きしていなかっただろうか。
出来ることなら、今朝にもどって1日をやり直したい気分でした。
流石にそれが無理だという事を判断出来るくらいには、疲れ切ってはいませんでしたが。


明日からもっと頑張らないと。
ようやく立てるようになったステージ、もっともっと…
でも、どんなに頑張ってもステージの上でそれを発揮できないと…


ぶーん、ぶーん、ぶーん


負の思考に苛まれていたその時、私の電話が鳴り出しました。
正直、電話に出るのも億劫なくらい疲れきっていて。
けれど発信源は実家の固定電話。
崩れそうな腕を伸ばして、電話を繋ぎました


「…もしもし、おじいちゃん?」


「肇、実家に戻って来なさい」


「…え?」



翌日、私は晴れ晴れとした気持ちで家のドアを開けました。
冷たい風が頬を撫でますが、少しも寒くありません。
昨晩歩いて帰ってきた道が、まるで違って見えます。


事務所へと着いてドアを開けると、プロデューサーが出迎えてくれました。
やけに私のテンションが高かったからでしょう。
どうしたんだ?何か良いことでもあったか?なんて聞かれて。


「昨晩、祖父から電話があったんです」


内容は、少し厳しい言葉でしたが。


迷いがあるなら帰ってきなさい。
不安や不満があるなら戻って来なさい。
自分で決めた道なんだから、そこから逸れるのだけは、ぶれるのだけはいけない。
けれど道は、前にも後ろにもあるんだから。
進むも戻るも、お前次第だ、と。


長い間おじいちゃんと過ごしてきた私なら分かりました。
それは、おじいちゃんなりの励ましの言葉なのだ、と。
心に迷いがあっては、満足のいく器は完成しません。
真っ直ぐ、信じて作り上げなければ、最高のステージは作れません。


自分が自分を信じられなくて。
自分が選んだ道を信じられなくて。
そんなの、良いはずがありません。


「そうか…だから肇はそんなに晴れ晴れとした表情をしているんだな」


「はい、もう迷いなんてありません」


「昨日は暗い表情をしてたから心配だったけど、なら大丈夫そうだな」


決めたからには、迷う事なく全力で。
これからも、プロデューサーと二人三脚で。
必ず、最後までやりきってみせます。



それからは、少しずつ露出も増えていって。
どんどんと、ステージも大きくなっていって。
ドラマやCMにもどんどん出演させて貰い、知名度を上げていきました。


もちろん辛い事だってありましたし、疲れて眠り続けたい日もありました。
撮影が上手くいかなくて、なんどもやり直した日も。
満足いく様に歌えなくて、へこんで泣きたくなる日も。
動き回って、くたくたになってベットへ倒れこむ日も。


けれど、そんな辛いとき。
いつもおじいちゃんが、励ましの電話をくれました。


「迷いのある手で、自信作と言える器を作れるか?」
「積み重ねの先に産まれるものもあるだろう?」
「疲れは寝ればとれる。今失敗してもいずれ成功する。だが、後悔だけは一生残る。常に全力で挑め」


時に厳しく、時に優しく。
けれど常に私の事を想って。
疲れきった私に、言葉を掛けてくれました。


おじいちゃんからの言葉を心の支えにし。
プロデューサーに支えて貰いながら。
精一杯頑張って、成長しました。





「肇、最近かなり調子が良いな」


「はい、これもプロデューサーと祖父のおかげです」


「肇の頑張りが一番大きいよ。さて…そろそろここいらで大きなライブでもやってみたくならないか?」


「…え?もしかして…」


「あぁ!来月末、遂にーー」


プロデューサーの話を要約すれば、遂に私一人でのライブとのこと。
アイドルを初めて初の大舞台です。
昔の私だったら、もしかしたら話を聞いただけで尻込みしていたかもしれません。
ですが…


「…やらせて下さい。精一杯、最高のステージを作ってみせますから!」


支えてくれた人たちへ。
成長した私を届ける為に。
チャンスをモノにして、更に成長する為に。
私は、意思を固めました。


「これからレッスンはかなり厳しくなるし、他の仕事もあるから忙しくなると思うが…俺も精一杯サポートするから」


「はい、お願いします」




それから、更に忙しい日々が続きました。
帰るのが遅くなる日も多くなりましたし、お風呂に入るのすら億劫になる日も沢山ありました。
おじいちゃんからの連絡も、少し減った様な気がします。


けれど、本当に疲れきっている日には。
まるで私の心が届いているのかと言うくらい、丁度おじいちゃんが連絡をくれました。
慌ただしい日々の疲れが、それだけで吹き飛んで。
心を新たに、今以上に、頑張って活動をしました。




撮影を終えて、そのままレッスンを受けたとある日。
家に着く頃は時計の針が両方頂点を指そうとしていて。
倒れ込む様に、私は布団に埋まりました。


初めての通しでのレッスンは、想像以上に厳しくて。
これをステージの上で笑顔でこなさなければいけないと思うと、怖くなってきました。
疲れて、もう足が動きそうにありません。
久しぶりに、おじいちゃんの声が聞きたくなりました。


ぶーん、ぶーん、ぶーん、と。
そんなタイミングで、丁度私に連絡が届きました。


やっぱり、おじいちゃんは全てわかりきっているのかもしれません。
急いで電話にでると…やはり、おじいちゃんでした。


「今帰宅したところか?お疲れ様、今日はかなり忙しかっただろ」


「はい…でも、頑張らないといけませんから。私の選んだ道ですし、支えてくれる人もいますから」


「辛くなったらすぐ頼れ。その為のプロデューサーなんだから」


それから少し長々と話し、夜もすっかり深くなってしまった頃。
おじいちゃんから元気を貰った私は、泥の様に眠りにつきました。




翌日事務所へ着くと、何故だかプロデューサーはとても眠そうでした。
昨日は夜更かしでもしてしまったのでしょうか?
忙しい職業だとは思いますが、体調が心配です。


「プロデューサー、お疲れですか?」


「あ、おはよう肇。昨晩は長々と電話しちゃってたからなぁ」


「昨晩と言えば、祖父から連絡がきたんです。辛くなったらプロデューサーを頼れ、と」


「お、肇の祖父にも信頼されてるのかな。なら頑張らないと」


今日の予定を改めて確認し、私は事務所を出ました。
今日も通しでのレッスンです。
けれど、昨日よりもずっと上手くできた気がします。
それでもやはり、レッスンが終わった瞬間には倒れそうになってしまいましたが。


そのまま雑誌の撮影を終え、帰る頃には昨日以上に疲れていました。
仕事中はあまり感じなかった分、終わった瞬間一気にドッときて。
電車内で寝落ちしてしまい、家に着く頃にはまた夜遅くになっていました。


でも、こんなに疲れているからこそ。
こんな時だからこそ。
おじいちゃんの声を聞くと、尚更元気がでます。


ぶーん、ぶーん、ぶーん


家についてお風呂に入り、着替えを終えた時。
また丁度、私の電話が鳴りました。


「今日もお疲れ様。明日渡したい書類とかあるから、少し早目に来て貰っていいか?」


「はい、早起きすると良いことがあるっていいますから」


「メールでも良かったけど、一応何かあれば聞こうと思ってな」


「大丈夫です、私も元気を貰えましたから」


そしてまた、長々と喋ってしまいました。
そう言えば、おじいちゃんは昔よりもよく喋る様になった気がします。
なんとなく長く喋っていたくて次々と話し、気付けばもう夜の1時。


「では、お休みなさい」


電話を切ってアラームを1時間早目にセットして。
目を閉じると、直ぐに眠りの世界に落ちてゆきました。




「おはようございます、プロデューサー。少し早目に来てみました」


「お、よかったよかった、書類はこれな。簡単に説明するけどーー」


今日もまた、朝から眠そうですね。
それにしても、早く来て良かったです。
もしいつも通りの時間に来ていたら、危なかったじゃないですか。


「ところで、明日から3日ほどレッスンはキャンセルしておいたから。こんな時期だけど、ちゃんと実家には戻った方がいいぞ?」


「…え?何を言っているんですか?私は夢を諦めていませんし、もし戻るにしてもそれはライブが終わった後の方が…」


「いや、今直ぐにでも行くべきだって。実家の方からも連絡が俺の方に来てるぞ。肇が戻ってこない、って」


「え?何かあったんですか?」


「いやいやいや、まず肇に連絡がいっているだろ?」


「…?すみません、本当に何も来ていませんが…昨日も祖父と連絡していましたけど、言った事は聞いていませんし…」


「…祖父から、連絡?」


「はい、ついつい長く話してしまって気付いたら夜の1時でしたけれど」


「…おかしくないか?その時間、俺と電話してただろ?」




何かおかしいですね。
話がどうにも噛み合いません。
それに何より、昨晩私はおじいちゃんと電話していたんですから、プロデューサーと電話出来る筈がないんです。
一体プロデューサーは、誰と電話していたんでしょうか?


「それに、祖父と電話って…それもおかしいぞ。実家の方からの連絡は、肇を連れ戻す為の嘘って事も無いだろうし…いやでも、父方と母方で…」


「ちなみに、どう言った内容だったんですか?」


「今俺の口から伝えるのも難だけど…」


「大丈夫です、私は何でも受け入れますから」


私と、プロデューサーと、おじいちゃんで。
いつも、なんだって乗り越えてきました。
たとえどんな報告だって、私は受け入れられます。


物凄く辛そうな表情をしているプロデューサー。
一体何なのか、尚更気になってしまいます。
私の実家から、一体何を…


「…肇の祖父が、亡くなったそうだ…それも、半月程前に」


訂正
>>20

「…肇の祖父が、亡くなったそうだ…それも、一月以上前に」



「…うそ、ですよね?」


「父方か母方かは聞いてない。けど、実家のって言ってたから…」


「何を言っているんですか?昨日の夜も、私は祖父と電話を…」


「だから、その時肇は俺と連絡してたんだって!」


「ありえません。私がそんな事を勘違いする筈もありませんから」


プロデューサーは、私を騙そうとしているんでしょうか?
それによって何かプロデューサーにとってプラスになる事があるとは思えませんけれど。
それか、実家のだれかがどうしても私に戻ってきてほしいから、か。


「おそらく肇の母だとおもうけれど、なんども連絡しても話が噛み合わないって言ってたし…」


「何を…母から連絡なんて来ていません。実家からの連絡は、全て祖父でした」


「だから!お前の祖父は!」


「話になりませんね。私が今から祖父に連絡を掛けます。それでハッキリするでしょう」


祖父へ電話を掛けようと、私は携帯を開いた。
プロデューサーが何を言っているのか、本気で分かりません。
信頼していたのに、支えてもらってきたのに。


ぷるるるる、ぷるるるる


コール音の後、直ぐにおじいちゃんの声が聞こえます。
ほら、やっぱりじゃないですか。


「すみません、プロデューサーが変な事を言っていたので…」


つー、つー、つー


「まったく、失礼な冗談ですよね。人の祖父を亡くなった、だなんて…」


つー、つー、つー


「はい、もうライブも近付いて来ました。終わったら、実家に挨拶しに帰りますから」


つー、つー、つー


「…なぁ、肇。お前は…誰と会話しているんだ?」


「ふふ、疲れてるからかプロデューサーの声が聞こえますね。大丈夫です、私はおじいちゃんの声だけを頼りにーー






肇「その後その女の子は、電話から聞こえもしない声だけを頼りに過ごしました。他の人の声なんて耳にも入らず…」


杏「おー…」


フレデリカ「んふー、肇ちゃんも話作るのうまいねー」


文香「貴女達二人が苦手なだけかと…」


杏「いやすっごく雰囲気出てたじゃん」


肇「ふぅ…一気に話すと疲れますね。では、そろそろ私は帰ります」


ぷるるるる、ぷるるるる


肇「あ、私です」ぴっ


杏「このタイミングで電話は怖いなぁ」


肇「はい…今は、事務所に一人です」


つー、つー、つー


文香「…え?」


肇「…ふふ、ちゃんと頑張ってます。近い内に、実家に挨拶しにいきますから」


つー、つー、つー










更新おくれてすみませんでした
次は普通の話を書きたいです
お付き合い、ありがとうございました

昨日書いた話
ほのぼのですので是非
【モバマスss】植木ちゃんの見る風景
【モバマスss】植木ちゃんの見る風景 - SSまとめ速報
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