瀬川かえで「ちょっと、転校生」 (22)
・あんガルSS
・かえでさんと転校生しかいない
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かえで「悪かったわね」
転校生「何がですか」
かえで「放課後なのに風紀委員の仕事付き合わせて」
転校生「別に構いませんよ。今日は早めに生徒会の仕事も終わったし、特にやることなかったんで」
かえで「そ、そう」
転校生「……」
かえで「……」
転校生「……かえでさん、何だか今日はよそよそしいですね。ヒステリーも起こさないし、いびってもこないし」
かえで「は、はあ!?」
かえで「そんな…こと、別にないわよ。なに?あたしっていつでも誰彼構わず当たり散らしてないといけないわけ」
転校生「いつも学校にいるときはそんな感じじゃないですか」
かえで「……ま、否定はしないけどね」
転校生「何だかしおらしいかえでさんって、寒気がしますけど」
かえで「勝手に寒気起こして震えてなさいよ。ふん」
転校生「ほら、腕に鳥肌が」
かえで「あ!? 袖を捲って見せつけてこないでくれる??」
転校生「さ、こっちの違反者リスト作成は完了しましたよ」
かえで「ん。なに、終わったの?チェックさせてもらうわよ」
転校生「どうぞ」
かえで「ふむ、ふむ……。なによ。生意気にミス1つないじゃない」
転校生「いいことじゃないですか」
かえで「つまらない男ね。仕事出来すぎても嫌われるわよ。社会に出たらね」
転校生「じゃ、一応仕事終了になるんですけど」
かえで「はい、お疲れ。一応労いの言葉をかけておくわ」
転校生「また珍しい。いつもなら追い返すところなのに」
かえで「……」
転校生「……」
かえで「……あんた、もう、帰るの」
転校生「かえでさんの依頼が完了したら、帰る予定だったんで。ちょうど今帰ろうと思ってたんですけど」
かえで「ふーん」
転校生「かえでさんに引き止められてしまったので、ここから出て行けずにいます」
かえで「じゃあちょっと茶でも飲んでいきなさいよ。暇なら」
転校生「え、本当ですか」
かえで「ま、たまにはあんたでも暇は潰せるでしょ。先輩が誘ってるんだから、乗るのが礼儀ってもんだと思うけどね」
転校生「誘う側にしては上から目線すぎると思うんですけど」
かえで「あたしにしては珍しいわよ。こんなに赤の他人に、しかもここの生徒に優しくするなんて」
転校生「珍しいというか、まるでこの世が終わる時にしか見せないような優しさですよね」
かえで「ふん。御託を並べてないで、そこに座れば。茶菓子でも持ってくるから」
転校生「すみませんね。なんか手間かけちゃって」
かえで「ハッ、本当に気まぐれよ。今日くらいはいいと思ってね。ほら、別に大したものじゃないけど」
転校生「どうも、煎餅ですね」
かえで「さくらさんに勧められてね。あたしは茶道部でもないから茶の良し悪しはわかんないけど、一応茶も淹れたわ。感謝して飲みなさい」
転校生「はあ、煎餅とぴったりのお茶ですね。さくらさんに教えてもらったんですか」
かえで「うん。女子高生の好きそうな菓子とかではないけどね」
転校生「確かに、周りにはいませんね。こんな渋い趣味のお菓子出してくる人」
かえで「悪いわね」
転校生「まあ、好きですけど。こういうのも」
かえで「ふふん。素直にそう言いなさい。最初からおいしいです♪ って礼を言っておけばよかったのよ」
転校生「かえでさんも食べないんですか」
かえで「……あんたの食ってるところ見た方が面白いわ」
転校生「へえ。あ、今鳥肌立ちました」
かえで「いちいち報告しなくていいって言ってんでしょ」
転校生「すみません。本当に珍しくて」
かえで「……ほんとに失礼なやつ」
かえで「ねえ、適当に話してもいい」
転校生「ええ。いいですけど。えっと、オカ研廃止の強行とか止めてあげてくださいね」
かえで「そんな気分でもないわ。確かにオカ研は変人どもの巣窟となっているけど、今はその話でなくあんたに適当な話題をふっかけたいのよ」
転校生「もちろん、それならいいですよ」
かえで「ま、適当に聞き流してくれるだけでいいんだけど」
かえで「なんかさ、あんたが来てからこの学院もおとなしくなる生徒が増えたっていうか、違反者取り締まりもあるっちゃあるけど、いたぶる快感が減ったのよね」
転校生「おとなしくなってる人なんているんですか?るるるさんとか、陛下さんとか、全然おかしい人たちのままだと思ってるんですけど」
かえで「天宮のやつは正直誰にも真意は分かんないけど、あいつを管理できんのは神無月くらいだし」
転校生「かえでさんにも手に負えないと」
かえで「手に負えない以前の話よ。ま、あいつも学院には来るようになったし、あんたの無駄なお人好しと奉仕精神のせいで部活のやつらもまともになってきたしね」
転校生「じゃあ前は相当ひどかったと」
かえで「前の方が取り締まり甲斐はあったわ。そういう面から見ると、あんたのボランティアはあたしにとってはつまらないものだったってこと」
転校生「学院にとってはいいことだったんですかね」
かえで「そういうこと」
転校生「そこは素直に認めるんですか」
かえで「ただの事実だからね」
かえで「なんだか最近、外が静かになったわね」
転校生「それもおとなしくなる人が増えたせいなんですかね」
かえで「ついでに外も殺風景になるし」
転校生「ま、秋も過ぎて葉も散っていきましたから、そういうのも分かりますけど」
かえで「この季節だと外も暗くなるのが早くなって、嫌な感じね。みんな早く帰っちゃうしさ、だらだら残ってるやつを説教していびることも少ないし」
転校生「四季に文句を付けてもしょうがないですよ。暗くなって寒くなるのが冬ってもんですから」
かえで「やっぱり放課後って嫌いだわ。無駄に物悲しくなって、イライラする」
転校生「本当にこういうことを言うのは失礼だと思うんですけど、かえでさんにもそんな負の感情があったんですね」
かえで「ちっ、クソ!」
転校生「おお、いきなりいつも通り」
かえで「つい口が滑っちゃった。誰かに言ったら承知しないわよ」
転校生「別に、告口なんてつまらないことしませんよ。多分誰も面白がらないだろうし」
かえで「そうね。そんな度胸なんてないでしょう。あんたみたいな、お人好しは」
転校生「まー、この頃クラスも欠席する生徒が多いんですよね。こんな寒い季節なせいか、病気がちの子が多くて」
かえで「あんたのクラスの八朔さんみたいな子が増殖してるってわけ。たく、自己管理のなってない証拠ね」
転校生「八朔さんも更に病気がちになって、長期欠席してますよ」
かえで「あの子、確かに前に見た時だいぶ痩せてたわね。今度見舞いにでも行ってやりなさいよ。きっと寂しがってるわよ。頼り甲斐のある、かっこいい、転校生くんに会えなくて」
転校生「そんな苦虫を噛み潰した顔で無理して言わなくてもいいですから」
かえで「ぜぇ、はぁ……確かにあんたを誉め称えるようなこと、無理して言うもんじゃないわね。胸糞悪いわ。キッツい」
転校生「だから無理して言わない方がって言ったんですけどね。かえでさんは性根が腐ってるんですから」
かえで「で? 珍しいじゃない。あんたが苦しんでるクラスメイトの見舞いの1つも行ってやらないなんて」
転校生「そうですか? 別に珍しいことでもありませんよ。八朔さんは前から保健室で休んでることが多くて、よく保健室に通ってお見舞いもどきのようなことはしてましたから」
かえで「ははあ、分かった。あんた学院で満足のいくハーレムが出来上がりつつあるから、少しずつ人員を減らしていこうとしてんじゃないの? なるほど、それなら納得がいく。にしても八朔さんを切り捨てるなんてもったいないわね~」
転校生「え? 別にこの学院で恋愛なんて楽しもうとは思ってないですよ。変人か変態か電波かロリかセカイ系かばっかりだし」
かえで「あっそ、でも今ちょうど他の世界線にいる転校生たちを敵に回したわよ」
転校生「それはしょうがない。みんなそれぞれ女性の好みがありますからね。みんな違ってなんとやらですよ」
かえで「ふぅん……って、ああもう、あたしってばいらんことばっかり、今日はなんで転校生に無駄に突っかかってしまうのかしら」
転校生「恋をしてるんじゃないですか」
かえで「……は?」
転校生「恋を」
かえで「な、何度も言わないでいいわ、鬱陶しい」
転校生「そうですか」
かえで「はぁ? なんであたしがあんたに? お、おかしいわ、あたしは転校生なんかに興味なんかないから。いっつも他のやつらを助けてさ、むかつくだけだから。むしろ、嫌いよ。死んでほしいくらい」
転校生「典型的な動揺の仕方ですね」
かえで「クソ、虫酸が走る……!」
転校生「おっ、やっと首を絞めてきましたね。そうだ、これが瀬川かえでだ。今までのは風邪の前兆だったんじゃないんですか!かえでさん!」
かえで「こんなことされて、なんで笑ってんのよ…気持ち悪い」
転校生「ちょっと、かえでさん?なんで止めちゃうんですか」
かえで「……」
転校生「かえでさん、今日は本当に体調が悪いんじゃないですか。ねぇ、おかしいですよ」
かえで「あんたになんか、あんたが喜ぶようなことなんてやってやらないわよ」
転校生「はは、それが一番嫌なことだと」
かえで「転校生を苦しませるようなこと、したくないだけだから」
転校生「ふ、はははっ。かえでさん、なんでそんな顔してるんですか。今にも泣きそうにしちゃって」
かえで「……あたし、帰る」
転校生「かえでさん」
かえで「っ!? 通しなさいよ、なに? 帰らせない気?」
転校生「緑化委員会の人たちが植えた植物も、枯れ果てて」
かえで「……」
転校生「……学院も、ボロになりましたよね」
かえで「……」
転校生「欠席者、多くなりましたね」
かえで「……」
転校生「……砂が、多くなりましたね」
かえで「……だから、なに?」
転校生「ねえ、かえでさん。もう帰れないんですよ」
かえで「なに? 家に帰れない事情でもあんの? あたしそこまで面倒見れないわよ」
転校生「2人で、この学院で、いや……この崩れた世界で生きていくしかないんです」
かえで「……なに言ってんのよ。いい加減冗談言うのやめなさいよ」
転校生「……」
かえで「バカなこと言ってないで、早く家に帰るわよ。ママも、待ってんのよ。今日は早めに帰るって、言ってたし」
転校生「(天井から黒い空が見える。やっと夜が来たらしい)」
かえで「なによ。そんなに家に帰りたくないなら、あたしのところにでも来る? 泊めてはやらないけど」
転校生「(かえでさんは所々破れた制服と、ボロボロになった鞄を持ち直し、砂を叩いて学院の校門まで歩いていく)」
かえで「あたしには、帰る場所はあるから」
転校生「(崩壊した街の中を、廃墟の中を、砂埃が舞っている。また当てもなく、二人で歩いていく)」
かえで「転校生」
転校生「……」
かえで「なにぼーっとしてんのよ」
転校生「(かえでさんの目には、光が宿っていない。とっくに、俺たち以外の生徒はみんな力尽きて、消えてしまったというのに)」
転校生「かえでさんにも、受け止めてほしいです」
かえで「な、なによ。また変なこと言うんじゃないでしょうね」
転校生「(これからどうして2人で生きていけと言うのだろうか。未だにこの神からの無茶な依頼はこなせそうにない)」
かえで「ほら、帰るわよ」
転校生「(とりあえず、 次の目標は子を成し得ることだ)」
転校生「(正直、こんなことを思っている余裕はないのだが)」
かえで「早く……」
転校生「(このやり取りを、いったいこれから何回繰り返すのだろう)」
転校生「(死んだ目をしているかえでさんと目が合うが、特になにも言わなかった)」
??「るるる~~☆」
??「平凡な人たちが無様に抗うのを眺めるのは、愉快極まりないですね……☆」
おわり
皆あんガルやろうって話(クソゲー)
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