モバマスSSです。
地の分を含むのでご注意ください。
更新不定期。
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薄っすらと暗闇に包まれた街並み。
吐いた吐息は冷たい。
冷たい風が頬を打つ。
この季節になると寒さに耳元に痛みすら感じる暴力的なものを感じる。
……うむ、やってられん。
季節はクリスマスも終わり、年の暮れ。
街は正に師走、とでもいいたげな多くの人が行き交う様相であった。
かくいう俺も駆けずり回って仕事をなんとか回しているのだから人のことを言えた義理でもないのだろうけど。
「……さむ、さむ」
こんな日はとっとと自宅で暖かくしてお酒呑んで、寝るに限る。
半ば無意識に掌同士を擦る。
そして、辿り着いた一軒家、我が家である。
俺は、鈍い銀の輝きを放つ明らかに冷たそうなドアノブにポケットから鍵を取り出して刺そうとする。
だが、それよりも一足先に内側から鍵が開かれるほうが早かったようで――。
「えっへん」
開かれた扉の隙間から銀色の髪を纏った生首が生えてくる。
「どうですかぁ。このサンタ特有の気配察知能力!こうっ、あなたの気配をびびびっとですねぇ――」
自慢げな笑みを見せる銀髪生首。
なんだか、その表情が微妙にムカついたので、なんともなしに、冷え切った掌を銀髪生首の両頬に添えた。
「……ッォ!にょぎゅぉぉぉ!」
百年の恋も冷めそうな悲鳴が寒空とご近所に響いた。
「弁明を、どうぞ」
外は冷え切っていた。
だが、なぜか家の中の空気まで冷え切っている。
ついでに、目の前に立っている少女の表情は凍りついている。
普段は呑気そのものな表情を引き締めて銀髪生首、もといイヴ・サンタクロースは俺にジト目を向けていた。
「ついカッとしてやった」
悪びれずに俺は言う。
「寒い中帰ってくるあなたを優しく迎えてあげた私に……ですかぁ?」
胡乱げな視線。
「溢れ出る感情が抑えきれなかった」
「あの……その傍迷惑な溢れ出る感情でわたしは恥をかいたんですけど?」
確かに通りすがりのご近所さんもビクっとしながら振り返っていた記憶がある。
「正直、色っぽい声を出してくれるのを期待してた」
「……ご期待に添えました?」
冷たいジト目。
先程のあれがまるで宇宙怪獣みたいな悲鳴だと思った記憶は墓場まで持っていこうと思う。
イヴのこめかみが怒りにヒクついている。
少しだけ考える。
そして、俺は努めて真面目な表情を作った。
「色っぽいというよりはイロモノっぽくはあった思う」
「……んふっ、……ンッ、ごほんっ!」
一瞬、イヴが表情を崩してから咳払いをする。
そして、その掌を俺の頬にあて、こねくりまわし始める。
「笑っら!今、お前笑っらりゃん!」
「え~、笑ってないですぅ」
イヴは俺の掌の動きを加速させる。
整った顔つきをゆっくりとこちらに近づけてくるイヴ。
「悪いことをしたら言うことがあります」
「ごれんらひゃい」
「聞こえませんねぇ」
「ごめんらはい」
「聞き取れないですぅー」
「ごれんらはい」
十分ほどそんなやりとりを繰り返すと、ようやく俺の頬に押し付けた掌を剥がしてくれた。
「……?あの、どうしたんですかぁ、いきなり難しい顔して」
イヴの掌は柔らかく、そして暖かく、離れたそれが少しだけ惜しくなった。
そんなことを俺が言ったらやはり気持ち悪いと思われるのだろうか。
…………。
無言で俺はイヴの頬にぴったりと添えるように掌をつける。
俺の奇行に目を白黒させるイヴ。
だが、まぁ流石というべきか、十秒もすると平静を取り戻している。
「ご感想をどうぞ」
「…………あの、むにゅむにゅって仕返ししないんですか?」
ちょっとその答えは予想外だった。
「……前々から思ってたけど、やはり少しマゾっ気が」
「な、ない!ないですからぁ!もぅ~!」
“うわぁ、引いたわー”みたいな表情を作りながら言うと、大げさに手をぱたぱたさせながらイヴが否定を繰り返していた。
「……やっぱ中も寒いわ。よくこんな中で平然としてられるな」
外ほどではないが、家の中も相当に寒い。
暖房の温度設定がやはり低い。
……ありえん。
「私、雪国出身ですからねぇ」
……そうだった。
冬場でも薄着にダンボールまでなんでもござれのサンタ娘にこの話題は意味を為さなかった。
俺は黙って暖房の温度を上げる。
「あぁー、エコロジー精神は大事ですよぉ」
「俺を不快にさせるエコロジーなら滅びてしまえ」
ふと、ベランダへと続く窓ガラスへと視線をやる。
雲のない夜空には星々が瞬いている。
「今見える星の光って遠いものだと何百億年前の光だっていうけど、使い古された話でもやっぱ、ロマンはある気がする」
「そ、そうですねぇ」
イヴはなぜか夜空ではなく、別の場所に視線を向けている。
釣られて俺も視線を動かす。
イヴの視線の先では、なぜか庭に住み着いているトナカイ……っぽいなにか、ブリッツェンの鼻水が星明かりの下で神々しく輝いていた。
「おい、俺のロマンを返せ」
イヴはそっぽを向いて吹けない口笛をぷしゅー、ぷしゅーと吹いていた。
こたつ。
日本人の……いや、人類の叡智の結晶。
その中でも、大の大人が寝転がっても尚、余力のある大きめのこたつは素晴らしい。
夕食を終え、TVを流し見しながらこたつで横になり無為に時間を浪費するのは至上である。
程よい満腹感を感じながらビールを煽る。
程よく回ったアルコールとこたつの魔力で脳みそが溶ける。
嗚呼、ぬくい。
「んー?」
ぼんやりとした意識でTVに視線を向けながらビール缶を煽っていると隣から圧迫感。
「ぷはぁ」
隣から銀髪の生首が生えてくる。
中でなにかもぞもぞしているかと思えば潜ってたのか。子供かこいつ。
「……せまい。別の場所にいきなさい」
再びビールの缶を開けながら銀色生首に非難の目を向ける。
流石に一箇所に二人横になるのはきつい。
「いーじゃないですかぁ、なにも減らないんですしぃ。んふふ」
ただでさえ狭い中を転がって俺の肩に自分の肩ををぽんぽんとぶつけてくるイヴ。
一体なにが楽しいというのか。
「どうしよう。この娘うざい」
「……あの、なんかお酒入ってから、私への思いやりの心というか、オブラートに包む優しさが消えてません?」
多分、割りと最初からない。
一旦ここまで。
むらむらがおさまるまで頑張る。
おやすみなさい
発掘してきた。多分、この酉。
初めてSS書き始めた頃から使ってるから酉で見直すと中々クルものがある。
なんかあったほうがよさげだったら、多分これ再利用すると思います。
使わなくなってからはこのへん
関裕美「た、短篇集?」
モバP「うちに駄サンタが居る」
駆け出しな武内Pのパラレル日記
モバP「橘さんな日々」
モバP「望月聖にプロポーズされた」
モバP「橘ありすとだらだらだら」
モバP「サンタさんといちゃこらいちゃこら」
当たり前のように間違える。
多分こいつです。
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