シキちゃんは失敗したね (76)

しきフレSSです。

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どうしてもこの言葉を貴方に言ってあげたくて始めました。

自他共に認める天才なあたしこと、一ノ瀬志希にだって失敗はある。
例えば「つぼみ」がうまく歌えなかったこと。

希望ってなんなのかにゃー?
だって世の中は1+1=2だしー、
解を求めるための方程式に希望なんて入らない。
希望を代入する前に、
ジッサイの価を探しにいくべきじゃないのかにゃー。
たまーに問題に条件の書き忘れがあってそういう時は仕方ないねー。
解りっこない!
それは当然の結果だしー。

書き忘れられてた条件を見つけて、
代入する価が探せたなら、
普通に解けば答えは解ーる。
今では「つぼみ」もきちんと歌える。
それも当然の結果だしー。

だったら希望ってなに?
世の中の方程式を紐解けば結果は99%思った通りだ。
1%の見落としっていう、「つぼみ」みたいなマギレはあるにせよ。

だっていうのに、
だっていうのに、
フレちゃんから別れを切り出されるなんて、
そんな解は導けないんだよ。

あたしとフレちゃんは
レイジー・レイジーで2014年11月18日にデビューして、
LiPPSを経て、
結構な付き合いになるーっていうか、
ダッドを除いて一番長い付き合いだ。
あー、一応プロデューサーの方がほんの少し長いね。

その付き合いのなかで、あたしたちが恋人として付き合い始めたのはいつからだっけー。
ウソウソー、勿論正確に覚えている。
2016年2月14日。
フレちゃんの誕生日だ。

経緯ー? これは経緯って言って良いのかなー? を掻い摘んで話すと、
とりあえず、2016年1月31日にLiPPSが結成されて、あたしには仲間が増えた。
フレちゃんと出会った時この子トクベツだーなんてビビっと香ったりしたけど、
この時もトクベツだった。
あたしのような天才っていうか異分子? に仲間だってすごーい。
あたしがあるがままに居ても傷つかない仲間。
もしくは傷ついてもそれを糧にすらするような強度を持った仲間。
そんなの、
フレちゃんだけだと思っていたのに。
それが4人に増えたのだ。

そんな5人でのLiPPSは、
ライブが大成功に終わったってゆー結果は当然として、
結果と共にあたしは怖くなっちゃったんだよねー。

フレちゃんがあたしと居てくれるのは、
あたしみたいな強度があるのはこの世界にはふたりだけだし当然だと思っていたんだけど。
あたしはフレちゃんしか知らなかったんだけど。
でも知ってしまった。

あたし以外にも居るんだって。

LiPPSは勿論、少し周りを見ると、
天才でなくても、
いや天才だろうが無かろうがそんなことは関係なく、
今まで見たことがなかったはずの、強度を備えた人間は実は結構居るんだって。

あたしは、面白さを探して世界を渡り歩き、
フレちゃんを見つけて世界に面白さを見つけ、
アイドルに目を向けることができて、
この世界はどうやらあたしを飽きさせないことを知った。
それはこの世界を放り出さなくて済むっていう、
今まで探し続けていた、
おおよそ人生で最高の解を得られた瞬間だったはずだけど。
ほんとびっくりぎょうてーんだいはっけーん。
シキちゃんにはシキチャン平和賞をあげよう。
シキちゃんはこの発見でシキちゃんの世界を幾分平和にしましたー、
ってなったはずだけど。

フレちゃんの、宝石みたいに綺麗で緑色な丸い目は、
とってもとっても高性能なレーダーで、
あたしの、観察に長けているはずのくすんだ青い目よりも、
強度を備えたものをたくさんたくさん捉えているはずで。
じゃあ、
じゃあ、
フレちゃんの高性能で飽きっぽいレーダーが、
いつまでもあたしに向いている保証は、
フツーに考えてあり得なくなーい?
でもでも、そんな事が起こったら、
あたしは投げ出すはずだった世界に、
今度は世界の方からあたしが投げ出されてしまう。

こんなの核戦争だー世紀末だー。
世界は核の炎につつまれたー。
にゃっはー、今まで世界に冷たく当たってた仕返しかにゃー?
シキちゃんはシキちゃんのために、
今度はシェルターを発明してくれなきゃいけないんじゃないかにゃー。

あんまり連投よくないらしいので、続きは時間を置いて書きます。

大変失礼致しました。
上手くつけられているでしょうか。

続きです。

そんな核戦争を避けるべくー、
そこからのあたしの行動は本当に早かった。
早かったはずだが平和への道を模索するには時間がかかった。

ダッドが居なくなってしまった時から蓋をしていた感情に穴を堀り3日3晩(比喩ではなく言葉通りの意味でー)向き合って、
そこからどうやらこの感情の名前が愛だとか恋だとかの名前がついていることに気づき、
続いてフレちゃんを繋ぎ止めるには恋人になってしまえば良いのだと気づいた。

あたしが知っている限りのフレちゃんの過去の行動を3日3晩(これも比喩じゃなくてー)思い起こして必死で好感度を計ってどうやら告白はOKされるだろうとは気づいた。
一応シェルターの完成だ。

でもでもさらに3日3晩(もう頭がフル回転してて眠れなかったともいうー)徹底的に考えて自分に論理武装を施した。
これでこっちから戦争を仕掛けられるー。
目には目をー、核には核をー。
んー、やばんー。
和平の道を探すんじゃなかったのかにゃー?

平和的にーどう告白をすれば良いか3日3晩(寝ていなかった期間としては人生最長記録ー)調べ聞いて周り、
フレちゃんの喜の感情が最高だろう誕生日に狙いを定め、
勿論プレゼントも用意してー。
さあ和平の準備は万端だー。

最後に持っていたことにも気づかなかった
ありったけの勇気という感情まで持ち出し、
ってもうフレちゃんは色んなモノをあたしに見せてくれるよねー。
この12日間でシキチャン賞にはたくさんのシキちゃんが受賞待ちで、
それぞれの研究の共同研究者には、
必ずフレちゃんの名前が入ってるんじゃないかなー。
って話がそれちゃったねー。

とにかく勇気まで持ち出し、
フレちゃんの誕生日会が終わったタイミングで切り出した。

「好きです。私と結婚を前提に付き合ってください。」


この一ノ瀬志希をしてまずあり得ないような、
とてもとても真っ当な、
でもレイジー・レイジーの始まりとしては、
とてもとても自然に、
敬語でフレちゃんに切り出した。
その時の感情は「どうか神様ー!」だ。
遂に一ノ瀬志希というアイデンティティーが神頼みまでするようになったかー、
という外から見ている冷静なあたしを尻目に、
99%大丈夫なハズのこの告白という名の世界への和平交渉が、
1%もの確率で核戦争かと思うと、
答えを聞く前に失踪してしまいたかった。
世界は核の炎に包まれてしまうのかー。
キューバ危機のヤバさ、推して知るべしだよねー。
そんな心境で、笑顔で台詞を言えていたかどうかはフレちゃんのみぞ知るー。

そんなあたしの感情は知ってか知らずか、
今考えるとフレちゃんは知っていたに違いないけどー、
脳内戦争ゴッコまで知ってたかは知らないけどー、
フレちゃんは本当に笑顔で、
「私も一ノ瀬さんの事が大好きです。
…って、まったくもー待たせ過ぎだよ、シキちゃん!
いつどんな言葉で言ってくれるか、とてもドキドキしたよー☆
シキちゃんは焦らし上手なんだからー。
そんなとこもーラビュー☆」
なーんて、すんなりおっけーを貰ってしまったので、
あたしは「ありがとうございます」と、敬語から切り替えきれずに、
その場で倒れるように寝てしまったらしい。
恋は戦争ー!
でも世界は平和になってちゃんちゃんしゅりょーシャットダウンー。
ってまー、
なにぶん色んな感情が初めてで、
遂にシキちゃんの頭もオーバーフローしてしまったのであったー。
単純に寝てなかったしにゃー。

シキピューターがなんとか意味のある音を発して停止したあと、
救急車が呼ばれたりして大変だったらしいが、オールオッケー。
フレちゃんには「もう結婚直後にミボージンになったかと思ったよー!」なんて
ほんとに怒られてしまったけど、
成功したし、フレちゃんの記憶にも残っただろうしで、
世界は平和になってオールオッケーでいいのだ。

あとから聞いた話だと、
9日間失踪した(家にいただけなんだけどー)あと、
3日間誰彼構わず告白の仕方を聞いて回っていたあたしの噂を聞いて、
フレちゃんには大体当たりがついていたらしい。
やっぱりフレちゃんの目は多くのものを捉えてるー、
っていうかー、誰の目にもわかりやすかったかー。
そんであたしの目は近視眼的だ。
普通に近眼なんじゃないかにゃー。

続きはまた時間置いて書きます

ご丁寧にありがとうございます。
初心者スレで、
1日50レスくらいの極端な投稿は辞めておいた方が良いと見ましたが、
認識間違っていたでしょうか。

不慣れで申し訳ありません。
様子見ながら続き投稿していきます。

続きです。

病院で目を覚ましてからも、
レイジー・レイジーはホントに人騒がせだと、皆にもプロデューサーにも怒られて、
でも普段から不摂生な生活していることを理由に、
病院で検査っていう名目の、フレちゃんと一緒の時間を貰った。
あたしが休んじゃったので、
ほとんどレイジー・レイジーで一緒だったフレちゃんの仕事も一緒に休みー。
フレちゃん'sバースデーなのにあたしにもプレゼント!
サプライズだねー。
流石うちのプロデューサーは解ってる〜。

「やっほー!シキちゃん!ラビュー☆
好きだよー!愛してるー!」
「にゃっはっはー、あたしもー!
今日もよく来てくれたねー。」
なーんて、フレちゃんは毎日お見舞いに来てくれて、
まぁ、病院だからそんなにはしゃげる訳じゃなかったんだけど。

「ねぇねぇ!シキちゃん愛してるよー!」
「あたしもー!」
「あー動いちゃダメダメー!アタシがリンゴ剥いてあげるからー☆
はいアタシにあーん☆
うーんデリシャース!
恋ってリンゴの味がするよねー!しないかなー?
スッキリサッパリー?
今フレちゃん恋の味噛み締めちゃってるねー!
シキちゃん好きだよー!
シキちゃんも噛み締めたいー?
シキちゃんにとってはミカン味かなー?
今度こそあーん☆」
「もぐもぐ、フレちゃんあたしもー。
んー、このミカン酸っぱいよー!」
「おおぅ、それいけまセーン!
酸っぱいのは初恋だけでオッケー!
あーでもこれはシキちゃんにとっては初恋かなー?
じゃあ酸っぱい方が良いのかなー?
フレちゃん的にはーあまーいイチゴでも良いと思うんだー。
大好きだよー!はいあーん☆」
「あたしもー!
うーん、このイチゴも酸っぱい!」
なーんて結局はしゃいでいたら、
検査が終わった途端に病院からは放り出されちゃったー。
一応、個室だったハズなんだけどねー。

それからそれから、
私たちは結婚を約束した恋人としてー、
病院と同じカンジで毎日を過ごした。

部屋にいても、
「おっはよー! シキちゃん愛してるー!
昨日は何時に寝たのかなー!
今日は一緒にゴロゴロするよ〜。」
「あたしも〜。
ゴロゴロってー、
日本では雷様におヘソ取られちゃうってゆーから、
シキちゃんはお布団から出られませーん。
むにゃむにゃかしこー。」
「じゃあ、今日は一緒にお昼寝しよっかー! 朝だけどー!」とか、
レイジー・レイジーのライブの前でも、
「シキちゃん愛してる〜☆ ライブ頑張ろうね〜。」
「あたしも〜! 頑張ろうね〜。絶好調! 今なら匂いだけでフレちゃんの姿が見えるよー。」
「すごーい! でもでもアタシもー、目だけでーシキちゃんの姿が見えるよー☆」
とか。とかとか。
毎度毎度愛を囁いてバカップルだね〜。
フレちゃんは幸せであたしをダメにする〜。

もうこのお話はー、
あとはどこか同性愛が認められている国で式を上げてー、
346プロの皆に祝福されてー、
ふたりはアイドルとして末永く幸せに暮らしましたー、
めでたしーめでたしー。
だったはずなんだけど、
告白から1年と経たずして、
(今日は2017年1月27日だ)婚約生活は終わりを告げそうだった。
もう普通に近眼、でいっか、なあたしの目は、
いったいフレちゃんの何を見落としていたのだろうか。

「一ノ瀬志希様
結婚を前提にお付き合いをさせていただいておりましたが、
婚約を解消させていただきたく思います。
宮本フレデリカ」

手紙だった。
あたしの告白の言葉に沿ってか、
おおよそフレちゃんに似つかわしくない敬語で書かれていた。
レイジー・レイジーとしても、敬語は始まりだけで、
あとはレイジー・レイジー(だらだら)と続いて行くはずなので、
終わりにはやっぱり似つかわしくない。

ラブレターの逆(もしかしたら名前がついているのかもしれないがあたしは知らない)なお別れの手紙を、
1度読むだけで忘れられないあたしの脳に、
わざわざ3度刻んで間違いが無いことを確認して、
放り出すはずだった世界に放り出されたことを確認したあたしは、
それでも認めたくなくてフレちゃんを探しに外へ飛び出した。

別にフレちゃんは隠れている訳でもなくて、あっさり見つかった。
むしろ、全力疾走で通り過ぎそうだったところを呼び止められた。
「やっほー、シキちゃん、愛してるー!
そんなに急いで何処へ行くのー?
もしかしてアタシのところかなー?
もしかしてアタシって愛されてるー?」
LiPPSの皆とお喋りしていたらしい。
いつも通りないつも通りじゃない反応に、
あたしはこの手紙がフレちゃんからではないってゆー、
シキちゃんの近眼に思い至り、
胸を撫で下ろして、
しかし走っていた息は整えられず、
無言で手紙を突き出した。

「あー! オテガミー読んでくれたんだー!
そう言うわけでー、婚約は解消ってことで良いよねー?」
シキちゃんの近眼は、しかし今回は見落としはしなかったらしい。
あたしを含め、しかしフレちゃんを除いたLiPPSの皆が驚きに息をつめる。

「…フレちゃん、冗談よね?」
少しばかりの沈黙を破って、奏ちゃんが尋ねる。
ごめんね、奏ちゃん。
キミは本当に聡い。
まだ息が整わないあたしの変わりに尋ねてくれてありがとう。
でも、シキピューターの信頼度の怪しいレーダーでもハッキリ解る。
フレちゃんは他人を悲しませる冗談はホントにへたっぴなんだよ。
だから冗談っていうのはあり得ないんだー。
「ううん。お別れのラブレター?
逆のラブレター? ギャクレター!
そう、ギャクレターをシキちゃんに渡したんだー。
冗談じゃないしー嘘でもないよー。」
やっぱり見落としはなかったようで、
ただ手紙を肯定する言葉が、昨日も柔らかかったフレちゃんの唇からこぼれた。

「どういうことフレちゃん!
だってレイジー・レイジーは…!
昨日だって楽しく…今だって…!」
怒って詰め寄る美嘉ちゃんの声は、
途中から泣き声になって、
意味をなさない音になっていく。
ごめんね、美嘉ちゃん。
キミは本当に優しい。
私たちのために泣いてくれてありがとう。
それを聞いてフレちゃんは表情は変えず、
しかし泣きそうな匂いをさせながら答えた。

「アタシはシキちゃんの事が本当に大好きだよ。好きで好きで大好きだよ。
シキちゃんは?」
あたしもだよ。
あたしの整わない息はそれを言葉にしてくれない。

「だったら、どうしてか説明してくれてもええんちゃう?」
ごめんね、シューコちゃん。
キミは本当に周りを見ている子だ。
キミは奏ちゃんが一歩引いたのに気づいた。
きっと奏ちゃんはあたしがまだ解けない何かに気づき、
もうこれ以上踏み込まないと決めたのだろう。
シューコちゃんはそれに気づいて、
代わりに踏み込んでくれてありがとう。

「アタシはシキちゃんが好きなんだけど…うーん…」
フレちゃんはハッキリこう言った。

「シキちゃんは失敗したね。」

絶対にない、と思っていた。
(あたしが絶対っていう言葉を使うなんて!)
よりにもよってフレちゃんから、
世界から放り出される言葉を聞くことになるなんて。

世界から放り出されて呆然としているあたしをよそに、
外から見てる冷静な自分は、解を探す。
フレちゃんは本当に色んなモノをあたしに見せてくれるねーなんて思いながら、
平行して色々な思考が走り出す。
ああ、あたしって悲しい時はこんな匂いなんだ。
フレちゃんのこの匂いも初めてだ。
この世界はやっぱりあたしを飽きさせない。
あたしはこの世界から放り出されたくない。
また世界を渡り歩いてもフレちゃん以上の面白さを見つけられる自信はない。
何より思い出としてフレちゃんをリピート再生したくない!

だから、並列な思考を束ねて、
代入する価を、条件を、探す。

フレちゃんがどうしてこの手紙を出したかは、
ちゃんとした解が用意されている。
その解を求めることは、
もう一度世界を渡り歩いてフレちゃん以上の面白さを見つけるよりは絶対簡単なはずだ。
だって奏ちゃんが解ったんだから。
あたしの方が絶対知っているハズのフレちゃんの答えが解らないハズはない!
一ノ瀬志希っていうアイデンティティーがさらに2回も絶対を使うなんて。
でも一ノ瀬志希にとって、これは絶対だ。
代入する価が探しきれなくてももう知らない。
ここで正解することは絶対なんだ!

「ごめんね、皆にまた迷惑をかけたね。」

あたしはようやく整ってくれた息に感謝して、
姿勢を正す。
シューコちゃんが気づいて前を開けてくれる。
美嘉ちゃんが、無理矢理涙を止めて眼差しで応援をくれる。
奏ちゃんは、半分呆れた顔であたしに微笑んでくれる。

そして、フレちゃんは、こっちの言葉を待ってくれている。

あたしに、一ノ瀬志希に、世界は繋ぎ止められるだろうか。

今までの話からは、
代入する価が足りないけれど、
足りない条件には希望を詰めこんで、
笑顔で口を開く。
本当に笑顔を作れていたかは、今度はLiPPSの皆が知っている。

「好きです。もう1度、私と結婚を前提に付き合ってください。」

「……やっと一ノ瀬さんの口から、2度目の好きと言う言葉が聞けて嬉しく思います。
はい、こちらこそよろしくお願い致します。」

果たして、あたしは世界を繋ぎ止めた。

続けてあたしは世界を抱きしめる。

「にゃはっはー! フレちゃん好きだよー!」
「アタシもー! 好きだよー!」

なんのことはない、

「フレちゃん! 愛してるー!」
「シキちゃん! 愛してるー!」

あたしは今までフレちゃんに、

「フレちゃん! 好きだよー! 大好きー!」
「シキちゃん! 好きだよー! 大好きー!」

何1つ愛情を言葉にしてこなかったのだ。

本当に、本当に、本当によくある陳腐な恋愛話だ。
言葉にしないと伝わらない。
言わないと解らない。
スレ違いでカップルが別れる。
天才なんて呼ばれているあたしが、
そんなよくある恋愛話を演じていたなんて。
可笑しくて涙が出た。

こんなにもあたしが変わったのに。
この解は解りきってるから、
当然だから、
わざわざ言わなくて良い、なんて。
フレちゃんもあたしが愛しているのを当然だと思ってくれていると見落としていて。
ホントに可笑しい。

あたしは、笑いながら、涙を流しながら、フレちゃんに「好き」と言い続け、
フレちゃんは、笑いながら、あたしに「好き」と答え続け、
ようやくあたしの「好き」が落ち着いた頃、フレちゃんは切り出した。

「シキちゃんも人間だったでしょ?」

「えっ?」
「この言葉をシキちゃんに言ってあげたくて。」

あたしの近眼ではもうなにを見落としていたかも解らない。
必死で目を凝らすけれど、あたしの目は涙で溢れていて、
レーダーとしての機能を果たしていない。
だからお願いだ、聞かせて欲しい。
フレちゃんの目は何を見ていたかを。
フレちゃんはいつもあたしに言ってくれていたね。
今度もあたしに言って欲しい。

「天才だとかそうじゃないとか、
強度があるとかないとか、
そんなこと関係なくて。
人間は皆傷つくんだよー。
シキちゃんも、
フツーの恋愛で一喜一憂して、
フツーの恋愛で傷ついて、
皆のように世界にしがみつかなきゃ生きていけない、
人間なんだって知って欲しかったんだー。」

知ってる。
今は知っている。
天才だなんて言われていても、
一番大切な人に上手く接するができない、
あたしも失敗ばっかりな人間なんだって。
そしてちゃんと口にする。

「知ってるよー。教えてもらったよー。
あたしはフレちゃんに深く深く傷をつけられちゃった。
あたしもどうしようもなく人間だったよ。」

言わなきゃ伝わらないって学んだのだ。

「えへへー、そんでーアタシも人間なんだよー。
だから、シキちゃんが口にしてくれなくてもー、
シキちゃんの愛が変わらないことを当然だと思っていたけど、
ホントに当然と言って良いか、不安だったんだー。」

それと
と、少し言葉を探しながら、フレちゃんは続ける。

「どうしようもなく自由なシキちゃんを、アタシに繋ぎ止めようって思ったんだ。
シキちゃんに大きな傷をしるして、
この傷はアタシがつけた傷なんだって自慢したかったんだー。
こっちは本当にアタシのワガママ。
ワガママ言ってごめんね。」
「にゃっはっはー、そんな事ないよー。ありがとう。」

フレちゃんもあたしと一緒だった。
それがとてもとても嬉しい。
あたしは世界としっかり繋がっている。

「大好きだよーフレちゃん」
「えへへー、大好きだよーシキちゃん」

あたしはもう一度口にする。
フレちゃんも答えてくれる。

もう笑顔は自分でも上手く作れていないのが解って、
途中からフレちゃんも泣いていて、
奏ちゃんは呆れた顔のまま笑っていて、
美嘉ちゃんは泣きながら笑ってくれていて、
シューコちゃんはただ見守りながら笑ってくれていた。

だいぶん時間が経ってしまっていたようで、
様子がおかしかった私たちは誰かに見つけられ、
連絡を受けただろうプロデューサーに空いている練習場に隔離された。
説明を求められたが、答えは簡単だった。
フレちゃんと視線を交わして、ただ一言、

「「痴話喧嘩ー」」

これ以上、ぴったりな言葉もないだろう。

「そうか。仲直りはできたのか? そうか。なら良かったな。
全くレイジー・レイジーはとても人間らしいよ…」
なーんて言われちゃって、流石に私たちのプロデューサーだった。
よく見てるー。
視力は3.0とかかにゃー?
違うにゃー、あたしが近眼なだけで、
たぶんプロデューサーは1.5くらいで、
しかも皆そんなに変わらないんだろうにゃー。
これも違うにゃー。
皆視力はバラバラなんだよねー。
人間だしねー。

それから、あたしとフレちゃんは迷惑をかけた皆に謝って回り、
でも、謝ったことでさえもフレちゃんと一緒だととてもとても楽しかった。
楽しくて楽しくてふたりとも笑ってしまって、また怒られた。
こんなことって初めてだ。
フレちゃんは、ホントに色んなモノをあたしに見せてくれるね。
これからも色んなモノをあたしに見せてね。
ヨロシクどうぞー。

結局、
あたしはなんでも上手くできる天才のようでいて、
でもとてもとても恋愛がへたっぴな人間だった。
フレちゃんはあたしほどとはいかないけどなんでも上手くできて、
そしてとてもとても恋愛が上手な人間だった。

あたしは失踪しなくなり、
いつもフレちゃんのそばに居て、
そんなふたりは、
よくあるレイジー・レイジー(だらだら)なフツーの恋愛を経て、
これからもレイジー・レイジー(だらだら)と毎日を過ごして幸せに暮らすのだー。

今度こそ、れいじーれいじー!

違った!

めでたしーめでたしー!

以上、読んでくださった方おられましたらありがとうございます。

また、不慣れで申し訳ありませんでした。
普段SSを書かない人間なので次回があるかわかりませんが、
何かSSを書くことがありましたら気をつけるように致しますので、
よろしくお願いいたします。

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