僕の名前は斉木楠雄。DTである。 (41)
僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。
もちろん、そんなことが世間にバレたら大変な騒ぎになる。
それゆえ普段は超能力者であることを隠し、ごく普通の高校生を装って暮らしている。
放課後、いつもの喫茶店にコーヒーゼリーを食しに来たわけだが…
相卜命「やっほ♡」
・・・やはり先に来ていたか。
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相卜命「いやさ、クスオぜってーここに来るって思ってたらマジで来たじゃん?これもう運命じゃね?あたしら付き合った方がいいんじゃね?」
こいつの名前は相卜命。見た目のギャルっぽさからは想像も出来ないかもしれないが予知能力を持つ異能力者だ。
相卜命「あっ、言っとくけど今回は予知能力使ってないからサ、てか別にそんなことしなくてもクスオのことなんて分かっちゃうし~♡」
僕にも予知能力はあるが、こいつのように見たい未来をピンポイントで導き出すことは出来ない。この点においては相卜には敵わない。
相卜命「それにしてもわざわざ歩いてここまで来てんのマジメンディーじゃね?孫悟空みたいにシュンッっとやってくればよくね?」
前にも言ったと思うが僕は極力超能力を使わないようにしている、そんなことをしてバレたら余計メンディーだ。
相卜命「えーっ、せっかく便利なのにモッタイねーじゃん!」
こいつは僕の正体を知っている数少ない人間の一人だ。こいつには隠し切れないと判断し打ち明けたが…
・・・あれ以来、僕の平穏なティータイムはどこかへ行ってしまった。
相卜命「てかさ、クスオって他にもいろんな超能力使えるじゃん?やっぱ透視ぐらいは朝飯前なわけじゃん?えっまさか服まで・・・?」
確かに僕には透視能力がある、自分の意志とは関係なく発動する欠陥能力だがな。
相卜命「もうクスオ~♡そんな見つめたらやだ~♡恥ずかしいし~♡」
残念ながら女の裸に興味は無いぞ。
相卜命「えっ…ひょっとしてコッチ系だったりすんの?」
・・・BLではない。
相卜命「クスオっちさぁ、そんな能力あるんだったらエロいことやり放題だよねぇ」
馬鹿にするな、僕はそんなことのために超能力を使ったことは一度もない。
相卜命「えっ!?一度も!?信じられねぇー・・・それでもDKかよ・・・他のDKはそれこそサルだってゆーのにサ・・・」
相卜命「んっ・・・?てことはだ、クスオひょっとして・・・DTじゃね?」
…………こいつはマジでメンディーだ。
相卜命「いやもう絶対そうじゃん!DT以外考えられねえって!普通に恋愛をしてとか絶対やってないっしょ!」
・・・たしかにそうだ、僕はDTだ。だが別に何とも思っていない。
相卜命「ふーん・・・クスオがDTかぁ…ムフフ・・・」
クソッ・・・僕としては何とも思っていないことだが…なぜか弱みを握られたような気分だ・・・
相卜命「イイって!これはアタシとクスオだけの秘密♡あっ、なんなら2人で今から・・・」
目良千里「お待たせいたしました~!コーヒーゼリーです!」
相卜命「あ~!ちょっといまいい所だったのにちさぽよ~!!」
さて、さっさとコーヒーゼリーを食べて帰るか
翌朝――――――
鳥束零太「斉木さん!おはようございます!」
こいつは鳥束零太、霊能力者が使える異能力者だ。相卜と同様、こいつの能力も僕が持っていないものだ。
登校中に面倒な奴と出会ってしまった。
鳥束零太「いや~斉木さん、実は面白い情報を浮遊霊から耳にしましてね」ニヤニヤ
鳥束零太「斉木さん、DTなんスか?笑」
ほら、面倒な奴だろ?
鳥束零太「いや~まさか斉木さんがDTだとは・・・」
スパッ
ピタッ
鳥束零太「あ・・・あ・・・今たしかに斬られ・・・」
おっと、手がすべって身体が切れてしまったな。とっさに気付いて身体を元通りに出来たが次に手がすべったらどうなるか分からないな。
鳥束零太「す、すいません・・・!まさかそんなに気にしてたとは・・・」
勘違いするな、僕は気にしてなどいない。
鳥束零太「でもまさか斉木さんがDTだったとは・・・」
そもそもお前だってDTだろうが
鳥束零太「えっ!どうしてそれを!?超能力ッスか!?」
僕じゃなくてもみんな知ってると思うんだが
鳥束零太「俺のことはいいんスよ!斉木さんは超能力があるじゃないッスか!そんな力を持ってて今まで一度もやってないなんて・・・ちゃんとアレついてるんスか!?」
スパスパスパ
ピタッ
鳥束零太「…あ・・・あ・・・」
おっと、足もすべったな。
学校――――
キーンコーンカーンコーン
今日も授業が終わった、さて帰るとするか…
燃堂力「よお相棒、らーめん食いに行こうぜ」
海藤瞬「欲望が渦巻くこの街で俺たちを狙ってる奴がいる・・・クク・・・返り討ちにしてやろうぜ斉木・・・」
・・・いつものことだ。しょうがない、ついていってやるか。
復元能力は同じ対象に一日一度までじゃなかったっけ?
ガラガラガラ
燃堂力「おっちゃん!ラーメン3つな!」
鳥束零太「あっ!斉木さん!」
・・・またお前か…どうしてここにいる?
鳥束零太「(俺っちだってラーメンぐらい食いますよ!でもやっぱ斉木さんもラーメン食いに来てるってことは同じDTとして思考が似通ってるってことッスかねぇ…)
カッ
ボワッ
ジュワー
おっと、パイロキネシスでお前のチャーシューを炙ってやろうと思ったが消し炭と化してしまったな。
鳥束零太「(すいません!すいません!)」
読者のみんなに誤解しないでもらいたいのは、僕はDTであることが恥ずかしいという訳ではないということだ。
女性に興味がないという訳でもない。僕が今までDTであるというのは、そういう風に思える女性に出会えてこなかったからだ。
鳥束に関しては奴の僕を小馬鹿にしたような態度が純粋にムカつくというだけだ。
鳥束零太「(いや、でも別にDTってバレても良くないスか?斉木さんが非DTっていう方が逆に目立ちますよ、マジで)」
僕としては僕に注目が集まるだけで御免だ。話題にされるだけで面倒なんだよ。
分かったらさっさと消えろ。
鳥束零太「(はいはい、分かりましたよーっと)ごちそうさんでした~んじゃ!」
鳥束零太「ヤンジャンでも買って帰るか…ってアレ?あの巨乳のねーちゃんは・・・」
相卜命「(うわっ・・・チ〇コオーラのキモナンパ野郎じゃん・・・マジ最悪なんですけど)」
鳥束零太「あっ!相卜!」
相卜命「あ、うん。何か用ある感じ?」
鳥束零太「なんだよつれねーじゃん、俺たち斉木さんと3人で秘密共有し合ってる仲間じゃないッスか」
相卜命「は?あんたと組んでるつもりはないんだけど?アタシはダーリンと2人で十分だから」
鳥束零太「まぁまぁ、そう言うなよ。俺だって一応斉木さんと秘密の共有してんだからさ」
相卜命「そんなこと言ったってレベルがダンチだから。アタシはクスオのあんなことやこんなことまで知ってるっつーの」
鳥束零太「ふーん、じゃあ斉木さんの経験人数とかも知ってるッスか?」
相卜命「そ、そんなプライベートな情報、アンタに教えられるわけないでしょ!」
鳥束零太「おや?答えられないッスか?それじゃあ斉木さんとの絆とやらも大したことないッスね笑」
相卜命「くっ・・・(本当のこと言ったらうちのダーリンがDTだってことがこのチ〇コ野郎にバレちまう・・・でも言わなきゃアタシがこいつに舐められる・・・)」
相卜命「…経験人数は分かんないけど、DTじゃないって言ってたよ(ごめんダーリン・・・これからアタシが筆おろしするからマジ許して!)」
鳥束零太「…!!嘘ッス!!そんな馬鹿な・・・斉木さんは童貞だって・・・」
相卜命「う、うちのダァがDTなわけねーじゃん?何言ってんだドーテーはテメーの方だろうが!」
鳥束零太「そんな・・・そんな・・・嘘だ・・・」ダッ
次の日の放課後―――
相卜命「…ってわけ、嘘ついてごめんねダーリン♡」
僕がDTじゃないって聞いただけでそんなにショックを受けるか?
相卜命「てかさ、あいつクスオがDTだってこと知ってたっぽいけど言ったの?」
言ってはいない、あいつが霊能力でどこかから仕入れてきた情報だ。
まったく・・・僕らが話しているのを聞いていた浮遊霊でもいたのだろう。
相卜命「うげっ・・・あいつそんな盗聴みたいなことまで出来んのかよ・・・」
相卜命「チ○コオーラの誤解を解いとかなくてもいいわけ?あいつクスオが非DTだって思ったまんまだと思うよ」
いや、もうそれでいい。DTだって知ってからの僕に対するあのウザい態度はもううんざりだ。
勘違いしていてくれれば勝手に僕のことを畏れるに違いない。
相卜命「じゃあ・・・お詫びと言っちゃなんだけど・・・これからアタシが筆おろしを・・・」
さて、帰ってDBでも読むか。
鳥束零太「グスンッ・・・嘘だ・・・斉木さんは仲間だと思ったのに・・・信じさせて裏切るなんてあんまりッスよ・・・」
夢原知予「あら・・・鳥束くん・・・?」
鳥束零太「ああっ!夢原さん!ちょっと聞いてくださいよ!」
鳥束零太「斉木さんが非DTだったんスよ!俺もう裏切られたとしか思えないッス!ウアーッ!」
夢原知予「そ、そうなの・・・、つらいだろうけど頑張ってね…」
夢原知予「まさかあの斉木くんが・・・これはスクープよ!」キランッ
翌朝――――
ざわ・・・ざわ・・・
なんだこのざわつきは?福本作品じゃないんだぞ
「おい、まさかあいつがな・・・」
「いや、でもあいつのことよく知らねえからなー」
「ねえ、聞いた??ほら、あの人」
「えーどんな人だったっけ?」
なぜかみんなが僕のことを見ている気がするが…気のせいだろう
燃堂力「よお相棒、お前DTじゃねえんだってな」
気のせいにしようと思っていたのにな、やっぱりムリだったか
海藤瞬「おい斉木!ど、どういうことだ俺たちに黙ってるなんて・・・説明しろ説明を!」
黙ってるに決まってるだろ、何もやってないんだから
燃堂力「で、DTってなんだ?」
・・・みんなの脳がお前レベルだったらよかったのにな
海藤瞬「なぁ!?斉木!?俺たち仲間じゃなかったのかよ!?なんで裏切るようなマネしてんだ!?なんとか言えよぉぉぉぉぉい!?」
童貞にありがちな仲間意識の典型だな。こいつもある意味鳥束と同じかもしれん。
こいつらはどうにかできる・・・だが、問題は・・・なぜかこの噂が学校中に広がっているということだ。
相卜、鳥束・・・聞こえるか?
相卜命「!」
鳥束零太「!」
聞こえてるようだな、お前らだけで屋上まで来てくれ。
やれやれ、困ったもんだ。まるで学校中、今まで僕の存在を知らなかった人間までこぞって僕の話をしているようじゃないか。
僕が非童貞かもしれないというだけでここまで騒がれるのは納得いかないが…読者にもわかりやすいよう少し状況を整理してみよう。
童貞か非童貞か、処女か非処女か。一般的な高校ではこのことが持つ情報、イメージというのは非常に大きいものとなる。
例えば君のクラスにイケメンで高身長、サッカー部のエースで生徒会長までやってるAくんがいたとする。
世間一般的な感覚からすれば女性から引く手あまたであろう。
ここで「Aくんは童貞である」という要素を加えてみよう。彼のことをどう考えるだろうか?
おそらく
「あんなにモテそうなのに・・・ひょっとして性格に問題があるのかしら?」
「特殊な性癖があるのかも」
「いや、きっと足が臭いんだ」
などと言ってAくんにマイナスのイメージをもつに違いない。
「結婚するまで純潔であろうとしているに違いない!」
とプラスのイメージに傾くことはこのケースでは非常に少ないだろう。
人間は自分の常識で理解し得ない物事に対しては、自分の価値観に沿って都合の良い解釈を独自に作りあげているのだから。
そして問題は今回の僕のことだが…
そもそも僕はクラスの人間、いや学校中の人間から「斎木楠雄は童貞か非童貞か?」などという興味の対象となり得ない存在だった。
いや、むしろ僕みたいな何も喋らない、何を考えているのか分からない奴は「童貞に決まっている」というのが大方の人間の思う所だろう。
君のクラスにもきっといるだろう。周囲から孤立していて、周りから興味を持たれることのない人間が・・・
おっと、読んでいる君自身がその可能性もあるな。これは失礼。
もっとも、君が好きで孤立しているのであれば問題ない、僕も同じだ。
さて、本題に戻ろう。
本来、興味の対象になり得ないそんな僕に「斉木楠雄は非童貞である」という噂が立ってしまった。
このことによって何が起こり得るだろうか?
読者のみんなも知ってのとおり、この高校にいる奴らはなぜか童貞臭い奴が多い。
理由は定かではないが…奴らのほとんどが変わってる人間だということはお分かりいただけるだろう。
童貞にコンプレックスを持っているこいつらが「斉木楠雄が非童貞である」ということを知る。
すると、今まで眼中にもなかった僕の存在に一目を置き始める。
このことは女子にも影響が波及する。
異性として、いや、存在すら認知していなかった男が非童貞であるということに「いったいどうして・・・?」と疑問に思うはずだ。
そして、僕にとっての最大の問題なのだが…さきほどのイケメンのAくんの例と僕のケースで異なることがある。
イケメンのAくんが童貞であるという矛盾に対する疑問、これを解決するための理由は比較的簡単に思いつくだろう。
・・・だが、「冴えない斉木楠雄がなぜ非童貞なのか」という疑問に対して、自ら納得できるような答えを編み出すことは出来ない。
もともと僕がどんな人間か知らないということもあって、僕のことを探ろうとしてくるだろう。素性を隠して生きている僕にとっては非常に生きづらくなる。
そもそも僕はスクールカーストの中に入ってすらいなかった、いわば不可触民だ。
にもかかわらず、この噂をきっかけに学校中の人間から注目の的、興味・嫉妬の対象となりカーストの上位に入らざるを得なくなってしまうのだ。
冗談じゃない。僕は注目を集めずに一人で静かにしていたいんだ。
・・・少し長くなってしまったが、どうやら奴らがもうすぐ屋上につくようだ。
読んでくださってる方には遅筆で申し訳ありませんが、本日の更新は以上となります。
・・・さて、説明してもらおうか
ジャキン
鳥束零太「ちょっと待って!!お願いだからそれだけはやめて欲しいッス!!」
相卜命「おい!クスオの噂が広まってんのはテメーのせいだろ!!大人しく観念しろ!!」
鳥束零太「もとはと言えば斉木さん、アンタが悪いんスよ!!同じ童貞仲間だと思って信じてたのに・・・裏切られたショックでついポロッと夢原さんに言ってしまっただけのことなんスから!」
相卜命「この野郎!開き直りやがって!!」
まぁよせ、相卜。だいたいお前が嘘をついたことがそもそもの発端だ。
鳥束零太「えっ・・・じゃあやっぱり童貞なんスか?」
ジャキンジャキンジャキン
鳥束零太「わ、分かりました!すいません!怖いんでそれしまってください!!」
ともかく、一刻も早くこの事態を収拾せねばならん。
相卜命「どうするつもりなん?」
一番手っ取り早い方法は・・・
カポッ(頭の制御装置を外す音
この世界の常識を変えることだ、「冴えない男子高校生が非童貞であっても何ら不思議ではない」と
鳥束零太「えっ!?そんなことできるんスか!?」
これによって僕への噂はたちまち消えるだろう。
ただ、これに伴う新たな問題が浮上する。
僕みたいな奴が非童貞であってもおかしくない世界、つまり高校生なら誰もが性行為を経験していることが当たり前になるような世界に変わるということだ。
鳥束零太「なんかマズイことでもあるんスか?いいことづくめじゃないッスか?」
相卜命「何も問題なさそうな気ぃするけどなー(むしろアタシにとってはクスオへのアタックの口実も増えるし願ったりなんですけど♡)」
お前らは何もわかっちゃいない。
誰もが性行為を経験しているという世界だ、当然みんなが性に対してオープンになる。
望まぬ妊娠、性的暴行、性病の蔓延、その他諸々の社会不安を引き起こし、最終的に世界が破滅する。
鳥束零太「ちょ、ちょっと大げさじゃないスか?」
もっとも、世界破滅まで行かなかったとしても、僕が望むような平穏な学園生活を送ることは出来ない世界に変わってしまうだろう。
性行為をするのが当然の世界で、非童貞と触れ込みがある僕にも当然やってくるだろう誘いを頻繁に断るようなら、それはそれで逆に目立ちかねない。
というわけでこの方法はリスクが大きすぎる。他の方法を考えなければならない。
鳥束零太「そうか~…残念だな~・・・くぅ~・・・」
安心しろ、世界が変わってもきっと貴様の所には誘いは来ない。
照橋心美「みんな、おはよう!」
男子一同「おっふ・・・おはようございます!」
照橋心美「(フッ・・・今日も完璧美少女の私だわ)」
ざわ・・・ざわ・・・
照橋心美「…なんだか今日は騒がしいわね」
「いやぁ…しかしあの斉木って奴がなぁ」
「ひとは見かけによらないってことだよな」
照橋心美「(斉木の話題・・・!?私を差し置いて話題の中心になるなんて・・・あいつ何かやったのかしら!?)」
夢原知予「心美、おっはよー♡ねえ、もう聞いた?」
照橋心美「えっ、うーん・・・何のことかしら?(どうせ知ってんでしょ!勿体ぶってないで早く喋りなさいよ!!)」
夢原知予「実は斉木くん、あんな感じだけどDTじゃないんだって!」
照橋心美「斉木くんが・・・DTじゃない・・・?えっ・・・?(てことは私以外の誰かと・・・まさかそんな・・・私が・・・負けt・・・)」
フラッ バタン
夢原知予「キャー!!ねえどうしたの!?貧血!?」
親衛隊「照橋さんが倒れられたぞ!!すぐに保健室にお運びするんだ!!」
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