・基本的に台詞のみで話を進行します。
・わかりにくい場面もあると思います。ご想像にお任せします。
・オリジナルキャラが出ます。基本的に、敵役です。
・書き込み等お任せします。
・投下開始・停止等の書き込みはしませんので、ご自身でご判断ください。
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………………最終決戦 ぴかりが丘
真央「うっ……えぐっ……」
真央(街中、赤いサイアークだらけだよぅ。いまは隠れてるけど、見つかったら、きっと……)
ドーン!!
真央「ひっ……」
真央「お兄ちゃん……お母さん……」
ガサッ
真央「!?」 (サイアークが、目の前に……!)
サイアーク「サイ……サイアーク!!」
真央「ひ、ぁ……」(もう、ダメ……わたし……)
真央「たす、けて……」
真央「助けて、プリキュアー!」
――――ッザ……!!! ッッッッド!!!!
サイアーク「サイ……!?」
真央「はぇ……?」(サイアークが、吹っ飛んで……)
真央(助かったの……?」
?「大丈夫ですか?」
真央「プリ、キュア……?」 (見たことがない、きれいなプリキュア……)
?「大丈夫なようですね。間に合ってよかったです」
真央「見たことがないプリキュア……あなたは、誰?」
?「あまり名乗らないよう言われているのですが……」
?「はじめまして。ぴかりが丘の女の子。わたしはキュアハーティネス――」
?「――アクロポリスプリキュアの一員です」
………………数ヶ月後 ぴかりが丘 ブルースカイ王国大使館
増子『幻影帝国の脅威も消え、世界中が平和になりました!』
増子『しっかーし! わたしはここで、とある重大な情報を入手いたしました!』
増子『なんとなんとー! 世界中の人々が、あるプリキュアの存在を口にしているのです!』
増子『そのプリキュアは、世界中のどこにも存在しないプリキュアですが、』
増子『赤いサイアークが世界に溢れたあのとき、世界中に現われ、多くの人々を救ったそうなのです!』
増子『しかして、その名は――』
増子『――アクロポリスプリキュア!』
プツッ
ひめ「あーっ! テレビが消えたー!」
いおな「テレビは勉強が終わってから」 フン!
ひめ「そんなぁ~。いおな、ひどいよ~!」
いおな「ひどくないわよ。わたしたち、明日から三年生なのよ? 受験生よ! もう少し自覚を持ちなさい!」
ゆうこ「でも、ちょっと興味深い話をしていたね」
ゆうこ「アクロポリスプリキュアなんて、たしかに聞いた事ないよ」
いおな「そうね。でも、その噂だったら私も聞いた事があるわ」
いおな「正体不明のアクロポリスプリキュアに助けられた人がいる、って」
いおな「都市伝説みたいなものだと私は思っているけどね」
ひめ「う~、テレビ……」 キョロキョロ 「あれ? そういえば、めぐみと誠司は?」
ゆうこ「ああ~、あのふたりならねぇ~……」
ニヤリ
ゆうこ「今ごろ仲良くデート中じゃないかな~」
ひめ「デートぉ……?」 ハッ 「デートぉ!?」
………………ぴかりが丘市街
誠司「……っくしっ」
めぐみ「どうしたの、誠司? 風邪?」
誠司「いや、違うと思うけど……花粉症か?」
めぐみ「もうすっかり春だもんねぇ~」
めぐみ「でも、ゆうゆうもヘンだよね。わたしたちふたりで買い出しに行ってきて、なんて」
誠司「あー……そうだなぁ」
誠司(もしかして、っつーか多分、俺に気を遣ったんだろうなぁ) チラッ
めぐみ「あ、あれかわいい! ねえねえ誠司、ちょっとあの小物屋さん見ていこうよ!」
誠司(……かわいい)「こら、めぐみ。みんな大使館で待ってるんだから、寄り道はしちゃダメだろ」
めぐみ「あ、そうだったよ。えへー」
誠司(殺人的にかわいい)
誠司「ほら、さっさと買うもの買って帰るぞ」
めぐみ「うん!」
………………帰路 ぴかりが丘川沿い土手
めぐみ「ねえ、誠司。重くない?」
誠司「ん? これくらい平気だよ。普段空手で鍛えてるからな」
めぐみ「そんなこと言ったって、誠司が全部持って、わたしが手ぶらっておかしいよ」
誠司「気にすんなって。これも鍛錬鍛錬」
めぐみ「わたしだってプリキュアなのに……」
誠司「もう戦うこともないだろ。いいんだよ。俺に任せろって」
めぐみ「もうーっ! いいから半分ちょうだい!」 グイッ
誠司「わっ……き、急に腕を引っ張るなよ」
めぐみ「? そんなに強く引っ張ってないよ?」
誠司「いや、そうじゃなくて……」
めぐみ「なぁに?」 ズイッ
誠司(距離が、近い……)
ズズズイッ
めぐみ「ねえねえ、誠司?」
誠司「わ、わかった! じゃあこっちの袋持ってくれ」
めぐみ「うんっ」
誠司(ったく……こいつは……)
めぐみ「ふんふんふーん♪ 袋の中身はなーんだーろなー♪」
誠司「……はぁ。惚れた弱み、だよなぁ」
めぐみ「? なんか言った?」
誠司「なんでもねぇよ。早く帰るぞー」
めぐみ「うん! ……あっ!」
誠司「どうかしたか?」
めぐみ「ねえねえ誠司! 桜が綺麗だよ!」
誠司「ああ……この辺の川辺は毎年桜がすごいよなぁ」
めぐみ「みんなでお花見したいなぁー。ねえ、ちょっと見ていこうよ」
誠司「おいおい、みんな待ってるぞ」
めぐみ「ちょっとだけだからー! お願い!」
誠司「ったく、仕方ないな……。少しだけだぞ」
めぐみ「わーい! ありがと、誠司!」
誠司「……おう」(……かわいい)
………………川辺 桜並木
めぐみ「わー……きれいだね、誠司」
誠司「そうだな」 チラッ
めぐみ「わぁー……」 キラキラ
誠司(無邪気な顔しちゃってまぁ。こっちの気も知らないで)
ハァ
誠司(……そりゃ、知らないに決まってるよな。俺が言ってないんだから)
誠司(あー、くそ。また変なこと考えちまった。俺のこういうところが、レッドに利用されたっていうのに)
誠司(まだまだ修行も鍛錬も足りないな。師範にもう一回一から鍛え直してもらわないと)
めぐみ「誠司?」
誠司(……っていうか、そもそも俺に告白できる勇気があればいいってだけの話なんだけどな)
めぐみ「誠司ー? ボーッとしてどうしたのー?」
誠司(あー、やめよう。また嫌な気持ちになってきた。こんなんじゃ神様にも笑われちまうな)
めぐみ「もう! 誠司ってば!」
誠司「どわっ!? い、いきなり顔を近づけるなよ!」
めぐみ「なっ……誠司が返事しないのが悪いんでしょー! なんでそんなに怒るのよ!」
誠司「いや、それは……悪かった、けど……」(また、顔が、近い……)
めぐみ「何よぅ」 プンスカー
誠司「いや、悪い。悪かった、から、その……顔が」
めぐみ「? 顔が何よ」
誠司「……近い」
めぐみ「……? あ」 ボンッ 「……ご、ごめん」
誠司「いや、いいけど……」
ドキドキドキドキ……
誠司(な、なんで離れないんだよ……)
めぐみ(ど、どうしよう……なんか、ドキドキして、どうしたらいいのか、わからない……)
ドキドキドキドキ……
誠司「めぐみ……」(告白する、勇気か……)
誠司(俺……)
めぐみ「誠司……?」
誠司「めぐみ、あのさ……俺……――」
めぐみ「――さっ、さ、桜、きれいだね! またみんなとお弁当持ってこようね!」
めぐみ「そ、そろそろ戻らないと、みんなに悪いよね。帰ろ」 サッ
誠司「お、おう。そうだな」
誠司「…………」
誠司(……そんな、逃げるみたいにしなくても、いいじゃねえかよ)
めぐみ(……なんだろ、わたし……)
ドキドキドキドキ……
めぐみ(すごく、ドキドキしてる……) チラッ (わたし、誠司に、ドキドキしてるんだ……)
………………???
?1「……誠司くん、かわいそうだわ」
――――『めぐみ、あのさ……俺……――」
――――『――さっ、さ、桜、きれいだね! またみんなとお弁当持ってこようね!』
?1「せっかく勇気を出して、言おうとしたのに、それから逃げるなんて……」
?1「……ねえ、ユウキ」
?2「はい」
?1「わたし、あなたたちに言われたとおりだったわ。もう、我慢できそうにない」
?2「……準備は整っております」
?1「…………」
?1「そう。そうね。そうなんだわ」
?1「……ねえ、愛乃めぐみさん。あなたが悪いのよ」
?1「あなたが、誠司くんの気持ちに向き合おうとしないから」
?1「フラアリー、メロディアス、ハピネスを呼んでおきなさい」
?1「……地球に向かうわよ」
?2「はっ、仰せのままに」 ザッ 「我らが女神、モモ様」
?1「……誠司くん、待っていてね」 ニコッ 「今、迎えに行くから」
………………翌朝 登校中
めぐみ「はぁ……」
ひめ「? めぐみ、新学期早々からため息?」
めぐみ「あっ、ごめん。つい……」
いおな「何か悩み事?」
ゆうこ「昨日、お使いから帰ってからも、様子がおかしかったけど……」
ゆうこ(うーん、気を利かせたつもりだったけど、)
ゆうこ(ふたりきりにしちゃったのは失敗だったかな~)
めぐみ「べつに何もないよ。大丈夫。いつも通りの愛乃めぐみです!」
ひめ「そーお?」
いおな「まぁ、めぐみがそう言うならいいけど……」 ハッ 「あっ、海藤くんだわ」
ひめ「へぇ? あ、ほんとだ」 ニヤリ 「へぇー。いおな、あんなに遠くの海藤くんによく気づいたね」
いおな「なっ、べ、べつに普通でしょ。フツー!」
ひめ「へぇー」 ニヤニヤ
いおな「だーかーらー! ニヤニヤするのをやめなさい!」
ゆうこ「ああ~、相楽くんも一緒みたいだねぇ」
めぐみ「へっ!? せ、誠司!?」
いおな「か、海藤くん、おはよ。それから、相楽くんも」
海藤「おう、おはよう。氷川。それからみんなも」
誠司「なんか俺、おまけみたいだな」
ひめ「わたしたちもだよ」
めぐみ「…………」 モジモジ
ゆうこ「で、どうしてめぐみちゃんはわたしの後ろに隠れるのかなー?」
めぐみ「か、隠れてなんかないよ!」
誠司「……? めぐみ、どうかした――」
めぐみ「――……あっ、わたし、そういえば今日日直だ! 先行くね!」 タタタ……
ゆうこ「あー、行っちゃった~」
ひめ「今日から新学年新学期なのに日直って、どういうこと?」
ゆうこ「どういうことだろうねぇ~」
誠司「…………」 ギリッ 「はぁ……」
ゆうこ「……青春してるなぁ~」
いおな「お、同じクラスになれると、いいな、なんて……////」
海藤「そう言ってもらえることが嬉しいな……////」
いおな「えへへ……」
ゆうこ「こっちはこっちで青春だねぇ~」
………………ぴかりが丘中学校 教室
ひめ「やったぁー!! みんなおんなじクラスだね!」
いおな「そうね……」 ズーン
ひめ「いおな、どうしたの?」
ゆうこ「海藤くんと同じクラスになれなくてしょぼくれてるんじゃないかな~」
めぐみ「……はぁ」
誠司「……はぁ」
ひめ「それで、離れたところでため息がシンクロしてるあのふたりはどうしたの?」
ゆうこ「うーん、なんだろうねぇ~」
ゆうこ(ま、べつに急ぐことでもないし、ゆったり距離を縮めていったらいいのかな~)
ゆうこ(わたしも、あんまり余計なお節介焼かないようにしないとかな)
――――ガラッ
和泉先生「ほら、全員席に着いてー! 3年生最初のHR始めるよー!」
ひめ「わわっ、じゃあゆうこ、いおな、また後でね」
いおな「はぁ……海藤くん……」
ゆうこ「いおなちゃん、すっかり恋する女の子だなぁ」
めぐみ「………………」
ウジウジ
めぐみ(……うぅ。昨日、誠司に悪いことしちゃったかなぁ)
めぐみ(誠司の言葉を遮って、逃げたみたいになっちゃった……)
めぐみ(でも、自分でもよくわからない。なんでわたしは、誠司の言葉を遮ったんだろう)
めぐみ(どうして、誠司があのまま喋るのを、怖いって思ったんだろう……?)
めぐみ(胸がどきどきして、心臓がバクバク動いて、まるで……)
――――『めぐみ』
めぐみ(……まるで、ブルーに抱きしめられたときみたいに、身体中が熱くなった)
ハッ
めぐみ(そ、そんなわけない!) ブンブン (そんな、だって、誠司は幼なじみで、きょうだいみたいなもので……)
めぐみ(友達としては大好きだけど、そんなの……そんなのって……――)
和泉「――あーいーのー?」
めぐみ「ひっ、ひゃい!?」
和泉「さっきから顔ブンブンふったり、表情ころころ変えたり、何やってんのー?」
めぐみ「な、なんでもないです!」
和泉「よろしい。じゃあ、先生の話をしっかりと聞くように」
めぐみ「はーい……」 (うぅ……3年生初っぱなから怒られちゃったよう……)
和泉「愛乃が聞いていなかったようだからもう一度言うぞー?」
和泉「今日から一週間、うちのクラスには短期留学生が来る。早速紹介するぞー」
めぐみ「へ? 短期留学生?」
ガラッ……トコトコトコ……
めぐみ「わっ……」 (すごくきれいな3人……)
めぐみ(お目々キラキラ、髪サラサラ、フワフワ……。お人形さんみたい)
和泉「じゃあ、自己紹介をお願いしてもいい?」
?「はい。では、わたしの方から」
?「初めまして、皆さん。わたしはハトと申します。こちらのふたりは、スイとラフィです」
スイ「はじめまして~」
ラフィ「よろしくおねがいしまーっす!」
ハト「わたしたちは、ピンキー共和国から、このぴかりが丘のことを知るためにやって参りました」
ハト「一週間という短い期間ですが、どうかよろしくお願い致します」
めぐみ(はぁ~) ポー (本当に、きれいな人たちだなぁ……)
パチパチパチパチパチパチ
ハト「…………」 ジッ
めぐみ「……?」 (いま、わたしと、誠司の方を見た……?)
………………始業式後 教室
女子1「スイさんたち、ピンキー共和国、って国からきたんだよね?」
スイ「うん~。そうだよ~」
女子2「どんなところ? 日本から遠い?」
ハト「大体12時間くらいだったかな。遠くて大変だったの」
女子3「ピンキー共和国の人って、みんな3人みたいにきれいなの?」
ラフィ「えっ? わたし綺麗かな!? えへへーっ、うっれしっいなっ!」
ワイワイガヤガヤ……
ゆうこ「大人気だねぇ。ハトちゃんとスイちゃんとラフィちゃん」
めぐみ「もう放課後なのに、迷惑じゃないかなぁ」
ひめ「……わたしが転入してきたときより人気な気がするわ」 グヌヌ
ゆうこ「あのときはひめちゃんすぐに逃げちゃったじゃない」
ひめ「……そうでした」
いおな「とはいえ、いつまでもクラスメイトに囲まれていては迷惑ね」
ひめ「あ、いおな。復活したんだ」
いおな「わたしたちで留学生の3人を助けるわよ」
めぐみ「アイアイサー、いおな隊長!」
ゆうこ「……あ。でも、その必要ないかも」
ひめ「はぇ?」
誠司「――ほらほら、みんな、そろそろ帰れよ。スイさんたちだって困るだろ」
女子1「あ、そっか。今日始業式だけだから、もう放課後かぁ」
女子2「3人ともごめんね。引き留めちゃって」
女子3「質問攻めにしちゃった。興奮しちゃってごめんね」
ハト「ううん。とっても嬉しいよ。皆さんと仲良くなれそうでよかった」
スイ「わたしも~。また明日、たくさんお話聞かせてね~」
ラフィ「んふふっ! 気にしないでねっ!」
ゆうこ「おー、さすがは相楽くん。一発で事態を収拾させちゃったね」
ひめ「あの無駄な有能さは一体なんなのかしらね」 キュン
いおな「こら、ひめ。また相楽くんにときめいてるんじゃないの」
ひめ「と、ときめいてなんかいないよー! 最近海藤くんの話ばっかりのいおなと一緒にしないでよー!」
いおな「だ、誰が海藤くんの話ばっかりよ!」
めぐみ「……誠司」
ゆうこ「………………」 ウーン 「……三者三様。青春ですなぁ」
ハト「相楽誠司くん、だったよね? 気を遣っていただいて、ありがとう」
誠司「いや、気にしないでくれ。というか、お節介だったら、ごめん」
スイ「誠司くんは優しいんだね~」
ラフィ「えへへっ、かっこよかったよっ」
誠司「そ、そりゃどうも」
ゆうこ「おやおや、相楽くん、いつも通りモテモテだねぇ」
誠司「……そりゃどういう意味だ、大森」
ゆうこ「べつに~。なんでもないよ~、だ」
ひめ「モテるオーラでも出してるんじゃない?」
いおな「? でもわたし、ずっと一緒に空手やってたけど、なんともないわよ?」
ひめ「誠司抗体でもできてるんじゃない?」
誠司「人を病原体みたいに言いやがって……」
ハト「ええっと……大森ゆうこさんと、白雪ひめさんと、氷川いおなさん、だよね?」
ニコッ
ハト「ちょうど良かった。和泉先生から、困ったことがあったら、皆さんに言えと言われていたもので」
ひめ「……あの先生、わたしたちのことなんだと思ってるのかしら」
いおな「まぁいいじゃない。何か困りごとかしら?」
ハト「わたしたちの留学の目的は、このぴかりが丘を知ることなのだけど、」
ハト「そのために、街を案内をしていただけると、大変ありがたいのだけれど……」
ひめ「なーんだ! それくらいだったらお安い御用だよ!」 ムフー
ひめ「そういうことなら、この白雪ひめにまっかせっなさーい!」
ラフィ「わぁっ! ひめちゃん、頼もしいなっ!」 ギュッ
ラフィ「じゃあ、ひめちゃん。ひめちゃんは、わたしと一緒っ」
ひめ「はぇ? みんな一緒に行くんじゃないの?」
ハト「実は、みんな調べることが違うの。ラフィはぴかりが丘の観光スポット調べだから、」
ハト「我々と同じ、外からの目線で見られるひめさんが適任だと思うの」
ひめ(……ん?) ムフー 「にゃるほど。よーし、じゃあ、行こ、ラフィ!」
ラフィ「うんっ。レッツゴー!」
ハト「ふふ……」 ニヤリ 「では、スイ」
スイ「うん~。わたしは、ゆうこちゃん、お願いしてもよいですか~?」
ゆうこ「わたし?」
スイ「わたしは、ぴかりが丘のグルメ調べ担当なの。だから、ゆうこちゃんが適任かな、って~」
ゆうこ「……?」 コクッ 「……うん! ごはんと言えば大森ゆうこ、大森ゆうこと言えばごはんだからね~」
ゆうこ「スイちゃんに、美味しいものたっくさん教えてあげる!」
スイ「わぁ~。とっても頼もしい~。よろしくお願いします」
ゆうこ(……どうしてわたしがご飯に詳しいって知ってたんだろ?)
ハト「では、氷川いおなさん、わたしの案内をしてもらってもいいかな?」
いおな「もちろんよ。あなたは何を調べるの?」
ハト「わたしは、武術に興味があるの。なので、このあたりの道場を見てみたいのだけど……」
いおな「あら、だったらちょうどいいわ。わたしの家、空手道場だから」
いおな「行きましょ、ハトさん」
ハト「はい。よろしくお願いします、いおなさん」
ハト「……それでは、また。相楽誠司くん」
誠司「お、おう。……」 (なんだ……? なんか、違和感が……)
誠司(3人とも、まるで白雪たちのことを下調べしてあるみたいだったな……)
誠司(和泉先生から事前に聞いてたのか?)
誠司(……ま、いいか。っていうか、そんなことより、俺は……)
誠司「……なんでずっと寝たふりなんかしてるんだよ、めぐみ」
めぐみ「……!」 ビクッ 「……ね、寝たふりなんかしてないもん」
誠司「留学生の案内なんて、お前がやりたがりそうなもんだけどな」
めぐみ「したかったけど……」 グスッ 「うぅ……もうみんな行っちゃったよぅ」
誠司「大森たちがこっちに来たとき、一緒に来ればよかっただろうが」
めぐみ「……だって」 (誠司がいたんだもん)
誠司「……はぁ」
誠司「仕方ねえ。今日は俺に付き合えよ。空手もないし、暇なんだ」
めぐみ「えっ……」 ドキッ 「う、うん。いいよ」
誠司「……おう」
………………ぴかりが丘市街
めぐみ「………………」
誠司「………………」
めぐみ&誠司((気まずい……))
誠司(あー……くそ、やっぱり昨日、変なこと言おうとしなきゃよかった)
誠司(昨日からめぐみはやっぱり様子が変だし、俺もぎくしゃくしちまうし)
誠司「はぁ……」
めぐみ(……誠司、またため息ついてる)
めぐみ(わたしと一緒にいるの、嫌なのかな)
めぐみ(……今だって、ひめたちに置いてかれちゃったわたしを気遣って、一緒にいてくれてるんだよね)
めぐみ(誠司に頼り切りじゃダメだって、レッドと戦ったときに決めたばっかりなのに……)
めぐみ(うぅ……わたしって本当にダメダメだなぁ)
めぐみ「……はぁ」
誠司(またため息……)
誠司(やっぱり、俺と一緒にいても楽しくないよなぁ……)
誠司(よく考えたら、神様がいなくなったから俺がここにいるだけで)
誠司(もし、ミラージュさんのことがなかったら、きっと……)
誠司(いまめぐみの隣に立っているのは、神様なんだよな……)
ズキッ
誠司(ああ、本当に自分が嫌になる。なんでこんなに浅ましい考え方しかできないんだろう)
誠司(俺は、本当にダメな奴だ。神様はいなくなったのに、まだ神様に嫉妬してるんだ)
誠司(俺……サイテーだな……――)
?1「――あ、あのっ」
誠司「ん……?」
めぐみ「?」 (小さい女の子ふたりぐみ……真央ちゃんより少し年上くらいかな……?)
?2「突然ごめんなさい。道に迷ってしまいまして」
?2「ぴかり大橋の方に向かいたいのですが、よろしければ道を教えていただけませんか?」
めぐみ「ぴかり大橋? それだったら、この道をガーッって行って、ぐいーって曲がって、」
めぐみ「川沿いをぐわーって行くと、あるよ」
?1「……? ユウキ、日本語って難しいのね。わたし、全然分からなかったわ」
ユウキ「すみません、モモ様。私にも分かりませんでした」
誠司「いやいやいや、安心してくれ。いまので分かったらそいつはエスパーだ」
めぐみ「な、何よぅ……」
誠司「ふたりはぴかりが丘は初めてなのか?」
ユウキ「はい。観光がてら見て回っていたのですが、道に迷ってしまって……」
めぐみ「それなら、わたしたちが案内するよ!」 ムフー
誠司「………………」 フッ (よかった。いつものお節介なめぐみだ)
モモ「本当? それはとってもありがたいわ。ねえ、ユウキ?」
ユウキ「はい、モモ様」
ユウキ「はじめまして、お二方。私はユウキ。こちらのモモ様にお仕えしております」
誠司(様? お仕え? ごっこ遊びか何かか?)
めぐみ「はじめまして、モモちゃん、ユウキちゃん! わたしはめぐみ。こっちは誠司だよ!」
誠司(……ま、めぐみが嬉しそうだからいいか)
………………ぴかりが丘 広場
ひめ「ふふふ……こここそが、ぴかりが丘一番の観光スポットよ!」
ラフィ「? この広場が?」
ひめ「そうよ! なんてったって、ここはかの有名なハピネスチャージプリキュアが、」
ひめ「幻影帝国と何度も刃を交えた場所! いわばハピネスチャージプリキュアの歴史そのものよ!」
ラフィ「おおーっ! すごいすごい! すごいよひめちゃん!」
ひめ「ふふふ……そんなこと、あるけどー!」
ラフィ「いえーいっ!」
通行人(すごくテンション高い外人二人組……)
通行人(なんか怖いから近寄らないでおこう……)
ひめ「なんか、ラフィととっても良い友達になれそうだわ!」
ラフィ「わたしもっ! わたしもひめちゃんとすっごく仲良くなれそう!」
ひめ&ラフィ「「いえーい!」」 パシーン
………………ぴかりが丘 おおもりご飯
スイ「はぁぁあああああ……!!」 ポワワー 「とーってもおいしいの~! しあわせ~」 ムシャムシャムシャ
ゆうこ「本当? とっても嬉しいな。どんどん食べてね」 ムシャムシャムシャ
スイ「この唐揚げってお料理、絶品~! 白いご飯とよく合う~」 ハグハグハグ
ゆうこ「でしょでしょ? このお料理も美味しいんだよ~」 ハグハグハグ
スイ「どれどれ……」 パクッ 「はわわ~~~。本当に美味しい~~~」 バグバグバグバグ
ゆうこ「でしょ~!」 バグバグバグバグ
ゆうこ姉「………………」 ハァ 「……ゆうこがふたりいるみたいで恐ろしいわ」
ゆうこ&スイ「「おかわり!」」
ゆうこ姉「はぁ……。はいはい」
スイ「……なんか、ゆうこちゃんと、すっごく仲良しになれる気がするよ~」
ゆうこ「わたしもだよ~。明日からも、たくさん美味しいものを食べようね~」
スイ「明日も……」 ニコッ 「……うん、ありがとう、ゆうこちゃん」
………………ぴかりが丘 氷川流空手道場
いおな「………………」
ハト「………………」
――――――――ッス……
いおな「――ハァッ!!!!」
ハト「……ッ、フッ……!」
――――――ズドンッッッ!!!!
いおな「………………」
スイ「………………」
ニヤリ
いおな「なかなかやるわね、スイさん」
スイ「そちらこそ。いおなさん」
いおな「ふふ、多くを語る必要はもうなさそうね。わたし、あなたとお友達になりたいわ」
スイ「わたしも。わたしも、いおなさんと、良いお友達になれると思う」
ズキッ
いおな「……? スイさん、どうかした? どこか痛むの?」
スイ「あ……いえ、なんでもない。どこも痛くはない、から……」
スイ「………………」 (……決めた、ことだから。たとえ、心が痛もうと、)
スイ(モモ様のために。モモ様の、幸せのために。そう、決めたんだから)
いおな「……?」
スイ(たとえ、こんなに良い人たちを欺すことになったって……モモ様のためなら……)
スイ「ちょっと、外の空気を吸わない? リフレッシュしたいかな」
いおな「そうね。結構長く組み手をしたし、休憩にしましょう」
………………ぴかりが丘 川辺
モモ「……ここは、とってもいい街ね」
めぐみ「そう? えへへ、気に入ってもらえたなら嬉しいな」
モモ「街の住人がみんな、幸せそうに笑ってるわ。街中が幸せで溢れているのね」
めぐみ「うん! 街の人はみんな優しいよ!」
モモ「そうね。あなたのように、困っている人を助けてくれる人もいるものね」
めぐみ「わたし? あ、あはは……わたしなんかは、よくお節介とか、ありがた迷惑とか言われちゃうけど……」
モモ「立派だと思うわ。そんな風に、人のために何かをしたいっていう気持ちが、街を、国を潤し、」
モモ「そして、ゆくゆくは星を愛で満たすのよ」
モモ「恥じることなんてまったくないわ。胸を張りなさい」
めぐみ「そ、そうかな……」 カァァア…… 「そう言ってもらえると嬉しいな……」
誠司「………………」 (すげえ。真央と同い年くらいの女の子に励まされてる……)
誠司(とはいえ……) チラッ (このモモって女の子、妙に落ち着いているというか、大人っぽいというか……)
モモ「……? あ」 プイッ
誠司(……目が合って、目を逸らされた。なんだろう。すげー悪いことした気分だ)
ユウキ「………………」 ジロッ
誠司(こっちの子はこっちの子で、なんかずっと俺のこと睨んでくるし……)
モモ「ああ、いい心地だわ。この街は本当に良い街だわ」
モモ「ねえ、ユウキ? あなたもそう思うでしょう?」
ユウキ「……そうですね。ですが、私は我々の故郷の方がいいです」
めぐみ「故郷? そういえば、ふたりはどこから来たの?」
ユウキ「遠い遠い国です。少々用事がありまして、このぴかりが丘にやってきました」
めぐみ「ふーん。そこは、どんなところなの?」
ユウキ「そうですね……」
ユウキ「すべての人がお互いを尊重し、愛し合い、高め合う、そんな国です」
ユウキ「息苦しさも何もありません。人々は自由に、お互いに愛し合いながら生きています」
めぐみ「はー……想像もできないけど、すごくいい国なんだろうね」
ユウキ「それはもう。わたしのような人間にも、優しい国ですから」
モモ「……ユウキ。自分を卑下するのはやめなさい」
ユウキ「あ……」 ハッ 「申し訳ありません、モモ様」
誠司「……?」 (このふたり、ごっこ遊びには見えないな……)
誠司「モモ。ひょっとして、なんだけど」
モモ「ひゃいっ、な、何かしら?」 ビクッ
誠司(? なんだ? 俺が怖いのか?) 「モモって、その故郷の王女様か何かなのか?」
モモ「王女様……?」 クスッ 「……そうね。そんなようなものよ」
誠司「やっぱりか……」 (だからそんな偉そうなんだな……)
ユウキ「………………」 ギロッ 「いま、モモ様に対して失礼なことを考えませんでしたか?」
誠司「い、いやいや、そんなこと考えてないって」 (こわっ……なんつー目をするんだよ、こいつ)
誠司「じゃあ、ユウキはモモのメイド、ってところか?」
ユウキ「なっ、メイドですって!?」 ガタッ 「こう見えて私はモモ様の護え――」
モモ「――ユウキ。落ち着きなさい」
ユウキ「あっ……、も、申し訳ありません、モモ様」
モモ「誠司くん、身内がとんだ失礼をしてしまったわ。ごめんなさい」
誠司「いや、俺は大丈夫だけど……」
誠司「っていうか、ユウキ、何か気に障ったなら悪い。謝るよ。ごめん」
ユウキ「……べつに、何もありません。こちらこそ、ごめんなさい」
………………
めぐみ「ほら、モモちゃん、ユウキちゃん、アレがぴかり大橋だよ!」
モモ「わー……とっても大きな吊り橋なのね」
モモ「見られてよかったわ。ありがとう、めぐみさん、誠司くん」
めぐみ「いやいや、このくらいならお安い御用だよ!」
めぐみ「他に行きたいところはある?」
モモ「そうねぇ……」
チラッ
モモ「あの花、きれいね。あれは何という花なの?」
誠司「ああ、あれは……」 (昨日、めぐみと見た桜並木……)
誠司「桜だよ。とってもきれいだけど、すぐ散っちゃうから、一週間も見られないんだ」
モモ「そうなの。ねえ、めぐみさん、誠司くん、わたし、あれをもっと近くで見たいわ」
めぐみ「よーっし。じゃあ、桜並木まで――」
モモ「――でも、その前に、ユウキ」
ユウキ「はい、モモ様」
モモ「喉が渇いたわ。飲み物を買ってきて」
ユウキ「……はっ」
ユウキ「誠司さん、申し訳ありませんが、飲み物が買える場所まで案内していただけませんか?」
誠司「おう。自動販売機でいいかな。じゃあ……」
誠司「めぐみ。おまえはモモと先に桜の近くまで行っててくれ。飲み物を買ったらすぐ行くから」
めぐみ「うん、了解!」 ビシッ 「じゃあ、モモちゃん。先に行こうか」
モモ「ええ。じゃあ、よろしくね、ユウキ」 ニコッ
ユウキ「……はい。了解しております、モモ様」
めぐみ「じゃあ、わたしたちは先に行ってようか」
モモ「……ええ。そうね」
ニコッ
……………………
誠司「この自動販売機でいいか?」
ユウキ「ええ。ありがとうございます、誠司さん」
誠司「………………」
誠司(めぐみ、いまはだいぶ落ち着いてるな。とか言う俺も、同じだけど)
誠司(ユウキとモモのおかげだな。感謝しないと)
ユウキ「……誠司さんは」
誠司「うん?」
ユウキ「めぐみさんのことが、好きなんですか?」
誠司「なっ……! い、いきなりなんだよ!」
ユウキ「聞いているだけですが……」 ハァ 「答えを聞くまでもない反応ですね」
誠司「ぐっ……わ、悪かったな」
ユウキ「告白されないのですか?」
誠司「……わからん。ただひとつ言えるのは、」
誠司「俺がいまと変わらず弱いままだったら、一生そんなことできないだろうな」
誠司「ま、気長に行くさ」
ユウキ「………………」
………………
モモ「はー……とってもきれいだわ」
モモ「これが桜の花なのね。遠くから見てもきれいだったけど、花に囲まれるともっときれいだわ」
めぐみ「気に入ってもらえたならよかったよ」
めぐみ(昨日、誠司と一緒に見た桜……)
めぐみ(わたし……わたし、本当はきっと、わかってたんだ)
めぐみ(分からないふりして、逃げて……誠司のこと、きっと傷つけちゃった)
スッ……
めぐみ(この胸のどきどきは、絶対本物だもん。わたし、誠司のこと……)
めぐみ(でも……)
――――『めぐみ』
めぐみ(……ブルーのことが好きだったわたしに、誠司のことを、こんな風に思う資格なんてあるのかな)
めぐみ(っていうか、ちょっと前までブルーのことが好きだったのに……)
めぐみ(ヘンに思われないかな。っていうか、わたし、なんか、すっごく……)
めぐみ(……すっごく、気が移りやすいのうかな。『好き』ってこんな、簡単なことなのかな)
めぐみ(わかんない。わかんないよ、誠司……)
モモ「………………」
モモ「めぐみさん、少しお話をしてもいいかしら?」
めぐみ「……? うん、どうしたの、改まって」
モモ「めぐみさんは、好きな人はいる?」
めぐみ「へ……?」 ボン……!! 「す、好きな人!?」
モモ「ええ。好きな人。めぐみさんには、いる?」
めぐみ「い、いや、す、好きな人、とかは……」
アセアセ
めぐみ「そ、そういうのは、よくわかんないかな~……なんて……」
モモ「……そう。やっぱりあなたは、言えないのね」
ジロッ
モモ「誠司くんがかわいそうだわ」 ボソッ
めぐみ「えっ? 誠司……?」
モモ「わたしは言えるわ。わたしには、好きな人がいる」
モモ「ずっとずっと我慢してきた。好きで好きで、想いが募って、もうどうしようもないくらい」
モモ「本当に大好きな人」
めぐみ「そうなんだ。それはとっても素敵だね。幸せハピネスだよ!」
モモ「ありがとう。その人は、まっすぐでひたむきで、あきらめが悪くて、」
モモ「一本気で、優しくて、頭がよくて、何でもできる、そんな人なの」
めぐみ「すごく素敵な人なんだね」
モモ「ええ。本当に、素敵な人」
モモ「だから、わたしはその人を手に入れたい。その人を愛したい。その人に愛されたいの」
めぐみ「モモちゃん……?」
めぐみ(風が、やんだ……? 音がしない……? いや……)
めぐみ(周りの人が、いつの間にかいなくなってる……!)
モモ「……ごめんなさい。少し、人払いをしているの。地球人を無為に傷つけることは、わたしの本意ではないから」
めぐみ「人払い……? 地球人……? モモちゃん、一体……」
スッ……
めぐみ「!? それ、は……プリチェンミラー……!?」
モモ「そういえば、地球ではそう呼ばれているのだったわね」
クスッ
モモ「けれど、これは違うわ。神ブルーの作り出したプリチェンミラーを、模倣してはいるけれど」
モモ「プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
カッ――――――ッッッド!!!!!
めぐみ「モモちゃん……!?」 (この光は、間違いない……!)
めぐみ(モモちゃんは、プリキュアなんだ……!)
トッ………………
めぐみ(桃色のプリキュア……なんだろう。とっても、神々しい……)
??「一応名乗っておくのが礼儀かしら……久しぶりだから、変だったらごめんなさい」 クスッ
――――「永遠を誓う愛! キュアピンキー!」
めぐみ「キュア、ピンキー……」
ピンキー「ええ」 クスッ 「自己紹介、ちゃんとしておくわね。黙っていてごめんなさい」
ピンキー「わたしの名はモモ。惑星ピンキーの女神、モモよ」
ピンキー「そして、惑星ピンキーを守護する最古にして最初のプリキュア、キュアピンキーでもあるの」
ピンキー「よろしくね、愛乃めぐみさん。……いえ、」
ピンキー「愛のプリキュア、キュアラブリー」
めぐみ「わ、惑星ピンキーのプリキュア……って、じゃあ……」
めぐみ「モモちゃんは、この星の人間じゃないの……?」
めぐみ「それどころか、女神様ってことは……」 ブルッ 「ブルーやレッドと、同じ……?」
めぐみ「女神様がプリキュアをやっているの……?」
めぐみ「っていうか、どうしてわたしの正体を知っているの!?」
ピンキー「………………」 クスッ 「質問が多いのね。いいわ。答えてあげる」
ピンキー「そう。私は神ブルー・神レッドと同じような存在よ」
ピンキー「惑星ピンキーはちょっと訳ありで、女神であるわたしもプリキュアをせざるを得ないのよ」
ピンキー「そして、どうしてわたしがあなたの正体を知っているか、だけれど……」
ピンキー「……あなたのことを、ずっと見ていたからよ」
めぐみ「わたしを……? どうして?」
ピンキー「語弊があったわね。正確に言うと、相楽誠司くんを見ているときに、たまたまあなたが近くにいた、」
ピンキー「……ということなのだけれど」
めぐみ「誠司を、見ていた……?」
ピンキー「……質問には答えたことだし、今度はこちらの質問に答えてもらってもいいかしら?」
めぐみ「えっ? な、何?」
ピンキー「ひとつだけ、お願いを聞いてもらってもいいかしら?」
めぐみ「お願い?」
ピンキー「ええ。ぜひ、あなたに叶えてもらいたいお願いがあるの」
めぐみ「………………」 コクッ 「他の星とか、女神様とか、ちょっとびっくりしちゃったけど、」
めぐみ「べつにそんなの関係ないよね! レッドみたいに悪いことをしに来たわけじゃないみたいだし」
めぐみ「わたしにできることだったらなんでもするよ」 ニコッ
ピンキー「……ふふ。本当にお人好しな人。でも、大きな愛を感じるわ」
ピンキー「ありがとう。めぐみさん。じゃあ、お願いするわ」
ピンキー「ねえ、めぐみさん――――」
ピンキー「――――相楽誠司くんを、わたしにちょうだい?」
めぐみ「……へ……?」
めぐみ「誠司をちょうだい、って……どういうこと?」
ピンキー「わたし、ずっと誠司くんのことを見てきたわ」
ピンキー「最初は本当に興味本位だった。幻影帝国とプリキュアとの戦い、」
ピンキー「……地球人同士の諍いの様子を眺めていたの」
ピンキー「けれど、ちょうど、今から一年くらい前からかしら」
ピンキー「ある男の子が、世界を救おうと戦う女の子たちと行動を共にするようになった」
ピンキー「わかるでしょう? あなたの幼なじみの、相楽誠司くんよ」
めぐみ「……うん。誠司はわたしがプリキュアになってすぐ、」
めぐみ「わたしたちのために一緒に戦ってくれるようになったよ」
ピンキー「最初は、不思議な男の子だと思った。戦う力もないのに、プリキュアたちと一緒にいて、」
ピンキー「プリキュアや人々を守るために、無力な身体を投げ打って、傷ついて……」
ピンキー「心にもたくさんのキズを負って……」
ピンキー「それでも懸命にがんばる彼から、気づいたら目が離せなくなっていたの」
ピンキー「……わたしの大好きな人。わたしの愛する人」
めぐみ「モモちゃんの好きな人って……じゃあ……」 ゾクッ 「誠司の、ことなの……?」
ピンキー「ええ。その通りよ」 ニコッ 「だから、もう一回言うわね」
ピンキー「ねえ、キュアラブリー。相楽誠司くんを、わたしにちょうだい?」
めぐみ「せっ、誠司はものじゃないよ! 人を、ちょうだいとか……そんなのおかしいよ」
ピンキー「………………」 ジトッ 「……なるほど。正論ね」
めぐみ「な、何……?」 (すごく、冷たい目……怖い……)
ピンキー「あなたとふたりきりで話して、もしもあなたが誠司くんを渡すことを拒むようだったら、」
ピンキー「はたまた、誠司くんへの愛を叫ぶようだったら、おとなしく星に帰ろうとおもっていたけれど」
ピンキー「……だめね。あなた、あんな戦いを経て、何も変わっていないのね」
ピンキー「あなたのそういうこところが、誠司くんを苦しめるとなぜわからないの?」
ピンキー「あなたのそういうところが、神レッドに誠司くんを奪われる理由になったと、なぜわからないの?」
めぐみ「わ、わたしは……だって……」
ピンキー「……もういいわ。あなたと話すことはない。あなたは、誠司くんがいらないみたいだから」
ピンキー「正論を吐くばかりで、自分自身の内なる愛にも素直になれないようなあなたに、」
ピンキー「絶対に誠司くんは渡さない……!」
ピンキー「……変身なさい、キュアラブリー。あなたには、踊ってもらわなければならないのだから」
めぐみ「ど、どうして……」
ピンキー「これ以上問答を続けるつもりなら、」
ピンキー「この星を破壊するわよ。わたしは女神にしてプリキュア。それくらいの力は持っているわ」
めぐみ「なっ……」
ピンキー「それとも、こう言ってあげた方がいいのかしら?」
ピンキー「あなたが変身しないなら、わたしはこのまま誠司くんを惑星ピンキーへ連れて帰るだけだけど、と」
めぐみ「誠司……を……?」
ドクン……!!!
めぐみ「……誠司を、どこかへ、なんて……!」
めぐみ「……そんなの、許せるわけ、ないでしょ!!」
ザッ……!!!
ピンキー「あら、変身してくれる気になったのね。嬉しいわ」
めぐみ「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ラブリー「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」
ピンキー「嬉しいわ。キュアラブリー。わたしの誠司くんのために、そんなに怒ってくれるなんて」
ラブリー「誠司は、モノじゃない!」
ピンキー「でも、興ざめだわ」 ハァ…… 「まだ、そんな正論しか語れないのね」
ピンキー「あなたに、愛のプリキュアを名乗る資格はないわ」
ラブリー「ッ……!」
ピンキー「あら、いいの? そんなに悠長に構えていると、」
クスッ
ピンキー「誠司くん、ユウキに捕まっちゃってるかもしれないわね?」
ラブリー「ユウキちゃんに……?」
ラブリー「誠司は空手をやってる男の子だよ! いくらなんでも、小さい女の子に負けるわけないでしょ!」
ピンキー「あら? ユウキもプリキュアだって言っても、」
ピンキー「そんなことが言える?」
ラブリー「……!? ユウキちゃんも、プリキュア……!」 ダッ……!!!
サッ……
ピンキー「待ちなさい。あなたの相手はわたしよ。誠司くんのところに行きたいなら、」
ピンキー「わたしを倒してからにするのね」
ラブリー「っ……。モモちゃん、そこをどいて!」
ピンキー「わたしを女神と知り、地球の存在でないことも知り、」
ピンキー「あまつさえ、敵対する存在だとわかってもなお、わたしのことをそう呼んでくれるのね」
ピンキー「嬉しいわ。キュアラブリー。あなたの愛は本物ね。あなたは女神になれる器よ」
ピンキー「けれどそれではダメ。それでは、あまりにも幼稚よ。その愛は、愛だけど、愛じゃない」
ピンキー「あなたがそんな愛しか持てないなら、あなたは、」
ピンキー「今後ずっと、一生、誠司くんを苦しめ続けることになる」
ピンキー「……そんなことは、わたしが絶対に許さない」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………
ラブリー「ぐっ……」 (相手はモモちゃんひとり……)
ラブリー(なのに、動けない。何か、とてつもない敵を相手にしているような……)
ラブリー(まるで、クイーン・ミラージュと戦ったときのような……)
ラブリー(とてつもない重圧……。モモちゃんが女神様っていうのは本当なんだ)
ラブリー(けど、誠司が、危ないなら……!)
ザッ……!!!!
ラブリー(モモちゃんを少し吹き飛ばして、その間に誠司のところに……!)
ラブリー「怪我をさせたらごめんね、モモちゃん!」
ピンキー「ふふ……」 クスクス 「攻撃するつもりで向かってきながら、相手に謝るなんて、」
ピンキー「本当に優しい人。けれど、甘々だわ」
ピンキー「プリキュア・イージスプロテクション!」
ラブリー「……!?」
――――――……ズドッ……!!!!
ラブリー(な、何!? 何か、透明な壁にぶつかった……?)
ピンキー「もう少し強いものだと思っていたけれど」
ピンキー「残念だわ、キュアラブリー。幼なじみの危機を知ってなお、」
ピンキー「その下手人の怪我の心配なんて……甘すぎるわ」
ラブリー「この壁は何!?」 (四方を壁で囲まれているの……?)
ピンキー「わたしの能力よ。星を守る絶対防御の力、イージス」
ピンキー「あなたはいま、わたしのイージスに閉じ込められているの」
ラブリー「っ……こんな、壁くらい!」
ズドッ……!!!!!!
………………ぴかりが丘 川辺 桜並木 物陰
?「た、たたた、大変ですわ~~~~~!!」
??「みんなの帰りが遅いから来てみれば、こりゃ一大事だぜ!」
???「惑星ピンキーの女神、モモ……そういえば昔、ブルーから聞いたことがある」
???「モモという名の、妹分の女神がいる、と」
???「とても愛に溢れた、頼もしいしっかりとした女神だと」
??「そんな立派な女神様がどうしてめぐみを襲ってるんだよ!」
???「お、俺が知るか!」
?「ケンカは後ですわー! 早く、このことをみんなに知らせないとですわ!」
???「その通りだな。では、俺はゆうこのところへ向かう」
??「俺はいおなだな!」
?「では、わたくしはひめを探します!」
ピューン…………
………………ぴかりが丘 広場
ひめ「んん……? いま、何か、光ったような……」
ひめ(あの方向はぴかり大橋の方だわ……)
ひめ「!」 (ま、まさか、またサイアークが現れたとか……!?)
ひめ(こうしちゃいられない! 早く行かなくちゃ!)
ひめ「ご、ごめん、ラフィ! わたし、ちょっと行かなくちゃ――」
ラフィ「――ダメだよ」
ひめ「はぇ……?」
ラフィ「ねえ、ひめちゃん。ここにいて? ここにいるだけでいいの」
ラフィ「そうしたら、誰も苦しまずに終わるから」
ラフィ「わたしとひめちゃんが戦う必要も、ないから」
ひめ「ど、どういう、意味……?」 (どうしたんだろ……ちょっと、怖い……)
ラフィ「えへへっ、ごめんごめん。なんか変なこと言っちゃったねっ」
ラフィ「気にしないで。ささ、次はどこへ連れてってくれるの、ひめちゃん?」
ひめ「ラフィ……?」
?「ひーめー!」
ひめ「……? この声は、リボン!?」
リボン「大変ですわ~~~~~!! 一大事ですわ~~~~~!!」
ひめ「こ、こら、リボン! 人がいるんだから、動いちゃダメでしょ!」
リボン「そんなこと言ってる場合じゃないんですの! めぐみが! めぐみがピンチですわ!」
ひめ「!? めぐみがピンチ!? どゆこと!?」
ザッ……!!!!
ひめ「……? ラフィ? どうしたの?」
ラフィ「……ごめんね、ひめちゃん。できれば、ひめちゃんとはお友達のままでいたかったけど」
ひめ「そ、それ……それって、プリチェンミラー……!?」
ラフィ「………………」 スッ 「……プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
――――「笑顔生む幸せ! キュアハピネス!」
………………ぴかりが丘 おおもりご飯 外
ゆうこ「………………」
スイ「急に外に出て、どうしたの~? ゆうこ?」
ゆうこ「ううん。何か、外が騒がしいな、って」
スイ「そうかな~?」
ゆうこ「うん。何か、よくない風が吹いているような、」
ゆうこ「空気がざわめているような……」
スイ「ゆうこは勘が鋭いんだね~」
スイ「……ねえねえゆうこ。中に戻ろうよ。戻って、もっと美味しいもの、教えて?」
ゆうこ「……うん。わかったわ。けど、少し待っててもらってもいい?」
スイ「? どうかしたの、ゆうこ?」
ゆうこ「わたし、ちょっと様子を見てくるわ。何か、胸騒ぎがするから」
スイ「………………」 ギュッ 「……だめだよ」
ゆうこ「……? どうしたの? 急に手を握って」
スイ「行ってほしくないから。行かせちゃいけないって、思うから」
ゆうこ「……スイちゃんは、何か知ってるんだね?」
スイ「……言わない。言いたくない。ゆうこと、友達でいたいから」
ゆうこ「そっか……」
???「ゆうこ~~~~~~~~~!!!」
ゆうこ「あら、ファンファン。ダメじゃない。人前で動いちゃ」
ファンファン「そんなことを言ってる場合じゃないんだ!」
ファンファン「ゆうこ、めぐみがピンチなんだ!」
ゆうこ「めぐみちゃんが……!?」
スッ
ゆうこ「……ごめん、スイちゃん。わたし、行かなくちゃ」
ゆうこ「めぐみちゃんは大切な友達なの。だから、困っているなら助けに行かなくちゃいけないの」
スイ「……そっか~。うん。わかったよ~」
スイ「じゃあ、わたしも。それを止めなくちゃいけないのかな~」
スイ「わたしの敬愛する、我らが女神、モモ様のために」
スッ
ファンファン「なっ……! ぷ、プリチェンミラー……!?」
スイ「プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
――――「心温める調! キュアメロディアス!」
………………ぴかりが丘 氷川流空手道場 外
いおな「……あなたとの組み手、とても楽しかったわ」
いおな「清々しくて、はっきりしていて、本当に爽快だった」
ハト「そう言ってくれると嬉しいな。わたしも、すごくやりやすかったよ」
いおな「ありがとう。けど、あなたの心に迷いが見られたわ」
ハト「………………」 クスッ 「迷い? わたしに?」
いおな「ええ。何かは分からない。けれど、それがあなたの拳を少し、濁らせている」
いおな「ハト、わたしはあなたと本当に、心から信頼しあえる友達になれると思うの」
いおな「だから、もしわたしが力になれるというなら、あなたのお話を聞かせて」
いおな「あなたの力になりたいの」
ハト「……うん、そうだね。じゃあ、ちょっとだけ話を聞いてもらってもいいかな」
いおな「ええ! 喜んで聞かせてもらうわ!」
ハト「そんなに楽しい話じゃないんだけどね……」
ハト「ねえ、いおな、もしもあなたの大切な人が、」
ハト「間違いを知りながら、その間違いを押し通そうとしたら、どうする?」
いおな「間違いを、押し通す……?」
ハト「その人は、今までわがままも何も言わず、色んな人のためにがんばってきた」
ハト「何年も何年も、何世代にもわたって、人々を守り、慈しみ、温かく包んできた」
ハト「その人の初めてのワガママが、もしも人道に反するものだったとしたら、」
ハト「あなたはどうする?」
いおな「………………」
いおな「ハト、あなたはその人のことが大好きなのね」
ハト「ええ、大好き。本当に、尊敬しているし、その人の願いだったら、なんでも叶えたい」
いおな「……わたしだったら、」
いおな「たとえ、どんなに高潔で、優しくて、慈悲深い人で、尊敬されていたとしても、」
いおな「その人が間違った道を進もうとしているなら、止めるわ」
いおな「……絶対に、止めるわ」
ハト「……そっか。そうだよね。いおなは強いな」
いおな「そんなことないわ。わたしは弱い。たくさん間違えてきたわ」
いおな「けど、そんなとき、止めてくれる人がいた。助けてくれる人がいた」
――――『大丈夫。プリカードはまた集められる。あなたの願いを先に叶えて!』
――――『お姉さんを助けてあげて!』
ギュッ……!!!
いおな「……だからわたしも、誰かにとって、間違いを正せる人間でありたいわ」
いおな「そして、弱っている人に、手を差し伸べられるような、人間でありたいわ」
ハト「……うん。ありがとう、いおな。いおなはすごいね」
ハト「ほんの一時だけでも、あなたの友達になれてよかった」
ハト「……ごめんね」
いおな「ハト……?」
??「いおな~~~~~~~~~~~!!! 大変だぜーーーー!!」
いおな「ぐらさん!? ち、ちょっと! こんなところで動いちゃ……!」
ぐらさん「そんなこと言ってる場合じゃないんだぜ! めぐみがピンチなんだ!」
いおな「めぐみが!? めぐみが一体どうしたって言うの!?」
ぐらさん「詳しいことは後だ、とりあえず、急ぐぜ!」
いおな「え、ええ……ハト、ごめんなさい、ちょっと――」
ハト「――……うん。こちらこそごめんね。いおな」
いおな「えっ……?」
スッ
いおな「……!? プリチェンミラー……!?」
ハト「プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
――――「街彩る花! キュアフラアリー!」
………………
キュアハピネス「………………」
ひめ「ラフィ……あなた、プリキュアだったのね」
ひめ「でも、どうしてわたしの前に立ちふさがるの?」
ひめ「わたしは友達のところに行かなくちゃいけないの。そこをどいて」
ハピネス「……ごめん」
スッ……
ひめ(構えを取った。わたしと、戦うってこと……?)
ひめ「………………」
ひめ「あなたが何を考えているのかわからない」
ひめ「でも、めぐみのピンチにここで立ち止まっているわけにはいかないの!」
ひめ「悪いけど、わたしはあなたと戦ってでも、めぐみのところへ向かうわ!」
ひめ「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
プリンセス「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」
ハピネス「……悪いけど、行かせるわけにはいかないんだっ」
プリンセス「上等よ! このキュアプリンセスの力、見せてあげるわ!」
リボン「あわわわ……! ぷ、プリキュア同士が戦うなんて~!」
リボン(けれど、キュアハピネスなんて、聞いたことがないですわ……)
リボン(一体どこ担当のプリキュアだったのでしょうか……)
………………
キュアメロディアス「……はぁ。本当は、変身なんてしたくなかったな~」
ゆうこ「スイちゃん、あなたはプリキュアだったんだね」
メロディアス「そうだよ~。本当は、ゆうこに知られたくなかったんだけど」
ゆうこ「わたしにめぐみちゃんのところに行ってほしくないの?」
メロディアス「うん。もしここで、このままジッとしていてくれるなら、」
メロディアス「わたしはあなたと戦わなくて済む。わたしは、その方が嬉しいかな~」
ゆうこ「……うん。そうだね。戦わないに越したことはないよね」
メロディアス「うん。だから、このまま――」
ゆうこ「――でもね、戦わないと、あなたがそこをどいてくれないのなら、」
ゆうこ「戦わないと、めぐみちゃんを助けることができないなら、」
スッ
ゆうこ「……わたしは戦うよ。平和が好き。平和が一番。でもね、友達のピンチを、放っておくわけにはいかないから」
ゆうこ「……プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ハニー「大地に実る命の光! キュアハニー!」
メロディアス「……仕方ないよね。わたしも、わたしの敬愛する方のためだもん」
ハニー「そうね。譲れないなら、戦うしかないわ」
ファンファン「気をつけろ! キュアハニー! 相手の能力は未知数だ!」
ハニー「うん。ありがとう、ファンファン」
ハニー(未知数……? プリキュアハンターとして世界中のプリキュアと戦っていたファンファンが知らないなんて……)
ハニー(……スイちゃん。あなたは一体、何者なの?)
………………
キュアフラアリー「……ごめんね。悪いけど、めぐみさんのところには行かせない」
フラアリー「できれば、人間のときの組み手だけで終わらせたかったけど」
フラアリー「あなたがめぐみさんのところへ向かうというのなら、プリキュアとして戦うことになる」
いおな「……まさか、あなたがプリキュアだったなんて」
フラアリー「隠していたことはごめんなさい。いおなとは、とびきり良い友達のままでいたかったから」
フラアリー「ごめんなさい。いおな」
いおな「………………」 クスッ 「さっきから謝ってばかりね」
フラアリー「……?」
いおな「……まだ迷いがあるのね。そう顔に書いてあるわ」
フラアリー「っ……。それでも、わたしのやることは変わらない」
フラアリー「あなたがここにいてくれるなら、それでいい。それだけでいい」
フラアリー「けれど、一歩でも動こうとしたら、わたしはあなたを止める」
いおな「あなたの目的はわからないけれど、友達のピンチに駆けつけないわけにはいかないわ」
スッ……
いおな「……あなたがそのつもりなら、押し通るまでよ!」
いおな「プリキュア・きらりんスターシンフォニー!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
フォーチュン「夜空にきらめく希望の星! キュアフォーチュン!」
フラアリー「……キュアフォーチュン。あなたとは戦いたくない」
フォーチュン「わたしもよ。キュアフラアリー」
フラアリー(……それでも)
フォーチュン(大切なひとのためなら……!)
ザッ……!!!!
ぐらさん「こ、こいつぁ……」 ゴクリ 「強敵の予感だぜぇ!」
………………ぴかりが丘 川辺
――――――ッド……!!!!
誠司「……? なんだ、今の音……?」
誠司「桜並木の方から聞こえた気がしたけど……」
ユウキ「………………」
誠司「めぐみとモモが心配だ。お前はここで待っててくれ。俺が様子を見てくる」
ガシッ
誠司「? ユウキ? 俺の腕を掴んで、どうしたんだ?」
ユウキ「……行ってはいけませんよ」
誠司「どういうことだ?」
ユウキ「行ってはいけないと言っています。いまはきっと、モモ様が話をしていらっしゃいます」
誠司「モモが……何だって?」
ユウキ「ですから、モモ様がめぐみさんとお話をしているのです」
ユウキ「邪魔をしてはいけません」
誠司「な、何を言ってるんだ、おまえ……?」
ユウキ「私たちも話をしませんか? この映像でも見ながら」
スッ…………
誠司(な、なんだ……? 空中に、映像が……ッ!?)
誠司「めぐみ!?」
ユウキ「お察しとは思いますが、この映像は現在のめぐみさんとモモ様の様子を映したものです」
誠司「ど、どういうことだ!? めぐみが、閉じ込められているのか……!」
ユウキ「落ち着いて話を聞いてください」
誠司「このプリキュアみたいなのが敵……? いや、これは……」
誠司「ッ……!」 ダッ……!!!
ユウキ「おやおや」 スッ 「行ってはダメだと言っていますよ?」
誠司「どけ! めぐみが危ないなら、俺がジッとしてるわけにはいかないんだよ!」
ユウキ「……はぁ」 ザッ……!!!
………………ズドン!!!!
誠司「なッ……!?」 (な、なんだ……こんな小さな女の子から……!)
誠司(こんな、重い拳が飛んでくるなんて……!)
ザザザザッ……!!!
誠司(こいつ、こんな小さな女の子なのに……) ギリッ (強い……!)
ユウキ「はぁ。少しは落ち着いてください。モモ様はめぐみさんを傷つけたりは致しません」
誠司「あのプリキュアみたいなのは、モモなのか!」
ユウキ「そうですよ。モモ様が落ち着いてめぐみさんとお話をするために、」
ユウキ「イージスで作ったオリの中にキュアラブリーを入れただけでしょう?」
誠司「ッ……」 (こいつ、めぐみがキュアラブリーだと知っている……?)
ユウキ「だから、落ち着いてください。モモ様はめぐみさんを傷つけたりはしません」
ユウキ「お話、聞いていただけますね?」 ニコッ
誠司「っ……」
……
…………
………………
誠司「………………」
誠司「……お前たちは、惑星ピンキーからやってきたプリキュア」
誠司「そして、モモは惑星ピンキーの女神でもある、と」
誠司「……納得はしがたいが、わかった。きっと本当のことなんだろう」
ユウキ「ご理解が早くて助かります」
誠司「だが、ひとつ分からないことがある」 ギロッ 「お前たちの目的は何だ?」
誠司「どうしてこんなことをする?」
ユウキ「大したことではありません。女神モモが欲しているものがありましてね」
ユウキ「それを取りに来たというだけのことです」
誠司「レッドのように、この星を滅ぼすつもりか……?」
ユウキ「はぁ?」 ゲンナリ 「そんなことを慈悲深き女神モモがされるわけがないでしょう?」
ユウキ「……はぁ、どうしてこんな男がいいのだか、私には皆目分かりかねますね」
誠司「何の話だ」
ユウキ「女神モモが求められているもののことです」
ユウキ「……つまりあなたのことなのですが」
誠司「……俺?」
ユウキ「そうです。あなたです」
ユウキ「女神モモが、初めて欲しくなったもの」
ユウキ「女神モモが、初めて心の底から愛することができた方」
ユウキ「女神モモが、初めてのワガママとして欲した方」
ニコッ
ユウキ「光栄に思いなさい、相楽誠司さん」
ユウキ「あなたは女神に見初められたのです」
………………ぴかりが丘 川辺 桜並木
ラブリー「ッ……」 (この壁、すごく硬い。何度殴ってもびくともしないなんて……)
ピンキー「無駄よ。わたしのイージスは絶対に破れないわ」
ピンキー「あなたに、星を破滅させるほどの隕石に匹敵する力でもない限りは、ね」
ラブリー「星を破滅させる隕石……?」
ピンキー「……なんでもないわ」
ラブリー「よーし、パンチでダメでもこれならどうだ……!」
スッ
ラブリー「愛の光を聖なる力に! ラブプリブレス!」
ラブリー「ラブリー・ライジングソード!」
ッッッッッッッッガガガガガッッ……!!!!!!!!!!1
ラブリー「ぐッ……! うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ラブリー「貫いて! ライジングソード!」
チッッッッ…………ッッドォオオンン!!!!!
ラブリー「………………」 ギリッ 「……ライジングソードでも全然歯が立たないなんて!」
ピンキー「だから言っているの。わたしのイージスを貫けるのは、天文学的なエネルギーか、もしくは最強の矛の力だけよ」
ラブリー「っ……!」
ピンキー「ねえ、キュアラブリー。あなたは自分で、誠司くんを救うチャンスをみすみす逃してしまったわ」
ピンキー「わたしに誠司くんに対しての想いをぶちまけていれば、」
ピンキー「あるいは、わたし相手に躊躇せずに攻撃を加えていれば、」
ピンキー「誠司くんを助けることができたのに」
ラブリー「誠司に何をする気!」
ピンキー「ひどいことはしないわ。ただ、わたしの星に来てもらうだけ」
ピンキー「ユウキが言っているのを聞いたでしょ? とてもいい星よ」
ピンキー「誠司くんもきっと気に入るわ」
ラブリー「でも、そんな……! 無理矢理連れて行くなんて……!」
ピンキー「無理矢理じゃないわ」 クスッ 「ねえ、そうでしょう、誠司くん?」
ラブリー「へ……?」 ハッ 「せ、誠司!」
誠司「………………」
ラブリー「誠司、来ちゃダメ!」
ラブリー「モモちゃんは、誠司をさらうつもりだよ! だから、逃げて!」
誠司「……いいんだ。もう、おまえが戦う必要なんてない」
ラブリー「へ……?」
誠司「俺、モモたちに着いていくよ。俺が、そうしたいって思うんだ」
ラブリー「そんな……! 誠司、どうして……!」
誠司「ッ……」 ギリッ 「……どうしても、だ」
ピンキー「す、すごいわ、ユウキ! 本当に誠司くんのことを説得してくれたのね!」
ユウキ「………………」 ニコッ 「ええ、モモ様」
ピンキー「あなたが誠司くんとふたりきりになれば絶対に説得してみせると言っていたから任せたけれど、」
ピンキー「本当にやってくれたのね。ふふ、嬉しいわ、ユウキ」
ユウキ「もったいないお言葉です」
クスッ
ユウキ「誠司さんの物わかりが良かっただけですよ。ねえ、誠司さん?」
誠司「ッ……!」
ラブリー「誠司、どうして……?」
誠司「………………」
………………数分前 ぴかりが丘 川辺
誠司「見初められた、だと……!」
誠司「なんだかよくわからねえけど、だったらめぐみを巻き込むんじゃねえ!」
ユウキ「そうですね。私も無関係な方を巻き込んで、大変心が痛いのです」
誠司「どの口が……!」
ユウキ「本当のことですよ。本当に、胸が痛いです」
ユウキ「――大好きな女の子に助けられてばかりのあなたを、見ていると」
誠司「ッ……!」
ユウキ「……あなた、前もそうだったでしょう?」
ユウキ「好きな女の子が振り向いてくれないから、」
ユウキ「それだけの理由で神レッドの傀儡となり、その上好きな女の子を傷つけた」
ユウキ「ねえ、誠司さん。本当に、あなたを見ていると不憫で胸が痛いですよ」
誠司「だっ……黙れ!」
ユウキ「誠司さん、我々はあなたを救いに来たのですよ」
ユウキ「あなたが我々と共に来てくれれば、あなたはもうめぐみさんを傷つけなくて済みます」
ユウキ「それとも、また守られますか? あなたのお友達の女の子たちに」
ユウキ「また傷つけますか? 大好きな女の子を」
誠司「ぐっ……」
ユウキ「そして、あなたはまた、めぐみさんに逃げられる」
ユウキ「大好きな彼女に、想いを伝えることができず、傷ついて……」
誠司「………………」 ズキッ 「……俺は」
ユウキ「ふふ……」
ユウキ「もしめぐみさんに傷ついて欲しくないと願うなら、」
ユウキ「そして、あなた自身も傷つくことを望まないなら、」
ユウキ「おとなしくこちらの要求を飲んでください」
ユウキ「何もあなたの大切な人を奪おうというわけではありません」
ユウキ「あなたひとりが、我々と共に来てくれれば、それだけでいいのですから」
誠司「………………」 ギリッ 「……こんな、脅しみたいな真似をして」
誠司「大した女神様だな、モモは」
ユウキ「勘違いしないでください。この場での会話に、女神モモの意志は介在しておりません」
誠司「何?」
ユウキ「すべては私の一存。私が考え、あなたに話しています」
ユウキ「モモ様はお優しいお方です。あなたに我々と一緒に来るという意志がなければ、」
ユウキ「あなたを無理矢理に連れて帰るようなことは絶対になさらないでしょう」
誠司「つまり、モモはお前が言ったことを知らないんだな……」
ユウキ「ええ。けれど、モモ様にはくれぐれもご内密にお願いしますよ?」
ニコッ
ユウキ「モモ様に、こんな汚れたことを知られたくありませんから」
誠司(……こいつ、モモのためならなんでもするんだろうな)
誠司(モモのためなら、きっと、めぐみたちを傷つけることも厭わない……)
誠司「……言わねえよ。その代わり、約束しろ。めぐみには手を出すな」
ユウキ「ええ。聞き分けの良い人は好きですよ」
誠司「ッ……」
………………現在 ぴかりが丘 川辺 桜並木
ラブリー「誠司! ダメだよ! 誠司!!」
誠司「……ッ」
ピンキー「ねえ、誠司くん。嬉しいわ、とっても」
ピンキー「わたしと一緒に惑星ピンキーに来てくれるのね?」
誠司「……ああ。行くよ」
ピンキー「ふふ、本当に嬉しいわ。夢みたい」
ピンキー「本当は、あなたのことをあきらめかけていたの」
ピンキー「めぐみさんに発破をかけて、お節介をして……」
ピンキー「それだけで終わっちゃうんだろうな、ってちょっと思ってたの」
ピンキー「まさか本当に、誠司くんが一緒に来てくれるって言うなんて……」
ピンキー「はぁ~~~~、本当に夢見たいだわ」
誠司(……この様子だと、モモは本当に汚い手を使うつもりはなかったみたいだな)
ラブリー「誠司!」
誠司(めぐみも閉じ込められてはいるが、キズ一つないみたいだ。よかった……)
ユウキ「……わかっていますね?」 ボソッ
誠司「わかってる。約束は守る」 ボソッ
ピンキー「? 誠司くん? ユウキ?」
誠司「……モモ。俺なんかを好きになってくれて、ありがとう」
誠司「よくわからないけどさ、嬉しいよ」
ピンキー「………………」 ボン!!! 「……っ~~~~、本当に夢みたいだわ」
ピンキー「ドキドキが止まらないわ……」
ピンキー「これが恋……これが、愛なのね……」
ピンキー「手荒なことをしてごめんなさい、めぐみさん」
ピンキー「地球を破壊するとか、誠司くんを無理矢理さらうとか、心にもないことも言ってしまったわ」
ピンキー「本当にごめんなさい。いま、イージスを解除するから……――」
――ガシッ……
ピンキー「せ、誠司くん……? どうしたの、わたしの手を握って……///」
誠司「……俺が何を言おうと、めぐみは納得しないよ」
ラブリー「誠司! 誠司ってば! わたしの話、聞いてよ!」
誠司「だから、しばらくこの透明な壁をこのままにしておくことはできるか?」
ピンキー「え、ええ。じゃあ、少し経ったらイージスが解除されるようにしておけばいいかしら?」
誠司「ああ、ありがとう。すごい能力だな」
ピンキー「あ……///」 ボン!!! 「す、好きな男の子に褒めてもらうって、すごいのね……」
ユウキ「……ふふ、上出来です。誠司さん」
誠司「……ふん。そりゃどういたしまして」
――――……スゥ……
モモ「……ふぅ。久しぶりに変身して疲れたわ」
ユウキ「お手を煩わせました。申し訳ありません」
モモ「いいのよ。ありがとう。誠司くんを説得してくれて」
ユウキ「いえいえ、お安い御用です。物わかりの良い方だったので」
誠司「………………」
ラブリー「誠司! モモちゃん! ユウキちゃん!」
モモ「ごめんなさい、キュアラブリー。すぐに解けるから、少しだけその中にいてね」
モモ「もう会うこともないかしら。さようなら」
誠司「………………」 ボソッ 「……じゃあな、めぐみ。元気でな」
ラブリー「誠司……! 誠司ーーーーーー!!!!」
………………
…………
……
………………
キュアハピネス「はぁ……はぁ……」
キュアプリンセス「っ……」 ズキッ (この子、強い。並大抵のプリキュアの力じゃないわ)
キュアプリンセス(こんなプリキュアがいたなんて……)
ハピネス「はぁー、さっすが、勇気のプリキュアだねっ」
ハピネス「こんなに強いと思わなかったよっ」
プリンセス「あなたたちの目的は何! モモ様って誰!」
ハピネス「うーん……あんまり話しちゃいけないって、言われてるから」
ハピネス「ごめんねっ」
プリンセス「ッ……友達になれると、思ったのに……」
ハピネス「っ……」 ズキッ 「……ごめんね」
プリンセス「謝るくらいなら……!」
ハピネス「プリンセスと友達でいたいよ。でも、わたしは……」
ハピネス「これが間違ったことだって知ってても、モモ様を裏切るわけにはいかないから」
………………パン………………パンパン……!!
プリンセス「……? 花火……?」
ハピネス「ユウキからの合図だ……。もう終わったみたいだよ」
プリンセス「終わった? 一体何が?」
ハピネス「ごめんね、ひめちゃん。たぶん、わたしはひめちゃんに恨まれる」
ハピネス「嫌いになっても、いいよ……さみしい、けど……」
ポタッ……ポタッポタッ……
プリンセス「!? ハピネス、あなた、泣いてるの……?」
ハピネス「ごめんなさい……ごめんね、ひめちゃん」
ハピネス「さようならっ……!」
バッ……!!!
プリンセス「ッ……!?」 (目くらまし……!)
プリンセス「……あれ、キュアハピネスは……?」
リボン「わかりませんわ。突風で目をふさいだときに、消えてしまったようですわね」
プリンセス「ラフィ……」
――――『ごめんなさい……ごめんね、ひめちゃん』
プリンセス「……どうして、泣いてまで、わたしと戦う必要があったんだろう……?」
プリンセス「一体どうして……」
リボン「あ……! プリンセス! それよりめぐみですわ! めぐみがピンチですの!」
プリンセス「そうだったぁー! めぐみがいるのはどこ!?」
フラ…………フラフラ……
プリンセス「……! ラブリー!?」
ラブリー「………………」 フラフラ……
タタタタ……!!!
プリンセス「よかった! リボンからピンチって聞いたから、心配していたのよ」
ラブリー「………………」
プリンセス「怪我はないみたいね。本当によかった……」
ラブリー「………………」
プリンセス「ラブリー……? どうしたの? なんか、変だよ?」
ラブリー「……誠司、が……」
プリンセス「へ? 誠司?」
ラブリー「誠司が……行っちゃった……」
ポタッ……
プリンセス「ら、ラブリー……? 泣いてるの?」
ラブリー「誠司が、連れて、行かれちゃった……」
ポタッ……ポタッ……
プリンセス「誠司が連れて行かれた……!?」
ガバッ
プリンセス「それってどういうこと!?」
ラブリー「わたし……わたし……」
プリンセス「ねえ、ラブリー! ラブリー、しっかりして!」
ラブリー「わたしのせいだ……」
――――『残念ね、キュアラブリー。あなたは自分で、誠司くんを救うチャンスをみすみす逃してしまったわ』
――――『わたしに誠司くんに対しての想いをぶちまけていれば、』
――――『あるいは、わたし相手に躊躇せずに攻撃を加えていれば、』
――――『誠司くんを助けることができたのに』
ラブリー「わたしのせいで、誠司が……」
プリンセス「ラブリー! ラブリー、返事して! ラブリーってば!」
………………
キュアメロディアス「………………」
………………パン………………パンパン……!!
メロディアス「……合図の花火か~」
スッ……
ハニー「……? どうして拳を下ろすの? もう戦う気はないのかな?」
メロディアス「うん。もう終わったみたいだから、いいよ~」
メロディアス「キュアハニー、あなたは補助がメインだと思っていたけれど、」
メロディアス「思っていたよりずっと強いんだね~。びっくりしちゃったよ」
ハニー「それは、どうもありがとう」
メロディアス「……ごめんね、ゆうこ」
メロディアス「今さらこんなこと言えた義理じゃないのは、わかっているけれど、」
メロディアス「今日一日、本当に楽しかった~。ありがとう。そして、さようなら」
スゥ……
ハニー「スイちゃん……!」 (消えた……。合図って、一体なんの合図だったのかしら)
ファンファン「ハニー! 考えるのは後だ! めぐみのところへ急ごう!」
ハニー「そうね。急ぎましょう」
………………
フラアリー「ハァアアアアア……ッ!!!!」
フォーチュン「オォオオオオオッ……!!!!」
………………ッッッズドン!!!!!!!!!!!!
ぐらさん「わっ……わわっ、すっげえ衝撃だぜ!」
ぐらさん「拳だけでここまでフォーチュンと渡り合うなんて、とんでもねえプリキュアだ!」
フォーチュン「まだよ! フォーチュン・スターバースト!」
フラアリー「こっちだって! フラアリー・ブロッサムインパクト!」
――――――ッッッッドォオオン……………………!!!!!
ぐらさん「ひえぇええ! こいつぁすげえ決闘だ!」
ぐらさん「……って、興奮してる場合じゃねえな! がんばれー! フォーチュン!」
フォーチュン(……スターバーストの衝撃も爆炎も打ち消すなんて!)
フラアリー(全力のブロッサムインパクトでようやく相殺できた……とんでもない技の精度と威力……!)
………………パン………………パンパン……!!
フラアリー「ッ……。時間切れ」
フォーチュン「……? どうしたの? 降参かしら?」
フラアリー「うん。どうやら、目的は達成できたみたいだから」
フラアリー「……途中から、あなたの足止めのつもりが、あなたとの戦いを楽しんでしまったけれど」
フラアリー「それももう終わり。楽しかった。ありがとう」
フォーチュン「わたしとしては、もう少しあなたのお話を聞きたいのだけれど?」
フラアリー「ごめん。話せない。話しちゃダメって、言われてるから」
フォーチュン「そう。残念だわ」 クルッ 「……じゃあ、わたし、めぐみのところへ向かうから」
フォーチュン「……また、会えるかしら?」
フラアリー「………………」
フォーチュン「……残念だわ。さようなら、キュアフラアリー。ハト」
………………ヒュン!!
ぐらさん「あ……! ま、待ってくれよ、フォーチュン!」ピューン
フラアリー「……行っちゃった、か」
フラアリー「さようなら、キュアフォーチュン。いおな」 グスッ 「……ごめんね」
……
…………
………………ぴかりが丘 某所
ハト 「………………」
スイ 「………………」
ラフィ 「………………」
ハト 「みんな無事、足止めできた。女神モモ様のお役に立てた」
ハト 「もっと嬉しそうな顔をするべきだけど……。無理だよね」
スイ 「わたし、ゆうこに嫌われちゃったかな……」
ラフィ 「えぐっ……うぅ……」 グスッ 「……せっかく、ひめちゃんと」
ラフィ 「お友達になれたのに……」
ハト 「……よしよし。悲しいね、ラフィ」
ラフィ 「うぅ……ハト~」
スイ 「けど、これも女神モモ様のため。だから、大丈夫。大丈夫~」
ポンポン
スイ 「だから、ね。泣き止んで、ラフィ。わたしたち、がんばったよ~」
ラフィ 「うん……」
…………ガサッ……
ユウキ 「……皆さん、もう戻られていたのですね。ご無事で何よりです」
ハト 「ユウキ……。あなたも、大役ご苦労様」
ユウキ 「いえいえ。先輩方も、ハピネスチャージプリキュアの足止め、お疲れ様です」
ユウキ 「おかげで、つつがなく任務を終えることができました」
ラフィ 「じゃあ、誠司くんは……」
ユウキ 「こちらに」
誠司 「……なるほど。お前たちもグルだったのか」
ハト 「誠司さん……」
ハト 「うん。言い訳はしない。ユウキから話は聞いているかもしれないけれど、」
ハト 「わたしたちも惑星ピンキーからやってきたプリキュアだよ」
誠司 「………………」
ラフィ 「怒ってる……よね」
誠司 「……怒っていないと言ったら嘘になるが、それより、」
スイ 「なぁに?」
誠司 「お前たちが連れて行った、俺の友達に何かしてないだろうな?」 ギリッ
ハト (すごい怒気……。友達のことを本気で心配しているんだ)
ユウキ 「私はめぐみさんには指一本触れないと約束しましたが、」
ユウキ 「他の方に関しては、何かを保障した憶えはありませんよ?」
誠司 「……お前は少し黙ってろ」
ユウキ 「おやおや……」
ハト 「安心して、誠司さん。足止めをするために少し戦いはしたけれど、」
ハト 「傷つけたりはしていないから」
誠司 「よかった……」 ホッ 「……それだけ分かれば十分だ」
ハト 「………………」 (すごい人。自分がさらわれたというのに、友達の心配をしている)
スイ 「? ユウキ、モモ様はどこ~?」
ユウキ 「我々の内緒話を聞かせるわけにはいきませんから」
ユウキ 「離れた場所で、惑星ピンキーへ帰還するための御力を蓄えてもらっています」
誠司 「………………」 クルッ
ユウキ 「誠司さん、どちらへ行かれるおつもりですか?」
ユウキ 「まさかとは思いますが、逃げるおつもりですか?」
ユウキ 「……もしも、モモ様の笑顔を曇らせるおつもりなら、私にも考えが――」
誠司 「――――逃げねぇよ。約束したからな。約束は守る」
誠司 「だが、家族に手紙を残すくらいはさせてくれてもいいんじゃねぇか?」
ユウキ 「………………」
ハト 「……ユウキ。彼は我々の企みの被害者。それくらいは、させてあげないと」
ユウキ 「……わかっています。いいでしょう。ただし、もしも地球のプリキュアに助けを求めるつもりなら――」
誠司 「――――そんなこと、するわけないだろうが……!」
誠司 「お前たちに、これ以上友達を傷つけさせるわけ、ないだろうが……!」
ラフィ 「ひっ……」 ビクッ
スイ 「わ、わたしたち、だって……す、好きで、ゆうこたちと戦ったんじゃ……」
誠司 「……けっ。傷ついたあいつらに対して、その言葉になんの意味があるんだろうな」
ハト 「………………」 (厳しい言葉……。けれど、本当にその通り……。何も言い返せない)
誠司 「お前たちがあいつらの信頼を裏切ったことに変わりはないだろうが」
ユウキ 「……私はべつに、そんな言葉で傷ついたりはしませんよ?」
誠司 「お前はそうだろうさ。どうでもいい」
ユウキ 「ご家族にお手紙を残すことは構いません。ただし、私も同行させてもらいます」
誠司 「……勝手にしろ」
ユウキ 「では、先輩方。モモ様のことをよろしくお願いします。すぐに戻ります」
ユウキ 「戻り次第、惑星ピンキーに帰りますから、そのおつもりで」
ハト 「……うん」
スイ 「もう、帰っちゃうんだよね~」 ハァ 「また明日、って約束したんだけどな~」
スイ 「また明日、って……。ゆうこと、約束したんだけどな……」
ラフィ 「……ひめちゃんのこと、傷つけちゃった……わたし、本当に最低だ」
ハト 「いおな……」
………………ぴかりが丘 路地
誠司 「………………」
トコトコトコトコ……
ユウキ 「………………」
ピョコピョコピョコピョコ…………
誠司 (……あいつ、変な歩き方だな。子どもみたいな不安定な歩き方だ)
誠司 (いや、よく考えたら真央と同い年くらいの背格好なんだから、当たり前っちゃ当たり前か)
誠司 (10歳かそこらだろうに、よくまぁあそこまで冷血になれるもんだ)
ユウキ 「何か失礼なことを考えていませんか?」
誠司 「……当たりだよ」
ユウキ 「失礼千万な方ですね。女神モモはいつも正しいですが、」
ユウキ 「あなたを選んだことだけは不思議でなりません」
誠司 「そうかよ。そりゃ悪かったな」
ユウキ 「大体ですね、女神モモに伴侶として選ばれたというのに、なんですかその態度は」
ユウキ 「光栄に思い、感動にむせび泣き、神聖なる女神様に感謝し跪くべきでしょう?」
誠司 「うるせぇな。人のこと脅して連れてきたくせに、よくそんなことが言えるな」
ユウキ 「言葉は選びなさい。あなたは、自発的に惑星ピンキーに向かうのです」
誠司 「……わかってるよ」
ユウキ 「……ふん」
誠司 「けっ」
? 「……んぅ? あれ、お兄ちゃん?」
誠司 「ん? げっ……」 ビクッ 「真央……」
ユウキ 「……? どなたですか?」
誠司 「妹だよ……」 (あー、くそ。タイミングが悪い)
真央 「? お兄ちゃん、その子はだぁれ?」
誠司 「えっ? あ、いや、えーと……。み、道に迷ってたから、案内してあげてるんだ」
真央 「ふーん。めぐみちゃんたちは一緒じゃないの?」
誠司 「めぐみたちは……たぶん、大使館じゃないかな」
誠司 「お前は今帰りか?」
真央 「うん! 春休み明けだから、学校で久しぶりにお友達とお絵描きして遊んでたの!」
真央 「一回家に帰ったら、また遊びに行くね!」
誠司 「お、おう。わかった。気をつけてな」
誠司 (……よく考えたら、こうやって真央と話すのも最後になるのか)
ジワッ
誠司 「……!」 (ば、バカか俺は。泣いたりしたら、真央にヘンに思われる)
ユウキ 「………………」
誠司 (あいつのことだ。今は黙っているが、俺がへまをしたら、真央にも何をするか分かったもんじゃない)
真央 「……? お兄ちゃん、どうしたの? なんかヘンだよ?」
誠司 「へ、変じゃない。変じゃないぞ」 (話を逸らさないと……)
誠司 「ん、その画用紙に絵を描いたのか?」
真央 「うん! 見て見て、お兄ちゃん、ほら!」
バッ
真央 「この前お話したキュアハーティネスだよ!」
ユウキ 「……!?」
ユウキ 「キュアハーティネスですって……?」
真央 「へ……?」
ユウキ 「あっ……あなたは、もしかして……」
真央 「? どうかしたの?」
ユウキ 「………………」 フルフル 「……すみません。なんでもありません」
誠司 「キュアハーティネスって、赤いサイアークからお前を守ってくれたっていうプリキュアか?」
真央 「うん! とっても強くてとってもきれいで、とってもかっこよかったんだよ!」
真央 「……でも、誰もキュアハーティネスなんて知らないって言ってるの」
真央 「そんなプリキュア聞いた事ない、って」
真央 「わたし、たしかにアクロポリスプリキュアのキュアハーティネスだって、教えてもらったんだけどな」
誠司 「アクロポリスプリキュアねえ……」
誠司 「俺も会ってみたいな。真央を助けてくれたっていう、そのプリキュアに」
真央 「もしも会えたら、ちゃんとお礼を言うの! それで、サインももらうの!」
誠司 「そうだな。俺からもお礼を言わないとな。大切な妹を助けてくれた、そのプリキュアに」
誠司 「大切な、妹を……」
ポタッ……
真央 「……? お兄ちゃん……?」
誠司 「………………」 ゴシゴシゴシ 「……悪い。泣いてるわけじゃないんだ」
誠司 「泣いてるわけじゃ、ないんだ……」
真央 「お兄ちゃん、どうしたの!? どこか痛いの?」
誠司 「……なぁ、真央。よく聞いてくれ」
誠司 「お兄ちゃんな、ちょっと遠くに行かなくちゃいけないんだ」
真央 「遠く? 隣町?」
誠司 「……まぁ、そんなところだな」
誠司 「だから、お母さんの言うことをよく聞いて、良い子にしてるんだぞ」
ポタポタ………………
ユウキ 「………………」
真央 「……ねえ、お兄ちゃん、なんかヘンだよ? どうしたの?」
誠司 「お母さんのこと、しっかりと支えてあげてな」
誠司 「困ったことがあったら、かおりさんに言うんだぞ。めぐみに相談してもいい」
誠司 「白雪と大森、氷川も力になってくれるだろう。卓真だっている。ひとりで何かを抱え込んだりするなよ」
真央 「お兄ちゃんってば!」
誠司 「ごはんはちゃんと食べろよ。夜はしっかり寝ろよ。風邪、引くなよ」
誠司 「……一緒にいてやれなくて、ごめんな。お母さんによろしく伝えてくれ」
真央 「お兄ちゃん……?」
誠司 「……ユウキ。手紙はもういいよ。言いたいことは全部言えた」
ユウキ 「……そうですか。わかりました。では、戻りましょうか」
誠司 「ああ、悪いが、ちょっと走ってもらうぞ」
ユウキ 「それくらいなら、いくらでも」
真央 「お兄ちゃん……!」
タタタタタタ………………!!!
真央 「お兄ちゃん! ちょっと待ってよ! お兄ちゃん!!!!」
真央 「お兄ちゃーーーーん!!!!」
………………ぴかりが丘 ブルースカイ王国大使館
ひめ 「な、なんですってぇえええええええええ!?」
ひめ 「誠司が!? 自分から!?」
ひめ 「自分からそのモモって女神様について行ったの?」
めぐみ 「………………」 コクッ
ゆうこ 「どういうことだろう……」
いおな 「状況的に見て、ハト、スイ、ラフィの三人が女神モモとユウキの仲間なのは間違いないわ」
いおな 「けど、もしも相楽くんが本当に自発的に女神様について行ったのだとしたら、」
いおな 「わたしたちが彼女たちに足止めをされる理由がないわ」
ひめ 「……? どゆこと?」
いおな 「最初から相楽くんを穏便に連れて行く算段がついていたのなら、」
いおな 「ハトたちがわたしたちと戦う必要はないでしょう?」
いおな 「ユウキさんと女神様が相楽くんを説得して、それで終わりなんだから」
ひめ 「あ……ほんとだ!」
ゆうこ 「つまり、相楽くんは本心から着いていこうって思っているわけじゃないってことだね」
いおな 「おそらくそうだと思うわ」
いおな 「これはわたしの予想だけど、誠司くんは何かをタテに脅されたんじゃないかしら」
いおな 「たとえば、おとなしく着いてこないとハピネスチャージプリキュアの命はない、とか……」
ひめ 「!? 卑劣! 卑怯! そんなのずるいわ!」
ゆうこ 「………………」
ゆうこ 「……でも、スイちゃんたちがそんなことをするとは思えないな」
ゆうこ 「本当の本当に、良い子だと思ったけど……」
いおな 「そうね。ハトもとても気持ちの良い女の子だったわ」
ひめ 「ラフィもだよ……」 グスッ 「めちゃくちゃ仲良しになれたと思ったのに……」
いおな 「けど、ハトは辛そうだったわ。心苦しそうだった。ずっと、謝っていたもの」
ゆうこ 「良心の呵責に苛まれながら、わたしたちと戦った……」
ひめ 「そう考えるとつじつまが合うのかな……」
めぐみ 「………………」
フラ……フラフラ……
ひめ 「め、めぐみ? どこに行くの?」
めぐみ 「……行かなくちゃ。誠司のところに」
めぐみ 「行かなくちゃ……」
ひめ 「ダメだよ! みんなバラバラに探したら危ないよ!」
ひめ 「リボンたちが上空から探してくれてるから、すぐに見つかるよ」
ひめ 「わたしたちは、体力を温存しておかないと!」
いおな 「ひめの言うとおりだわ。プリキュアの姿で飛び回っていたら、」
いおな 「向こうにも警戒されてしまうわ」
いおな 「おとなしくぐらさんたちからの連絡を待ちましょう」
ゆうこ 「ほら~、めぐみちゃん。座って」
めぐみ 「………………」
めぐみ 「……わたしの、せいなんだもん」
ゆうこ 「え……?」
めぐみ 「誠司が連れ去られたのは、わたしのせいなんだもん!」
めぐみ 「わたし、言えなかった。誠司のこと、どう思ってるか」
めぐみ 「誠司に対しての気持ち、モモちゃんに言えなかった」
めぐみ 「モモちゃんは本当に誠司のことが好きなんだよ」
めぐみ 「だから誠司のことがほしいって、そう言ってたんだよ」
めぐみ 「それなのにわたしは、何も言えなかった」
めぐみ 「本当は、心の中にしっかりと答えはあったのに」
めぐみ 「それを言えなかったんだよ……! だから、モモちゃんは怒ったんだ……」
めぐみ 「……本当は、誠司を連れて行くつもりなんかなかったって、モモちゃんは言ってたよ」
―――― 『あなたとふたりきりで話して、もしもあなたが誠司くんを渡すことを拒むようだったら、』
―――― 『はたまた、誠司くんへの愛を叫ぶようだったら、おとなしく星に帰ろうとおもっていたけれど』
―――― 『……だめね。あなた、あんな戦いを経て、何も変わっていないのね』
―――― 『あなたのそういうこところが、誠司くんを苦しめるとなぜわからないの?』
―――― 『あなたのそういうところが、神レッドに誠司くんを奪われる理由になったと、なぜわからないの?』
―――― 『……もういいわ。あなたと話すことはない。あなたは、誠司くんがいらないみたいだから』
―――― 『正論を吐くばかりで、自分自身の内なる愛にも素直になれないようなあなたに、』
―――― 『絶対に誠司くんは渡さない……! 渡したくない……! はっきりとそう思ったわ!』
めぐみ 「わたしのせいだ……」
ゆうこ 「めぐみちゃん……」
ひめ 「そんなの絶対に違うよ!」
ギュッ
ひめ 「めぐみは悪くないよ! めぐみのせいじゃないよ!」
ひめ 「どんなきれい事を並べたって、女神様が誠司を連れ去ろうとしていることに変わりはないよ!」
ひめ 「そんなの、イチャモンつけてるだけじゃん!」
ひめ 「好きとか、きらいとか、そんなの人の勝手じゃん!」
ひめ 「わたしの大切な親友にそんな適当な文句つけて!」
ひめ 「惑星ピンキーの女神様! この白雪ひめを、本気で怒らせたわね!」
めぐみ 「ひめ……」
ゆうこ 「めぐみちゃん。大丈夫だよ。まだ間に合うよ」
ゆうこ 「相楽くんに、伝えたい言葉があるんでしょ?」
ゆうこ 「今度こそ、伝えに行こう?」
めぐみ 「ゆうゆう……」
いおな 「あなたはひとりじゃないわ、めぐみ」
いおな 「女神モモがお付きのプリキュアを従えてやってくるっていうなら、」
いおな 「わたしたちハピネスチャージプリキュアも、チームで戦うまでのことよ!」
いおな 「そして、相楽くんを取り戻しましょう!」
めぐみ 「いおなちゃん……」
…………バーン!!!
リボン 「み、みみみ、見つけましたわー!」
ひめ 「わっ、びっくりした! リボン!?」
リボン 「女神様たちを見つけましたわー!」
いおな 「本当に!?」
リボン 「ええ! いま、ぐらさんとファンファンが監視していますの!」
リボン 「急いでわたしに着いてきてくださいな!」
………………ぴかりが丘 某所
ユウキ 「ただいま戻りました」
誠司 「………………」
モモ 「あっ……」 ホッ 「よかった。もう戻ってこないんじゃないかと思ったわ」
誠司 「……約束は守るさ。惑星ピンキーには行くよ」
モモ 「約束……?」
ユウキ 「………………」
誠司 「いや、なんでもない。俺が行きたがってるんだから、逃げるわけないだろ?」
モモ 「そ、そうね。その通りだわ」
ユウキ 「………………」 コソッ 「失言には注意してくださいね?」
誠司 「……わかってる」
ハト 「………………」 ビクッ 「……何かが、近づいてくる」
スイ 「大きな力が四つ……」
ラフィ 「……考えるまでもなさそうだね」
ユウキ 「なるほど」 クスッ 「……誠司さん、あなたは良いお友達をお持ちですね」
誠司 「……!?」 (遠くから飛んでくるあのシルエットは……)
誠司 「なんで来るんだよ……! めぐみ……!」
誠司 (俺はもう、おまえに……ッ) ギリッ (傷ついてほしくないんだ……!)
スタッ……スタッスタッスタッ……
ラブリー 「………………」
キッ
ラブリー 「……誠司を返してもらいにきたよ。モモちゃん! ユウキちゃん!」
ユウキ 「……返すも何も、誠司さんは自分から我々に着いていきたいとおっしゃっていますが?」
プリンセス 「うそだよ! 誠司が真央ちゃんとお母さんを置いてどこかに行くわけないじゃん!」
ラフィ 「ひめちゃん……」 グスッ 「また、戦わなくちゃいけないの?」
プリンセス 「ラフィ! ラフィだって、間違ってるってわかってるんでしょ!?」
プリンセス 「誠司を返して!」
ハト 「……致し方ありません。我らが女神、モモ様のためです」
フォーチュン 「ハト……」
スイ 「……うん。モモ様のためなら」
ハニー 「スイちゃん。わたし、また明日もスイちゃんと一緒にご飯が食べたいよ」
スイ 「………………」 ギリッ 「……わたしだって、そうしたいよ……」
スッ……
ユウキ 「先輩方のお辛そうな顔は見たくありません」
ユウキ 「この方たちは私が相手をします。先輩方はモモ様と誠司さんをお願いします」
モモ 「……誠司くんはこんなにたくさんの人に慕われているのね」
モモ 「ねえ、ユウキ。わたし、やっぱり……誠司くんを連れて行くなんて……――」
ユウキ 「――――ご心配には及びません、モモ様」 ニコッ 「ちょっとお話をするだけですから」
モモ 「ユウキ……」
ラブリー 「やっぱりユウキちゃんもプリキュアなんだね」
ユウキ 「ええ。まぁ、先輩方に比べれば、未熟も良いところのプリキュアですが」
ユウキ 「プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
―――― 「星守る鼓動! キュアハーティネス!」
誠司 「……!?」 (キュアハーティネス……!? ユウキが!?)
誠司 (じゃあ、真央を助けてくれたプリキュアってのは……)
誠司 「ユウキ、だったのか……?」
キュアハーティネス 「……さぁ、ハピネスチャージプリキュアの皆さん」
ハーティネス 「どこからでもどうぞ。まとめてかかってきてくださって構いません」
ハト 「……さ、モモ様、誠司さん、こちらへ」 スッ
モモ 「え、ええ……。行きましょう、誠司くん」
誠司 「ち、ちょっと待ってくれ。モモ、ひとつ聞かせてくれ!」
モモ 「ど、どうしたの、誠司くん?」
誠司 「ユウキは以前、このぴかりが丘にやって来たことがあるのか?」
モモ 「えっ……?」 ギクッ 「ど、どうしてそれを……?」
誠司 「俺の妹がキュアハーティネスってプリキュアに助けられたって言っていたんだ!」
モモ 「そ、それは……」 コクッ 「……ええ。一度だけ、地球にわたしのプリキュアを送ったことがあるわ」
モモ 「で、でも、勘違いしないで。地球に対しての内政干渉とか、侵略とか、そんなことをするつもりはなかったわ!」
モモ 「幻影帝国との戦い……つまり、地球人の意志によって生み出された存在と地球人との戦いならいざ知らず、」
モモ 「神レッドが直接手を下した、いわば星間戦争のような状態の、地球に非無き戦い」
モモ 「……それに手を貸さないほど、わたしは冷血にはなれなかったわ」
誠司 「……なるほど」
誠司 「つまりモモ、お前は……レッドに破壊されようとした地球のために、自分の星のプリキュアを送り込んでくれたんだな」
モモ 「……ええ。わたしの星の都市防衛精鋭部隊。アクロポリスプリキュアをね」
モモ 「ユウキ、ハト、スイ、ラフィもその一員よ。四人ともあのとき地球に降り立っているはずよ」
誠司 「………………」
誠司 「……俺は、」
モモ 「……?」
誠司 「……俺は、お前たちを誤解していたのかもしれないな」 スッ……
モモ 「えっ……? ち、ちょっと、誠司くん!? そっちは危険よ!」
スイ 「誠司さん!」
モモ 「誠司くん!」
………………
ハーティネス 「………………」
クスクスクス
ハーティネス 「どうしたんですか? 私はたったひとりですよ?」
ラブリー 「くっ……」 (キュアハーティネス……)
プリンセス 「ぜぇ、ぜぇ……」 (わたしたち、四人まとめて相手しているのに……)
ハニー 「……っ」 (すごい強さ……)
フォーチュン 「……まだよ!」
ザッ……!!!
フォーチュン 「星の光を聖なる力に! フォーチュンタンバリン!」
ハーティネス 「……なるほど」 クスッ 「さすがは墜ちた神を討ちしハピネスチャージプリキュア」
フォーチュン 「フォーチュン・サンダーボルト!」
ハーティネス 「ですが、その程度ならば!」
ハーティネス 「ハーティネス・ハートダイナマイト!」
……………………ズドンッッッ!!!!!!
フォーチュン 「なっ……!?」 (サンダーボルトが爆炎で散らされた!?)
フォーチュン (爆発の威力も凄まじいけれど、何より、)
フォーチュン (一瞬にしてわたしの技を読み取り、それに対応する能力……!)
フォーチュン (なんてプリキュアなの……!)
ハーティネス 「……ねえ、ハピネスチャージプリキュアの皆さん。気づいてますか?」
ハーティネス 「皆さんがドロドロに汚れ、ボロボロに傷ついている中、」
ハーティネス 「私はまだ汚れ一つついていませんよ?」
ラブリー 「っ……」
ハーティネス 「あなた方では私には勝てません。誠司さんを取り戻すこともできません」
ハーティネス 「あきらめてお帰りになったらいかがですか?」
スッ
ハーティネス 「そうしていただかないと、私は皆さんを力で制圧しなければならなくなります」
ハーティネス 「このキュアハーティネスの持つ最強の矛の力は、こんなことに使うべきではないのです」
ハーティネス 「それは、慈悲深き我らが女神モモ様の意志に反します」
ハーティネス 「どうか私に、これ以上この力を振るわせないでください」
ラブリー 「………………」 ザッ……!!! 「……まだよ。わたしは、誠司に、」
ラブリー 「誠司に、伝えたい気持ちが、あるんだ……!!」
ラブリー 「だから、わたしは……!! ハーティネス、あなたを――」
―――――― 「もうやめろ!!」
ラブリー 「!? 誠司……!」
誠司 「もう、やめてくれ……!」
ハーティネス 「……何をしているんですか。危ないですから、向こうに行っててください」
ハーティネス 「あなたの大切なお友達を傷つけたりしませんよ。ご心配なく」
誠司 「そうじゃねえ。そうじゃねえんだよ……」
誠司 「キュアハーティネス。お前、赤いサイアークから、真央を助けてくれただろ……」
ハーティネス 「……モモ様がお話になったのですか?」
誠司 「ああ。全部聞いたよ」
スッ
誠司 「みんな、聞いてくれ。拳を下ろしてくれ」
ハニー 「相楽くん……?」
誠司 「……なぁ、みんな。知ってたか?」
誠司 「ここにいる惑星ピンキーのプリキュアたちの名前を」
フォーチュン 「名前……?」
誠司 「こう言えばきっと分かるはずだ。察するはずだ」
誠司 「――アクロポリスプリキュア」
プリンセス 「へ……? アクロポリスプリキュアって、あの、たくさんの人を助けたっていう、謎のプリキュア……?」
フォーチュン 「まさか、じゃあ……」
誠司 「そうだよ。地球が赤いサイアークで溢れたあのとき、」
誠司 「俺が情けなくレッドに操られていたあのとき、」
誠司 「……まったく無関係のはずの惑星ピンキーのプリキュアであるユウキたちが、」
誠司 「地球を守る手伝いをしてくれていたんだよ……!」
誠司 「多くの地球人を救ってくれたんだよ……!」
モモ 「……それをひけらかしたりしたくなかったわ」
ハーティネス 「!? モモ様! ここは危険です!」
モモ 「大丈夫よ。ハピネスチャージプリキュアは、無防備なわたしを攻撃するような人たちではないわ」
モモ 「……わたしが地球を助けたのは、わたしが地球を助けたいと思ったからよ」
モモ 「あなたたちが恩義を感じる必要はないわ」
誠司 「………………」
スッ
誠司 「……モモ。俺さ、本当のこと言うと、惑星ピンキーに行く気なんかなかったんだ」
ハーティネス 「なっ……せ、誠司さん!」
モモ 「……ええ。なんとなく察していたわ。きっとユウキが無理を言ったのね」
モモ 「ごめんなさい。わたしのプリキュアの不手際だわ。こんなに大事にしてしまって……」
誠司 「話は最後まで聞いてくれ、モモ」
モモ 「えっ……?」
誠司 「ユウキは無理なんか言ってないよ。ちょっと誘い方が強引だっただけだ」
誠司 「ユウキを責めないであげてくれ。あいつは、俺の妹の命の恩人なんだ」
誠司 「それにさ……」
誠司 「俺、今は、惑星ピンキーに行きたいって思ってるんだぜ」
モモ 「へ……?」
誠司 「地球を助けてくれたプリキュアたちの故郷、」
誠司 「地球を助けてくれたモモの星、」
誠司 「それを見てみたいって、思うんだ」
ラブリー 「誠司……? な、何を……」
誠司 「俺は本気だぜ。だからハーティネス。お前も拳を下ろしてくれ」
ハーティネス 「………………」
誠司 「俺、お前のことを誤解していたみたいだ。地球を助ける手伝いをしてくれるようなお前を、」
誠司 「勝手に悪者にしてたよ。ごめんな」
ハーティネス 「なっ……」 カァアアア…… 「べっ、べつに! 好きで助けたわけじゃ、ないですから!」
モモ 「誠司くん、さっきも言ったけれど、恩義を感じる必要なんてないのよ?」
モモ 「むしろ、恩返しのつもりでわたしと一緒に来てくれるのなら、」
モモ 「……それは、わたしにとってとても辛いことだわ」
誠司 「そりゃ、恩返しの気持ちがないわけじゃないけどさ、」
誠司 「これも俺の本心だよ。地球を救う手伝いをしてくれたモモのために、」
誠司 「俺にできることがあるなら、してあげたいって思うよ」
モモ 「誠司くん……」
ラブリー 「ち、ちょっと待ってよ! 誠司! さっきから何を言ってるの!?」
ラブリー 「惑星ピンキーに行っちゃうって、だって、それって……」
ラブリー 「戻ってこられるかわからないんだよ!?」
誠司 「……いいさ。真央にはお別れを言った。母さんも、きっとわかってくれるだろう」
プリンセス 「誠司! 本気で言ってるの!? わたしたちともお別れなんだよ!?」
誠司 「そうだな。お前たちとも学校のみんなとも道場のみんなとも会えなくなるな」
誠司 「それでも行きたいんだ」
ハニー 「相楽くん、落ち着いて。流されちゃダメだよ」
ハニー 「それは相楽くんの本心?」
誠司 「本心だよ。俺、モモの役に立ちたいって思うんだよ」
フォーチュン 「………………」 スッ 「……相楽くんが本心から決めたことなら、わたしは構わないけれど」
フォーチュン 「なら、もう少しお話をしない? 気が変わるかもしれないわ」
誠司 「気が変わるのを待つつもりなら、無駄だ。ハーティネスは……モモは、真央の命を救ってくれたんだぞ?」
誠司 「そんな人たちに誠意を見せられないほど、俺は弱くないぞ」
プリンセス 「誠司! でも……!」
誠司 「白雪、お前と知り合ってもう一年か。長い一年だったな」
誠司 「ありがとよ。楽しかった」
ハニー 「相楽くん……」
フォーチュン 「相楽くん!」
誠司 「大森と氷川。お前たちには小さい頃から世話になったな」
誠司 「おおもりご飯のみんなと、道場のみんなによろしくな」
ラブリー 「誠司……」
誠司 「めぐみ、お前とはなんだかんだで、ずっと一緒だったな」
誠司 「子どもの頃からずっと一緒。中学校でも一緒。これからもずっと一緒……」
誠司 「なんて、俺は勝手に思ってたけどな」
誠司 「……結局、言えないことがひとつあるけど、」
誠司 「まぁ、もういいかな。そんな言葉だけ残していくのも卑怯だろうしな」
ラブリー 「誠司、お願い、聞いて。わたし、伝えたい言葉があるの!」
タタタタ……ギュッ
誠司 「めぐみ……」
ラブリー 「……こうやって、手を握るの、いつぶりかな」
ラブリー 「真正面から向き合って、手を握って……」
ラブリー 「少し恥ずかしいね……////」
ハーティネス (まずい。これ以上キュアラブリーの言葉を聞けば、誠司さんの意志は……)
ラブリー 「恥ずかしいけど、でも、言うね。誠司、わたし……わたしね……――」
誠司 「――なぁ、めぐみ。知ってるか?」
ラブリー 「えっ……?」
誠司 「空手にも、実は投げ技ってあるんだよ」
ザッ……!!!! ブゥン!!!!!
ラブリー 「なっ……!」 (な、何……!? 視界が、反転して……)
ラブリー (わたし、誠司に……)
ラブリー (誠司に、投げ飛ばされたの……?)
プリンセス 「ぬあっ!? せ、誠司がラブリーを投げ飛ばした!?」
プリンセス 「ラブリー!」 ガバッ
ラブリー 「………………」
ハニー 「プリンセス、ナイスキャッチ! ラブリー、大丈夫……?」
ラブリー 「誠司……? 誠司が……わたしを……」
フォーチュン 「ッ……!」 ギリッ 「相楽くん、あなた!」
誠司 「………………」
フォーチュン 「あなたは、めぐみを守りたいと言って学び始めた空手で、めぐみを傷つけるの!?」
誠司 「……氷川流空手を汚したのなら謝る。だが、本来空手において投げは攻撃じゃないだろ」
フォーチュン 「詭弁よ!」
誠司 「その通りだ。俺が、自分の意志で、俺の道を阻もうとしたプリキュアを、攻撃した」
誠司 「……それだけだ」
ハニー 「うそだよ! 相楽くん、それならどうしてあなたはそんなに悲しそうな顔をしているの!?」
ハニー 「そんなに辛そうな顔をしているの!?」
誠司 「そう思うなら、もう俺のことは放っておいてくれないか」
モモ 「……本当にいいの? 誠司くん」
誠司 「ああ。モモ、俺を惑星ピンキーに連れて行ってくれ」
モモ 「……うん。わかったわ」 ニコッ 「安心して、誠司くん。あなたはわたしが絶対に幸せにするから」
モモ 「あなたは、女神の旦那様として、惑星ピンキーの頂点に君臨するのよ!」
誠司 「そ、それはちょっと……」
フォーチュン 「行かせないわ!」
ハニー 「相楽くん!」
ガシッ……!!!!
ハニー 「!? ら、ラブリー!? どうしてわたしたちの服を掴むの!?」
ラブリー 「……だめだよ。だって、誠司が行きたがってる」
ラブリー 「誠司に、嫌がられてる。わたし、これ以上誠司に嫌われたくないもん……」
フォーチュン 「ラブリー! ラブリー、しっかりして!」
フォーチュン (信頼しきっていた相楽くんから拒絶されて、混乱しているんだわ……!)
ハーティネス (揉めている。今がチャンスですかね) 「モモ様、先輩方、変身して星間巡航フォーメーションを」
ハト 「ええ」
パァアアアアアアアアア……!!!!
フラアリー 「キュアピンキー。イージスをお願いします」
ピンキー 「ええ。プリキュア・イージスクレイドル!」
――――――ッカッ……!!!!
誠司 (ピンキーたち四人のプリキュアが、俺とハーティネスを囲むように立って、)
誠司 (おそらくその外側を、ピンキーのあの壁を作り出す能力が取り囲んだ)
誠司 (……これで、惑星ピンキーまで行けるのか)
ラブリー 「………………」
誠司 「……めぐみ、ごめんな」
プリンセス 「ラブリー! ラブリー、しっかりして!」
ハニー 「ラブリー!」
フォーチュン 「相楽くん! ダメよ! 行っちゃダメ!」
誠司 「……じゃあな、みんな」
――――――ッカッ……!!!!!!!!!!
………………コォォォオオオ…………
プリンセス (飛び立っていく……誠司を乗せて、遠くへ……)
プリンセス 「やだ……やだよ」
プリンセス 「誠司ぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
ラブリー 「………………」
ラブリー 「……誠司に……わたし……」
ラブリー 「嫌われ、ちゃった……」
ポタッ……ポタッポタッ……
ラブリー 「誠司……っ」
………………???
「……おい、こんな勝手をこのまま見過ごしていいのか」
「わかってる。さすがに許してはおけないさ」
「ふん。しかしアイツも自らモモに着いていくとはな。まったく……」
「兄さん、悪いけど……――」
「みなまで言うな。やってやる。俺は惑星ピンキーへ向かう。お前は地球へ急げ」
「すまない。僕の星のことで、迷惑をかける……」
「ふん。気にするな。俺としてもアイツに一言くらい言ってやりたい気分だからな」
「……モモ。優秀な女神である彼女が、どうしてこんなことを」
「……何か理由があるにせよ、このままではまずい。モモの奴、俺と同じように墜ちるぞ」
「ああ。だから僕たちが止めなければ。なんとしても」
………………
……
…………
………………星間航行 イージス内
誠司 「………………」
ハーティネス 「おやおや、うつむいて、険しい顔をして、」
ハーティネス 「今さら後悔ですか? もう遅いですけどね」
誠司 「……後悔なんかしてないさ。俺が行きたいって言って着いてきた
ハーティネス 「そうですか。まぁ、どんな感情を抱いたところで、何も変わりませんけどね」
誠司 「……ああ」
クスッ
誠司 「それもそうだな。こんなところで、自己満足の感傷に浸ってても仕方ないか」
ハーティネス 「………………」 (切り替えが早い……いや、)
誠司 「………………」 グッ……!!!
ハーティネス (……拳が震えている。必死で気持ちを抑えているんですね)
ハーティネス 「……なんだか知りませんけど、外でも見てみたらどうです?」
誠司 「……?」
ハーティネス 「いくらなんでも、宇宙に出るのは初めてでしょう?」
コォォオオオオオ………………
誠司 「………………」
誠司 「……すっげぇ」
誠司 (お、俺、本当に宇宙にいるよ……)
誠司 (いや、前に惑星レッドに行ったことはあったけど……)
誠司 (今度は本当の本当に、宇宙を飛んでる……!)
誠司 (こんなに宇宙を感じてる地球人、俺が初なんじゃねえか……?)
ハーティネス 「………………」 ボソッ 「……何をはしゃいでいるんですか。子どもですか」
誠司 「なっ……は、はしゃいでなんかねえよ!」
ハーティネス 「そうですか。それは失礼致しました」
誠司 「……けっ、子どもはそっちだろうが」
ハーティネス 「聞こえてますよ? プリキュアに変身すればあなたと同い年くらいです」
誠司 「そうだな。性格は子どもっぽいままだけどな」
ハーティネス 「……あなたに言われたくありません」
フラアリー 「………………」
メロディアス 「………………」
ハピネス 「………………」
ピンキー 「………………」
誠司 「……? な、なぁハーティネス。なんかみんな黙りこくって集中してるみたいだけど、」
誠司 「一体どうしたんだ?」
ハーティネス 「はぁ? いまは宇宙空間を亜光速で飛んでいるんですよ?」
ハーティネス 「その制御をしてくださっているモモ様と先輩方が集中しないわけがないでしょう?」
誠司 「そうか。四人がこの、イージスだっけ? これを維持してくれているのか」
誠司 「……あの四人に何かあったら、俺たち宇宙に放り出されるのか」
ハーティネス 「そんなことはあり得ませんから安心してください」
ハーティネス 「ちなみにイージスはモモ様の能力です。絶対的な盾ですので、破れることはあり得ません」
ハーティネス 「先輩方は、イージスの舟を推進させてくださっています」
誠司 「なるほどなぁ……」
ジッ
ハーティネス 「……なんですか。人のことをじろじろ見て。気持ちの悪い」
誠司 「いや、お前は何もしないんだな、って」
ハーティネス 「………………」
フン
ハーティネス 「……仕方ないじゃないですか。私は未熟で、力の制御がまだ満足にできないのですから」
ハーティネス 「それに……」
キィイイイイイイイイイイイイ……ポン!
ユウキ 「……私はまだ子どもですから、変身は制限付きです。連続変身時間は三十分もいけば良い方ですね」
誠司 「……やっぱり子どもじゃないか」
ユウキ 「それなりにコンプレックスなので、それ以上言うとさすがに私も怒りますよ?」
誠司 (……不思議なもんだ。ハピネスチャージプリキュア四人を相手に互角以上に渡り合ったハーティネスが未熟だなんて)
誠司 (制限付きとはいえ、こいつ、なんでこんなに強いんだ……?)
ユウキ 「………………」
ユウキ 「誠司さん」
誠司 「ん?」
ユウキ 「ひとつ教えてください」
ユウキ 「……どうして、キュアラブリーを投げ飛ばしたりしたのですか?」
―――― 『恥ずかしいけど、でも、言うね。誠司、わたし……わたしね……――』
―――― 『――なぁ、めぐみ。知ってるか?』
―――― 『空手にも、実は投げ技ってあるんだよ』
誠司 「………………」
ユウキ 「まさか、彼女が何を言おうとしていたか分からないなんて、そんな鈍いことは言わないですよね?」
ユウキ 「私が聞くのもおかしな話ですが、なぜめぐみさんの言葉を聞いてあげなかったのですか?」
誠司 「……惑星ピンキーに行く俺に、そんな言葉を投げかけたら、めぐみはきっとその言葉に縛られる」
誠司 「あいつは不器用な奴だからな。俺に嫌われたって思い込むくらいでちょうどいいんだよ」
誠司 「そうすれば、めぐみはきっと自分の幸せを手に入れられるはずだ」
ユウキ 「誠司さん……」 (この人は、ひょっとしたらすごい人なのかもしれない)
ユウキ (この人にとって、惑星ピンキーへ向かうことは、あの時点ですでに確定事項だったんですね)
ユウキ (この人はあくまで、女神モモに対して恩義を果たそうとしている)
ユウキ 「……少しだけ、見直しました」 ボソッ
誠司 「……? なんか言ったか?」
ユウキ 「いえ、べつに。何も」
誠司 「そうかよ」
……フッ
誠司 「……それに、あのままじゃ、きっとめぐみはまたお前たちと戦ってたよ」
ユウキ 「ははぁ。キュアラブリーが傷つくのを見たくなくて、自分でラブリーを投げ飛ばしたんですね?」
ユウキ 「健気ですね。でも、あれでめぐみさんは心に相当なキズを負ったと思いますよ? 本末転倒ですね」
誠司 「そうじゃない。めぐみは傷つけちまったし、それは不本意だけど……」
誠司 「少なくとも、本当は優しいキュアハーティネスが無理して戦う必要はなくなったからな」
ユウキ 「……!? はぁ!? 優しい!? いきなり何を言うんですか!?」
カァアアア……
ユウキ 「わ、私は! 女神モモ様の付き人にして最側近、泣く子も黙る最強、キュアハーティネスですよ!?」
ユウキ 「そんな私に対して 『本当は優しい』 とはどういう了見ですか!」
誠司 「………………」 フゥ 「なるほど。よくわかった。お前のあの嫌味で陰険なキャラクターは、」
誠司 「モモの護衛としてメンツを保つために、無理して作ってるんだな。お前こそ健気で泣けるぜ」
ユウキ 「な、何を勝手なことを言っているんですか! 無礼な人です……!」
誠司 (意外と面白い奴だな、こいつ)
誠司 (……もちろん、地球に心残りはあるけど、)
誠司 (本当に楽しみになってきたな、惑星ピンキー)
誠司 (どんなところなんだろうか……)
―――― 『誠司』
誠司 「………………」 (……早く、俺のことなんか忘れてくれよ)
誠司 (めぐみ……)
キラッ……
誠司 「あっ……」 (そういや、ブルーからもらった愛の結晶、持ってたんだな)
―――― 『同じだな』
―――― 『同じだね』
誠司 「………………」 ゴソゴソ (忘れよう。もう、俺には関係ない話だ)
………………ぴかりが丘 ブルースカイ王国大使館
めぐみ 「………………」
ひめ 「………………」
ゆうこ 「………………」
いおな 「………………」
ソワソワソワソワ……アワアワアワアワアワ……
リボン (うぅ~、みんなしょぼくれて顔をあげようとすらしませんわ) コソッ
ぐらさん (俺たちがどうこう言ってどうにかなることじゃなさそうだぜ)
ファンファン (相楽誠司の奴、なんだってあんなことを……!)
リボン (誠司くん、どうして……)
ぐらさん (誠司の野郎……! 今度会ったら覚えてやがれってんだ!)
ぐらさん (今度会えたらだがな……くそっ)
ピンポーン
リボン 「あら、こんなときに、お客さん……」
ひめ 「あ……」 ヨロヨロ……
リボン 「いいですわ、ひめ! わたくしがインターフォンで取りますから!」
ガチャッ
リボン 「もし、申し訳ありませんが、本日は……――」
リボン 「へ……? あ……は、はいですわ! いま参りますので、少々お待ちくださいな!」
ガチャッ
ひめ 「リボン……? 誰が来たの?」
リボン 「ど、どうしましょう……」 アセアセ 「誠司くんの妹さんがいらしているようですわ」
ひめ 「!? 真央ちゃんが……?」
………………大使館 リビング
真央 「えぐっ……ぐすっ……うぅ……」
卓真 「相楽、もう泣くなよ……」
ひめ 「真央ちゃん、一体どうしたの!?」
真央 「うぅ……」
卓真 「……俺が見つけたときには、相楽の奴もう泣いててさ」
卓真 「それからずっと泣き止まないから、俺も少ししか話を聞けてないんだけど」
卓真 「『お兄ちゃんが遠くへ行っちゃった』 って……」
ひめ 「えっ!? ど、どうしてそれを真央ちゃんが……?」
いおな 「ひ、ひめ!」
ひめ 「あ……」
卓真 「ひめ姉ちゃん、何か知ってるのか!?」
ひめ 「え、えっと……その……」
卓真 「知ってるなら教えてくれよ! 相楽、ずっと泣いてるんだよ!」
グスッ
卓真 「相楽が、泣いてると……俺も悲しいんだよ……」
ゆうこ 「真央ちゃん、卓真くん……」
ひめ 「ど、どうしよう……わたし、余計なこと言っちゃった……」
いおな 「仕方ないわ。わたしたちだって混乱しているもの」
いおな 「とりあえず、真央ちゃんと卓真くんは、誤魔化すしかないかしらね」
めぐみ 「………………」
ギリッ
めぐみ (……わたし、馬鹿だ)
めぐみ (自分だけが辛いんだって、悲しいんだって、思い込んで……)
めぐみ (誠司の周りの人のこと、全然考えてなかったんだ)
めぐみ 「……真央ちゃん」
ギュッ
真央 「……? めぐみ、ちゃん……」
めぐみ 「誠司ね、ちょっと遠くに行かなくちゃいけなかったの」
ひめ 「えっ!? ち、ちょとめぐみ、それは……――」
ゆうこ 「しっ、ひめちゃん」
ひめ 「ゆうこ? でも……」
ゆうこ 「めぐみちゃんに任せよう。きっと大丈夫だよ」
真央 「そうなの……??」 グスッ 「じゃあ、やっぱり……もう、帰ってこないんだ……」
真央 「お兄ちゃんに、もう会えないんだ……」
ギュゥッ……
めぐみ 「大丈夫。大丈夫だよ。絶対に帰ってくるよ」
めぐみ 「絶対に大丈夫。わたしが約束するよ」
真央 「めぐみちゃん……」
めぐみ 「真央ちゃんの大好きなプリキュアが、誠司のことを連れ戻してくれるから」
真央 「! プリキュアが!?」
めぐみ 「そうだよ。ハピネスチャージプリキュアのみんなが、もう動き出してるんだから!」
めぐみ 「だから、大丈夫。安心して」
真央 「うん……!」
ニコッ
真央 「プリキュアがきてくれるなら、大丈夫! 大丈夫……」
クラッ
真央 「あ、あれ……なんか、眠い……」
ゆうこ 「真央ちゃん、たくさん泣いて疲れちゃったんだね~。少しおやすみしようか?」
真央 「……うん」
………………大使館 寝室
真央 「………………」 スヤスヤ
卓真 「……ったく、真央のやつ、泣き疲れて寝ちまうなんて」
卓真 「ずっと励ましてたこっちの身にもなれってんだよ……」
めぐみ 「ふふ、さすがは卓真隊長、偉かったね」
ナデナデ
卓真 「べ、べつに……俺はヒーローだから、困ってる人がいたら、放っておくわけにはいかないだろ」
ひめ 「さっすが隊長!」 グッ 「……じゃあ、もうひとつお願い聞いてもらってもいい?」
卓真 「……いいけど。なんだよ、ヒメルダー」
ひめ 「今晩、真央ちゃんの傍にいてあげて。おうちにはわたしたちから連絡しておくから」
卓真 「それはいいけど、姉ちゃんたちは?」
めぐみ 「……誠司を連れ戻しに行ってくる」
めぐみ 「絶対連れ戻す。これ以上、真央ちゃんに悲しい思いをしてほしくないから」
めぐみ 「誠司に怒られようが、嫌われようが、なんだろうが、」
キッ
めぐみ 「絶対に連れ戻してやるんだから! 覚悟しておきなさいよ、誠司!」
ひめ 「めぐみぃ……! それでこそ、わたしの大好きなめぐみだよ!」
………………
フラアリー 「……惑星ピンキーに接近。ユウキ、着陸の衝撃が強いかも。念のため、誠司さんをよろしく」
ユウキ 「はい。では、誠司さんはわたしに掴まっていてください。着陸時にやや足場が不安定になりますから」
誠司 「お、おう……」
ギュッ……
誠司 (とうとう来ちまったな……惑星ピンキー)
誠司 (……本当に桃色がかった星なんだな。きれいだ)
誠司 (形は違うけど、桜みたいなきれいな桃色だ)
―――― 『ねえねえ誠司! 桜が綺麗だよ!』
誠司 「ッ……!」 (いつまで引きずってんだ、俺は)
ユウキ 「……どうかされました?」
誠司 「いや、なんでもない……」
ユウキ 「そろそろ惑星ピンキーの大気圏に突入します。ボーッとしていないで、気を引き締めてくださいね」
ユウキ 「あなたは、それでも一応女神モモ様の婚約者様であらせられるのですから」
誠司 「はいはい、わかったっての……」
誠司 (……なんか、こいつの嫌味聞いてると、色々忘れられてありがてぇな)
誠司 「……ありがとよ、ユウキ」
ユウキ 「は、はぁ? 何でお礼なんです? 気持ち悪い人ですね」
誠司 「ん……?」
誠司 (惑星ピンキーの周囲に、何かがたくさんある……?)
誠司 (チリみたいなのから、結構大きなものまで……)
誠司 (あれ、全部隕石になって惑星ピンキーに落ちるんじゃ……)
………………惑星ピンキー 都市アクロポリス
フラアリー 「……ふぅ。着陸を確認。もう大丈夫です、キュアピンキー」
ピンキー 「わかったわ」
パァアアアアアア……ポン!
モモ 「イージスクレイドルの船、もう少し改良が必要ね」
モモ 「まぁ、もう星間航行なんかすることもないかしら……」
誠司 「……これが惑星ピンキーか」
誠司 「古代ギリシャみたいな街並みだな……」
ユウキ 「む……」
ユウキ 「地球ほど高度に文明は発達していませんけど、素晴らしい星なんですよ?」
誠司 「あ、いや、不満なわけじゃないんだ」
誠司 「なんていうか、いい街並みだな。お前が大好きなのもうなずけるよ」
ユウキ 「ふん……」 プイッ 「わかればいいんです。わかれば」
ドドドドドドドドドド……!!!
誠司 「ん……?」 ギョッ 「なっ……!?」
誠司 「すげえ数の人が走ってくる……!?」
ユウキ 「出迎えでしょう。女神モモ様のご帰還ですから」
『モモ様ー! アクロポリスプリキュア! おかえりなさい!!!』
誠司 (すげえ数の人たちだ。これが全員モモの出迎え……?)
誠司 (モモは本当にこの星の人々に慕われているんだな……)
モモ 「みんな、この星の女神でありながら、この星を留守にしてしまったこと、本当にごめんなさい」
モモ 「けれど、皆さんのおかげで、わたしは大切な方に来ていただくことができたわ」
誠司 「………………」 (うお、すげえ……目線が俺に集中してる……)
モモ 「ふふ……」 クスッ 「しっかりとした挨拶はまた今度させてもらうわね。とりあえず……」
モモ 「みんな、ただいま!」
『おかえりなさい! モモ様!』
ワーーーーキャーーーー!!!!!
誠司(す、すげえ。右から左から、すごい歓声だ。みんな本当に、モモが帰ってきてくれたことが嬉しいんだ)
誠司 「お、おい、ユウキ」 コソッ 「すげえな。モモって」
ユウキ 「ふん」 ニコッ 「何をいまさらなことを言っているんですか! 当然でしょう?」
誠司 (モモのことになるとこいつ、本当に嬉しそうな顔をするなぁ)
誠司 (ん、そういえば……) スッ (隕石、大丈夫なのかな。特に空には何も見えないけど……)
モモ 「さ、誠司くん、神殿に向かいましょう」
ギュッ
誠司 「ん? 神殿?」
モモ 「ええ。わたしの住まいよ。長旅で疲れているでしょう? そこで休みましょう」
モモ 「アクロポリスプリキュアのみんな、あなたたちもそれぞれ疲れているでしょう」
モモ 「しっかりと静養しなさい」
ユウキ 「いえ、私はモモ様付きのプリキュアです。このままご一緒させていただきます」
モモ 「……まったく。ユウキ、あなたは少しは休むということを覚えた方がいいわ」
ユウキ 「私は星間航行中、ずっと休んでおりましたから、大丈夫です」
ユウキ 「先輩方はどうぞお休みになっていてください」
ハト 「……では、モモ様。わたしはお言葉に甘えて、少し休みます。疲れてしまって」
スイ 「わたしも~。ごめんね、ユウキ。モモ様の警護、お願いするね」
ラフィ 「ごめんっ。わたしもちょっと、休むね……」
誠司 「………………」 (……ひょっとして、)
誠司 (ハピネスチャージプリキュアとのことで、落ち込んでるのか……)
―――――― 『お前たちに、これ以上友達を傷つけさせるわけ、ないだろうが……!』
―――――― 『……けっ。傷ついたあいつらに対して、その言葉になんの意味があるんだろうな』
誠司 (あんなこと言っておいて、俺もハトたちと一緒だ。モモのために、)
誠司 (結局、めぐみたちを傷つけちまった)
誠司 (ハトたちがみんなを騙したことに腹を立てておきながら、)
誠司 (結局俺は、そんなハトたちと同じ……いや、もっとひどいことをしちまった)
誠司 (……いや、迷うな。俺は、決めたんだ。俺は望んでここに来た)
誠司 (めぐみたちを傷つけてでもここに来た。今さら迷ったら、誰に対しても申し訳が立たない)
……
…………
………………惑星ピンキー 都市アクロポリス 女神の神殿
誠司 「………………」
ソワソワソワソワ……
ユウキ 「……? どうしたんです?」
誠司 「いや……落ち着かなくてさ」
ユウキ 「はぁ?」
誠司 「こんな豪華できれいなところ、来たことないからさ……」
誠司 (天井どんだけ広いんだ……。正真正銘、本物の神殿じゃねえか)
ユウキ 「ふん。恐れ入りましたか。これが女神モモ様の集める信仰の力です」
ユウキ 「我々惑星ピンキーの住人は、いつ何時もモモ様に守られています」
ユウキ 「そんなモモ様のためならば、これくらいの建物いくらだって建てるってもですよ」
誠司 「……おまえってさ、」
ユウキ 「なんですか?」
誠司 「普段は暗いのに、モモのことになると怖いくらい饒舌になるのな」
ユウキ 「なっ……わ、悪かったですね!」
誠司 「いや、べつに悪いとは言ってねえけどさ」
誠司 「ところで、この後何かしなくちゃいけないんだっけ?」
ユウキ 「モモ様ご帰還のお祭りを住人たちが開いてくれます。あくまでついでですが、あなたの歓迎の意味もあります」
誠司 「へいへい。どうせ俺はおまけですよ」
ユウキ 「誠司さんは、モモ様と一緒に舞台からそのお祭りを見ていればいいだけですよ」
ユウキ 「女神様の伴侶にふさわしい姿で、女神様の伴侶にふさわしい態度で、ですよ」
誠司 「座ってるだけかぁ……なんかいやだな」
ユウキ 「わがままを言わないでください。いいですね?」
誠司 「はいはい……」
……
…………
………………惑星ピンキー お祭り会場 舞台上
≪相楽誠司さん! ようこそ、惑星ピンキーへ!≫
誠司 「……なんだ、あれ?」
モモ 「住人たちが作ってくれた横断幕よ。よかったわね、誠司くん」
モモ 「みんな、あなたのことを歓迎してくれているのよ」
誠司 「それはありがたいけど……」
誠司 「……なんか恥ずかしいな」
ワイワイガヤガヤ………………
モモ 「みんな、楽しそうだわ。こちらまで嬉しくなってくるわ」
モモ 「……みんな、本当に楽しそう」
誠司 「それはいいけど、みんな下でお祭りに参加しながら、俺のことを盗み見ている気がする……」
モモ 「ふふ。みんな、あなたに興味津々みたいね」
誠司 (動物園のゾウになった気分だ……)
チラッ
誠司 「……お前はお祭りに参加しなくていいのか?」
ユウキ 「なっ……わたしはモモ翌様の護衛でここにいるんです!」
ユウキ 「お祭りに浮かれるわけがないでしょうが!」
誠司 「護衛も何も、みんなモモのことが大好きみたいじゃねぇか」
誠司 「おまえ、いる意味あるのか?」
ユウキ 「う、うるさいですね。私の存在意義を奪わないでください」
モモ 「ふふ……」 クスクス 「ユウキも誠司くんと仲良くなったみたいでよかったわ」
ユウキ 「な、仲良く……!? こ、こんな男と……」
誠司 「悪かったな、こんな男で」
誠司 「……しかし、なんだな」
モモ 「どうかしたの?」
誠司 「こう、お祭りを上から眺めてるだけってのも、むずがゆいもんだな」
モモ 「?」
誠司 「いや、俺はいつもぴかりが丘のお祭りに子ども会とかで参加してたから」
誠司 「祭りっていったら、自分で動かないと落ち着かないんだよな……」
誠司 「……よし、決めた!」
ユウキ 「何をするつもりですか」
誠司 「止めてくれるな、ユウキ! 俺もちょっとお祭り手伝ってくる!」
ユウキ 「なっ……!」
バッ……!!!!
モモ 「誠司くん!?」
ユウキ 「あの男は、まったく……!」
ユウキ (祭りに参加するのはまだしも、舞台から飛び降りるなど……! まったく!)
ユウキ (この高さから飛び降りて無事なあの男の身体能力が恨めしい!)
ユウキ 「モモ様、少々お待ちください。あの男、すぐ連れ戻して……」
モモ 「………………」
ユウキ 「……? モモ様?」
モモ 「いいわね、ユウキ」
ユウキ 「えっ……? 何がですか?」
モモ 「誠司くんは自由だわ。自分がやりたいと思ったことに全力で向かえるんだわ」
モモ 「……わたしにはそれが、とても眩しい」
ユウキ 「モモ様……」
………………惑星ピンキー お祭り会場
住人 (えっ、いま、地球から来たあの男の子……)
住人 (舞台から飛び降りてきたよね……)
誠司 「なぁ、俺にも何か手伝わせてくれよ!」
住人 「えっ……? あ、いや……」
住人 「女神様の婚約者様に、そんな……恐れ多いです……」
誠司 「……? それ、食べ物か?」
住人 「えっ……? ああ、これは色々な木の実を蒸かして、」
住人 「叩いて伸ばして、やわらかくした食べ物です。甘くて美味しいですよ」
誠司 「! 俺も食べてみていいか?」
住人 「えっ、あっ、その……」 スッ 「ど、どうぞ……」
誠司 「ありがとう! ……ん、」 モグモグ 「うまい! モチみたいな食感だな」
住人 「も、モチ……?」
誠司 「あ、あそこで餅つきみたいに叩いてるのか! よっしゃ! モチ、ご馳走様!」
誠司 「おーい、俺も手伝わせてくれー!」
住人 「行っちゃった……。なんか、すごい人だな……」
住人 「……でも、優しそうな、良い人だな」
住人 「モモ翌様が選ぶのも、少し分かるような気がする……かも?」
………………
モモ 「………………」
フゥ
モモ 「……誠司くん、楽しそうだわ」
モモ 「すごい人。もうみんなと仲良くなり始めているわね」
ユウキ 「モモ様……」 (誠司さん、モモ様のことを寂しがらせて……!)
ユウキ (まったく……!)
モモ 「……はぁ」
モモ (いいなぁ、誠司くんは。わたしも一度でいいから、みんなと一緒に……)
モモ (女神としてではなく、みんなと一緒に、お祭りに参加してみたい……)
………………
ペッタン……ペッタン……トン……
誠司 「よーし、一丁上がり! 木の実どんどん持ってこーい!」
誠司 「ガンガン作ってやる!」
住人 「ボウズ、やるなぁ。最初はただのガキだと思ったが……」
住人 「さすがは女神モモ様の選んだ男だ! すげえ体力だな」
誠司 「空手やってるからな。鍛錬にちょうどいいや」
チラッ
誠司 「……ん?」
誠司 「なぁなぁ、モモはずっとあの舞台の上に座ってるのか?」
住人 「当然だろ? モモ様は女神様だ。我々はモモ様のためにお祭りをするんだから、」
住人 「モモ様には、高いところから見守っていただくだけで十分ってもんさ」
住人 「というか、本来ならお前さんもあそこにいないといけないんじゃないのか?」
誠司 「いや、俺はジッとしてるなんて耐えられないから、これでいいんだよ……」
ハッ
誠司 「……モモは?」
住人 「ん?」
誠司 「モモは、あそこでただ見てるだけで、本当に楽しいのか……?」
住人 「おい、どうした?」
誠司 「わりぃ、ちょっと抜ける! ありがとな、おっちゃん! 楽しかったぜ!」
住人 「お、おい! ちょっと待て! 抜けるのは構わねえが、ただ働きさせるわけにゃいかねえ!」
住人 「そっちの出店も俺が開いてんだ。好きなモン1個持ってけ!」
誠司 「ほんとか!? じゃあ……これ、もらってくぞ! ありがとな、おっちゃん!」
住人 「お、おう! こっちこそ手伝ってくれてありがとよ!」
住人 「……あいつ、女物の帽子なんか持ってって、どうするんだ?」
………………
タタタタタタタタ……………………
―――――― 『……みんな、本当に楽しそう』
誠司 「さっきのあの、モモの寂しそうな顔……」
誠司 (……せっかくの祭りなんだ。モモだって楽しんだ方がいいに決まってる)
ザッ……!!
誠司 「おーい! モモー! お前も、降りてこいよー!」
………………舞台上
モモ 「えっ……?」
誠司 「モモー! お祭り、楽しいぞー! お前だって、出店とか回りたいだろ!」
モモ 「誠司くん……」
ユウキ 「あ、あの男は! まったく、一体何を言い出して――」
モモ 「………………」
ユウキ 「……モモ様?」
モモ 「……えいっ」
バッ
ユウキ 「モモ様まで舞台から飛び降りたぁああ!?」
ガバッ
ユウキ 「い、いけない! モモ様は変身していなければ、イージス以外の能力は持っていないというのに!」
………………
モモ 「誠司くーーーーーん!」
誠司 「モモ!?」 (と、飛び降りたのか!?)
誠司 (し、仕方ねえ! 抱き留めるしか……!)
ガバッ……………………ットンンン…………
モモ 「……ふふ、ちゃんと抱き留めてくれると思ったわ」
誠司 「……飛び降りるとは思わなかったよ。寿命が縮んだぜ」
モモ 「ふふ、ありがとう、誠司くん」
ザワザワザワザワ……
「い、いま、モモ様、舞台から飛び降りたのか……?」
「だ、大丈夫かな……?」
「そ、それより、あのモモ様が連れてきた男の子……」
「モモ様にお祭りに来いなんて言っていたけど……」
「なんて恐れ多い……」
ザワザワザワ……………………
モモ 「………………」 (やっぱり、わたしは、あくまで女神……)
モモ (人々に、こんなことが受け入れられるわけがない……)
モモ (このままじゃ、誠司くんに迷惑が……)
ギュッ……!!
モモ 「あっ……」 (誠司くんの手……大きくて、温かい……)
誠司 「大丈夫だ。俺が一緒にいる。おまえだって、お祭りを楽しみたいんだろ?」
モモ 「誠司くん……」
誠司 「よし、じゃあまず最初は何をしたい?」
モモ 「えっ……あっ……」 カァアア…… 「やりたいことが多すぎて、決められないわ……」
誠司 「じゃあ全部やるまでだ! 行くぞ、モモ!」
モモ 「は、はい!」
誠司 「……の前に、」
ポン
モモ 「? これ、帽子……?」
誠司 「それでもかぶってりゃ、パッと見お前だってわからないだろ?」
ニコッ
誠司 「似合ってるぜ」
モモ 「………………」 カァアアア…… 「……ず、ずるいわ。いきなり、こんな……」
誠司 「?」
モモ (ますます好きになってしまうじゃない……)
………………
モモ 「あ、あの!」
住人 「ん……?」 ハッ 「も、ももも、モモ様!?」
モモ 「しーっ。いまはお忍びなの」
住人 「は、はぁ……」
モモ 「それ、ひとつくださいな」
住人 「えっ、あっ、は、はい! どうぞ!」
モモ 「あ……ありがとう」
住人 「ど、どうしてこんなところにモモ様が……?」
住人 (でも、なんだか知らないけど……)
モモ 「せ、誠司くん! わたし、ちゃんとひとりで買えたわ!」
誠司 「よかったなぁ、モモ」 ナデナデ
住人 (モモ様が楽しそうなら、それでいいか……)
ガヤガヤガヤガヤ…………
「モモ様が祭りに下りてきてるって!」
「本当!? どういうことなの!?」
「なんでも、地球から来た少年が連れ出したらしいぞ」
「一目でいいから見たいけど……」
「いやいや、モモ様の初めてのデートだろ! 邪魔しちゃダメだ!」
誠司 「……はは、なんか噂になってるな。でも、やってみてなんだけど、結構バレないもんだな」
モモ 「なんか、とんでもなく悪いことをしてる気分だわ」
誠司 「気にすんなって。話しかけでもしない限りバレないんだから」
誠司 「そんなことより、それ、温かい内に食べたらどうだ?」
モモ 「……それもそうね」
モモ 「はむっ……」
パァァアアアア……!!!
モモ 「甘くて美味しい~~~~!」
誠司 「……よかったな、モモ」
モモ 「うん!」
ハッ
モモ 「え、ええ。そうね。美味しいわ」
誠司 (こいつも、なんだかんだ、ただの女の子なんだよなぁ)
誠司 (いくら女神様だからって、ずっと肩肘張って女神してるなんて、そんなの大変だ)
誠司 (せめて、時々でも、こんな風にしてあげられたら……)
誠司 (……はぁ。なんか……)
モモ 「? どうかしたの、誠司くん?」
誠司 「なんでもないよ。さ、次行くぞ」
誠司 (めぐみとは違うタイプだけど、こいつのことも放って置けそうにないな)
モモ 「あっ……! 誠司くん誠司くん! わたし、次アレが食べたいわ!」
誠司 「よーし、行くぞ!」
………………物陰
ユウキ 「………………」
ユウキ 「……すごい」
ユウキ (最初こそ、モモ様の乱入に皆戸惑っていたけど……)
ユウキ (もう、まるでお祭りにやってきた普通の住人のように、とけ込んでいる)
ユウキ (住人たちもモモ様と気づけば驚きもするが……)
ユウキ (さりとて問題行動に出るわけでもなく、笑顔で受け入れている)
ユウキ (わたしたちは、モモ様のことを縛り付けすぎていたのだろうか……)
ユウキ 「……それにしても、不思議な人です。誠司さん、あなたは……」
ユウキ 「今までの言葉、いくつか取り消します。あなたをモモ様が選んだ理由、よくわかりました」
ユウキ 「誠司さん、あなたは本当にすごい人だ。モモ様が選んだのがあなたでよかった」
フッ……キョロキョロ
ユウキ 「護衛の必要はなさそうですね。では、私も少し、お祭りでお菓子でも……」
ユウキ 「ふふ、ふふふふ……」
………………物陰
ハト 「……あのモモ様の笑顔が見られただけで、すべてが報われた気分」
スイ 「……うん。あの笑顔を曇らせないためにも~」
ラフィ 「わたしたちが暗い顔をしてちゃ、ダメだよねっ」
スイ 「モモ様のことだから、きっとわたしたちが暗い顔をしていたら悲しまれる」
スイ 「……ゆうこたちのことは、早く忘れよう。もう二度と、会わないんだから」
ラフィ 「もう、会えないんだよね……」
ハト 「………………」
ハト 「いおなたちには悪いことをしたけれど、仕方なかった。それだけ」
ハト 「こうして見ていると分かる。誠司さんはきっと、モモ様にとって必要な方」
ラフィ 「うんっ。そうだね」
スイ 「……うん」
ハト 「……いつまでもウジウジしているわけにはいかない。わたしたちも、お祭りを楽しもう」
……
…………
………………地球 ぴかりが丘 ブルースカイ王国大使館
めぐみ 「真央ちゃんと卓真くんのおうちには連絡したよ」
めぐみ 「誠司と一緒に、今日は大使館でお泊まりする、って」
めぐみ 「……よーし、じゃあ、さっそく誠司救出作戦の話を始めようか!」
いおな 「とは言ったものの、わたしたち単独で地球を離脱して、」
いおな 「なおかつどこにあるかも分からない惑星ピンキーまで向かうのは、現実的じゃないわ」
ひめ 「はいはーい! 世界的大財閥にスペースプレーンをお借りするのはどうでしょうか!」
ゆうこ 「それでも惑星間航行は難しいんじゃないかなー」
めぐみ 「食べ物をたくさん持って行く!」
ゆうこ 「そういう問題じゃないんだよね~」
いおな 「……気合いでなんとかならないかしら」
ゆうこ 「いおなちゃんまでポンコツになると、わたし疲れちゃうんだよな~」
いおな 「じ、冗談よ!」 オホン 「とまぁ、実際問題、相楽くんのところに行くのは難しいわね……」
めぐみ 「………………」 フルフル 「……なんとなく、大丈夫な気がするんだ」
ひめ 「大丈夫って……でも――」
――………………ポゥ……
リボン 「……! 鏡が、光っていますわ!?」
ぐらさん 「ま、まさか……あいつが!」
パァアアアアアアア……
「待たせたね。みんな。遅くなってすまない」
ひめ 「か、かかか、神様ぁ!?」
ひめ 「ど、どうしたの!? 惑星レッドは大丈夫なの!?」
ブルー 「大丈夫。再生作業はちょっと中断だけど、」
ブルー 「君たちの危機を黙って見ているわけにはいかないからね」
めぐみ 「……うん。ありがとう、ブルー」
めぐみ 「来てくれるって信じてたよ」
ファンファン 「あ……ミラージュ様!」 ピューン 「ミラージュ様も来てくださったのですね!」
ミラージュ 「ええ、ファンファン。私も、役に立てるかはわからないけど、力になりたいから」
ゆうこ 「神様、ミラージュさん、本当にありがとう……!」
ゆうこ 「せっかく地球を任せてくれたのに、ご期待に添えなくてごめんなさい」
ブルー 「そんな、君たちが謝ることじゃない。他の神の介入を警戒していなかった僕の落ち度だ」
ブルー 「だが、このままモモに誠司くんを奪わせたままにしておくわけにはいかない」
ブルー 「何より、このままモモが自身の欲望に飲まれてしまえば、」
ブルー 「あの高潔で素晴らしい愛を持った女神でさえ、かつてのレッドのようになってしまうかもしれない」
ブルー 「……どうかお願いだ、ハピネスチャージプリキュア」
ブルー 「神同士の諍いに、もう一度君たちを巻き込むことになってしまうが、」
ブルー 「モモを止めてあげてくれ。彼女は本当は、とても慈悲深く優しい愛に溢れた女神なんだ」
めぐみ 「わかったよ! わたしだって、誠司に一言言ってやらないと、気が済まないんだから!」
ひめ 「わたしもよ! わたしのめぐみに、よくまぁあんなことしてくれたもんだわ!」
ゆうこ 「スイちゃんたちとも、もう一回お話したいしね~」
いおな 「ええ、わたしも、ハトとしっかりと決着をつけたいわ」
めぐみ 「でもこれで百人力だね! ブルーなら惑星ピンキーまでひとっ飛びだもん!」
ブルー 「ああ。そのための道はすでに開いてある。兄さんが惑星ピンキーに鏡のゲートを作ってくれているはずだ」
ひめ 「レッドが? だ、大丈夫なの……?」
ブルー 「どうか信用してあげてくれ。レッドはもう、惑星レッドの復興を願うだけの善良な神だよ」
ミラージュ 「まぁ、相変わらず口は悪いですけどね」
ブルー 「兄さんと僕は兄弟神だ。僕らが力を合わせれば、できないことなんてない」
めぐみ 「ミラージュさん、寝室で誠司の妹の真央ちゃんと、その友達の卓真くんが眠っているの」
めぐみ 「起きて誰もいなかったら不安になるから、傍にいてもらってもいいですか?」
ミラージュ 「任せて。ファンファン、わたしたちはここに残りましょう」
ファンファン 「はい!」
ブルー 「……準備はいいかい、みんな」
ブルー 「恐らく、惑星ピンキーの住人は全員が全員、モモの味方だよ」
ブルー 「モモのことを愛し、モモのことを信じ、モモのことを頼っている」
ブルー 「惑星ピンキーのプリキュアだけじゃない。すべての住人が敵だと思った方がいい」
ブルー 「その覚悟はしておいてくれ」
めぐみ 「大丈夫だよ、ブルー。わたし、今度こそ……」
めぐみ 「今度こそ、誠司に伝えたい想いがあるから。絶対に負けないよ」
ブルー 「……ああ。さすがは、世界を救ったプリキュアだ!」
めぐみ (わたしは、強くないし、ドジだし、間違ってばっかりだけど……)
めぐみ 「大丈夫。わたしには、手を貸してくれるたくさんの人がいる。友達がいる。仲間がいる」
バッ……!!!!
めぐみ 「だからわたしは、また立ち上がれるんだ……!」
めぐみ 「――――――プリキュア! くるりんミラーチェンジ!」
キュアラブリー 「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」
ひめ 「めぐみ……」
ひめ 「そうよ! めぐみも、誠司も、真央ちゃんも! みんなみんな、わたしに色んなことを教えてくれた!」
ひめ 「誠司はわたしに必要なのよ! 真央ちゃんの涙だって、もう見たくないのよ!」
ひめ 「今度は負けないわ! 絶対に勝ーーーーーつッ!!!」
ひめ 「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
キュアプリンセス 「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」
ゆうこ 「わたしも、このままじゃ気が済まないかな~」
ゆうこ 「みんな仲良く、平和に、美味しくご飯を食べる、それが一番大事」
ゆうこ 「でも、相楽くんがいないんじゃ、それもままならないわ!」
ゆうこ 「恋愛は誰かの涙で成り立つものかもしれないけれど、」
ゆうこ 「真央ちゃんの涙は、女神様が許したって、この大森ゆうこが許さないわ!」
ゆうこ 「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
キュアハニー 「大地に実る命の光! キュアハニー!」
いおな 「……氷川流道場の看板にかけて」
いおな 「わたしは絶対に負けない!」
いおな 「プリキュア・きらりんスターシンフォニー!」
キュアフォーチュン 「夜空にきらめく希望の星! キュアフォーチュン!」
ラブリー&プリンセス 「「ハピネス注入!」」
ハニー&フォーチュン 「「幸せチャージ!」」
―――――― 「「「「ハピネスチャージプリキュア!」」」」
ラブリー 「さぁ行くよ、みんな!」
ラブリー 「誠司を迎えに……! 惑星ピンキーへ!」
……
…………
………………夜 惑星ピンキー 女神の神殿 寝所
モモ 「………………」 フゥ 「んー、今日はたくさん歩いて疲れたわ」
誠司 「そうだな。結局、モモが行きたい出店、全部は回れなかったな」
モモ 「ううん、いいの。お祭りはまたあるわ」
ニコッ
モモ 「今日は本当に楽しかったわ。誠司くん、本当の本当に、ありがとう」
誠司 「そんなに気にするなよ。俺も楽しかったし、お互い様だ」
モモ 「誠司くんはひとりでもお祭り楽しんでたでしょう? わたしは……」
モモ 「……わたし、ダメね。誠司くんがいないと、何もできないわ」
誠司 「そんなことない。俺がここに来られたのはモモのおかげだし、」
誠司 「何より、俺はモモと一緒にお祭りを回れたから楽しかったんだぜ?」
モモ 「……ありがとう。本当に、大好き」
誠司 「ああ。嬉しいよ。ありがとう」
ナデナデ
モモ 「……むー、わたしのこと子ども扱いしてるわね?」
誠司 「いや、まぁ……妹と同い年くらいに見えるし、仕方ないだろ?」
モモ 「わたし一応、数十億年くらいは生きているんだけど?」
誠司 「あー、まぁ、神様だもんな……」
誠司 (そんなこと言ったって、真央くらいの背格好の子どもだからなぁ)
モモ 「むーっ。また失礼なこと考えてるわね!」
モモ 「じゃあ、こうしちゃうんだから」
ムギュッ
誠司 「お、おう」 (抱きつかれたところでなぁ……)
誠司 (真央がじゃれついてるのと同じようにしか思えん……)
誠司 (……真央、大丈夫かな。泣いてたり……してるだろうな)
モモ 「い、いくらなんでも、無反応はひどいわ……」
誠司 「あ、いや、そういうわけじゃなかったんだ。ちょっと妹のことを思い出して……」
モモ 「もうっ! わたしだって、その気になれば大人の姿になれるのよ!」
誠司 「ああ、そういえばプリキュアになると、めぐみたちと同じくらいの背丈だったな」
モモ 「でも、あんまり無駄に力は使えないから……仕方なく、この省エネモードの姿でいるの」
誠司 「? 神様ってそんなに力を使うものなのか? 地球の神様は大人の姿をしていたぞ?」
モモ 「わたしは特殊だから……。わたしが、というよりは、この惑星ピンキーが、と言うべきかしら」
誠司 「惑星ピンキーが、特殊……?」
モモ 「……一応、あなたには話しておいた方がいいわね。この星に住まう者は、皆知っていることよ」
モモ 「この星の大気圏に突入するとき、何か気になるものはなかった?」
誠司 「うーん……きれいな桃色の星だと思ったけど……あっ」
―――――― (惑星ピンキーの周囲に、何かがたくさんある……?)
―――――― (チリみたいなのから、結構大きなものまで……)
―――――― (あれ、全部隕石になって惑星ピンキーに落ちるんじゃ……)
誠司 「……そういえば、星の回りに小さな何かがたくさんあったな」
モモ 「ええ、それが惑星ピンキーの特殊性よ」
モモ 「この惑星ピンキーは、年に数度、小惑星帯を通り抜けるの」
モモ 「それが隕石となって、この星に降り注ぐのよ……」
誠司 「えっ……!? そ、それじゃ、やっぱりあれは隕石になるのか」
モモ 「ええ。そのままならね」
モモ 「安心して、誠司くん。わたしがいるから大丈夫よ」
誠司 「モモがいるから……?」
モモ 「わたしの絶対防御能力は見たでしょう? わたしは常時、イージスを星の周囲に展開しているの」
誠司 「へっ……? ほ、星の回りに巨大なバリアをはってるってことか!?」
モモ 「そうよ。すべての隕石の力学的エネルギーをはねのけ、受け流し、星を守っているの」
モモ 「それが、女神であるわたしの役目なの。それには膨大なエネルギーを使うわ」
モモ 「だからあまり無駄なエネルギーは使えないから、子どもの姿でいるの」
クスッ
モモ 「……それでも、今はマシね。最初は、地獄だったわ」
モモ 「この星は生命の一切育たぬ不毛の大地が広がっていたもの」
『どうして、わたしはこの星の女神なのだろう』
『せっかく生まれかけた生命の設計図も、一瞬にして隕石が消し飛ばす』
『わたしは、この星で何をすればいいのだろう』
『わたしはこの生命の生まれぬ大地で、何を守れば良いのだろう』
『わたしは、一体何をすればいいのだろう』
『誰か、教えて……』
『わたしは女神。女神モモ』
『けれどわたしには、何もわからない』
『生命を生み出すこともできない、女神だから……』
誠司 「……モモ」
モモ 「大変だったわ。無我夢中で生命を守ろうと努力したわ。気づけば、わたしはイージスの能力を手に入れていたの」
モモ 「そして、星を守るため、自らプリキュアになり、隕石を砕いたわ」
モモ 「生命が誕生し、人々が生まれ、わたしに信仰が集まった」
モモ 「信仰は人々の願いそのもの。希望そのものよ。それは、プリキュアに大いなる力を与えるわ」
モモ 「そこでようやく、わたしはイージスを星の回りに展開することが出来たの」
誠司 「じゃあ、お前は……ヒトが誕生するまでずっと、その手で星を守ってきたのか……?」
誠司 「何億年も、その手で隕石を砕いてきたのか……?」
モモ 「……そうよ。ふふ、情けない女神様でしょ? 泥臭くて、格好悪くて、何度も泣いたわ」
モモ 「それでも、ようやくこの星はここまで成長したの。地球には文明レベルでは敵わないかもしれないけど、」
モモ 「人々がお互いを愛し、敬い、慈しみ合う心だけは、負けないと自負しているわ」
誠司 「………………」
モモ 「……? 誠司くん?」
誠司 「っ……。モモ、お前は……ずっと……」
誠司 「ひとりきりで、戦い続けてきたんだな……」
誠司 「すごいよ。本当に……本当にすごい。よくがんばったな」
モモ 「誠司くん……」 ギュッ 「……嬉しいわ、とても」
誠司 「……俺さ、恩返しの気持ちは、今もまだあるけどさ、」
モモ 「?」
誠司 「ユウキたちの気持ちが少しわかった気がするよ。俺、モモのためにできることがしたい」
誠司 「地球を助けてくれたお礼とかじゃない。俺が、おまえのために、色々としてあげたい」
誠司 「子ども扱いしてごめんな。はるか昔からこの星を守り、愛を育んできた女神モモ」
誠司 「俺、モモが好きになってくれるにふさわしい男になるよ」
モモ 「誠司くん……。嬉しいわ。その言葉だけで、今までの苦労が吹き飛んでしまうようだわ」
モモ 「……誠司くんが来てくれて」
モモ 「お祭りにも参加できて。誠司くんと一緒にお祭りも回れて」
モモ 「誠司くんからプレゼントまでもらって……」
モモ 「誠司くんから、すごく嬉しい言葉をもらった……ああ、もう幸せすぎて怖いわ」
ギュウッ……
モモ 「このまま、くっついていても、いい?」
誠司 「……ああ。いくらでもどうぞ、女神様」
モモ 「ふふふ……――」
「――――――オホン!」
モモ 「!? ゆ、ユウキ、いたの?」
ユウキ 「もちろんおりますとも。私は、モモ様の最側近ですから」
モモ 「い、今のはちょっと、恥ずかしいわね……」
誠司 「俺も恥ずかしいぞ……」
ユウキ 「モモ様、誠司さん、そろそろ御就寝のお時間です。ベッドにお入りください」
モモ 「あら、もうそんな時間なのね……」
モモ 「じゃあ誠司くん、ベッドに入りましょう?」
誠司 「えっ? 俺もこの部屋で寝るの?」
ユウキ 「当然でしょう? あなたは女神モモ様の婚約者です」
誠司 「ま、マジかー……」 (……ま、でかいベッドだし、端っこで寝ればいいか)
モゾモゾモゾ……
誠司 「……本当にでかいベッドだな。ふかふかだし……」
モゾモゾモゾ……ギュッ
誠司 「!? も、モモ、どうしてこんなに広いのにくっつくんだ?」
モモ 「さっきいくらでもどうぞ、って言ったのはあなたでしょ、誠司くん」
誠司 「そりゃそうだけど……」
モモ 「……いや?」
誠司 「いや、いやじゃない。好きにしろ」
モモ 「うん。ありがとう」
モモ 「えへへー、誠司くん……わたし、本当に、幸せ……」
スヤスヤ……
誠司 「……色んなことがあって疲れたんだな。おやすみ、モモ」
誠司 「ふわーあ、俺も眠いや。おまえも早く寝ろよー、ユウキ。おやすみ」
スヤスヤ……
モモ 「………………」
誠司 「………………」
スヤスヤスヤスヤ………………
ユウキ 「……まったく。最側近で護衛のわたしが眠るわけがないでしょうが」
ユウキ 「ふたりして、優しい顔をして眠ってらっしゃいますね」
ユウキ 「……本当に、ここにいるのが誠司さんで良かった。願わくは、これからも……」
ユウキ 「モモ様のお側で、モモ様をお支えください、誠司さん……――」
「――――ほぅ、これは驚いたな。あのクレーターだらけだった星が、よくここまで栄えたものだ」
ユウキ 「!? な、何者だ!?」
ユウキ (この私が寝所への侵入を許すとは……! 相当な手練れ……!)
レッド 「……ふん。神レッド、と名乗れば通じるか?」
ユウキ 「神レッド……?」
ユウキ 「……ああ、あのとき地球を襲った赤い怪物の親玉ですか」
レッド 「やはりモモはあのとき、地球に増援を送っていたか。お前もそのひとりのようだな」
レッド 「ふん。どこまでも高潔な女神だ。気に入らないが、優秀なのは事実のようだな」
ユウキ 「何が目的です? 地球を滅ぼすことができなかった腹いせでもしに来ましたか?」
レッド 「それに関してはモモにも貴様らにも感謝している。取り返しのつかない過ちを犯さなくて済んだからな」
レッド 「礼を言ってやってもいい」
ユウキ 「ならば何をしに来ました。あなたのような者に、この祝福された大地を踏む資格はない」
レッド 「……ならば、二度と俺を近づかせぬようにするのだな」
スッ
レッド 「同じ神として、道を踏み外した女神を正しに来た」
ユウキ 「ッ……貴様!」 ギリッ 「墜ちた神の分際で、何をッ!」
レッド 「そう怒るな。その女神は、自分のワガママのために、地球の少年をひとり連れ去ったのだぞ?」
レッド 「それは果たして、お前の敬愛する女神として正しい行いなのか?」
ユウキ 「この星をひとり守り続けてきたモモ様の、初めてのワガママです!」
ユウキ 「それを叶えることの、一体何が悪いというのですか!」
レッド 「……なるほど。お前たちプリキュアが、女神をそそのかしたのか」
バサッ
レッド 「変身しろ、プリキュア。お前たちが女神の慧眼を曇らせているというのなら、」
レッド 「まずはお前たちを制圧する」
レッド 「そこで寝こけている少年にも借りがある。償いのためでもあるが、」
レッド 「お前の言う、女神の初めてのワガママとやら、邪魔させてもらうぞ」
ユウキ 「……そういうことであれば、」 スッ 「私も容赦しませんよ?」
ユウキ 「プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ハーティネス 「星守る鼓動! キュアハーティネス!」
レッド 「……?」 (妙だな。このプリキュア……女神の加護を感じないが……)
ハーティネス 「時間もありません。すぐに終わりにしましょう」
ザッ……!!!
レッド 「ッ……!?」 (なんという速度だ……!)
ッドッドドドド………………ズドッ……!!!
ハーティネス 「ハァ……ッ!!!」
ズドン……!!!!
レッド 「ぐっ……」
ザザザザザッ……!!
レッド 「……速さも打撃も凄まじいな。この星のプリキュアは、皆これほどの力を持っているのか」
ハーティネス 「……私は特別ですから」
レッド 「そうか。それを聞いて安心した」
ハーティネス 「ふふ……」
ハーティネス 「その安心、本当に正しいですかね?」
――――――――――――………………ッッッッズドン!!!!
レッド 「ッ……!?」 (横からの攻撃……!? なぜ気づけなかった?)
キュアフラアリー 「初めまして。キュアフラアリーです。花びらは華麗に、そして静かに舞うものです」
フラアリー 「隠密性、精密性なら、絶対に負けませんよ?」
クスッ
フラアリー 「では、神様? とりあえず、あなたには神殿から出てもらいましょうか」
レッド 「ぐっ……」
ハーティネス 「どこを見ています?」 クスッ 「ハーティネス・ハートシュート!!」
レッド (いかん……! あれをまともに喰らうわけには……!)
バリーン!!!
ハーティネス 「……口ほどにも内。神レッドは外に逃れましたね」
フラアリー 「すでにメロディアスとハピネスに出てもらっている。問題ない」
ハーティネス 「モモ様と誠司さんの傍には私が控えます。先輩もお二方の援護に向かってください」
フラアリー 「わかった。侵入者はひとりのようだけど、念のため、気をつけて」
ハーティネス 「はい。フラアリーも、お気をつけて」
………………惑星ピンキー 神殿上空
レッド 「くそっ……予想以上の強さだ」
レッド 「いや、予想以上に俺が弱体化していると言うべきか」
レッド (闇の力が使えなければ、所詮俺など己の星を失った神でしかない)
レッド (多くの信仰を集める女神の加護を受けるプリキュアに勝てるわけはないか……)
レッド 「……とはいえ、勝てぬとわかっていても、やらねばならんか」
メロディアス 「キュアメロディアスだよ~。おとなしく投降してほしいかな~」
ハピネス 「キュアハピネスっ。悪いようにはしないよ?」
レッド 「……甘いプリキュアたちだ。女神の寝所に土足で踏み込んだ下郎だぞ、俺は」
レッド 「この首、切り落としてなお甘いのではないか?」
メロディアス 「そんなことをしてもモモ様はお喜びにはならないかな~」
ハピネス 「神殿を血で汚すわけないよね。ふふっ、おもしろいお兄さん」
レッド 「……血は好まぬと言っておきながら、地球の少年は無理矢理にさらうのだな」
メロディアス 「? 無理矢理? 誠司さんはご自身で望まれてここにきたよ~?」
レッド 「……ああ、くそ、ややこしい。相楽誠司の奴め。これでは俺に非があるように思えるじゃないか」
レッド 「なんにせよ、俺は奴らに借りを返さねばならん! モモにも一言いってやりたい!」
バッ
レッド 「まとめてかかってこい! プリキュアども!」
レッド 「……ん?」
ピューン!!
フラアリー 「そういうことであれば、」
フラアリー 「アクロポリスプリキュア、準フルメンバーで相手を致します。お覚悟を、墜ちた神」
レッド 「………………」 (さて、どうしたのものか。プリキュア三人相手、保って何分か……)
レッド (あのキュアハーティネスとやらだけは引きつけられなかったが、)
レッド (……うまくやれよ、ブルー。ハピネスチャージプリキュア)
………………惑星ピンキー 女神の神殿 寝所
モゾモゾ………………
モモ 「うーん……なにか、あったのかしら……?」
モモ 「ちょっと騒がしいけれど……」
ハーティネス 「起きてしまいましたか。申し訳ありません、モモ様。ですが問題はありません」
ニコッ
ハーティネス 「どうかそのままお休みください。朝、モモ様がお目覚めの頃には、すべて終わっております故に」
誠司 「………………」 スヤスヤ
ハーティネス 「ほら、誠司さんはぐっすり眠ってらっしゃいますよ? モモ様も、夢の中にお戻りください」
モモ 「そう……そうね……」 ムニャムニャ 「おやすみなさい、ユウキ……」
ハーティネス 「はい、おやすみなさい、モモ様」
モモ 「………………」 スヤスヤ
ハーティネス 「……お休みになりましたね」
ジッ
ハーティネス 「……それで、どうしてあなたは眠ったふりなんかしてるんですか、誠司さん」
誠司 「……やっぱりバレてたか。気になることがある。それをお前に伝えたくてな」
ハーティネス 「なんです?」
誠司 「寝たふりをしながら聞いていた。レッドが来たことはわかった。しかし、どうしてここにレッドが来る?」
ハーティネス 「? どういうことです?」
誠司 「本来、俺を連れ戻しにくるなら、地球の神だろう? ブルーが来ないってことは……」
誠司 「ブルーはいま、きっと何かを企んでいるはずだ」
ハーティネス 「……と、いうことは、神レッドは囮?」
誠司 「その可能性が高いな。お前がここに残ってくれてよかったよ」
ハーティネス 「……あの、誠司さん」
誠司 「ん?」
ハーティネス 「どうしてそれを私に言うのですか?」
ハーティネス 「あなたは本当に、地球に戻りたいとは思わないのですか? 神ブルーの手助けがあれば、」
ハーティネス 「我々から逃れることもできるでしょうに。なぜ、それを私に言うのですか?」
誠司 「………………」 フゥ 「お前の気持ちがわかるからだ」
ハーティネス 「えっ……?」
誠司 「モモを守るために一生懸命な、お前たちの気持ちが分かるからだ」
誠司 「モモからこの星の成り立ちを聞いた。悲しくて、辛い話だったよ」
誠司 「モモは、きっとたくさん傷つきながら星を守ってきたんだ。人々を支えてきたんだ」
誠司 「そんなモモを、この星の人たちが愛するなんて、当たり前のことなんだな」
ハーティネス 「………………」
誠司 「俺はこの星の人間じゃないけどさ、モモの話を聞いて、モモのためにできることをしたいって思ったよ」
誠司 「モモのために、傍にいてあげたいって思えたよ」
誠司 「婚約者とか、伴侶とか、結婚とか、正直ピンとこねえけどさ……」
誠司 「それでモモが少しでも救われるなら、俺はモモの傍にいたいよ。この星で、モモと添い遂げたいよ」
ハーティネス 「誠司さん……」
ハーティネス (地球を救った恩義だけじゃない。この人は、内発的に、本気でモモ様と一緒にいたいと思ってくれている……)
ハーティネス 「……改めて思いました。そして、あなたご自身に対して、訂正します」
スッ
ハーティネス 「あなたのことを見誤っておりました。今までの無礼を、お許しください」
誠司 「な、なんだよ、改まって。やめろよ、気恥ずかしい。顔を上げてくれよ」
ハーティネス 「あなたはモモ様の伴侶にふさわしい方です。あなたは、モモ様に選ばれるべくして選ばれたのです」
ハーティネス 「相楽誠司様。どうか、女神モモ様の伴侶として、この星に君臨してください」
ハーティネス 「あなたとモモ様なら、きっとこの星をもっともっと豊かにすることができます」
ハーティネス 「あなたならば、モモ様と人々とをもっともっと繋げることができます」
ハーティネス 「……そのためならば、惑星ピンキー最強のプリキュアである私が、この命に代えてもあなたを絶対に守ります」
ハーティネス 「私は、あなたを守るための矛となりましょう」
誠司 「お、大げさな奴だな……」
――――――――パァアアアアアアアアア……!!!!
誠司 「鏡が……!? あれは、神様の光だ……!」
ハーティネス 「……来ましたね」
誠司 「……俺からも頼む。ハーティネス。俺、モモを守りたいよ。助けたいよ。だから俺を……」
誠司 「俺を守ってくれ」
ハーティネス 「その命、謹んでお受け致します。我らが女神モモ様の伴侶、誠司様」
ザッ……!!!!
ハーティネス (モモ様のために……! そして、モモ様の愛する方のために……!)
ハーティネス (私は絶対に負けない!)
………………惑星ピンキー 神殿外縁部
レッド 「………………」
ガクッ
レッド 「ぐっ……」 (さすがは多くの信仰を集めるモモのプリキュアだ)
フラアリー 「終わりです。この程度とは、不甲斐ないものですね、墜ちた神」
レッド 「墜ちた神、墜ちた神と、不遜な連中だ。まぁ、事実だから何も言えぬがな」
レッド 「ふっ……自慢じゃないが、闇をなくした俺の力はこんなものだ。戦える力などほとんどない」
メロディアス 「なら~、どうしてあなたはこんな無茶を~?」
ハピネス 「今からでも遅くはないから、投降した方がいいよっ?」
レッド 「ふん。ここで投降なんぞするなら、端からこんなことをするか」
フラアリー 「……? あなた、一体何を企んでいるのですか?」
メロディアス 「あっ……」
ハピネス 「どうしたの、メロディアス?」
メロディアス 「……わたしたち、まんまと彼の罠にかかっていしまったのかも~」
メロディアス 「いま、モモ様の寝所の警護はハーティネスだけだよね?」
フラアリー 「!? いや、しかし彼はひとりで乗り込んできたはず……」
レッド 「くくく……なるほど。なかなか勘が鋭い奴がいるようだな」
ハピネス 「は、はったりだよっ! だってあなたひとりの気配しか感じないもん!」
レッド 「俺と地球の神ブルーは兄弟神だ。ふたりとも鏡を使った能力を持っている」
レッド 「俺たちふたりには、お互いの能力に対して親和性がある。だから、色々なこともできる」
レッド 「――離れた場所と場所を、鏡でピンポイントで結ぶ、なんてこともな」
フラアリー 「なっ……! いけない! 神殿へ戻らなければ!」
レッド 「ふふ、もう遅い! やってくるぞ。あいつらが!」
レッド 「かつて一度神を討ったこともある、地球のプリキュア――」
レッド 「――――ハピネスチャージプリキュアがな!」
………………惑星ピンキー 女神の神殿 寝所
ラブリー 「……ここが、惑星ピンキー?」
プリンセス 「はぇー。本当に一瞬で来られちゃった。さっすが神様ね!」
ブルー 「気を抜かないで! ここは敵地だ!」
ハーティネス 「……まったく、どこまでも緊張感のない人たちです」
ハニー 「キュアハーティネス……!」
フォーチュン 「相楽くんを返してもらいにきたわよ!」
ハーティネス 「……どこまでも愚かだ。あなたたちは」
プリンセス 「誠司を無理矢理連れて行っておいて、何が愚かよ!」
プリンセス 「誠司はどこ!?」
ハーティネス 「こちらにいらっしゃいますが?」
誠司 「……どうして来た。もう俺のことは忘れてくれと言ったはずだ」
ラブリー 「誠司……! 本物の、誠司だぁ……!」
グスッ
ラブリー 「……ねえ、誠司。帰ろう? 地球へ。みんな待ってるよ」
誠司 「………………」
ラブリー 「誠司!」
誠司 「……帰らねえよ。俺は、もうここにいるって決めたんだ」
誠司 「モモの傍にいてやると決めたんだ」
誠司 「だから、おとなしく帰れ。俺は、地球には帰らない。たとえ……」
誠司 「……たとえ、お前たちを傷つけることになろうとな」
ラブリー 「………………」
ラブリー 「……そうやって、言うかもしれないと、思ってたよ」
ラブリー 「想像以上に辛いね。そうやって、決別の言葉を、面と向かって言われると」
ラブリー 「投げ飛ばされたときも、すごく辛かった。誠司に嫌われたって思うと、本当に辛かったよ」
誠司 「………………」 ギリッ 「……だったらもう、俺に構うな!」
ラブリー 「構うよ。わたしが辛かろうが、わたしが痛かろうが、それでもわたしは、誠司を諦めないよ」
ラブリー 「……真央ちゃんが、泣いてたんだ」
誠司 「……ッ!?」
ラブリー 「真央ちゃんが泣いて、『お兄ちゃんが遠くへ行っちゃった』 って……」
ラブリー 「その涙を放っておいたら、プリキュアじゃない。その涙を止めなきゃ、プリキュアじゃない」
誠司 「それは、おまえのワガママだ。真央だって、いつかは分かってくれる」
ラブリー 「……わかったよ。誠司はこの星にいたいんだよね。でも、なら、」
ラブリー 「お願い。誠司。最後に、わたしの言葉を聞いて?」
ラブリー 「わたしの、本当の気持ち。誠司への、気持ち」
誠司 「っ……」
誠司 「聞きたくない! 今さら、何も聞きたくないんだよ!」
ラブリー 「………………」
ズキッ
ラブリー 「痛い。でも、いいよ。誠司が嫌だっていっても、わたしは誠司に聞いてもらいたいから」
ハーティネス 「……随分と自分勝手な方々だ。誠司様はあなたの話を聞きたくないといっていますが?」
プリンセス 「そんなの、意地を張ってるだけじゃない!」
ハーティネス 「意思の疎通も取れないようです。誠司様、モモ様を連れて逃げてください」
誠司 「……おう」
ハーティネス 「あなたのお友達を傷つけたりは致しません……とは言えないかもしれませんが、」
ハーティネス 「少なくとも、五体満足で地球にお帰り願いますから、それはご安心ください」
誠司 「……ありがとよ。やっぱりお前は優しい奴だ」
スッ
誠司 「よいしょっ……と。モモは俺がおぶさっていく。ハーティネス、お前も気をつけろよ」
ハーティネス 「ありがとうございます。私は絶対に負けません」
フォーチュン 「……まるで、助けに来たわたしたちが悪者扱いね」
誠司 「事実そうだろう。俺は、お前たちが何と言おうとここに残るぞ」
誠司 「ハーティネス。後は頼んだ」
ラブリー 「誠司! お願い! 逃げないで、話を聞いて!」
誠司 「ッ……! 先に逃げたのは、お前だろうが!」
―――――― 『めぐみ、あのさ……俺……――』
―――――― 『――さっ、さ、桜、きれいだね! またみんなとお弁当持ってこようね!』
ラブリー 「っ……! そ、それは……」
タタタタタ……
ハニー 「相楽くん!」
ハーティネス 「おっと」 ザッ 「ここを通りたければ、私を倒していくんですね」
ハーティネス 「この星最強のプリキュアである、このキュアハーティネスを」
フォーチュン 「そこをどきなさい、キュアハーティネス!」
ハーティネス 「どきませんよ。おふたりは愛し合っています。その仲を引き裂くというのですか?」
ハニー 「だったら話くらい聞かせてもらってもいいんじゃないかなー?」
ハニー 「誠司くんが逃げているだけだってあなたもわかっているから、そんなに必死になっているんでしょう?」
ハーティネス 「ッ……! 少なくとも、誠司さんから逃げられているあなたたちよりは!」
ハーティネス 「モモ様の方がずっとずっと、誠司さんのことを幸せにできますよ!」
プリンセス 「意外だわ。あなた、誠司のこと気に入っているのね」
ハーティネス 「……認めます。誠司さんはすごい人です。モモ様のあんな笑顔、初めて見ました」
ハーティネス 「誠司さんならモモ様を幸せにできます。モモ様と人々を繋げてくれます。本当にすごい人なんです」
ハーティネス 「誠司さんのことは純粋に尊敬していますし、このままずっとモモ様と一緒に……」
ハーティネス 「ずっとずっと、末長く幸せに過ごしてくれればと思います」
ハーティネス 「わたしは、モモ様の幸せもですが、誠司さんの幸せも守りたいんですよ」
フォーチュン 「わたしたちも、もう一度話を聞かないことには、帰ることもできないわ」
フォーチュン 「あなたたちアクロポリスプリキュアと戦ってでも、わたしたちは相楽くんの元へ行く!」
ハニー 「ハニー・リボンスパイラル!」
シュルルルルル!!!!
ハーティネス 「ッ……!?」 (リボンによる拘束技ですか……! ぬかった!)
ハニー 「今よ、ラブリー!」
ラブリー 「えっ……」
ハニー 「相楽くんを追いかけるのよ! 追いかけて、今度こそ取り戻すの!」
ハニー 「まだ、ラブリーの本当の気持ち、相楽くんに伝えられてないでしょう?」
ラブリー 「わたしの、本当の気持ち……」
ラブリー 「……誠司」
ギュッ……!!!
ラブリー 「うん! わたし、行ってくる! 誠司が何を言っても、わたしが言わなきゃいけないことは変わらないから!」
プリンセス 「それでこそわたしたちのラブリーよ!」
フォーチュン 「わたしたちはここで他のプリキュアを食い止めるわ」
フォーチュン 「きっと、あの子たちも来るでしょうし、ね」
ラブリー 「みんな、ありがとう……!」
ビューン!!!!
ハーティネス 「ッ……! モモ様の元に向かわせるわけには……!」
「――――フラアリー・シュート!」
ザン……!!!!
ハニー 「! リボンが……!」
フォーチュン 「来たわね」 ギリッ 「キュアフラアリー……!」
フラアリー 「キュアフォーチュン……」
メロディアス 「大丈夫~? ハーティネス」
ハーティネス 「拘束されていただけです。問題ありません。助かりました」
ハーティネス 「誠司さんがモモ様を連れて逃げています」
ハーティネス 「申し訳ありません。キュアラブリーだけ逃がしてしまいました……」
ハピネス 「ううん。わたしたちの方こそ、侵入者の方に気を取られていたよ。ごめんね」
フラアリー 「ハーティネス。キュアラブリーを追って。モモ様と誠司さんをお守りして」
フラアリー 「ここはわたしたちが食い止めるから」
ハーティネス 「……ッ、すみません、ありがとうございます!」
フォーチュン 「ラブリーを追わせるわけには――」
フラアリー 「――こっちだって、モモ様を追わせるわけにはいかない」
フォーチュン 「ッ……さすがに、あなたを無視してハーティネスを止められる気はしないわね」
ハピネス 「そういうことっ。じゃあ、やろうか、プリンセス」
プリンセス 「ハピネス……」
メロディアス 「……ハニー。できれば、お返しにこの星の美味しいもの、たくさんごちそうしたかった」
ハニー 「今からでも、そうしてほしいかな」
ハニー 「……もちろん、全部終わった後で、だけどね」
ハーティネス 「先輩方、すみません。ここを頼みます」
ビュン!!!!!
………………神殿内部 階段
タタタタ…………
モモ 「……誠司くん」
誠司 「モモ、起きてたのか」
モモ 「聞いていたわ。そして、何も言えなかった」
誠司 「モモ……」
モモ 「わたし、あなたをこのままここに置いていていいのかしら」
誠司 「……良いに決まってるだろ。俺は、自分でここにいることを選んだんだ」
モモ 「……ねえ、誠司くん。教えて」
モモ 「あなたは何から逃げているの?」
―――― 『誠司! またそうやって逃げるの!?』
誠司 「ッ……」
モモ 「ねえ、誠司くん。下ろして?」
誠司 「……ああ」
…………ストッ
モモ 「……負ぶさってくれて、ありがとう。ねえ、誠司くん――」
誠司 「――あいつらの言うことなんか気にするなよ。俺は、何からも逃げたりはしていない」
モモ 「でも、あなたはハピネスチャージプリキュアの言葉から逃げたわ」
モモ 「いいえ。キュアラブリー……愛乃めぐみさんの言葉から、逃げたわ」
モモ 「ねえ、誠司くん。あなたは地球に戻りたい? あなたはどうしたいの?」
誠司 「俺は……」
モモ 「ねえ、誠司くん、わたしはあなたの救いになれる?」
誠司 「………………」
モモ 「あなたの苦しみ、わたしはよく知っているわ。あの子がなまじ近くにいるから、もっと苦しいということも」
モモ 「だから、逃げてもいいと思うの。けれど、ひとつだけ教えて?」
モモ 「もしも、あなたが逃げた先にわたしがいたら、わたしはあなたの救いになれる?」
モモ 「逃げた先で優しくあなたを迎え入れて、そうすれば、あなたは少しはわたしを愛してくれる?」
誠司 「………………」
ギュッ
誠司 「モモ、俺には難しいことはわからない。けどな、」
誠司 「俺が何から逃げているのだとしても、俺はお前のことが好きだよ」
誠司 「モモを愛してるよ」
モモ 「……誠司くん」
ギュッ
モモ 「ありがとう。とても嬉しいわ」
ニコッ
モモ 「………………」
モモ (うそつき……っ)
………………惑星ピンキー 神殿上空
プリンセス 「………………」
ハピネス 「……みんな仲良く、平和が好きっ。けど、モモ様の悲しそうな顔を、わたしはもう見たくないんだ」
ハピネス 「でもね、わたしはプリンセスのことも好きっ。だから、お願い。地球に帰って?」
プリンセス 「残念だけど、わたしも引き下がるわけにはいかないのよ」
ハピネス 「キュアラブリーのため?」
プリンセス 「そうね。それもあるわ」
プリンセス 「……ねえ、昔話をしてもいい?」
ハピネス 「? どんなお話?」
プリンセス 「ひとりの、弱虫だった女の子のお話よ。面白くはないけどね」
プリンセス 「あるお姫様が、ある男の子に恋をした。けど、その男の子には別に好きな女の子がいたわ」
プリンセス 「その女の子とお姫様は友達同士。お姫様は、自分に言い聞かせて、男の子への恋心をなかったことにしたわ」
プリンセス 「……お姫様は今でも、その男の子と女の子が結ばれるなら、満足できるの」
プリンセス 「けど、もしも男の子が他の女の子に、っていうことになるなら」
プリンセス 「話は変わってくると思わない?」 ニヤッ 「わたしにも、チャンスはあると思ってもいいんでしょ?」
ハピネス 「はぇ……?」 カァアア 「ぷ、プリンセス、それ、本当? プリンセスも、誠司さんのことを……?」
プリンセス 「さぁ、どうかしらね」 クスッ 「……でも、わたしが誠司を助ける理由は、他にもいくらでもあるわ」
プリンセス 「行くわよ、ハピネス。恋する乙女の本気の拳、受けてみなさい!」
………………
メロディアス 「ねえ、ハニー。わたしね、ずっと、ずっと、ずーっと見てきたんだ~」
ハニー 「……何を?」
メロディアス 「大好きな、敬愛するお方の、悲しそうなお顔」
ハニー 「………………」
メロディアス 「モモ様はね、ずっと自分を殺して生きてきたんだよ」
メロディアス 「隕石だらけのこの星で、ずっとずっと星を守るために自分を殺してきたんだよ」
メロディアス 「そんなモモ様が、初めて 『欲しい』 って言ってくれたの」
メロディアス 「格好良いって、好きだって、欲しいって。そう、言ったの」
メロディアス 「……そんなの、叶えたくなるに決まってるじゃない」
メロディアス 「叶えなきゃって思うに決まってるじゃない」
ハニー 「……それが、たくさんの人の笑顔を奪う行いだったとしても?」
ハニー 「モモちゃんは、それを望むの?」
メロディアス 「だから、わたしたちが勧めたんだ。モモ様が少しも罪悪感を憶えないように」
ハニー 「無駄だよ。自分のためにやってくれたことが悪いことだったら、モモちゃんは罪悪感を憶えるよ」
メロディアス 「……それでも、わたしは、モモ様の願いを叶えたいんだ」
ハニー 「……わたしもね、ずっと見てきたよ。大好きな男の子が、恋い焦がれる姿を」
ハニー 「その想い、成就させてあげたいって、ずっと思ってきたの。見守りながら、ね」
ハニー 「だから、そんな相楽くんの想いも、わたしの想いも、一気に全部ぶちこわしだなんて、」
ハニー 「そんなの、女神様が許したって、美味しいご飯を愛する、このキュアハニーが許さないわ!」
メロディアス 「……そっか。誠司さんはモテるんだね~」
メロディアス 「じゃあなおのこと、お互い譲れなそうだね」
ハニー 「うん。譲れそうにないね」 ザッ!!! 「……終わったら、また一緒にごはん、食べたいな」
メロディアス 「わたしも、できれば、そうしたいな~」
………………
フラアリー 「……あなたとの心躍る戦いに、期待しているわたしがいる」
フラアリー 「けれどそれと同時に、あなたと戦いたくないと思うわたしもいる」
フォーチュン 「あら、奇遇ね。わたしもよ。組み手ならいつでもお願いしたいのだけれどね」
フラアリー 「モモ様はわたしにとって……いえ、この星のすべての人間にとっての 『すべて』 なの」
フラアリー 「モモ様の願いを叶えるために、あなたが障害となるのなら、」
フォーチュン 「………………」
フラアリー 「わたしは、あなたとだって戦う」
フォーチュン 「残念だわ」
フラアリー 「……ええ。とっても」
フォーチュン 「違うわ。あなたほどの正しさを持った人が、間違った願いを持ってしまった女神様を止めることができなかったことが、」
フォーチュン 「その女神様の願いを幇助し、後押ししてしまったことが、残念で仕方がないのよ」
フラアリー 「………………」
フォーチュン 「……残念よ、キュアフラアリー」
フラアリー 「わたしは、あなたほど正しくあれなかった。弱いわたしを笑う?」
フォーチュン 「いいえ。笑ったりしないわ。わたしだってたくさん間違えてきたもの」
フォーチュン 「その代わり、わたしの全力全開の拳で、あなたの目を覚ましてあげる」
フォーチュン 「このキュアフォーチュンが、あなたの心を照らしてみせる!」
フラアリー 「……わたしも、本気で行く。モモ様のために。モモ様の、初めてのわがままのために」
………………神殿内部
ラブリー 「誠司ー!」
ズキッ
ラブリー (モモちゃんと、抱き合って……。やっぱり、あのふたりは……)
ブンブンブン
ラブリー (ちがう! そんなこと、考えるな! わたしは、わたしが言わなきゃいけないことだけを考えろ!)
誠司 「っ……もう来たのか、キュアラブリー!」
ラブリー 「誠司! お願い、話を聞いて!」
誠司 「ッ……。モモ、逃げるぞ!」
モモ 「………………」
誠司 「モモ……?」
モモ 「どうして……」
ギリッ
モモ (どうして、今さら、こんなところまで追ってくる)
モモ (キュアラブリー。あなたが誠司くんを求めないから、わたしが誠司くんのことを手に入れようとしているのに)
モモ (どうして……どうして……!)
モモ (どうして今さら、誠司くんのことを取り戻そうとするの……!?)
ラブリー 「お願い! 逃げないで、誠司! 話を聞いて!」
モモ 「あなたが……」 ギリッ
誠司 「も、モモ……?」
モモ 「あなたが悪いんじゃない! キュアラブリー!」
モモ 「なのにどうして、あなたは今さら、誠司くんを追いかけてくるの!」
モモ 「あなたが悪いのに! あなたが誠司くんを傷つけるのに!」
ラブリー 「モモちゃん……」
誠司 「モモ……」 (何だ……?)
誠司 (すごく、嫌な感じだ……。なんだ、モモから、こんな気配がするのは……一体……)
モモ 「あなたが逃げなければ、わたしは誠司くんを連れてきたりしなかった……!」
モモ 「あなたが誠司くんの精一杯の気持ちから、逃げようとしたりしなければ!」
モモ 「誠司くんが傷つくこともなかった!」
ラブリー 「……そうだね。それは、本当にわたしが悪いと思うよ」
ラブリー 「わたしは誠司から逃げてたんだ。誠司の言葉から、気持ちから、逃げてたんだ」
ラブリー 「わたしが勝手に怖がって、勝手に恐れて、逃げていただけなんだ」
ラブリー 「だから、今度は逃げないよ。わたしは、誠司にしっかりと気持ちを伝えにきたんだよ」
モモ 「やめてよ! そんなの……ずるいわよ……!」
モモ 「いまさら、そんなこと言わないでよ! いまさら、わたしの誠司くんを奪わないでよ!」
モモ (キュアラブリー……あなたさえ、いなければ……)
ジジ…………ジジジジ……!!!!
モモ (あなたさえ……!)
誠司 「な、なんだ……?」 (モモの周囲に、禍々しい、何かが……?)
―――― 『俺が何から逃げているのだとしても、俺はお前のことが好きだよ』
―――― 『モモを愛してるよ』
モモ (たとえ、あの言葉が、うそだって分かっていたって……)
モモ (わたしのためについた気休めだって分かっていたって……)
モモ 「わたしは……わたしは!」
モモ 「わたしは、誠司くんのことが好きなんだもん! 誠司くんのことが欲しいんだもん!」
誠司 「モモ! もうやめろ! 俺はお前の傍にいる! お前と一緒にいる! だから――」
―――――――――― うそだ
―――――――――― ただの気休めだ
―――――――――― うそっぱちだ
モモ 「ううっ……ぐっ……」
ジジジジジジジジジジジジジジ……!!!!!
誠司 「モモ!」
―――――――――― 見せろ
―――――――――― お前が望むもの
―――――――――― お前の欲望を
モモ 「わたしは!」 ギラッ
モモ 「わたしは、誠司くんが欲しい……!」
モモ 「キュアラブリーに奪われたくない!」
ラブリー 「も、モモちゃん! なんだかわからないけど、まずいよ!」
ラブリー 「落ち着いて! 何も、誠司を無理矢理連れて行ったりしないから!」
モモ 「う、うううう、うるさいうるさいうるさぁあああああい!!」
ラブリー 「モモちゃん……?」
誠司 「モモ! モモ! しっかりしろ!」
モモ 「あなたなんかに誠司くんは渡さない! 誠司くんはわたしを好きだと言ってくれた!」
モモ 「わたしを愛していると言ってくれた!」
モモ 「キュアラブリー……! あなたさえ……あなたさえいなければ!」
モモ 「あなたなんか……! あなたなんか!!!」
モモ 「誠司くんを苦しめるだけのあなたなんか、いなければよかったのよ!」
ハッ
モモ 「わ、わたしは、何を……なんて、恐ろしいことを……」
……ドクン……!!!!!!
―――――――――― その欲望
―――――――――― 履行しよう
ジジジジジジジジジジジジジジ……!!!!! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
誠司 「な、なんだ、この音は……この、気配は!」
タタタタタタタタタタタタ……!!!
ハーティネス 「モモ様! 誠司さん! ご無事ですか!」
ハーティネス 「……? も、モモ様……?」
モモ 「………………」
誠司 「モモ! モモ! しっかりしろ!」
ゴバッッッッッ……!!!!!!
誠司 「がッ……!?」 (な、なんだ……この衝撃波は……!?)
ラブリー 「誠司!」
ガバッ
誠司 「……わ、悪い。めぐみ、助かった。ありがとう」
ラブリー 「ううん」 グスッ 「やっと、また誠司と会えた」
誠司 「わっ……な、泣くなよ……」
ハッ
誠司 「そんな場合じゃない! モモは!?」
モモ 「………………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………!!!!!
誠司 「な、なんだ、ありゃ……」
ラブリー 「サイアークと同じ気配……。ううん、もっとすごい、濃厚な闇を感じるよ」
ハーティネス 「モモ様……! モモ様!!」
ラブリー 「あっ……だ、ダメ! 不用意に近づいたら!」
ゴバッッッッッ……!!!!!!
ハーティネス 「ぐッ……!?」 (衝撃波……!?)
ザザザザザザザザッッッ……!!!!!
ハーティネス 「モモ様、一体……」
モモ 「………………」
コーーーーーーー………………――
誠司 「……な、なんかわからないけど、まずいぞ。力を貯めてるように見える」
ラブリー 「誠司! わたしの陰に隠れて! とんでもない一撃が来るよ!」
ハーティネス 「モモ様!」
ラブリー 「ッ……!」
ガシッ
ハーティネス 「キュアラブリー!? はなしてください! モモ様の元へ行かなければ!」
ラブリー 「行っちゃダメ! わたしの陰に入って!」
ラブリー 「ラブリー・シールド!」
ラブリー (この程度で防げるとは思わないけど……!)
ラブリー (たとえ、わたしが大けがをしたって、誠司とユウキちゃんだけは守ってみせる……!)
モモ 「………………」
ゴバアアアアアアッッッッッ……!!!!!!
………………神殿外縁部地上
レッド 「………………」
ギリッ
レッド 「……だから言ったのだ。馬鹿者め。墜ちたな」
レッド (感じる。この星から、急速に女神の加護が消えつつある)
レッド (それどころか、星そのものが闇の波動をまといつつある)
レッド (星全体が、ゆるやかに闇に墜ちていく)
レッド (この星が変質していく。闇が世界を蝕んでいく)
レッド (……くそっ)
ヨロッ……
レッド 「なぜ俺が、こんなことに関わらねばならん……!」
レッド 「ええい! モモめ! 世話をかけさせるものだ!」
………………神殿外縁部上空
ハピネス 「はああああああっ!」
プリンセス 「おおおおおおおおっ!」
ガッ……ゴッ……ザッ……!!!!
ピシッ……
ハピネス 「……!? な、何……?」
プリンセス 「? なんか、ヒビが入ったような音がした……?」
ハピネス 「まっ、まさかっ!?」
ハピネス 「い、いいいい、イージスに、ヒビがっ……!?」
プリンセス 「イージス?」
パァァアアアアア……ポン
ラフィ 「へっ……? な、なんで、変身が!?」
ラフィ 「おっ、落ちる……!?」
プリンセス 「ラフィ!」
ガシッ
ラフィ 「ぷ、プリンセス……」
プリンセス 「ふぅ……」 ホッ 「……何が起こったんだか知らないけど」
プリンセス 「友達を助けられて、よかったよ」 ニコッ
ラフィ 「……ひめちゃん」
………………神殿外縁部地上
ハト 「……どうして急に変身が解けた」
ハト 「なんにせよ、投降する。わたしに戦う力は無い」
フォーチュン 「投降って……。あのね、べつにわたしたち戦争をしに来たわけじゃないのよ?」
フォーチュン 「と、友達に乱暴なこと、するわけないでしょ」
ハト 「……フォーチュン。ありがとう」
フォーチュン 「それにしても、どうして急に変身が解けたのかしら」
フォーチュン 「変身できそうにないの?」
ハト 「わからない。どうにも、モモ様の力が弱まっているように感じる……」
ハト 「……いえ、モモ様の力はすでにほぼ感じられない」
ハト 「モモ様の身に、何かが……」
スイ 「ハト~! 大変よ~!」
ハニー 「フォーチュン! 大変なの~!」
ハト 「スイ! やはりあなたも変身が解けたようね……」
ハト 「それで、大変とは?」
スイ 「イージスが……壊れちゃったみたい……」
ハト 「……!?」
フォーチュン 「イージス……?」
ハニー 「わたしも、スイちゃんから教えてもらったんだけどね、」
ハニー 「この星は、かなりの頻度で小惑星帯を通過する公転周期にあるようなの」
ハニー 「多くの隕石が地表に落下するはずなんだけど、それを上空で防いでくれているバリアがあるの」
フォーチュン 「……なるほど。それが女神モモのイージスというわけね」
スイ 「うん~。だから、イージスがなくなったとなると……」
スイ 「この星に、たくさんの隕石が降り注ぐことになる……」
スイ 「地球にいても維持できるモモ様のイージスが消えたってことは、モモ様に何かがあったんだと思う」
ハト 「……ここで考えていても仕方ない。モモ様のことも心配だけど、住人の避難が最優先」
ハト 「スイ、恐らくアクロポリス防衛のプリキュアも全員力を失ったと思うべき」
スイ 「うん。わたしもそう思う。モモ様の力が全く感じられないもの」
ピューン!!!!
ラフィ 「おーいっ、ハトー! スイー!」
プリンセス 「お、重い……」
ラフィ 「なっ……! お、重くないよっ! っていうか、鍛えてるんだから重いに決まってるでしょっ」
プリンセス 「あ、暴れないでよ! 落としちゃうでしょ!」
………………
ラフィ 「……じゃあ、モモ様の身に何かがあって、イージスが消えて」
ラフィ 「………………」 ガバッ 「大大大ピンチじゃんっ!!!」
ハト 「ラフィ、うるさい。さっきからそう言ってる」
スイ 「アクロポリス内に緊急用地下シェルターは五基。日頃から訓練しているとはいえ……」
スイ 「今は真夜中だし、避難完了まで時間はかなりかかると思う」
フォーチュン 「この星に緊急無線みたいなものはないの?」
スイ 「そんな便利なものは……。だって、わたしたちプリキュアが飛び回れば済むもの」
ハニー 「ああ~。プリキュア社会の弊害だねぇ」
プリンセス 「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないよ!? 隕石落ちてくるんでしょう!?」
スイ 「この星は万が一の隕石事故に備えて、このアクロポリス以外に人は住んでいないの。けど~……」
ハト 「都市防衛のプリキュアたちを全員走り回らせたとして、アクロポリス全域に行き渡るのに、時間がどれくらいかかるか……」
ギリッ
ハト 「わたしたちは、プリキュアに変身できなければ、何もできない……!」
ギュッ
フォーチュン 「……大丈夫。あなたたち惑星ピンキーのプリキュアが戦えなくても」
フォーチュン 「わたしたちがいるわ」
ハニー 「うん。その通りかな~」
プリンセス 「友達のためなら、いくらだってやってやるわ!」
ハト 「なっ……わ、わたしたちは!」
ハト 「あなた方の大切な人を、騙して連れ去ったのに! どうして……」
フォーチュン 「まぁ、騙されたことに関しては傷ついたけど」
フォーチュン 「最終的に着いていく判断をしたのは相楽くんだから、それに関しては、別に」
ラフィ 「わ、わたし、ひめちゃんにひどいことしたのに……」
プリンセス 「ゆるーす! そんなに気にしてないよ、ラフィ」
スイ 「……ハニー」
ハニー 「んふふ~、ここは、惑星ピンキー名物食べ放題で手を打ちますかね~」
フォーチュン 「わたしたちは上空で、アクロポリスに直撃するコースの隕石をできる限り砕くわ」
プリンセス 「みんなは、その間にできるだけ多くの人をシェルターに避難させてね」
ハニー 「地球を助けてくれたみんなのためなら、わたしたちはいくらだって手を貸すよ」
フォーチュン 「……友達相手に戦うよりは、よほど腕が鳴るわね」
プリンセス 「隕石も相手が悪いよね。ハピネスチャージプリキュアが相手だなんて!」
ハニー 「さー、ちょろっとこの星を救いに、参るとしますか~」
………………
ラブリー 「………………」
ラブリー 「……? あれ、なんとも、ない……」
ブルー 「……ぐっ、間に合ってよかった」
ラブリー 「ブルー!? わ、わたしたちを守ってくれたの?」
誠司 「神様! 怪我が……!」
ブルー 「はは、これでも地球の神だからね。地球の子どもたちである君たちばかりに、痛い思いはさせられないさ」
モモ 「………………」
ハーティネス 「そ、そんな……一撃で、神殿が壊滅状態だなんて……」
ヘナヘナ……
ハーティネス 「モモ様が、こんなことを……」
モモ 「………………」
ジジッ……ジジジジッ……!!!
ブルー 「……消えたか。市街地の方へ向かったかな」
ハーティネス 「モモ様……なぜ……。あんなお姿に……」
ハーティネス 「まるで、闇そのものに成り果てたような、異様なお姿だった……」
ブルー 「キュアハーティネス。そしてキュアラブリー、誠司くん。みんなよく聞いてほしい」
ブルー 「鏡に映そう。これが今の惑星ピンキーの状態だ」
パァアアアアア……
誠司 「なっ……」
ラブリー (星そのものが黒く変わろうとしているの……?)
ラブリー (まるで、闇に飲み込まれるように……ううん。闇そのものになろうとしているよう)
ラブリー (そして、真っ黒な出で立ちとなったモモちゃんが……)
ラブリー (闇を、街に放ち、壊している……)
ハーティネス 「なぜ、こんな……」
ブルー 「モモは闇に墜ちた。かつてのレッドと同じようにね」
ブルー 「彼女は、神が決して願ってはいけないことを願ってしまったんだ」
ブルー 「……誠司くんを連れてくるのならばいい。完全な合意ではなかったにせよ、」
ブルー 「誠司くんが、自分自身の気持ちから逃げるために、モモに同意したのは事実だからね」
誠司 「………………」
ブルー 「だが、先ほどのはいけない。神としての領分を超えている。闇の思想そのものだ」
―――― 『キュアラブリー……! あなたさえ……あなたさえいなければ!』
―――― 『あなたなんか……! あなたなんか!!!』
―――― 『誠司くんを苦しめるだけのあなたなんか、いなければよかったのよ!』
ブルー 「自分の誠司くんへの想いを守るために、キュアラブリーの存在をないことにしようと考えた」
ブルー 「……それは、神としての領分を超えている。神が願ってはいけないことなんだ」
ハーティネス 「モモ様は!」 ガバッ 「モモ様は、あなたのように世界に迷惑をかけたことはない!」
ハーティネス 「初めての、ささやかなわがままだったんだ……」
ブルー 「その通りだ。モモは、神として僕よりもはるかに上を行っている。それは、この星の心の豊かさを見ていればわかる」
ブルー 「皆が幸せそうに笑っている、良い星だ」
ブルー 「……だが、今の彼女はどうだい?」
ブルー 「この星の女神である彼女が闇に墜ちたことにより、この星そのものが闇に墜ちようとしている」
ブルー 「彼女が防いでいた隕石も地表に落下しようとしている」
ハーティネス 「ッ……」
ブルー 「そして、モモが闇に墜ちたことにより、彼女が生み出したプリキュアたちも力を失ったようだ」
ブルー 「どういうわけか、君だけは力を失っていないようだけど……」
ハーティネス 「……私だけで十分です。私がモモ様を救い出してみせます!」
ビュン!!!!!!
ブルー 「……行ってしまったか。しかし、あの闇はプリキュアひとりにどうこうできるものではない……」
誠司 「俺の……俺のせいだ……」
ラブリー 「誠司?」
誠司 「俺が悪かったんだ。俺、モモに 『好き』 って言ったんだ……」
ラブリー 「……っ」 ズキッ
誠司 「でも、モモはそれがうそだって気づいてたんだ。俺は、ひどいうそつきだ……」
ラブリー 「誠司……」
誠司 「モモのためを思ってついたうそで、モモを傷つけた。俺は……」
ラブリー 「………………」
グッ
ラブリー 「……誠司、顔を上げて」
誠司 「めぐみ……?」
パシィ……!!
誠司 「あ……」
ラブリー 「………………」
グスッ
誠司 (俺、ああ、そうか……) ズキッ (めぐみに、はたかれたのか……)
ラブリー 「モモちゃんと、わたしと、みんなの分だよ」
誠司 「めぐみ……」
ラブリー 「わたしだって傷ついたんだからね。ひめも、ゆうゆうも、いおなちゃんも。真央ちゃんも……」
誠司 「……すまん」
ラブリー 「……うん!」 ニコッ 「許す!」
ラブリー 「……っていうか、わたしの方こそごめんね。わたし、本当に、誠司から逃げてたんだ。ごめん」
誠司 「いや、それは……」 カァアア 「……あのタイミングで、突発的に言おうとした俺も悪い。ごめん」
ラブリー 「……ふふ」
誠司 「……はぁ。似たもん同士だな、俺たち」
ラブリー 「うん。だって、ずっと一緒だったんだもん。似もするよ」
誠司 「それもそうだな」
誠司 「……さて、本当に申し訳ないんだが、もう少しだけ俺のために戦ってもらってもいいか?」
誠司 「俺、モモに謝らなきゃいけないんだ」
ラブリー 「もちろん! この星もモモちゃんも、わたしたちが助けるよ! 誠司は安全なところで待っててね!」
スッ
誠司 「あっ……! ま、待ってくれ!」
ゴソゴソゴソ
ラブリー 「? どうかしたの、誠司?」
誠司 「これ……いまさらかもしれないけど」
キラッ
ラブリー 「えっ、それって……ブルーがくれた愛の結晶?」
誠司 「俺、全部終わったら地球に帰るよ。そのときに、全部言うよ。おまえの言葉も、ちゃんと聞くよ」
誠司 「だから、今はこれだけ受け取ってくれ」
ラブリー 「あっ……/// う、うん! わたしも……」
ゴソゴソゴソ
ラブリー 「……誠司も、わたしの愛の結晶、受け取って?」
誠司 「お、おう……」
パァアアアアアアアアアアア……!!!!!
誠司 「わっ……な、なんだ……!?」
ラブリー 「愛の結晶が光ってるの……? きれい……」
………………ポン!!!!
誠司 「……? な、なんだこれ……?」
ラブリー 「指輪……? 愛の結晶が、指輪になったの……?」
ブルー 「……!?」 (あ、あれは……!)
誠司 「………………」
ラブリー 「………………」
誠司 「……は、早く、左手、出せよ」
ラブリー 「へ!? あ、は、はい!」
スッ
ラブリー 「な、なんか……結婚指輪みたい……」
誠司 「そ、そうだな……」
ラブリー 「じゃあ、誠司も左手、出して」
誠司 「おう……」
スッ
ラブリー 「えへへー。おそろいだね」
誠司 「ああ。なんか、本当に結婚指輪をはめてるみたいだ……」
ラブリー 「うん……」
誠司 「……めぐみ、がんばれよ」
ラブリー 「うん! 大丈夫! わたし、今なら絶対に負けない! 嬉しくて嬉しくて、仕方ないもん!」
ラブリー 「……いってくるね、誠司!」
誠司 「おう! 負けるなよ! がんばれよ! キュアラブリー!」
ゴソッ……
レッド 「……で、どうするつもりだ、ブルー」
誠司 「わっ、レッド!? なんでそんなにボロボロなんだ!?」
レッド 「元はといえば貴様が悪い! ええい、俺がなんでこんな小僧のためにこんなに身体を張らねばならんのだ……」
誠司 「ああ……なんか、ごめん」
レッド 「このままではこの星が闇に墜ちるのも時間の問題だ」
レッド 「さて、闇そのものと成り果てたモモがこの星を破壊するのが先か、それとも星が闇そのものになるのが先か、」
レッド 「はたまた、隕石によってこの星の生命が刈り尽くされるのが先か……見物だな」
ブルー 「兄さん。ただでさえ人相が悪いんだから、悪ぶってそういうこと言わない方がいいよ」
ブルー 「……僕にひとつ考えがある。兄さん、少しここで待機していてくれ」
レッド 「都合の良いときだけ弟面しやがって……」
ブルー 「悪いね。では、誠司くん。君も僕と一緒に……」
誠司 「いや、俺はここにいるよ。モモとめぐみのことを、見届けてやらなきゃいけない気がするんだ……」
ブルー 「……そうか。わかった」
レッド 「安心しろ、ブルー。こいつひとりくらいなら、俺が守ってやる」
パァアアアアアア……!!!
ブルー 「誠司くん、兄さん、気をつけてね!」
レッド 「消えたか。ブルーの奴、何を企んでいるのやら……」
誠司 「………………」
グッ
誠司 (めぐみ、頼む……! どうかモモを助けてやってくれ……!)
………………惑星ピンキー 上空
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
ハーティネス (ッ……なんてことだ。モモ様の放つ波動だけじゃない)
ハーティネス (モモ様のイージスが防いでいた隕石が、大地を破壊しようと迫っている……!)
ギリッ
ハーティネス 「関係あるものか! この星も、モモ様も、私がすべて救ってみせる!」
モモ 「………………」
コォオオオオオオオ……ドバァアアアアア……!!!!!!
ハーティネス 「モモ様! やめてください! あなたの愛するこの星を、破壊するおつもりですか!」
モモ 「………………」
ドバッッッッ……!!!!!
ハーティネス 「ぐっ……!!」 (返ってくるのは攻撃ばかり……! 正気は失っていると判断するしかない!)
ハーティネス (少なくとも、モモ様を正気に戻すことができれば、イージスは復活し、隕石を防ぐことができる!)
ハーティネス (この星のプリキュアたちも力を取り戻すはず……!)
ハーティネス (ならば、少し手荒になるが……!)
ハーティネス 「私の最強の矛の力で、モモ様の闇を穿つ!」
モモ 「………………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
ハーティネス 「……モモ様、お怪我をさせてしまったら、申し訳ありません!」
ザッ……!!!!!
ッッッッッッッドン!!!!!
モモ 「………………」
ゴバッッッッッ……!!!!!!
ハーティネス (闇の衝撃波は強力だが、連発はできない上に指向性が強い)
ハーティネス (避けてさえしまえば、私の力が届く……!)
ハーティネス 「ハーティネス・ハートダイナマイト!!」
ズドンッッッ!!!!!
ハーティネス 「これなら……ッ!?」
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオ……………………
ハーティネス (イージスの絶対防御の力も使えるのか……!? いや、それよりも……!)
ハーティネス (あの、力を溜めるような挙動は、神殿を破壊したときと同じ……!)
ゴバッッッッッ……!!!!!!!!!!
ハーティネス (この至近で、あの威力を喰らったら……――!?)
………………
《世界が壊れるのは一瞬だった》
《たったひとつの隕石が、私の住む都市を破壊し尽くした》
《かつて、アクロポリスと双璧を成すと言われていた大都市》
《それが、一瞬で崩壊した》
《ああ、これが私の運命なのだろうと》
《私は幼いながらに、なんとなく納得した》
《破壊され尽くした都市の中、偶然にも防災シェルターに入って遊んでいた私だけが》
《ただひとり、生き残った》
『……ごめんなさい。わたしのイージスが、もう少し強ければ』
《……泣かないで》
『ごめんなさい。わたしの力不足のせいで、あなたの町を壊してしまった……』
《泣かないで、女神様》
『ごめんなさい……』
《ぼく、女神様が悲しんでいる方が、悲しいよ》
《ただただ私に謝り続ける女神様の姿を見て、思った》
《私は、この方をこれ以上悲しませないようにしようと》
《私は、私のために本当に胸を痛めてくれる、この方のために生きていこうと》
《ただひとり生き残ってしまった私などのために、涙してくれる方のために》
《この方をお守りする、力になろうと》
………………惑星ピンキー 地上
ハーティネス 「………………」
ハーティネス (ああ、気を失っていたのですね……。その間に、地表に落ちましたか)
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオ……………
ハーティネス (先の一撃にとどまらず、上空からもう一撃……)
ハーティネス (私のことを脅威と捉えているのですね)
ハーティネス (さすがに、まずいですか……)
ハーティネス (動くことも……――)
「――――ちょおぉぉおおおおっと、待ったぁあああああああああ!!」
ハーティネス 「……? キュアラブリー……?」
ラブリー 「ラブリー・シールド!」
ハーティネス 「なっ……」 (わ、私の前に、わざわざ身を躍らせるなど……!)
ハーティネス 「に、逃げ、てください! あなたの貧弱な、防御能力では、あの一撃は……!」
ラブリー 「一枚で貧弱ならー!」 ザッ……!!!! 「ラブリー・シールド! 五枚重ね!!!!!」
ハーティネス 「なっ……!? なんて、無茶苦茶な人だ……!」
モモ 「………………」
ゴバァアアアアアアアアアアアアアッッッ……!!!!!
ラブリー 「……ふぅ。なんとか防ぎ切れたかな?」
ハーティネス 「一体どこに、そんな力が……」
ラブリー 「わからないけど、力がみなぎってくるんだよね!」
ニコッ
ラブリー 「たぶん、誠司のおかげだけど」
ハーティネス 「誠司さんの……?」
ハーティネス 「………………」
スッ
ハーティネス 「……キュアラブリー。謝罪します。私が、悪かったんです」
ラブリー 「へ?」
ハーティネス 「私は、モモ様のためなら何でもやる心づもりでした」
ハーティネス 「モモ様のわがままを叶えるのも、モモ様のためだと思い、ためらうモモ様を焚きつけ、」
ハーティネス 「地球で誠司さんを惑わし、拐かしたのです」
ハーティネス 「モモ様はお優しい方です。そもそも、誠司さんをピンキーに連れてくること自体、乗り気ではありませんでした」
ハーティネス 「……本来、女神様をいさめ、たしなめる立場にあるはずの私たちプリキュアが、女神様を唆したのです」
ラブリー 「………………」
ハーティネス 「あなたにもひどいことを言いました。ごめんなさい」
ハーティネス 「この星のために戦ってくれようとしているのですね。ありがとうございます」
ヨロ……
ハーティネス 「ですが、もう大丈夫です。私がひとりで戦います。思い出しましたから」
ハーティネス 「モモ様から頂いた、たくさんのことを」
ハーティネス 「神ブルーと神レッドの力を借りて地球に戻ってください」
ハーティネス 「もちろん、誠司さんも連れて。そして、私たちのことはどうか忘れてください」
ハーティネス 「女神を唆し、闇に堕とす手助けをしてしまった、憐れなプリキュアのことを」
グラッ……
ハーティネス 「ぐっ……」
スッ……ギュッ
ラブリー 「……温かい。本当に、モモちゃんのプリキュアとしての気持ちを、思い出したみたいだね」
ハーティネス 「キュアラブリー……?」
ラブリー 「大丈夫。わたしも戦うよ。みんなが地球のことを助けてくれた恩返し、まだしてないもん」
ラブリー 「行こう、ハーティネス。わたしたちでやるんだ」
ラブリー 「わたしたちで、モモちゃんを取り戻すんだよ!」
ハーティネス 「キュアラブリー……」
グッ
ハーティネス 「……わかりました。ご協力、感謝します!」
ラブリー 「うん!」
ハーティネス (何度打ちのめされたって、立ち向かう……!)
ハーティネス (この命は、モモ様から頂いたものだ。ならば、この命燃え尽きるまで……!)
ハーティネス 「……モモ様、今、お救い致します!」
………………惑星ピンキー 上空
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
プリンセス 「や、ヤバヤバいよー! 隕石って超怖いんだけどー!」
フォーチュン 「大気圏で燃え尽きない隕石ということは……まぁ、そういうことよね」
ハニー 「できるよ。大丈夫。そこまで大きなものはないわ」
ハニー 「せいぜいが、家ひとつ吹き飛ばすくらいの粒よ」
ニコッ
ハニー 「……ちょいちょい、直径数十キロのクレーターになりそうなのもあるけど」
プリンセス 「十分怖いと思うんですけどー!」
プリンセス 「あーん、もう! こうなりゃヤケだよ!」
プリンセス 「プリンセス・弾丸マシンガン!!」
ダダダダダダダダダダ……!!!!!
フォーチュン 「ふふ、いいじゃない。細かい隕石は頼んだわよ、プリンセス」
ザッ……!!!!
フォーチュン 「じゃあ、ちょっと行ってくるわ」
ハニー 「フォーチュン……」
フォーチュン 「わたしは、この拳で、大きめの隕石をできるだけ細かく砕く」
ハニー 「うん。わたしはそれを、ハニー・リボンハートウォールでできる限り受け止めるわ!」
フォーチュン 「今までの戦いとは規模が違いすぎるわ。宇宙と戦うことになるなんてね」
ハニー 「ふふふ~、世界のキュアハニーが、とうとう宇宙のキュアハニーとなるんですなぁ~」
フォーチュン 「………………」 (大丈夫。わたしの、この拳なら……!)
フォーチュン 「いくわよ! フォーチュン・スターバースト!」
ズドドドドドドドドドドドドドッッッッ……!!!!!!!
フォーチュン (わたしの拳で……! ハトの故郷を、守ってみせる!)
フォーチュン 「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
フォーチュン 「スターバースト!! 二連・四連……八連……!! 十六連……!!」
ギギギッ……ギギギギギッ……!!!!
フォーチュン (拳が悲鳴を上げている……それでもッ!!!) 「三十二連、撃ッッ……!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
ハニー 「はぁ~、いおなちゃんったら、一気にこんなに隕石を砕いちゃうんだから……」
ハニー 「……じゃあ、わたしも本気でがんばるとしますか!」
ハニー 「ハニー・リボンハートウォール!」
ハニー 「スーパー大盛り! いいえ! ウルトラ特盛りサイズよ!!」
プリンセス 「わ、すごい大きさのハートウォール! これなら市街地全域を覆えるよ!」
プリンセス 「よーし、わたしも負けてられないわね! がんばっちゃうんだから!」
プリンセス 「プリンセス・爆弾ボンバー! アンド! 弾丸マシンガン!」 ザッ……!!!! 「フルオープンアターック!!!」
ズドドドドドドドドドドドドドッッッッ……!!!!!!!
プリンセス 「このキュアプリンセスの火力で! この星の命を守ってみせる!!!!」
………………地上 アクロポリス市街地
ハト 「落ち着いて! 落ち着いて、急いで避難を! 訓練通り、手近なシェルターへ!」
ハト 「自力で避難ができない方はいませんかー!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
ハト 「……!? 上空が、隕石でいっぱい……こんなのって……」
ハト 「こんなの……」 (無理だよ……)
ガクッ
―――― 「フォーチュン・スターバスト!」
ハト 「……? いおな……?」
ハト 「……すごい。キュアフォーチュン、隕石をあんなに一斉に砕くなんて……」
ハト (……フォーチュンはまだ諦めていない)
ハト (わたしたちが市民の避難を急いでいると信じて、全力で隕石と戦ってくれているんだ)
ハト (それなのに、わたしが……) ギリッ (この星のプリキュアであるわたしが諦めてしまって、どうする!)
ハト 「……急いで! 急いで避難を! 自力で避難できない人は、教えてください!」
ハト 「助け合って! 助け合って、シェルターへ急いでください!」
………………上空
ハーティネス 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ハーティネス 「ハーティネス・マイスイートハート!」
ゴォォオオオオオオ……!!!!
モモ 「………………」
ハーティネス 「くっ……やはり、どんなに攻撃を加えても、モモ様のイージスで防がれる」
ラブリー 「ハーティネス、大丈夫? だいぶ辛そうだけど……」
ハーティネス 「大丈夫です。まだやれます」
ハーティネス 「……ラブリー。ひとつお願いがあります。ほんの五秒……いえ、三秒でいい、」
ハーティネス 「モモ様の気を逸らすことは可能ですか?」
ラブリー 「三秒……? あの衝撃波さえしのげれば……」
ラブリー 「……ううん、しのげれば、じゃないね」 グッ 「隙、作るよ!」
ハーティネス 「ありがとうございます。三秒あれば、私の矛の力で……」
ハーティネス 「イージスを貫き、モモ様を浄化してみせます」
ラブリー (……わたしの、イノセントな気持ち)
ラブリー (本当にイノセントなのか、今はちょっと自信ないけど……)
ラブリー (それでも、わたしは……この力を借りなければいけない)
ラブリー 「……プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
ハーティネス 「な、なんだ……この、清浄な力は……」
ハーティネス 「これが……地球の選ばれしプリキュアが持つという、イノセントな力……」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ラブリー 「ハピネスチャージプリキュア! イノセントフォーム!」
モモ 「……!? キュア、ラブリー……!」
モモ 「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ハーティネス 「キュアラブリーに明確な敵意を向けている……これなら!」
ハーティネス (モモ様、今……!)
ドクン……!!!!
ハーティネス 「ぐっ……」 (活動限界時間が……! だけど、もう少しなんだ……!)
ハーティネス 「もちなさい、キュアハーティネス! その力は、モモ様のための力でしょう!?」
ラブリー 「ラブリー・パワフルキッス!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
モモ 「グッ……ガッ……!」
ハーティネス 「イノセントな拘束の力……! これなら!」
ザッ……!!!!
ハーティネス 「プリキュア・ラブリーフォースランサー!!!!」
ハーティネス 「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ハーティネス (届け……! 届け!!! 届けぇええええええええええええ!!)
モモ 「ゴッ…………ガァァアアア……」
ハーティネス 「と、届いた……やっと……」
ハーティネス 「イージスを、破った……あとは、浄化を……」
……………………――――――――
………………ドクン……
シュゥウウウウウウウウウウウ………………
ハーティネス 「なっ……そ、そんな……」
ハーティネス (ようやく、モモ様の身体に、手が、届いたのに……)
ラブリー 「ハーティネス!?」
ハーティネス (活動限界を超えて、プリキュアでい続けたから、なのか……)
ハーティネス (ああ、なんとはなしに、わかる……)
ハーティネス (私の身体から、プリキュアの力が、永遠に失われていくことが……)
ポワァ……………………
ユウキ 「………………」
ラブリー 「ゆ、ユウキちゃん、どうして!? どうして変身が……」
ユウキ 「………………」
グラッ……
ラブリー 「ま、まずい! このままじゃ、ユウキちゃんが地面に落ちちゃう!」
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオオ……………………!!!!
ラブリー 「!?」 (また衝撃波を溜めている……!? これを防がなきゃ、ユウキちゃんも……)
ラブリー (でも、このままじゃ、ユウキちゃんが生身で地面に……!)
―――――― 「任せろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ラブリー 「せ、誠司!?」
誠司 「俺が! ユウキを抱き留める! だから、その攻撃! 防いでくれ!!」
ラブリー 「誠司……!」 グッ 「わかったよ! 任せて!」
………………数分前 惑星ピンキー 地表
ドーン!!! ズガーン!!!!
レッド 「……おい、何もこんなモモの攻撃に巻き込まれるような場所にいなくてもいいだろう」
誠司 「何言ってんだ。ここじゃないと、めぐみたちの戦いを見守れないだろうが」
レッド 「お前なぁ。お前を守ると約束した俺の身にもなれ」
誠司 「守ってくれるんだろう? だったら安心じゃねえか」 ニッ
レッド 「……クソガキめ」
誠司 「……ん? あれは、イノセントフォーム! めぐみ、決めにいったな!」
レッド 「……お前、傍から見てるとまるでストーカーだな。それで女に好かれるとでも思っているのか?」
誠司 「うるせぇな! お前にストーカーとか言われたくねえよ!」
誠司 「ん……? !? ま、まずい!」
バッ………………タタタタッタ……!!!
レッド 「お、おい! 急に走り出すな! どうしたというんだ!」
誠司 「ハーティネスが落ちる!」
レッド 「プリキュアが地上に落ちるくらいなんともないだろう」
誠司 「変身が解除されてんだよ!」
………………
ユウキ (……やはり、私などには無理だったのですね)
ユウキ (モモ様をお救いすることなど、到底できないのですね)
ユウキ (ああ、本当におこがましいことです。隕石災害の唯一の生き残り……)
ユウキ (そんな私が、モモ様の最側近でいていいはずがなかったのですね)
ユウキ (そのあげく、私は誰も守れず、星も守れず、死んでいくのですね……)
ユウキ (ああ、せめてもの救いは……私の愛する惑星ピンキーの地表で死ねることでしょうか)
ユウキ (……モモ様、先輩方、そして地球の皆様。本当に、ごめんなさい)
―――――― 「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ユウキ 「えっ……?」
誠司 「死なせてたまるかよ! 俺のせいで、これ以上不幸を増やしてたまるかよ!」
ズザァアアアアアアアアアアアアアア……!!!!
ユウキ 「………………」
誠司 「………………」
プハァ
誠司 「ま、間に合ったぁ……」
ユウキ 「なぜ……?」
誠司 「ん?」
ユウキ 「なぜ、そんなに無理して、私を……?」
誠司 「そりゃ、目の前に人が落ちてくりゃ助けるだろ」
ユウキ 「………………」 (ああ、そうだ。この人はこういう人だ……)
レッド 「……まったく。ひやひやさせるな」
誠司 「そう言うなよ。ちゃんと助けたんだから、いいだろ?」
レッド 「……くそっ。どうして俺がこんな奴のお守りをしなきゃならんのだ」
ユウキ 「……あ、あの……」
誠司 「ん?」
ユウキ 「ありがとう、ございます……」
誠司 「おう!」 ニコッ
………………上空
モモ 「………………」
ラブリー 「ぐっ……」
ガクッ
ラブリー (ラブリー・シールド八枚重ねでようやく防ぎきったけど……) ゼェゼェ……
ラブリー (モモちゃんの闇の力、どんどん強くなってる……)
ラブリー (つまり、モモちゃんがどんどん闇の飲み込まれていっているってことだよね……)
ラブリー 「急がないと……」
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオオ……………………!!!!
ラブリー 「ま、また力を溜めてるの!?」
ラブリー 「モモちゃん! いい加減にしないと、わたしも怒るからね!」
ラブリー 「プリキュア・くるりんミラーチェンジ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ラブリー 「チェリーフラメンコ!」
ラブリー 「ラブリー・ロサトルメンタ!」
シュババババババババババ……!!!!
モモ 「……?」
ラブリー 「攪乱させて……からの!」
ザッ……!!!!
ラブリー 「上からの! ラブリー・ファイヤーフェスティバル!」
ラブリー 「オ・レ!」
ゴワァアアアアアアアアアアアアア!!!!
モモ 「ゴッ……ガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ラブリー 「これでどうだ! 極めつけの、プリキュア・パッションダイナマイト!」
ラブリー 「オ・レ!!!!」
ズドッッッッッッ……………………サァアアア……
モモ 「………………」
ラブリー 「くっ……」 (やっぱり、モモちゃんの周囲はイージスで守られてる)
ラブリー (どんなに強力な攻撃を加えても、不意打ちを加えても、イージスにすべて防がれちゃうんだ)
ラブリー 「もう少し、がんばらないとだね……」
ニッ
ラブリー 「誠司と約束したんだもの! わたしは絶対に負けないよ!」
………………地表
誠司 「くっ……惜しい! イージスの絶対防御がラブリーの攻撃を寄せ付けないのか」
ユウキ 「………………」
誠司 「ユウキ! 無理を言って申し訳ないとは思うが、戦えないか?」
ユウキ 「……無理です」
誠司 「身体がボロボロなのは百も承知だ! だけど、ラブリーが……!」
ユウキ 「そうじゃないんです。わたしのプリキュアの力は、永遠に失われました」
スッ
誠司 「これは……お前の変身アイテムと、プリカードか……?」
サラサラサラサラ……
誠司 「!? す、砂になって……消えた……」
ユウキ 「……わたしの活動限界は約三十分という話はしましたね」
ユウキ 「わたしは活動限界を超えて連続変身を続けてしまった」
ユウキ 「この力はこの星から与えられたもの。その力を傲慢にも己のものとした私の招いた結果です」
ユウキ 「――……キュアハーティネスの力は、永遠に失われました」
誠司 「どういうことだ……?」
ユウキ 「誠司さん、私はあなたに、私は幼いからプリキュアとしての力に制限があると言いましたね」
ユウキ 「アレは、うそなんです」
ユウキ 「本当の理由は簡単ですよ」
クスクスクス
ユウキ 「私は本来、プリキュアになれる存在ではないのです」
ユウキ 「私はだって、男、ですから」
誠司 「……? なっ……!?」 ガバッ 「じ、冗談だろ……?」
ユウキ 「本当ですよ。だから私は、本来はプリキュアになってはいけない、禁忌の存在なのです」
誠司 「男……男って……ええー……」 (真央やエリちゃんと並んでもわからなそうだが……)
ユウキ 「ハーティネスの力は、この惑星ピンキーから与えられた……のだと、私は思っています」
ユウキ 「私のモモ様への気持ちをくみ取ったこの星が、光栄にも私にくれた力なんです」
『私は男だから、モモ様のお側にお仕えすることはできない』
『私は男だから、モモ様のことを守ることができない』
『私は男だから、プリキュアになることができない』
ユウキ 「……モモ様へ恩返しをしたかった私は、必死の思いで修行しました」
ユウキ 「幼い身ながら、それなりの体術は身についたと自負しています」
ユウキ 「ですが、所詮その程度でした。大男には負けます。強敵には対処のしようがありません」
ユウキ 「……けれど、ある日、私の元にピンキーミラーとプリカードが現れた」
ユウキ 「私は、この惑星ピンキーが、モモ様を守ってくれと言っているように感じました」
ユウキ 「そうして私は、アクロポリスプリキュアの一員となったのです」
レッド 「なるほど。つまりお前は、女神モモの力によって変身したわけではないのか」
ユウキ 「その通りです。神レッド」
レッド 「だから女神モモの力が失われた後でも、プリキュアに変身できたのか……」
レッド 「あの限定的な強さも、この星そのものに選ばれたプリキュアだったからこそ、か」
誠司 「そうか。だからハーティネスは、ハピネスチャージプリキュアをまとめて相手できるほどの力が……」
ユウキ 「……ハーティネスの力は、モモ様のイージスを貫くことができる唯一の存在です」
ユウキ 「それが私の傲慢で失われた今、もう、この星を救う術はありません」
ユウキ 「神レッド。どうかあなたが正気ならば、御賢明な判断を」
ユウキ 「ハピネスチャージプリキュア、その妖精、そして誠司さんを連れて、」
ユウキ 「早く地球に帰ってください。この星の闇の余波は、当分は地球に届くこともないでしょう」
ユウキ 「地球のプリキュアたちでしっかりと防衛策を立て、闇と成り果てたこの星を……」
ユウキ 「………………」
ポタッ………………ポタッポタッ……
ユウキ 「この、惑星ピンキーを……そして、闇と成り果てたモモ様を、討ってください……」
レッド 「………………」
フン
レッド 「断る。なぜ俺がそんな面倒くさいことをせねばならんのだ」
ユウキ 「神レッド……」
レッド 「知ったことか。お前たちの星がどうなろうと、俺には何の関係もない」
誠司 「………………」
クスクスクス
誠司 「レッド、あんたさ、もう少し素直になれないかなぁ?」
誠司 「最後まで見捨てるつもりはない、って素直に言えないか?」
レッド 「なっ……」 カァアア 「そ、そんなことを考えた憶えはない!!」
ユウキ 「誠司さん、神レッド……しかし……!」
誠司 「俺は、信じてるから」
ユウキ 「えっ……?」
誠司 「俺が信じるプリキュアたちが、この星を、モモを、みんなを、救ってくれるって」
誠司 「だから大丈夫だ。ユウキ、お前も俺を信じろ」
誠司 「そして、自分自身を信じろ! お前は今までモモのためにがんばってきた、本物のプリキュアじゃねえか!」
ユウキ 「私を、信じる……?」
………………上空
プリンセス 「………………」
ガクッ
プリンセス 「つ、疲れたよぉぉお……」
プリンセス 「どんなに壊しても、どんどん降ってくるよぉ……!」
ハニー 「そりゃー、小惑星帯に突っ込んでるんだもんねー」
ハニー 「これだけの質量を24時間休みなく弾き続けるイージスには恐れ入っちゃうね~」
フォーチュン 「とは言ったものの、これ以上はなんとも言えないわね……」
フォーチュン 「現状維持ですらジリ貧なのに、もしこれ以上に大きな隕石が降ってきたら……」
―――――― 「フォーチュン! ハニー! プリンセス!」
フォーチュン 「……? ハト!」
ハト 「全住民! シェルターへの! 避難を! 確認!」
ハト 「ありがとー! あなたたちは! この星の! 英雄だよ!」
フォーチュン 「………………」
ガクッ
フォーチュン 「……ホッとしたら気が抜けたわ」
ハニー 「でも、まだまだ気は抜けないよ? 大きな隕石が降ってきたら、それでおしまいなんだから」
プリンセス 「その前に、女神モモの安否を確認しないと……――」
ゴォォアアアアアアアアアアアアア!!!!!
プリンセス 「なんかすごいの来たぁ!?」
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオオ……………………!!!!
ハニー 「噂をすれば影、かな~」
フォーチュン 「……状況がつかめないわね。どうして女神モモが街を攻撃しようとしているの?」
ビューン!!!!
ラブリー 「みんな! 会えてよかった! モモちゃんを止めるのを手伝って!」
ラブリー 「モモちゃんさえ正気に戻せば、この星を守るバリアも復活するんだよ!」
ラブリー 「ラブリー・ライジングソード!」
モモ 「ガッ……ガガガガガガ!!!!」
プリンセス 「なんか怪獣大決戦みたいになってるんだけど!?」
ハニー 「こら、プリンセス。人の星の神様をそういう風に言っちゃダメだよ~?」
プリンセス 「で、でも~!」
フォーチュン 「ふざけてる場合じゃないわ! 止めるわよ!」
フォーチュン 「星の光を聖なる力に! フォーチュンタンバリン!」
フォーチュン 「フォーチュン・ギャラクシアメテオ!!!」
ズドドドドドドドドドド…………!!!!
モモ 「………………」
ハニー 「……うーん、まるで効いてる様子がないね~」
ラブリー 「まだ手はあるよ! わたしたちの、イノセントな想いがあれば!」
プリンセス 「! よっしゃー! 久々にやっちゃうよー!」
ぐらさん 「呼ばれて飛び出て!」
リボン 「じゃじゃじゃじゃーん! ですわ!」
ラブリー 「よし、みんな! いくよ!」
リボン 「集まれ、ハピネスな気持ち!」
ぐらさん 「高まれ、イノセントな思い!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ラブリー 「輝け!」
「「「「シャイニングメイクドレッサー!」」」」
「「「「プリキュア・イノセントプリフィケーション!」」」」
モモ 「ガッ……!?」
ラブリー 「はぁああああああああああああ!!」 (お願い、モモちゃん……!)
ラブリー 「目を、覚まして!」
モモ 「アア……アアアアアアアアアアアア……!!!」
モモ 「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」
ドバッ……!!!!!!!!!
ラブリー 「!?」 (イージスが、プリフィケーションをはじき飛ばした……!?)
モモ 「………………」
コォォオオオオオオオオオオオ……………………!!!!
ラブリー 「ま、まずい! みんな、強力な攻撃が来る! 防いで!」
ズドッッッッッッ……………………!!!!!!!!!!
………………地上
誠司 「そ、そんな……イノセントプリフィケーションまで……」
レッド 「チッ……ブルーの奴、何をやっているんだ!」
ユウキ 「……モモ様」
グッ
ユウキ 「私のせいで、あんなおいたわしいお姿に……」
ユウキ 「苦しいでしょう……悲しいでしょう……痛いでしょう……」
ユウキ 「あんなにお優しいモモ様に、モモ様の愛するこの星を傷つけさせてしまうとは……」
ユウキ 「私は、やはりプリキュア失格だ……」
誠司 「………………」
ギュッ
誠司 「おまえ、本当にモモのことが好きなんだな」
ユウキ 「……ええ。浅ましいこととは、自分でも思っています」
ユウキ 「一介の、それも男子の身の上で、卑しくもモモ様のお側にいたいと願ってしまった……」
ユウキ 「それが、この結果を招いたのです。滑稽ですね」
誠司 「滑稽なもんか」 ニッ 「お前から感じたモモへの気持ち、本物だって俺は知ってるからな」
ユウキ 「滑稽ですよ……。だって私は、おこがましくも、モモ様を愛してしまった」
ユウキ 「モモ様に愛されたあなたに嫉妬もしました。本当に卑しいことです」
ユウキ 「……けれど、あなたはモモ様が愛するに値するお方でした」
ユウキ 「だから、私はモモ様のため、そしてモモ様の愛するあなたのため、お二人の幸せを守ると決めたのです」
誠司 「お前は立派だ。本当に立派だ。俺とは大違いだな」
誠司 「俺は、おまえが言うような人間じゃない。モモのためを思ってついたうそで、モモを傷つけた」
誠司 「地球のみんなも傷つけた。おまえのことも、苦しめちまったのかもしれないな」
ユウキ 「誠司さん……」
誠司 「なぁ、ユウキ。俺はお前を本当にプリキュアだと思うぜ。おまえは男なのかもしれない。けど、それでも……」
誠司 「守りたい誰かのために必死になれる奴は、誰だってプリキュアになれるんだ」
パァアアアアアア……!!!
ユウキ 「……?」 (なんだ、この、温かい光は……。誠司さんの手から……? いや、これは……)
誠司 「だから俺は信じてる。ユウキ、お前は――キュアハーティネスは、地球を救う手助けもしてくれた、素敵なプリキュアなんだから」
パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
誠司 「……? な、なんだこれ!? めぐみと交換した指輪から、光が……」
ユウキ 「温かい……とても、温かい光です……」
モゾッ
誠司 「お、おい! おまえ、大けがしてるんだから、起きたら……」
ユウキ 「大丈夫です。痛みはあまりありません」
誠司 「……わかった。立てるか?」
ユウキ 「すみません。肩をお借りします」
ユウキ 「……ああ、なんでしょう。まるで、誠司さんの手から、力が流れ込んでくるようです」
ユウキ 「私が諦めてしまったから、いけなかったのですね」
誠司 「ユウキ……」
ユウキ 「……お願いします。惑星ピンキーよ、どうか、今も戦う地球のプリキュアに、大いなるご加護を」
パァアアアアアア……!!!
誠司 (ああ、すげえや……。ユウキの祈りに呼応するように、大地から……)
誠司 「……星から、光が溢れてきてる……。これは、一体……――」
ブルー 「――――闇に飲み込まれつつあったこの星が、彼のイノセントな想いに応えたんだ」
レッド 「ブルー! 貴様、今まで何を……!」
ブルー 「遅くなってすまない、レッド。だが、すべての準備は整った」
ユウキ 「地球の神ブルー、準備とは、一体……」
ブルー 「君たちに、数ヶ月越しの恩返しをするための準備さ!」
パァアアアアアアアアアアアアア……!!!!!
ユウキ 「……!? 鮮烈な光、これは……上空から!?」
誠司 「なっ……!? なんだありゃ!? 空が光り輝いてる……!?」
ブルー 「人々の祈りは、願いは、想いは、希望となり、光となり、苦しむ人々の元へ福音として降り注ぐ!」
ユウキ 「人々の祈り……?」
ブルー 「……地球の皆に少しだけ力を借りたのさ」
ニコッ
ブルー 「地球のみんなに、これを渡してきたんだ」
誠司 「それは……」 ハッ 「ミラクルライトか!」
………………数分前 地球
パァアアアアアア……!!!
「ん……? なんか、水たまりが明るい……?」
「鏡も明るいわ」
「ショーウィンドーも……」
―――― 『地球人のみんな』
「……!? わっ、人が映った!」
―――― 『かつて、この星を邪悪が包み込んだとき、手を差し伸べてくれた異星の戦士たちがいた』
「……? この映像は、赤い怪物が現れたときの……?」
「あっ……知ってる! これ、噂になってる謎のプリキュアだ!」
―――― 『そして今、その親愛なる異星が、危機に瀕している』
「大量の隕石が落ちて……黒い何かが、町を破壊している……」
―――― 『その星は、かつて我々を救ってくれた。アクロポリスプリキュアという名の、戦士たちの故郷だ』
―――― 『どうか、親愛なるその星を救いたいと願うなら、このミラクルライトを振り、大いなる力を彼らに届けてほしい』
―――― 『どうか、頼む! あの星を……惑星ピンキーを、救う力を!』
パァアアアアアア……!!! コロ……
「これが、ミラクルライト……」
「私たちを助けてくれた、アクロポリスプリキュア……。わたしたちにも、できることがあるなら」
「……やるぞ。俺は。俺はやるぞ!」
「わ、私だって!」
パッ……
パパッ……
パパパ……パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………………………!!!!
………………惑星ピンキー
ブルー 「地球の人々は、今も懸命にミラクルライトを振り、想いの力を届けてくれている」
ブルー 「さぁ、場は整った。後はモモを闇から救いだし、隕石を食い止めるだけだ!」
ユウキ 「だけだと言っても……。モモ様のイージスを貫く力は、もう……」
ギュッ
誠司 「……あきらめんなよ。まだ終わってないだろ!」
ブルー 「願うんだ、ユウキくん。願いは人を強くする。願いは人に希望を与える」
ブルー 「君はどうしたい? 君はどうなりたい? 君は、モモのために何をしたい?」
ユウキ 「わ、私は……」
グッ
ユウキ 「……この手で、モモ様を救いたい。この星を守りたい。もう一度、プリキュアとして……」
ユウキ 「キュアハーティネスとして、モモ様を守るための力となりたい!」
パァアアアアアア……!!!!!!!!!!!!!!!!
ブルー 「地球の人々の願いの力! そしてこの星のモモを守りたいという願いの力!」
ブルー 「この星の人々のモモに対する真摯な信仰心! そして……」
ブルー 「めぐみと誠司くんの、お互いを想い合うイノセントな愛の結晶――その、ミラクルウェディングリングが!」
ブルー 「純粋な想いを持つ少年のために、奇跡を起こそうとしているんだ……!」
ユウキ (私は、決して優しくはない。正しくもない。清廉潔白でもない)
ユウキ (モモ様を見て、癒やされて、嫉妬して……本当に、どうしようもないくらい、ただの人間だ)
ユウキ (そんな私をプリキュアにしてくれた、この星に感謝を)
ユウキ (そして、この星のために祈りを捧げてくれている、地球の皆さんに感謝を)
ユウキ (この星のために尽力してくれているプリキュア、妖精、神様に感謝を)
ユウキ (そして……)
チラッ
誠司 「……ん?」
ユウキ (この、優しくて素敵な男の子に、感謝を)
パァアアアアアア……!!!
ユウキ (つないだ手を通して流れ込んでくる、誠司さんのめぐみさんへの愛。そして、めぐみさんの誠司さんへの愛)
ユウキ (なんて温かい愛なのだろう。私は、こんなふたりの仲を引き裂き、ひどい言葉を投げかけたのか……)
ユウキ (……違う。今はそんなことを考える時じゃない。贖罪は後ですればいい)
スッ
ユウキ 「……惑星ピンキーよ! 今一度、私に変身する力を! モモ様をお救いし、お守りする力を!」
パァアアアアアアアアアアアアアアアアア……!!!
誠司 「……ミラーとプリカードが! よしっ!」 グッ 「……がんばれよ、ユウキ!」
ユウキ 「はい! プリキュア・ピンキーミラーチェンジ!」
ユウキ (ああ、温かい。この光は、この力は、惑星ピンキーと多くの人々の想いで生み出された力)
ユウキ (なんて心強いのだろう。なんて、心地よいのだろう!)
パァアアアアアア……!!!
「星守り、人守り、愛守る鼓動!」
「――――――キュアハーティネス・パルテノンモード!」
誠司 「キュアハーティネス・パルテノンモード……?」
ハーティネス 「な、なな、なんですか、この姿は……? キュアハーティネスとは、違う……?」
ブルー 「多くの人々の想いを受けて、君の力が強化されたんだ」
ブルー 「今なら、三十分の時間制限なんて吹き飛ばしてしまえるはずだよ」
ブルー 「そして、誠司くんとめぐみのイノセントな愛の結晶、ミラクルウェディングリングの力が、」
ブルー 「君に大いなる力を与えたのだろう。その結果が、そのパルテノンモードだ」
レッド 「……いや、しかし、男なのにパルテノンというのはどうなんだ?」
誠司 「野暮なこと言うなよ、レッド」
グッ
誠司 「すごく綺麗で格好いいぜ! キュアハーティネス!」
ハーティネス 「ありがとうございます! 私、今ならなんでもできる気がします!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
モモ 「………………」
ハーティネス 「モモ様……いま、助けに行きます!」
誠司 「ハーティネス! がんばれよ! 絶対、モモを救い出してこいよ!」
ハーティネス 「はい!」
バサッ!!!!!
ハーティネス 「翼……?」 クスッ 「女神をお救いするには、ふさわしい姿ですかね!」
ビュン!!!!!!!
誠司 「どわっ……!? な、なんて速さだよ……」
誠司 「あれが、キュアハーティネス・パルテノンモード……!」
………………上空
ハーティネス 「この速さなら……!」
モモ 「………………」
コォォォオオオオオオオオオオオオオオ………………!!!!!!
ハーティネス 「また闇の力を貯めている……! しかし、このまま間合いに入れば……――」
――――――――…………ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
ハーティネス 「……!?」 (こ、このタイミングで!? 超巨大隕石……!)
ハーティネス 「まずい! あのまま地表に落下すれば、シェルターもろともアクロポリスが吹き飛んでしまう!」
ハーティネス 「私が、止めるしか……――」
「――……ふふ、大丈夫。ブルーが恩返しをすると言ったでしょう?」
ハーティネス 「え……?」
キュアミラージュ 「ふふ。初めまして。地球のプリキュア、キュアミラージュよ」
ミラージュ 「あの隕石はわたしたちが破壊するわ。あなたはそのまま女神様の元へ急いで」
ハーティネス 「は、はい! すみません、ありがとうございます!」
ハーティネス (……? "わたしたち" ……?)
………………地表
誠司 「お、おいおい、あんなでかい隕石、ありかよ!」
レッド 「小惑星帯を通過しているんだ。それくらいはあるだろう」
ブルー 「大丈夫。心配しないで。僕たちが恩返しをする番だと言ったはずだよ?」
誠司 「神様……?」
ブルー 「地球の全プリキュアにお願いしたんだ」
ニコッ
ブルー 「もしも謎のプリキュアに恩返しがしたいなら、鏡に飛び込み、力を発揮してくれ、ってね」
誠司 「じゃあ、まさか……!」
ハッ
誠司 「す、すげえ……! 空に、世界中のプリキュアがいる……!」
………………上空
ミラージュ 「……さて、では皆さん、恩返しの手始めは、あの隕石の破壊です」
キュアサンセット 「行くよ、ウェーブ! ハワイの力を、宇宙にも見せつけるのよ!」
キュアウェーブ 「サンセット、趣旨がずれてるよぅ……」
キュアアール 「いくわよ、キュアコンチネンタル!」
キュアコンチネンタル 「遅れないでね、キュアアール!」
キュアテンダー 「………………」 クスッ 「……スターバースト三十二連撃……」
テンダー 「……なら、私は姉として、百二十八連撃くらい、見せてあげないとかしら」
ミラージュ 「ふふ、皆さん準備は良いようですね。では、参りましょう!」
ハーティネス 「あれが、地球のプリキュアたち……。数え切れないくらいいる……」
ハーティネス 「あんなに大勢が、この星のために地球から駆けつけてくれたのですか……」
ハーティネス 「……ありがとう。本当に……本当にありがとう!」
ギリッ
ハーティネス 「ならば、私は……私の手で、モモ様を絶対に救いだしてみせる」
ハーティネス 「力を貸してくれたたくさんの人のためにも……!」
シュン……!!!
ラブリー 「わたしたちも手伝うよ、ハーティネス!」
プリンセス 「なんかカッコ良くなってるー! ずるいー!」
ハニー 「ふふ、プリンセスったら……」
フォーチュン 「もう! あなたたちはどうしてそう気が抜けることばかり言うの!」
ハーティネス 「………………」 クスッ 「……あなたたちの強さ、今なら分かる気がします」
ハーティネス 「この温かい力は、あなたたちハピネスチャージプリキュアと似ているような気がします」
ハーティネス 「……どうか、よろしくお願いします! 一緒にモモ様を助けてください!」
ラブリー 「もちろんだよ! 行こう、ハーティネス!」
モモ 「………………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
プリンセス 「何度見ても、禍々しい気配だわ……」
ハーティネス 「モモ様にあそこまでの闇を背負わせてしまったのは、我々アクロポリスプリキュアの責任です」
ハーティネス 「……いえ、お優しい先輩方は、そもそも今回のことにあまり賛成ではなかった……」
ハーティネス 「私が、モモ様のためと、地球行きを強硬したりしなければ……」
ギュッ
ラブリー 「そういう話は後だよ、ハーティネス」 ニコッ 「今は、モモちゃんを助けることだけを考えよう?」
ハーティネス 「……はい! モモ様のイージスは、このキュアハーティネスの矛の力で貫きます」
ハーティネス 「皆さんは、モモ様の闇を打ち払ってください!」
プリンセス 「うん! 今度こそ、女神様を救い出そう!」
ハニー 「そして、この星を守るイージスを復活させて!」
フォーチュン 「この星を、この星に住まう人々を! 守るのよ!」
ハーティネス (惑星ピンキーよ! 惑星ピンキーの人々よ! モモ様を救うために、私に、力を!)
ハーティネス 「パルテノンモード! 全力全開!」
バサッ!!!!!
プリンセス 「翼がもっと大きくなった!? ちょっとカッコ良すぎなんだけどー!?」
ハーティネス 「心の光を聖なる力に! パルテノンランサー!」
ザッ……!!!!!
ハーティネス 「突貫します! 浄化、頼みました!」
ラブリー 「任せて!」
ビュン!!!!
モモ 「………………」
コォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
ハーティネス 「この聖なる矛の力を、闇が警戒しているんですね……!」
ハーティネス 「ですが!」
ゴバッッッッッ……!!!!!!
ハーティネス 「この矛に、貫けないものはありません!」
ズドッッッッッ……!!!!
プリンセス 「わっ!? あの衝撃波を!? つ、つつつ、貫いたよ!?」
ハーティネス 「はぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ハーティネス (今度こそ! 今度こそ……!)
―――――― 『ユウキ……』
ハーティネス (あの優しい笑顔を……取り戻す……!!!)
モモ 「ガッ……!?」
ハーティネス 「貫いて! ハーティネス・ラブリーフォースランサー!!」
ガガガガガガガガガガガガガガッッッッ……………………!!!!
ハーティネス (ぐっ……! モモ様のイージスの力にまで、闇が浸食している!)
ハーティネス (闇との複合防護壁……! 闇がイージスを歪な方向に強化しているんだ……!)
ハーティネス (それでも……!)
ハーティネス 「はぁああああああああああああああああああああああ!!!」
ハーティネス 「届けえぇぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!」
ギギギギギギギギギギギギギギギギッ……!!!!
――――――――――パッキッ…………
ハーティネス 「貫いた! 今です、ハピネスチャージプリキュア!!」
パァアアアアアア……!!!
ラブリー 「行くよ、みんな!」
「「「「プリキュア・イノセントプリフィケーション!!!」」」」
………………………………
……………………
……………
……
……
…………
………………
『………………』
『……なにかしら』
『わたし、とても長い夢を見ていた気がするわ』
『どんな夢か思い出せないけれど、とてもとても恐ろしい夢』
『惑星ピンキーが壊れる……いえ、惑星ピンキーをわたしがこの手で壊す夢』
『もしも……もしも、それが本当のことだとしたら、わたしは……』
『わたしは、どうすれば……』
―――――― 『……泣かないで』
『えっ……?』
―――――― 『泣かないで、女神様』
『あなたは……』
―――――― 『ぼく、女神様が悲しんでいる方が、悲しいよ』
『ユウキ……?』
………………
…………
……
………………惑星ピンキー 都市アクロポリス 上空
モモ (温かい手……わたしを抱き留めてくれている、この人は……)
ハーティネス 「モモ様! モモ様! 目を覚まされたんですね!」
モモ 「ユウキ……?」
モモ 「あなた、どうして泣いているの……?」
モモ 「どうしてわたしは、こんなところに……?」
ハッ
モモ 「わ、わたし……ああ、すべて、本当のことだったのね……」
モモ 「わたしが、この星を……この星の人々を傷つけて……」
ハーティネス 「大丈夫です! 人々はシェルターに避難しています!」
ハーティネス 「モモ様が目を覚まされたおかげで、星を守るイージスも復活しました!」
ハーティネス 「惑星ピンキーは健在です!」
モモ 「けど! けど……アクロポリスが……」
モモ 「せっかく、多くの人々が作り上げたこの都市が、こんな、めちゃくちゃに……」
モモ 「わたしのせいだわ……」
ハーティネス 「それでも、私たちがいます」
モモ 「えっ……」
ハーティネス 「今までモモ様に頼りきりだった私たちですが、」
ハーティネス 「アクロポリスを復興するためなら、いくらだってがんばれます」
モモ 「でも、星の皆はもう、こんな女神いやでしょう……」
モモ 「自分のわがままひとつで、星を壊すほどの闇を抱いてしまったわたしなど……」
ハーティネス 「そんなことありません。女神であるモモ様なら、聞こえるでしょう?」
ハーティネス 「いまだシェルターの中に避難してはいますが、」
ハーティネス 「星の無事より何より、女神モモ様の無事を祈る人々の声が」
ハーティネス 「この星の人々のモモ様に対する想いは、」
ハーティネス 「たった一度の過ちで壊れるほど脆いものではありません」
モモ 「………………」
グスッ
モモ 「……ああ、わたしは幸せ者だわ。こんなに温かい人々の女神でいられるんですもの」
ハーティネス 「地上に降りましょう。皆が待っています」
………………地上
ビューン!!!!
ラブリー 「モモちゃん!」
モモ 「ラブリー!」
ラブリー 「無事でよかったよ! もう大丈夫だね!」
モモ 「ええ……」 スッ 「ユウキ、下ろしてちょうだい」
ハーティネス 「い、いえ、しかし……」
モモ 「わたしはもう大丈夫よ、ユウキ」
ハーティネス 「……はい」
スッ
モモ 「……キュアラブリー、そして、ハピネスチャージプリキュアのみなさん」
モモ 「本当に申し訳ないことをしました。謝って謝りきれるものではないけれど……――」
ラブリー 「――もうっ! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
モモ 「えっ……?」
ガバッ
ラブリー 「無事で良かったよ! モモちゃん!」
モモ 「な、ななな……!」 (い、いきなり抱きついてきた!? この子は……)
モモ (……ああ、けれど、温かい。本物の愛を持つ、素晴らしいプリキュアなのね)
モモ (こんな子を、わたしは……傷つけてしまったのね……)
ハーティネス 「モモ様……」
モモ 「ユウキ……」
ハーティネス 「私も、謝らなければならないこと、顧みなければならないことばかりです」
ハーティネス 「ですが今は、感謝と喜びに身をゆだねましょう」
モモ 「そう……そうね」
ニコッ
モモ 「ありがとう、ハピネスチャージプリキュア。そして、地球の人々よ」
レッド 『気を抜くな! まだ終わってないぞ!』
ハーティネス 「神レッド……? まだ終わっていないとは……?」
レッド 『よく聞け! モモのイージスが復活したのはいい! これ以上は隕石は圏内に入らないだろうからな!』
レッド 『だが、すでに超巨大小惑星が、イージス内に侵入しているぞ!』
モモ 「!? か、感じるわ……」
レッド 『すでに目視もできるはずだ! 上を見ろ!』
ハーティネス 「……!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………………………!!!!!!
ハーティネス 「なっ……そ、そんな……」
ハーティネス (空だと思っていた、面……あれが、すべて……ひとつの小惑星なのか……!?)
レッド 『あれがこのままこの星に落ちれば、人類どころか、この星の生命すべてが滅ぶぞ!』
ハーティネス 「そ、そんな……あんなの……、止められるわけが……」
ハッ
ハーティネス (違う……!) 「……私が止める。このキュアハーティネスが、止めてみせる!」
モモ 「………………」
パァアアアアアアアアア……!!!!
キュアピンキー 「……永遠を誓う愛! キュアピンキー!」
ハーティネス 「も、モモ様! 弱ってらっしゃるいま変身をされるなんて、無茶です!」
ピンキー 「わたしはこの星の女神よ。この星を守る義務があるわ」
ニコッ
ピンキー 「いつもわたしの心配をしてくれてありがとう、ユウキ。けれど、大丈夫。わたしはそんなにヤワじゃないわ」
ピンキー 「……ねえ、ユウキ。こんなときに何だけれど、わたし、思い出したわ。あなたのことを」
ハーティネス 「えっ……?」
ピンキー 「あなた、あのときの隕石災害の生き残りの男の子なのね」
ハーティネス 「………………」
ハーティネス 「……はい。卑しくも男の身でありながら、あなたを欺き、傍におりました」
ハーティネス 「その罪、到底償いきれるものではありません。どんな処罰も甘んじて受けるつもりです」
ピンキー 「……まったく。わたしがそんなことを言いたいわけではないことくらい、気づいてもらいたいものだわ」
クスッ
ピンキー 「キュアハーティネス。ユウキ。今まで、本当にありがとう」
ピンキー 「あなたが傍にいてくれると、不思議となんでもできる気がしてくるの」
ピンキー 「……あんな巨大な隕石が迫っていても、どうにかなるような気がするのよ」
ニコッ
ピンキー 「だから、これからもずっと、わたしの傍にいてね。約束よ?」
ハーティネス 「モモ様……」 コクッ 「もちろんです! 私はずっと、モモ様にお仕えするつもりです!」
ピンキー 「……さて、キュアラブリー」
ラブリー 「? なぁに?」
ピンキー 「この星を救ってくださったこと、本当に感謝します」
ピンキー 「それから、数々の無礼、加えて相楽誠司さんをはじめとした皆様におかけしたご迷惑の数々……」
ピンキー 「本当に、ごめんなさい。あなたもたくさん傷つけてしまいましたね」
ペコリ
ラブリー 「だから、そんなのもういいって! わたしはべつに、傷ついたりしてないし……」
プリンセス 「へぇー」 クスクス 「誠司がいなくなって誰よりしょぼくれてたくせに、よく言うよ」
ラブリー 「なっ……」 カァアアア 「ち、ちょっと、プリンセス!」
ハニー 「ほんとにねー。相楽くんがいなくなって、めそめそ泣いてたのにね~」
ラブリー 「ハニーまで!」
フォーチュン 「こーら。ラブリーのこと、あんまりからかうんじゃないの。かわいそうでしょ?」
ラブリー 「フォーチュン……!」
フォーチュン 「……めぐみの相楽くんへの愛の力よ。素晴らしいじゃない!」
ラブリー 「……フォーチュンはそういう恥ずかしいことを真顔で言うから反応に困るよ」
フォーチュン 「なっ……」 ガーン!!!
ハーティネス 「こ、この人たちは……この絶体絶命の状況下でも……」
ピンキー 「ふふ。本当にすごい人たちだわ」
スッ
ピンキー 「……神レッド。聞こえていますね?」
レッド 『ん? ああ、聞こえているが、あの隕石、どうするつもりだ?』
ピンキー 「わたしのイージスで押し返します。その前に、万が一ということもありますから……」
ピンキー 「こちらにいらっしゃる皆さん、そして地球のプリキュアの皆さんを回収して、」
ピンキー 「すぐに地球にお帰りください。神レッドと神ブルーのお力があればすぐのはずですね?」
レッド 『……ふん。未熟者め。貴様は一流の女神だが、まだまだ甘いな』
ピンキー 「なっ……どういう意味ですか?」
レッド 『俺がそれに同意したところで、どうなるというのだ。考えてもみろ、優等生の女神様』
レッド 『そこにいるハピネスチャージプリキュアが、目の前に迫る危機に対して、』
レッド 『尻尾を巻いて逃げたりすると思うか? 超が付くほどのお人好しだぞ、そいつらは』
ラブリー 「んふふ~」 グッ 「そういうこと!」
ラブリー 「あの隕石、止めるんでしょ? わたしたちも手伝うよ!」
ピンキー 「で、でも! そんな危険なことに、地球人であるあなたたちを付き合わせるわけには……」
ラブリー 「水くさいなぁ! わたしたち友達でしょ?」
プリンセス 「乗りかかった舟だしね。付き合うよ!」
ハニー 「まだ惑星ピンキーの名物、お腹いっぱい食べてないしね~」
フォーチュン 「まだまだ、わたしたちの恩返しはこんなものじゃ済まないわよ?」
ハーティネス 「皆さん……」
ピンキー 「……まったく。本当に……」 グスッ 「……ありがとうを何回言えばいいか、わからなくなっちゃうじゃない」
誠司 『おい、聞こえるか!?』
ラブリー 「わっ!? 誠司!?」
誠司 『レッドに繋いでもらっている! 俺の声が聞こえるならよく聞けよ!』
誠司 『結論から言うと、あの大きさの隕石になると、あのまま押し返すのは無理だ!』
ラブリー 「なっ!」 プンスカー!! 「そんなの、やってみないとわからないよ!」
誠司 『話は最後まで聞け! あのままじゃ無理だって言ったんだ!』
誠司 『だから、砕け! お前たちの拳で! 技で! とにかく砕き切れ!』
誠司 『細かい破片になれば、全体の質量は同じでも圧力は段違いに低くなる!』
誠司 『それなら、モモのイージスで弾き飛ばせるはずだ!』
ラブリー 「さっすが誠司! わっかりやすい!」
グッ……!!!!
フォーチュン 「でも、さすがにわたしたちだけじゃ……――」
「……――あら? 私たちのことを忘れたの? キュアフォーチュン?」
フォーチュン 「えっ……? お、お姉ちゃん!?」
テンダー 「こら、今はキュアテンダー、でしょ?」
フォーチュン 「あっ……///」 カァアア 「ごめんなさい……」
プリンセス 「キュアテンダーだけじゃないよ! 地球のプリキュアが、みんな来てくれてるんだ!」
ハニー 「地球のプリキュアだけじゃないみたいだよ?」
ピンキー 「あっ……。み、みんな……」
フラアリー 「モモ様……。ご無事でよかった……」
メロディアス 「モモ様の危機に何もできず、地球のプリキュアに助けてもらうばかりで……」
ハピネス 「自分たちの不甲斐なさに、情けなくて仕方ないです……」
フォーチュン 「何を言ってるのよ! あなたたちは、プリキュアになれないっていうのに、」
フォーチュン 「必死でアクロポリスを走り回って、人々を避難させていたんじゃない!」
プリンセス 「うんうん。それってすごいことだよ!」
ハニー 「プリキュアに変身できなくても、できることをしたんだから、胸を張ろうよ」
フラアリー 「いおな……」
ハピネス 「ひめちゃん……っ!」
メロディアス 「ゆうこ~……!」
ピンキー 「……まったくその通りだわ。わたしに言えた義理でもないけれど、」
ピンキー 「あなたたちのような勇敢なプリキュアを持てたことを、わたしは心の底から誇りに思うわ」
ラブリー 「………………」 ニコッ (いいなあ。本当にお互いのことを想い合ってるんだ。この星の人は)
ラブリー (それってすごいラブなことだよね。みんな、お互いのことが大好きなんだ)
ラブリー 「……よーし!」
ググッ
ラブリー 「あんな隕石ひとつ、わたしたちプリキュアが力を合わせて、吹っ飛ばしちゃうんだから!」
……
…………
………………
誠司 「……な、なんで俺が……こんな……」
フォーチュン 『あら、大抜擢じゃない。がんばってね、相楽司令官』
誠司 「どうして俺がそんな立場なんだよ!」
プリンセス 『だって誠司将軍が考えたプランじゃん。みんなで隕石を砕くって』
誠司 「そりゃそうだが……」
ハニー 『相楽大隊長! シールド部隊、所定の位置につきました! いつでもオッケーであります!』
誠司 「せめて司令官とか将軍とか大隊長とかはやめてくれないか!?」
誠司 「……まったく」
レッド 「……ふん。どこまでも緊張感のない奴らめ」
ブルー 「ふふ。しかし、実際、あれだけのプリキュアの人数だ。すべての情報を統括する人材は必要だよ」
ブルー 「ちょうど適任の誠司くんがいてよかったけどね」 ニコッ
誠司 「爽やかな笑顔でえげつないこと言ってくれるぜ……」
誠司 (……とはいえ、すべてのプリキュアと俺とを鏡で繋いでくれている神様も、相当な負荷がかかっているはずだ)
レッド 「……ふん。なぜ俺がこんなことを」
誠司 (憎まれ口を叩きながらブルーと同じ事をしているレッドもだ。みんな、惑星ピンキーを救うために全力なんだ)
誠司 (それなら俺が、ぐだぐだ言ってる場合じゃない……!)
誠司 「……よし、やってやる! 全員聞こえるか! 隕石の大気圏突入直後に一斉に破砕を始める!」
誠司 「突貫能力の高い第一部隊は、大気層ギリギリでまず隕石を二つに割る!
誠司 「そしてそのまま、四つ、八つ、十六……とどんどん細かくしていくんだ! 多少の大きさのものは落として構わない!」
誠司 「そして出来る限り破砕したら、速やかに第二部隊と合流だ!」
フォーチュン 『大丈夫。わかってるわ、相楽くん!』
フラアリー 『了解しています』
誠司 「破壊能力の高い第二部隊は、高高度で第一陣が撃ちもらした、または破砕した破片をとにかく細かく砕く!」
誠司 「限界まで破砕したら、第一部隊と共に地上に速やかに戻るんだ!」
プリンセス 『第二部隊隊長! キュアプリンセス、了解よ!』
ハピネス 『あ、プリンセスずるい! 隊長はわたしだよっ!』
誠司 (……無視しよう)
誠司 「そしてシールド部隊は、破砕の間に落ちてきた破片のエネルギーを吸収して、できるだけショックを減らすんだ!」
誠司 「無理をせず、大きい破片は街から引き離すように受け流して落とせば良い!」
誠司 「多少の星へのダメージは仕方がない! とにかく都市を防衛するんだ!」
ハニー 『街がなくなっちゃったら、美味しいご飯も食べられないからね~』
メロディアス 『ゆうこと一緒に、また美味しいご飯、食べたいからね~』
誠司 (……これも無視)
誠司 「……で、最後はお前たちか」
ラブリー 「あの、誠司大将! ひとつ質問があります!」
誠司 「なんだよ大将って……」 ハァ 「なんだよ」
ラブリー 「どうしてハーティネスとわたしがここで待機なの!? わたしもみんなと一緒に隕石壊すよ?」
ハーティネス 「我々はセーフティ部隊です。万が一の事態に備え、ここにいる必要があります」
誠司 「ぶっつけ本番の穴だらけの作戦なんだ。セーフティネットは用意しておいた方が良い」
ラブリー 「セーフティネット?」
誠司 「……要は、情けない話だが、俺とブルー、レッドとモモを守るプリキュアが必要なんだよ」
ラブリー 「うーん、でもなぁ……」
ハーティネス 「大事な役目ですよ。我々がここで神々とキュアピンキー、そして誠司さんをお守りすることが、」
ハーティネス 「作戦の成功に不可欠なことなのですから」
ピンキー 「………………」
キィイイイイイイイイイイイイイイイイ……!!!!!
ラブリー 「……? キュアピンキーは何をやっているの?」
誠司 「身体を休めながら、イージスを使うための力を溜めているんだよ」
誠司 「なんせ、この星を守るためのイージスを維持しながら、」
誠司 「あの隕石をはじき飛ばすためのイージスも作らなくちゃいけないんだからな」
誠司 「天文学的なエネルギーに耐えるほどのイージスを二つだ。考えただけで途方もない力だ」
ラブリー 「そっか……」 グッ 「うん! わたし、精一杯みんなのこと守るからね!」
誠司 「おう! 頼んだぜ、ラブリー!」
レッド 「……気を引き締めろ! 隕石、大気層への侵入まで、あと五秒!」
レッド 「………………」 グッ 「……来るぞ!」
誠司 「第一部隊! 隕石破砕、開始!」
………………超高高度
フォーチュン 「……さぁ、行くわよ、みんな!」
テンダー 「ふふ、こうしてまたキュアフォーチュンと一緒に戦えるとはね」
フォーチュン 「あら、わたしのスターバストに付いてこられるかしら?」
テンダー 「まぁ、しばらく見ない内に生意気になったわね」
クスッ
テンダー 「いくわよ、フォーチュン。隕石の下から削るわ! 遅れないことね!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
フォーチュン 「こっちの台詞よ!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
フォーチュン&テンダー 「「プリキュア・ツインスターバースト!!」」
――――――――…………ズドッ……………………!!!!!
ドドドドドドドドドッッッッッ………………!!!!
フォーチュン 「はぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
フォーチュン 「スターバースト、四連!」
テンダー 「十六連……!!」
フォーチュン 「ぐっ……六十四連!!!!!!!」
テンダー 「ッ…………!!!! 二百……五十六連!!!!!!!」
フォーチュン&テンダー 「「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」
―――――――― 「「千・二十・四!!!!!! 連撃ッッッッ!!!!!!!!!!!!!」」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンンンンンンン…………………………!!!!!
フラアリー 「………………」
ポカーン
フラアリー 「あ、あんなに大きかった隕石が、すでにこんなにバラバラに……」
フォーチュン 「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ギリッ
フォーチュン 「……せっかくお姉ちゃんとふたりの合体技なのだから、1万の大台は突破したかったわ」
テンダー 「何を言っているの、フォーチュン」 ニッ 「今から、10万まで行くわよ?」
フォーチュン 「……! さっすがお姉ちゃん! やりましょう!」
フラアリー 「すごいを通り越して……呆れてしまう……」
フラアリー 「あんなすごいプリキュアに戦いを挑んでいた、自分の無知さが恐ろしい……」
………………地上
誠司 「……よし、第一部隊の破砕作業は順調みたいだ!」
プリンセス 『なんだぁ~。じゃあ、わたしたちの出番はなしかー』
誠司 「気を抜くな! 細かく破砕したと言ったって、まだまだ人類を何回も滅亡させるような大きさだぞ!」
誠司 「隕石はどんどん加速する! 隕石上方部はまだ砕ききっていない!」
誠司 「気を抜いていると惑星ピンキーもろともみんなやられるぞ!!」
プリンセス 『へぇ!? マジ!?』
誠司 「うそをついてどうする! 気を引き締めろ!」
誠司 「第二部隊! そろそろ破片が降ってくるぞ! 攻撃準備!」
プリンセス 『わ、わわっ、了解だよ!』
プリンセス 『みんな、行くよ!!!』
………………高高度
ハピネス 「ひめちゃん、怒られちゃったねーっ」
プリンセス 「うぅ~。誠司も、もっと優しく言ってくれてもいいのにー!」
プリンセス 「……ん?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………!!!!!!
プリンセス 「ど、どでかい火の玉が大量に落ちてくるー!?」
ハピネス 「……へ? な、なにあれ……」
ハピネス 「さっきまでの隕石なんかの比じゃないよ!? あんなの……――」
プリンセス 「――……あんなの、わたしたちプリキュアの敵じゃないね、ラフィ!」
ギュッ
ハピネス 「あっ……」 (ひめちゃんの手、温かい……)
ハピネス (ふしぎ。怖かった気持ちが、どこかへ飛んで行っちゃった)
ハピネス 「……うんっ! よーし、じゃんじゃんばりばり壊してくぞー!」
プリンセス 「第二部隊隊長、キュアプリンセス、トップバッター行きます!」
プリンセス 「プリンセス・ボール!」
ポン……ポン……………………
ハピネス 「あ、ありゃりゃ……?」 (な、なんか拍子抜けな技だけど……)
プリンセス 「……かーらーのー! メガボール! ギガボール! テラボール!」
ハピネス (……!? プリンセスボールが、急に大きく……!)
プリンセス 「ペタボール! エクサボール! で! ぼかーーーーーーん!!!!!」
ドバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……!!!!!!!!!!!!!!!!1
ハピネス 「は……? ば、爆発……わっ!」
ハピネス 「す、すごい衝撃……。ほとんどの破片が砕け散っちゃったよ……」
プリンセス 「ふふ、その驚く顔のためにがんばったわ!」
プリンセス 「名付けて、プリンセス・エクサボール・爆弾ボンバーよ!」
ハピネス (技のセンスはすごいけど、名付けのセンスはないんだね……)
………………地上
誠司 「第二部隊も順調だ! そろそろ破片が降ってくるぞ! シールド部隊、準備!」
………………アクロポリス 中心部
ハニー 「わぁ~。なんか火の玉がたくさんお空に浮かんでて、神秘的だね~」
メロディアス 「本当は浮かんでるんじゃなくて、降ってるんだけどね~」
ハニー 「火の玉の雨……。なんだか詩的ね」
メロディアス 「そうかなぁ……」
ハニー 「ま、いくら詩的でも、人々が幸せに暮らす場所を襲うなら、」
ハニー 「お天道様が許しても、このキュアハニーと大盛りごはんが許しませんよ!」
ハニー 「命の光を聖なる力へ! ハニーバトン!」
メロディアス 「……ハニー?」
ハニー (……みんなが笑顔で、平和に、幸せに、大盛りごはんを食べられるように)
ハニー (その願いだけで、わたしは、なんだってできる!)
ハニー 「プリキュア・スパークリングバトンアタック!」
グッ
ハニー 「リバースバージョン!!!」
メロディアス 「!?」 (四葉の光が、大地からわき上がるように現れた……!)
メロディアス (なんて美しい、神々しい光なんだろう……)
ハニー 「星々を纏い、命よ、天に帰れ!!!」
ドバッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
メロディアス 「……すごい」 (まるで、立ちのぼる光に導かれるように……)
メロディアス (全てを奪う星の欠片が、アクロポリスから離れていく……)
メロディアス (ハニーは、食べることが好きなだけじゃないんだ)
メロディアス (食べることが好きだからこそ、本当に、心の底から、命に感謝しているんだ)
メロディアス (なんてすごいプリキュア……ううん。なんてすごい人なんだろう)
………………地上
ラブリー 「すごいすごいすごい!! 地球のプリキュアと惑星ピンキーのプリキュアが力を合わせて、」
ラブリー 「どんどん隕石を細かく砕いてるよ!」
誠司 「ああ。大勢のプリキュアが、みんな恐れることなく自分の役割を果たしてくれている」
誠司 「大丈夫だ。このまま行けば、ほとんどの破片が大気圏で燃やし尽くされ、」
誠司 「多少大きなものも、都市に甚大な被害を与えることなく地上に落ちるか、」
誠司 「モモのイージスで吹き飛ばすことができるだろう」
フゥ……
誠司 「……とりあえず一安心か」
レッド 「……だといいがな」
ミラージュ 『誠司くん! ブルー!』
誠司 「キュアミラージュ? どうかしたのか!?」
ミラージュ 『ごめんなさい! アクロポリスから逸れるコースの破片を見逃したのだけど、』
ミラージュ 『それが二つに割れて、片方がアクロポリスに落ちるわ! 私たちではもう追いつけない!』
ミラージュ 『あの大きさが落ちたら全滅は免れないわ! シールドも意味を成すかどうか……』
ミラージュ 『時間がないわ! すでにそちらからも目視できるはずよ!』
キィイイイイイイイイイイイイイ……………………
誠司 「ッ……」 (まだ遠いが、見える。一際大きい破片が、こちらに向かってくる!)
ラブリー 「………………」
バッ!!!!!
誠司 「!? ま、待て、ラブリー! どこへ行くつもりだ!」
ラブリー 「わたし行ってくるよ! ハーティネスはここで誠司たちを守って!」
誠司 「ひとりであの破片は止められない! 全長数十メートル以上の岩石と氷の塊なんだぞ!?」
ラブリー 「止めるよ! だって、アクロポリスには、今までモモちゃんが必死に守ってきた人たちがいる!」
ラブリー 「この星の、たくさんの命があるんだよ!」
誠司 「っ……」
レッド 「無茶苦茶を言うな! おまえひとりで加速した隕石の破片を止められるわけがないだろうが!」
レッド 「どれだけの運動エネルギーだと思っているんだ!?」
ブルー 「誠司くんとレッドの言うとおりだ。キュアラブリー、きみひとりでどうにかできるものでは……」
ラブリー 「………………」
誠司 「………………」
コクッ
誠司 「……いってこい、キュアラブリー」
ブルー 「誠司くん!?」
ラブリー 「……!」 パァアアア……!!!! 「さっすが誠司!」
レッド 「相楽誠司! 貴様正気か!? キュアラブリーを死地に送り込むつもりか!?」
誠司 「俺はめぐみを信じてる。あいつがやるって言ったら、もうこっちの言うことなんか聞かねえよ」
ハーティネス 「ま、待ってください! そんな危険なことを、これ以上地球の方にさせるわけには!」
ハーティネス 「私が行きます! 私の最強の矛の力なら、きっと……」
誠司 「おまえ、さっきモモを取り戻したとき、だいぶ力を使っただろ。あとどれくらいの力が残ってるんだ?」
ハーティネス 「そ、それは……」
誠司 「……ラブリー。ひとつだけ約束しろ。絶対に無事に戻ってこいよ」
ギュッ
ラブリー 「わかってるよ。ありがとう、誠司」
ギュッ
誠司 「……いってこい」
ラブリー 「うん!」
ビュン!!!!!
ハーティネス 「あっ……」 バッ 「誠司さん、あなた……――」
誠司 「――くそっ……!!」 ギリッ 「俺は、情けない男だ……」
誠司 「結局、あいつに頼るしかない。俺には、何もできないのかよ……!」
ハーティネス 「誠司さん……」
ハーティネス (苦しいんだ、この人も。つらいけど、苦しいけど、それでも、ラブリーに行ってもらったんだ」
ブルー 「……めぐみ」
レッド 「くそっ、寝覚めの悪いようなことにはなってくれるなよ、キュアラブリー」
ピンキー 「………………」
キィ……キィイイイ……キィイイイイイイイイイイ……
ピンキー (……あと、少し) ゼェゼェゼェ…… (あと少しで、もうひとつのイージスを展開できる……)
ピンキー (ごめんなさい、キュアラブリー……お願い。あと少しだけ、時間を……)
………………アクロポリス直上 上空
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………!!!!!!
ラブリー 「………………」
ゴクリ
ラブリー 「……ひゃー、さすがにおっきいなぁ」
ラブリー 「あれをひとりで押しとどめるのか~。うーん、参っちゃったなぁ。はっはっはっは!」
グッ
ラブリー 「……さて、いきますか!」
ビュン……………………!!!!!!
ラブリー (っ……隕石に近づくだけでなんて熱さだろう! これを、止めなくちゃいけないなんて)
ラブリー (でも……!)
ラブリー 「わたしは、みんなのハピネスを守りたい。そのためなら……!!」
ガッ……………………!!!!!!!!!
ラブリー 「わたしは、絶対に負けない!!」
ラブリー (熱い……痛い……苦しい……。息も、満足につけない……)
ラブリー (でも、負けない! 絶対に、負けるもんか……!)
ググッ………………ググググッッッ……!!!!
………………地上
ブルー 「巨大破片、上空で減速している。ラブリーが接触したようだ」
レッド 「あいつ、あんなに大きな隕石の破片を素手で押し返しているのか!?」
誠司 「それ以外に方法がないってわかってるんだ。あいつはすごい奴だよ……」
誠司 「あそこで隕石を破砕したら、アクロポリスの被害を増やすだけだからな」
ハーティネス 「ッ……! やはり私も、キュアラブリーの援護に向かいます!」
誠司 「ダメだ。お前はここでモモと神様たちを守れ。なんのためにラブリーが戦ってくれていると思ってるんだ」
ハーティネス 「でも!」
誠司 「おまえの辛い気持ちは分かる。けど、こらえてくれ。めぐみのやろうとしていることを、信じてやってくれ」
ハーティネス 「誠司さん……」 シュン 「あなたの方がずっと辛いだろうに……ごめんなさい」
誠司 「いいさ。俺は、めぐみを信じているから」
パァァアア……
ハーティネス 「……!?」 (誠司さんの指輪から、またあの光が……?)
誠司 「めぐみならやってくれるって信じてるから」
誠司 「俺は自分が情けなくて仕方ないけどさ、それでも……」
誠司 「めぐみならきっと、耐えてくれる。めぐみなら絶対に大丈夫だって、」
誠司 「……信じてるから」
パァ……………………パァアアアアアアアアア……!!!!!!!!!!!!!!!!!
………………アクロポリス直上 上空
ラブリー 「……ッ!!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………!!!!!!
ラブリー (なんて力だろう……。これが、宇宙の持つ力)
ラブリー (わたしたちちっぽけな人間がどうしたって、勝てっこないんじゃないかな……)
ラブリー (……でも)
ラブリー (あきらめるくらいだったら、最初からやってない。あきらめたくないから、今も戦ってる)
―――――― 『……いってこい、めぐみ』
―――――― 『……めぐみ。ひとつだけ約束しろ。絶対に無事に戻ってこいよ』
ラブリー (わたしを信じてくれる人がいるから、わたしは戦える……!)
ラブリー 「痛くたって、辛くたって、苦しくたって、関係ない!」
ラブリー 「わたしが戦う理由は、わたしの大好きな人が、わたしを信じてくれるから」
ラブリー 「わたしを信じてくれる人がいるなら、わたしは、いくらだって戦える!」
パァアアアア………………
ラブリー 「世界に愛がある限り! このキュアラブリーは、無敵なんだから!!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
『……? あれ、ここは?』
『おかしいな。俺、神様たちと一緒にいたはずだけど……』
『ん? 誠司、なにその格好?』
『わっ、なんだこれ? モーニング……? ん、っていうかめぐみ、おまえも!』
『? わっ、な、なにこれ!?』
『……ウェディングドレスだろ』
『な、なんでわたしこんなの着てるの!?』
『……し、知らねえけど』
『けど?』
『……似合ってるぞ。きれいだ』
『あっ……。ありがと……。誠司も、かっこいいよ』
『……ん。おう』
『なんか、照れくさいね。今さらな気もするけど』
『まぁ、もう指輪も交換したしなぁ』
『でも、まだちゃんとしてないよね』
『……そうだな。じゃあ、俺から言うぞ』
『ううん。それはなんかずるいから、』
『ずるいってなんだよ』
『同時に言おう? その方が、わたしたちらしい気がするんだ』
『……まぁ、そうかもな』
『ねえ、誠司、』
『おう。めぐみ、』
―――――――――――― 『『大好きだよ』』
………………惑星ピンキー 高高度
プリンセス 「みんな! 急いで! はやく!!!」
フォーチュン 「わかってるわよ! はやくラブリーを助けないと!」
ハピネス 「わたしたちの星のことで、めぐみちゃんに何かがあったら……!」
フラアリー 「もう本当に、どんなことをしてもお詫びできない!!!」
ビュン!!!!!
プリンセス 「ん……?」
パァアアアアアアアアア……!!!!
プリンセス 「わっ……!?」
プリンセス 「なに、あの光!? 隕石の破片の炎よりずっと大きいんだけど!?」
………………惑星ピンキー 地上
ハニー 「あちゃー。すごい光だねぇ」
メロディアス 「ラブリーにもしものことがあったら、この命に代えても守るつもりだったけど……」
メロディアス 「……忘れてた~。地球のプリキュアは、奇跡の起こし方を知っているんだったね」
ハニー 「うーん。正確に言うと、地球のプリキュアじゃなくて、キュアラブリーだし、」
ハニー 「より正確に言うと、あれは奇跡の力じゃなくて、」
メロディアス 「……じゃなくて?」
ハニー 「愛の力、ってやつだと思いますよ~?」
メロディアス 「……なるほど」
………………
レッド 「……なんてことだ」
ブルー 「あれが、人間が持つ可能性ということだろうね。凄まじい」
ブルー 「地球の命は元々はぼくが生み出したものだけれど、」
ブルー 「あれはぼくを遙かに凌駕している。あれは、もう神の御業すら超えているんだ」
ブルー 「愛の光が、この星を包んでいく! キュアラブリーが作り出した光が、この星を守ろうとしているんだ!」
ハーティネス 「……すごい。あれが、愛の力」
ハーティネス 「誠司さんとめぐみさんの、イノセントな愛の光……!」
誠司 「………………」 グッ 「……いけ、めぐみ」
誠司 「いっけええええええええええええええええええええ! キュアラブリー!!」
………………惑星ピンキー アクロポリス上空
ラブリー 「感じる。愛の力。わたしの中に、愛が溢れてくる!」
パァアアアアアアアアア……!!!!
ラブリー (この温かさに身をゆだねて、)
ラブリー (この心地よさを飲み込んで、)
ラブリー (心の中に浮かぶ言葉を、ただ言えばいいだけ。もう、答えなんて出ているんだ)
ラブリー (……大好き。なんて素敵な言葉だろう)
ラブリー (えへへ、あとでちゃんと面と向かっても言ってもらうんだからね)
ラブリー 「銀河を包む、ビッグな愛!! キュアラブリー・エンゲージモード!!」
ラブリー 「……わたしは幸せ者だよ。こんなにかわいいウェディングドレスを着られるんだから」
ラブリー 「不思議。力がみなぎってくる。感じるとか、思うとかじゃない。今なら絶対に、なんでもできる」
………………
プリンセス 「はわわわわ!? ラブリーの光が隕石の破片を全部受け止めてるよ!?」
フォーチュン 「純粋なエネルギーに換算すると、とんでもないことになるわね」
フォーチュン 「あれが愛の力……。愛ってすごいのね」
プリンセス 「あっ! フォーチュン、いま海藤くんのことを思い浮かべたわね?」
フォーチュン 「なっ……! そ、そんなわけないでしょ!」
テンダー 「あら? あなた、好きな男の子がいるの? あらあらまぁまぁ」
フォーチュン 「お姉ちゃんまで!!」
………………
ハニー 「うーん、あれは勝てないかな~」
ハニー 「ウェディングドレス、かぁ。ラブリー、かわいいなぁ。まぶしいなぁ」
ハニー 「まったくもう」
グスッ
ハニー 「あんな女の子と結婚だなんて、相楽くんは本当に幸せ者だね」
………………
ピンキー 「力があふれてくる……。ラブリーの愛の力が、わたしにも流れ込んできているのね」
ピンキー 「不思議だわ。失恋して、悲しくて仕方ないのに、どんどん心が晴れやかになっていく……」
ピンキー (きっと、少し後に、すごく悲しくて辛くて苦しいときがくる)
ピンキー (でも、今ばかりは、この奇跡に、幸運に、愛に……身をゆだねよう)
ハーティネス 「……キュアピンキー」
ピンキー 「大丈夫よ、ハーティネス」
ギュッ
ピンキー 「ラブリーの凄まじい愛が、わたしの中で満ちているわ」
ピンキー 「いまなら、どんな隕石だって吹き飛ばせるわ」
ピンキー 「……でも、手を握ってもらっていてもいいかしら?」
ピンキー 「いまは人の温かさを、感じていたいから」
ハーティネス 「……私でよければ、いくらでも。モモ様」
ピンキー 「ありがとう。ゆうき」
ピンキー (……さぁ、キュアラブリーがくれた、この愛の力で)
ピンキー (この愛に溢れる星を、救わなければ)
ザッ……!!!!!
ピンキー 「プリキュア・イージスプロテクション!!」
パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……!!!!
…………………………
………………
……
……
…………
………………惑星ピンキー 地上
モモ 「本当に、申し訳ないことをしました」
バッ
ゆうき 「我々もです。本当にご迷惑をおかけしました」
バッ
めぐみ 「そ、そんな、やめてよ。もういいって! 惑星ピンキーも守れたし、万々歳だよ!」
ハト 「そのせいで地球のプリキュアを危機においやったことも含めると、もう謝っても謝りきれない……」
スイ 「あ~……」
ラフィ 「うぅ……ごめんなさい……」
いおな 「あなたたちが救ってくれた地球のみんなが恩返しをしようとしただけよ」
ゆうこ 「うんうん。ありがとうをありがとうで返しただけだよ」
ひめ 「ふふふ」 エッヘン 「またハピネスチャージプリキュアの伝説が増えてしまったわね」
いおな 「こら、ひめ。地球と惑星ピンキーのみんなで成し遂げたことでしょ」
ひめ 「じ、冗談だよー、いおな」
誠司 「………………」
スッ
誠司 「……謝るのは俺だ。惑星ピンキーのみんなにも、地球のみんなにも、本当に迷惑をかけた」
誠司 「俺は、めぐみから逃げたくて、惑星ピンキーに行きたいなんて言ったんだ」
誠司 「後先も何も考えないで、真央と母さんを裏切ることをしたんだ」
誠司 「……俺が逃げる手伝いをモモにさせて、結果的にモモを傷つけた」
モモ 「いいのよ。そもそも、わたしたちが地球に向かわなければよかったのだもの」
モモ 「……うそでも 『好き』 って言われて嬉しかったのは事実だしね」
誠司 「ぐっ……。ごめん」
モモ 「ふふ。冗談よ。うそつきさん」
誠司 「地球のみんなもたくさん傷つけたと思う。本当に、ごめんなさい」
めぐみ 「……わたしは、さっき許したからいいよ」
ひめ 「むっ……」 ムムッ 「……ふん。めぐみが許すなら、べつにいいわ。本当ならひっぱたいてやろうと思ってたけど」
ゆうこ 「ひっぱたくつもりはなかったけど~、とりあえず右に同じ、かな~」
いおな 「……わたしもよ。でも、今度の組み手、覚悟しときなさいね」
誠司 「……すまん。ありがとう」
………………
ワイワイガヤガヤ………
レッド 「……くそっ、地球のプリキュアどもめ。長々とおしゃべりをしおってからに」
ブルー 「女性はお喋り好きなものさ。これは当分終わらないだろうね」
ブルー 「彼女たちのことだ。避難所の設営まで手伝いかねないね」
レッド 「俺は一足先に惑星レッドに帰るぞ」
ブルー 「ダメだよ、兄さん。僕ひとりじゃここにいる地球のプリキュア全員を地球に戻すことはできない」
ニコッ
レッド (くそっ、この有無を言わさぬ笑顔が大嫌いだ……)
チラッ
レッド 「ん……? あれは……」
誠司 「………………」
めぐみ 「………………」
コソコソコソ…………
レッド 「こそこそと物陰に、か。まったく、面倒なガキどもだ」
ブルー 「おやおや。雨降って地固まる、だといいのだけどね」
………………物陰
めぐみ 「………………」
誠司 「………………」
めぐみ&誠司 「「あ、あのさ……――」」
めぐみ 「あっ……せ、誠司からどうぞ」
誠司 「めぐみから言えよ……」
めぐみ 「……ずるい」
誠司 「うぐっ……わ、わかったよ。俺から言うよ」
誠司 「……さっきも言ったけどさ、本当にごめんな」
めぐみ 「もういいってば。忘れたよ」
誠司 「いや、その……。俺が地球を離れるとき、投げちゃったこととか……」
めぐみ 「ああ……。あれはちょっとショックだったよ?」
誠司 「……本当にごめん」
めぐみ 「いいよ。それを言ったら、わたしだってさっきひっぱたいちゃったし」
めぐみ 「ごめんね? 痛くなかった?」
誠司 「いや、あれのおかげで目が覚めたし、大丈夫だ。ありがとな」
ギュッ
めぐみ 「せ、誠司……? どうしたの、いきなり、手を握って……」
誠司 「……もう逃がしたくないから。俺も逃げたくないから」
めぐみ 「に、逃げないよ!」 チラッ 「せ、誠司は……逃げるの?」
誠司 「逃げない。逃げたくない。めぐみと一緒にいたいからな」
めぐみ 「ま、真正面からそういうこと言わないでよぅ……」
誠司 「めぐみ」
めぐみ 「……うん」
誠司 「俺、何年も前からおまえに言いたいことがあったんだ」
めぐみ 「………………」
誠司 「……俺、おまえのことが好きだ」
めぐみ 「………………」
ブワッ
めぐみ 「ぜい゛じ~~~~~~~~~~~~」
誠司 「どわっ!? なんで泣き出すんだよ!?」
めぐみ 「急に、いなくなって……誠司と、もう二度と会えないんじゃないかって、思って……」
めぐみ 「それなのに、こうやって、近くにいることが、できて……」
めぐみ 「好きって、言葉も、もらえて……」
めぐみ 「こんなの、うれし、すぎるよ……」
ポタッ……ポタッポタッ…………
誠司 「な、泣くなよ……」
ギュッ
めぐみ 「ばか。誠司のばか!」
ポカポカポカ……
誠司 「わっ……だ、抱きついたまま背中を叩くなよ」
めぐみ 「ばかばかばかばかばかばかばか!」
誠司 「……ああ。ごめんな」
めぐみ 「謝らないでよ。もう、ばか」
誠司 「おまえ、さっきからばかしか言ってないぞ」
クスッ
誠司 「……そんなところもかわいい。大好きだぞ、めぐみ」
めぐみ 「………………」 カァアア…… 「……うん。わたしも、」
めぐみ 「わたしも、大好きだよ、誠司」
誠司 「……おう」
………………
スッ……
誠司 「あっ……」
めぐみ 「うん? わたしが離れた途端、随分とさみしい顔をするねぇ? 誠司くん?」
誠司 「あっ、このやろ……。さっきまでわんわん泣いてたくせに、いきなり余裕綽々になりやがって」
めぐみ 「ふふーん、いつまでも昔のわたしじゃないもんねー?」
誠司 「……ふん。俺だって、違うぞ」
スッ……ギュッ
めぐみ 「わっ……///」
誠司 「おまえが離れたって、俺が引っ張ってやる。もう、はなさねえからな」
めぐみ 「……うん」
ギュッ
めぐみ 「えへへ……誠司、あったかい」
誠司 「おまえもあったかいよ。めぐみ」
めぐみ 「ふふふーん……」
ハッ
誠司 「めぐみ……?」
バッ
めぐみ 「ふーん、だ」
誠司 「なんだよ、いきなり離れて……」
めぐみ 「どうせー、女の子とみればー、すぐに 『好き』 とか 『愛してる』 とか言うんでしょー」
誠司 「な、なんだ、いきなり?」
めぐみ 「モモちゃんにもそういうこと言ったって聞いたよ!」
プンスカー!!!
めぐみ 「浮気者!」
誠司 「はぁ!? いや、だって、あれは……」
めぐみ 「あれは……?」
誠司 「………………」 ペコッ 「……ごめんなさい」
めぐみ 「ふん。許さないもんね」
めぐみ 「……モモちゃんとは、どういうことしたの?」
誠司 「はぁ!? おまえ、何考えてるんだ!? あんな小さな女の子にどうこうって!」
めぐみ 「でも、変身すると同い年くらいだよね? しかもかわいい」
ジロッ
誠司 「な、ないないない! 手を繋いだくらいだ!」
めぐみ 「……わたしが誠司たちに追いついたとき、抱き合ってたけど?」
誠司 「あ、いや、あれは……」 ペコリ 「……ごめんなさい」
めぐみ 「うそばっかりじゃん! 信用できない!」
誠司 「いや、だって、どう説明したらいいんだ!?」
めぐみ 「……そもそも、わたしたちがこの星に来たとき、どうして同じベッドで寝てたの?」
誠司 「いや、あれは、だって……ユウキとモモにそうしろって……」
めぐみ 「女の子と同じベッドで寝ろって言われたら、誠司はそうしちゃうんだ……」
誠司 「くそっ、どう言い訳をしても俺が悪くなっちまう!」 ガバッ 「ごめんなさい!!」
めぐみ 「……いいよ。許してあげる」
誠司 「本当か!?」
めぐみ 「……ただし、今から誠司のわたしへの愛をテストします」
誠司 「お、おう! どんとこいだ!」
めぐみ 「じゃあ……」 カァアア…… 「………………して、よ」
誠司 「ん? いま何て言った?」
めぐみ 「……キス」
誠司 「………………」
めぐみ 「して、ほしい、かな……」 テヘッ 「……なんてね。えへへ、冗談だよ、誠司――」
誠司 「――わかった」
めぐみ 「……誠司?」
ギュッ
めぐみ 「あっ……」
スッ……………………
めぐみ 「………………」
誠司 「………………」
………………………………………
…………………………
………………
あと少しで終わります。
やや荒唐無稽で冗長な話になってしまったと思います。
読んでくださっている方、ありがとうございます。
残りは後日投下します。
………………ぴかりが丘 ブルースカイ王国大使館
めぐみ 「………………」
ズーン
めぐみ 「……進級一発目の学力テスト、全科目赤点だったよぅ」
誠司 「ああ……まぁ、いろいろあったせいで勉強できてなかったからなぁ」
いおな 「あら? わたしは全科目100点だったわよ?」
ひめ 「わたしも国語以外100点だったよ?」
ゆうこ 「わたしは~、とりあえず赤点はないかな?」
誠司 「おまえらなぁ……」
めぐみ 「………………」 グスッ 「うわーん! 誠司~! みんながいじめるよぅ~!」
いおな 「あら? 相楽くんもわたしと同じく全科目100点のはずよ?」
めぐみ 「………………」
ズーン………………
めぐみ 「……みんなわたしの敵だ」
誠司 「はいはい。そんなこと言ってる暇があるなら、」
スッ
誠司 「来週再テストなんだろ? ほら、俺のせいでもあるし、勉強手伝うから、一緒にがんばろうぜ」
めぐみ 「……うん」 ニコッ 「ありがと、誠司!」
ひめ 「はぁ~、まったく、ラブラブっぷりを見せつけてくれますなぁ~」
ゆうこ 「ほんとだね~、わたしたちお邪魔みたいだから、どっか行こうか~」
ひめ 「へぇ!? ここわたしの家なのにわたしが出て行かなくちゃいけないの!?」
誠司 「お、お前らなぁ!」
めぐみ 「うぅ……」 モジモジ 「なんか、改めてそういうこと言われると、恥ずかしいね……」
いおな 「もう、ひめ、ゆうこ。ふたりのことからかうんじゃないの」
オホン
いおな 「恋愛というのは、人にどうこう言われるものではないのよ。ふたりのことを優しく見守ってあげなくちゃいけないわ」
誠司 「……それを面と向かって言えるお前もお前だけどな」
いおな 「? どういうことかしら……」
ピロン♪
いおな 「あら、海藤くんから……」
いおな 「あ」
アセアセ
いおな 「わ、わたし、ちょっと用事ができたから、おいとまするわね」
ひめ 「あ! 抜け駆け一号が男からのメールを見てどこかへ行くよ!」
ゆうこ 「デートのお誘いかな~?」
いおな 「だ、誰が抜け駆け一号よ!」
ゆうこ 「後、追っちゃう?」
ひめ 「いえーい!」
いおな 「あ、こら、ついてくるんじゃないわよ!」
ひめ 「じゃ、めぐみ、誠司! お留守番よろしく!」
ドドドドド………………
誠司 「……結局行っちまった。騒がしいやつらだな」
めぐみ 「えへへ、ふたりきりだね」
誠司 「……ああ」
めぐみ (あれから数日が経った)
めぐみ (惑星ピンキーの復興は順調に進んでいると、ときどきブルーが教えてくれる)
めぐみ (なんだかんだで、ブルーもレッドも惑星ピンキーに残り、復興の手助けをしているみたい)
めぐみ (レッドも 『なんで俺がこんなことを……』 なんて言いながら、モモちゃんの手助けをしてくれているらしい)
めぐみ (アクロポリスプリキュアをはじめとした惑星ピンキーのプリキュアたちの活躍で、)
めぐみ (すでにアクロポリスは元の姿を取り戻しつつあるみたい)
めぐみ (きっとそれは、あの愛のあふれる星だからこそ成せることなんだと思う)
めぐみ (すごくラブなこと。わたしたちも見習わないと!)
誠司 「……? おい、めぐみ、またモモたちのこと考えてただろ」
めぐみ 「えへへ、バレた?」
誠司 「まじめに勉強しろよー? おまえ、再々テストなんていやだろ?」
めぐみ 「うーん、テストはいやだけどー……」
誠司 「けど?」
めぐみ 「こうやって、誠司がわたしにかかりきりになってくれるのは、嬉しいかも。なんちゃって」
誠司 「……ふん。べつに勉強がなくたって、俺のこと独占してくれてていんだけどな」
めぐみ 「……嬉しい」
誠司 「……恥ずかしい」
めぐみ 「………………」
誠司 「………………」
カァアアア………………
めぐみ 「さ、さすがにさ、ひめの家で……っていうのは、まずいよね?」
誠司 「お、俺に聞くなよ。っていうか、あいつのことだから、カメラでも置いてるんじゃねえか?」
めぐみ 「まっさかー。ひめだってさすがにそこまではしないでしょ……」
誠司 「………………」
めぐみ 「………………」
ブンブンブン……!!!!
誠司 「……やめよう。色々と歯止めが効かなくなりそうだから」
めぐみ 「そ、そうだね! くっついたりとかは、人の家とか公共の場でやるものじゃないね!」
誠司 「く、口に出すなよ。恥ずかしいだろ……」
めぐみ 「あ……////」 アセアセ 「て、テレビでもつけよっか!」
ピッ……
増子 『増子美代の! プリキュアウィークリー!』
めぐみ 「あ、美代さんだ」
誠司 「……この番組も息長いよなぁ。もう幻影帝国はいないのに、まだ放送してるんだもんなぁ」
増子 『さて、今日はスタジオに特別ゲストをお招きしております!』
増子 『では、ご登場いただきましょう! 惑星ピンキーの女神モモ様! そしてお付きのキュアハーティネスさんです!』
モモ 『どうも、こんにちは』 ニコ
ハーティネス 『こ、こここ、こんにちは……!』 アセアセ
誠司 「ぶっ……!」
ガバッ
誠司 「なにやってんだあいつら!?」
めぐみ 「はぇ~……。いいなぁ、ふたりとも。わたしもキュアラブリーとしてテレビデビューしたいなぁ……」
誠司 「おまえは相変わらずずれてるな! いや、そんなことより、本当になにやってんだあいつらは!?」
増子 『今回おふたりがご出演くださったのは、実はモモ様から地球の人々に直々にお礼が言いたいから、と伺っておりますが?』
モモ 『そうなんです。改めて、地球の皆様に、惑星ピンキーを代表してお礼を述べさせていただきます』
ペコリ
モモ 『わたしたちの星を救うための力を貸していただき、本当にありがとうございました』
ハーティネス 『あっ……ありがとうござました!』
誠司 「ああ……まぁ、妥当な理由か……」 ホッ 「律儀な奴らだな」
めぐみ 「………………」
誠司 「? どうしたんだ、めぐみ?」
めぐみ 「……なんか、嫌な予感がする」
誠司 「はぁ? ……いや、でも、お前の変な予感はときどき当たるからな」
増子 『しかーし! 先日のことは、元々を辿れば!』
増子 『惑星ピンキーのプリキュアが地球を救ってくれたことに端を発していると聞きます!』
増子 『僭越ながら、わたしから、地球人を代表して、お礼を述べさせていただきます』
増子 『赤いサイアークから地球を守る手助けをしてくださって、ありがとうござました!』
モモ 『とんでもないです。わたしたちは、できることをしたまでです』
誠司 「……まぁ、なんか和やかに話が進んでるし、何もなさそうだけど」
めぐみ 「………………」
ドキドキドキドキ……
めぐみ 「……なんだろう。この胸騒ぎ。すごく嫌な感じ……」
誠司 「……?」
増子 『今後も、地球と惑星ピンキーの間に、良い交流があると嬉しいですね』
モモ 『はい、それはぜひお願いしたいところです』
増子 『……あ、ところで、モモ様にはこの場を借りて言いたいことがもうひとつあるそうですね』
モモ 『はい、そうなんです。私的なことなのですが、ほんの一言だけなので、許してくださいね』
増子 『いえいえ。では、どうぞ!』
モモ 『では……』
めぐみ 「……チャンネル! 変えよう!」
ガバッ
誠司 「はぁ!? どうしたんだいきなり!?」
めぐみ 「いいから、はやく! はやく変えよ!? すごく嫌な予感が……――――」
―――――――― 『誠司くん! わたし、まだ諦めてないからね!』
誠司 「……え?」
モモ 『………………』 ニコニコ
ハーティネス 『……はぁ』
増子 『おおーっと!? これは意味深な発言です!』
増子 『女神様! いまの発言の意味を教えてください! 誠司くんとはどなたですか!?』
モモ 『ふふ……』 テレテレ 『わたしの……初恋の人……///』
増子 『おおーっと! これは爆弾発言だぁ~!』
増子 『惑星ピンキーの女神様は地球の男性に恋をしているー!』
モモ 『今度は、誰にも迷惑をかけない正攻法で誠司くんを振り向かせてみせるから、』
クスッ
モモ 『めぐみさん、ゆめゆめ、油断しないことね?』
めぐみ 「も、モモちゃんめ……!」
ワナワナワナワナ……
めぐみ 「わたしだって絶対に負けないんだからね!!」
誠司 「……はぁ。女子は強いなぁ」
めぐみ 「へ?」
誠司 「俺、おまえがブルーのことが好きだったとき、結構凹むこと多かったけどな」
めぐみ 「うぅ……それを言われるのはちょっと辛いかも」
誠司 「ああ、悪い。責めたりするつもりはないし、そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
誠司 「ただ、お前もモモも、そういう面じゃ強いなと思ってさ」
めぐみ 「………………」
ムギュッ
めぐみ 「……強くなんかないよ。今だって、こうやってくっつかないと、不安だよ?」
誠司 「お、おう……」 アセアセ 「さ、さすがに人の家でってのは……」
めぐみ 「……誠司、わたしのこと嫌い?」
誠司 「おまえ、それ、本当にずるいからな」
スッ……………………ギュッ
誠司 「……抱きしめるだけだからな」
めぐみ 「十分だよ。ありがとう」 ニコッ 「……誠司は優しいね」
誠司 「……そりゃどうも」
めぐみ (愛)
めぐみ (愛のプリキュアを名乗るわたしでも、よくわからないもの)
めぐみ (かつて、世界を焼き尽くす炎になりかけたもの)
めぐみ (使い方を誤れば、世界を焼き尽くす憎しみの炎に成り果てるもの)
めぐみ (……わたしはまだ子どもで、きっと愛の 『本当』 をまだ知らない)
めぐみ (でも、それでも、いま、わたしが誠司のことを好きだっていうのは、本当のこと)
めぐみ (愛はひとつではないし、色々なカタチがあるし、一様には言えないもの)
めぐみ (きっと、どんなに歳を取ったって、愛のことなんかこれっぽっちもわからないんだ)
めぐみ (……それでもわたしは、愛が欲しい。愛を与えたい。愛とともに生きていきたい)
めぐみ (愛する誰かと一緒に、たくさんの愛にうずもれていたい)
めぐみ (だから、わたしは……――)
めぐみ 「……ねえ、誠司」
誠司 「ん? どうした?」
めぐみ 「えへへ~」
ニコッ
めぐみ 「大好きだよ」
ハピネスチャージプリキュア! ~誠司結婚!? お相手は女神様!?~ おわり
最後駆け足になってしまいましたが以上です。
見てくださった方、ありがとうございました。
完成させてから投下したのですが、途中話を変えたためいろいろと中途半端になってしまった気がします。
久しぶりに2ちゃんねる系の掲示板にSSを投下しましたが、楽しかったです。
つぼみ 「帰ってきた希望の花! 新たなプリキュア誕生です!」
舞 「ふたりはプリキュアSplash☆Star」 咲 「星空のともだち!」
以前ハートキャッチとスプラッシュスターについても同様に「その後の映画」を想像して書きました。
もしご興味おありでしたら、読んでいただけると嬉しいです。
もしも質問等ありましたらお答えします。
折を見てHTML化以来を出します。
改めまして、見てくださった方、レスくださった方、本当にありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません