【ごちうさ】ギフト【チノココ】 (32)
チノココ 百合 短い
クリスマスはあまり好きじゃない。
チキンもそこまで好きじゃない。
家族連れや恋人同士の中に入っていくのが嫌。
できれば、その日はお仕事だけをしておきたい。
どうせ、今年のクリスマスもサンタは来ないし、欲しいものは手に入らないから。
今は、お店。
閉店間際に来たお客さんのお会計を済ませる所。
ココアさんは裏で食器を片づけている。
リゼさんは今日は何かパーティーがあるみたい。
ドレスを着ないといけない、と震え声で先に上がらせてくれと帰って行った。
「お釣り120円になります。お確かめください」
「はい……あの」
「?」
「ホットココアいますか?」
「えっと、追加のオーダーですか? 生憎、ラストオーダーが」
「あ、違いますよ。ほ、と、こ、こ、あ、いますか?」
ココアいますか?
目の前の男性がドリンクを注文した訳ではないことだけは確かだった。
お釣りを渡した手を前に突き出して、
「少々、お待ちください」
奥に引っ込んだココアさんの元へ向かう。
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がっしゃんがっしゃんと泡まみれになるココアさんに声をかけた。
「コ、ココアさん」
「なあに、チノちゃん」
「あの、最後に来たお客さん、ココアさんに用があるみたいです」
私の驚いた様子に、ココアさんも首を傾げた。
「私に? えー、帽子被ってた人だよね? よく見てなかったなあ。誰だろ」
素早く手の水気を拭きとって、ホールの方へ向かう。
よく見ると頬に泡がついていた。
そんな醜態をお客さんの前で晒すつもりなのか、と私も慌ててココアさんの後に続く。
「あの、ココアさん待ってくだ……わッ」
ココアさんの背中が鼻先で弾んだ。
「っとっと……」
なんでそこで立ち止まったのだろうか。
全くココアさんは。
悪態を吐こうとした瞬間、ココアさんが叫んだ。
「あー!」
そしてウサギのようにぴょんぴょん飛び跳ねながら、男性に抱きつく。
とても親し気に。
私は鼻を抑えながら、とっさに扉の後ろに隠れた。
(はッ、つい隠れてしまった……)
もう一度顔だけ入り口からそっと覗かせる。
男性がココアさんの頭を撫でながら、大きな包み紙を渡していた。
ココアさんがキャーキャー大声で叫ぶものだから、男性の声は全く聞こえない。
恐らく、プレゼントか何かだと思う。
ココアさんが嬉しそうに、男性に抱きついている。
今日、この日になぜ。
なぜ。
そして、どうして私は隠れてるのだろう。
二人きりにした方がいいのかな。
そんな気を利かせないといけない相手なのだろうか。
ココアさんの嬉しそうな声。
なんでだろう。聞いていたくない。
気持ち悪い。
私は汚いものを見ないように、壁に背をつけずるずると蹲って、男性が早く帰ればいいのにと願った。
「あれ、チノちゃんどこに行ってたの?」
あの後、ココアさんが私の事を呼ぶので、反射的に奥に引っ込んでしまった。
「え、あ、お手洗いに」
「もー、呼んだのに。時間ないって急いで帰っちゃったよ」
両手からこぼれそうな紙袋をカウンターの上に置く。
「それ、クリスマスプレゼントですか?」
「そうだよ。本当に、びっくりしちゃった」
ちょっとここまで
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