牛尾「今日は楽しいクリスマス」(20)


※このお話は以前書いた『クロウ「今日は楽しいクリスマス」』と繋がっています。


ネオ童実野シティ……

警官A「おー雪が降ってる」

警官B「ホワイトクリスマスってやつだな」

警官A「これで休みなら嬉しいんだろうけど」

警官B「本当にな。何でこんな日に仕事なんだか……」

牛尾「――お前ら、何そんなところでブツブツ言ってんだ?」

警官A「あ、牛尾さん!」

警官B「お疲れ様です!」


牛尾「まあ言いたい事は分かる。今日はクリスマス・イヴだし、町はこんなに賑やかだ。こんな日に仕事なんかしたくはねえだろ」

警官A「あ、いえ、そんな事は……」

牛尾「だがな、こういう日だからこそ俺達がしっかりしねえといけねえ」

牛尾「町は賑やかだがそういう日に、自分勝手と楽しさを履き違える馬鹿とかは出てきちがちだからな」

牛尾「町の奴らが笑顔でクリスマスを過ごせるかは俺達の肩に掛かってるんだ。頼むぞ、お前達」

警官A&B「は、はい!」

<○○地区で暴行事件発生。付近のセキュリティは……

牛尾「たくっ、言ってる傍から……ああ、お前らはいい。俺が行くからここは頼んだぞ」

ブロロロローン!


牛尾(クリスマスなだけにみんな笑ってやがる。男も女もガキも老人も)

牛尾(シティの奴もサテライトに住んでた奴も、分け隔てなくクリスマスを楽しんでいる)

牛尾(正直少し前までは考えられなかった光景だ……そしてあの頃よりずっと活気に満ちた良い町だ)

牛尾(これも全部遊星達が戦い、勝ち取った世界なんだろうな)

牛尾「へっ、あいつらが取り戻したこの平穏……今度は俺達セキュリティの手で守り抜いてみせるぜ!!」

…………

クロウ「ふざけんなぁ、クソォ! どいつもこいつもクリスマスだからって浮かれやがって! 俺だって……俺だってなぁ! 可愛い女の子とキャッキャウフフ(死語)なストロベリークリスマスナイトを過ごしてえんだよ!!(涙」ゲシゲシ

男「も、もう勘弁してぇ……」ボロボロ

牛尾「」


ネオ童実野シティ・セキュリティ本部……

牛尾「それじゃあな。もうこういう事でここに来るんじゃねーぞ」ノシ

クロウ「おう……」ノシ

マーサ「世話掛けたねぇ。ほら、何をボサッとしてんだい。さっさと行くよ」←身元引受人

牛尾「……まったく、クロウの奴もしょうがねえな。相手がひったくり犯だったのがある意味不幸中の幸いというべきか」

牛尾「しかしマーサ呼んで正解だったな。クロウの奴もすっかり形無しって感じだったし……ぶえくしょん!!」

牛尾「うぅ、寒い。一先ず中に戻るか……」ブルブル


受付「あ、牛尾捜査官。お疲れ様です!」

牛尾「よう、お疲れ。何だ、お前も今日は仕事か? イヴなのに大変だな」

受付「でもお仕事ですから」アハハ

牛尾「そうか……まあお互い頑張ろうぜ! 無理はすんなよ?」

受付「は、はい!」

牛尾(あんな若い女の子ならクリスマス・イヴは彼氏とデートとかしたいんだろうに仕事とは……偉いねぇ)

牛尾(俺も仕事してるけど未だにフリーなんだよな。畜生、何で彼女できねえんだか)

牛尾(早く俺のカッコ良さが分かる女でも出て来ねえかねぇ……出来ればイニシャルM・Sの人で……)ハァ

受付嬢「…………///」


…………

牛尾「…………」カタカタ

警官A「あれ、牛尾さん? まだ仕事ですか?」

牛尾「ああ、報告書やなんやらが色々溜まっててな。明日までに仕上げねえと」

警官A「今日は狭霧課長休みですから大変ですね」

牛尾「前々から今日だけは絶対休み取る様にしてたからな、あの人。まあ仕方ねえよ、クリスマスだし」

警官A「えっと、手伝いましょうか?」

牛尾「生意気言ってんじゃねえ、これは俺の仕事だ。お前は自分の仕事終わったんならさっさと帰んな」

警官A「はい……じゃあお先失礼します。お疲れ様でした」ペコリ

牛尾「おう、お疲れ」


牛尾「…………」カタカタ

牛尾(そうだよな……今日は深影さんいねえんだよな)

牛尾(何処に行くとかは聞いてねえけど)

牛尾(結構楽しみにしてたみたいだから……やっぱりジャックのとこか?)

牛尾(そうなると今頃は……)

牛尾「……あーくそっ」カタカタ

牛尾(仕事だ、仕事! このままノンストップで続けるぞ!)

牛尾「…………」カタカタ


…………

牛尾「…………」

牛尾「…………」

牛尾「……ぐぅ」

牛尾「……はっ!?」バッ

牛尾「やべっ、寝てた……今何時だ?」キョロキョロ

狭霧「もうすぐ23時よ」

牛尾「そうか、分かった……って、深影さん!?」

狭霧「ちょっと、大きな声出さないでよ。時間を考えなさい、時間を」


牛尾「す、すいません。でも何でここに……?」

狭霧「何? 課長の私が自分の部署に来たら悪いっていうの?」

牛尾「いえ、そういう訳では……というか今日休みですよね?」

狭霧「あれ、言ってなかった? 別件の仕事が入ってで休みは取り消し、今の今まで別のセキュリティの所に行ってたのよ」

牛尾「そうだったんすか。俺はてっきりジャックの所に行っているとばかり……」

狭霧「はあ?」ギロリ

牛尾「!?」ビクッ

狭霧「ええ、そうしたかったよ。イヴの夜はアトラス様と過ごしたかったわよ。でも仕方ないじゃない、仕事なんだから……本当、本当に何でこんな事に……」グヌヌ

牛尾「な、何かすいません……マジですいません」


狭霧「……それよりそれ、机の上に積まれてる書類。半分貸しなさいよ」

牛尾「え?」

狭霧「『え?』じゃないわよ。手伝ってあげるから貸しなさい」

牛尾「いや、でもこれは俺の仕事で……」

狭霧「貴方の仕事が遅れると上司の私が困るの! いいから貸しなさい!!」

牛尾「は、はい!」

狭霧「まったく。こんなペースだったら朝まで掛かるわよ、もう……」ブツブツ

牛尾(さっき夜中だから大声出すなって自分で言ってたのに……)


…………

牛尾「…………」カタカタ

狭霧「…………」カタカタ

牛尾(何か妙な事になったな。イヴの夜に深影さんと2人だけで仕事とは)

牛尾(正直今まで何度かこういう事はあったが……何だか妙な感じがするぜ)

牛尾(やっぱりクリスマス・イヴだけに変に意識してんのかな、俺?)チラッ

狭霧「……ねえ」

牛尾「は、はい!」ビクッ

狭霧「コーヒー淹れるけど牛尾君も飲む?」


牛尾「あ、それなら自分が淹れます」

狭霧「いいわよ、私が淹れるから。それで飲むの? 飲まないの?」

牛尾「い、いただきます」

狭霧「そう。じゃあちょっと待ってて」トコトコ

牛尾「は、はい……」

牛尾(びっくりした。ちら見したの気づかれたのかと思ったぜ)

牛尾(にしても……今日は仕事だったんだな、深影さん)

牛尾(ジャックの所に行ってたんじゃないのか)

牛尾「…………」

牛尾(いやいや、何喜んでんだよ俺……)フルフル


牛尾(深影さん本人はすげえ残念がってたのに……ちょっとほっとしちまったけど……やっぱりそこで喜ぶのも何か違うだろ……)

牛尾「何と言うか小せえな、俺……」ハァ

狭霧「何が小さいの?」

牛尾「あ、深影さん!? は、早いっすね」アセアセ

狭霧「インスタントだからね。はい、牛尾君の分」スッ

牛尾「あ、ありがとうございます」

狭霧「ミルクなし、砂糖1つで良かったわよね?」

牛尾「…………」


狭霧「あれ、違った?」

牛尾「いえ……合ってます。いただきます」

狭霧「そう」ズズッ

牛尾「…………」ズズッ

牛尾「…………」

牛尾(ああ……)

牛尾(やっぱり俺……小せえわ)

牛尾(コーヒーの好み覚えてくれてた程度で何喜んでんだよ、本当……)


ボーンボーン……

狭霧「0時になったわね」

牛尾「そうっすね」

狭霧「イヴも終わってクリスマス当日ね」

牛尾「…………」

狭霧「…………」ズズッ

牛尾「……深影さん」

狭霧「ん?」

牛尾「その、えっと……」

牛尾「メ、メリークリスマス……です」

狭霧「へ?」キョトン


狭霧「えっと……いきなり何?」

牛尾「す、すいません……いや、何となく」

狭霧「何となくって。しかも顔やたら真っ赤だし……何かおかしいわよ、牛尾君」

牛尾「うぅ……」

狭霧「…………」

狭霧「……いや、でもおかしくはないか。そうよね。今日からクリスマス本番だもんね」

牛尾「え?」

狭霧「ねえ、牛尾君」

牛尾「は、はい!」

狭霧「――メリークリスマス♪」ニコッ

おわり


読んでくれた人、ありがとうございました。

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