【モバマスSS】 お題は星の数だけ 聖夜 (158)
クリスマスだろうと何だろうとお酒の美味しさは変わりませんね……
今日はサンタ代わりにSSをプレゼントしたいと思います
やってることは普段と変わりませんが、お暇でしたらお付き合いください
それでは>>3のお題を頂戴します
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1482580459
仮面
それでは「仮面」でひとつ
短いかもしれませんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……
「お疲れ様です……」
「はい、お疲れ様」
ふぅ……ようやくお仕事が終わった
綺麗な洋服を着て、ポーズをとって写真を撮られる
これだけの仕事と言ったらそれまでだけど、細かな注文を聞いたりすると神経がすり減ってしまう
今日は特に疲れちゃったし、何か美味しいものでも食べて帰ろうかな
特に話せる人もいないので、こっそりと支度をして、スタジオから出た
うぅ……寒い
冷たい風が体に染みるように感じる
コートの襟を立てて、マフラーを巻きなおす
こんな寒い日は暖かいものが食べたいけど……
しばらく歩いて、ふと目についた焼き鳥屋さんの看板
シンプルな書体で、焼き鳥と書いてある潔さ
見せの前でも漂うタレの甘辛い匂いに惹かれるように、店の中に入った
うぅ……寒い
冷たい風が体に染みるように感じる
コートの襟を立てて、マフラーを巻きなおす
こんな寒い日は暖かいものが食べたいけど……
しばらく歩いて、ふと目についた焼き鳥屋さんの看板
シンプルな書体で、焼き鳥と書いてある潔さ
店の前でも漂うタレの甘辛い匂いに惹かれるように、店の中に入った
威勢の良い店員さんに案内されて、カウンターへ
勢いで入っちゃったけど、初めてのお店って緊張しちゃう……
メニューを取って、一通り目を通してみる
……とりあえず、ビールと串の盛り合わせにしてみようかな
店員さんを呼んで注文し、お通しの切干大根を食べて品が来るのを待った
あ、この切干美味しいな……なんだか懐かしい味がする
噛むと出汁の味がじゅわりと染みる切干を食べ終わるころ、ビールと串の盛り合わせが同時に出された
お皿に盛られた五本の串、3本が塩で2本がタレかな
香ばしい匂いが鼻をくすぐり、お腹がくぅっと鳴る
「いただきます」
手を軽く合わせていただきますをして、塩の串を手に取って口の中へ
噛むと程よい油と嚙み心地、塩気も丁度いい
うん、この焼き鳥屋さんは当たりかも
串に刺さった肉を2つほど食べてから、ビールで流し込む
「はぁ、おいし……」
苦みが効いたのど越しで油が洗い流されて、口のなかがさっぱりする
残っている塩の串を口の中へ入れて、ゆっくりと噛みしめる
やっぱりお仕事の後の一杯は格別ね
おじさん臭いとか言うのは気にしないでくださいね?
2本目の串を口の中へ入れようとした時、ふと視線を感じた
「……」
口をあんぐりと開けたままそちらを向いてしまい、慌てて串をお皿に置いた
「ああ、すみません。あまりに美味しそうに食べていらっしゃったので……」
顔が赤くなっていくのが自分でもわかる
ど、どうしよう……ものすごく恥ずかしい……
「いや、本当に申し訳ない。食事の邪魔をしてしまいまして」
おおげさに頭を下げる、えーと……おじさ、ナイスミドル?
「いえ、あの……大丈夫です」
ぼそりと小さな声で話しかける自分に嫌気がさす
他のモデル仲間ならもっと上手く会話できるんだろうな……
「へぇ……お嬢さん、何か悩んでると見えるが」
にたりとニヒルにおじさまが笑い、私はその言葉に体を打たれた
「い、いえっ! 私は別に……」
これでは相手にそうですと言ってるようなものだろう
「貴女はとてもわかりやすいお人みたいですね」
先ほどとは違う、穏やかな顔に余計に顔が赤くなっていく
「どうでしょう、お詫びと言っては何ですが、貴女のお悩みを私が解決するというのは」
ナンパかしら? 真っ先に思ったけれど、どうやらこの人は違うような気がする
「……実は」
試しに、と私が感じている思いのさわりだけを話してみることにした
「なるほど、相手と上手くコミュニケーションがとれない、と……」
私の要領の悪い説明でも、おじさまはわかってくれたみたいで一安心
「はい……相手に不快な思いをさせているんじゃないかって」
もしかしたら、このおじさまにもそう思わせてしまってるんじゃ……
強迫観念みたいに、頭にこびりついてしまう考え
「はぁ、実にもったいない……」
その答えは予想外だった。本当に残念そうな顔をして、なんというか楽しそうな表情をしている
「それだけの美貌を持ちながら、実にもったいないですな」
ずいっと顔を近づけるおじさまに、ひっ! と声を上げて後ずさりしてしまった
「あ……すみません」
けらけらと笑いながらおじさまが答えた
「いや、私もこんな顔が近づいてきたら驚きますよ」
豪快な笑い声につられて私も笑ってしまい
見ず知らずの2人がしばらく笑いあうという奇妙な時間が流れた
「ふぅ、楽しい時間だった」
腕時計を確認したおじさまが、姿勢を正して向かい合う
「貴女はやっぱり笑顔が似合う、それでも笑えないのなら」
――仮面をつけなさい
仮面? どういうことですかと聞く前におじささまは席を立った
「それでは」
去り際に一言だけ。私がお会計を済まそうとすると、私のぶんまで会計が済まされていて驚いた
仮面をつける……あの人に言われてずっと考えてもわからない
仕事をしていても、もやもやする日々が続いた
最近はずっとこんな調子だったけれど、流石にカメラマンの人に注意されて、実感することになる
けれど、誰かに相談することはできなくて、あの人に会ってから何日か後
また、あの時の焼き鳥屋さんに足を運んでいる自分がいた
もしかしたらまた会えるんじゃいないか、あの時の答えを聞けるんじゃないか
そんな事を思いながら
威勢の良い店員さんに席を案内され……いた!
初めて会った時のように、お猪口をくいっとあおるあの人の姿があった
「おや? あの時の……」
にたりと笑う笑顔に安心して、あの人の横へと座る
もちろん注文はあの時のままと同じで
「調子はどうですか?」
これはきっと仕事のことよね
「えっと、まぁ……普通です」
なるほど、とあの人はくつくつと笑う
「こうしてまたここに来たということは、まだ答えがわからないんですね?」
まただ、この人は私の心をどんどん揺さぶってくる
まるで私の考えをわかっているように
「このチーズは持ちずらい」
……はい? これはいわゆる親父ギャグというものでは
考えではわかっているのに、どうしても笑うのを我慢できない
「ふ、ふふっ……」
私の笑う顔を見ながら、あの人が続ける
「うん、やっぱり笑顔が似合いますよ高垣さん」
どうして名前を? と思ったが、またもやあの人は席を立つ
「それでは」
「ま、待ってください! せめて貴方の名前を……」
私の問いに、あの人はにこりと笑って
「次……次にあった時に」
では、と手をあげてあの人は私の視界からいなくなった
もう……肝心な時に……
それからの私は少し、考えが変わったみたいだ
いい意味で自分のペースを見つけることができたというか、ものおじすることが減った気がする
あの焼き鳥屋さんに通うようになって、色々なお酒の味も覚えたある日
「やぁ、高垣さん」
三度目の正直、通ったのはそれではきかないけれど……
「今日こそは答えを聞かせてもらいますよ」
私の笑みに、あの人も笑顔で答えた
「今日はいつもと顔が違いますね、気迫があります」
「ふふっ、それはどうも」
おどけるあの人と一緒に、日本酒で乾杯をした
「はぁ……美味しい」
「うん、美味い」
奇しくも同じ銘柄を頼み、同じ感想
お互い顔を見合わせて、笑う
「あの……そろそろ答えを教えてもらえませんか?」
我慢できなくなって、答えをせがんでしまう
「あまり引っ張るのもよく無いですもんね」
あの人が差し出したのは1枚の名刺だった
え? 同じプロダクション……?
私が所属するモデル事務所と同じ名前
あの人はアイドル部門に所属しているみたいだ
「申し訳ない、こちらは貴女のことを最初から知っていたんです」
面白そうに笑うあの人に、じとりとした目線を送る
「おや、怒ってしまいましたか? これはすみません」
恭しく頭を下げるあの人に、くすりと笑ってしまう
「同じプロダクションだとは思いませんでした」
「黙っていようと思いましたが、あの日で考えが変わりました」
――アイドルになりませんか? 高垣楓さん
どくんと、心臓の鼓動が高鳴った
「な、何を言っているのか……」
「私は貴女をプロデュースしたい、一緒にトップアイドルを目指しませんか?」
トップアイドル? モデルよりきつい仕事で、しかもトップを目指す?
「すみません、私なんか……」
言い終わる前に、あの人の顔が真剣なことに気付く
うう……これじゃ何も言えないじゃない
「変わりたいのでしょう? 今の自分から」
それ以上は言わないで……
体が、気持ちがその言葉に喜ぶように高鳴る
「さぁ、一歩踏み出してください。私にはその覚悟があります」
あの人が手を差し出してくる、きっとこの手をとってしまったら……
モデルのお仕事も楽しかったけど、この人と一緒に仕事ができたら、きっともっと
「高垣楓です、今日からよろしくお願いします」
新しい事務所は緊張する、けれど、楽しみでもある
今では仮面から本当の顔へなった気がする
あの人の影響もだいぶ受けてるけど、これもきっと自分なんだ
「トップアイドルへ、ストップなしで駆け抜けます……ふふっ」
自分らしい笑顔をあの人へ向け、誓う
よろしくお願いしますね、プロデューサーさん
おしまい
読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
ちょっと燃料を買ってきます、しばしお待ちを……
今ではクラフトビールがコンビニで買えるんですから良いですね
さて、貯蔵が十分になったので再開します
次のお題は>>36です
ところで、美味しいお酒を用意したのに楓さんが画面から出てきてくれな……
アンラッキーブレイク
では「アンラッキーブレイク」でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……
最近でたグランドキリンヴァイツェンボックは美味しいですね
手軽と言う面ではヤッホーブルーイングのシリーズが個人的に気に入っています
こんばんは、白菊ほたるです
ちょっと不幸体質ですが、頑張って生きてます
この自己紹介も何回かしたので、ちょっと恥ずかしいですね
それはさておき、今日はクリスマスイブです
聖なる夜、良い響きですが私には縁がないものでした
けれど、今年のイブはいつもと違ったのです
さ、寒いです……
東京は地方に比べてあまり寒いイメージがなかったんですが、裏切られました
天気予報では天気は大荒れ、気温は氷点下になってしまうかもと聞いて愕然としました
うう……なんでこんな日に限って外でのロケが続くんですか……
神様、ちょっと恨んじゃいますよ? ……あ、嘘です。嘘ですから怒らないで
ちょっとした不幸ジョークですから、笑ってくれて良いですよ?
「お疲れ様です~」
今日は珍しくイヴさんとの撮影です
クリスマスイヴですし、もってこいですよね
寒さにもとても強そうですし……いいなぁと思ってしまいます
「今日は寒いですね~、雪が降るかも~」
空を見上げ、少しだけ嬉しそうに呟くイヴさん
私には雪ってあまり良いイメージがないのですが、イヴさんがいると少し意味あいが変わってきます
イヴさんは本物のサンタさんなんです
クリスマスにプレゼントを配るあの有名な……
何だかサンタんさんって幸福なイメージがありませんか?
今日この日に本物のサンタさんがいる
そう思うだけで、私の心はうきうきしてしまうのです
この聖なる夜にもしかしたら、と淡い気持ちを抱いてしまうのです
小さいころは信じていて、年を重ねるごとにいないという真実をつきつれらたサンタさん
でも、そのサンタさんがいると目の前にいると思うと、知らずとテンションが上がってしまいます
今日はきっと良い日になる、来年に繋がる良い日になるんだ、と
……けれど、私の思いは通じなかったみたいです
徐々に天気が崩れいていって、ぱらりと雨が降ってきました
いつもなら仕方ないと諦めるところですが、今回は引き下がりませんでした
でも、やっぱり雨が上がる気配を見せません
ああ……なんてみじめなんだろう、そう思った時にイヴさんが呟きます
「大丈夫ですよ~、あなたの気持ちは届きましたから~」
えっ?
「今日は願いが叶う日ですから~」
いつもの口調で、けれど力強いイヴさんの言葉は嘘とは思えない迫力がありました
イヴさんの気持ちはありがたいですけど、どうせ……
そう思った時、辺りがざわめきはじめました
おい、嘘だろ? まさか年内に降るなんてな、なんて声が聞こえます
その言葉の意味を少ししてから私も感じることになりました
「雪……?」
白く、淡い雪がはらりと降ってきたのです
ふわふわとした大粒の雪
不規則に落ちて地面を白く染めていく
「わぁ……綺麗」
舞い落ちる雪を手ですくい、まるで犬のようにはしゃいでしまいます
「私もいれてください~」
イヴさんが加わり、2人で雪の中を踊りました
「すごいですね、イヴさん」
「すごいですね~」
お互い、頭に雪を乗っけながらくるくると回る
まだお仕事が残っているのに、そんな気分はどこへやら
どんどん気分が乗っていって、気持ちが楽しくなる
「ほたるちゃん、真っ白になっちゃってますよぉ?」
雪で全身をお化粧されて可笑しそうに笑いあった
「イヴさんも真っ白ですよ」
綺麗な銀色の髪が雪できらきらと輝いてる
建物が並ぶこの町で、どこか幻想的な雰囲気です
「サンタでも、寒いものは寒いですねぇ……」
あはは、と笑うイヴさんにプロデューサーさんがタオルを持ってきました
「大丈夫か? ほら、ほたるもこれ使って」
投げ渡されたのは大きなタオル
ちょっとだけ、プロデューサーさんの匂いがしました
「撮影ももう少しで終わるからな」
それは良いお知らせなんですが、何故か胸の中がもやもやします
帰ったらどうしようかな、うーん……もうちょっと3人でいられたらな
何か期待したり、下心があるわけではないですが
せっかくの日に寮で1人で過ごすのは勿体ないと思いました
「じゃあ、終わったら3人でクリスマスやりましょう~♪」
イヴさんの言葉にどきりとしました、まるで心の中を読まれているみたいで
「……時間はあるけど、場所はどうする?」
手帳をめくりながら、プロデューサーさんが答えます
「私のおこたがあるお部屋にしましょう~」
イヴさんが目配せをしてくる
ほたるちゃんももちろん来ますよねぇ♪ という確信を込めた目で
「ほたるはそれで大丈夫かな?」
どきどきしながら、自分ができる精一杯の笑顔で
「はいっ、もちろんです」
きっと今日は素敵な一日になります
胸の中にある、ちょっぴりの幸福を抱きしめてそう思いました
おしまい
読んでくれた方に感謝を
そしてお題ありがとうございました
次のお題は>>56です
早耶「嫌い~?って聞くと嫌いっていわれる」
それでは 早耶「嫌い~?って聞くと嫌いっていわれる」 でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……
「早耶のこと嫌いですか~?」
そういうと決まってこう返事が返ってきます
「嫌い」
即答すぎますよぉ……
もう、女心がわかってませんねぇ
そんなんじゃ、いつまでも一人で過ごすことになっちゃいますよ?
こんなやり取りをしてはいますが、早耶とプロデューサーさんの関係は良好です
お仕事に行くときも終わった時も、いつも一緒にいてくれますし
行き詰ったり、悩みがあると親身になっていつまでも話を聞いてくれます
嬉しいことや楽しいことがあると、まるで自分のことのように喜んでくれます
普段は硬派な雰囲気をだしていますが、その内面はとても優しくて穏やか
でも、女心が全く、微塵もわかっていませんねぇ……
本当に自分勝手な人です
こっちの気も知らないで、本当に……
いつも早耶の近くにいて、早耶のために動いてくれて
そりゃアイドルとプロデューサーと言えばそこまでですけど
これだけされて、意識しない女の子はいないと思いますよぉ?
いくら嫌いと言われても、そんなのは無視しちゃいます
事務所で雑誌をめくっていると、天気予報が耳に入りました
『今日の夜は冷え込み、各地で雪が見られるでしょう』
雪ですか……カレンダーを確認すると今日は12月25日
雪の降るクリスマス、ロマンチックですねぇ
まぁ、早耶はお相手がいませんし、夜はお仕事なんですけど……
プロデューサーさんが一緒だから、それは良いですかね
「早耶、そろそろ行こうか」
「はぁい」
プロデューサーさんが運転する車で撮影現場に向かいます
「最近寒いけど、体調はどうだ?」
「大丈夫ですよぉ」
そうか、とプロデューサーさんが返しました
んー……なんだか言葉が続きませんねぇ
「着いたぞ、内容は把握してるな?」
雑誌の企画での、お店のレポですね
「はい、ばっちりですぅ」
外に出ると明かりはついていないですが、たくさんの電球が飾られていました
きっと、夜は綺麗なんだろうなぁ……
恋人同士でイルミネーションを見に行くなんて王道ですもんね
「わぁ、可愛い……」
1つの雑貨を目にして、思わず口に出ちゃいました
綺麗なガラス細工のツリー、細やかな装飾でとても綺麗
撮影が終わったら買っちゃおうかな……うん、そうしましょう
よーし、頑張って早くお仕事終わらせますよぉ
そう意気込んで、撮影後にそのお店に行ってはみたものの
残念な言葉を店員さんから頂いてしまいましいた……
「わぁ、可愛い……」
1つの雑貨を目にして、思わず口に出ちゃいました
綺麗なガラス細工のツリー、細やかな装飾でとても綺麗
撮影が終わったら買っちゃおうかな……うん、そうしましょう
よーし、頑張って早くお仕事終わらせますよぉ
そう意気込んで、撮影後にそのお店に行ってはみたものの
残念な言葉を店員さんから頂いてしまいました……
「申し訳ございません、先ほど売れてしまいまして……」
丁寧に答えてくれた女性の店員さん
「そうですかぁ……わかりました」
ありがとうございました、と店員さんに見送られお店を出ます
自分のプレゼントにしようかと思ったんですが、ないものは仕方ないです
ちょっと残念なクリスマスになっちゃいましたけど、我慢です我慢
「早耶、そろそろ帰るぞ」
「はぁい」
しょんぼりしてる早耶に、不思議そうな顔を向けるプロデューサーさん
「何かあったのか?」
自分用のプレゼントがなかったんですぅ
なんてことは言えないです、恥ずかしすぎます……
「べ、別に何もないですよぉ」
声が裏返っちゃいましたぁ……
「そ、そうか」
その反応がありがたいような寂しいような……
なにやってるんですかねぇ、本当に
きっと、プロデューサーさんのせいですよぉ?
ご飯でもおねだりしちゃいましょうかねぇ、ちょっと高いところで
よぉし、では早速! そんなことを考えていると
「ほら、これで機嫌直せ」
ぶっきらぼうな言い草で、優しく紙袋を渡されましたぁ
「わ、なんですかぁ?」
開けてみろ、と言われたので紙袋を開けると綺麗にラッピングされた箱
大きさは
「早耶に?」
「ああ、気に入ってもらえると嬉しい」
図ったようなタイミングにどきりとしました
リボンをしゅるりと外して、包装紙もぺりぺりとはがしていきます
目についたのは、先ほどのお店のクリスマスカード
「わ、なんですかぁ?」
開けてみろ、と言われたので紙袋を開けると綺麗にラッピングされた箱
大きさは両手にすっぽりと収まるくらい
「早耶に?」
「ああ、気に入ってもらえると嬉しい」
図ったようなタイミングにどきりとしました
リボンをしゅるりと外して、包装紙もぺりぺりとはがしていきます
目についたのは、先ほどのお店のクリスマスカード
「本命はその中だぞ」
カードが添えられていた、木製の箱
なにやら頑丈な造りで、中に入っているものを守っているような感じです
「どうした、開けないのか?」
プロデューサーさんの手が伸びてきたので躱します
「自分で開けられますぅ」
もう、油断も隙もあったもんじゃないですねぇ……
あれ? 早耶はなんでこんなに緊張してるんですかぁ?
ただ蓋をあけるだけ、簡単なことなのに
どきどきした鼓動が指に伝わっているみたいで、上手く箱が開けられません
すぅ、はぁ……よし、開けちゃいますよぉ
深呼吸をして蓋をゆっくりと開けると
「わぁ、可愛い……」
これを見た時と同じ言葉が出てしまいました
あれ? でもさっき売り切れたって言われたはずです
「お前がそれを見つめてたからな」
じゃあこれを買ったのはプロデューサーさんってことですか
「俺からのクリスマスプレゼントだ」
そっぽを向いて言うプロデューサーさんの顔が、わずかに赤くなってるのは見逃しません
ああ……ずるいです
早耶をこんなにも夢中にさせて、早耶をこんなにも釘付けにして
そして、じわりと歪む視界の中でプロデューサーさんに質問をします
「早耶のこと嫌……ううん、好きですかぁ?」
いつも通りで、いつもとは違う言葉
「……好きだ」
そしてぶっきらぼうなプロデューサーさんの言葉
そっか、初めからこう聞けばよかったんですね……
憂鬱なクリスマスは素敵なクリスマスへと早変わりして
ガラス細工のツリーがイルミネーションのように綺麗に輝いていました
おしまい
読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
ちょっと休憩しますね
それでは、再開します
次のお題は>>81です
ありす、文香の大事な貴重書にイチゴジャムこぼす
それでは「ありす、文香の大事な貴重書にイチゴジャムこぼす」でひとつ
前々から出してくれていたお題ですね
いつもありがとうございます
ちょっと用事ができてしまったので少し待ってください
アナスタシアさんに教えてもらったロシアンティー
本場では口に含みながら飲むそうですが、私は直接紅茶に入れてしまいます
たっぷりのイチゴジャムを濃いめの紅茶に入れて
「美味しい……」
イチゴの香りと紅茶の香りが合わさって、とてもいい香りになっています
それに、甘味も十分で幸せな気分になります
こうした時間は心を優雅にしてくれますね
忙しい時間のなかの、ゆったりとしたひと時
ああ、これで文香さんがいたら最高なのですが……
ですが、文香さんはお仕事に行っているので我儘は言えません
こんな時は文香さんに貸してもらった本を、文香さんの代わりにします
正直に言うと、中身は難しくてよくわかりません
こういうものは雰囲気にひたるのも良いものだと教えてもらいました
わからない中身をぺらぺらとめくっていると、だんだんと文香さんのような気分になっていきます
難しそうなタイトルの本をいつも読んでいて、やっぱり文香さんは凄い人なんだなと実感します
きっとこの本の内容も簡単に読むことができるのでしょう
あ、紅茶が無くなってしまいました
いそいそと紅茶を淹れなおして、たっぷりのジャムを入れ……
「あっ……」
短い言葉しか出ませんでした
スプーンからジャムがでろっと零れて
文香さんの本にぼたっと音を立てて着地したのです……
「ああああっ!」
早く拭くものを用意しないと! 染みになったりしたら大変です
給湯室からふきんを持ってきて急いで本を拭きます
「……大丈夫です、よね?」
くるくると本を回して見てみますが、おかしいところはありませんね
よし! これなら大丈夫ですね
それと、後で文香さんにきちんと謝らないといけませんね
「おーい、ありす」
「はい、準備は出来ています」
どうやら、私もお仕事の時間です
ぱぱっと終わらせて、早く文香さんに会わないといけません
―――
――
「どういうことですか!? なんで私のパスタが不評なんですか」
審査員の人たちは酷いです、私を笑いものみたいにして……
今思い返しても、いらいらしてきました! あーもうっ
これは早く帰って文香さんといちゃ……癒してもらう必要がありますね
急ぐ気持ちに感化されて、足早に事務所へと急ぎます
「お疲れ様です、戻りました」
早速事務所を見渡すと……あ、文香さんを発見しました
「文香さ……ん?」
文香さんは俯いて、顔を両手で隠していました
「あ……ありすちゃん」
顔を上げた文香さんは、その綺麗な顔を涙で濡らしていて……
「どうしたんですか文香さんっ?」
初めて見る文香さんの表情に戸惑いながらも、文香さんに近づきます
そして、その手にあるのは無残な姿の先ほどの本でした
えっ……どうして?
思い返す記憶の中で、あの本はこんな無残な姿ではなかったはず
私が落としたイチゴジャムは綺麗にふき取ったはずなのに……
しかし、今目の前にある本は赤くどろどろとした液体が付着していた
「文香さん、これは?」
おそるおそる尋ねてみる
「わからないの……事務所に戻ったらこうなっていて」
わぁっと泣き出す文香さん
「文香さん……これは私が……」
とりあえず謝ろう、そうしようとしたけど
「せっかくありすちゃんに貸した本なのに……こんな」
うっ……そんな台詞と表情をされると
瞳を潤ませて、ほっぺを赤くする文香さんがとても綺麗で……
「ま、まかせてください! 私が犯人を突き止めてみせますから」
きっと、ぐるぐるした目で私は言ってしまったのでしょう
ああは言ったものの、どうしたらいいんでしょう
頼みのタブレットもこういう時は頼りになりませんし……
やっぱりこういう時は聞き込みで情報を得るのが早いですかね
文香さんを早く安心させてあげたいので、行動に移すことにします
確かあの時に事務所にいた人は……
~Fさんの証言~
「え、私が事務所にいた時? んー……一人ババ抜きしてたからよくわかんない」
ええ……レベル高すぎませんか?
「本? 難しい本は見ないから興味ないかなぁ」
そうですか、その英語がたくさん載っている本はなんなんですか?
「あ、これ? 雰囲気だよ雰囲気! 頭良く見えちゃう? 困っちゃうなぁー」
あ、わかりました。お疲れ様です
手掛かりは何1つわかりませんでした
~Sさんの証言~
「にゃはは~、ありすちゃんは良い匂いするね」
止めてください、ハスハスしないでください
「なになに? 探偵ごっこしてるの?」
はい、文香さんの本を汚した犯人を捜しています
「ふうん、文香ちゃんも良い匂いするよね♪ ノスタルジックな匂いというか」
だから近づかないでください、匂いをかがないでください!
またもや手掛かりはありませんでした
~Mさんの証言~
「え? 文香さんの本を汚した犯人を捜してる?」
Mさんは比較的、常識をもった人なので期待できると思います
「んー……ありすちゃんが聞き込みした人以外いなかったし、詳しくはわかならいかも」
そうですか……手がかりがまったくつかめないまま聞き込みが終わってしまいましたね
「力になれなくてごめんね? また何かあったら言ってね」
最近だとロリコンだとか言われてるMさんですが、そんなことはありませんでした
ああ、どうしましょう……まったく手がかりがありません
文香さんに会わす顔がありません
やっぱり私が初めに汚してしまったので、私が謝るべきですよね?
うん、それが良いです! 他の人に罪を擦り付けるべきじゃありません
ですが、もう一人の自分がこう囁くのです
言わなかったらバレないよ? それを自分から教えちゃうの?
これはきっと悪魔の囁きなのでしょう……
そうですよね、私が言わなかったらバレないですよね
そして、文香さんを励まして、どこかの誰かさんを犯人に仕立てて
それが冴えたやり方なんじゃないですか?
文香さんには悲しい思いをさせてしまいましたが、それは目を瞑ってもらえば……
そんな素敵な考えをした自分のほっぺを
思いっきり叩きました
「うぅ……痛い……」
ほっぺがじんじんと痛み、涙がじわりと滲みます
いい気味です私……さて、文香さんに謝りに行きましょう
きちんと頭を下げて、謝れば文香さんも許してくれるはずです
そしたら一緒にお茶を飲んでお話をしましょう
クリスマスパーティを企画しても良いかもしれません
いつもより重く感じる事務所のドアを開けて
「文香さん、私……」
びくびくと視線を前にやります
「えっ……?」
そこにはまたも衝撃的な光景が広がっていました
「あ、あの……えっと」
おろおろする文香さんの前で綺麗な土下座をしているプロデューサーさん
これはいったいどういうことなのでしょうか?
「すまない! 文香……」
おでこを床にべたっとつけたまま、プロデューサーさんが続けます
「お前の本を汚してしまった」
はい? 私ではなくて、プロデューサーさんが?
「本当に申し訳ないっ!」
本当に申し訳なさそうな声で土下座を続けるプロデューサーさん
……そうですか、貴方が文香さんを悲しませたのですか
そう思うと、ふつふつと怒りがこみ上げてきました
「そんなんじゃ文香さんはっ……!」
「いえ、もういいんです……」
文香さんが私の言葉を制します
「文香……?」
なぜでず文香さん!? この人には罰をあたえないと……
「プロデューサーさんはきちんと謝ってくれました……それ以上は望みません」
ああ、女神はここにいたのですね
文香さんから後光が射して、直視できません
「文香」
「プロデューサーさん……」
何ですかこのストロベリーな空間は……
そういうのは私と文香さんがするべきですよ!?
あ、ちょっと! そんなに顔を近づけると……
「えいっ!」
近くにあったスプーンをプロデューサーの口へと突っ込みました
「文香さんは私が守りますっ!」
そうです、プロデューサーなんかには渡しません
「あ、ありすちゃん?」
何が起こっているのかわかっていない文香さんを、きゅっと抱きしめます
「しっしっ! プロデューサーはあっちいってください」
「もがっ……ひどいなぁ、ありす」
しょんぼりとしたプロデューサーを見ると、少しだけ罪悪感がありますが今はいいんです
そう……全部の罪をプロデューサーのせいにしちゃいましょう
そして、私は文香さんを守るヒーローになるんです
それが終われば邪魔者はいりませんから
だから、さようならプロデューサー……
もうこの場にいて良いのは私と文香さんだけなんです
「めっ! ……です」
思ってもいなかった文香さんの不意打ち
痛くはないですが、じわりと涙がにじむのがわかりました
「ふみかさん? ……ふぇ」
どんどんと涙が出てきて、目の前の文香さんの姿がかすみます
「気持ちは嬉しいです……でも、そんなありすちゃんは見たくありません」
ぼやけた姿の文香さんが近づいてきて、私を優しく包みました
温かくて、優しい匂いがします
「ほら、プロデューサーさんにも謝りましょう、ね?」
こっちを諭すように、そして全く責めていない口調に私は……
「ごめんなざい……」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、プロデューサーに謝りました
「良い子ですね、ありすちゃんは」
ぽんぽんと私の背中を優しく撫でる文香さんの優しさに、またみっともなく泣いてしまいました
「素直なありすちゃんは大好きですよ? だから、今度は私も怒りたくありません……」
ごめんない、ほんとうにごめんなさい……
鳴き声と重なってしまって、何を言ってるかわからないかもしれまんせん
ですけど、私はとにかく2人に謝り続けました
「んん……」
どうやら寝てしまったようですね
あれ? 私どうしたんでしょう
さっきまで2人に謝って、それから……
それに後頭部に感じる柔らかな感触は?
ゆっくりと薄目を開けると、こちらの覗き込んでいる文香さんと目が合いました
「ふふ、起きましたか?」
ゆっくりと私の頭を撫でる文香さん
「あ、すみません……どきますね」
いいんです、と止められました
「さっきのありすちゃん、かっこよかったですよ」
かあっと顔が赤くなるのを感じました
「うう……恥ずかしいです」
あの時の私はどうかしていたんです!
冷静ないつもの私なら、私なら……
「でも、無理はしちゃ駄目です」
いつもよりキツイ文香さんの視線に、身が縮こまりました
「はい……」
「ふふ……良い子ですね」
文香さんに撫でられているととても気持ちよくて
いつまでもこうしていたい、と強く思いました
おしまい
読んでくれた方に感謝を
そして、お題ありがとうございました
休憩をもらった後に最後のお題を頂戴します
10時からは再開できるかなーって
日付が変わってしまう前に、皆さんメリークリスマス!
この最後のお題が今年のSS書き収めになると思います
それでは、最後のお題は>>115です
とびっきりのお題をお待ちしてます
裕美「鏡を見てないと落ち着かない」
瞳子「ファンでいてくれて、ありがとう」
それでは 瞳子「ファンでいてくれて、ありがとう」 でひとつ
短いかもしれまんせんがご容赦を
口調などは目をつぶって頂ければ……
アイドル? なんだそりゃ
歌って踊って男に媚び売る仕事だろ? くだらねぇ
でもよ、そう思ってた自分を変える存在が現れた
初めてそいつを見たのは高校生の時だったかな
あんまり売れていないアイドルだったんだけど
すげぇ可愛かったな、釘付けになるってのはああいうのを言うんだと体感した
ありゃもう一目ぼれだね、うん、一目見た瞬間に俺は恋に落ちたんだ
男なんて単純なもんでさ
自分ために動けなくても、それこそ好きなもんのためなら動けたりするんだ
だから、俺は服部瞳子を目指すために行動を始めたわけだ
嫌いだった勉強を頑張って、大学へ通った
それから役に立ちそうなことをとにかく吸収していった
好きな奴に会うため、ただそのために頑張っていたんだ
他の誰かに聞かれたら、キモイとか言われそうだけどな
最近、テレビで見ないなーって日が続いたある日
芸能関係のプロダクションから内定をもらった
その後に俺は衝撃的な事実を知ったんだ
服部瞳子がすでに芸能界にいないこと
いやぁ、ショックだった
それを知った日はどうしたんだっけ? 一人で吐くまで飲んだんだっけ? よく覚えてないや
とにかくショックで、内定をもらったプロダクションも辞退しようと思ったけれど
せっかく俺を認めてくれた所を蹴るのはどうかと思ったんだ
俺は仕事、というか芸能関係を舐めていたのかもしれない
表は華やかだが、裏方は影のような存在だ
目立たず、功績なんて残るものでもない
実際やっていることはマネージャーに近いものがあり、げんなりした
服部瞳子はこんな環境で走り続けていたのか……彼女に尊敬を抱いたっけ
とにかく、がむしゃらに仕事をこなして
仕事も板につき、少しは余裕ができたころ、衝撃的な再開をはたすことになる
洒落た街には洒落た喫茶店、カフェってのが多くて、俺もたまに利用するのだが
その店に入った時、俺は体に電撃が走ったような衝撃を受けた
「いらっしゃいませ、あの……どうなさいました?」
開いた口が塞がらなかった
「お客さま?」
「は、はいっ! 一人ですっ!」
こちらを覗き込む顔にどきりとして、声が裏返った
日の当たる席に通されながら、俺は女性の店員に釘付けになっていた
懐かしいこの感覚、昔より年を重ねて綺麗になった彼女
「服部瞳子さんですね?」
俺の言葉にびくりと体を震わせて彼女が言う
「ええ……あなたは?」
俺はテンションが上がっていたのだと思う
プロダクションの名刺を渡して、意気揚々と答えたんだ
「貴女をスカウトしたいんです」
神様、普段は信じてないけど今だけは信じる、ありがとう!
「すみません、芸能界はもう……」
彼女からの拒絶の言葉
ちくしょう、神様なんていねえよ! ふざけんな
「そう、ですか……」
彼女に迷惑をかけてはいけないと思い
「ブレンドをひとつください」
けれど、この出会いを無駄にしたくないと考えて
「はい、少々お待ちください」
ああ、やっぱりこの人の笑顔はたまらなく可愛い
「お待たせいたしました」
少し待ってから、彼女が再びテーブルへとやってきた
ことりと置かれたのは、シンプルなソーサーとカップ
「どうも、ありがとうございます」
「では、ごゆっくりどうぞ」
ああ、彼女がいなくなってしまう……
口をつけたブラックコーヒーはいつもより苦く感じた
とぼとぼと店を出て、事務所へと向かう中
彼女の笑顔がフラッシュバックする
何年も経つのに彼女の笑顔だけは変わらない
それどころか、より綺麗になっている
やっぱり諦めきれない……男がこんなことで立ち止まってたまるもんか
そうだ、俺の気持ちを舐めんじゃねぇ!
こうなりゃ、デビュー計画をまとめて彼女に見せてやる
そう意気込んだ俺は、事務所に着くなりデスクで作業を始めた
「お疲れ様です、どうぞ」
「ありがとうございます、千川さん」
マグカップからは、さっき飲んだコーヒーより薄い香り
「あら、誰かの衣装案ですか?」
パソコンのディスプレイに映っているのは、白を基調とした衣装
元気さというよりかは、しっとりとした大人の女性をイメージしたものだ
「ええ、今度スカウトする女性のために必要なんです」
「そうですか……応援してますね」
きっと、気が早いと思われたんだろうな
よし、今回はどうだろうか
カフェの入り口をくぐると
「いらっしゃいませ、えっと……」
よし、服部さんがいてくれた
「こんにちは、1人です」
「は、はい……こちらへどうぞ」
前回と同じ、陽の当たる窓際の席
「ありがとうございます。これ、よかったら」
「えっ? あ、ありがとうございます」
何枚かにまとめた資料が入った封筒を渡した
しばらくしてからコーヒーが運ばれてきた
うん、やっぱりこっちのほうが良い香りがする
「あ、あの……1つ聞いても良いですか?」
予想外の服部さんからの反応
「ええ、なんでしょうか」
俺は嬉しくなってしまって、きっとにこにこしていただろう
「なんで私をそこまで?」
ストレートかつわかりやすい言葉だ
そりゃ、ここまでしてくる人間をまずは疑うだろう
「貴女のファンだったからですよ」
それも一目惚れのね
「私の……ファン」
きゅうっと胸の前で手を合わせて、服部さんは俯いてしまった
「ごゆっくり、どうぞ……」
コーヒーの香りと、少し悲しそうな服部さんの声が耳にこびりついた
会計と見送りは他の店員さんだった
服部さんは他のテーブルの対応に回っいるみたいだ
ここで粘っていても仕方ない、そう考えてさっさと店を出ることにした
俺の背中に、服部さんの視線を感じたような気がしたが、きっと気のせいだろう
さて、俺の渡した資料に服部さんは食いついてきてくれるだろうか?
いや、きっと食いついてくるはずだ
俺にはわかる、服部さんの目はまだ死んでいない
きっと、何かのきっかげあれば彼女はきっと……
会計と見送りは他の店員さんだった
服部さんは他のテーブルの対応に回っいるみたいだ
ここで粘っていても仕方ない、そう考えてさっさと店を出ることにした
俺の背中に、服部さんの視線を感じたような気がしたが、きっと気のせいだろう
さて、俺の渡した資料に服部さんは食いついてきてくれるだろうか?
いや、きっと食いついてくるはずだ
俺にはわかる、服部さんの目はまだ死んでいない
きっと、何かのきっかけがあれば彼女はきっと……
一週間後、俺はまた服部さんがいるカフェを訪ねていた
「いらっしゃいませ、おひとり様ですね?」
「こんにちは、おひとり様です」
俺のおどけた言葉に、ふふっと服部さんが笑った
「では、こちらへどうぞ」
案内されたのは、まるで俺の指定席のようになっている陽の当たる席
「資料、読んでもらえましたか?」
「ええ、ですがやっぱり……」
まだ彼女を押す材料が足りないか……
「わかりました、また作り直してきます」
「ええっ? 作り直すんですか!?」
駄目なら作り直すのが妥当だと思うんですが……
「はい、服部さんがこれだと思ってくれるまで作り直します」
「貴方は変わった方なんですね」
苦しそうに笑う服部さんの表情は初めて見た
事務所に帰った俺は何が足りないのかを考えた
衣装かな? それとも再デビューのイメージ作りが悪かったかな?
大人っぽい路線でいったけど、もしかしたら本人は可愛い系でいきたのだろうか
あーだこーだと頭を悩ませ、結局出た案はお世辞でも良い物とは言えなかった
とにかく俺の熱意と、服部さんはアイドルとしてやっていけることを再認識してもらいたい
ただ、その思いだけで俺の仕事は成り立っているのだから
「今回こそは」
今日こそは良い返事をもらいたい
カフェのドアを開けると、呆れたような顔の服部さんがいた
「いらっしゃいませ、いつもの席開いてますよ」
「ええ、お願いします」
今日は生憎の雨で、陽が当たっていない
「そうだ、これを」
作り直してきた資料を服部さんに渡す
「貴方も懲りない人なんですね」
そう言いながらも、服部さんは受け取ってくれた
これで駄目なら根本的に考え直さないといけないな
一から考え直すとなると、結構な時間がかかってしまう
けれど、この作業を面白いと考えている自分がいて
ああ、それと……このカフェで服部さんと会えるというのが大きな理由なのかもしれない
ちらりと、服部さんへと視線を向ける
普通のカットソーとパンツルックなのに、映えるなぁ
忙しそうに働いている服部さんを見ながらコーヒーを飲み干し、お暇した
また一週間後、服部さんに会いにこのカフェに足を運ぼう
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