【アイマス】小鳥「春夏秋冬空模様」 (27)

アイマスSSです

地の文多めですので苦手な方はご注意ください

原作との設定の違い等は指摘してくださると喜びます

では始めます

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春は暖かく、夏は爽やかに、


秋はやさしく、冬は厳しい


そんな空が私は好きだ


【春】



今日はそれなりに暖かく、もう冬は完全に去ってしまったようだ。


これくらいの気温が続いてくれると私の仕事ももう少し捗る気がするのだが。



「小鳥さん!おはようございまーっす!」


「おはよう、やよいちゃん」



春の陽気につられて事務所で少しうとうとしているとやよいちゃんがやってきた。


え?仕事が捗ってないって?こんな陽気なら少しくらい船を漕いでいてもだれも怒らないだろう。怒らないでほしい。



やよいちゃんは今日も事務所の掃除をしてくれるらしい。


本当は私がしなくてはいけないことなんだろうけどついつい甘えてしまっている。


いつか何かしらのお礼をしなくちゃなどと考えているとやよいちゃんの表情がいつもより少し曇っている事に気づいた。



「やよいちゃん、ちょっとだけ元気がなさそうだけどなにかあった?」


「え!?なんでわかったんですか?」


「ふふっ、お姉さんにはいろいろと分かっちゃうのよ。なにかあったのなら私に話してくれない?」



お姉さん?なんて考えた人は後で私の部屋に来るように。一人で。



「うぅー……実は今朝弟とケンカしちゃって……」


「あら、どうして喧嘩になっちゃったの?」



彼女が弟と喧嘩するのは日常茶飯事とは言わないまでもよくあることらしい。


けれどそれをここまで顔に出すことはほとんどないことなので少し心配になる。



「長介が今日から家事はオレがやるから姉ちゃんは座ってろって言われて、それで急にそんなことさせられないって言ったら、


 そこからやらせろーやらせないーって言い争いになっちゃって……それでケンカをしたまま家を出てきちゃったんです……」


「なるほど、長介くんがそんなことを……」


「長介がそう言ってくれるのは嬉しいんですけどやっぱり家事は私の仕事だと思うんです」



弟である長介くんでさえやよいちゃんを手伝おうとしているのに、事務所の掃除をやよいちゃんに任せっきりにしてしまっている


自分の存在で心にダメージを負いながら私はやよいちゃんにこう言った。



「長介くんだってやよいちゃんのお手伝いをしたいだけなのよ。


 全部は任せられなくても一部だけなら任せられるんじゃないかしら?」


「でも……」


「じゃあやよいちゃんは長介くんを信頼できない?」


「そんなことないです!」


「じゃあ簡単な仕事だけでも任せてあげましょう?


 私がやよいちゃんに掃除を任せてるみたいに長介くんにも朝のお掃除を任せるとかどうかしら」



なんだか自分の行いを正当化するようだけど長介くんのためだもの仕方ない仕方ない。



少し悩んでいるような顔を浮かべてしばらく考え込んだあと、



「そうですね……長介にそう言ってみます!ありがとうございます小鳥さん!」



と元気に答え、優しい顔で笑った。


いつもの笑顔も素敵だが、彼女が家族に向ける笑顔は太陽のようで一段と輝いている。


ふと窓を見ると柔らかな日差しが差し込んできており、


外には心をおちつかせる穏やかな晴れ空が広がっていた。


【夏】



「おはようございまーす……あづいー……」


「おかえり真ちゃん。麦茶でも持ってくるわね」



うだるような暑さの中、真ちゃんが学校から事務所へやってきた。


幸い事務所の中はクーラーが効いているので、外と比べればかなり快適だ。


麦茶をいれて戻ると真ちゃんがソファにうつ伏せで倒れ込んでいた。



「真ちゃん、女の子がそんな格好したらはしたないわよー。


 女の子はこういうところでも油断しちゃだめなんだからね、ふふっ」


「……小鳥さん、僕って女の子っぽいですかね?」


「えぇ、もちろん!……なにかあったの?」



うつ伏せのままそう聞かれたので顔を見ることはできないが、声にいつものような元気がない。


いつもは女の子らしくあろうとする彼女がそんなことを聞くなんて何かあったのだろう。



「今日学校で女の子から手紙をもらっちゃって……これってやっぱり僕が男っぽいからなのかなって考えちゃって……」


「うーん、たしかに真ちゃんはかっこいいところもあると思うわ」


「やっぱり……」



なんだか今日はいつも以上にかっこいいと言う言葉に敏感になっている気がする。


おそらくいままで溜め込んできたものが手紙をもらったことで限界に達したのだろう。


かっこいいという言葉は今の彼女には、ナイフのように突き刺さるのかもしれない。



「でも事務所のみんなは、少なくとも私は真ちゃんにはとってもかわいい、女の子らしい部分があるって知ってる。


 お姫様に憧れていたり可愛いものがなにより好きだったり……そんな真ちゃんは誰よりも女の子らしいって思うわ」


「小鳥さん……」



私は、私たちは真ちゃんの可愛いところをたくさん知っている。もちろんかっこいいところもあるし、世の中の女の子たちは


真ちゃんにそれを、いわゆる理想の王子様を望んでいるのかもしれない。それでも彼女の根っこはこの事務所の誰より、そして世界中の誰よりも女の子なのだ。



「女の子からお手紙をもらったっていいんじゃない?真ちゃんのことをかっこいいって思う子がいたとしても、


 きっと同じくらいかわいいって思ってくれる女の子もいるわよ!」


「そっか……そうですよね!かっこよくてもそれ以上に可愛ければいいんですよね!ありがとうございます!


 よーっし、スッキリしたら走りたくなってきたんでちょっと着替えて走りに行ってきます!」


「うふふ、行ってらっしゃい」



そういって真ちゃんは元気よく起き上がって着替えにいった。


うーん、やっぱりまだお姫様から遠いところもあるかもしれない、なんて考えながら窓の外に目をやると、太陽が力強く街を照らしていた。


一見ただ私達を強く照らし続けているだけのように見える太陽も、


落ち着いて見るとその光はさまざまな輝きを放っており、とても美しかった。


【秋】



「もしもし!あ、あずささん!今どこですか!?」


『あら~?ここはどこかしら?』


お決まりと言ってはなんだが今日もあずささんは迷子になってしまったようだ。


収録の時間までもうギリギリというわけではないが、流石に事務所にきていないと心配になる時間である。


いつも通りといえばいつも通りなのだが、今日はプロデューサーさんが響ちゃんのロケに付き添っており、


迎えに行けるのは私しかいないので、留守を社長に任せて私が迎えに行くしかないだろう。



急いで迎えに行く準備をしながらあずささんに尋ねる。



「あずささん、周りになにが見えますか?」


『そうですね~……あっ、観覧車がすぐ近くにあります』


「観覧車……わかりました、すぐ行くのでそこで動かないで待っててください!」



それからしばらくしてようやくあずささんを見つけた。


ずいぶん長い時間探し続けていた気がする。まるで宝探しだ。



「あっ、あずささーん!はぁ……はぁ……」


「あっ、小鳥さん。すみませんご迷惑をおかけして~……」



申し訳なさそうな表情でそう謝られてしまった。探すことがいやだとかそういう気持ちはまったくないのだが、


プロデューサーさんと比べるとだいぶ時間を要してしまったことが、あずささんをそんな気持ちにさせてしまったようだ。



「こちらこそ時間がかかってしまって申し訳ありません」


「そんな、小鳥さんが謝ることなんてなんにもないんですよ」



二人で謝り続けてもどうにもならないので、とにかくあずささんを収録現場まで連れて行くことにした。


歩きながらあずささんに話しかける。



「プロデューサーさんっていつもすぐにあずささんを見つけちゃいますけど、なにかコツとかあるんでしょうか?」


「私も自分の迷子に特に規則性があるとは思わないんですけど、プロデューサーさんはなぜかすぐにみつけてくださるんですよねぇ」


「プロデューサーさんってそういうの得意なのかなぁ……」



もし彼がなにかあずささんを見つけるテクニックを隠し持っているならあとで聞き出しておこうと心に決めつつ


あずささんを無事に現場まで送り届けることができた。



その後事務所に戻って事務作業をしていると、収録を終えたあずささんが戻ってきた。



「ただいま戻りました~」


「おかえりなさい、あずささん」


「今日はお手数をおかけしてしまってすみませんでした」


「いえいえ、お迎えくらいいつでも行きますよ!ただプロデューサーさんほど早くは見つけられませんけど……」



プロデューサーさんは今日はロケ先で泊まり、明日の午後戻ってくる予定なのでまだ宝探しのコツは聞けていないが、


おそらく彼は「そんなものはない」と返してくるだろう。なんとなくそんな気がする。



「私が迷子にさえならなければいいんですけど、これだけはどうしても治らないんですよね」



またあずささんに申し訳無さそうな表情をさせてしまい、私は焦ってこういった。



「ま、まぁまぁ!迷子になってもいつも見つけ出してくれる男の人がいるなんて、まるであずささんの王子様みたいじゃないですか!」


「プ、プロデューサーさんが王子様ですか?あ、あらあら~」



彼女は顔を赤くしている。私は申し訳なさそうな表情をどうにか消せて一安心といったところだ。



「でもそうですねぇ……もしプロデューサーさんがそうだったら……」


「え?なんですか?」


「うふふ、なんでもありません」


「えぇ~教えて下さいよぉ~」



笑いながらそんなやり取りをしつつ、ふと窓の外を見る。


明るい月が静かに、そして柔らかく輝いている。


太陽と同じように私達を見守ってくれているが、月の光は太陽とくらべると優しい光だ。


その光をみて私は今日も一日を無事に、そして楽しく過ごせたことに感謝する。


【冬】



律子さんが立ち上がり、亜美ちゃんが逃げ出した。



「うわぁー!逃げろー!」


「こら亜美!待ちなさーい!」



今日も亜美ちゃんのいたずらは絶好調のようだ。


楽しそうにいたずらをする亜美ちゃんを見ているとなんだかこっちまで笑顔になってしまう。



「じーっ……」


「り、律子さん!?ど、どうかしましたか!?」


「いやぁ、小鳥さんがなんだかとぉーっても楽しそうにしているなと思いましてねぇ?」



口元に笑みを、額に青筋を浮かべながら律子さんがこちらをじっとみている。


これはあまりよろしくない状況だ。



「あーーーっとお仕事の続きをしなくっちゃーオホホホホ」


「ふぅ、真面目にやってくださいね。さてと、亜美はどこかしらぁ?」



そう言いながら律子さんは事務所から出ていった。


なんだか怒りのオーラのようなものが見えた気がするがきっと気のせいだろう。


戻ってきたときにサボっていたらあのオーラはきっと私に向かうだろう。それだけはなんとしても避けなければ。



「…………ピヨちゃん、りっちゃん行った?」


「ひえぇぇぇ!……って亜美ちゃん、なんでここに!?」


「いやぁりっちゃんが追いかけて来ないから戻ってきたら、ピヨちゃんに流れ弾が飛んでいるのが見えたから


これはいっそ事務所の中で隠れてたほうが安全だと思いまして」



いたずらクイーンはどうやら逃げ方も熟知しているらしい。さすが……というべきなのだろうか。



「私に律子さんの怒りが向けられるのは私の寿命が縮んじゃうから律子さんに対するいたずらはほどほどにね……」


「ピヨちゃん……あいつはいいやつだったよ、3日くらいは忘れないだろう……」


「結構すぐ忘れられちゃうのね私……ってそもそも死んでない!」


「おぉー、ピヨちゃんノリツッコミとはやるねぇ」



そんなところで褒められたくはないのだが亜美ちゃんは満足げなのでなにも言わないことにした。



「ところで亜美ちゃん、そろそろお仕事の時間じゃない?」


「おおっとそうだったー!準備を……」


「はぁー、もうそろそろ出発の時間だってのに亜美はいったいどこへ……」


外から戻ってきた律子さんと亜美ちゃんの目と目が逢った。


その瞬間好きだと気付いたはずだ。


そういうものなのだ。



「さぁて、亜美?心の準備は?」


「あ、あー!もうお仕事にいかなくちゃー!りっちゃんもほら急いでー!」


「そうね、仕事から戻ってきてからのほうがゆっくりお説教できそうね?」


「うぅ、今度こそ逃げられる気がしない……」


「さ、行くわよ」


「はーい……」



どうやら二人が恋におちることはなかったようだが、一緒に事務所から出ていく二人の後姿はとてもあたたかいものに見えた。


私の胸も知らぬ間に温かい気持ちでいっぱいになる。


亜美ちゃんと律子さんはとても温かくなるような関係なのだ。



「二人の姿はあったかくてもやっぱり風が寒いわね……」



換気のために窓を開けていたがそろそろ閉めてもいいだろう。というか閉めないといけない。主に私のために。


窓を閉めるために窓際へ行くと、より寒さが身にしみた。空は曇っており、雪が降るかもしれないと予感させるような空模様だ。


寒い日の曇った空は私を物悲しい気持ちにさせる。


でもきっとあの二人の温かさなら雪だって降らないだろう。


こんな日は私の中にいつもはあるはずの孤独やむなしさみたいな気持ちが、どこかへいってしまったのだから。









春はやよいちゃんみたいに暖かく、夏は真ちゃんみたいに爽やかに、


秋はあずささんみたいに優しく、冬は律子さんみたいに厳しい


そんな空が私は大好きだ





以上になります

読んでくださった方がいれば感謝を

最後少し無理やりだったような気がしないでもないけど気にしないでおきます

ではHTML化の依頼を出してきます

ありがとうございました

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