藍子「未央ちゃん、私に助手席の乗りかたを教えてください」 (32)

未央と茜と、助手席に乗りたい藍子の話です。オチなし

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未央「助手席」

藍子「はい」

茜「助手席とは、車のですか!」

藍子「はい、よかったら」

未央「……えーっと、ごめん、どういう意味?」

茜「ドアをバーンしてドーンでまたバーンするだけでは?」

未央「だよね」

藍子「あの、壊しかたじゃなくて……私も、未央ちゃんみたいに助手席に乗りたいなって」

未央「私みたいな乗りかた……?」

茜「開いた窓からダーイブ!」

未央「茜ちんの中の私そんな?」

藍子「あっ、ごめんなさい、そういうことじゃなくって……」

未央「そういうことじゃないって」

茜「言われてみれば……」


藍子「プロデューサーさんが、私たちを車で送り迎えしてくれるときの話、なんだけど……」

未央「あー、そういう……」

茜「どういうことでしょうかっ!?」

藍子「茜ちゃん、あのね」

茜「はい!」

藍子「茜ちゃんは現場に行くときとか、いつも走ってますけど、私と未央ちゃんはプロデューサーさんの車ですよね」

茜「おー、言われてみれば!」

藍子「そういうときに、どうしたら助手席に乗れるのかなって、思って」

未央「ほら、プロデューサー、私たちを助手席に乗せるの嫌がるじゃん? 危ないからって」

茜「言われてみれば……罠でも仕掛けてあるんでしょうか? 落とし穴のような!」

未央「いや」

茜「違いますか! では、ペンキ塗りたてだとか!」

未央「違くて」

茜「これも違いますか! ううん、難しい問いと書いて難問! しかしだからこそ乗り越えたときの喜びもひとしおです!」

茜「ではこんなのはどうでしょう! シートベルトをカチッと締めたら座席が倒れてウォータースライダー!」

未央「茜ちん少し静かにしててね」

茜「はい!」


未央「でも、それでどうして私なの?」

藍子「えっと……私、今までプロデューサーさんの助手席に乗ったことがある人を調べてくださいって、マキノさんにお願いしたんです」

未央「まきのん興信所だね」

藍子「結果は、ほとんど成人組の皆さんだけだったって……。あ、若葉さんは除いて、だけど」

未央「そんな気はした」

藍子「ただ、他に、未成年でも助手席経験者は数人いたみたいで、ずばりそのうちの一人が未央ちゃんだって聞きました!」

未央「お、おう……うん、乗ったことはあるよ」

藍子「ほら!」

未央「え、うん……どうしたのあーちゃん、何がほらなの?」

藍子「お師匠さま!」

未央「何その珠ちゃんみたいな」

藍子「どうやって乗ったんですか?」

未央「どうやっても何も……三人いたから、じゃあ私が前乗るよーって言ったら」

藍子「じゃあ私が前乗るよー」

未央「そう」

藍子「アクセントは今ので、あってましたか?」

未央「まあ……」

藍子「最後伸ばした長さは……」

未央「呪文か」


未央「別に、乗りたいって言えば乗せてくれるんじゃない?」

藍子「だめでした」

未央「えっ、そうなんだ? 意外だなー」

藍子「ちゃんと赤信号のときに頼んだのに……」

未央「だめなわけだ」

藍子「危ないから座ってなさいって、苦笑いされて……」

未央「ごもっともだよ」

藍子「でも私、プロデューサーさんの困ったような笑顔も、その、す、好きなんですよ」

未央「見れてよかったね」

藍子「はいっ」

未央「はあ……助手席の乗りかたなんて言うから、何のことかと思ったけど……」

未央「ちゃんと車に乗る前に頼めば乗せてくれるって。きっと」

藍子「そうかな? じゃあ、今度また挑戦してみようかな」

未央「ちなみに、どうしてあーちゃんは助手席に乗りたいの? 乗り心地はそんなに変わらないよ?」

藍子「それは……その、乗れたら……」

未央「乗れたら?」

藍子「……」

未央「あーちゃん?」

藍子「……ぱ、パートナーみたいで……いいなあって……」


未央「ひゅーぅ、茜ちん茜ちん、聞いた?」

茜「はい! いやぁー青春ですね!」

藍子「えっ、ふ、二人だって、そういうこと思ったりするよね?」

未央「ないことはないけど、そんなあーちゃんみたいに頬染めて、ねえ?」

茜「青春ですね!」

未央「そっかー、それじゃ今度からは、私も茜ちんと走ろうかなー」

茜「どんとこいですよ未央ちゃん! 一緒に藍子ちゃんを応援しながら走りましょう! 青春っていいものですねー!」

藍子「いっ、今までどおりでいいですっ」

未央「あっ! そういえばこの前、プロデューサーと二人で歩いて帰ってきたことあったよね! あれどうだったの?」

藍子「ど、どうって……」

未央「カツ丼は用意した! さああーちゃん、これ食べて吐け!」

藍子「言いかた……」

未央「ほらほらどうなんだいどうなんだい? もしかしてだけど、手なんか繋いじゃったりしてたんじゃないの~? んん?」

藍子「えっと、あの……その…………はい」

未央「うっひょー!」

茜「青春ですね!」

未央「茜ちん語彙ヤバくない?」


未央「いやーでもそういうことなら、この私が助手席の乗りかたをばっちり教えてしんぜよう!」

藍子「かたじけないです……」

未央「あーちゃん語録も謎なんだけど……」

藍子「ありがとう未央ちゃん」

茜「私も興味津々の天津飯です! ドアバーンドーンじゃない乗りかた、教えてください!」

未央「うん、まあ、乗りかたというより、乗るときのコツだね。助手席の女王と呼ばれた未央ちゃんの秘伝……心して聞くがよいぞ」

茜「いよっ! シートベルト!」

藍子(合いの手?)

未央「大事なことは、助手席に座る人は運転する人のサポート役だってこと」

藍子「はい」

未央「だから、運転する人が手を離せないときに、地図とかカーナビ確認したり、財布出したり、音楽流したり、ガム渡してあげたり……」

未央「車の中のことだけじゃなくて、運転席から見づらい助手席側の歩行者や車に注意したり、覆面パトカー見つけて速度に気をつけてってアドバイスしたり、とか、そんな感じでね」

茜「どうしましょう、早くも頭がパンクしそうです! タイヤだけに!」

藍子「わ、私も……」

未央「他にも、ときどき座席に盗聴器とかブーブークッションとか、足元に椎茸の菌床とか」

未央「あ、あとドリンクホルダーにセミの抜け殻とか仕掛けてあるから、そういうのを外す」

茜「業者ですかね!」

藍子「なんとなく下手人の顔が思い浮かぶような……」

未央「下手人て」

藍子「それにしても、助手席に乗るって、簡単なことじゃないんですね」

未央「それは、そうかもね……いきなりいろんなことをやろうとすると、慌てちゃってかえって迷惑になるかもしれないし……」

茜「ここで降りてくれって言われてしまいますね!」

未央「プロデューサーと私たちの関係って、そんな殺伐としてたっけ」

藍子「も、もしそうなったら……介錯はお願いします……」

茜「藍子ちゃん、顔が青いです! 大丈夫ですか! 冗談ですよ!」

藍子「な、なんだぁ……不覚」

未央(あーちゃん時代劇の役きたのかな)


未央「まずは、渋滞したときの話し相手になるとか、そういうところからかな?」

未央「カーナビの使い方くらいはわかってると便利かもしれないけど」

藍子「カーナビかあ……」

茜「どうやって使うんですか?」

未央「よくあるのは抵抗膜方式っていって、圧力をかけて二枚の膜をくっつけることで電流を流すんだよ。最近は静電気式のタッチパネルも増えてるらしいけど」

藍子「そういう質問じゃないような……」

茜「なるほどー!」

藍子「そういう質問だったの?」

茜「ついでに操作のしかたも知りたいので、教えてください!」

藍子「私もちゃんと覚えたいなあ」

未央「オッケー。実はね、練習にうってつけのものがあるんだー。でれでれでれでれでーでれでっ」

茜(呪い……?)

藍子(呪い……?)

未央「カーナビに詳しくなるアプリ!」

茜「おぉー!」

藍子「そんなものまであるんですね」

未央「みよねえの監修のもと、いずみんが作ったんだって。私もまだ使ったことはないけど、そう聞いたよ」

茜「それはそれは力作ですね! 期待が高まります!」


未央「ね、あーちゃん」

藍子「はい?」

未央「期待が高まる高森藍子です! って言ってみて」

藍子「えぇ!? 急に何!?」

未央「なんとなく。可愛いかなって」

茜「ついでにピースもしてください!」

藍子「で、でもあの、意味がわからない……」

未央「……」

茜「……」

藍子「その……」

未央「よーい!」

茜「アクション!!」

藍子「はえっ、き、期待が高まる高森藍子です! ぶいっ」

未央「……」

茜「……」

藍子「……」

未央「……じゃアプリ開いてみよっか」

茜「お、よく見ると可愛いアイコンですね!」

藍子「ひどいもぉー未央ちゃん! 茜ちゃん!」


未央「スタートっと」

アプリ『……』<ブロロンブロロン

アプリ『燃やせ 爆走魂! 地獄の カーナビ ロワイヤル』

未央「タイトルで既に不安だよ」

茜「上等です! 燃えてきました! うおおぉぉー!」

未央「待って茜ちんアプリ落ちちゃう」

藍子「このタイトル画面の背景、事務所の中庭ですね」

アプリ『……』<ブッブーブロロ…

未央「ん、ミニカー出てきた」

アプリ『カーナビゲーションシステム ちぢめて カーナビ』

アプリ『この世界には たくさんの カーナビ が いる』

茜「おや、どこかで聞いたことがありますよ!」

藍子「全てのカーナビを仲間にして、最強のカーナビマスターを目指すアプリだったりして」

未央「そんなわけ」

アプリ『全ての カーナビ を 仲間にして 最強の カーナビマスター を 目指そう!』

藍子「……」

未央「おっと雲行きが怪しいぞ」


アプリ『さて…… 最初に キミのこと を 教えてほしい』

アプリ『キミの 排気量 は 何cc?』

未央「まずは自分が乗る車を決めるみたいだね……ほらこの、セダンとか、ミニバンとか……」

藍子「ええと、バス、トラック、自動二輪、原付、セグウェイ、一輪車……」

茜「一輪車もカーナビがつくんですね! 知りませんでした!」

藍子「ご時世ってことなのかなあ」

茜「せっかくだから一輪車にしませんか!?」

未央「一輪車には助手席がないよ茜ちん」

茜「諦めるのは早いですよ未央ちゃん! あるのもあるかもしれないじゃないですか!」

未央「それ一輪車じゃないでしょ」

藍子「あっ、これ、この社用車タイプ1って、ここの車と同じですよね?」

未央「あ、ほんとだ、さすが自家製アプリ。じゃあこれにしよっか」

アプリ『それでは 冒険の ドライブ に レッツゴー!』


 ~その後~

藍子「……」

未央「……というわけでチュートリアルが終わりましたが」

茜「面白かったですね! 途中お二人の読むスピードについていけない場面もありましたが、概ね面白いアプリでした!」

未央「茜ちんはこんな調子で……あーちゃんはわかった?」

藍子「ええっと、ええっと……あっ、そうそう、トンネルに入ると画面が黒くなることは覚えましたっ」

未央「操作関係ないなぁ」

藍子「面目ない……」

未央「あーちゃん面白いから時代劇一回忘れて」

茜「そもそもこのアプリ、本当にカーナビの使いかたを覚えるためのアプリなんでしょうか?」

藍子「カーナビがカーナビと戦ってましたね」

未央「おっかしいなー、若者の車離れを食い止める一石だって、みよねえ張り切ってたのに……」


未央「仕方ない、こうなってしまったら、あとはこれしかない……演習しよう!」

茜「おお! ついに私たちの日頃の演劇レッスンが、活かされるときが来ましたね!」

藍子「高森藍子、頑張ります!」

未央「私の親友の数少ない持ちネタとらないであげて」

藍子「ぶいっ」

未央「あーちゃん」

茜「今度はノリノリですね!」

藍子「そうしたら、私は、助手席に乗る人の役、でいいですか?」

茜「運転手は私にやらせてください! 全力で運転します!」

未央「そうだね。私は、自分のおもちゃをなくして凹んでいたのを見かねた兄貴が貸してくれたボールで遊んでいたら道路に転がっていっちゃったので急いで拾おうと飛び出してきた子供の役やるから……」

藍子「濃いなあ」

茜「何としても避けなければ!」


未央「何はともあれ、やってみようか。それでは、よーいアクション!」

茜「バーン!!」

藍子「えっ!?」

未央「えっ!?」

茜「えっ?」

藍子「ど、どうしたの?」

茜「まず車に乗らないといけませんから! ドアを開けました!」

藍子「ドアの音だったの!?」

未央「出だしから事故ったのかと」

茜「ドーンして、バーン! はい! さあ、藍子ちゃんも早く乗ってください!」

藍子「は、はい。ドア、お、オープン……」

未央「普通に乗ったら?」

茜「乗りましたか? シートベルトは締めましたか? ではエンジンをかけます! いけぇー!」

藍子「……」

未央「……」

茜「かかりません」

未央「早苗さんの昔の車じゃないんだから……」

茜「助手席の藍子ちゃん! どうしましょうか!」

藍子「えっ!? こ、ここで助手席の出番? え、ええと……」

茜「早くしないと未央ちゃんが飛び出してくる時間に間に合いません! 急ぎましょう!」

藍子「それじゃあ……、さ、さいきっくぱわー! エンジンよ、かかれーっ……!」

茜「……」

未央「……」

藍子「そんな顔しないで……」


未央「あーちゃん? あのね、車は、魔法で動くわけじゃないんだよ」

藍子「うぅ、知ってるもん……でも裕子ちゃんがこれでエンジンがかかったって言ってたんだもん……」

茜「それでは、エンジンがかかったということにして、藍子ちゃん! 目的地の設定をお願いします!」

藍子「はい、場所は……」

茜「北緯33.763度、西経84.395度です!」

未央「どこ?」

藍子「ジョージア水族館ですね」

未央「どこ?」

藍子「アトランタのオリンピック公園の近くにある水族館ですよ」

未央「そんな世界レベルのお散歩スポット言われても……」

茜「では行きます! しゅっぱーつ! はっしーん! レッツゴー!」

未央「多いよ」

藍子「茜ちゃん、アトランタまでだとガソリンが足りなくなりませんか?」

未央「そういう問題じゃない」

茜「がたんごとーん!」

未央「効果音」

藍子「高速道路で行けるかなあ」

未央「待って息吸う」


未央「もう、二人ともボケ倒すのやめてよ! 私の出番来ないじゃん! こっちは飛び出す準備できてるんだよ?」

藍子「ごめんなさい」

茜「すみません!」

未央「もう飛び出すよ? いい?」

P「よう、お前たちそろそろだけど、何の話してるんだ、黒ヒゲ危機一髪か?」

藍子「あっ」

未央「あっ」

茜「あっ!」

P「どうした、みんなしてハトみたいな顔して」

未央「豆鉄砲は?」

茜「プロデューサー! とてもいいところに! それはもう……とてもいいところに!」

茜「是非とも運転手役をやってください! さあ、このソファにどうぞ!」

藍子「えっ!?」

茜「頑張ってください、藍子ちゃん!」

藍子「ええっむりですむりです、だって全然まだ何もわからないのに……」

未央「大丈夫、私も優しく飛び出すからさ」

藍子「み、未央ちゃん、代わって……! お手本、お手本を見せてください!」

未央「張り切って行ってみよー」

藍子「未央ちゃん~」

P「なんだお前たち」


P「……はあ、助手席に乗る練習?」

未央「あーちゃんが助手席乗りたいんだって」

P「練習要るか?」

未央「それでね聞いてよプロデューサー、あーちゃん可愛いんだよ。助手席に乗りたい理由っていうのが……」

藍子「わーっ! 未央ちゃん! 言わないでよぉ!」

未央「もごぐっ」

藍子「ひみつ! ひみつです!」

未央「もがもご……わかったわかった! 言わないから、あーちゃん、全体重かけて口塞ぎにこないで」

未央「……ということなんだよ、プロデューサー」

P「わからんが」

茜「プロデューサーなら、助手席に座る人に何を求めますか!?」

P「俺? そうだな……あ、渋滞とかで暇になったときに喋ってくれる人だと嬉しいな」

P「もちろん、疲れてたら寝ててくれて全然いいんだけどさ」

茜「なるほど! 未央ちゃんの言ったとおりですね!」

未央「ふふん」

P「未央は後ろにいても退屈しないな」


未央「さ、あーちゃん」

藍子「むーりぃー……」

茜「藍子ちゃん! ぎっくり腰はいけません! 墓穴に入らずんば故人を得ず!」

茜「思い切ってやってみましょう! やればできるさ勇敢第一! です!」

P「色々気になるけど最後のはYou can do itか?」

茜「……」

P「今度またボーカルレッスンやろうか」

茜「はい!」

藍子「う、うん……そうだね。……そうだよね」

藍子「胸を張って、助手席に座るためにも……まずぶつかってみないと、ねっ!」

茜「その意気です!」

未央「頑張れあーちゃん!」

藍子「押忍!」

未央「あーちゃんさっきから憑依されてない」

藍子「助手席レッスン、お願いします、プロデューサーさん」

P「お、おう」


P「……目的地設定完了、盗聴器もGPSも本人もなし、シートベルトオッケー。じゃ、行くぞー」

藍子「は、はいっ」

P「暖房は入れたけど、まだ寒いようなら上げてくれ」

藍子「はい! な、なら、ええと、37℃くらい……」

P「微熱かよ。音楽かラジオか流すか?」

藍子「はい!」

P「頼んでもいいか」

藍子「はい! あの、CDはどこから出てきますか?」

P「は?」

藍子「このあたりに……?」

P「藍子?」

藍子「は、はい!」

P「そこエアバッグだぞ。収納はもっと下」

藍子「えーっと」

P「藍子」

藍子「はい!」

P「巻頭グラビアやりたい?」

藍子「はい! ……はいじゃないですっ! ぷ、プロデューサーさん!」

未央「テンパってるなあ……」

茜「青春ですね!」


 ~その後~

藍子「………………」

P「まあ、藍子、ほら、練習なんだろ」

藍子「………………」

P「そう悄気るなよ、ないから、助手席に上手い下手とか、てか何をそんな凹んでんだ」

藍子「……たとえ練習でも、せっかくプロデューサーさんの助手席に乗れる、貴重な機会だったのに……」

P「そこそこあるよ」

藍子「こんな、はしたない……」

P「はしたなくはないだろ」

藍子「………………」

P「ええ……、未央と茜も何とか言って」

茜「み、未央ちゃん! 藍子ちゃんが……藍子ちゃんがっ!」

未央「わかるよ茜ちん……! 落ちこむあーちゃん、可愛い!」

茜「ああー撮りたいです! うなだれた藍子ちゃんをこう……このへんの角度から!」

未央「わかるよ」

茜「仲間として慰めなければ……! でも……でもその前に! 撮りたい! アルバムに残しておきたい!」

未央「じゃあ……残していこうか、私たちのあーちゃん……!」

P「おい」

茜「はいチーズ!」

藍子「……ぶい」

P「おい」


P「っとそうだ、のんびりやってる場合じゃない。もう出る時間だぞって、お前たちにそれを言いに来たんだった」

茜「なんと、そういうことでしたか!」

P「……ああ、どうせなら車で送っていってやろうか?」

藍子「えっ」

未央「ホント!?」

P「今は他に見なきゃいけない仕事もないし」

藍子「ありがとうございます」

茜「やりましたね!」

未央「ほらあーちゃん、プロデューサーに何か言うことあるんじゃないの?」

藍子「え、あっ、あの……」

P「ん?」

藍子「あの……」

未央「ほーら、言わないと私が副音声で言っちゃうぞー? あることないことないことないこと」

藍子「い、言いますっ! ぷ、プロデューサーさん、その……!」

藍子「私を……助手席に、乗せてください!」

P「……まあ、いいけど」

藍子「っ!」

未央「やった!」

茜「やりましたね!」

未央「胴上げだ!」

茜「大いに上げましょう! きらりちゃん呼んできます!!」

藍子「やめて……お願いやめて! ……でも、ありがとう!」

未央「ひゅーひゅー!」

茜「めでたい!」

P「お前たちは助手席を何だと思ってるんだよ」


未央「ふんふーん♪ ドライブドライブ~」

茜「プロデューサー、今日は私も乗せてもらってもいいでしょうか!」

P「ああ。むしろ普段も乗ってけ。併走しないでくれ」

藍子「ふ、不束者ですが、よろしくお願いしますね」



ワイワイ キャイキャイ



卯月「助手席かあ……」

美穂「いいなあ、プロデューサーさんの隣……私も乗ってみたいな」

卯月「私も……」

美穂「でも、私が乗ったら、きっと慌てちゃって迷惑かけちゃうんだろうなあ……」

卯月「私、前に一度、なるべく後ろに乗ってくれって、やんわり言われちゃったことがあるんです」

響子「え」

卯月「?」

美穂「響子ちゃん?」

響子「お二人とも、そうなんですか? わ、私……あの、いつも助手席に乗るんですけど……」

卯月「……」

美穂「……」

響子「プロデューサーさんが、響子がいると楽だから、悪いけど隣に乗ってくれないかって。悪いことなんかないのに……」

卯月「……」

美穂「……」

響子「あ、あのー」

卯月「せっ先生!」

美穂「私たちに、助手席の乗りかたを教えてくっ、ください!」

響子「えぇ……」


 おわり

おわりです。
Flip Flopイベントまたやりたいなー

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