【モバマスSS】十時の魔法 (21)

注意 短い 糖分過多な場合がございます

塩の入った苦いコーヒーをご用意ください

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「誕生日おめでとう、愛梨」


「わぁ~!ありがとうございます!」


12月8日

アニバーサリーの会場で十時愛梨は1日だけのもう一人の主役となっていた

誰にでも分け隔てなく接する彼女を事務所全員でお祝いした後

俺たちはこっそりと会場を抜け出していた


「いいんですかぁ?」


「会場運営とかは別の奴に任せてる。いざとなればちひろさんも居るし」


今日の話した時「また惚気か・・・」って感じのすっげぇ嫌そうな顔されたが・・・


「今日はお姫様のお願いでもあるからな」


「えっへへ」


いたずらしている最中の子供のように無邪気に笑う姿

ステージ上の輝かしい姿や普段のちょっと抜けてる姿とも違う

根っからの純粋無垢

言い方を変えると子供っぽい姿


「さて・・・やりますか」

そう言って俺はこれからやる初めての行為に向けて気合いを入れた

とまぁそんなこんなで俺の自宅にやってきたわけだが


「で?どうするんだ?俺は作ったことがないから教えてくれよ?」


「え~っと・・・まずはオーブンを温めておかないと」


俺と一緒に誕生日ケーキを作りたい

これが今日誕生日を迎える愛梨のお願いだ

自分のケーキを自分で作るのか?とも聞いたが


「一緒がいいんですっ!」


と言われてしまった

まぁ愛梨と一緒なら何やっても楽しいがいかんせん俺にケーキなんて繊細なもの作れる技量なんて無い


「あ、粉ふるっておいてくださいね」


「これか?」


「違いますよ~、こっちの薄力粉ですよ!」


・・・分からん

さっぱり分からん

いつものぽわぽわした姿からは考えられないようなスピードと手際の良さで愛梨はケーキを作り上げていく

「じゃあこれ混ぜておいてください♪」


「おうさ」


渡されたのは泡立て器とボウルに入った卵白・・・これは俺でも分かる

メレンゲ作りだ

きつい作業だとは聞いたことがあるがそれでもそこは男の見せ所である

カチャカチャと音を立てながら俺は初めてのメレンゲ作りをスタートした


~数十分後~


「ふ~・・・疲れた」


「まだまだですよ?」


「慣れてないからな」


メレンゲを作るのも一苦労である

そこに小麦粉を入れ愛梨は更に生地を混ぜ始める

・・・ハンドミキサーで・・・って!


「おい」


「え?」


「それあるなら俺が手でやらなくてもよかったんじゃないか?」


「あ・・・・・・で、でもっ!プロデューサーさん格好良かったですよ?」


前言撤回

ケーキ作りでも愛梨はどこか抜けていた

スポンジ生地をオーブンに入れて30分近く待つ間俺はというと・・・


「また混ぜるのか・・・」


「頑張ってください!」


「ちきしょう・・・なんでミキサー壊れるんだよ・・・」


かと言って愛梨にやらせると暑いって脱ぎだしそうだし力仕事は男の役割だろう

かくして寒い中氷水で冷やしながら俺は生クリームとの格闘をスタートした

すぐに出来上がるみたいだが既にメレンゲとの激闘の末俺の腕は疲労困憊だ・・・

・・・今度からジムにでも通おうか?

~数分後~


「腕疲れた・・・」


「大丈夫ですかぁ?」


「愛梨はいっつもこんな大変なの一人でやってるのか?」


「慣れてますからっ!」


エッヘン!といった感じのドヤ顔でお姫様は誇らしげな表情だ


「そうかそうか。偉いな~」


俺はそのふわふわとした頭を優しく撫でてやる


「ん・・・」


それを愛梨は嫌がる様子もなくむしろ目をつぶって嬉々として受け入れた


「じゃあプロデューサーさんも今日は頑張ったので撫でてあげます」


10cmくらい差のある背丈のおっさんが美少女に頭撫でられてる姿ってのはあまり想像したくはないが

俺の頭を撫でるその手はとても優しく柔らかだった

「じゃあクリームの味見ですね!」


「全部食うなよ?」


「かな子ちゃんじゃないですから大丈夫ですよ~!」


「えっ?かな子は全部食ったことあるのか?」


「・・・(苦笑)」


「あるのか!?」


俺の新たな疑問を愛梨はスルーしてホイップクリームを人差し指ですくってぱくりと口へ運んだ

嬉しそうな顔をする愛梨は本当にただ甘いものが好きなだけの少女だった

「はい、プロデューサーさんもどうぞ♪」


と目の前に差し出されたのは先ほどのクリームの付いた愛梨の指先

・・・マジか?


「味見・・・しないんですか?」


「お前それ他の奴にはするなよ」


「???」


分かっていないようなので身をもって教えることにした


「あむっ」


「ひゃっ!?」


口の中に入れると甘い・・・けど甘すぎるというわけでもなくすっきりした甘さが口の中に広がった

その中でもクリームの溶けた愛梨の指が一番甘かった・・・と思う

正直途中から気恥ずかしさで味なんて分からなかった


「あう・・・あう・・・(///)」


「・・・悪い(///)」


耳まで顔を真っ赤にしながら愛梨は混乱していた

実際俺も今正確な判断をしろと言われたら確実に無理だ


「えっと・・・暑い・・・ですよね!そうですね!暑いですね!!脱ぎますね!!」


「ちょ!待て!!それは待てぇぇ!」


間一髪裸のお姫様になることだけは避けられた

スポンジが焼けるまでまだ少し時間があるのでリビングに来た俺たちに突如として現れた最強の敵ッッ!!

その敵の前に俺たちは成すすべがなかった!!

強大なその敵は俺を足から飲み込み外に出そうとしないッ!!

くそっ!なんて強敵なんだ!!


「まぁこたつなんだけどな」


「温かーい♪」


この寒い時期のこたつの魔力はすごい

この間杏がこたつのままレッスン場へ行こうとしたのも分かる気がする

・・・流石にこたつに住みたいって寝始めた時は引っぺがしたが

「ん~・・・」


「どうした?」


「ちょっと温度高く無いですかぁ?」


「そうか?」


俺としては丁度いいのだが愛梨にとっては暑い・・・

仕方ない少し温度を下げて俺は毛布でも使うか・・・って


「あれ?」


いつの間にか向かいに座ってだらけていた愛梨が消えた

そう思った矢先もぞもぞと愛梨が俺の股の間から飛び出てきた

そのまま俺の間にすっぽりと収まるように座り込んだ


「えへへっ!これでプロデューサーさんも温かいですねっ!」


ふわりと甘い香り・・・リンゴのような香りが漂う

それだけでなくなんだろう・・・口では説明が出来ない良い香りがした

例えるなら・・・なんだろうなぁ?・・・俺の頭では良い例えが見つからないや

さっきまで少し寒いくらいだった体が今ではすっかり暑くなってしまった

それを誤魔化すためにみかんの房を剥いて口へ運ぼうと・・・


「あ~ん・・・」


・・・こちらへ顔を向けて目を瞑りつつ口を開けて待つ雛鳥へみかんを入れてやる

もぐもぐと美味しそうに食べてはまた口を開ける

親鳥になった気分である

そうやって餌付けしていたら結局1個丸々全部食われてしまった

のんびりと愛梨と2人っきりで過ごすのもいつぶりだろうか・・・

俺が休みを取っても愛梨が休みとは限らずに愛梨が休みでも俺が仕事の時も多々あって・・・

気が付けばそんなすれ違いが日常になってたな・・・


「~♪」


ご機嫌に俺を背もたれに使ってるお姫様の柔らかい感触にふと黒い欲望が出そうになるがそこはまぁ・・・男として仕方ない

仕方ないがそこは理性で押さえつけておかないと歯止めが利かなくなりそうだからな・・・

「あ、スポンジ・・・」


ゆる~くふわっとしていて忘れてたオーブンでこんがりと焼かれている物を思い出す


「あ~!!」


ゴスッ☆

すっかり忘れていた愛梨が突如立ち上がるものだから愛梨の脳天が俺の顎に直撃する


「~~~~!!!」


「~~~~~~~!!!」


暫く俺は顎を押さえて悶え苦しみ、愛梨は頭を押さえてうずくまる羽目になった

甘酸っぱかった雰囲気もこの痛みでぶち壊しだ

「ちょっと焦げちゃいました・・・」


「まぁしゃあない。逆に香ばしくなって美味しいかもしれないしな」


少し焦げたスポンジ生地にクリームとトッピングを乗っけていく


「最後にこれを乗せれば美味しくなるって聞きました!」


・・・OK誰に聞いたか一発で分かった

法子の奴は後で説教だ!


「わぁ~♪美味しそう♪」


「随分重そうだがなぁ・・・」


特に最後に乗っけたドーナツが・・・

これ・・・いる?

「早速切り分けちゃいますね♪」


ドーナツまできちんと切り分けたケーキをこたつまで運んでいく

こたつと紅茶とケーキとみかん・・・和洋折衷も何もあったもんじゃない


「じゃあ改めて」


「はい」


だがそういう自由なところが


「ハッピーバースデー!十時愛梨!」


俺たちっぽくて良いのだろう

「ふぅ~、美味しかったですね~♪」


「焦げてた割りに・・・な」


「も~!そこは忘れてくださいッ!」


頬を膨らませて怒るお姫様・・・全く怖くないというか可愛い


「ぷっ」


「ふふっ・・・」


「「あははははっ!」」


何だか知らないが突然おかしくなって笑い合ってしまった

幸せとはこういうものなのだろう・・・きっとそうなのだろう・・・

「ねぇプロデューサーさん・・・」


「ん?」


相変わらず俺を座椅子代わりにしている愛梨が突然こちらを向いてくる


「もう一つ・・・欲しいものがあるんです」


「我が儘な奴だな・・・」


「えへへ♪」


本当は大抵のやつならあげてもいいんだが一応格好だけやれやれというポーズを見せる


「で?もう一つってなんだ?」


「それはですねっ・・・っと・・・」


「うおっ!?」


トサッ・・・

いきなり振り向かれて愛梨に押し倒された

あまりに突然で混乱してる俺に追い打ちをかけるように彼女は・・・


「んっ・・・」


唇を重ねた・・・

「んっ・・・はぁ・・・」


少しの時間が流れた後ようやく唇を離すと愛梨は不安そうな顔をした


「いきなり・・・は嫌でした・・・?」


その不安を解消する・・・という名目で俺は愛梨の位置と俺の位置を逆転させるようにくるりと回転し押し倒した


「ふぇっ!?」


「いきなりやってきたんだからお返しされても文句言えないよな?」


「んっ・・・んんっ!?んんんっ・・・」


くちゅくちゅと音を立てるような大人のキス・・・

久々のこの感触に脳が麻痺して理性も吹き飛んだようだ・・・

「ん・・・はぁっ・・・」


ぐったりした様子でこちらを見つめる愛梨

嫌ではなくむしろ求めるような視線がこちらを見つめる


「今日は止まらないぞ?」


「はい・・・いっぱいプレゼントくださいね・・・(///)」


今日、12月8日

十時愛梨はこの家を出ることは無かった

一晩中求め合い愛し合った二人にまた新しいプレゼントが用意されていることを2人が知るのはまた別の機会である

終わりです

十時愛梨誕生日おめでとうございます!!可愛い!


それでは失礼いたしました

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