穂乃果が失明した (5)

それに嘆いた海未は矢を天へ向け射ち放ったあと地面に伏した。涙が砂に染み込んでいく。
放たれた嘆きの矢は未だ落下する様子はない。
海未の姿を窓から眺めていた凛も、どうしてこの世界はこんなにも悲しみばかり溢れているのかと、既に湯を入れて十分経過してしまったカップヌードルを片手に涙を流した。
花陽にとって、凛の流す涙は貴重な塩分だ。そうであるにも関わらず、花陽は米だけを食す。

食す。食す。まだ食す。

そうして世界から米が消えるかと思えるほどの時間が経過し、ついに花陽は気づく。気づいてしまう。

南ことりがいない。そう、留学したのだ。

彼女の突然の留学により、アイドル研究部には衣装を一から作れる者がいなくなってしまった。こうしてはいられない、と真姫は絵里とともにことりの乗る飛行機をハイジャック。
航路を変更を指示された飛行機は音ノ木坂学院上空へと向かった。
このとき機長のアルバイトをしていた矢澤にこが、後に伝説のアイドルとなることを二人は知らない。

そして、胸の気球で空の散歩をしていた東條希は確かに見た。

重力と世界中から集まった悲しみの重さで、落下速度を増した嘆きの矢が飛行機に突き刺さる瞬間を。

矢ーん。

その一言だけを上空8000メートルくらいに残し、希は家に帰った。

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燃え上がる飛行機。このあと待ち受けるのは墜落という絶望のみである。
絵里はその身に宿したロシア魂で機体を包み込む炎を消し去ろうとしたが無理であった。絵里自身も炎に包まれる。エンチャントファイヤ。
真姫の医療知識により指先の火傷だけで済んだ絵里だったが、このままでは本当に墜落して学校が無くなってしまうと泣き出してしまった。

しょーがないわねー。

どこからともなく聞こえたその声が、アイマスクを装着して眠っていたことりの意識を覚醒させる。

この声の主を私は知っている。目の前に広がった光景に一瞬困惑したことりであったが、彼女がいるとわかるとすぐに二度目の眠りへと落ちていった。

世界のYAZAWA。世界のYAZAWA。

世界はYAZAWAで満ちている。

君の心にいつでもYAZAWA。

世界のYAZAWA。世界のYAZAWA。

穂乃果の目は治り海未は泣き止み凛はラーメン屋の行列に並び花陽は米を炊きながら米を食し希は久しぶり会えた親と食事をして絵里真姫ことりは無事戻ってこれた。

ありがとうYAZAWA。

センキューYAZAWA。

世界のYAZAWAはここにいる。



YAZAWAよ、永遠に。

    完

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