不良娘「夏の暑さと」女「海と嘘」 (63)
ザザ―…
ザザ―…
不良「うー みー は、ひろいー な、おおきー いー なー」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「」ゴクゴク
不良「つー きー はー のぼるー し、ひがしー ずー … あれ」
不良「うわ、 ……もうサイダー終わった」
不良「……もうちょい多いの買えばよかった」
不良「……」テクテク
ザザ―…
ザザ―…
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不良「……」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「……暑い」
不良「やっぱし海にいるからって涼しいわけじゃないんだよねー…」
不良「よいしょっ……と」スワリ
ザザ―…
ザザ―…
不良「あー …… あ……」
不良「サイダーもう一本買ってこようかな……」
不良「……」
不良「………」
不良「…………」ボー
女「あー!!」
不良「!?」ビクゥッ
女「……」
不良「な、 っ、なに」
女「あー!!」
不良「……」
女「……」
女「あ」
不良「もういい、もういいから。大声出すなって」
女「はい」
不良「……誰だお前」
女「同じクラスの者ですけれども」
不良「げっ……」
女「こんなところでなにしとるん」
不良「……いいだろ別に……私が何してようが」
女「今学校授業の時間だよ?」
不良「あー!うっさいうっさい。悪いけどそんなタチじゃないんだよほっといてくれ」
女「……」
不良「……ん?」
不良「おまっ!じゃあお前こそここで何やってんだよ!」
女「?」クルッ
不良「お前だよ!」
女「えっと、ついてきました」
不良「え?私に?ああ、注意する為に?」
女「いや面白そうだから」
不良「おもっ……おもしろそうだから、って」
女「なんで授業中に海なんかにいくんだろって」
不良「んっ……」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「ど、どうでもいいだろ。お前にゃ関係ない」
女「そう?」
不良「そうだよ……大体お前、私と話したこともねえだろ……」
女「同じクラスの者ですけれども」
不良「それはさっき聞いた」
女「まあ、嘘だけど」
不良「はっ!?」
女「……って言うのも嘘。」
不良「は、… はぁ???」
女「つまり本当ってこと」
不良「なんか変な喋り方する奴だな」
女「でも私は今本当って言ったけど、もし本当に嘘だったら?」
不良「んん??」
女「私はあなたと同じクラスであるという嘘という嘘ついたけど」
女「でもあなたと同じクラスであると言う嘘が本当であなたと同じクラスであるという嘘という嘘が本当は嘘だったら?」
不良「ままま、待ってくれ。頭が痛くなってきた」
女「だって……あなた全然授業にでてないでしょ?私がクラスメイトじゃなかったとしても簡単に騙されちゃうじゃん」
不良「……つまりお前は同じクラスじゃないのか?」
女「同じクラスの者ですけれども」
不良「……頼む。どっか行ってくれ」
女「……」
不良「……」
女「……」
女「……サイダーあるよ?」
不良「っ、ほんとか……!」
女「ほら」プラプラ
不良「って別に、……つられないからな」
女「」トコトコ
女「」スワリ
不良「お、おい、なに隣に座ってんだよ」
女「なんで?」プシュ
不良「なんで……って」
女「あなた私の事知ってる?」ゴクゴク
不良「知らないって。言ってんだろ」
女「じゃあいいじゃん」
不良「ええ?」
女「あなたも海を見に来ただけだし、私も海を見に来ただけだし、それで偶然二人共ここに座ったんだよ」
不良「……」
女「……」
不良「ってお前私についてきたって言ったじゃねえか!どこが偶然だよ!」
女「んふー」
不良「……嗚呼、なんか……変なのに絡まれた……」
女「」ゴクゴク
不良「……おい、それ」
女「なに?」
不良「くれよ」
女「なんで?」
不良「ええい!だからお前、さっき私に見せてきただろうが!!サイダー!!」
女「……サイダーがある、とは言ったけど、あげる、とは言ってない」
不良「」バシッ
女「あ」
不良「」グビグビグビ
女「……」
不良「……ぷはっ」
女「……きゃ。間接キス」
不良「うっせ」カエシ
ザザ―…
ザザ―…
不良「……なあ」
女「はいはい」
不良「……私はな、毎日……ではないけど、ここで一人でボーッとするのが日課なんだ」
女「はいはい」
不良「だから悪いけど邪魔しないでくれないか」
女「それはすまん……」
不良「おう、わかればいいんだ」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「いやどっか行けよ!!」
女「すまん、とは言ったけど、どっか行く、とは言ってn」
不良「だーっ!お前さっきからマジなんなんだよ!なにが目的で来た!!え!?」
女「海が見たくて」
不良「私についてきたんだろうが」
女「海が見たくて、あなたについてきた」
不良「授業サボってまで?」
女「それはあなたにも言えることでしょー」ゴクゴク
不良「いいんだよ私はいつものことなんだから。それともお前もサボリの常習犯なのか?」
女「いいや?」
不良「じゃあなんで……」
女「授業サボったのこれが初めてかなー」
不良「はっ!?お前、いいのかよそれで!」
女「なんで?」
不良「勉強とか……遅れるだろ」
女「あなたがそれを言うか」
不良「……私も今自分で言っててそう思った」
女「……」ゴクゴク
不良「とにかくもう授業に戻れよ、な?私みたいなのに構うことないんだってば」
女「あ、サイダーあとちょっと……よし、あなたにあげる」
不良「え?ああ……」
不良「」ゴクゴク
女「……あなたに興味があった」
不良「なに?」
女「学校とか勉強とか授業とか、縛られずにフラフラしているあなたに興味があった」
不良「そ、そうなのか?」
女「よく飲んでるサイダーがおいしそうだと思っていた」
不良「ああ……好物だからな」
女「……なんで海に来るの?」
不良「うん?いや別に……」
女「このクソ暑いなか」
不良「暑いのはいいだろ……暑いの強いんだよ。割とな」
女「サイダー飲んでるから?」
不良「それは関係ない……」
女「ねえ、なんで?」
不良「うーん……なんてーか……」
不良「海って見てると気持ちがいいからさ……なんか、眺めながらボーッとできるっていうかなんていうか……」
不良「こういう落ち着いた場所に私の心のよりどころがある気がして……」
女「……」
不良「ってなんでこんなことお前に話さないといけないんだよ!」
女「もっと話していいよ?」
不良「いいよ?じゃねえよ……」
女「あなたと海の話が聞きたたい」
不良「ほんとなんなんだお前……」
女「あ!」
不良「っ、おい急に大声出すな」
女「もう時間だ……」
不良「時間?」
女「帰らなきゃ」
不良「え?お、おう……」
女「じゃあね。あなたと話せてよかった」
女「」スタスタ
不良「……???」
不良「な、なんだったんだ……」
ザザ―…
ザザ―…
ザザ―…
ザザ―…
不良「うー みー は、ひろいー な、おおきー いー なー」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「つー きー はー のぼるー し、ひが …… 」
女「……お」
不良「うわっ……」
女「やっほ」
不良「なんだお前……」
女「ご機嫌だね」
不良「別に」
女「私の事覚えてる?」
不良「昨日の今日で忘れるわけネエだろうが」
女「それはありがたい」
不良「待ち伏せてたのか?厄介だな……」
女「ほらほら、サイダー」
不良「……」
女「今日は二人分買ってきたよ」
不良「余計なお世話だ」
女「そう?じゃいらないんだ」
不良「……よこせよ」
女「ふふん」
不良「はあ全く……なにが面白くてここに来るんだよ。私の邪魔するのが楽しいのか?」スワリ
女「海の気持ちよさとサボリの気持ちよさとあなたと会える気持ちよさをサイダーで一緒に飲み込んでいたい」
不良「なんだそりゃ……ほんとわかんないやつ……」ゴク
女「もし来なかったらどうしようかと思ってた」
不良「日課だっつったろ」
女「いいよね、ここ。私この景色が好き」
不良「景色?」
女「活発な空と、影がかかった砂浜と、海。防波堤の上」
女「ここを長く独り占めしてたなんてズルイ」
不良「そう言われてもな」
女「日課にしたくなるのもわかる」
不良「そうだな……、まあ景色がいいってのに異議はないが」
女「暑いのも心地いいくらいで……」
女「……」
不良「……」
女「」ゴクゴク
不良(ほんと妙な奴……言ってることもよくわかんねえし、一体なにがしたいんだか)
不良(クラスメイトらしいが……うーん、こんなやついたような、いないような……)
不良(それに……)
不良「……」
女「……」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「なあ、」
ミンミン ミーン……
不良「お前彼氏とかいんだろ、どうせ」
女「おん?」
不良「おん?って……」
女「何故そんなこと聞く」
不良「……別に……」
女「いないよ」
不良「あ、ふうん」
女「嘘だけど」
不良「っ、なんだよ」
女「って言うのも嘘」
不良「がっ!お前それやめろ!!ややこしいだろ!」
女「あなたは私のプライベートに興味があるのかーぁ」
不良「ねえよ。なんとなく言っただけだよ……」
女「なんで?」
不良「ん、なんか……髪綺麗だし」
不良「肌とか……白いよな……だからモテると思って」
女「おぉー」
不良「なあ、こんなとこにいたら焼けるぞ?髪も痛む」
女「あなたみたいにね」
不良「うっせ。だからもう来ない方がいいだろ」
女「えー?」
不良「お前のためを思って言ってんだぞ」
女「来るか来ないかは私が決めることでありまして……」
不良「……」
女「髪や肌に決定権はないのです」
不良「チッ……ああ、そうかよ……」
女「」ゴクゴク
不良「……もったいない」ボソッ
女「うん?」
不良「なんでもない。あー、にしても今日はまた一段と暑いな……」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「……場所を変えるか」
女「え?」
不良「」スタスタ
女「おー、どこ行くの?」
不良「別にお前はついてこなくてもいい」スタスタ
女「?」クルッ
不良「お前だよ!」
女「」トタトタ
不良「はあ……ついてくるよな、厄介だな……」
~
女「……なにここ」
不良「バス停」
女「バス乗るの?」
不良「乗らん。ほら、待つとこあるだろ?屋根付きの。日陰がほしかっただけだ」
女「でもバスきたらどうするの?あ、待ってる人いるー……って思われちゃうかもよ?」
不良「私は生まれてこのかたこのバス停にバスが止まっているのを見たことがない」
女「……へえ」
不良「はあ、大して涼しくはないが……まあ幾分マシだな」
不良「よっこらしょ、っと」スワリ
女「」スワリ
不良「隣に座るなよ……」
女「なんで?」
不良「暑苦しいだろうが……」
女「あ、すごい。ここからでも海が見えるね」
不良「まあな」
女「……ふぅー……」
ザザ―…
ザザ―…
女「でも言うほど涼しくもないけど」
不良「だから言ったろ。幾分、マシな程度なんだってば」
女「ねえー、こんな暑い外いるくらいだったら学校で真面目に授業受ける方がマシじゃないすかね」
不良「お前もな……」
女「そう思ったことないん?」
不良「うーん……まあな……どうだろう」
不良「でも暑いのって寒いのよりマシな気がすんだよな……なんか、サウナみたいな。痩せそう」
女「ふむ」
不良「辛かったらいつでも失せていいんだぞ?」
女「それはどうでしょーう」
不良「わからん奴だな……」
女「……」ゴクゴク
不良「……」
女「……あっつ――……」バサバサ
不良「………」
女「」バサバサ
不良「……おい」
女「ほい」
不良「その……スカートバサバサするのやめろよ」
女「え、なんで?」
不良「……品がねえだろうが」
女「あなたにそんなこと言われたくない」バサバサ
不良「うっせ。とにかく見苦しいからやめろ」
女「だって暑いんだもん」
不良「だからといって女子高生がそんなはしたないことするもんじゃない」
女「なにそれー、あなただって同じ女子高生でしょ?」
不良「私はいいんだよただの不良なんだから。でもお前は違うだろ」
女「何が違うの?」
不良「それは……」
不良「……」
女「それにここならきっと誰も見てないし」
女「あ、そうだ、いいこと思いついた」
女「脱いじゃえ」
不良「はっ!?何だお前何考えて……!!」
女「なにそんなに慌ててるの?」ヌギ
不良「ああ、靴……」
女「靴下もー、てーい」ヌギ
女「わー、きーもちいー」スアシ
不良「いいのかよそんなんで……」
女「いいじゃないの別にー。それに近くは海なんだから裸足でもおかしくないでしょーに」
不良「そういうもんか……?」
女「ふふん」パタパタ
不良「……」
女「」パタパタ
不良(なんか……こうやって素足見ると……やっぱ肌白くて……)ジー
女「ねえっ」
不良「んっ!? 、なんだ?」
女「あなたも脱いじゃえば?」
不良「え、私はいいよ……別に」
女「そんなこと言わず!きもちーよ?」ヌガシヌガシ
不良「だーっ待て!無理矢理脱がそうとするな脱ぐんだったら自分で脱ぐ!」
女「なら早くして?」
不良「なんで急かすんだよ……ほらこれでいいか」ポイッ
女「……焼けてるね」
不良「そりゃ長いこと海にいればな」
女「ねえ私と比べっこしてみよっか」
不良「え、楽しいか?それ」
女「楽しいよ。折角二人共素足だし。ほら」
不良「ん……ちけえよ」
女「近くないと比べられないでしょー、ほら足伸ばして」ピン
不良「……………」ピン
女「……足綺麗ね」
不良「なんだよ……お前ほどじゃねえよ」
女「え?」
不良「お前の方が肌白いんだからさ……」
女「肌が白いと良くって、焼けてたら駄目だなんて誰が決めたことでもないでしょ?」
不良「そうだけど……」
女「……」
不良「……」
女「いや、はや。こうして見るとやっぱ違うね」
不良「そうだな」
女「えい。絡ませちゃえ」
不良「うわっ、やめろよ、くすぐったいだろ」
女「ほれほれー、うふふ」
不良「あとお前!さっきからなんで手ェ繋いでんだ、ナチュラルに繋いでくんな離せ!」
女「あ、ごめん近かったから。無意識だった。すまん」
不良「おう、わかればいいんだ……」
女「……」
不良「……」
女「……」ギュ
不良「いや離せよ!!」
女「ただでさえ暑いのにこんなひっついて私達馬鹿みたいだね」
不良「ほんとだよ……手も足ももうやめろよ」
女「あー、でも……足絡ませるの楽しくない?」
不良「楽しくねーよ」
女「こんな可愛いJKと手繋ぎながら足遊びできるなんて一生ものの経験ですぞー」
不良「やかましいわ」
女「ほれ、親指アタック」
不良「はあ、ほんと何やってんだ私……」
女「……」
不良「……」
女「なんか、蛇の交尾みたいだね」
不良「こうっ……、何?」
女「誰も見てない場所で秘密の……みたいな」
不良「何言ってんだ……?」
女「なんでも。ただ思ったこと言っただけ」
不良「……? お前はほんと……わからない奴だな……」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「……暑いからいい加減離れろって」グイ
女「オーゥ、おしのけないで」
女「……あ、もうこんな時間」
不良「帰るのか?」
女「えーなに?もっと一緒にいたい?」
不良「言ってねえ」
女「ほんとはそんなに、帰りたくもないんだけどね」
不良「……あのなあ、そんなに時間を気にするくらいだったらわざわざここに来る必要もないだろ」
女「そんなことないよ?私はこの時間すごく大切」
不良「ふうん、あっそ……」
女「じゃあまた明日」
不良「は?」
女「うん?」
不良「明日も来る気か」
女「もちろん」
不良「……はあ……」
女「でも私知ってるよ?それがわかっててもあなたは海に来るって」
不良「そうかよ……」
女「じゃあね」
不良「ああ、またな。 ……って言っといてやるよ」
ザザ―…
ザザ―…
不良「うー みー は、ひろいー な、おおきー いー なー」
ミーン ミンミン ミーン……
女「つー きー はー のぼるー し、ひがしー ずー むー」
不良「うす」
女「おっす!」
不良「今日は?」
女「今日はアイス。梨味かグレープフルーツ味どっちがいい?」
不良「なんだその微妙なチョイスは……グレープフルーツだ」
女「ほい」
不良「ん、なんか溶けかかってるな……」
女「気にするな」
不良「ああそうかよ……」モグ
女「今日も海が綺麗ですね」パクパク
不良「そうだな……」スワリ
ザザ―…
ザザ―…
女「んまー」パクパク
不良「……」
女「」パクパク
不良「あんさ……」
女「なに?」
不良「お前、私に似てきたな」
女「ええ、そう?」
不良「肌も随分焼けたし、髪もボサボサだ」
女「あー、そうだねあれからずっとここに来てるもんね」
不良「お前がここに来るようになってから……えーと……一ヶ月くらいか?」
女「……もう、そんな経った?」モグモグ
不良「確かそのくらいだったはずだ」
女「ふむー、時の流れは早いですなー、もう夏終わっちゃうよー」
不良「………」
女「食べなよ、溶けてるよ?」
不良「ん、ああ、……」パク
女「」パクパク
不良「……なあ、お前は結局それで良かったのかよ」
女「なにが?」
不良「肌も、髪もさ、あとそれから学校も」
女「学校?」
不良「私がたまに学校に行ったときさ……聞いたんだ」
不良「お前、実は成績学年トップクラスだってな」
女「……」
不良「……本当かよ」
女「……」
女「そうだよ」
不良「やっぱり……」
女「嘘だけど」
不良「………」
女・不良「「って言うのも嘘」」
女「んあ」
不良「言うと思った……」
女「でも私の成績とかどうでもいいでしょう」
不良「どうでもよくない」
不良「私さ……お前と会ってしばらく経つけど、やっぱりお前はこんな場所にいちゃいけないと思うんだ」
女「なんで?」
不良「お前、勉強できるんだろ?私みたいにひねくれてなくて、もっと素直な人間のはずだ」
女「……」
不良「本当は海の近くでフラフラしてるような奴じゃないだろ」
女「……」
不良「だけど……私に興味もったのか知らないけど、こんなこと続けていくうちに、お前の肌も髪も変わっちまった」
女「……」
不良「私はそれがなんとなく嫌なんだよ……私の日課にお前を巻き込みたくなく、て」
不良「それで……」
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「……結局あなたは最後まで私を迎え入れてくれることはなかったね」
不良「……は?さい……ご?」
女「ねえ、そんなに私の事嫌い?」
不良「嫌い……」
女「……」
不良「き、きらいじゃ、ない。嫌いじゃねえ」
不良「確かに最初は変な奴だなって。厄介な奴だなあって思った……けど……」
女「……へえ、嘘じゃない?」
不良「嘘じゃねえ。本当だ」
不良「それより!さいご、最後ってなんだよ」
女「別に、大した話でもないけど」
不良「いいから」
女「……さっき もうそんなに経った? 、なんて言ったけど、全部嘘」
不良「……」
女「ほんとうは、本当はとてもよくわかってる。そうだよ、あなたに出会ってから今日がちょうど一ヶ月」
不良「……本当に?」
女「うん。だって毎日数えてた。今日、この日まで」
不良「数えてた……?なんで……」
女「……親の都合でさ……転校することになってるの。それは一ヶ月前から決まってたことなの」
不良「え……」
女「……ね?大した話じゃないでしょ?」
不良「と……遠いのか?」
女「そりゃあもう。ここからずっとずっと遠くだよ」
不良「そんな……」
女「……」
不良「……なんで言ってくれなかったんだ」
女「言う必要もないかと思って」
不良「……」
女「私はあなたのことをずっと前から知っていた」
不良「……」
女「私はね、ずっといつでも勉強ばかり。家でいつでもそんな感じ。だから肌も白くて……」
女「でもこの街が好きだった……家の窓から見える海がとても綺麗だったから」
不良「……」
女「この地を去る前に何か残したかった。ずっと家にばかりいる私はずっとそういうものとは無縁だったけど」
女「それでも私は一ヶ月後もこの海を思い出せるような何かが欲しかった」
不良「……」
女「そんな時……ずっと見てきた、防波堤の上を歩くあなたが……いつも不機嫌そうにサイダーを飲むあなたが……」
不良「……」
女「……」
不良「……だから、授業や勉強を放り出してまで私のところに……」
女「やっぱり迷惑だったかな」
不良「そんなこと……」
女「ねえ、」
女「ありがとうね。私、あなたといられてやっぱり楽しかった」
不良「……」
女「海は綺麗だったし、サイダーは美味しかったし。あなたは素敵な人だった」
女「今まで日課の邪魔して、ごめんね」
不良「……」
女「……」
不良「……こんな私でも」
女「……?」
不良「こんな私でも、お前の思い出になれたのか」
女「どうかな。でも、変に思うかもしれないけど、私あなたの事好きだったんだよ?」
不良「えっ?」
女「ふふ、いい顔」
不良「それって……どういう」
女「なんでもないよ。気にしないで……私……」
不良「……」
女「……そんなあなたといられただけで、私には十分の思い出」
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「……」
不良「………」
不良「…………!」
不良「……………………!!!」
グイッ
女「!」
チュ…
ミーン ミンミン ミーン……
ミーン ミンミン ミーン……
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「……きゃ。大胆」
不良「……私」
女「……」
不良「……どうかしてるって思うか?」
女「いいえ?」
不良「好きって……こういうことで、いいんだよな」
女「うん」
不良「……」
女「……」
不良「な……梨の味がした」
女「ふふ、私はグレープフルーツの味がした」
不良「……」
女「……」
不良「………」
女「…………」
チュ…
不良「んっ……」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「あ……あの、さ」
女「うん」
不良「こんなこと言うの、ガラじゃないけど」
女「……」
不良「元気で…… な ………」
女「……」
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「嘘だけど」
不良「えっ」
ザザ―…
ザザ―…
不良「うっ……うそ?」
女「うん」
不良「ほんとに?」
女「ほんと」
不良「転校……しないのか?」
女「しないしない」
不良「……なっ……」
不良「……」
女「……」
不良「なんだよー……びっくりさせんなよー……!はぁぁー……」ガク
女「ふふふ、どうだ。参ったか」
不良「じゃあ明日からも、また会えるんだな」
女「……そういうこと」
不良「よかった、あぁ……なんか、びっくりして、」
不良「深く前のめりになるような感覚がして……、それで」
女「情熱的なキスを」
不良「い、嫌だったか?」
女「すてきでした」
不良「はは、なんか……照れくさいな、やっぱり」
女「そうだね、ふふ」
不良「な、誰にも秘密、な。もちろんそうだろ?」
女「うーん、私はどっちでもいいけど、あー、でも」
女「思い出、として、しまっておくことは、確実に、できたから」
不良「……」
女「ありがと」
チュ
不良「んっ……」
女「……」
不良「……」
女「……私もう行くね」
不良「え?」
女「……」
不良「あ。ああ、そうか。今日は早いな」
女「……うん」
不良「……」
女「……」
不良「また明日、な」
女「そうだね。」
女「また、明日」
不良「……」
女「……」
不良「……」
女「………」
不良「……」
女「… … … … … …」
不良(まるでなんてことのない別れ方だった。いつものように、手をふって)
不良(二人共、また明日、なんて)
不良(活発な空と、影がかかった砂浜と、海。防波堤の上)
不良(瞬きするたび離れていく彼女の背中を見送っていると、)
不良(今までの出来事が、彼女と出会ってからの時間が、ほんの一瞬の、わずかなひと時だったように感じた)
不良(でも私はなにも言わなかった。呼び止めることもしなかった)
不良(そしてあいつも。なんてことないようにこの場を離れていったんだ)
不良(まるで二人、これまでの一日を繰り返すように光景に馴染んではいたけれど)
不良(それはきっと、多分、また明日も会えるから、だったんだ)
不良(『嘘だけど』 と)
不良(彼女はキスの後、そう言っていた)
ザザ―…
ザザ―…
不良「うー みー は、ひろいー な、おおきー いー なー」
ミーン ミンミン ミーン……
不良「」ゴクゴク
不良「つー きー はー のぼるー し、ひがしー ずー むー」
不良「 …… うー みー は、おおなー み、あおいー うー みー」
不良「ゆー れー てー どこまー で、つづくー やー … …」
不良「ら ………」
不良「……」
ザザ―…
ザザ―…
不良「……サイダー終わった」
不良「……」
不良「………」
不良「……………………」
ミーン ミンミン ミーン……
ミーン ミンミン ミーン……
不良(まるで夏の暑さの蜃気楼のような、彼女の嘘を探し続けて)
不良(私は今日もまた、海に来る)
おわり
超季節はずれでしたがありがとうございました
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