諸星きらり「仮面ライダー?」 (29)

・CG事務所です
・オリジナルライダーです
・初投稿につき、諸々の不手際があります。お含みおきください。

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欲望渦巻く芸能界に燦然と輝く白亜の城、346プロダクション。
その中でも若手でありながら、最近めきめきと成長し、頭角を現している「シンデレラプロジェクト」。
ガラスの靴を足に、きらめく希望を胸に活躍する彼女たちには、しかしその成長の早さ故に敵も多い。
たいていの刺客や嫌がらせは、シンデレラプロジェクトの番人たる強面プロデューサーや、
『緑の悪魔』の通称を持つある事務員の手によってシャットダウンされてきたが、
最近、これまでのものとは違う種類の「悪意」の噂が、どこからともなく漂ってきた。

曰く、競合プロダクションが、新興生化学メーカーと手を組んでいる。
曰く、そのプロジェクトは、アイドルを輝かせる事より、相手のアイドルの輝きをくすませることを目的としている。
曰く、その名は、「バビロンプロジェクト」。
神に挑み、しかして届かなかった石の塔が、美しい城の少女たちに牙を剥く。

みりあ「今日のお仕事おーわりっ! 楽しかったねー!」
莉嘉「そだねー! はやく事務所に帰って晩御飯食べにいこーよ!」

某テレビ局の駐車場、人目につかない場所で三人の少女が乗用車を前に談笑していた。
シンデレラプロジェクトのユニットのひとつ、凸レーションだ。
リーダーのきらりは、はしゃぐ二人をたしなめながら、プロデューサーを待っている。

 
武内P「お待たせしてしまい、すいませんでした。先方への挨拶があったもので…」
きらり「Pちゃんお帰り!ぜんぜん待ってないから大丈夫☆ じゃー事務所にれっつごー、だにぃ!」

きらりはみりあと莉嘉を後部座席に乗せると、自分は助手席に乗り込んだ。
エンジンの心地良い唸りに一抹の惜しさを感じながら、カーラジオを点ける。

みりあ「あ!ラブライカだ!」
莉嘉「最近大人気だよね!今度ドラマにもでるんだって!」

流れ出したバラードと姦しいおしゃべりを乗せて、車は夜の首都高速を走っていく。


きらり「……寝たみたいだにぃ。今日の収録、激しかったから」
武内P「そうですね。事務所まではしばらくありますし、寝かせておいてあげましょう」

いつの間にか静かになった後部座席の様子をバックミラーで確認し、きらりは微笑んだ。
そのまま目線を横に向けたきらりは、プロデューサーの顔の強張りに首を傾げる。

きらり「Pちゃん、どうしたの? お腹いたい?」
武内P「諸星さん、あまり時間がありません。至急ちひろさんに電話をしてください」


関節が白く透けるほどに強くハンドルを握り締め、汗を掻きながらそう言った彼の顔に、数秒前までの
笑みはない。ただ緊張と、恐怖だけがそこにあった。
尋常ならざるその雰囲気に返す言葉もなく、きらりはポシェットからスマホを取り出し、発信ボタンを押した。

武内P「諸星さん!」
きらり「にょわっ!」

車のすぐそばのアスファルトから、爆音とともに火柱が噴き出した。
いくつも連鎖していく火柱を、プロデューサーは必死のハンドル捌きで避けていくものの、
激しく左右に揺れる後部座席の2人は目を覚ましてしまう。

みりあ「きゃっ!どうしたの!?」
莉嘉「事故っちゃうよ!車とめてよ!」
きらり「二人とも、頭を守るにぃ!危ないから!」

蛇行運転を続けた時間は、数秒にも、数時間のようにも、きらりには感じられた。
みりあと莉嘉の混乱する姿に引きずられないよう、必死に自分をコントロールする。

きらり「Pちゃんが今がんばってるから、凸レーションも頑張るにぃ!」

ユニット名を聞いた二人が立ち直る。自分は無力な少女であるが、同時にアイドルでもある事を
思い出す。そして、この車のハンドルを握るのが、誰であったかも。

しかし、車を追うように次々と立ち上る火柱が、ついに後部タイヤを捉えた。
蛇行運転で磨耗したタイヤは瞬時に破裂し、ハンドリングと無関係に路面を滑る。
車はそのままガードレールを突き破り、路肩の自動販売機に衝突して止まった。

きらり「莉嘉ちゃん!みりあちゃん!大丈夫!?」
莉嘉「私は大丈夫だけど、みりあちゃんが!」

痛む肩を堪えて振り返ると、莉嘉が必死の形相でぐったりしているみりあを揺さぶっている。
みりあの鼻梁を血が伝う。そういえばこの間、鼻をアライグマに引っかかれかけた、って話をしたっけ、と
どこか遠くきらりは思った。

きらり「Pちゃん、みりあちゃんが! ……Pちゃん?」

きらり「莉嘉ちゃん!みりあちゃん!大丈夫!?」
莉嘉「私は大丈夫だけど、みりあちゃんが!」

痛む肩を堪えて振り返ると、莉嘉が必死の形相でぐったりしているみりあを揺さぶっている。
みりあの鼻梁を血が伝う。そういえばこの間、鼻をアライグマに引っかかれかけた、って話をしたっけ、と
どこか遠くきらりは思った。

きらり「Pちゃん、みりあちゃんが! ……Pちゃん?」

運転席に人はない。ただ、車からゆっくりと離れるプロデューサーが見えた。

きらり「Pちゃん!どこ行くにぃ!みりあちゃんが怪我して……血が……!」
武内P「諸星さん! 申し訳ありません。2人を連れて逃げてください!」

きらりは気づく。プロデューサーの向かう先に人影がある。
いや、人ではない。ならばあれは……

きらり「あれは……怪物?」

腕は2本、足も2本、しかし全くといって良いほど、きらりは親近感を感じない。
同じヒトではないのだと、本能が警告する。
アスファルトに立ち上る高温の陽炎の向こう側に、異形が立っていた。

きらり「……逃げきゃ!」

歪んで開かないドアを、何回か蹴りつけてこじ開けた。車の反対側に周り、莉嘉と一緒に
みりあを運び出した。

莉嘉「きらりちゃん、Pくんは!?」
きらり「Pちゃんは大丈夫だにぃ!  ……きっと……!」

爆音と、何かが焦げる臭い。
異形と対峙するプロデューサーの周囲を火柱が囲む。きらりと莉嘉は、逃げることも忘れて、
その常識外れな景色を眺める。
逃げ場がないプロデューサー。窮地に陥った相手を前に、その異形は、きっと笑みを浮かべていたことだろう。

ちひろ「プロデューサーさーん!! ……このぉっ!!」

けたたましいタイヤの悲鳴とともに、異形が真横に吹き飛ばされる。
バイクにまたがっていたのは、鮮やかな緑のライダースジャケットに身を包んだ女性。
ヘルメットを取ると、その特徴的な三つ編みが背に流れる。

いつの間にか火柱は消え、プロデューサーは安堵の息をつく。

きらり「ちひろちゃん!」

バイクを立てかけ、アタッシェケース片手にプロデューサーに駆け寄るちひろ。しかしその足元から火の粉が立ち昇ったのを、
プロデューサーは見逃さなかった。

武内P「諸星さん!彼女を頼みます!」

大きく踏み込んだプロデューサーは、向かってくるちひろの勢いそのままに彼女の腰をホールドすると、その場で大きく回転し、
きらりの方へ投げ飛ばした。

ちひろ「きゃああああああ!」
きらり「にょわあああああ!」

とっさにすっ飛んでくるちひろを受け止めきれたのは、全くの幸運と言ってよかった。
ちひろを抱き止めたまま、きらりは悲鳴を上げる。

武内P「諸星さん!彼女を頼みます!」

大きく踏み込んだプロデューサーは、向かってくるちひろの勢いそのままに彼女の腰をホールドすると、その場で大きく回転し、
きらりの方へ投げ飛ばした。

ちひろ「きゃああああああ!」
きらり「にょわあああああ!」

とっさにすっ飛んでくるちひろを受け止めきれたのは、全くの幸運と言ってよかった。
ちひろを抱き止めたまま、きらりは悲鳴を上げる。

きらり「Pちゃん!Pちゃん!」

火柱が消える。スーツが焼け焦げ、倒れ付すプロデューサーの姿に、きらりは我を忘れて駆け寄ろうとする。
プロデューサーの傍には、いつの間にか異形が佇んでいた。

ちひろ「駄目です、きらりちゃん!あなたではどうしようもないの!」
きらり「だって、Pちゃんが、Pちゃんが!」
莉嘉「Pくん、死んじゃうの…?」

きらり「Pちゃん!Pちゃん!」

火柱が消える。スーツが焼け焦げ、倒れ付すプロデューサーの姿に、きらりは我を忘れて駆け寄ろうとする。
プロデューサーの傍には、いつの間にか異形が佇んでいた。

ちひろ「駄目です、きらりちゃん!あなたではどうしようもないの!」
きらり「だって、Pちゃんが、Pちゃんが!」
莉嘉「Pくん、死んじゃうの…?」

目に涙を一杯にためた莉嘉を見て、ちひろは何かを決意したように、きらりに言った。

ちひろ「きらりちゃん、貴女に頼みたいことがあるの」

きらりは、ちひろの真正面からのまなざしに圧され、黙りこくる。

ちひろ「これを使ってほしいの」
きらり「……何、これ……?」

アタッシェケースの中に鎮座していたのは、ゴツゴツしたガジェットがあちこちに配されている、

きらり「ベルト……?」
ちひろ「私たちはこれを、『アッシュドライバー』と呼んでいるわ」

ちひろ「もっと詳しい説明をしたいけど、それは後回し。私の言うとおりにこのドライバーをつけて」

ケースから取り出したベルトを、きらりの腰に宛がう。
ベルトの両端部分が自動できらりの腰周りにアジャストされ、背部で連結される。

ちひろ「プロデューサー専用にチューンされてるけど、きらりちゃんなら適合する、たぶん」

ちひろ「きらりちゃんなら、アイツに勝てるから、きっと」

その「アイツ」は、倒れ付すプロデューサーから離れ、こちらへと歩いてくる。
急ぐわけでもなく、ただ淡々と、最早千切るだけの雑草を見るようなまなざしが、きらりを貫く。

きらり「……むぇ」

無理、と。きらりは言いかけ、首を振ろうとしたその時。

みりあ「……あれ?きらりちゃん?」
莉嘉「みりあちゃん!みりあちゃん! ねえ、きらりちゃん、みりあちゃんが起きたよ!」

きらり「……莉嘉ちゃん、みりあちゃん、ちょ~っとだけ、待っててくれゆ?」
莉嘉「……きらりちゃん?」

ちひろ「きらりちゃん、操作方法はね…」
きらり「ううん、大丈夫。なんとな~く、わかるから」

ベルトのバックル部分を引き起こし、右腰部分に装備されていた星型のチップを差し込む。

<Ash the opening act>

機械音声がベルトから発せられる。きらりは拳を握り締め、異形にたたき付けるように言う。

きらり「……ちょ~っとだけ、痛いゆ? "変身"」

ベルト上部のボタンを押すと同時、きらりの全身が光り輝く粒子に包まれた。

<First tune "Cinderella">

みりあ「綺麗……」
莉嘉「何、これ……」

光り輝く粒子の奔流が、きらりの形に収束していく。夜気に粒子が散逸した後、そこに立っていたのは。

ちひろ「私達は、あの姿をこう呼んでいる」

ちひろきらり「仮面ライダーアッシュ」

ライダー「いっくよぉ~!」

全身を包む純白のスーツは、体の要所を赤とオレンジのプロテクターに守られている。
頭部に輝く真紅の複眼が、夜を引き裂く速度で異形に飛びかかった。

ライダー「どっりゃぁ~!」

踏み込みと同時に放たれるアッパーカットが、異形を宙に打ち上げる。

ちひろ「きらりちゃん、今よ!」

ライダー「OK!」

左腰にマウントされたカードケースからカードを取り出す。
バックルにカードをかざすと、カードは虹色の粒子になってライダーの右足に纏われた。

ライダー「これでトドメだにぃ!」

重力に引かれて落ちる異形の真下に走り込むライダー。

<Final tune; Super Rage!>

ライダー「ライダー、キーック!」

振り抜かれるハイキックの軌道に光が散り、異形はその場で爆散した。

爆炎を背後に、ライダーはゆっくりとチップを引き抜いた。
散逸する粒子と共に、きらりは踏み出す。

みりあ「きらりちゃん、すっごーい!強かったね!」
莉嘉「ワイルドって感じー!」

きらり「2人とも、だいじょーぶ?」

微笑んだきらりは、ちひろに向き直る。

きらり「Pちゃんを、よろしくにぃ……」

その言葉を最後に倒れ込むきらりを、なんとか抱きとめたちひろ。

ちひろ「きらりちゃん……。やっぱりプロデューサー用のチューニングは負担が……」

とにかく、事務所に連絡しないと。と呟き、ちひろは電話を取り出す。
倒れるきらりに駆け寄る2人をなだめながら電話するちひろには、
遠いの向こう、一際高いビルから見下ろす影に気づけなかった。

???「ふぅん……新しいシステムねぇ。わかるわ」

============To the next tune!============






以上です。お目汚し失礼いたしました。

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