【ミリマス】「天空橋朋花の独白」 (16)
「会場を埋め尽くす子豚ちゃんたちの姿……うふふっ、壮観ですね~♪私の生誕を祝うけなげな子豚ちゃん達のために、特別なご褒美として……。私はこれからも聖母として、君臨し続けることを誓いますよ~♪」
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私は、平日だというのに集まってくれた子豚ちゃんの声援にそう応えます。
会場から「朋花様!」「朋花様!」との年齢、性別、人種、……いろんなものが違っている子豚ちゃんたちの一つになって呼び声を聞きます。
こんなにたくさんいるのだから当然なんでしょうけれど一人一人、私に求めているものは違います。
ある人は私を、「憧れの存在、目指すべきところ」と言ってくれました。
ある人は私を、「この世に舞い降りた女神、あなたに尽くすことが私の幸せ」と言ってくれました。
ある人は私を、「亡くなった孫にそっくり、あなたが頑張っているとまるで孫に会えるようだ」と言ってくれました。
どれも正解です。
そのどれもが『私』であり、『聖母』であり、『天空橋朋花』です。
あぁ、だから。
あなたたちの夢も、希望も、欲望も、願いも全て私に寄越しなさい。
そしてその代わりに、あなたたちには『喜びと幸せ』を与えてましょう。
あなたたちが望み続ける限り、私は君臨し続けましょう。
あなたたちが必要とし続ける限り、私もやはり君臨し続けましょう。
別に誰に決められたことではありません。
私が決めたことです。
ただ必要と思っただけなんです。
皆を等しく愛し、労わるそんな人が。
苦しんでいる人たちを、悩んでいる人たちを支える柱が。
この昨日までの常識が明日に変わってしまっている混沌とした世界に、ただ一つ絶対に折れない柱が。
他の誰かでもよかったんでしょうけれども、でもその誰かを待っている間に、たくさんの人が苦しんで、悩んで、傷つくのなら、私がその柱になる、と。
そして、運命に導かれるように教会でプロデューサーさんに出会い、『聖母』はアイドルという形でこの世に降り立ちました。
歌やダンス、トーク。
形式は何だって構いません。
それであなたが幸せを、喜びを、癒しを感じてくれるなら。
ただもし望めるなら。
幸せを、喜びを、癒しを感じた時はそれを隠さないで。
あなたの幸せはあなたの幸せです。
そして、あなたの幸せは私の幸せでもあるんですから。
幸せの形は数あれど、想いの大きさはみな等しいと思っていました。
そこに優劣などはなく、どれも全て等しく尊いものなのだと。
でも最近、それが違うということに。
子豚ちゃんたちから貰う「良かったです」よりも、プロデューサーさんから貰う「良かったぞ」の言葉に気持ちが躍ります。
子豚ちゃんたちから貰う「一生朋花様のファンです」よりも、プロデューサーさんから貰う「俺は朋花のプロデューサーだからな」という言葉に胸が熱くなります。
「可愛い」と子豚ちゃんたちから聞かないその言葉を言われると、顔が赤くなって胸が高鳴ります。
聖母としては致命的ですね。
求めるみんなの柱になると言った私が、別の誰かに頼ってるだなんて。
一度意識してしまったら、それはもう止まらなくて。
皆に等しくなんて、出来なくて。
子豚ちゃんたちとの間に、気づけば差ができていて。
プロデューサーさんに褒められたい、プロデューサーさんに喜んでもらいたい。
そう願うようになっていて。
『天空橋朋花』は『聖母』だけれども、『女の子』でもあったようで。
どちらを取るべきかを悩んで、悩んで悩みぬいて。
私が選んだのは、『聖母』のほうでした。
あの人の周りには、何人も私と同じ想いを抱えた人がいる。
子豚ちゃんたちには『私』じゃないとダメです。
けれども、あの人にとって『私』じゃないといけない理由が、私には見つけられませんでした。
選んだということは、選ばなかったものがあるということで。
二つに一つ、二つともだなんて欲張りなことはできませんでした。
子豚ちゃんたちに誓ったのは、それを皆に宣誓したかったんです。
私は『聖母』として生きていきますという、と。
私はこれからも歩みを止めません。日本だけに留まらず、世界でも迷える子豚ちゃんたちのために、私は君臨し続けます。
だからプロデューサーさん?
もしあなたが私を手に入れたいと願ったとして、私はあなたを歓迎しません。
世界もあなたを歓迎しないでしょう。
それでも。
それでも、あなたが私のことを手に入れたいと思うなら、あなたに仇なす者をなぎ払ってそれらに全部私を抱きしめにきてください。
そして、私を堕天させてみてください。
……まぁ、私にそんな価値があるかは定かではありませんが。
だから今はライブ終了後に、あなたがどんな花を「捧げて」くれるのかを楽しみにしていましょう。
あなたが花を贈るのは『聖母』にか、……それとも。
朋花ちゃん、お誕生日おめでとう。
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