八幡「俺は選択肢を間違えたのか?」 (51)

俺ガイルで胸糞、NTR系 色々改変もあり


葉山「それは一つの選択肢だったようだな」

ふと、葉山の言葉が頭をよぎる

葉山「おそらく、間違ってはいない選択肢だったと思うよ」


その時の葉山はどこか誇らしげに言ってたなそういえば…しかし後になって


葉山「あの時の選択肢は間違いだったようだね」


葉山はどこか勝ち誇ったようにそう言った。俺が…川崎沙希と別れた後に…



季節は夏…受験もそろそろ本格的に始まる季節と言えるか?
バレンタインの後、俺達の関係は特に進展がなかった…
この俺達というのは、奉仕部の面子での関係のことだ。


雪乃「比企谷くん、おはよう」

結衣「やっはろー、ヒッキー!」

季節も新学期がスタートして、俺達が3年になってもあいつらと会えばそんな普通の挨拶が返ってきていた。

八幡「おう、おはよう」

二人の気持ち…特に由比ヶ浜の気持ちは俺でもよくわかってた
これは中学の頃、アホな勘違いで黒板に「ナルシスト谷かっけ~!」
などと書かれてたあれとはわけが違う。(実際は書かれ方が違うと思うけどな)

由比ヶ浜結衣は俺に恋をしている…これはいつしか確信に変わっていた。
そういえば、去年からそう思える事柄はかなり多くあったな…
そんな由比ヶ浜のことを…俺もいつしか好きになってた…今はそう確信できる。

三浦優美子に認められる程の美貌、アホだけど可愛いと言える言動、それから空気も読める
さらに俺のことが好きといステータスまでついてくるなら、嫌いになるわけなどない…


しかし、それと同じくらいもう一人のことも気になっていた。


雪ノ下雪乃…学校一の天才且つ、由比ヶ浜と同等もしくはそれ以上の美貌を持っている。

唯一スタイルだけはあれだが…いや華奢で美しいんだが胸が…由比ヶ浜とは大違いだ…。
そんな学校一の秀才も同じ奉仕部で…俺のことが好きかも?という出来事も何度かあった。

奉仕部は俺と由比ヶ浜、雪ノ下の3人での微妙な関係で成り立っていた…
そして、このまま友達のような関係で卒業しようという答えになりかけていたのだ。

八幡「……」

しかし、俺は…少なくとも俺は3人でこのまま終えることに不満を持っていた。
3年になってから…少しずつそういう感情が芽生え始めていた…


葉山「あと1年もすれば卒業か…」

三浦「うん、まあね…でもさ、来年もさ」

葉山「ん?」

三浦「みんなでこうやって逢えたらって思うし」

戸部「あ~それあるじゃん?」

海老名「うんうん、だよね~」

結衣「あたしも隼人くんや優美子達とは、こうやって逢いたいかな~」


隼人くん…ね。
教室の端から聞こえてくる由比ヶ浜たちの声
前まではそこまで気にしてなかったが…葉山を名前呼びか
最近は気になることが多くなってたか…

結衣「でもさ、隼人くんはさ…」

葉山「なんだい、結衣?」

また、名前呼び…葉山まで…なんでこんな気になるのか、嫉妬か?


三浦「まあそういうこともあんじゃない?」

確か噂では…三浦は葉山を諦めたらしい、振られたようだ。
まあそれでも葉山グループから離れないあーしさんはさすがというか

八幡「ということは、葉山は完全にフリーか…」


いや、前から葉山はフリーだけどな…しかしあーしさんを振ってからも
特に誰かと付き合うとかそういうことはないな


川崎「ひ、比企谷…」

八幡「ん?…川崎か」

川崎「い、今さ…その…暇?」

八幡「川崎…俺はいつでも暇だけど」

川崎「じゃあさ、ちょっといいかな?」

これが…俺と川崎が付き合うきっかけだった。

川崎からの急な告白…正直驚いたな…

八幡「…わかった」


川崎「え?ホントにいいの?」

八幡「…ああ」

川崎「よかった…断られると思ったから」

八幡「なんでそう思ったんだ?」

川崎「いやそれは…わかんないけど、比企谷はあんまりそういうの興味ないのかなってさ」


当たりだ…俺は恋愛になんて興味はない…いや実際はあったんだけどな
中学のころひどく失望して…封印してたっていうのが正しい
それが最近になって少しずつ紐解かれた…それが真相だ。


川崎「じゃあさ…今度空いてる?どこか行かない?」

八幡「そうだな」


俺は自分の選択肢を恥じるべきだった…なぜ承諾したのか…

川崎「比企谷…あれいいと思わない?」

八幡「…ああ、いいんじゃね?」


川崎「比企谷、これは…その、どう思う?」

八幡「ああ…」


川崎とのその後のいくつかのデートは…思えば失敗ばかりだった
当たり前だ、恋人も作ったことのない俺がうまくできるはずもない…
奉仕部の関係…もう少し進みたいと思う俺と関係を壊したくないと思う俺
そういう葛藤から逃れたいと思う俺も心の中にはいた。


川崎の告白の時…その逃れたいと思う俺が少しだけ出てきたんだな
だから一瞬の気の緩みみたいなものだったから…川崎とのその後の
関係もうまく行かないのは必然だった…


そして…別れた。けっこう長く続いた方だとは思う…でもキスすらしない関係だったな


葉山「君の選択は間違いだったね」


あいつはそう言ったんだ、夏になって俺と川崎が別れてから…

葉山「どっちから別れようって言ったんだい?」

八幡「俺」

葉山「そうか」

八幡「まあ、あいつもすぐにうなづいたけどな」

葉山「そうだったか、残念だね」

八幡「そうでもねぇよ、俺みたいな奴と付き合っても仕方ないだろ」

葉山「そうかな?」

八幡「俺といても楽しくないだろうしな」

葉山はやれやれといった感じか、そんな表情だ。


葉山「心が彼女に向いてなかったんじゃないか?」

八幡「……」

図星をつかれた…川崎もそれは重々気づいてただろう

葉山「君たちが付き合ってから…周りはどんな感じだった?」

八幡「どんなって…別に」

葉山「奉仕部も変わらなかったかい?」


八幡「雪ノ下たちは多少驚いてたかな、まあそれだけだよ」


葉山「そうか…君にはそれくらいしか映ってなかったか」


葉山の言葉の意味を理解できなかった…


葉山「君は知らないところで色々傷つけていたんだよ」

八幡「…」

葉山「結衣とか雪ノ下さんもかな?」

八幡「…そんなことは…それに、もう別れたしな…」

俺はなんとなく、今はフリーであることを強調した。
あいつらを傷つけたとは思いたくなかった

葉山「君はいま浦島太郎状態かもな」


どういうことだ…?浦島太郎状態…?この時の俺はまだ何も知らなかったんだ

川崎と別れたという噂は意外にも周囲での話題になっていたようだ。
受験期の鬱屈とした状況としてはいいネタなんだろう

「そういえば、川崎さんだっけ?彼氏と別れたって」

「あの川崎さん?へぇ~」


案外3年になってから川崎は周りに知れ渡ってるなと思った。
一匹狼だけど美人だからな、スタイルだって由比ヶ浜と双璧を成す
俺達3年のエースだ。エースってなんだ?


川崎「……」

八幡「……」チラ


川崎も噂に対しては敏感になってそうだ…どうしようか。
もう彼女ではない川崎に声かけるのも変だな。


結衣「やっはろ~」

八幡「由比ヶ浜…」

結衣「あはは、ヒッキー元気ない感じ?」

八幡「…まあな」


由比ヶ浜の声はあんまり変わらないか…少し安心する俺がいる。
由比ヶ浜の耳にも当然川崎と別れたという噂は来てるはず。
かなり恋愛に対して敏感になってきた俺は…その辺りが気になった。
由比ヶ浜はどう思っているのか。

結衣「あのさ、ヒッキー…」

八幡「なんだ?」

結衣「…ううん、なんでもないよ」


由比ヶ浜は自慢の空気読みスキルを発揮したのか
出かかっていた言葉を濁した。
俺に対してはあんまり使わなくてもいいような気がするが
そんな薄い関係でもないだろ。


結衣「あ、あたし向こうに行くね」

八幡「おう…あ、由比ヶ浜」

結衣「なに?」

八幡「その…今日の放課後…時間あるか?」

結衣「今日…?ごめん、今日は…」

八幡「用事か?」

結衣「うん、まあね。ごめん、奉仕部は今日は休むかも」

八幡「そうか…わかった」


俺はなんでこんな誘いをしたんだ?自分が嫌になった、デートの誘いか?
川崎と別れた後で、フリーということを強調したかったのか…
俺は川崎を踏み台にして…由比ヶ浜や雪ノ下と付き合った時の予行演習をしてたのか?

葉山「結衣、おはよう」

結衣「隼人くん、やっはろー」


…由比ヶ浜は三浦達のグループと合流して行った。なんだろうな
この感じは…


川崎「……」


八幡「……」

川崎がこっちを見てたかな…やっぱり不誠実だったかもな…
こういう場合、謝った方がいいのか?いや、自意識過剰か


葉山「…迷走してるな、彼は」

結衣「隼人くん?なんか言った?」

葉山「いや、なんでもないさ」


川崎よりも気になってたのは…葉山と由比ヶ浜の距離だ…なんか
今までよりも圧倒的に近くなってるような、なんだ?

放課後、俺は一人で奉仕部の部室へ足を運んだ。

ガラガラ

雪乃「こんにちは、比企谷くん」

八幡「おう」

雪乃「確か、今日は由比ヶ浜さんは来ないのでしょう?」

もう連絡があったのか?俺が言う必要なくて助かるが


八幡「みたいだな」

俺は心のモヤモヤを吹き飛ばすように言葉にしていつもの椅子に座りこんだ
ちょっと前の俺ではありえないことだな…こんなモヤモヤするなんて
いや、中学の時の俺はわりとこんな感じだったか?
折本とのメールで一喜一憂してたり…もしかして相手も好きなんじゃないかとか考えたり


雪乃「お茶は飲むかしら?」

八幡「悪い、もらえるか?」

雪乃「わかったわ」


八幡「いつも淹れてもらって悪いな」

雪乃「これくらい気にしないで」

八幡「おう…わかった」


雪乃「…なんだか、あなた雰囲気が変わったわね」

八幡「そうか?」

雪乃「川崎さんと付き合ったからかしら?」

八幡「もう別れたけどな」

その言葉を口にして、少し後悔の念が出てくる…別れたのは早まった行動だったかもしれない。
くそ…嫌な感情だ…川崎のことがまだ好きだからと思いたいが…多分別のところにある。
それは由比ヶ浜への踏み台ということもあるけど…もう一つある。


雪乃「そうね、別れたのよね。原因はなんだったの?」

八幡「大体想像つくと思うが、俺と付き合ってもうまく行かないだろ」

雪乃「そうかしら?」

八幡「…え?」

雪乃「い、いえ…うまく行かないというのは、あなたがデートに慣れてないということ?」

八幡「ま、そんな感じだ。女子を楽しませるスキルなんかない」

雪乃「彼女がそんなことを気にするとは思えないけど」

雪ノ下の言う通りだろう、川崎はあまりそういうことを
気にしない。
これでも何か月かは続いたんだから、それは実感できていた。
俺も楽しませるのは無理でも、一色と行った場所に連れて行くのは
できたしな。卓球とかもしたし、あいつそういえば強かったね。


八幡「…俺が川崎に向いてないって、向こうが気づいてたんだろ」

雪乃「どういうことかしら?」

八幡「いや…なんでもない」

雪乃「……?」


踏み台にした、お付き合いの参考文献として利用していた。
そんな俺のゲスい思惑を川崎なら読み取れるだろう。
あいつは何気に賢いしな、俺なんかよりずっと。


雪乃「まあいいわ、結局別れることになったのはあなたが原因なのね?」

八幡「ああ、それは間違いない」

雪乃「おそらく彼女は深く傷ついてるわよ」

八幡「……」

傷ついてるか…でも俺には何もできない。
俺自身は川崎のことを本当に愛してはなかったから…
今更フォローなんてできるわけがないだろ?


雪乃「フォローとかはしないの?」

八幡「今は考えてない、逆効果になりそうだし」

雪乃「そう…わかったわ」


雪ノ下はそれ以上は聞かなかった。このまま話してたら
もう一つのできれば封印しておきたい感情も話してしまいそうだったから
川崎と別れたことをもったいないと思ってしまったもう一つの感情…


八幡「そういや…」

雪乃「どうしたの?」

八幡「由比ヶ浜が今日来ない理由って、なんか言ってた?」

雪乃「ああ、そのことね」


雪ノ下は少し間をおいてから答えた。


雪乃「葉山くんと遊びに行くと言ってたわよ」


…俺の心は一瞬、永久凍土のように凍りついた…

八幡「…葉山と…?」

雪乃「みたいね、でもあの二人は元々同じグループでしょ?」


違う…雪ノ下はわかってないのか…?雪ノ下的にはおそらく
同じグループの仲間が遊びに行くのは普通でしょ?と言いたいのだろう。
普通はそうかもしれないが…由比ヶ浜に至っては別だ。

八幡「二人で遊びに行くって言ってたのか?」

雪乃「そういうニュアンスだったわ、三浦さん達はいないみたいだったし」


これは異常だ…あの由比ヶ浜は男と遊びにいくなんて…
あいつが遊びに行く相手は決まって三浦や海老名さんだ。
そこに戸部や葉山が混じることはあっても、三浦達以外と
二人で遊びにいくなんて聞いたことがない…


葉山「君は浦島太郎状態だ」

葉山の言ってた言葉が…俺の脳裏に電流のように走って行く…

由比ヶ浜が男と遊びに行くなんて…あるとすれば
俺…か。そういえばそうだった気もする。
我ながら気持ち悪い発想だが、なんでその事実で気づかないかね…あいつの気持ちに


それに由比ヶ浜はほとんどの男からの番号交換も拒否してたしな。
俺とはすぐに交換になったけど…非常にガードは堅い。
あの顔だし、狙ってる男はかなりの数いたはず


八幡「由比ヶ浜が二人きりでね、どうなってんのかね…」

雪乃「そうね、どうなってるのかしら」

八幡「気にならないのか?」

雪乃「葉山くんのことなんて、私が気にすると思うの?」

八幡「そうじゃなくて、由比ヶ浜の方」

雪乃「気になるけれど、私からどうしようとは思わないわ」


意外にも雪ノ下の返答は淡白なものだった。由比ヶ浜のことはもっと
気にすると思ってたんだが。

雪乃「それより今日空いてるなら、夕食でも一緒にどう?」

八幡「…いいけど」


雪ノ下からの突然の誘いは驚いたが、そんな薄い関係でもなかったかな。
前の俺だったら考えないような恋愛脳になってる気がするが…
川崎と別れてすぐというのは気が引けるが、まあ大丈夫か。誰も俺なんて見てないしな。

それから俺と雪ノ下は奉仕部を出て、街の適当なレストランで夕食を済ませた。
最初はラーメンを提案したけど丁重に断られた、まあ当然か


雪乃「あなたは女性の気持ちを少しわかるようになったと思ったけど」


雪ノ下はそんなことを言ってた気もする…ん?それって…おいおい。


八幡「じゃあ、次はもう少し良い所にするか」

雪乃「このレストランでもいいけど」

八幡「俺が選んどく」

雪乃「…楽しみにしているわ」


かまをかけてみたが…どうやらいい感じかもしれない。
今は紛いなりにも川崎と付き合ったという経験もある、昔とは違う
しかし…俺が本当に好きな相手は…


雪乃「どうしたの?比企谷くん?」

八幡「いや、なんでも」

雪ノ下でもいいかというドス黒い感情を否定したかった…俺ってこんな奴だっけ?
違うだろ…雪ノ下は…大切な奉仕部の部長だぞ。俺はそんなドス黒い感情を強引に心の奥にしまった。

その日を境に、雪ノ下と出かける機会は増えて行った。
俺の誘いを雪ノ下は断らなかったし、雪ノ下の誘いも俺は断らなかった。


出かける場所はレストランとかペットショップとか


俺が選んだカレーの専門店も雪ノ下は気に入ってくれた。


雪乃「少し高い気もするけど…とてもおいしいわね」

八幡「何回も来れるところじゃないな」


カレーの値段は2000円を超える…待て待てあんま来れない…マジで
交際…というわけじゃないが俺たちの仲はさらに縮まってるように感じた。
川崎とのことはもうずいぶん昔のように感じた、実際はそんな昔でもないが


八幡(由比ヶ浜…)


奉仕部ではいつものように挨拶してるが…そういえば、葉山とのことは聞けてないな。

教室では俺はいつものように過ごしてるつもりだった。
雪ノ下と過ごす機会も増えて、それはそれで楽しみな自分がいた。
元々、あの二人とは今の関係で終わらせたくないと思ってたしな。

それだけに由比ヶ浜の噂は気になっていた…その噂と言うのは…


「葉山くんって結衣とさ…」

「だよね?付き合ってるって本当なの?」

「みたいだよ?仲良いしな、最近は特に」


そんな噂が聞かれるようになったのだ、この学校ってもしかして
噂好きなのか?前からかなり多い気がするし


「まあ同じグループで美男美女カップルだし。お似合いだけどさ~」

「あ~あ、なんか複雑あ~。ていうか三浦さんは?」

けっこう好き勝手言われてるな…まあ、由比ヶ浜は優しいし、言われやすい属性かもだが

はい、ちゃいますよ

そういえば三浦は葉山とそういう関係にはならなかったみたいだしな。
同じグループの由比ヶ浜が葉山とそういう関係になるのはいいのか?
…三浦は由比ヶ浜のこと大切に思ってるだろうし、オカンだしな…
自分の気持ち殺して葉山との仲応援とか…うわ、しそうだ。


八幡「でもなんでそんな急接近したんだ?」

あいつらに同じグループ以外の接点なんてないと思ってたが
少なくとも噂になるくらいの決定的な場面はあったのか?


川崎「比企谷」


八幡「…川崎?」

ズキンっと、心の奥が痛みだした…まさか川崎に声をかけられるなんて…
なんだこれ?罪悪感か?川崎を捨ててしまったことへの?

川崎「ちょっといい?」

八幡「…おう」


俺達は周りの眼に晒されながら、教室を後にした。

川崎「…あんたってさ」

八幡「おう」


川崎は人気のない所に来るなり質問してきた。


川崎「雪ノ下と…付き合ってるの?」

一瞬なにを質問されたのかわからなかったが
彼女は見てたのか?俺のことを…教室では目が合うこともあったが


八幡「なんでそう思うんだ?」


川崎に責められるのがなんとなく嫌だった俺は濁すしかなかった。

川崎「見てたらわかんじゃん、そんなの」

八幡「見てたのかよ」


川崎はどこか照れてるように見える…なんか可愛いなおい。

川崎「噂では…あたしと別れてすぐってなってるよ」

八幡「マジか?俺なんて見てないと思って…ああ、雪ノ下のほうか」

川崎「まあ、そうなんじゃない?」


見たところ、川崎はそれほど怒ってるようには見えない
ただ、それが逆に怖さを感じてしまう


八幡「別に雪ノ下と付き合ってるわけじゃないぞ」

川崎「…でも時間の問題でしょ」

八幡「それはわからんけど」


川崎はちょっと呆れたような表情をしていた。


川崎「あんたって、そんなプレイボーイ気質だっけ?」

八幡「いや…意味わからん」


川崎「…あ、あたしでさ…練習とか考えてたんでしょ?」

八幡「……」


思わず無言になってしまった…まあ、見抜かれてるとは思ってたが…やっぱりか…

川崎「…やっぱさ、そうなの?」

八幡「…」

俺は答えられなかった…しかし川崎はそれほど追求してくる様子もなかった。


川崎「あんまさ怒ってないからさ」

八幡「マジか?」

川崎「…あんたと付き合ったの、楽しかったからさ。例え練習でもさ」


川崎の言葉に俺は…なにを考えたんだろうな。ただ安堵してたのはわかってる。
しかし、川崎の表情はどこか浮かない表情になっていた。


川崎「ただ…ちょっと、悲しいかな…やっぱりさ」

八幡「川崎…」


俺は彼女が去っていくまで謝罪の言葉を口にすることはできなかった。

それから少しして…


雪乃「そうなの?」

八幡「まあ…な」

雪乃「川崎さんに新しい彼氏が」


川崎に彼氏ができたという話がクラスに広まっていた。
由比ヶ浜たちも言ってたから間違いないだろう。
クラスは違うがそれなりのイケメンと付き合うことになったらしい。
まあ、川崎は由比ヶ浜と並んでスタイルいいし美人だしな

なんとなく孤高な印象だっただけに最近の恋話の主役ということもあり
一気に川崎は注目され出した。俺ですら注目されたんだから
元々美人のあいつは猶更だろう、ファンになった奴らもいるとか。


雪乃「残念そうね」

八幡「そう見えるか?」

雪乃「そんなことはないけれど」

正直、あの身体を味見する前に別れたのは…未練だった…これがもう一つの下衆な理由。
これは否定したかったが、川崎が他の男と付き合うと聞いて心から溢れ出てきた。

雪乃「ねえ、比企谷くん」

八幡「ん?」

雪乃「川崎さんとは…その、したの?」

八幡「…」

雪ノ下の「した」というのはあれのことで間違いないだろう。
雪ノ下は恥ずかしいのか、顔を背けながら言った。

八幡「いや…してない」

俺は即答した。がっかりしてるのが目に見えたのか雪ノ下の表情は暗かった


雪乃「もったいないという顔をしてるわよ?」

八幡「そんなことねぇよ…」

雪乃「あら?でも川崎さんがしてほしいと言えば、今からでもするんでしょ?」

八幡「…」


応えられなかった…たしかに川崎が迫ってきたとしたら…俺は迷わずホテルに連れ込むだろう。
特に今はそれを確信できる。…というかなんて会話してんだ俺たちは…

結衣「やっはろー!」

そんなときに由比ヶ浜が奉仕部に入ってきた
ある意味ベストタイミングだ、これ以上雪ノ下に追及されるのはちょっとな


結衣「あれ?どしたの?なんか浮かない顔してるけど」

八幡「いや…なんでも」

雪乃「ええ、なんでもないわ」


俺と雪ノ下はさっきのこともあってか、少し不審な様子だ。
しかし由比ヶ浜は特に気づいていないようだった。


結衣「でもさ、もうあれだよね。暑いよね~」

由比ヶ浜は空気を呼んだのか、全く関係ない話を振ってくる。


八幡「そうだな」

雪乃「夏だもの、それだけ受験に近づいてるということだわ」

結衣「受験…うう、頭が痛いよ~」


なんか和やかなムードだな…そういう状況でもなかったと思うが
というより、俺は由比ヶ浜に聞けてないことがある。
しかし、今この状況で聞けるほど俺は空気の読めない奴じゃない。


八幡「…」

俺はその後、何気ないその会話に混ざるように時間をつぶした…
少し間違えば聞いてしまいそうな感情を押し殺して。


雪乃「由比ヶ浜さん、今日はどうなの?」

結衣「今日?」

雪乃「この後の予定よ」


奉仕部の帰り際、雪ノ下がある意味直球の質問をした。
俺はその返答を息をのんで待った。ナイスな質問だ。

結衣「えっと」


由比ヶ浜の回答は何分もかかってるような錯覚を覚えた。
実際はすぐに回答していたが。


結衣「優美子たちと買い物があるんだ」

雪乃「あら、そうなの」


少し安心している俺がそこにはいた。なんでだろうな…


結衣「だからさ、二人は二人で楽しんできなよ」

雪乃「え?」

八幡「お、おい」


由比ヶ浜のその言葉は…噂に気を遣ったということなんだろう。


結衣「最近仲良いように見えたからさ…あはは」

雪乃「…」


雪ノ下は特に否定もしない、それは俺もだったが。

由比ヶ浜は俺達が付き合ってると思ってるのか?
まあ、事実として俺達の仲は深まってると思うが

結衣「それじゃあね、二人とも」


由比ヶ浜はどこか儚げにそう言った。俺に対して未練があるということか?
少し鼓動が速くなる。


雪乃「見惚れてるのかしら?」

八幡「は…?そん、そんなんじゃねぇし…」


雪乃「言葉がちゃんと言えてないわよ」


雪ノ下には全て見通されてたようだ。


雪乃「あなたも、由比ヶ浜さんの胸がすきなのね、全く」


雪ノ下にしては直というか…最近こういうのを隠そうとしない。
確かに、川崎と同じで由比ヶ浜の胸…というかスタイルに惚れたというのは間違いない。
既に自問自答しているが、俺は由比ヶ浜が好きだ。
おそらく、雪ノ下よりも。そこにはスタイルというのも含まれてるだろう。

単純にスタイルという意味では川崎とそれ程変わらないとは思うが
やはりそこは、奉仕部で培ってきた仲という決定的な違いがある。

川崎とも小町やけーちゃん、大志を通しての付き合いはあったが
奉仕部の付き合いには劣るということだろう。


雪乃「どうして、スタイルなんて気にするのかしら…」


夕食を一緒に食べながら、雪ノ下はブツブツと独り言を言ってる。
嫉妬だろうか…?おそらく当たってるとは思うが敢えて口にはしない。

川崎を練習台にまでして…俺は由比ヶ浜や雪ノ下と付き合おうとしてた。
しかし、由比ヶ浜は葉山と…なら俺の残された道は…


雪乃「どうかしたの?」

八幡「いや、別に」


俺は敢えてそれ以上考えないようにした。おいおい、俺ってこんな屑だっけ?

雪乃「これから、どうしましょうか?」

八幡「お前は帰らなくていいのか?」

雪乃「私は一人暮らしだし、特にこの後用事があるわけでもないわ」


なんとなく、雪ノ下とこのまま別れるのは口惜しかった。
なんとなく寂しい気持ちが強かったから


雪乃「あら…あれは」

八幡「ん?」

雪乃「川崎さんじゃない、あれ」

俺は無意識に高速で目で追っていた。
川崎だ、彼氏と一緒に帰ってるのか。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月18日 (金) 22:44:31   ID: o-xRytyL

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