ありす「幸せを綴じ込んで」 (30)

ありす「智絵里さん。」

智絵里「ありすちゃん?どうしたの?」

ありす「クローバーの栞の作り方って、教えていただけますか?」

智絵里「これ?余ってるからあげるけど…?」

ありす「いえ、自分で作りたいんです。」

智絵里「…?」

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智絵里「教えるほど難しいことはしないんだけど…クローバーはもう用意してる?」

ありす「いえ、このあと探しにいこうかと。」

智絵里「じゃあ、せっかくだし今から一緒に探しに行こうか?」

ありす「え?いいんですか?」

智絵里「うん。もう寮に帰るだけだし大丈夫だよ。」

ありす「あ、ありがとうございます…!」

公園

ありす「この公園にはよく来るんですか?」

智絵里「うん。ちょうど通り道にあるから、時間がある時に寄ったりするよ。ありすちゃんは初めて?」

ありす「はい、私はいつも横を通るだけですね。どこにクローバーが植えられているんですか?」

智絵里「奥の方だよ。行ってみよう?」

ありす「はい。」

智絵里「ほら、ここだよ。」

ありす「すごいです。思ってたよりも広いんですね。」

智絵里「うん、でもなかなか見つからないから、今日は頑張って見つけようね。」

ありす「はい。」

智絵里「じゃあ、どこから探そうか?」

ありす「何か、コツとか効率のいい探し方とかないんですか?」

智絵里「あるのかもしれないけど…私はよく分からないかな…」

ありす「えっと、昨日調べたら、三つ葉の傷から四つ目の葉が出るそうなので、人に踏まれやすい歩道沿いの方がいいとありましたが…」

智絵里「へえ…!そうなんだ…」

ありす「え?」

智絵里「ありすちゃん、物知りさんなんだね。」ナデナデ

ありす「な、撫でなくてもいいです…!それに、私じゃなくてタブレットが物知りなだけで…!」

………

ありす「見つかりませんね…」

智絵里「見つからないね…」

ありす「やっぱり滅多に見つからないものなんですね…」

智絵里「うん…また今度探しに来ようか…」

ありす「も、もうちょっとだけ…!」

智絵里「え?」

ありす「あまり日がないので…」

智絵里「???」

智絵里「誕生日のプレゼント?」

ありす「はい。来週文香さんの誕生日なので。でも、お小遣いが少なくていいプレゼントが買えなくて…」

智絵里「あ…そうだよね。」

ありす「ヴァルキュリアの時にシロツメクサの冠を渡したら喜んでくださったので…」

智絵里「そっか、栞なら文香さんにぴったりだもんね。」

ありす「何日か四つ葉を探していたんですが、なかなか見つからなくて…せめて栞の作り方だけでも智絵里さんに教えてもらおうと…」

智絵里「うん、じゃあ今日こそ見つけないとね。」

ありす「すいません、遅くまで…」

智絵里「気にしなくても大丈夫だよ。暗くなったら見えにくくなるから、もうちょっとだけ頑張ろうね。」

ありす「はい…!」

智絵里「そうだ…もうちょっと奥の方を探してみない?」

ありす「え?」

智絵里「この公園、散歩する人が多くて、歩道の近くは四つ葉もきっと人の目に付きやすいと思うから…。」

ありす「え?じゃあここで探した方がいいんじゃ…」

智絵里「見つかっちゃうと取っていくから…」

ありす「あ…なるほど…」

智絵里「じゃあ、行こっか?」

ありす「はい。」

…………

ありす「あの…」

智絵里「なぁに?」

ありす「本当に、もし見つからなかったら、栞の作り方だけでいいので教えてください。」

智絵里「ううん。」

ありす「えっ?」

智絵里「大丈夫だよ、きっと見つかるから。」

ありす「でも…」

智絵里「自分のためじゃなくて、誰かのために一生懸命なときは、四つ葉のクローバーも出てきてくれるんじゃないかな?」

ありす「…?」

智絵里「私が四つ葉のクローバーだったら、ありすちゃんに見つけてもらいたいかなあ、って。」

ありす「…ふふっ。」

智絵里「ありすちゃん、どうかした?」

ありす「いえ、なんだか智絵里さんらしいなって思ったので。」

智絵里「えっ…?」

ありす「私は植物の気持ちになるなんて、考えたこともないですよ。」

智絵里「あっ…や、やっぱり、高校生にもなって、こんなこと言うのは変かな…」

ありす「あ、いえ、そういうわけじゃなくて…」

智絵里「?」

ありす「そういう考え方、私には思いもつかないので勉強になるな、って思います。」

智絵里「そ、そうかな…?」

ありす「シロツメクサって、人を優しくさせる花なんでしょうね。」

智絵里「え?」

ありす「ヴァルキュリアの時の藍子さんも、とても優しい表情をしていたので…」

智絵里「藍子ちゃんは…いつもじゃないかな?」

ありす「…それもそうですね。」クスッ

智絵里「でも、人を優しくさせるのは当たってるかも…」

ありす「智絵里さんもそう思いますか?」

智絵里「うん。今のありすちゃん、事務所にいる時よりも、とっても優しい顔してるから…」

ありす「…えっ?…あ、そ、そういうのはいいですからっ、は、早く探しましょう!」

智絵里「ふふっ、そうだね。」

……………

ありす「智絵里さん。」

智絵里「うん?」

ありす「今日はもう…諦めます。」

智絵里「えっ?」

ありす「だって、もう大分暗くなってきましたし…」

智絵里「そう…だね…」

ありす「仕方ないです。明日また探しにくるので。」

智絵里「うん…ごめんね…」

ありす「いや、謝らないでください。智絵里さんが悪いわけじゃないですし。」

智絵里「きっと見つかる、とか無責任に言っちゃったから…」

ありす「大丈夫です。きっと、明日見つけます。」

智絵里「うん…」

智絵里「じゃあ、帰って栞の作り方を…あわわっ」フラッ

ありす「智絵里さん?」

智絵里「あはは…急に立ち上がるとよくないね。」

ありす「大丈夫ですか?」

智絵里「うん、ちょっと尻もちついただけだから。」

ありす「立てますか?」

智絵里「うん。」

ありす「私の手に掴まって…あっ!」

智絵里「うん?」

ありす「四つ葉ですっ!」

智絵里「え?」

ありす「智絵里さんの左手のそばに…!」

智絵里「あっ…!」

女子寮

智絵里「じゃあ、さっそく押し葉にしちゃおっか。」

ありす「はい、よろしくお願いします。」

智絵里「まずは、クローバーをティッシュに挟んで…」

ありす「はい。」

智絵里「それを、厚さのある本に挟んで…」

ありす「本…」

智絵里「辞書とか、図鑑とか、電話帳とか…」

ありす「どれもないです…」

智絵里「じゃあ、私が使ってる電話帳に挟もうか。」

ありす「いいんですか?」

智絵里「寮で捨てられる電話帳だったから気にしないでいいよ。」

智絵里「あとは電話帳の上に重たいものを載せて、2日くらい待つんだ。」

ありす「2日…」

智絵里「明後日は空いてる?」

ありす「はい。大丈夫です。」

智絵里「じゃあ、明後日仕上げよっか?」

ありす「はい。」

智絵里「栞の台紙はどうする?」

ありす「どんな紙が向いてるんですか?」

智絵里「あまり薄いと折れやすくなるけど…普通の画用紙なら問題ないよ。」

ありす「画用紙…」

智絵里「別に画用紙じゃなくてもいいよ。作りたい紙で明後日持ってきてね。」

ありす「分かりました。」

翌々日

智絵里「紙は持ってきた?」

ありす「はい。」

智絵里「きれいな青色だね。」

ありす「はい。やっぱり…ブライトブルーなので。」

智絵里「うん。文香さんにもありすちゃんにもよく似合う綺麗な色だと思うよ。」

ありす「そ、そうですか…えへへ…」

智絵里「まずは台紙を栞の大きさに切って…」

ありす「どのくらいの大きさがいいんですか?」

智絵里「うーん…私が作るのはいつもこのくらいだけど…」

ありす「なるほど…」

智絵里「クローバーがはみ出なかったら大丈夫だよ?」

ありす「分かりました。」チョキチョキ

ありす「切りました。」

智絵里「うん。上手に切れてるね。」

ありす「ここに四つ葉を置くんですか?」

智絵里「そうだよ。じゃあ、この前のクローバー見てみよっか。」

ありす「はい。」

智絵里「よいしょ…!」パタン

ありす「これですね。」

智絵里「じゃあ、そっとティッシュを開いて…」

ありす「はい…!」ピラッ

智絵里「どう?」

ありす「はい、こんなにペラペラになるんですね。」

智絵里「そうだよね。」

ありす「これで水分は抜けたんですか?」

智絵里「うん。これなら大丈夫だよ。」

智絵里「じゃあさっきの画用紙に載せて…」

ありす「はい。」

智絵里「軽くでいいから、ボンドでクローバーを紙に貼り付けて…」

ありす「ボンドですか?」

智絵里「うん。クローバーがずれないようにするだけだから、そんなにベタベタ貼らなくても大丈夫だよ。」

ありす「分かりました。」

……

智絵里「そろそろボンドも固まったかな?」

ありす「そうみたいですね。」

智絵里「じゃあ、最後はこれ。」

ありす「なんですか、この機械は?」

智絵里「ラミネート加工に使う機械だよ。」

ありす「ラミネート…透明の板みたいなあれですか?」

智絵里「うん。これで栞が折れ曲がりにくくなるよ。」

ジジジジジ…

智絵里「はい、できたよ。」

ありす「あとは余ったところを切ればいいんですね?」

智絵里「うん。」

ありす「ギザギザにならないように…」チョキチョキ

智絵里「焦らなくて大丈夫だよ。」

ありす「はい…!」

ありす「こんな感じ…で大丈夫ですか?」

智絵里「うん、いいんじゃないかな?」

ありす「なら、これで完成ですね。」

智絵里「あ、最後にパンチで穴を開けて…」パチン

ありす「?」

智絵里「はい、ここにリボンを通してあげたらもっと栞らしくなるよ?」

ありす「本当ですね…!」

智絵里「リボンは…どうしようかな?私の持ってるものでもいいなら使ってくれていいけど…」

ありす「いえ、せっかくなので自分で用意します。」

智絵里「うん。あとはリボンだけで完成だから、ゆっくり探してみてね。」

ありす「はい。ありがとうございました。」

智絵里「文香さん、喜んでくれるといいね。」

ありす「はい…!」

10月27日

フミカサーン!フミカチャーンオメデトー!

ありす「……」

智絵里「ありすちゃん。」

ありす「智絵里さん…?」

智絵里「大丈夫。文香さん、きっと喜んでくれるから…」

ありす「は、はい…」

ありす「あ、ち、違いますっ、文香さんが皆さんとお話ししてたので、タイミング待ってただけです。」

智絵里「ふふっ、ほら、ちょうど今誰もいないよ。」

ありす「…はいっ。」



ありす「文香さん。お誕生日おめでとうございます。」

終わりです。
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