八幡(いつもの気だるい昼休み・・・さて、いつものように寝た振りを・・・)
八幡(・・・いや、次の授業は移動教室だったな。本当に寝ちまって寝過ごすとまずい・・・
俺の場合、起こしてくれる奴もいないしな)
八幡(今の内に移動しとくか。大分、暇ができるが・・・脳内会議でもして時間を潰そう)スクッ
スタスタ
結衣(あれ、ヒッキーもう行っちゃった・・・もう少し眺めてたかった・・・)
戸部「・・・・・・・・・」ジッ
海老名「ん?とべっちどしたの?ヒキタニ君の机じっと見て・・・
ハッ まさか禁断の愛に目覚めちゃった!?」
戸部「・・・・・・・・・」
海老名「・・・あの、とべっち?」
戸部「んっ、あぁ、なんでもないよ海老名サン!つーかこれからっしょ!」
葉山「なんだよそれ、意味わかんないぞ戸部」
ハハハハハハハハハハ・・・・・・
海老名(今のとべっちの反応・・・)
海老名(ガチか!?ガチの奴かこれ!?)ブバッ
三浦「姫菜自重」フキフキ
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戸部「あっ俺、先公に早めに教室来るように言われてたんだったわ~マジっべぇわコレ。
つーわけで行ってくるわコレ俺」
葉山「お、おうそれじゃあ、また後で」
戸部「うぃー」スタスタ
海老名(教室に男子高校生が二人きり・・・何も起きないはずがなく・・・)
海老名「いっべばっばい」ダバダバ
三浦「自重しろっつってんのに」グシグシ
移動先の教室
八幡(・・・どうやら結論が出たようだな。女子はやはり冬服の方が可愛い。Q.E.D
これにて八幡脳内会議を終了・・・)
戸部「うぃーっす」ガラッ
八幡(・・・戸部?授業開始はまだのはず・・・それに葉山グループの奴等が居ない。
戸部一人だ。何かこの教室に用があるのか?)
戸部「ヒキタニくん・・・ちょっと話あんだけど」
八幡(俺かい)
八幡「・・・奉仕部に相談したいなら放課後来い」
戸部「や、その、できればヒキタニくん個人と話したいっつーか・・・
あんまヒキタニくん以外には言えない話っつーか」
八幡「・・・?」
戸部「・・・ま、いいや。放課後、教室で待っててくんね?
どっちにしろ、昼休み中には話終わらんっぽいし」スッ
八幡「いや、待て。せめておおまかな内容だけでも・・・」
八幡(俺から離れて行く戸部を制止しようとするが、そのタイミングで他の生徒達が教室に入って来た
どうやら授業開始が近い。戸部は自分の・・・または俺の立場を気遣い、声には出さずにウィンクで
返事して来た。やめろ気持ち悪いぶっ殺がすぞ)
八幡(多分、戸部のことだから当然、海老名さん絡みの話だとは思うが・・・
俺にしか話せないってのはどういうことだ?こういうのにはオープンな奴だと思っていたが・・・
っていうかあいつ俺が恋敵って設定忘れてないか)
八幡(やれやれ・・・無下にすれば何されるか解らんし、放課後。待ってみるか)
そして放課後
戸部「・・・・・・」
八幡「・・・・・・」
戸部「・・・・・・」
八幡「・・・話せよ」
戸部「いや、何か怖くなってきた・・・本当に話していいんかなコレ」
八幡「帰るぞ」スッ
戸部「ちょちょちょちょい!冗談きついわヒキタニくーん。言うって!言うから!座って!」
八幡「・・・ったく」スッ
戸部「すぅーっ、はぁーっ」
八幡「・・・・・・」
戸部「・・・その、今から言うのはただの俺の勘違いかもしれねーし、俺バカだし。
何か的外れなこと言ってたら言ってほしーんだけどな?」
八幡(戸部が大きく深呼吸をした上に、おどろおどろしく前置きを置く。
そんなに言いづらいことなのか?)
戸部「・・・・・・」
八幡「・・・・・・」
八幡(戸部がまたしても口を噤む。しかしそれは言うか言わざるかの葛藤の現れではなく、
むしろ、言うと決心した故の葛藤に思えた)
八幡(俺も、戸部のらしくない神妙な面持ちに幾分か感化され、何も言わず、
固唾を飲んで言葉を待った)
八幡(そして、ついに戸部が、その静寂を破る______)
戸部「・・・海老名さんって腐女子なんじゃね?」
八幡「んぶひゅっ」
八幡(・・・なんか変な声出た)
戸部「・・・俺もこの前テレビで見ただけなんけど、一応言っとくと、
腐女子っていうのは男同士の恋愛が好きな・・・」
八幡「いや、俺も知ってはいる。だから、説明しなくていい」
戸部「あ、やっぱ?俺もヒキタニくんは知ってそうだったから相談したんけどな?」
八幡(意味を間違えて使っている訳ではなさそうだ・・・。つまりこいつ、本当に
海老名さんがホモ好きのサイコパスだということに気付いてしまっている)
戸部「今日もヒキタニくんの机の方見てたら、禁断の愛がどうこうとか・・・
よく思い出したら、海老名さんが言う冗談ってそういう系が多いし・・・
もしかしたら・・・って思って」
八幡(まぁ、海老名さんもまわりの無知さにかまけて言いたい放題だったからな・・・
当然といえば当然。バカでも解るか・・・)
八幡(さて、ここはどう答えるべきだ・・・?)
八幡(例えば、ここで真実を告げたとして・・・戸部は海老名さんを軽蔑するだろうか・・・
寂しい話だが・・・それで戸部が海老名さんへの恋心を無くすというのなら、それはそれで
円満な解決の一つかもしれない・・・)
八幡(しかし、それでは『グループの和を守る』という当初の目的が・・・いや、もう、
こうして戸部が疑いを持っている時点で隠し通すのは難しいか・・・?)
八幡「お前の言う通りだ。・・・って言ったら、どうする?」
八幡(とか言って様子を見てみたりしてみたり)
戸部「俺さ・・・正直、そういうオタクな人って嫌いだったんよ・・・
暗いっていうか、気持ち悪いし」
八幡(だよなぁ・・・)
戸部「でも、海老名さんのは、何か嬉しいんよ」
戸部「なんていうか、海老名さんの好きな物を、俺も知ってる。みたいな」
戸部「ほら、気付いてるのも俺だけっぽいし?俺だけが知ってる海老名さん?みたいな?」
八幡「・・・・・・」
戸部「や、なんか俺の方が気持ち悪いなこれ。っべぇー、はっず」
八幡「・・・」
八幡(・・・不憫だと、思った)
八幡(ここまでピュアに人を想うことができる奴に、決着をつけさせてやれないなんて)
八幡(『グループの和を守る』・・・なるほど、海老名さんにとっては、それが一番大事なんだろう。
実際、俺もそれのために体を張った・・・)
八幡(でも俺は、こいつにとっては。と、そう考えてしまった)
八幡(こいつにとっては、そんなことより・・・)
八幡「・・・そうだよ」
戸部「ん?」
八幡「お前の言う通り、海老名さんはホモとゲイとBLが大好きな腐女子だ。
俺もお前よりかはこの手の物に詳しいからな。間違いない」
戸部「あぁー、やっぱりそうなんかー」
八幡「で、どうする?」
戸部「・・・どしたらいい?」
八幡「俺に聞くなよ・・・」
戸部「なんかさ、腐女子に効果的なアプローチとかないん?」
八幡「アプローチ、ね・・・」
戸部「お、あるん?」
八幡「おう。ちょっと耳貸せ」スッ
戸部「おう!」スッ
八幡「________________、_____________」ゴニョゴニョ
戸部「・・・え、なん・・・」
八幡「いいから言う通りにしてみろ。ほらもう帰れ」
戸部「お、おぉ・・・・・・」スタスタ ガラッ
八幡(戸部が教室から出ていく)
八幡「・・・さて、もう入ってきていいよ。海老名さん」
海老名「・・・ありゃ、バレてた?」ガラッ
八幡「腐った奴は腐った奴の存在に敏感なんだよ」
海老名「私みたいに?」
八幡「ちょっと違う」
海老名「敏感なの!?」ハァハァ
八幡「全然違う。落ち着いて」
海老名「フーッフーッ」
八幡(野獣かよ・・・いやそういう意味じゃなくて)
八幡「んで、聞いてたんだよね?」
海老名「うん・・・気付いてたんだね、とべっち」
八幡「そんで、それでも好きだってさ、海老名さんのこと」
海老名「うん・・・それも、聞いた」
八幡「・・・・・・」
海老名「・・・・・・」ニヤニヤ
八幡「そういう顔もすんのな、海老名さん」
海老名「え?」ニヤニヤ
八幡「そんな嬉しそうに、ニヤニヤと」
海老名「えぇ?割としてない?」
八幡「いや、いつもより健全な笑みというか」
海老名「そんないつもは不健全みたいな」
八幡「いや不健全だろあれは・・・」
海老名「はは・・・ここで一つ昔の話をするとだね」
八幡「・・・おう」
海老名「私が恋とか、人間関係が苦手になったのって、その不健全な趣味がきっかけなんだよね」
八幡「・・・まぁ、想像はつくよ」
海老名「あの頃は自分が大嫌いだったよ・・・自分は異常だ。こんな趣味、絶対に駄目だ。って」
八幡「・・・・・・」
海老名「・・・まぁ、やめられなかったんだけど」
八幡(深い業だな・・・)
海老名「でも、そっかぁ・・・」
海老名「とべっちはこんな私でも好きなんだ・・・・・・」
海老名「修学旅行の時は、ちょっと惜しいことしたかも」
八幡「俺めっちゃ体張ったんだけど・・・」
海老名「あはは・・・は、ごめんなさい・・・」
八幡「いや、いいけど・・・海老名さんがそんなんなら、あのアドバイスはいらんかったかな・・・」
海老名「アドバイスって、さっき比企谷くんがとべっちの耳を責めたやつ?」
八幡「それじゃないけど、それ」
海老名「あれなんて言ってたの?・・・って教えてくれないか。
私に聞こえないように耳打ちしたんだろうし」
八幡「・・・いや。もう言質は取ったし、教えてもいいかな」
海老名「・・・言質?」
八幡「俺が戸部にした耳打ちは、『俺が帰れって言っても、教室を出た所で盗み聞きしてろ』だよ」
八幡「俺が戸部にした耳打ちは、『俺が帰れって言っても、教室を出た所で盗み聞きしてろ』だよ」
海老名「・・・・・・え?それって・・・」
ガタタッ
八幡(教室のドアが揺れる。むしろよく今まで堪えた物だ)
海老名「い、居るのとべっち____ってか聞いてたの!?」
八幡(海老名さんがドアの方向へ振り向く)
八幡(すると、戸部が何か観念したような面持ちでドアを開き、海老名さんを見詰める)
海老名「・・・・・・」
戸部「・・・・・・」
八幡(そんじゃま、後は若い二人で)
八幡(音を立てないように、見付からないように、後ろの別のドアから教室を出る俺であった)
____数日後、奉仕部。
結衣「姫菜ととべっち付き合うんだって!」
雪乃「・・・誰かしら、その二人は」
結衣「覚えていないっ!?」
八幡(・・・割とすんなり行ったな。別に、問題を起こして欲しかった訳ではないが)
八幡(修学旅行の件は個人的に腑に落ちてなかったからな。俺ら三人の問題も落ち着いたし、
ここまでやって、依頼完了ってところか)
結衣「とべっちが『ヒキタニくんのおかげ』だーって広めてたよ?」
八幡「マジかよ・・・余計なことしやがって」
結衣「あはは・・・まぁ、ヒッキーってこの学校じゃ悪いイメージがあったし・・・
とべっちなりの恩返しなんだよ、きっと。私も、皆にヒッキーのこと見直してもらえるの、嬉しいなぁ」
八幡「・・・・・・ふん」
八幡(結局脇役のまんまだが・・・ま、これも青春。かね)
八幡(やはり俺の青春ラブコメは________)
三浦「比企谷!」ガラッ
八幡「!?」
三浦「あんたが姫菜と戸部くっつけたんだって?」
八幡「ま、まぁ、そういう見方も・・・」
三浦「じゃ、じゃあさ!あーしと隼人のことも・・・その・・・」
男子「比企谷!比企谷に相談すれば恋が叶うって戸部から聞いたんだけど!」ガラッ
八幡「!?」
三浦「あぁ!?私の方が先に・・・」
女子「ひ、比企谷さん!」ガラッ
「比企谷!」「ヒキタニくん!」「比企谷っち!」「比企谷どん!」
八幡(ドアを叩く音が一向に止まない)
雪乃「・・・・・・大人気ね」
結衣「ひ、ヒッキー。実はその、私からも恋愛相談・・・いい?」
八幡「・・・やはり・・・」
『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』
以上になります。
貧乳好きに悪い奴は居ない。
よってとべっちはいい奴。
ありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
おもしろかった!
GJ!