※まどマギとリーガル・ハイのクロスオーバーSSです。
※裁判や法律の知識は全くないためミスやおかしな点が出てくると思います。
※更新もゆっくりとなりますが、よろしくお願いします。
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「そうそう、これが今流行りでさー」
「ほーん、そうなんだ」
それは、いつもの昼休みのことでした。
さやかちゃんと杏子ちゃんとマミさん。
いつもの皆とご飯を食べながら、お喋り。
とても、とても楽しい時間でした。
「な! あんたいきなり何を―――」
でも、気付いたら、私は不思議な温もりに包まれていました。
何があったのか気付くのに、私は少しばかりの時間が必要で。
「ほむら!?」
「暁美さん!?」
私は、いつの間にか同級生に抱き着かれていたのです。
その瞬間は、なぜかとても現実とは思えなくて。
ふわふわと流れていく時間の中で、ほむらちゃんはすごい力で私を抱き締め続けていました。
「あなたなんかに―――あなたなんかに、まどかは渡さない」
とても、とても怖い声が耳元で聞こえます。
それと同時に身体に掛かる力が緩んで。
私の顔の直ぐ近くに、ほむらちゃんの顔が現れました。
疲れたような、焦ったような、不思議な表情。
そんなほむらちゃんの顔が段々と近付いてきて―――
―――ちゅっ
私の唇と、ほむらちゃんの唇が重なっていました。
(―――――――!!?!?!?!!?)
時間の流れが元に戻ります。
何で、どうして、という感情が唐突に脳内に湧き上がってきます。
混乱の中で、私は必死にほむらちゃんを引き剥がそうとして。
でも、ほむらちゃんは離してくれません。
さっきまで以上の強い力で、私の顔を抑え続けます。
(誰か、助けて――――)
そんな拘束が怖くて、怖くて。
思わず涙が出そうで―――
パン!! という甲高い音が、その恐怖から解放してくれました。
「許さない……許さないよ、暁美ほむら!」
そこには手を振り切った体勢のさやかちゃんと、
赤くなった頬を抑えるほむらちゃんがいて
「いきなりまどかにキスなんかして――――」
さやかちゃんは声を震わしながら、言いました。
「――――あんたを、訴えてやる!!!」
そう、確かに告げたのです。
◇
―――古美門法律事務所
黛「うぅぅ、づらいねぇ、だむらちゃん……」ウルウル
古美門「……気のせいですかね、服部さん」
服部「は」
古美門「日曜の朝っぱらからテレビを観て、泣いてる極潰しが我が事務所にいるようだあ。
真面目しか取り柄の無い朝ドラヒロインが遂に唯一の取り柄を放棄したらしい。我が事務所も人事変更の時期ですかねえ」
服部「ははは、いやはや」
黛「まだ勤務時間前ですぅ。朝の貴重な一時をどう使おうが私の勝手じゃありませんか」
古美門「なぁらぁばぁ、なぜ私の事務所でその貴重な一時とやらを浪費している。
そんな社会の日陰者であるオタクが好みそうなキーキーうるさいアニメーションを、私の事務所で流すんじゃあない」
黛「だって、ここの方がテレビ大きいじゃないですか。やっぱ迫力ありますよね、大画面だと」
古美門「このテレビはわ・た・しの物だ! 金をとるぞ、一分一万、今払え、直ぐ払え、耳を揃えて払え! 払えんのなら、その貧相な身体でも売って金をつくってこい!」
黛「い・や・で・す! 事務所の備品を職員が使ったら駄目なんて法律はありません」
古美門「使うのは問題ではない。正しい使われ方をしていないのが問題なのだぁ!」
古美門「低能が現実逃避のために見る萌えアニメを流すために、事務所のテレビはある訳じゃあない!」
黛「お言葉ですが、これはただの萌えアニメじゃありません!」
黛「元は携帯小説で、その切ない結末と魅力的なキャラクターが話題を呼び、女子高生の間で大ヒット」
黛「そして、その重厚な物語は世代を超えて人気となり、文庫本の出版、コミカライズなどを経て、遂にアニメ化。
絵は確かに萌え萌えしいですが、子どもから大人まで楽しめる流行りのアニメなんです!」
古美門「お~っと、こんなものが流行るとは、私が知らない間に日本の社会は堕ちるところまで堕ちていたようだあ。服部さん、これは外国への移住の話も現実味を帯びてきましたねえ」
黛「そんな計画ないでしょう! 大体先生は遅れてるんですよ、こんな所で俗世を断ったような生活をしていて!」
古美門「そぉんな下らない情勢知らなくても良いね! 寧ろ、今知ってしまったことを後悔しているくらいだ!」
黛「むぅ~、見てもないくせに悪口ばっかりぃ!」
古美門「見る価値がないから見ないだけだ、がに股ぁ! そもそもタイトルからして低俗さが滲み出ている!」
黛「何が悪いんですか、『魔法少女ナギカ☆などか』! 可愛らしいタイトルじゃないですか!」
古美門「魔法少女ぁ? なぎか☆などかぁ? なぁにが魔法少女だ! お花畑は脳みその中だけにしろ!」
黛「むきぃ~~~~~~!!」
コンコン
服部「おっと、お二人とも。その変にしておきましょう。お客様が見えたようです」
古美門「ほれ、さっさとその低俗なテレビ番組を消せぇ。我が法律事務所が誤解される」
黛「分かりましたよ、もう!」
服部「さぁ、どうぞこちらへ――――と、これは可愛らしいマドモアゼルで」
???「お邪魔するわ」ファサ
黛(女子中学生、かな? どうしてこんな子が一人で法律事務所に?)
古美門「………あー、場所を間違えてないかね? ここは学校ではなく、法律事務所なんだが」
???「何も間違ってないわ。私はあなたに用があってきたのよ、古美門先生」
黛(腰まで届きそうな長い黒髪、クールな話し方……何だかこの子、『などナギ』に出てくる『たむらちゃん』と似てるような……)
古美門(どうした、朝ドラ。同じ貧相な身体通しシンパシーでも感じたか?)
黛(違います!)
???「私は暁美ほむら」
ほむら「あなたが古美門弁護士ね。何でも無敗を誇るとか」
古美門「そうだが、何の用だね」
ほむら「仕事の依頼をしたいの」
古美門「お断りだ。まず貴様では話にすらならん。親はどうしたぁ? 貴様はまだ未成年だろうが」
ほむら「両親は……いないわ」
黛「っ……」
古美門「親がいなくても保護者はいるだろうが。そいつを呼んで来い」
ほむら「保護者もいないわ」
古美門「はぁ、そんな事ある訳ないだろうが」
ほむら「この世界で頼れるものは、私自身だけ―――」
ほむら「でも今回ばかりは勝手がいかない。だから、あなたのところを訪ねてきたのよ、古美門先生」
古美門「ばぁーかぁーが! 中二病もいい加減にしろぉ。親もいない、保護者もいないガキなんかの弁護が受けられる訳ないだろうが!」
古美門「それになぁ、私が依頼を受けるのは出すもの出した依頼主からだけだ! 貴様のよなクソガキの依頼など誰が受けるか、ぶわぁーか!」
ほむら「出すものというのは、これのことかしら」パチン
ドバーン! 札束ドバー
古美門「!」
黛「!? な、何もないところから札束が!?」
服部「これは……いやはや……」
ほむら「これでどう?」
古美門「……出所の怪しい金は受け取れん」
黛「とか言いながら、お金に手を伸ばしてるじゃないですか! 駄目ですよ。怪しすぎますって!」
古美門「はっ! 身体が勝手に!」
黛「っていうか、あなたどこからこのお金出したんですか! どうみても手ぶらなのに……」
ほむら「……そう、まだ足りないというの」パチン
ドバドバ
黛「ええええ! 指ぱっちんしたら更にお金が!?」
古美門「」ポカーン
服部「ニセ札ではないようですな。全てピン札となっています」
ほむら「マジックが得意なの。それでどう? 依頼は受けてくれるの?」
古美門「服部さん。お金は総額で……」
服部「一億ほどになります」
古美門「いよぉ~し! 弁護だ、弁護だ、弁護するぞ! どんな案件だ! 任せておけ、私に掛かれば企業訴訟から公害訴訟まで、どんな大きな案件だろうと無実としてみせよう!」
古美門「保護者のことなど気にするな! 私がちょちょいと手を回してやる! さぁ、無罪を勝ち取るぞ、ほむらくん!」
黛「駄目ですよ、先生! 怪しすぎます!」
古美門「馬鹿者ぉ! 虎穴に入らずんば虎子を得ずだ! きれいな金が山を作っているのだ。登らぬ馬鹿がどこにいる!」
古美門「それで案件は何だ、言ってみろ」
ほむら「……ハラ」ボソボソ
黛「え?」
ほむら「……セクハラ、よ」
古美門「ほう、セクハラねえ。君のような、出るところが出るどころか凹んでいる、貧相を絵でかいたような身体のガキを相手に性欲を滾らせる奴がいるのか。物好きもいるものだ」
黛「先生! 失礼です! ほむらさんはまだ中学生なんですよ。これから成長していくんです!」
古美門「なんだ貧相な身体を持つ者同士肩を持つのか? 傷の舐めあいも結構だが、男に相手されないからって女に手を出すなよ」
黛「んい~~~~~~~~!!」アタマガシガシ
古美門「で、そのセクハラを働いた変態ロリコン野郎は誰だ? 教師か?」
ほむら「……違うわ」
黛「では、ご学友ですか?」
ほむら「……違う」
古美門「先輩か、後輩か」
ほむら「……違うわ。その……」
古美門「なら、誰にその貧相な身体を触られたんだ。もったいぶらずに早く言え」
ほむら「……私……」
黛「は?」 古美門「は?」
ほむら「私が『した』のよ」
黛「……ええええええええ~~~!?」
古美門「…………」
◇
―――三木法律事務所
三木「それでは……お辛いでしょうが、事の顛末を話して貰えますか、鹿目まどかさん」
まどか「は、はい。最初はさやかちゃ……美樹さんや他の友人たちと屋上でお話してたんです。そしたらいきなり暁美さんが近づいていきて……」
三木「それであなたは唐突に暁美ほむらさんに抱き着かれたと。そして……」
まどか「は、はい……その、キ、キッスを……」
沢地「酷い……辛かったでしょうね、まどかさん」
三木「いくら同性とはいえ、それは酷い。美樹さやかさん。あなたその一連の出来事を傍で見ていた訳ですね」
さやか「そうです。止める暇もありませんでした。ごめんね、まどか……私がしっかりしてれば」
まどか「ううん、大丈夫だよ……」
三木「他に目撃者はいましたか?」
さやか「同級生の杏子……佐倉さん。あと三年生の巴さんも観てました。それに……」
三木「証拠の動画もある、と」
さやか「はい。ちょうど皆でふざけて撮り合いしてたんです。そこにあいつが来て……」
三木「目撃者も複数いる。物的証拠もある。そして、前例もある、と」
まどか「はい。転校初日の時に一度同じようなことが……いきなり抱き着かれて……その時は直ぐに離してくれたんですけど」
三木「殆ど初対面の人物にそのような行為をとるとは……ほむらという生徒の人格を疑いますな」
まどか「……それにここ最近は四六時中つけまわされてる気がして……本屋さんとか、CD屋さんとか、どこにでも現れて……」
まどか「前なんて、いきなり部屋の中にまで現れて……」
三木「何て少女だ。危険極まりないですな」
三木「……これだけ有利な条件が揃っていれば問題ないでしょう。相手は学生とはいえ慰謝料は十分にとれますよ」
さやか「その、それで……」
三木「接近禁止令ですか? これも問題ないでしょう。話を聞く限り相手は少し異常なところがあるようだ」
さやか「ありがとうございます。よかったね、まどか」
まどか「う、うん……。で、でも良いんですか? 私そんなにお金とか用意できなくて……それなのにこんな大きな弁護士事務所の、しょ、所長さんが担当してくれるなんて」
三木「良いんですよ。私は兼ねてからセクハラ問題には憤りを感じていましてね。特に若年層へのセクハラの件数は年々増加している」
三木「その問題提起のために私自らが法廷の場を通して、世間の皆様方に語りかけていきたいのです」
三木「鹿目まどかさん。むしろ私が頭を下げる方です。まるで見世物のような言い方をしてしまいましたが、どうか私に協力させて下さい」
まどか「三木さん……。はい、よろしくお願いします」
三木「大船に乗ったつもりでいてください」ニッコリ
三木(古美門が相手側の女についたという情報は仕入れている)
三木(あいつも血迷ったものだ。さすがにこんな案件で勝てる訳がない……! 今度こそ、今度こそ、さおりの敵を……!)
さやか「………」
◇
古美門「ほうほう。それで君は欲望に任せて同級生かつ同性である少女に抱き着いた、と」
古美門「それで周囲の友人からその光景を バ ッ チ リ と写真にとられ、引きはがされようとするも 無 理 矢 理 に 抱きしめ続け、更には 強 引 にキスまでした、と」
古美門「ふむ、証拠もあれば証人もいる。それで君の要望は?」
ほむら「勿論完全無罪よ」
古美門「おっと、何だか急に耳が遠くなったようだ~! 服部さん、後で耳鼻科の予約を入れておいてください。法曹界の宝に大きな危機が迫っているかもしれない」
黛「あの、ほむらさん。あなたが鹿目まどかさんに抱き着いたことは確かなんですか? 例えば周囲から強制された、というシチュエーションなら挽回は可能かもしれません」
ほむら「私が、私の意志で、鹿目まどかに抱き着いたわ。それは否定のしようもないわ」
古美門「なるほど。本当に罪を犯していて、証拠も揃っているけど、無罪放免にしてほしいと」
ほむら「あら、よく分かっているじゃない」
古美門「暁美ほむらさん。どうやら君は社会というものを全く理解していないようだ。罪を犯せば罰せられる。罪を犯して罰せられたくなければ、あらゆる手段を駆使して証拠を隠滅し、あらゆる手段を駆使して事件そのものを隠蔽することだ。
古美門「自分なら大丈夫、というゆとり特有の謎の選民思想で行動でも起こしたか? その先に待つのは当然ながら破滅の二文字だけだ。精々たくさん金でもふんだくられて来ることだ~」
ほむら「その物言いだと弁護してはくれないみたいね」
古美門「あーたーりーまーえーだ。既にチェックメイトが宣告された状況でチェス盤を渡されても、なにもできやしない。世界チャンピオンだろうと敗北に決まっている」
古美門「おっぺけぺーが、おっぺけぺーな思考のままに事件を起こしたことがそもそもの間違いだ」
古美門「その状況じゃあ百パーセント無理だ。このハイパーウルトラアルティメット最強弁護士・古美門研介であろうとな!」
黛「情状酌量を求めるというのはどうですか? しっかりと反省の意志を見せれば、慰謝料なども安くなりますよ」
ほむら「却下」
黛「で、ですが、現状で無罪なんて到底無理ですよ!」
ほむら「その無理を何とかできる弁護士と聞いて、私は古美門先生を訪ねたの」
ほむら「あなたに頼んだ訳じゃないわ。口を挟まないで」
古美門「そうだ。黙っていたまえ、凡百な朝ドラヒロインなどにどうこう出来る問題じゃあない」
黛(あんただって、どうにもできないでしょうが!)
黛「先生、いくらなんでも無理ですよ。こちらが有利な要素が一つもありません」
古美門「当たり前だ。破滅が待ち受けるのを分かっていながら、自らそこに突っ込む馬鹿がいるか。そんなのは朝ドラヒロインだけで十分だ」
ほむら「そう。これでも依頼は受けてくれないの?」パチン サツタバドバー
古美門「!?」
黛「!?」
黛(更に倍ぐらいの札束がでた!? てかこれだけのお金がるなら普通に慰謝料払えるんじゃ……)
黛「先生、欲に目がくらんじゃダメですよ―――って、先生!?」
古美門「はっ、手が勝手に!」
ほむら「そう、これでもダメなの。なら―――」パチン
古美門「」フラーバタン!
黛「え!? 先生!?」
服部「先生!」
ほむら「あら、興奮しすぎて気絶しちゃったみたいね」
黛「そ、そんな……いくらなんでも情けなさすぎますよ!」
服部「ふむ。脈拍・呼吸に異常はありませんな。体温も正常。瞳孔偏移や対光反射異常も見られません。外傷もない。おそらく貧血か何かでしょう」テキパキ
ほむら「凄いわね。あなた医者?」
服部「なに。他愛もない取り柄でございます」
古美門「はっ! 一体なにがおきた!」
服部「お目覚めになられましたか。ご気分はいかがですかな」
黛「先生、いきなり何してるんですか!」
古美門「いや、いきなり立ち眩みが……」
ほむら「それで? 明確な答えをまだ聞いてないわ。依頼を受けてくれるの?」
黛「ですから無理―――「受けましょう!」―――はい?」
ほむら「……そう」ニヤリ
古美門「暁美ほむらさん。あなたの依頼、お受けしましょう。それだけの大金を積まれたのだ。必ず無罪を勝ち取ってみせます」
黛「せ、先生? 何を仰ってるんですか!」
古美門「朝ドラは黙っていろ」
服部「先生。僭越ながら一言申し上げさせていただくなら、今回ばかりは些か難題かと……」
古美門「服部さんまで、何を言っているのですか。このハイパーウルトラアルティメット最強弁護士・古美門研介に不可能などありませんよ」
ほむら「その言葉を待っていたの。お願いするわ、古美門先生」
古美門「任せておきたまえ」
ほむら「ええ、大船に乗った気でいるわ」
黛「!?」
黛(なに、あの邪悪な微笑み……)
古美門「さぁ、行くぞ! この変態レズビアン貧乳少女を弁護して、ウン億円を掴み取るのだ!」
黛「………」
今回は以上となります。
また書き溜めができしただい更新していきたいと思います。
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