----事務所----
ガチャ
杏「……おはよーござーまーす……ふあぁ」
かな子「あ、杏ちゃん! 欠伸しながら挨拶しちゃだめだよ」ヒソヒソ
智絵里「でも、誰もいないみたいです……」
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杏「だってさぁ……眠いじゃん?」
智絵里「杏ちゃん、寝不足なの?」
杏「んー……キリのいいところまで進めてから寝ようと思ったんだけど、想像以上にセーブポイントまでが遠くてね……」
かな子「……つまり、遅い時間までゲームしてたんだね」
杏「あはは。そのとーりー」ドヤァ…
智絵里「……いつものドヤ顔も、ちょっと元気がないね」
かな子「今日は雑誌のインタビューのお仕事だけど、大丈夫?」
杏「……もし途中で寝ちゃっても、それはそれで面白いからいいか」
かな子「そんなぁ……プロデューサーさんに叱られても知らないよ?」
智絵里「面白いっていうか、前代未聞じゃないかな……?」
杏「ふふふ。杏はいつでもフリーダムなのだ」
杏「……だから、後は二人に任せて帰るね?」
かな子・智絵里「なんでやねん!」ビシ
杏「あぅ」
杏「……とまあ冗談はさておき、大丈夫だよ。一応、本気で寝落ちしそうってほどじゃないからさ……」
智絵里「……本当に?」
杏「ホントホント。……ふあぁ」
かな子「そうだ! 眠気覚ましに、コーヒーでも淹れようか? インスタントのなら確か、そこの棚にあるはずだから」
杏「あー……うん、お願いするよー」
かな子「じゃあ、ちょっと待っててね!」トテトテ
智絵里「……もう。杏ちゃん、夜更かしは控えないと駄目だよ?」
杏「そんなぁ。夜は思いっきりネットやゲームを楽しむためにある時間じゃないかぁ」グデー
智絵里「そう……なのかな?」
杏「智絵里ちゃんはいつも、何時ぐらいに寝てるの?」
智絵里「わ、わたし? うーん、お仕事が無い日だと、十時を過ぎる頃には眠くなっちゃうかな? お仕事で遅くなった日なんかは、寝るのももっと遅くなるけど」
杏「……マジで? 早すぎない?」
智絵里「そんなこと無いと思うけど……」
杏「それぐらいの時間なら、杏まだぴんぴんしてるよ」
智絵里「きっと杏ちゃんは、よくお昼寝してるから、夜眠くならないんじゃないかな?」
杏「……そうか。つまり、『双葉杏』という生き物は、夜行性だったんだよ。納得納得」ウンウン
智絵里「えぇー……」
かな子「おまたせー。コーヒーと、昨日作ってきたプリンだよ」コト
智絵里「あ、ありがとう」
杏「さすがかな子ちゃん、抜かりないなぁ」パク
杏「んー、あまー」
智絵里「杏ちゃん、最初の目的、忘れてない……?」パク
智絵里「……あ、美味しい」
かな子「まあまあ、疲れた時には甘いものを、とも言うし」パク
杏「ねえ、これもしかして、カラメルソースも手作り?」
かな子「そうだよ」
智絵里「へえ……カラメルソースって、自分で作れるんだ」
かな子「材料は砂糖と水だけだから、結構楽ちんだよ。ただ、煮詰めすぎるとすぐに焦げて苦くなっちゃうから、火から降ろすタイミングが少し難しいけど」
杏「なるほどねー」
かな子「今日はたくさん作って来たから、他の皆が来たらおすそ分けしようって思ってるんだ!」
智絵里「ふふっ。みんな、喜ぶと思うな」
杏「なんたって評判高いかな子ちゃん特製スイーツだもん。争奪戦が起こるよ」
かな子「そ、そんなぁ。さすがにそこまではならないよぉ」
智絵里「なんだか、小学校の給食を思い出しますね。休んだ子のデザートを、みんなでジャンケンして取り合ったり」
杏「あー、あったあった」
かな子「懐かしいなぁ。 智絵里ちゃん、意外と強かったんじゃない?」
杏「あー、四つ葉のクローバーパワー?」
智絵里「い、いえ……わたしは、おかわりするほど食べられないから……。おかずなんかも、残して隣の子に手伝ってもらったりしてたし……」
智絵里「給食のあと、お昼休みに四つ葉のクローバーを探してて、夢中になり過ぎて午後の授業に遅刻しそうになったことなら、何度かあるけど……」シュン
かな子「あはは。なんだか、すごい智絵里ちゃんらしいよ」
杏「ってことは、居眠りに集中してレッスンに遅れちゃう杏と、智絵里ちゃんは仲間ってことだね!」
智絵里「な、なんでやねん!」ビシ
杏「あぅ」
智絵里「あっ……その、違うんですっ! 別に、仲間じゃないっていうのは、そういうことじゃなくって……杏ちゃんもかな子ちゃんも、ユニットとして、と、とっても大切な仲間なのは、もちろんそうで……」アワアワ
杏「ちょっと、落ち着いてよ。そんなの分かってるってば。ねぇ、かな子ちゃん?」
かな子「もちろんだよ! 私たち、三人揃ってキャンディアイランドだもん!」
智絵里「う、うん……ごめんね、二人とも……ありがとう」
杏「あと智絵里ちゃん、ツッコミはもっと堂々とやってもいいんだよ? でないと、杏もおちおちボケられないし」
智絵里「そうだね……よぉし、もっとしっかりつっこめるように、頑張るぞっ」
かな子「……なんだか芸人さんみたいなこと言ってるけど、私たちってアイドル……だよね?」
杏「あー、なんだかんだで目が覚めてきたよ」
杏「今日のインタビューって、どんなのだったっけ?」
智絵里「えっと、確かプロデューサーさんに貰った資料がここに……」ガサゴソ
智絵里「ありましたっ。『可愛いだけじゃない! バラエティでも活躍する超個性派アイドル達』っていう特集記事みたいです」
かな子「やっぱり、世間にもそう見られてるんだ……」
杏「よかったね、『アイドルとしても活躍する芸人』扱いじゃなくて」
かな子「うぅ……でも、ファンの人たちに楽しんで貰えているなら、いいのかな?」
智絵里「あっ、幸子ちゃんの名前もあるよ」
かな子「本当だ。私たちのあとに取材受けるみたいだね」
杏「幸子ちゃんはこのジャンルなら一線級だからねー」
かな子「確かに、可愛くて人気もあるのに、どんな大変なお仕事も体当たりでこなしてるもんね」
智絵里「わたしたちの目標、ですねっ!」
杏「目標はいいけど、あんまり体を張るような仕事ばっかりやらされるのは、杏的にはちょっと……」
杏「座って交通量調査するだけの仕事とか、そういうのでいいんだけどなー」
かな子「……杏ちゃん。本格的にアイドルから遠ざかってるよ」
智絵里「それに、季節によっては暑かったり寒かったりする中、外でじっと座ってるのって意外と辛いんじゃないかな?」
杏「言われてみればそうかも。うーん……仕事って、大変なんだなぁ……」トオイメ
智絵里「大変ですよね……人前に出ると、緊張しちゃうし……」
かな子「うん……失敗すると、いろんな人に迷惑がかかっちゃうし……」
智絵里・かな子「……」シュン
杏「待って。なんか考えてることのベクトルが違う気がする」
かな子「よ、よーし! まずは今日のお仕事を失敗しないで乗り切るために、練習しよう!」
智絵里「う、うん! 杏ちゃん、記者さんの役、お願いしますっ!」
杏「え、ちょっ……いきなりだな……。なに、インタビューすればいいの?」
かな子「うん、何でも聞いていいよ!」フンス
杏「それじゃ……ベタに、休日はどんなことをして過ごしてますか、とか? はい、かな子ちゃんから」
かな子「えぇと、お休みの日は、家でケーキやお菓子を作っていることが多いです。作ったお菓子は事務所に持ってきてアイドル仲間のみんなで食べたりするんですけど、みんな美味しいって喜んでくれるので、作り甲斐があります!」
智絵里「わ、わたしは……よく、一人で近所の公園にお散歩に行って、四つ葉のクローバーを探したり、してますっ」
杏「うんうん。いいんじゃない? 次はそうだなぁ……今、一番欲しいものは?」
杏「杏だったら、飴と休暇と印税って、即答だけど」
智絵里「欲しいもの、かぁ……えぇと……どうしよう、すぐに出てこないかも」
杏「欲が無いなぁ」
かな子「私は……一番は、お仕事……かな?」
智絵里「お仕事、ですか?」
かな子「うん。たくさんお仕事をもらって、一人でも多くのファンにハッピーを届けられたらなって思います!」
智絵里「かな子ちゃん……!」
杏「あー、模範解答だねぇ。さすがかな子ちゃん」
かな子「えへへ……本当は、馴染みのカフェの新作スイーツが、っていうのも考えたんだけど」
杏「それはそれで、かな子ちゃんのキャラに合ってていいと思うけどねー」
智絵里「うぅ……二人とも、自分の考えをはっきり言えて、すごいなぁ……」
かな子「そんなこと無いよ! 私も、今のはたまたますぐに思いついただけだし……」
杏「いざとなったら、『笑いが欲しいです!』とかいって一発ギャグでも披露すればいいんじゃない?」
智絵里「そ、そんなぁ。そっちのほうが難しいよ……」
杏「なぁに、オイシイから大丈夫だよ」
かな子「だけど、バラエティ系の雑誌なら、そういう無茶振りみたいなこともある……かも?」
智絵里「あわわ……もしそうだったらどうしよう……!」
杏「さあ智絵里ちゃん。今こそ鍛え上げたアドリブ力を解き放つのだー!」
智絵里「えっと……えっと……っ!」カタッ
かな子「あっ、プリンのスプーンを……」
杏「頭の上に……」
智絵里「ちょ、ちょんまげ! ですっ!」
かな子・杏「……」
智絵里「……っ」カァァ
かな子・杏「かわいい」
智絵里「ふぇっ!?」
かな子「智絵里ちゃん! 頑張ったよ! うん、いいと思う!」
智絵里「えっ、そ、そうかな……?」テレテレ
杏「うんうん! ほら、そのまま何か殿様っぽいことでも言ってみてよ!」
ガチャ
卯月「おはようございます!」
智絵里「ず、頭が高いっ! 控えおろーう!」
かな子・杏「ははぁーっ!」
卯月「ぅええっ!? な、何事ですか!?」
おわり
以上、お付き合いありがとうございました。
過去作
キャンディアイランドの毒にも薬にもならないおしゃべり
キャンディアイランドの更に毒にも薬にもならないおしゃべり
も、よろしければどうぞ。
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