穂乃果「さすが真姫ちゃん」 (28)

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とある日の午後

穂乃果「いや~、何故穂乃果はあそこでグーを出したのかな?一回で負けるなんて」

真姫「今さら、そんな事を言ったて仕方ないでしょ?」

穂乃果「時間が巻き戻せたら絶対にチョキをだすのに」

真姫「穂乃果がチョキを出しても私がグーならあいこになるだけでしょ?」

穂乃果「そうだよ。でも、穂乃果がパーを出したら真姫ちゃんが一人で買い出しに行くことになっちゃうよ?」

真姫「へ?」

穂乃果「まあ、誰かしらが負けるんだけどね?それを考えたら二人で負けて良かったかも。真姫ちゃんと二人だし」

真姫「…なっ」カァ

穂乃果「あれ?真姫ちゃん顔が赤くなってるよ?」

悪ガキA「へ、小説なんか書いて暗いやつ」

悪ガキB「お前が小説家になんかなれるわけないだろ」

少年「なれるもん」

悪ガキA「嘘つけ」

悪ガキB「絶対無理だよ」

悪ガキA「頭悪い癖に」

穂乃果「…穂乃果は本当によくよくトラブルに出くわすなぁ」

真姫「ほんとね」

穂乃果「どうしよう。お姉さんが助けに行っといた方がいいかな?」

真姫「え?」

穂乃果「こらー。君たち人の夢を笑っちゃいけないんだよ!!」

悪ガキA「げっ!高校生だっ」

悪ガキB「やべ、逃げろ」



穂乃果「あっ、逃げた」

真姫「凄いわね。高校生の格好をしてるだけで穂乃果でも大人に見えるのね。小学生からしたら」

穂乃果「それって褒めて…ないよね?」

真姫「さあ?」

少年「…」

穂乃果「君、大丈夫?」

少年「…」コクン

穂乃果「…そっか」

真姫「…」

少年「うん。ありがとうございました」



穂乃果「えっと…君は小説家になりたいの?」

少年「…」

穂乃果「す、凄いよね」

少年「…」

真姫「…穂乃果、あんまり人の事を詮索するものじゃないわ」

穂乃果「そ、そっか」

少年「…」

穂乃果「ま、まあ頑張ってね」

少年「本当はわかってるんだ」ボソッ

穂乃果「へ?」

真姫「…」

少年「本当は僕なんかが小説家になれるわけがないってわかってるんだ」

穂乃果「そんな事は」

少年「そんな事はない?お姉さんが僕の何を知ってるの?」

穂乃果「それは…」

真姫「何も知らないわよ」

穂乃果「真姫ちゃん?」

少年「そうでしょ?僕がどんだけ本を読んできたかも。毎日、ノートに書き溜めてる事も。それなのに本を読んだ事もないような奴らにバカにされて。コンクールに出しても佳作にも引っ掛からない事も」

真姫「…知るはずないじゃない」

少年「だったら、知ったような事を言わないでよ。頑張ってとか小説家になれるとかそんな事を言わないでよ。夢はいずれ叶うなんて小説や映画の中では言ってるけどそんのは成功した人間が作った話しじゃないか。人の夢と書いて儚いと読むんだよ。」

穂乃果「でも、諦めなければ夢は…」

少年「夢は叶うとか無責任な事を言わないでよ」

穂乃果「…ごめん」

真姫「なんで、穂乃果が謝るのよ」

穂乃果「いや、だって」

真姫「助けて貰っといて八つ当たりはやめて頂戴」

少年「なっ。誰も助けてなんて言ってないじゃないか」

真姫「そうね。言われてないわ。でも、事実穂乃果に助けられてるんだからその態度は失礼でしょ?」

少年「…それは」

真姫「そうでしょ?ま、いいわ。行きましょう、穂乃果」

穂乃果「えぇ?放っておくの?」

真姫「ええ。その子もそうして欲しいみたいだし。あんまり、他人の事に干渉するものじゃないわ」

穂乃果「でも、それって…冷たいよ」

真姫「仕方ないじゃない。彼自信が諦めてるんですもの。」

少年「僕だって…僕だって本当は諦めたくなんか…でも…」

真姫「でも、何よ?さっきから言い訳ばかりして。かまって欲しいの見え見えなのよ。何がバカにされるよ」

穂乃果「え?え?真姫ちゃん?」

真姫「私の知ってる人はね、3年間ずっと一人ぼっちでも夢を諦める事はなかったわ。裏切られる事もあったでしょう。バカにされる事もあったでしょう。時には心ない事も言われたかも知れない。夢なんて他人から理解されなきゃカッコ悪いだけかもしれない。でも、彼女はただ好きだからって理由で続けていたわ。」

少年「…」

穂乃果「…真姫ちゃん」

真姫「確かに私はあなたの事を何にも知らないわ。だから、あなたにとやかく言う資格はない。でも、あなただってあなたの夢の結末なんか知らないじゃない。なら、あなたが勝手にあなたの夢を…可能性を否定する事はないじゃない」

少年「でも…」

真姫「さっき、言った彼女ね。今、スクールアイドルとしてステージに立って歌って踊ってるわ。それだって、まだ夢が叶ったわけじゃないけど確実に夢に向かって進んでるわよ」

少年「…」

真姫「こんな事は小説家希望に言うことではないかも知れないけど…夢と書いて儚い何んて言葉はそれこそあなたの知らない赤の他人が作った言葉でしょ?いちいち、真に受ける必要はないわ」

少年「うん」

真姫「…なんてね」

少年「…僕、もうちょっと続けてみるよ。別にお姉さんに言われたからじゃないよ。ただ自分の事は自分で決めただけだから」

真姫「そう。勝手にして」ニコッ

少年「うん。じゃあね」

穂乃果「いや~、真姫ちゃんの演説中…お見事だったよ。…穂乃果にはとてもあんな事は」

真姫「何、言ってるのよ。私は穂乃果が飛び出して行かなかったらあんな事は言わなかったわ。それに、私があんな事を言えたのは穂乃果や…」

穂乃果「ん?」

真姫「何でもないわ。とにかく穂乃果には人を動かす力があるのね」

穂乃果「ええ?随分と素直だね?穂乃果は嬉しいよ~」ダキッ

真姫「ち、ちょっと…離れてよ」

穂乃果「え~」

真姫「まったく、それよりも早く買い出しに行きましょう?」

穂乃果「うん。…でも、真姫ちゃんも変わったよね。さすがだなぁ」

真姫「へ?何か言った?」

穂乃果「別に~」

とある日の休日

凛「今日は真姫ちゃんとお出掛けにゃ~」

真姫「凛、バスの中では静かにしなさいよ。迷惑でしょ?」

凛「わかった。真姫ちゃんの言うとおりにゃ。マナーは守らないとね」

真姫「ふふ。凛は聞き分けが良くていいわ」

凛「いや~、褒めても何もでないよ?」

真姫「凛にそんな事は期待してないわ」

凛「真姫ちゃん手厳しい」

真姫「ふふ」

凛「あれ?」

おばあさん「うぅ」

凛「あのおばあさん…辛そうだね」

真姫「そうね。老体にはバスの中を立ってるのはつらいわね」

凛「どうしよう。どこか…あっ!」

凛「あのぉ」

男「あ?」

凛「すいません。あそこのおばあさんとお席を替わって差し上げてくれませんか?」

男「…やだ」

凛「でも、そこはシルバーシートだし」

男「だから何だよ?俺も疲れてるんだよ。それに、俺はちゃんと金を払ってるんだから席に座る権利がある」

凛「いや、ですけどシルバーシートはお年寄り優先て書いてあるし」

男「法律で決まってるのか?」

凛「それは…」

真姫「大人の台詞とは思えない」ボソッ

真姫「凛、やめなさい。この人はこの椅子に座る権利があるみたいだから」

男「なんだ、連れの赤毛はわかってるじゃねぇか」

凛「真姫ちゃん?」

おばあさん「いいんですよ」

真姫「凛、シルバーシートはね何もお年寄りだけの物じゃないのよ?」

凛「そ、そんなぁ。真姫ちゃん見損なったにゃ」

男「へへ」

真姫「シルバーシートは病気の人や怪我人も優先的に座る権利があるの」

凛「へ?でも、この人は」

真姫「病気なんですよね?」

男「お?そうそう。病気なんだよ。最近調子が悪くて」

凛「そんなのどう考えても嘘にゃ」

真姫「いいえ、凛。残念だけどこの人は本当に病気よ?」

凛「ねえ、真姫ちゃん?本当にどうしちゃったの?」

真姫「凛?私はこう見えても将来は西木野総合病院を背負って行くのよ?」

凛「うん」

真姫「その私が言うんだから間違いないわよ」

凛「でも…全然元気に見えるけど?」

真姫「そうね。この人は心の病気なのよ」

凛「え?」

男「はあ?」

真姫「病名は…自己中病よ」

凛「…なるほど」

真姫「症状は著しいモラルの低下よ」

男「は?ふざけんなよ」

真姫「ほら、バスの中で周りの迷惑も考えず大声で怒鳴る」

男「なっ」

凛「なるほど」

男「黙って聞いてりゃ、この」

真姫「黙ってなかったでしょ?もしかして、記憶力も低下してるのかしら?」

男「このっ」ダッ

真姫「あら?随分と元気に立ち上がるわね?立てないほど具合が悪かったんじゃなかったかしら?」

男「それは…」

真姫「随分と足腰も強そうだし…背筋もピンとしてるわね。心の病は患っててもシルバーシートに座る必要は感じないわね」

男「だっ、それは」

真姫「それとも、もしかして…見た目よりもお年をめしてるのかしら?」

男「そんなわけないだろ?」

真姫「そうでよね?じゃあ、それを踏まえてもう一度言いますね?立ってるのが辛そうなお年寄りがいるので席を替わって差し上げてください」

男「ち、ちぃ。ばあさん、座れよ」

おばあさん「ありがとうね」

男「お、おう」

おばあさん「あなた達もありがとう」

凛「ううん。座れて良かったね」

真姫「全く、本当は病気なんて持ち出したくなかったのよ。本当に病気で苦しんでる人は沢山いるんだから」

凛「そうだね。でも、真姫ちゃんがしたことは良いことにゃ。さすがだよ」

ある日の午後

凛「ふう、やっと掃除終わったにゃ」

真姫「たかだか15分でしょ?」

凛「そうだけど、その15分が貴重なんだよ?青春なんだから」

真姫「イミワカンナイ」

ピンポーンパンポーン

「1年生の星空凛さん。職員室まで」

凛「え?嘘?」

真姫「何したのよ?」

凛「あ、化学のレポートの提出忘れてたにゃ」

真姫「もう、先に部室行ってるわよ」

凛「そんなぁ、凛の青春がぁ~」

真姫「自業自得よ」

~部室~

ガラガラ

真姫「あら?」

花陽「はぁ」

真姫「花陽一人?」

花陽「…」

真姫「は・な・よ!」

花陽「ピャア」

真姫「やっと、気がついた」

花陽「ま、真姫ちゃん」

真姫「どうしたのよ?」

花陽「な、何が?」

真姫「何がって…明らかに元気ないじゃない」

花陽「そんな事は…」

真姫「何よ?何があったのよ」

花陽「…」

真姫「私には言えない事なの?」

花陽「ううん」

真姫「あのね、花陽…」

花陽「真姫ちゃん?」

真姫「私ね、つい最近まであなたと凛に嫉妬していたの」

花陽「へ?」

真姫「花陽と凛は小さな頃からずっと一緒に居て私の知らない事も…きっと、私には入る余地のない絆があるんだって決めつけていたの」

花陽「…」

真姫「それは仕方がない事だって…だって、私には二人と過ごした時間が少ないしその分共有している思い出も少ないから。私には二人との間に確かな物が足りないんじゃないかって」

花陽「うん」

真姫「でもね、希が言ってくれたの。確かに、過ごした時間が長ければそれは素敵な事かもしれない。けど、大切なのは時間じゃない、今一緒にいる事なんじゃないかって。それを言われるまで気がつかなかった。私って本当にバカだなって思ったわ」

真姫「ねえ、花陽?私にとって二人は悩むほど大切な存在になってるの。あなた達と一緒に居て一喜一憂する様になってしまったの。あなた達が居ないとダメだって…ワガママになってしまったの」

花陽「…真姫ちゃん」

真姫「ねえ?悩んでいるなら私に言ってよ。困っているなら私を頼ってよ。迷惑を掛けてくれてもいいわ。くだらない事ならちゃんと怒るし、花陽が悲しむなら私がその涙を拭ってあげる。花陽が笑うなら一緒に笑っていたいし…花陽が道を間違えたら叱ってあげるし私の事も叱って欲しい」

花陽「…」

真姫「必死でしょ?いつものクールで冷静沈着な私なんて見る影もないでしょ?仕方ないじゃない?花陽は…あなた達二人は私の初めての友達なんだから。私にとっては全て初めての事なんだから…仕方ないじゃない…家族以外で…初めて出来た…何よりも大切だと思える宝物なんだから…花陽も凛もμ'sも…」

花陽「…ふ、ふふふ」

真姫「な、何で笑うのよ?」

花陽「アハハハハ」

真姫「何が可笑しいの?私は真剣なのよ?」

花陽「ご、ごめんね?じゃあ、これから怒ってくれる?」

真姫「え?」

花陽「ただね、お家の炊飯器が壊れちゃって今日はご飯が食べれなって落ち込んでたの。でも、それを言うのが恥ずかしくって」

真姫「な、何よそれ?イミワカンナイ」

花陽「うん。ごめんね、くだらない事で?だから、真姫ちゃん、怒って?」

真姫「怒るどころか呆れたわよ」



真姫「でも、私って本当にバカね」

花陽「え?」

真姫「きっと、皆と出会わなかったら一生こんな恥ずかしい事経験しなかったわね。悩んで、嫉妬して、勘違いして、暴走して」

花陽「…そうだね。この先も何回でも経験出来るよ」

真姫「ふふ、それは気が重いわね」

花陽「ぷっ、ふふ、アハハ」

真姫「ウフフ、アハハ」

ガチャ

凛「おっ待たせぇ…ってあれ?二人とも何で笑ってるの?何か面白いことあったの?」

真姫「それは内緒」

凛「えー?かよちん?」

花陽「ごめんね、凛ちゃん」

凛「あー凛だけ仲間外れなんてずるいにゃ」

真姫「たまにはいいでしょ?凛は私の知らない事をいっぱい持ってるんだから」

凛「え?何の事?」

真姫「教えなーい」

凛「ずるいにゃ。教えるにゃ」

真姫「どうしようかしら?」

凛「教えてよ」

花陽「どうしよっか、真姫ちゃん?」

真姫「まあ、とりあえず今日は3人でお泊まり会でもしましょうか?」

凛「えー?何で急に?」

花陽「じゃあ、私の家に来ない?」

真姫「いいわね。賛成!あ、中学生の頃の卒業アルバム見ちゃおう」

凛「ええ?」



真姫「それくらい、いいでしょ?」





希「ごめんね。一部始終見ちゃったよ。でも、真姫ちゃんならウチが何も言わなくても遅かれ早かれ気づいたよ。さすがやね」

絵里「そうね。頼もしいわね」

にこ「何も心配はいらないわね」

海未「さあ、私達も行きましょう?」

ことり「うん。早く練習しなくちゃね」

穂乃果「さて、いっちょ青春でもしますか」

ガチャ



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