佐々美「な、棗鈴と仲良くしたいですって!?」取り巻き達「「「はい!」」」 (37)



佐々美部屋

佐々美「急に話があるからと聞いてみれば、いったい何を言ってらっしゃるの?棗鈴はこの私、笹瀬川佐々美のライバルにして宿敵!まさか貴方達、寝返ろうとでも思って!?」

渡辺「そ、そんなこと微塵も思っていませんわ!あくまでこの身はすべて佐々美様のために……!!」

川越「でも、私達はそういうのではなくただ友達としても接したいと思いましたの」

中村「……だから、いつもの様に闘うのではなく、たまには彼女と話し合い、理解を深めたいなと……3人で話し合いました」

佐々美「そ、そんなこと言ったって……!」

渡辺「お願いします佐々美様!どうか、一度だけ停戦協定の申し入れだけでも!もしかしたら棗鈴もそろそろ闘いに疲れているかもしれませんわ!」

佐々美「で、でも、そんな彼女を倒してこそのライバル……」

川越・中村「「佐々美様!!」」

佐々美「く、くぅ…………」

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左から中村、川越、中村



理樹部屋

真人「……ん。もうこんなに暗くなったか」

恭介「秋は夜が早いからな。……よし理樹、悪いが鈴を送ってやってくれ」

鈴「あたしは別に一人でも大丈夫だ」

恭介「えっ、でも幽霊が出てきたらどうするんだ?」

鈴「うっ……それは……」

理樹「そこで普通に『痛いところを突かれた』って感じのリアクションになるのは鈴だけだよ……」

謙吾「まあ、とにかく校内とはいえ夜が危ないのには変わりない。大人しく彼氏に連れてってもらえ」

鈴「おーまーいーが……」

女子寮前

理樹「じゃあここからはもう大丈夫だよね?」

鈴「ああ。ありがとうな」

理樹「ふふっ、どういたしまし……」

「棗鈴!!」

鈴・理樹「「!?」」

鈴「そ、その声は……!」

佐々美「棗さん!今日という今日はあなたを徹底的に叩きのめ……」

渡辺「佐々美様!」

佐々美「ぐっ……い、いえ……き、今日はその……少しお話がありまして……」

鈴「ん?なんだか今日は様子が変だな……」

理樹「確かに。いつもなら問答無用で襲いかかって来そうなのにね」

佐々美「話を聴きなさーい!!」

鈴「夜に騒ぐと迷惑だぞ」

佐々美「うっ……至極当たり前のことを注意されると結構傷つきますわね……じゃなくて!」

佐々美「と、とにかく!私が申し上げたいのは、あ、あ、あなたと……その……」

鈴「?」

中村「佐々美様……頑張ってください……っ!」

佐々美「だからええと………たまには…休戦というのも……どうかと提案させていただきますわ!」

鈴「………理樹、きゅーせんってなんだ?」

理樹「……バトルをするのは止めようって言ってるんだと思うよっ……」

鈴「なるほどな。なんだ、そんな事ならあたしは全然構わないぞ」

佐々美「!」

川越「佐々美様、やりましたね!」

佐々美「ほ、本当ですの……?」

鈴「うん。あたしも一度お前達とゆっくり話してみたかったんだ」

理樹「へえ、仲直りか。なんというか、お互いの成長を感じるなあ…」

佐々美「で、ではせっかくですし消灯の時間まで私の部屋にご招待しますわ!今後の方針について話し合いましょう!きっと今なら小毬さんもいますし」

鈴「小毬ちゃんと同じ部屋だったか!なら早く行くぞサムシングセサミ!」

佐々美「……………は?」

鈴「ん?」

渡辺「ああ……」

佐々美「今なんと?」

鈴「小毬ちゃんと同じ部屋だったか!」

佐々美「その後!何か最後に言ったでしょう!」

鈴「サムシングセサミ?」

中村「オーマイゴット…ですわ……」

佐々美「な、な、な………」

鈴「ななな?」

佐々美「なんですのそのアメリカンな単語はーーーっっ!!」

佐々美「また私の名前を間違えましたわね!?せっかく私がここまで歩み寄っているというのにあなたって人は!!」

理樹「さ、笹瀬川さん!落ち着いて!」

佐々美「これが落ち着いてなんかいられるもんですか!あなた達、やっておしまいっっ!!」

鈴「なんだ、結局闘うのか!?」

次の日



食堂

佐々美「や、やってしまいましたわ……」

中村「佐々美様……元気を出してください」

渡辺「そうですわ!昨日はなかなか惜しかったですわ!」

川越「最初から全て順調に行くことはありません。あせらずゆっくり事を進めましょう」

佐々美「そうは言ってもまた顔を見たらお互い喧嘩してしまうかもしれませんわ……はあ、どうすれば……!」

川越「私に良い考えがあります。昨日、棗さんと一緒にいた直枝さんに知恵をお借りするというのはいかがでしょう?」

佐々美「ああ、あのいつも隣にいる……」

渡辺「グッドアイデアですわ!彼ならきっと棗さんと仲良くする方法を知っているかもしれません!」

佐々美「ふむ………」

昼休み

食堂

佐々美「………………」

中村「ということで、あなたに意見をお聴きしたいのですが……」

理樹「き、急に連れてこられたかと思ったらそんなことを考えてたの」

川越「どうかお願いします直枝さん。いつも仲の良いあなたなら棗さんとのコミュニケーションの秘訣を知っていらっしゃるかと……」

理樹「ううん、秘訣っていうか……別にこれといって意識してることはないんだけどな……」

渡辺「そこをなんとか!」

理樹「そうだな……強いて言うなら鈴はよく猫にモンペチを食べさせているから今度一緒にあげてみるってのはどうかな?ちょうど最近ストックが切れたって言ってたから一緒に買いに行くのもいいかもね」

渡辺「エサ……そうですわ!棗さんにモンペチという名のエサをチラつかせて機嫌をよくさせたらきっとスムーズに仲良くなれますわ!」

川越「なるほど。猫の餌で棗さんを釣ると……」

理樹「いや、そういう意味で言ったわけじゃないよ!?」

佐々美「いいえ………それ、採用させていただきますわ」

理樹「えぇ……」

放課後

中庭

鈴「よーしお前ら、ちょっと待ってろ!今からモンペチ急いで買ってくるからな!」

「ナーオ!」

「ニャオーン」

佐々美「……よ、よし…川越、例の物は?」

川越「はい。なんとか調達してきました」

渡辺「後はこれを渡すのをきっかけに仲良くなるだけですわ!」

佐々美「しっ!こ、声が大きい!」

鈴「誰かいるのか?」

佐々美・取り巻き「「「!!」」」

鈴「……なんだ、またお前達か。残念だが今は構っている暇が……」

佐々美「お待ちなさい!き、今日は違いますわ!」

鈴「なんだと?」

佐々美「こ、これ……ちょうど余っていましたの…」

鈴「そ、それはモンペチ!」

佐々美「わ、私は別に使う用途もありませんし、あなたがどうしても私達と友好を築きたいと申し入れるのであれば!……特別に差し上げないこともなくてよ!」

中村「ここまで威圧的に好意を寄せるなんて流石佐々美様ですわ……」

鈴「………………」

佐々美「……ど、どうかしまして?」

鈴「……最近、どうもロッカーのモンペチの減りが早いと思ったらまさかお前達が取っていったからなのか!?」

佐々美「は、はあ!?」

鈴「欲しいなら言えばやるというのに!泥棒はめっだ!!」

佐々美「だ、誰が泥棒なんか!!わざわざあなたの為に用意したというのになんという濡れ衣を!!」

佐々美「あなた達!!やっておしまいっっ!!」

渡辺「け、結局こうなるんですの!?」

………………………………………


……………………




女子寮

廊下

佐々美「……やはり棗さんと相容れるなんてどだい初めから無理な話ですわ!」

川越「佐々美様……」

渡辺「た、タイミングが悪かっただけですわ!次こそは……!」

佐々美「仮にまたやる気になったとしても策があって?」

中村「それは………」

佐々美「やはり棗鈴とは争い合う運命……お互い、拳でしか分かり合えぬ関係ですわ!」

『でさぁ…棗……がね…』

『あぁ……確かに……』

佐々美「棗……?ちょうどあちらの階段から棗さんについて誰か話しているようですわ。偵察に行きますわよ!」

渡辺「あっ、待ってくださいー!」

階段前

佐々美「さささっ」

渡辺・川越・中村「「「さささっ」」」

生徒A『うんうん…』

佐々美「さて、今は棗鈴の事ならなんでも知りたいですわ……何か彼女を陥れる糸口でも……」

生徒B『でもそろそろバレないかなぁ……いくら棗が鈍感でもそのうち気付くんじゃない?』

生徒A『大丈夫だって!自分が男子に人気あるって事さえ知らないような奴だし』

生徒B『それにしても最近ますますムカつくようになったよねぇ。今までやらなかった当番とか彼氏が出来てから急にやるようになって……良い女を演じたいのか知らないけど』

生徒A『夏……というか修学旅行が終わるまでは自己中だったのにね。聞けば事故ったバスには棗の兄貴も来てたらしいじゃん。案外それが原因じゃない?』

生徒B『ホント……今度はロッカーの中身全部取っ払っちゃおうか?』

生徒A『アハハッ!それは流石に気付かれるって!』

渡辺「なっ……!!」

川越「ロッカーの中身……バレる……?」

鈴『……最近、どうもロッカーのモンペチの減りが早いと思ったらまさかお前達が取っていったからなのか!?』

佐々美「ハッ!」

中村「……佐々美様っ」

佐々美「……………ええ、分かっていますわ……」

生徒B「じゃあ次は何いく?」

生徒A「うーん……」

「何を話しているのかしら?」

生徒A・B「「!?」」

佐々美「……………」

生徒B「な、なんだ……!確かD組の……笹瀬沢さんよね?棗かと思ったわ……」

生徒A「………そうだ!そういえばあなたも棗を良く思ってなかったよね?」

佐々美「ええ……その通りですわ」

生徒A「ふふっ、だったら面白い話あるんだけど聞いてかない?」

佐々美「いえ、既に聞こえていましたわ」

生徒B「なら話は早い!あなたもちょっとやってみない?放課後、誰もいなくなったら棗のロッカー開けて適当な物を取っていっちゃうの。あいつバカだから鍵つけてないんだ」

佐々美「ふっ……ふふふっ…」

生徒A「あははっ!」

生徒B「ククッ……」

佐々美「おーっほっほっほ!」

佐々美「………話になりませんわね」

生徒A「えっ!?」

渡辺「あなた方は佐々美様のことをまるで分かっていませんわ!」

中村「本人に隠れて物を取る……そんな悪知恵を絞っている低次元な嫌がらせ。そういう面倒なことは弱者が強者にするみっともない足掻きに等しいですわ!」

川越「佐々美様はいつも正しい。やる事なす事全てが洗礼されていますわ。ですから、そのようなまどろっこしいやり方ではなく、倒す時は正々堂々、完膚なきまでに棗さんを倒す!これにつきますわ!あなた達など傘下に入る価値もありません」

佐々美「………そのような無駄な事をして棗鈴に変なハンデが付くと、彼女に負けた時の口実が出来てしまう。なのでハッキリ申しますわ」

佐々美「棗鈴に余計な真似をするんじゃありませんわ!!このすっとこどっこいッッ!!」

生徒A・B「「ひ、ひっ……」」

佐々美「……ハッキリ!」

佐々美「そして言っておきますけれど私の名前は笹瀬川……っ!」

渡辺「佐々美様、2人ならもうとっくに逃げていきましたわ」

佐々美「なんですって!?」

「……おっ、なんだお前ら。全員集合してるな」

佐々美「あっ、あなたは!」

鈴「そう言えばさっきうちのクラスの奴が走って行ったがなんだったんだ?まさかイジメたりしてないだろうな……」

渡辺「ふっふっーん!それは違いますわ棗さん!何を言おうと実はさっき佐々美様が棗さんの……ムグッ!?」

佐々美「こ、こら!やめなさい!そういう事はわざわざ言うことではありません!」

鈴「どういうことだ?」

中村「いえ、なんでもありません。棗さんはただロッカーの鍵を今度からはかけるよう注意するだけでいいですわ」

鈴「ロッカーの鍵……?よく分からんが分かった」

佐々美「さっ、もう行きますわよ!」

鈴「ああ、待ってくれ笹瀬川。言いたいことがある」

佐々美「えっ?」

鈴「さっきは泥棒呼ばわりして悪かった。ごめん」

佐々美「な、棗さん……」

川越「佐々美様……仲良くなるチャンスですわ……っ!」

佐々美「ご、ごくり……」

佐々美「………そ、その……私も……売り言葉に買い言葉で突っかかって……悪かったと思ってますわ…」

鈴「うん。じゃあこれで仲直りだな。お前達もそれでいいのか?ええと……」

渡辺「渡辺ですわ!」

中村「中村です」

川越「川越……」

鈴「渡辺に中村に川越だな。よし、覚えた!」

渡辺「ああ……遂にこんな日が来るなんて…!」

川越「夢見たいですわ……」

中村「良かったですわね、佐々美様」

佐々美「うっ……なんだか照れ臭いですわ……」

後日

校内

廊下

中村「佐々美様、次の練習試合のメンバーですが……」

佐々美「ふむ……」

理樹「そこで真人がさ……」

鈴「ふーん……」

佐々美「あっ」

鈴「あっ」

理樹「げっ、笹瀬川さん!確かまだ鈴と……」

渡辺「ふふっ、それは違いますわ直枝さん」

理樹「えっ?」

鈴「おーおはよう」

佐々美「お……おはようございます。き、今日もいい天気ですわね」

理樹「あっ、仲良くなってる!?」

川越「ふふ……」

鈴「そーだな。今日昼は空いてるか?小毬ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べるんだがお前もどうだ」

佐々美「へっ!?」

理樹「おおっ、確かにこれは凄い……鈴が他の人をご飯に誘うなんて!」

佐々美「ぜ、ぜ、是非とも!あ…いえ!ごほん……もし予定が空いていたら行ってあげないこともありませんわ」

鈴「空いてるといいな!」

佐々美「え、ええ……」

理樹「ふぅ……やっとこれで少しは平穏になるかな…」

中村「私も同じ事を考えていましたわ」

鈴「じゃあまたな!さしすせそささみ」

理樹「あっ」

渡辺「あっ」

中村「あっ」

川越「あっ」

佐々美「………………」

佐々美「なんですの?わざとやってますの?ここまで私もかなり身を引いて仲良くしようと思ったのに……」

鈴「ん?」

理樹「オーマイゴット……」

渡辺「ふ、振り出しに戻りますの?ここまで来て……」

佐々美「私の名前は……」






「さ・さ・せ・が・わ・さ・さ・み!ですわーーーっっ!!!」







終わり(∵)

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