真姫「ずっと3人で」 (21)
練習が終わったら、いつも3人で帰る。
凛と花陽の方から最初は言ってくれたんだっけ。一緒に帰ろって。
その時は、仕方ないわね、みたいなこと言ったけど・・・本当は嬉しかった。
そうやって友達と一緒に帰ろって言われるのって今までなかったから。
多分今まで、人を寄せ付けないオーラみたいなのをまとってたんだと思う。
でも、二人はそんなのはお構いなしに―特に凛は―私がいつも守ってる領域に何のためらいもなしに入って来てすり寄ってくる。
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「真姫ちゃーん!」
何の用もないのにそういって頬を摺り寄せてくるのも最近は多くなった。
こんなスキンシップじみたこと、以前の自分からしたら考えられない。
その様子を横から見てる花陽。凛が私にくっついて、それをどうにかあしらおうとしてるとき、ふと花陽と目が合う。
私たち二人を見てる花陽は、幸せそうに微笑んでいた。
私に気づくと、何も言わず、ただにっこり微笑むだけだった。それは純粋に幸せそうな表情だった。
それを見ると安心する。凛が私にかまってばかりの時、花陽が寂しがるんじゃないかって思うときがあるから。
でもそんな心配する必要はもともとない。
二人は小さいころからずっと二人一緒だから。お互いを理解してる。信頼しあってる。
ずっと一緒にいればわかる。二人の間には・・・何というか、ことばにしなくても伝わる、つながりのようなものがある気がする。
少しの間一緒にいて、少しの間仲良くなっただけではつくることのできない、関係。
お互いがお互いの幼い頃を知っていて、その成長を知っていて・・・。
だから・・・時々それをふっと思い出して寂しい気持ちに襲われるときがある。
たとえ凛がいくら頬を摺り寄せてきたとしても、
こうやって毎日一緒の教室で過ごして、練習して、一緒に帰っても、
この二人の間の関係と私と二人との関係は全然違う・・・それを思うとやっぱり寂しくなる。
「かーよちん♪」
「どうしたの?凛ちゃん」
凛が話しかけ、花陽が優しく答える。このやりとりも子供のころからずっと続いてきたものなのよね・・・。
とっても、うらやましかった。私にはそんな昔からお互いを認め合っていけるような友達っていないから。
もともと友達もいなかったし。
だから・・・自分がここにいていいのかなって、この二人と一緒にいていいのかなって、思ってしまうこともあったり。
ある日のこと。
いつものように3人で歩いて帰る時。ふと、凛が思い付きかなにか知らないけど、神田明神に行こって言い出した。
別に用事もなかったから一緒に行くことにした。
3人並んでお参りする。
「ねえ真姫ちゃんはどんなお願い事するのー?」
凛が聞いてきた。
「別に・・・そんなの何だっていいでしょ」
「えー教えてくれたっていいのにー・・・」
そういって少しふくれる。
私は「もっと二人と仲良くなれますように」ってお願いした。
お参りの後。
「かよちんはどんなお願いごとしたの?」
「私はね、」
花陽が言いかけた時、
「あら、3人とも今日はここに来てたん?」
声のする方を見ると、そこには巫女服姿の希がいた。
「神社の方に用があるから帰りにちょっと寄ってたんよ」
「希ちゃん巫女服にあってるにゃー」
思ったことをすぐ口に出して言える凛が羨ましい。
「今日はね、3人でお参りに来たの」
花陽が言った。
「へえ~感心やね」
すると、希は思い出したように
「神田明神に一年生3人・・・ええやん。ここで写真撮ってあげる。誰かケータイかして?」
「わあーい!凛のかしてあげるにゃー」
凛が希にケータイを渡すと、凛は私の左側に駆け寄って、手をつないできた。
私は一瞬戸惑った。
すると今度は花陽が私の右手を柔らかく包んでくれた。ふわっとしていて安心する手の感触。
「二人・・・とも?」
多分私、心の中では凛と花陽が仲良さげにして、その横で私が申し訳程度に添えてあるってのを想像していたんだろうと思うけど・・・そんな心配いらなかった。
二人は私を挟んで、手を握ってくれて・・・
「真姫ちゃん笑って~」
希が言うので笑った。笑顔って苦手だから、ちゃんと笑えてるか自信なかった。
パシャりと音がして、希が写真をまじまじと見る。
「へえ~いいもんがとれたね」
凛がまずは駆け寄り、ケータイの画面を覗き込む。
すると凛はにっこりと笑い、次に花陽が見た。花陽も微笑んだ。
自分が写ってる写真なんて見たくなかったけど、凛が見せてきたので見た。
そこには凛と花陽と手をつないで幸せそうに笑う自分の顔があった。こんな表情したことってあったかしら・・・
「真姫ちゃんが笑ってるにゃー」
「や、やめてよ・・・」
恥ずかしくてそっぽを向いた。
「かよちん、それでなんてお願いしたの?」
「私はね、この3人でいつまでもずっと、仲良くいられますようにって」
「あっ凛も同じだにゃ!3人で、ずーっと一緒にいられたらいいなってお祈りした!」
「・・・」
嬉しかった。私、ここにいていいんだって思って少しだけ目がうるんだ。私は顔を二人のいない方向に向けた。
「真姫ちゃんどうしたの?」
「きっと照れてるんだにゃー」
「て、照れてなんかないわよ!意味わかんない!」
「真姫ちゃん素直じゃないにゃー」
「う、うるさいわよ」
横で花陽がふふと、あの幸せそうな顔で微笑んでいる。
「それで、まきちゃんは何てお願いしたの?」
「べ、別になんだっていいじゃない…」
ずっとこうやって3人で・・・いられたらいいな。そう思った。
おわり
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