「魔法少女に至る病い」 (30)
「世界には人間が沢山いて」
「同じように、感情も沢山あって」
「それでいて、願いも沢山ある」
「希望ある願いも、邪悪な願いも」
「世界には人間が重すぎて、その感情も持て余していた」
「無意識な願いが、その全てが世界を捻じ曲げるほどに肥大化して」
「それで、僕らと君らと奴らが生まれた」
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タッタッタッタッ
「はっ、はひっ、はっ、はへっ」タッタッタッタッ
「ね、寝坊しちゃったぁ~……は、はっ、ぜっ」タッタッタッタッ
ドンッ
「きゃっ!?」
(あ、あちゃ~! ぶつかっちゃ、た?)
「あれ、転んでない……?」
「……大丈夫……?」
「う、うんっ! 大丈夫だよ、ごめんね?」
「……私も、ぶつかったし……おあいこ」
「じゃ、じゃあ私急いでいるから!」タッタッタッタッ
「…………」
ヒョコッ
「元気な子だったね、愛弓」
アユミ「……そうだね、トーキー」
トーキー「それで、今日はどうする?」
アユミ「……その辺でぶらついて……敵が来るまで遊ぶ」
トーキー「うんうん、それが良いよ、休憩は大事だ、大いに休もう」
アユミ「……うん、休む……」テクテクテク
「今日はギリギリだったね~、晴香」
ハルカ「あはは、ちょっと夜更かししちゃって……」
「アニメでも見てたの?」
ハルカ「うーん、違うよ」
ハルカ「て言うか、それは優衣ちゃんでしょ?」
ユイ「いーんですー、わたしは晴香と違って早起きできるし」
ハルカ「……そういえばね、今朝曲がり角でぶつかっちゃって」
ユイ「えーっ!? テンプレだ!」
ユイ「……あれ、でも今日転校生とか来てないよね?」
ハルカ「うん、ぶつかっちゃったと思ったけど気のせいだったの」
ユイ「……えー……オチの無い話だー……」
ハルカ「あはは、そ、そうだね……」
ユイ「それじゃ、わたし今日は部活だから、今度また鑑賞会しようねー」
ハルカ「うん、じゃあね」フリフリ
テクテク
ハルカ「……あはは……流石にユイちゃんもついていけないかもね……」
ハルカ(そう、私にはいくつか秘密があったりするのです)
ガチャ
ハルカ「ただいまー」
ハルカ(例えば……)
「お帰り、晴香」
ハルカ「うん、ただいま」
ハルカ(両親が既に殉職していて、お姉ちゃんと二人暮らしなこととか)
「もう学校には慣れた?」
ハルカ「まあね」
「……ゴメンね、転校させちゃって」
ハルカ「大丈夫だよ、私友達作るの得意だし」
「ご飯、できてるよ」
ハルカ「うん、食べる!」
ハルカ「…………」ムクリ
「…………」スヤスヤ
ハルカ(例えば、こうして夜中にまだ見知らぬ街を1人で歩いていったり)
ガチャ
ハルカ「……はぁ……春の夜は、まだ寒いなぁ……」
ハルカ(勿論、これを頻繁にやってきた訳じゃない……お父さんとお母さんが死んでから、出歩くようになった)
ハルカ「何か羽織るもの、持って来れば良かったかも……」ブルルッ
「…………ふふっ」
ハルカ「っ!」
ハルカ「また、だ……」
ハルカ(例えば、出歩いていると時々変な声が聞こえてきたり……)
ハルカ「……こっちから、聞こえた……」
ハルカ(でも、いつもはこんなにハッキリ聞こえたことはない……)
ハルカ「なにか、あるのかな……」
「ゴァァァァァッッッ!!!!」
ハルカ「っ!?」
ハルカ(な、なに、あれ……)カタカタ
ハルカ(う、牛? お、大っきい……怖い……)カタカタ
「ゴフッ、ゴフ……ッ!」
ハルカ「や、やだ……来ないで……」カタカタ
ハルカ(あ、足が……動かない……)
「ゴガァァァァア―――
トーキー(今朝の子だ、意外と不良少女なのかな?)
アユミ「……どうでも良い、さっさとアクマを倒すよ」
トーキー「わかったよ、迅速に行こう、できるだけね」
ギュインッ
トーキー「マユミ・プラクティカル……さあ、ズドンと行こう」
マユミ「……分かってる」ジャキ
アクマ「―――ギャァ!?」
ハルカ「え、へ?」
ハルカ(きゅ、急に……倒れた?)
アクマ「ア、グァァ……」ズリズリ
ハルカ「ま、まだ、生きてる……」
ハルカ(……も、もう動けるけど……どうしよう、放っておいたら、誰かが襲われるかも……)
アクマ「グァァ……」ズリズリ
ハルカ「く、来るなら……きなさい!」カタカタ
ハルカ(横からお腹を……あの傷を叩けば……)
「……ふふふっ、正義感の強い子……親譲なのかしら?」
ハルカ「っ!?」
ジュスティ「私の名前はジュスティ、あなたの名前は?」
ハルカ「え、えっと、真崎 晴香です」
ジュスティ「なるほど、それで、あなたは目の前のアクマを倒したいんでしょう?」
ジュスティ「それなら、その為の力をあげるわ」
ハルカ「力? ど、どういう?」
ジュスティ「百利あって一害無し、とにかく受け取りなさい!」
ジュスティ「これが、あなたの魔法なんだから!」
シュイィィィ……ッ!
ジュスティ「……ハルカ・エシカル……さあ、アクマ退治よ」
ハルカ「ど、どうすれば?」
ジュスティ「腰の警棒で思いっきり殴りなさい!」
ハルカ(物理的だぁ……)
アクマ「グ、ァァァ……ッ!」
ハルカ「え、えいっ!」ドカッ
アクマ「グギャァァァァッ!?!?」
バチュゥゥン
ジュスティ「まあ、初戦にしちゃあ、ショボいけど、お疲れさま」
ハルカ「そ、それで、この力ってなに? さっきの牛の……アクマって?」
ジュスティ「……ふぁぁ……眠い……なんでこんなど深夜に……おやすみー」
ハルカ「あ、ちょ! ……はぁぁ……私には、何に巻き込まれたんだろう……」
ハルカ「…………」ムクリ
ハルカ(夢、だったのかな……)
「…………」スゥ、スゥ
ハルカ「な、なんだろ……クッションが、動いてる……」ツンツン
ピョコッ
ジュスティ「あら、起きたの……ふぁぁ……」
ハルカ(真っ白な、ウサギだ……喋ってる)
ジュスティ「何よその顔……ああ、昨日は暗かったしね、改めてよろしくー」ペコリ
ハルカ「う、うん……」
ハルカ「…………」テクテク
ジュスティ(学校に行くの?)
ハルカ「そうだよ」テクテク
ジュスティ(……じゃあ、隠れているから、アクマが来たら教えるわね)
ハルカ(……アクマ……来るんだ、備えた方か良いのかな……)テクテク
ジュスティ(備えてどうするのよ)
ハルカ(え、へっ!?)
ジュスティ(なんだ、テレパシーに気付いてなかったのね……アクマなんて神出鬼没なんだから、いつも緊張してたら保たないわよ)
ハルカ(そっか……)テクテク
ユイ「魔法少女?」
ハルカ「うん、詳しいでしょ?」
ユイ「あー、えーっと……深夜アニメの話し?」
ハルカ「ん? 夜にもやってるの?」
ユイ「オーケー、魔法少女ね」
ユイ「割と古い作品が多いかな、変身して戦うってのが主流で、何かしらアイテム的なので敵とかをやっつけるのが大まかな話し」
ハルカ(……変身、はしなかったな……じゃあ、あの時現れた警棒がアイテム?)
ハルカ「あ、そう言えば夜のアニメもあるんだよね」
ユイ「えー、えーっと、うーん、まあ基本的に女の子ががんばるね」
ハルカ「……わかった、エッチだから夜にやってるんだね」
ユイ「そ、そうそう!」
ハルカ「だいたい分かったよ、ありがとね」
ユイ「お安い御用よー」
ハルカ「全部話して」
ジュスティ「……まあ、隠すこともないしね」
ジュスティ「まずは、アクマから説明しましょうか」
ジュスティ「アレは人の無意識下の欲望や感情が膨れ上がった結果のバケモノよ」
ハルカ「か、感情が?」
ジュスティ「ただの感情じゃないわ、少なくともこの街の住民全ての無意識……集合的無意識の集合体」
ハルカ「ん? んん?」
ジュスティ「……たくさんの人の無意識の内に抱いた感情や欲望よ」
ジュスティ「一つ一つはくだらないものよ、学校に行きたくないから学校を壊れることを望んでいる人がいても、学校は壊れない」
ジュスティ「でも、その欠片も望んでいない望みが、アクマとして暴れるの」
ジュスティ「大方、昨日の牛型のアクマ……とにかく暴れたいっていうところね」
ジュスティ「勿論、私も無意識のバケモノよ」
ハルカ「じゅ、ジュスティも?」
ジュスティ「ただ、2つ違う点があるの」
ジュスティ「一つは、私の根幹は無意識下の正義感」
ジュスティ「誰かを助けたいとか、そんな……臆病さでブレーキをかけられるようなね」
ハルカ「そ、そっか……とにかく、ジュスティは良い人、なんだね」
ジュスティ「……そして、もう一つの相違点」
ジュスティ「晴香、あなたの無意識でできているの」
ハルカ「わ、私の? そ、それじゃあ……ジュスティは私の正義感の、アクマ?」
ジュスティ「そうね、あなたが私のママってことよ」
ハルカ「お、お母さん……」
ジュスティ「他に質問は?」
ハルカ「……戦わなきゃ、ダメ?」
ジュスティ「……そうね」
ジュスティ「正義感の塊である私としては、あんなのが彷徨いて誰かを傷付けるのを放っておけないわ」
ジュスティ「……でもね、女の子をアクマと戦わせる……と、言うのも……正義感の塊である私としては、気が乗らないわ」
ハルカ「……そ、っか……」
ハルカ「あ、あの……戦うって決めたわけじゃないんだけどね? えっと、こう……魔法って使えるの?」
ジュスティ「ええ、勿論……ただ、警棒を身につけてなきゃだけど」
シュイィィィ……ッ!
ジュスティ「私もどう言うものかは知らないし、試してみたら?」
ハルカ「……試す……えっと、こう、かな?」ジャキッ
ジュスティ「……ステッキにも見えないこともないわね」
ハルカ「あはは……なにも起こらない、かぁ」
ジュスティ「……あ、そうだ……ハルカ・エシカル」
ジュスティ「それを出す時、頭に浮かんだんだけど……どうかしら?」
ジュスティ「……晴香?」
ハルカ「ッ!」バッ
ジュスティ「は、晴香? どこに行くの?」ピョンピョン
タッタッタッタッ
「きゃぁぁ!?」
ハルカ「っ! きゃっ!?」
ドサッ
ハルカ「あいたたた……だ、大丈夫?」
「す、すみません!」
ハルカ「あんまり、階段で遊んじゃダメだよ」
ジュスティ(……どう言うこと?)
ハルカ(さっき、あの子が階段から落ちて大怪我をする光景を見たの……もしかしてって、思って……)
ジュスティ(なるほど、あなたの魔法は未来予知、ってこと?)
ハルカ(うん、優衣ちゃんからそう言う超能力の話を聞いててね、ピンときたんだ)
ジュスティ(……なるほどね……)
アクマ「ゴガァァ!?」
バチュゥゥン
アユミ「……やっぱり、人が多い街はアクマも出やすい……」
トーキー「そうだね、バシバシ倒せる、大忙しだ」
アユミ「でも……魔法少女が少ない」
トーキー「確かに、昨日見た子以外は見当たらないね」
アユミ「あれも、目覚めたばかりだった……やっぱり、少し変」
トーキー「だね……これからどうする?」
アユミ「……あ」
トーキー「ん? お、昨日の」
アユミ「……とりあえず、仲間を集めてみる……何かの為に、身を守れるかも……」
トーキー「そうだね、それに賛成だ」
ハルカ「……多分、そろそろ」
ジュスティ(もしかしなくても、アクマの出現に備えられるようになったわね)
ハルカ「うん、そうだね……」
ヒュバッ
アユミ「…………」
ハルカ「は、初めまして……魔法少女、ですよね?」
アユミ「……うん、あなたも……驚かないんだね……」
ハルカ「えっと、事情があって……」
アユミ「……私は、羽鳥 愛弓」
ハルカ「あ、真崎 晴香、13才です」
アユミ「……私は15歳……一年生?」
ハルカ「に、2年生です」
アユミ「そっか……私は中3……よろしくね」
ハルカ「は、はいっ!」
◆真崎 晴香 (マサキ ハルカ)◆
◆13歳 女子中学生、中二◆
◆アクマ、ジュスティ(正義感)◆
◆警棒、未来予知◆
ハルカ「愛弓さんは……何で戦うんですか?」
アユミ「……別に……あのアクマが嫌いなだけ……」
トーキー「詮索はよしてあげて、お喋りが苦手なんだ」ヒョコッ
ハルカ「……ふ、フクロウ……」
ジュスティ「なんだか頭の軽そうなアクマね……」
トーキー「あはは、照れるなぁ」
アユミ「……あなたも、アクマを倒す、のよね?」
ハルカ「は、はい……」チラ
ジュスティ「?」
ハルカ「少しくらい、勇気を出してみようって……」
アユミ「そう……じゃあ、よろしくね……」
ハルカ「は、はい!」
ハルカ「何だか、人の良さそうな子だったね」
ジュスティ「そうかしら、無愛想な感じじゃなかった?」
ハルカ「ま、まあまあ、これから仲良くしていこうよ」
ジュスティ「……ふーん」
ハルカ「……ねえ、ジュスティ」
ジュスティ「なぁに?」
ハルカ「…………アクマって、どんな時間に現れるの?」
ジュスティ「そうね……多くの人の意識が薄れ、無意識が表層化する時間帯……」
ジュスティ「ずばり、夜よ」
ハルカ「あはは……夜更かしが多くなりそうだなぁ……」
アユミ「……やっぱり、魔法少女が少ない……」
トーキー「そうだね……まだ一人……」
アユミ「……アクマも多いのに……おかしい……」
トーキー「だね、何かおかしいね、でも……」
アユミ「うん……理由が分からない……何が、起きているんだろう……」
トーキー「さぁ? とにかく、この街には愛弓と晴香だけだからね」
アユミ「分かってる……守らなきゃ……」
ハルカ「…………」コソコソ
ジュスティ「……お姉さん、グッスリね」
ハルカ「私と違って寝つきがいいんだ」
ハルカ「……そんなことより、急がなきゃ」
ジュスティ「何か見えたの?」
ハルカ「うん、アクマが暴れてた」
ジュスティ「形は? また牛?」
ハルカ「うん」タッタッタッタッ
トーキー「硬いね」
タァンッ、タァンッ
アユミ「……ええ……」タァンッ
トーキー「また朝までかかるかな? ああでも、晴香ちゃんって子がいれば……」
タァンッ
アユミ「……噂をすれば……」タァンッ
トーキー「あはは、良い子だね」
アユミ「……どうでもいい、アクマを倒せれば……アクマに、だれも傷つけさせない……」
トーキー「そうだね、もっと頑張ろう」
タァンッ、タァンッ
ハルカ「……うん、もういないよ」
ハルカ「あとは子供より小さいアクマしかいないみたい」
ジュスティ「そう、それくらいなら住人の覚醒で消えるわ」
ハルカ「うん、未来予知もそう出てたよ」ニコニコ
ジュスティ「そう? なら、安心して眠れるわね」
ハルカ「そうだね……っ」
ジュスティ「? 晴香?」
―――「トーキーッ!?」
――――――「アクマは消える、後数日で」
「■■■・マジカル」
――「行こうか……■■■・リリカル」
―「はる、か………」
.
ハルカ「っ!?」
ジュスティ「晴香? 大丈夫?」
ハルカ「……いま……未来が……」
ジュスティ「……どれくらい?」
ハルカ「分からない……場所も、話してる人も……チグハグな予知だった」
ジュスティ「……魔法を使いすぎたみたいね……帰りましょう晴香」
ジュスティ「愛弓に言って、休息をとりましょう」
ハルカ「う、うん……」
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