岡部「ダル、ブリタニアをハッキングしろ」 (62)
ダル「……なあオカリン、それマジで言ってんの?」
岡部「ああ。まゆりを助けるには、あの日何が起こったのかを詳細に調べる必要がある」
ダル「もしここがバレたらブリタニア軍に確実に殺されるわけだが。そうなったら電話レンジ()も紙くず同然だお」
岡部「大丈夫だ。鈴羽の話が本当なら、俺たちの死は少なくとも十数年先だと保障されているからな」
ダル「それ何度やってもまゆ氏を助けられない特大ブーメランじゃね?」
岡部「……」
ダル「オカリン?」
岡部「その通りだダル。俺はもう何十回もループしては失敗している。だが絶対諦めない!! まゆりは必ず救う。この俺の手で……!!」
ダル「……オーキードーキー。僕も全力で協力するお」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1475501716
…
ダル「やっぱりユーフェミアの独断っぽいお。データを見る限りでは本当に行政特区日本を進める予定だったみたい」
岡部「そうか。他に不審な点はないか?」
ダル「うーん、ちょい待ち。不審な点つーかさ、一つ面白い資料があるお。ブリタニア軍の中で変な動きをした人間みんなに一時的な記憶の欠落が見られてるってさ」
岡部「変な動き?」
ダル「具体的な部分は結構厳重にロックが掛けられてるっぽい。ちょっと時間かかりそうだしオカリンはゆっくりしてて良いのだぜ」
岡部「悪いな。何か進展があったら知らせてくれ」
岡部「ダルに迷惑をかけないよう外に出たのは良いが……」
日本人「このブリタニア人が!!」
日本人2「死ね!」
岡部「ウェイウェイウェイ!! 同じ人間じゃないか。馬鹿な真似はよせ」
日本人「なんだてめーは!! ブリタニア人を庇うなんて、お前もブリキ野郎の手先か!」
岡部「ええい、話が通じん。こい、逃げるぞ」
???「あ、おい。待て! 私は……」
岡部「はあ、はあ、ふぅーっ。な、なんとか撒いたようだな」
???「あんな奴ら殺せば良いものを。それに貴様、どうして私を助けた? まったくどいつもこいつも!! イレブンの助けなど虫唾が走る」
岡部「フン、体が勝手に動いたんだから仕方ないだろう」
ブーン、ブーン
岡部「っと、電話だ、失礼。ーーもしもし、ダルか。 さっきの件? ……黒の騎士団に都合が良い? ふむ。 そうか! あのオレンジもか!! 良くやったダル。すぐにラボに戻る。ああ、じゃあまた後でな」
チャキッ
岡部「……じ、銃?」
ヴィレッタ「動くな。今の電話の話、詳しく聞かせてもらおうか。私はヴィレッタ。純血派の騎士侯だ」
ラボ
岡部「ーーというわけだ」
ダル「うーん、ブリタニア人を連れて来た理由は把握したわけだが。っていうか助けた美女に拳銃突きつけられるってそれなんてエロゲ?」
ヴィレッタ「エロゲとはなんだ?」
岡部「こいつの話は真剣に考えない方が身のためだ。それよりダル、本題に入れ」
ダル「でも喋った後に僕らを殺すかもしれないお……」
ヴィレッタ「協力すれば命は奪わない。それは約束してやる」
岡部「大丈夫だダル、いざという時は俺がなんとかするさ」
ヴィレッタ「大した自信だな。お前みたいな体力のない奴に私をどうにかできるとは思えんが。まあ良い、それよりさっきの電話だ。先ほど黒の騎士団とかオレンジとか言っていたな。それについて詳しく話せ」
ダル「ま、簡単に言うと、僕らはブリタニア軍の不審な動きと一時的な記憶の欠落について調べてたわけ。そしたらジェレミアもあのオレンジ事件の記憶を失ってるってことがわかったんだお。その他にもナイトメアを奪われて記憶がなかったりとか色々あるみたい。ん? ていうかこの資料にあるヴィレッタって君じゃね?」
ヴィレッタ「貴様……どこでこの情報を手に入れた」
ダル「フッフッフッ、それは企業秘密ってことで」チャキッ
ダル「ひっ、殺さないって約束したはずだお」
ヴィレッタ「ああ、すべて話せばな」
ダル「ぶ、ブリタニアの施設やお偉いさんのPCとかをちょっと覗いただけだお」
ヴィレッタ「なッ! 国家へのハッキングは重罪だぞ」
ダル「だから言いたくなかったわけだが……」
ヴィレッタ「……よし、とりあえず今は不問とする。それで、この情報を持っていたのはどこの誰だ?」
ダル「多分シュナイゼルのPCだと思われ」
ヴィレッタ「シュナイゼル殿下だと!? それは確かなのか!」
ダル「この僕がガセ情報を掴むわけないですしおすし」
ガチャン!!
鈴羽「オカリンおじさんから手を離せ!!」
ヴィレッタ「クッ、仲間がいたのか」チャキッ
鈴羽「遅い! 手を頭の後ろに回して膝を付け!!」
岡部「待て鈴羽! そいつはラボメンだ。悪い奴じゃない」
鈴羽「ラボメン? このブリタニア人が?」
ヴィレッタ「違う。私はこいつらから情報を引き出していただけだ」
鈴羽「ふーん。正直者だね」
ダル「鈴羽、本当だお。彼女は僕の助手兼ラボメンのヴィレッタだ」
ヴィレッタ「どうして私を庇う! 私はブリタニア人だぞ!!」
ダル「んー、だってあんまり悪い人には見えないし……。あえて言うなら三次元の褐色美女キャラは希少つーことでFA。ま、僕は二次元にしか興味無いけどさ」
ヴィレッタ「 ……褐色美女? 二次元?」
岡部「ダル、ヴィレッタが混乱しているぞ」
ダル「どうやら僕はまたフラグを立ててしまったようだお。一級フラグ建築士は辛いぜ」
岡部「コホン、とにかく鈴羽よ。そいつはラボメン(仮)としてしばらく様子を見る。試用期間中は怪しい動きをしないか見張っていてくれ」
鈴羽「 あたしだって忙しいんだ。今日一日なら見張っておくから、黒の騎士団にでも突き出した方がいいんじゃないの。この人の動き、訓練された軍人みたいだしさ」
岡部「……なるほど。では正式にラボメンとして迎えるに相応しいか早急に入団テストを行う。ヴィレッタよ、今からお前にはいくつか質問に答えてもらうぞ。ダル、未来ガジェット3号機を持って来い!」
ダル「おお、オカリンなんか悪役っぽくね!」
岡部「クックック、これはこのラボで製作された嘘発見器でな。ダルのハッキング技術を見てもらってもわかると思うが、我がラボで開発されたガジェットはかーなーり高性能だ。鈴羽、もし嘘が発見されたらこいつは黒の騎士団に引き渡す。嘘をつかなければラボメンとして迎え入れる。それで文句はないな?」
鈴羽「うん。それなら良い」
ヴィレッタ「……仕方ない。可能な範囲でなら答えてやる」
岡部「ではまず一つ目。あそこで何をしていた? 先日ユーフェミアの大量虐殺があったばかりだ。ブリタニア人があの場所に行けば危ないのはわかるだろう」
ヴィレッタ「銃で撃たれたり色々あって記憶を失っていてな。イレブンに匿われていた。ふと記憶を取り戻して逃げ出して今に至るというわけだ」
岡部「銃で撃たれた? 誰かに命を狙われているのか?」
ヴィレッタ「そういうわけではないが……。ゼロの正体を掴んだ時に黒の騎士団とちょっとな……」
ヴィレッタ(……さすがに学生に撃たれたとは言えん)
鈴羽「あ、嘘ついてる」
ヴィレッタ「何!? バカな。『事実』はしっかり話しているはずだ!」
鈴羽「これも嘘だ! やっぱり黒の騎士団に突き出すしかないね」
ダル「鈴羽、実はそれただの発汗検知器ですから。マジレスすると焦ってるのは確かみたいだけど嘘ついてるかはわからないんだよね」
ヴィレッタ「だ、騙したな!!」
岡部「フッ、騙されているか見抜くのも入団テストの内だ」
ヴィレッタ「そもそも私はラボメンとやらに加わる気はない。さっさと解放した方が身のためだぞ」
ダル「ていうかヴィレッタ氏、ゼロの正体本当に知ってるん?」
ヴィレッタ「当然だ。何のためにイレブンに辱しめを受けたと思っている」
ダル「今のセリフ、もう一度言ってもらえる? できれば顏を赤らめながら照れる感じで」
ヴィレッタ「お、おい。誰かこいつをどうにかしてくれ……」
岡部「落ち着けダル。……なあ、ゼロの正体とやら、ぜひ教えてもらえないだろうか」
ヴィレッタ「こちらも命懸けで掴んだ情報だ。そう簡単には教えられないな」
岡部「教えてくれたら君を必ず解放しよう。ブリタニアまで安全に送るオプションも付ける」
ヴィレッタ「それだけか? 話にならん」
鈴羽「おじさん、あたしが拷問して吐かせようか? ゼロの正体は世界線を変える上でも必ず掴んでおかなきゃいけない情報の一つだし」
岡部「駄目だ。手荒な真似は認めないぞ」
ヴィレッタ「おい、世界線とはなんだ?」
岡部「それは当未来ガジェット研究所の機密事項に関わるのでな。部外者に教えることはできない」
ヴィレッタ「待て、そもそもお前たちはここで何をしている。怪しい発明もそうだが、国家へのハッキング……何か目的があって活動しているのか?」
ダル「チッ、勘の良いガキは嫌いだよ」
ヴィレッタ「ガキ?」ジロッ
ダル「ひっ! い、一度このセリフ言ってみたかっただけだお」
ヴィレッタ「……わかった。こうしよう。お前たちの活動目的と世界線という言葉の意味、これの説明を先ほどの条件に加えてくれれば、私もゼロの正体について話そう」
岡部「……良いだろう。ただし君にはラボメンに入ってもらう。この話を聞いた後は協力関係以外は認められないからな。敵対した時点で君は再び記憶喪失に戻ることになる」
ヴィレッタ「フン、脅しのつもりか。どうしてそんなに私をメンバーに入れたいのか知らんが、お前たちの目的が騎士に恥ずべき行動ならば協力はできない。それで良いな」
岡部「ああ、問題ない」
鈴羽「もう、ブリタニア人を正式にラボメンに入れるなんて信じらんないよ」
ダル「こら、お父さんは差別は許しませんよ!」
鈴羽「……わかったよ」
岡部「では聞かせてもらおうか。ゼロの正体を」
ヴィレッタ「そちらの活動目的が先だ。私と協力関係になりたいのならまずは信頼してもらわないとな」
岡部「……今現在の未来ガジェット研究所の目的はただ一つ。ユーフェミアによって虐殺されたラボメン、椎名まゆりの救出だ」
ヴィレッタ「死んだ者を救う? ……どういう意味だ。まさか過去に戻るとでも言うつもりか」
岡部「ーーそのまさかだ。俺達はユーフェミアの暗殺を防ぐために情報を集めている」
ヴィレッタ「……嘘をついているというわけではなさそうだな」
岡部「以前秋葉原ゲットーの建物に人工衛星が突き刺さっているとニュースになっていたのは知っているか? あれはタイムマシンだ」
ヴィレッタ「……タイムマシン? 映画などでよく見る時間を行き来できるあれのことか?」
岡部「そうだ。俺はそれに乗って何度もまゆりを救おうとしたが、世界線収束範囲理論、通称アトラクタフィールドの前に失敗を余儀なくされた。世界線と言うのはあらゆる可能性の糸だと思ってくれれば良い。今俺たちがいるこの世界線ではまゆりが死ぬことが確定している。だから何をしてもその結果は変えられない。まゆりを助けるには世界線を変えるしか方法がない」
ヴィレッタ「結果を変えられないのなら、世界線というのを変えることはできないんじゃないのか?」
岡部「世界線には大きな分岐点と言うのが存在する。分岐点とは変わるだけでまったく別の結果の世界へと変わってしまうような重大なターニングポイントでな。大きな戦争や産業革命など、世界的に影響の出る事件は分岐点になり得る。もしユーフェミアが本当に行政特区日本を創っていたとしたら……」
ヴィレッタ「ーー確定している死を覆すほど世界が変わるかもしれない、ということか」
鈴羽「へぇ、君頭良いんだね」
ヴィレッタ「いや、何となくわかったようなわからないようなそんな感じだ。あまり理解できているとは言えまい」
岡部「今の話、信じてくれたのか」
ヴィレッタ「作り話にしてももう少し信憑性があるだろうとは思うが、一応お前には助けられた借りがある。何の意味もない無駄な行動ではあったが、それに免じて騙されてみてやる」
ダル「うは、ツンデレktkr!」
ヴィレッタ「ではゼロの正体だったな。奴はアッシュフォード学園の生徒で、名前はルルーシュ・ランペルージだ」
岡部「学生か!」
鈴羽「バカな! 悪逆皇帝ルルーシュがゼロな訳ないよ! あれ、でもランペルージってことは別人?」
岡部「どうした鈴羽?」
鈴羽「少し未来の話になるけど、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアってヤツが皇帝になるんだ。悪逆の限りを尽くした彼はゼロの手によって最期を迎えるんだけど……」
ヴィレッタ「お前は未来を見てきたのか?」
鈴羽「あたしは未来から世界を救いにやってきたタイムトラベラーだよ。ちなみにそこにいる橋田至の娘」
ヴィレッタ「なっ!? 全然似ていないが……」
鈴羽「あはは、未来ではもう少し痩せてカッコよくなってるからさ……」
岡部「とにかくダル、そのルルーシュ・ランペルージという男を調べられるか?」
ダル「オーキードーキー!」
ーーー
ダル「ほいっと! とりあえず画像と情報その他諸々入手できたのだぜ」
岡部「さすがは俺の右腕だ」
鈴羽「あー! やっぱりこいつ皇帝ルルーシュだよ」
ダル「ルルーシュ・ランペルージ、学園では生徒会副会長を務める。ナナリーっていう妹もいるみたい。で、ちょいと調べてみたら過去にルルーシュとナナリーっていう皇族が居て、日本に人質として送られたあと戦死しているっていう資料があったお」
ヴィレッタ「そういえばジェレミア卿から聞いたことがある。昔、マリアンヌ様とその子供を守ることができなかったと」
岡部「鈴羽、本当にルルーシュはゼロに殺されるのか?」
鈴羽「間違いないよ。映像にも残ってたし」
岡部「となると可能性は二つ。未来ではゼロの中身が入れ替わっているかーー」
ヴィレッタ「私が嘘をついているか、だな」
岡部「……そうだな。だが疑っていては拉致が明かない。今はゼロがルルーシュだと仮定して話を進めるぞ」
ヴィレッタ「安心しろ。嘘はついていないさ」
ダル「とりあえずヴィレッタ氏、ゼロと接触した時の記憶障害について教えろ下さい」
ヴィレッタ「すまないがまったく思い出せん。テロリストの潜伏先に学生がいて、多分警告をしたと思うんだが……次に気が付いた時はマシンを奪われていた」
ダル「一分間気絶させられていたとか?」
ヴィレッタ「いや、機体を奪うにはパスワードが必要だからな。私を気絶させるだけでは意味がない」
岡部「うーむ、ジェレミアのオレンジ事件の映像、流せるか?」
ダル「おけ、ちょい待ち」
ダル「あったあった。再生するお」
ーーー
ゼロ「良いのか? 公表するぞ、オレンジを」
ジェレミア「ん?」
ゼロ「私が死んだら公開されることになっている。そうされたくなければ……」
ジェレミア「なんのことだ! 何を言っている?」
ゼロ「ーー私たちを全力で見逃せ! 」
ーーー
岡部「ここだ! 当時は流して見ていたが、このタイミングで仮面の左目の部分が開くのは不自然だ」
ダル「確かに。ジェレミアもなんか本当にわかってなくねって感じだし……」
ヴィレッタ「私の時は仮面をしていなかったから、目は初めから見えていた。奴は目を合わせた相手を操ることができるのか?」
ダル「厨二病乙。いやいや、流石にありえないっしょ。もし本当なら僕にも何か能力プリーズ」
岡部「何かタネがあるとは思うが……。もしくは本当はオレンジに心当たりがあったのか?」
鈴羽「あ! そういえば……ルルーシュが殺される時、その警護をしていたのはジェレミアだったよ」
ヴィレッタ「バカな……! ジェレミア卿が本当はゼロの手下だと言うのか」
鈴羽「未来ではそうだったってだけだから。今はどうかまではわからないよ」
ヴィレッタ「そういえばお前は未来から世界を救いに来たと言っていたな。未来では一体何が起こる?」
鈴羽「ちょっと長くなるけど……悪逆皇帝ルルーシュの行いの一つに貴族制の廃止があるんだ。反対する貴族は皆殺しにして、とうとう文句を言う者はいなくなった。やり方はともかく身分の差をなくしたその行為から、良い皇帝だって思う人も多かったんだ。でも段々独裁っぷりが目立つようになって、世界共通の敵になっていった。ルルーシュが死んだ後、彼がいたおかげで世界中が団結したって言えるくらい、世界中が平和になるんだ」
ヴィレッタ「純血派の私が言うのもなんだが……最終的に平和になるのなら過去を変えるほどの問題ではないと思うが」
鈴羽「ところが、その平和な世界の水面下で準備を進めている奴らがいた。始まりは特権階級の時の待遇が忘れられない元貴族達の集まりだと言われているんだけど、巨大組織と言えるまでに成長した彼らはゼロに向かって宣戦布告。そこで使われたフレイヤ増幅式という新型の爆弾は彼らにとっても想定外の威力だったみたいで、人口の八割を消し去ったんだ。人が住める場所もほとんどなくなってしまって、ほんとうに酷い光景だったよ……」
ヴィレッタ「そんなことが……」
鈴羽「未来の父さんの話ではその爆弾が生まれるキッカケがユーフェミアの死にあるって言うんだ。ユーフェミアが死ななければあの爆弾は生まれないって。だからあたしはユーフェミアを救う! けどオカリンおじさんが協力してくれないんだ」
岡部「……そんなことはない。まゆりを救うために必要な過程ならば俺も協力は惜しまないさ。だが、世界を救う為に世界線を変えるなんてのは傲慢だ。必ず綻びが生まれ思いもよらない結果になる。……時間を思いのままに操るなんて、不可能なんだよ」
鈴羽「でもまゆ姉さんだって生きてて、戦争も起きない平和な世界に辿り着ける可能性だってゼロじゃないよ! 諦めなければきっと……!!」
岡部「俺がそう簡単に諦めたと思うか? 何十回何百回ッ! 失敗して失敗して……それでも抗い続けたんだ!! ……この世界線だけじゃない。前の世界線でもお前は言っていた。SERNによってディストピアが起きる。世界に争いはないが、みんな管理されて死んだ目をしていると。だから助けてって、ーー世界を救ってくれって言ったじゃないか」
鈴羽「……あたしにはリーディングシュタイナーがないから、前の世界線のことなんてわからないよ。けどオカリンおじさんはきっと立ち上がってくれるって、最後には世界を救ってくれるって、みんなが信じて送り出してくれたからあたしがここにいるんだ!」
岡部「無理なんだよ……。次はまゆりだけじゃなくラボメン全員が死ぬかもしれない。タイムマシンも電話レンジもない世界線に行ってしまうかもしれない。過去を変えれば必ず未来は悪くなっていくんだ! 俺が最初にいた世界線ではブリタニアなんて国はなかった。いったいアメリカはどこにある? ……ラボメンNO.004、牧瀬紅莉栖はどこにいるんだ!!」
ダル「牧瀬、紅莉栖? なんか懐かしい聞き心地がするような……」
岡部「……」
ヴィレッタ「……アメリカというのは知らないが、牧瀬紅莉栖なら聞き覚えがあるぞ」
岡部「何!? それは本当なのか!!」
ヴィレッタ「確かロイド伯爵の下に就いている名誉ブリタニア人がそんな名前だった。まだ実用化はされていないがナイトメアフレームの神経接続の効率を劇的に高める理論を発表したとかで、随分噂になっていた」
岡部「そうか、まさかナイトメアフレームに関わっていたとはな! 名前を検索しても出てこないし最悪の可能性を考えていたが……。この世界線でも生きていてくれているのならそれで十分だ」
ダル「前の世界線ではラボメンだったん?」
岡部「ああ、お前もまゆりも仲良くしていたよ。若くしてアメリカのサイエンス誌に載るほどの天才だった」
鈴羽「けど今生きているのがわかったって未来ではみんな死んじゃうんだ。お願いオカリンおじさん。あたしと一緒にユーフェミアを救って! 」
岡部「だが……」
ヴィレッタ「ブリタニア人として、ユーフェミア様が救える可能性があるのなら見過ごすわけにはいかない。私も手伝わせてもらう」
鈴羽「……ありがとう。でも変な動きをしたら容赦はしないから!」
ヴィレッタ「お前はどうするんだ? 椎名まゆりとやらを救っても世界が壊滅しては意味がないだろう」
岡部「……わかった。ユーフェミアも助ける。だが勝手な動きはするな。世界線の変化に気付けるのは俺だけだからな。過去に干渉する時は必ず何を行うか俺に伝えてくれ。予定外の行動は絶対にするなよ」
鈴羽「オーキードーキー!」
岡部「ヴィレッタ、過去に戻ったらあの会場に潜入することは可能か?」
ヴィレッタ「警備に紛れるだけなら問題ない」
岡部「ダル、ゼロとユーフェミアが会話していた場所を詳細に調べてくれ」
ダル「任されたお」
鈴羽「あたしは?」
岡部「タイムマシンは二人乗りだったな。まずは俺とヴィレッタであの日の会話を聞くために潜入する。鈴羽に動いてもらうのは情報が集まってからだ」
鈴羽「潜入ならあたしがやった方が良いんじゃない?」
岡部「だめだ。俺なら潜入が失敗してもアトラクタフィールドによって死ぬことはないが、お前はわからないんだ。調査に徹するといっても帰りは虐殺が始まっている可能性が高い。今回は待機していてくれ」
鈴羽「そういうことなら……まあ、わかったよ」
ーー翌日
ヴィレッタ「……これがタイムマシンなのか。本当に人工衛星のように見えるな」
鈴羽「過去の自分には会わないように気を付けてね。深刻なパラドックスが起こるかもしれないから」
岡部「俺はあの日まゆりを見送った後、ラボに戻っていたからな。その可能性はない。ヴィレッタは大丈夫か?」
ヴィレッタ「私もその心配はない。そういえばお前はどうして行政特区日本に参加していなかったんだ? 」
岡部「ラボメンたちが帰ってくる場所を残しておきたかったからかな。……それに、いつか紅莉栖が現れるんじゃないかという淡い期待もあった」
ヴィレッタ「そうか、特別な人だったんだな」
岡部「……そうかもしれないな」
鈴羽「準備はいい? 時間と座標は設定してるから行きはこのボタン、帰りはこのボタンを押すだけで良いから。それじゃ、けっこう重力がかかるから気を付けてね」
岡部「ああ、行ってくるよ」
シュイーーーーーーン。キーーーーーーン。
式典会場
ヴィレッタ「着いた時は半信半疑だったが……本当に過去に戻ったようだな」
岡部「無論だ。それよりわかっているな? 今回はあくまで何が起きたかを確認するだけだ。たとえユーフェミアが殺されそうになっていたとしても助けたりするのは駄目だ」
ヴィレッタ「わかっている。最後に救えるのならそれで良い」
岡部「……じゃあ行くぞ。作戦内容に変更はない。G1への侵入ーー」
まゆり「あれ? やっぱりオカリンだー! トゥットゥルー」
岡部「まゆり!? クソッ、先に行ってくれ。後で必ず追いつく」
ヴィレッタ「仕方ないな。……岡部、先ほど私に言った言葉を忘れるなよ」
まゆり「結局オカリンも来てくれたんだぁ。まゆしぃは嬉しいのです!」
岡部「まゆり! ここは危ない。ユーフェミアは日本人を全員殺すつもりだ。一旦ラボに逃げるんだ!」
まゆり「えー、ユーフェミア様はそんなことをする人じゃないよ? それにルカくんも先に行ってるし、まゆしぃも早く行かないと……」
岡部「頼む、信じてくれ……。今は説明している暇はないんだ。ルカ子を連れてラボに戻るんだ!」
まゆり「……わかった。ルカくんを連れてくるね」
岡部「すまない。俺はやる事があるから一緒には行けないが…… すぐにラボに向かってくれ」
まゆり「うん! オカリンもすぐに来るよね?」
岡部「ああ、また後でな」
岡部『こちら岡部、状況は?』
ヴィレッタ『こちらヴィレッタ。なんとかG1内の護衛には加えてもらう事ができたが、人数が多すぎる。件の部屋に入るのは不可能だ』
岡部『仕方ない。プランBだ。俺が注目を集める。その隙に忍び込んでくれ!』
ヴィレッタ『大丈夫なのか?』
岡部『わからん。だが少なくとも死ぬことはない』
ヴィレッタ『……了解した。失敗するなよ』
ーーー
岡部「行けっ、未来ガジェット4号機、モアッド・スネーク(魔改造ver)!!」
プシューー
スザク「なんだ!?」
軍人「煙幕か!?」
岡部(クックックッ、超瞬間加湿器をさらに魔改造し、水蒸気の量をさらに増やしたダルの渾身の改悪版。想像以上の水蒸気だ! これなら時間を稼げるだろう)
スザク「君の仕業か!」
岡部(気付かれた!? この煙の中で……)
スザク「捕まえた!」
岡部「くそッ!」
スザク「やっと霧が晴れてきた。ーーって、日本人……どうして?」
軍人「なんだ日本人の反乱か? 皇室専用陸戦艇に攻撃を仕掛けてきた侵入者だ、射殺せよ」
スザク「待ってください! 今日この場で殺人が起きれば、行政特区日本は成立しない! それはユーフそェミア様の命に反する行為です」
軍人2「ーーゼロだ! ゼロが来たぞ!」
軍人1「チッ、警戒態勢をとれ。そいつは一旦保留だ、逃すんじゃないぞ」
『大変なことになりました。あのゼロが堂々と姿を表しました! 今ユーフェミア殿下の指示で、G1へと向かいます』
ーーピピッ。
軍人「ボディーチェック、特に問題はないようです」
ゼロ「おや、そちらの日本人は?」
軍人「そいつは先ほどこの場所に襲撃をかけてきた犯罪者だ。貴様の仲間じゃないだろうな」
ゼロ(G1に襲撃? 頭のイカれたテロリストか?)
岡部「ゼロ、助けてくれ。 ーー日本人の味方なんだろ?」
ゼロ「私は常に弱者の味方だ。日本人だから助けるというわけではない。罪を犯したのなら罰を受けるのは当然だ。……だが一つ気にかかるな。どうしてこの場所に襲撃を? 重要人物達は皆外に座っているし、今この場所にいるのは護衛の為の軍人くらいだ。それに武器を持っている様子も無い」
岡部「脅されたんだ! ここに襲撃をしないと、この会場にいる日本人を全員殺すと」
ゼロ「脅された? 一体誰に?」
岡部「それは……」チラッ
ゼロ(こいつ、今一瞬ユフィーを見た?)
ユーフェミア「そんなことは私がさせません! とにかく、今日この記念すべき日に日本人が捕まるのは良くないでしょう。解放してあげてください。ね、あなたも会場に行って式典に参加してください」
軍人「バカな! 侵入者ですよ!」
ユーフェミア「でも誰にも被害は出ていません。それにこの方はそんな悪い事をする人には見えませんし。あなたも、もう二度とこのような行為はやめてくださいね。今回は特別です」
岡部「……はい、もうしません」
ゼロ(ユフィーがそんな脅しをする筈がないが、助け方が強引な気がするな……。気にし過ぎか?)
岡部(助かったのか……? こんな優しい人が日本人を虐殺するとは思えないな。やはりゼロが黒幕か?)
ユーフェミア「さあ、行ってください」
ーーー
岡部『こちら岡部、安全圏への離脱に成功した。状況は?』
ヴィレッタ『無事だったか。今二人が部屋に入ってきた。盗聴機は設置済みだ。チャンネルを切り替えろ』
岡部『了解』
…
ユーフェミア『用心深いのね。カメラならオフにしてあるのに』
ルルーシュ『ずっと隠れてきたからな。どこかの帝国のせいで』スッ
ヴィレッタ(やはりゼロの正体はルルーシュだ)
チャキッ
ヴィレッタ(銃を突きつけた?)
ルルーシュ『セラミックと竹を使用したニードルガン。……これは検知器では見つからない』
ユーフェミア『ルルーシュ、あなた撃たないでしょ?』
ルルーシュ『そう、俺は撃たない。撃つのは君だよ、ユフィー』
ユーフェミア『え?』
ルルーシュ『この式典は世界中に中継されている。そこでブリタニアの皇女である君がゼロを撃つ。……どうなると思う?』
ユーフェミア『暴動になるんじゃないかしら』
ルルーシュ『ああ。騙し討ちされたとなれば、ゼロは殉教者となり……君の信望は地に堕ちる』
ユーフェミア『何ふざけてるんですか。私と一緒に日本をーー』
ルルーシュ『上から一方的に押し付けるのなら、クロヴィスと同じだな!』
ユーフェミア『へっ?』
ルルーシュ『もう全ての条件はクリアされた。ゼロは生死を彷徨い、奇跡の復活を遂げ讃えられる。人は理屈ではなく……奇跡に弱いものなんだよ』
ルルーシュ『さあ、受け取りたまえ!』
ユーフェミア『はぁ?』
ルルーシュ『メシアは一人でなければならない。君が偽物だとわかれば民衆はーーグッ、ウウッ!』ガクッ
ユーフェミア『ルルーシュ!?』
ルルーシュ『やめろ!! これ以上俺を哀れむな!! 施しは受けない。俺はッ、自分の力で手に入れてみせる。そのためには穢れてもらうぞ!! ユーフェミア・リ・ブリタニアァ!!』
ユーフェミア『その名は返上しました!』
ルルーシュ『なッ!』
ユーフェミア『いずれ本国から発表があると思いますが、皇位継承権を返上しました』
ルルーシュ『……なぜ。まさか、ゼロを受け入れたからーー』
ユーフェミア『私の我が儘を聞いてもらうのですから、それなりの対価は必要でしょう?』
ルルーシュ『ぁ、……随分と簡単に捨てられるんだな、君は。俺の為だとでも言うのか?』
ユーフェミア『クスッ、相変わらず自信家ね。ーーナナリーのためよ』
ルルーシュ『うっ』
ユーフェミア『あの子言ったの。お兄様と一緒に居られれば、他に何も要らないって』
ルルーシュ『そんなことで……』
ユーフェミア『そんなことで決心がついちゃったの。私にとって、本当に大事なものは何だろうって。だからルルーシュ、私は……本当の本当に大切なものは、一つも捨てていないわ。あ、安心して。あなた達のことは誰にもーー』
ルルーシュ『フッ、フフハハハハハ、コーネリアは!』
ユーフェミア『別に会えなくなるわけじゃ……』
ルルーシュ『バカだよ君は、大バカだ』
ユーフェミア『そりゃあゲームでも勉強でも、ルルーシュに勝ったことは一度もありませんけど……』
ルルーシュ『ーーしかし、無茶なやり方なのに、結局全てを手に入れてしまう。考えてみれば、君は副総督や皇女殿下である前に、ただのユフィーだったな』
ユーフェミア『ただのユフィーなら、一緒にやってくれる?』
ルルーシュ『……』
ルルーシュ『君は、俺にとって最悪の敵だったよ。フッ、君の勝ちだ』
ユーフェミア『えっ』
ルルーシュ『この行政特区を活かす形で策を練ろう』
ユーフェミア『!』
岡部(穏やかな会話の流れになってきたな)
ルルーシュ『ああ、部下になるわけじゃないからな』
ユーフェミア『ええ! ……でも私って信用ないのね』
ルルーシュ『ん?』
ユーフェミア『脅されたからって、私がルルーシュを撃つと思ったの?』
ルルーシュ『ああ! 違うんだよ。俺が本気で命令したら、誰だって逆らえないんだ。俺を撃て、スザクを解任しろ、……どんな命令でもね』
ユーフェミア『もうっ、変な冗談ばっかり』
ルルーシュ『本当だよ。例えば日本人を殺せって言ったら、君の意思とは関係なくーー』
ユーフェミア『ッ!? 嫌、私が……嫌ッ!! 殺したくない!! うっ、嫌ッ! 』
ルルーシュ『まさかッ!!』
ユーフェミア『ーーそうね。日本人は殺さなきゃ』
ヴィレッタ(……バカなッ!)
ルルーシュ(俺もマオと同じように、ギアスのオンオフができない?)
ルルーシュ『くッ、今の命令は忘れろ! ユフィー!!』
ダッ
ルルーシュ『待ってくれ! ユフィー!!』
…
岡部『ヴィレッタ、脱出するぞ! A地点にて合流だ』
ヴィレッタ『わかった!』
…
ダダダダダダダッ
岡部「くそッ、始まってしまった!」
ヴィレッタ「岡部!」
岡部「やっときたか。逃げるぞ」
ヴィレッタ「私についてこい。行くぞ!」
岡部「ッーー!! 待ってくれ! あれは、まゆり……逃げなかったのかッ!!」
まゆり「ルカ君しっかりして。すぐ病院に連れて行くからね」
るか「まゆり、ちゃん……逃げて。僕のことは……気にしないで……」
岡部「ルカ子、まゆり!!」
るか「岡、部さん……まゆりちゃんを……はや、く」ガクッ
まゆり「ルカ君!?」
ヴィレッタ「岡部、早くしないと脱出できなくなるぞーー」
バンッ!
まゆり「うッ!」バタンッ
岡部「まゆり!!」
まゆり「オカ、リン。ごめんね、会場……でられ、なくて……本当に、オカリンの……言う、通りに……」
岡部「喋らなくて良い! 待ってろ、必ず俺が助けてやるからッ」
まゆり「最近……よく、夢を見るんだ、何度も、殺され、そうに……なって……オカ、リンが助けようと……ボロボロに、なって」
岡部「ボロボロになったって構うものか! 何度だって助けに行ってやる。……何度だってッ」
まゆり「まゆしぃ、のことは、気に、しないで、いいい、からね……。あとね、最近、オカ、リンやって、くれないけど……まゆしぃは、鳳凰、院、凶真も……好き、だから、たまには……やって……くれたら、嬉しい……な……」ガクッ
岡部「……ああ、まゆり、ルカ子……」
バチン!!
ヴィレッタ「おい、いい加減にしろ! この状況を変えるための偵察の筈だろう!諦めている暇はない、早く逃げるぞ!」
岡部「グスッ、……すまない。必ず、助けるからーー。少しだけ、待っていてくれ。まゆり、ルカ子!」ダッ
岡部「……急ごうヴィレッタ。予定を狂わせて、すまなかった」
ヴィレッタ「わかれば良い、行くぞ!」
このSSまとめへのコメント
気になるところで終わってるやんけ
続きを早く頼む