三葉「もう、忘れんよ」 (27)
ネタバレ、改変ありです。
何番煎じかはしりませんが、その後のストーリーをば。
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「「君の、名前は――」」
「やっと、逢えたんだね……」
涙を流しながら目の前の少女は言った。
ずっと探していた、だけどそれが何かわからなかった。
急速に胸の中に降りてきたこの感覚。
そうだ、俺はこの子を探していたんだ。
「そうだ……俺は、君を探していたんだ」
その言葉は、私の中に広がっていった。
大きく空いた心が、満たされていくようだった。
「あっ、えっと、そういえば名前……」
「みつは」
言い終るやいなや、私は言った。
「私は、みつは」
みつは……みつは、みつは。みつは、みつは!みつは!!
「みつは!」
「えっ、何!?」
「思い出した!君は、君の名は、みつは!」
こんなにも気持ちが昂ぶったのはいつぶりだろう。
名前を言葉にした、それだけなのに。
「俺は瀧。立花瀧」
「瀧くん!」
思わずそう叫んでしまった。
何度も何度も口にしたはずのその名前を。
ずっと忘れていたその名前を。
「瀧くん……瀧くん………」
涙が止まらなかった。
私が泣き止むまで彼は、優しい顔で待っていてくれた。
とりあえず映画のあらすじとネタバレだけ書いといてよまずは
「思い出したよ、全部」
「私も。どうして忘れてたんだろう……」
「さぁ……それは俺も一緒だ。みつは」
「何、瀧くん?」
「大丈夫だ、覚えてる」
「私も、覚えとるよ」
「こっち来てたんだな」
「うん、今は東京で働いとる」
「宮水の方はいいのか?」
「反対されると思ったんやけどね。
おばあちゃんが行ってこいって。
宮水の方は今は四葉が私のあとを継いでくれとる」
「よつは!よつはは元気なのか!?」
「元気やよ。今はもう高校生」
「そうかー、もう高校生かー。おっきくなったなー」
「瀧くん親戚のおじさんみたい」
そう言って二人で笑った。
「あ、やべ!俺仕事中だったんだ!」
「私も!帰らんと怒られるわ」
そう言いながらどちらも動かなかった。
このまま別れるわけにはいかない、そう思った。
「「あのっ……!」」
声が揃った。
「あ、どうぞ、瀧くんから……」
「いやえっと……よかったら時間あるときに会えないか。
聞きたいこと、いっぱいあったんだ」
「私も。瀧くんに話したかったこといっぱいあったんだ」
どちらともなく携帯を出し、連絡先を交換した。
「今度は、繋がるよな……」
「え?」
「ううん、独り言」
「そろそろ行かねぇとホントにやばいから行くわ。また連絡するよ」
登録された名前と番号を見る。
宮水三葉、頼むからもう消えてくれるなよ。
「うん、私も連絡するね。瀧くん」
瀧くんは階段を上って行ってしまった。
何から話そう、どこから話そう、その日の私は
瀧くんのことで頭がいっぱいだった。
>>6
なんかの影響で入れ替わった少年と少女がお互いの生活を楽しみながらも
突然入れ替わらなくなり、実は少女はもう……ってなったときに
俺は彼女を助けるぞ!ジョジョォォォと立ち上がった少年が
シュタインズ・ゲートばりの運命改変に奔放しついに邂逅するそんな話です。
夜、仕事を終え帰宅した私は携帯とにらめっこしていた。
いざ連絡するとなると何を話していいのかわからない。
久しぶり!元気?なんておかしいし……
宮水三葉です。立花瀧くんですか?
はなんだか固い感じがするし。
「はぁー、なんて送ろう……」
そんなことを考えていると携帯が震えた。
差出人は……立花瀧くん。
立花瀧 >瀧です。覚えてる?
夢じゃ、ないよね。
また涙が出そうになりながら、私は返信を打った。
「覚えてる?ってなんだよ……」
考えに考えた末、送ったのがこの文章だ。
もっとマシな言い回しあっただろと思いながらも
今の俺には到底思いつきそうもない。
あれから三葉と別れて今までどう一日過ごしてきたのかもあんまり覚えていない。
ただ彼女の顔や声だけが、頭の中を駆け回っていた。
「ちゃんと届いてんのか?」
携帯握り締めながら女の子からの返信を待ってるって、高校生か俺は。
いや高校生の時ですらそんなイベントなかったけども。
そんなことを考えながらベットでゴロゴロしていると携帯が鳴った。
みつは >みつはです。覚えてるよ、瀧くん
どうやら夢ではなさそうだ。
立花瀧 >よかった。ちゃんと届いたみたいだな。
みつは >ちゃんと届いてるよ。今日はびっくりしちゃった。
立花瀧 >俺も。名前聞いたら一気に記憶がよみがえったよ。
みつは >瀧くんが助けてくれたんだよね。
立花瀧 >いつの話だよ
みつは >ホントね
立花瀧 >いつがいい?
みつは >週末は空いてるよ
立花瀧 >じゃあ週末にしよう。土曜日
みつは >うん、わかった。じゃあ、四ツ谷駅前待ち合わせ、十時半。
立花瀧 >どっかで聞いたようなセリフだな
土曜日、四ツ谷駅前待ち合わせ、十時半。
私が奥寺先輩とデートするはずたったあの日、今度は瀧くんと。
思い出すなぁ、なんで全部忘れていたんだろう。
嬉しくなってまた涙が出そうになった。
私こんなに泣き虫だったっけ。
「土曜日かぁ」
どんな服を着ていこう、どんな髪型にしよう。
なんかデートに行くみたいで恥ずかしいな。
いつぶりだろう、こんな気持ち。
早く土曜日が来ますように。
そう思いながら部屋の明りを消した。
今週は仕事が手につきそうにないなぁ。
アプリを閉じて、ベッドに寝転んだ。
今日一日を反芻してみる。
電車で偶然見つけた彼女を探して歩き回って、
それから声をかけて全部思い出して、
本当にこれ現実か?
「起きたら全部夢でしたってのはやめてくれよなマジで」
とにかく、土曜日だ。
それにしても奥寺先輩とデートしたときと同んなじ待ち合わせにしやがってあいつ。
「デートか……何着てこ」
まだしばらく眠れそうになかったが、無理やり目を閉じた。
土曜日、待ち合わせ時間より少し早めに着いて彼女を待った。
前もこうやって先輩を待ってたんだっけ。
そしたら後ろから
「瀧くん」
「うわあっ!」
「あ、ごめん、驚かせちゃった?」
「いや、大丈夫……」
「待った?」
「いや今来たとこ」
「そっか、よかった」
少し大人っぽくて可愛らしさもあって、
なんというかすごく綺麗だった。
「い、いこっか」
「うん」
少し早めの昼食にしようということで適当な喫茶店に入った。
お互い食べたいものを注文した。
「喫茶店で思い出したんだけどさ」
「うん」
「お前、司たちと喫茶店行ったときめちゃくちゃ食ってなかった?」
「う……」
「無駄遣い禁止つったのにお前と入れ替わった次の日
毎回財布からっぽだったぞ」
「……だって美味しかったんやもん」
「美味しかったってお前なぁ。俺が何のためにバイトして金貯めてたんだか……」
「瀧くんこそバイト入れ過ぎ!学校終ってから全然遊べんかったよ。
そんなに奥寺先輩に会いたかったん?」
「お前……」
「うそうそ。ほら、瀧くんの来たよ」
「お前はまたパンケーキか」
「美味しいんやもん。それに今回は自分で払うから」
「ったく……」
「あの時は夢だと思ってたから。
うちの周りは喫茶店なんてないし、せっかくだから食べたいもの食べようって。
司くんと高木くんはびっくりしてたけどね」
「だろうな。司に関してはお前が時々女に見える時があるって言って来た時もあった」
「そういえば二人とも今は何してるの?」
「高木はどっかの商社の営業マンやってるよ。
司は大手企業のエンジニアだかなんだかやってる」
「すごいねー、瀧くんは?」
「俺は……別にいいだろ。それよりそっちはどうなんだよ」
「瀧くんが答えてくれないから私も答えません」
「ちぇっ」
「あの二人は?テッシーとサヤちん」
「ふっふっふ……」
「なんだよ」
「二人は星になりました」
「は?」
「っていうのは嘘で、二人とも東京の大学に進んで今はめでたく付き合ってるよ」
「へー、テッシーはそっちを選んだのか」
「何の話?」
「いや別に」
「何よ、気になるやんか」
「テッシーはお前のことが好きだったんだぞ」
「……」
「サヤちんとくっつけろとかなんとか言ってたからそうしようと思ってたけどさ……
てゆーか近づいたら結構照れるんだぜあいつ。それがおもしろくて。
あんまりやるとかわいそうだからほどほどにしたけどな」
「もー!私で好き勝手しすぎ!そうや!それを言おうと思ってたんや!
瀧くん、私の胸触ったん一回やないやろ」
「え、いやー、その」
「四葉に聞いたんやからね。お姉ちゃん週に2,3回は起きたら触っとったよって。
へんたい!ばか!えっち!」
「お、おいもう昔のことだから」
「お風呂も入ったやろ!禁止って言ったのにー!」
「す、すいません、コーヒーおかわりで……」
「瀧くん!」
「いいだろ、お前だって俺ん中で好き勝手やってたじゃねぇか。
奥寺先輩と馴れ馴れしくしやがって……バイト先の居心地最悪だったぞ」
「あれはなかなかアプローチせん瀧くんに変わって私が仲を取り持ってあげたんよ」
「余計なお世話だ!」
「瀧くん奥手だと思って。だって携帯にこっそり撮った写真入れてるぐらいやもんね」
「っ~~~~」
「そういえばデートはどうやったん?」
「……最悪だったよ」
「えー。せっかく厳選リンク集揃えてあげたのに」
「あれこそ余計なお世話だ!それに全く役に立たなかったぞ」
「あ、一応見たんだ。ふーん」
「ぐ……」
「で、デートの内容は?」
「別に。お前の立てたプラン通りに行っただけだよ。晩飯は食わなかったけどな」
「全然ダメじゃん」
「うるせ。帰り際に奥寺先輩には意味深なこと言われるし」
「何て言われたん?」
「前は……いや、もういいだろ」
「えー、教えてよー」
「いやだ」
「瀧くんのケチ。えっち。へんたい」
「それは関係ないだろ!それにあんまり連呼しないでくれ。周りの目が痛い」
「奥寺先輩は今何してるの?」
「あー、結婚するって言ってた」
「うそー!!」
「みつは、落ち着け。座れ」
「あ、うん……。
そうなんだ、結婚するんだ。残念だね、瀧くん」
「別に残念じゃねぇよ」
「そうかなー?」
「ったく……」
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