シータ「だから私はラピュタの正式な王位継承者、ルシータ王女なんだってば!」 (33)

パズー「へー、ラピュタの王族ねぇ」ホジホジ

シータ「信じた?」

パズー「信じた信じた」フワア

シータ「ホントに?」

パズー「ホントホント」

シータ「いーえ、その目は信じてない目よ!」ガシッ

パズー「ああもう! どうしろってんだよ!」

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シータ「パズーがホントに信じるまで、この部屋からは出さないからね!」

パズー「だから信じたって言ってんだろ!」

シータ「ホントはラピュタなんか無い、そう思ってんでしょ!」

パズー「……」

シータ「やっぱり! この飛行石だってあるのに、どうして信じられないのよ!」

パズー「そ、それはアレだろ? なんか石の中に水素かヘリウムガスでも入っててだな……」

シータ「だったら今も飛行石だけ飛んでいくでしょうが!」

パズー「う……」

シータ「それに軍で見たロボットの兵隊、あれこそラピュタ実在のこの上ない証明になるわ」

パズー「残念ながらそれ、僕は見てないんだよなぁ」ククク

シータ「だからほら! これ! ムスカさんから貰った写真!」

パズー「んー? なんかこれ、合成っぽくない? いかにも作り物って感じがプンプンするんだけど」

シータ「だーかーら! 私は見たの! くぉーんなにでっかいロボットがでぇーんと倉庫に横たわってたんだから!」

パズー「じゃあ素材はどうだったの? 仕組みは?」

シータ「いや、それは……わたしたちの科学力では粘土なのか金属なのかも分かんないってムスカさんが……」

パズー「はい出ましたー! んなわけないじゃん! 大体なんで粘土かもしれないって思ってんだ!」

シータ「よ、世のなかにはセラミックとかいうのもあって!」

パズー「じゃあセラミックだったの?」

シータ「うぅ……」

パズー「それに王族だったら護衛にロボットの一体や二体は連れてこない? 普通」

シータ「……」

パズー「あと、そんな大層な家系に生まれときながら、ムスカに会うまで知りませんでした? ちゃんちゃらおかしいよソレ!」

シータ「うぅ……」ポロポロ

パズー「やーい泣いた! ホラ答えられなくなったらすぐ泣く! だから女は論理的な話をだな――」

シータ「……」パンッ!

パズー「痛いッ!」

シータ「軍が戦車まで出してこの飛行石を追ってたのよ? ただの作り話のためにそこまで出来る?」

パズー「い、いきなりぶつなよぉ……」ポロポロ

シータ「あなたのお父さんが撮ったっていう写真も証拠だわ! ほら、いかにも空を飛んでそうなこの形!」

パズー「そのだっさい合成のお城が?」

シータ「私の故郷を馬鹿にするな!」

パズー「そんなとこ住んでたら水とかどうやって手に入れるんだよ! ラピュタの人々は自分の小便でも飲んでたのか?」

シータ「……ねえ、いい加減怒るよ」

パズー「へっ! さっきのかよわいビンタでもかましてみるか? 飲尿星人さんよぉ!」

シータ「……」バキッ!

パズー「が、顔面にグーだと……!?」ドチャッ

シータ「周りが雲に覆われてんのよ? 水なんかいくらでも手に入るわ」

パズー「で、でもそんな大きなお城を浮かすなんて現実的にあり得ないし……」ポロポロ

シータ「泣くな! パズーは男でしょ!」

パズー「う、うるぜえ! 鼻がジンジン痛むんだよォ!」ポロポロ

シータ「飛行石があればなんだって浮くわ! 岩だろうとお城だろうと、それに葬式にアロハシャツ着てきた人だってね!」

パズー「ハイ出た、ラピュタンジョーク。標高が高くて寒いとこに住んでたらジョークまで寒くなる!」

シータ「ち、違う! 今のはラピュタンジョークじゃない! ラピュタのジョークはもっとウィットに富んでる! ///」

パズー「いいかい、僕はこれでも父さんにかかってた疑いを晴らそうと思って一生懸命文献を調べたんだ。でもそんなの書いてあるのはスイフトのガリバー旅行記だけだった」

シータ「でも書いてあったんでしょう?」

パズー「あんなの作り話だ! 子どもを楽しませるために作られた空想の産物だ!」

シータ「じゃあ何!? それだったらまるであなたのお父さんが!」

パズー「……詐欺師だよ」

シータ「!」

パズー「どうせその写真で大儲けしようとでも考えてたんだろ? 正直呆れるよ」

シータ「……」パンッ!

パズー「あ痛ッ!」

シータ「息子のあなたが信じてあげなくて……どうするってのよ!」ポロポロ

パズー「……(何発殴るんだこの女)」

シータ「……ちょっと休憩しましょう。私たちは一旦冷静になる必要があるわ」

パズー「だったらこの部屋から出してくれ。もう何日シャワーを浴びてないんだか分からない」

シータ「それはできないわ。あなたをここから出したらフラップターで家に帰っちゃうかもしれないもの」

パズー「一つ聞くけど、なんで僕が君や海賊どもと同行しなくちゃいけないんだ? 僕には仕事があるんだけど」

シータ「おかみさんが『守っておやり』って言ってたでしょ?」

パズー「だからって有給じゃないんだぞ!?」

シータ「ラピュタに着いたらお金なんていくらでも手に入るわ」

パズー「そんな夢物語に命と生活を賭けてられるか!」

シータ「それにパズーにも実際にラピュタを見てもらわないと、どうせ私が見たっていっても信じないでしょう?」

パズー「ああ、信じないね。例え見たって信じるもんか!」

シータ「強情ね、あなた」

パズー「親方のゲンコツよりかたい石頭だからね」

シータ「じゃあ私は部屋の外に出るわ」

パズー「ああ、当分戻って来てほしくないね」

シータ「そうする」バタン

パズー「……やっと行ったよ」フゥ

ドーラ「邪魔するよ」ガチャッ

パズー「せ、船長!?」

ドーラ「……どうやらまだ信じてないようだね」

パズー「……到底信じられないね。それを必死こいて追っかけて……滑稽だよ」

ドーラ「信じようが信じまいがそれはお前の勝手だが、あたしゃハッキリ言うよ。……ラピュタは本当にある」

パズー「なぜ見もしないでそんなことが言えるの?」

ドーラ「状況が全てを物語っている上に……あたしの勘がそう言ってんだよ」

パズー「勘って……」

ドーラ「お宝の匂いって言ってもいいかもね。遥か先の天空に、必ずラピュタはそびえたってんのさ」

パズー「それだけ言っといてもし間違ってたら恥ずかしいね」

ドーラ「あたしゃこの船を賭けたっていいよ」

パズー「じゃあもし僕が間違ってたら全裸になるよ」

ドーラ「いや、別にお前の裸なんか見たくないんだけどね……」

モトロ「……その賭け、俺も乗るぜ」ガチャッ

パズー「!」

モトロ「うわっ! くせえ! 何だこの部屋!」

パズー「そりゃあ10日以上も監禁されてたらそうなるよ」

モトロ「俺もラピュタがあるって方にフラップター全機賭ける」

パズー「船もフラップターも取られたらもう海賊業は引退だね」

モトロ「元々この冒険に莫大な投資をしてんだ。今更ビビるかよ」

パズー「じゃあ僕はラピュタが無い方にナイフとランプが入ったこのカバンを賭けるよ」

モトロ「フラップターに見合わねえよ!」

ドーラ「まあこの子にとっちゃ大事なもんなんだろ」

シャルル「なら俺は今まで手に入れてきたお宝を賭けるぜ」ガチャッ

パズー「それなら僕は鼻からスパゲティを食べて見せよう」

ルイ「俺は上等の衣類一式だ」

パズー「もしあったらラピュタの周りを逆立ちで歩こう」

アンリ「お、俺は武器一式!」

パズー「なら顔に好きに落書きしてくれても構わないよ」

船員A「俺は!」

船員B「俺は!」

パズー「もう面倒だ! もしラピュタがあったら何でもするよ! その代りもしなかったら皆一文無しだ!」

ドーラ「よーし良い根性だ!」

シータ「結局最後まで信じてくれないのね」ガチャッ

モトロ「うわくせえ! お前一回部屋出たんならシャワー浴びてこいよ!」ツーン

シータ「私もラピュタがある方に全てを賭ける。お金も服も、飛行石も!」

パズー「いいのかい? この船にラピュタを探し続けるだけの燃料が無くなった途端、君はまっぱ確定だ」

ルイ「こいつは美味しい! 勝っても負けても美味しいぜ! いやむしろ負けろ!」

ドーラ「なに言ってんだい!」 

シータ「大丈夫よ。それよりパズー、ちょっと見張り台までついて来て」

パズー「?」

シータ「今から真の絶望ってものがどんなものか教えてあげるわ」


***

兵士「将軍! ラピュタの門前で海賊の一味と遭遇しました! しかし抵抗の素振りは一切見せず、何やら奇妙な儀式とでも言うのでしょうか? ……とにかくそのようなことをやっているようです!」

将軍「奇妙な儀式だと?」

兵士「自分もよくは分からないのですが、報告によると全裸の少年が鼻からスパゲティを食べ、逆立ちでラピュタの周りを歩いているようです! 他にも体中に落書きされていたり、尻に火薬を詰められたりとてんやわんやだそうであります!」

将軍「面白そうだ! 私に続け!」

兵士「ハッ!」









ムスカ「馬鹿どもにはいい目くらましだ」

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