まほ「お見合い作戦だ」 (73)

まほ「エリカ」

エリカ「はい!」

まほ「…………」

まほ「…………」スッ

エリカ「ッ!?」ビクッ

まほ「…………」

エリカ(な、なに……?隊長が私に向けて腕を開いてる……)

エリカ「た、隊長?」

まほ「………………」ゴゴゴゴゴゴ

エリカ(こ、恐っ!えっ、怒ってる?怒ってるんですか隊長!)

エリカ(……ひょっとしてこれ、胸に飛び込んで来い的な感じなんじゃないの?ハグだなんて隊長がサンダースみたいなことをやるとは思えないけど……)

エリカ(ええい、行くのよエリカ!隊長に抱きしめてもらえる機会なんてもう無いかも知れないんだから!)

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エリカ「……し、失礼します」

まほ「エリカ……!」

エリカ「隊長……!」

まほ「…………」グッ

エリカ「……ん?」

まほ「…………」ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ

エリカ(ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!折れる潰れる!色々やばいですっ隊長!)

エリカ「た、隊長っ……!ま、待っ……!折れ、るぅ……」

まほ「…………」スンスン

エリカ(弱まるどころかさらに強く……!このままじゃ確実に死ぬ……!)

エリカ(私何かしましたか!?あれですか、着替えのとき隊長のことチラチラ見てたのバレちゃいましたか!?)

エリカ(……あ、隊長、いい匂い)

エリカ「かは……っ……」

エリカ「」

まほ「……ん?え、エリカ!?しっかりしろ!エリカ!」

まほ「エリカ、ちょっといい?」

エリカ「あ、はい!」

まほ「エリカに作ってきたんだが、よかったら食べてもらえると嬉しい……」

エリカ「!」

エリカ(こ、これは……!隊長の手作りカレー!夢みたいだわ!)

エリカ「いいんですか!」

まほ「ああ。初めてだから、あまり自信はないんだが」

エリカ「いえ!それじゃあ、早速……いただきます!」

エリカ「――――!」

エリカ(か、辛あぁぁぁぁぁ!辛すぎるわよ!なにこれ、西住流のカレーってこんなに辛い物なの!?こんなカレーを食べ続けたら確実に唇が腫れて大変なことに……)

エリカ(野菜もお肉もいい具合で見た目も綺麗なのに、なんでこんなに味が尖ってるんですか!!!!)

まほ「……どう?」

エリカ「お、おいひいです……!」

まほ「そうか!実はお母様にも美味しいと言ってもらえたんだが、翌日まで顔を合わせてくれなくてな……本当は美味しくないんじゃないかと心配してたんだ」

エリカ(隊長、多分それ唇が腫れたせいだと思います)

まほ「おかわりも用意してあるから、お腹いっぱい食べてくれ」

エリカ「」

エリカ「全員集合!」

隊員A「ぶふっ!逸見……その唇……あははっ!」

隊員B「そ、そんな笑っちゃだめですよ……!くふっ」

エリカ「うるっさいわね!いいでしょ、唇のことは!」

隊員C「……ぷっ」

エリカ「わかった。唇見て笑ったやつ全員ティーガーの履帯担いで学園艦10周ね」

「「「すみませんでした!!!!!」」」

まほ「エリカ、こんな格言を知っているか?」

エリカ「隊長……?」

まほ「あばよ涙、よろしく勇気!」

エリカ「えっと……」

まほ「…………」

エリカ「……すみません、分からないです」

まほ「…………」

まほ「こんな格言を知っているか?」

エリカ「あ、あの……」

まほ「絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!!!!」

エリカ「っ!?」ビクッ

エリカ「すっ、すみませんでしたァ!調べて出直しますっ!!!!」

まほ「あっ、エリカ……」

エリカ「蒸着!」

小梅「宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムはわずか0.05秒にすぎない!」

小梅「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」

小梅「……って、なんですかコレ」

エリカ「あばよ涙、よろしく勇気よ!」

小梅「いや、だからなんですかコレ」

エリカ「お疲れさまです、タオルどうぞ」

まほ「ありがとう、エリカもお疲れ」

まほ「聞きたいことがあるんだが、いいか?」

エリカ「はい!なんでも聞いてください!」

まほ「……エリカはお見合いの経験はある?」

エリカ「へっ……?いや、ないですけど」

まほ「そうか」

エリカ「ど、どうかされたんですか?」

まほ「実は明日、お見合いをすることになった」

エリカ「」

まほ「この三年のうちに恋人の一人でも紹介していればよかったんだろうが、遅かったようだ」

エリカ「」

まほ「もしかしたら私は明日、顔も知らない相手と婚約することになるのかもしれない……」

エリカ「」

まほ「時間を取らせてすまなかった。準備があるから私はもう帰るよ」

エリカ「」

小梅「あれっ?エリカさん、こんなところでどうしたんですか?エリカさん?」

小梅「……し、死んでる……」

しほ「準備はできたかしら?」

まほ「はい。……お母様」

しほ「なにも言わないでいいわ。あなたは先に待ってなさい」

しほ「こんなことしたくはないけど、仕方ないわね」

まほ「……すみません」

しほ「行きなさい」

まほ「……はい」

まほ「…………」

エリカ「こちらエリーカ。西住邸に潜入した」

小梅<さすがですね。ブランクがあるとは思えません>

エリカ「前にも潜入したことがあるみたいな言い方やめてくれるかしら」

小梅<してないんですか?>

エリカ「してないわよ!……はぁ、まだお見合いは始まってないみたいね」

小梅<あの、ところでエリカさんは潜入してどうするつもりなんですか?>

エリカ「それはもちろんこのお見合いを破壊……じゃなくて隊長にふさわしい相手かどうか見極めるのよ」

小梅<今、破壊って……>

エリカ「仕方ないでしょ!毎晩隊長とイチャイチャラブラブする妄想して安眠を得ているのに、昨日は胃が張り裂けそうで一睡もできなかったんだから!」

エリカ「もしも隊長にふさわしくないやつだったらカリブ海に沈めてやるから覚悟しなさい!」

小梅<とっとと告白しちゃえばいいのに……>

エリカ「……今さらそんなことしたら隊長に迷惑じゃない。それに私なんかが……」

小梅<あっ、そろそろ始まるみたいですよ、ヘターレ>

エリカ「誰がヘタレよ!まずあんたから沈めるわよ!」

エリカ「……さて、どんなやつなのかしら?」チラッ

ダージリン『こんな格言を知っている?イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない」

エリカ(……えっ、ええええええええ!?隊長のお見合い相手ってダージリンだったの!?)

エリカ(少なくとも顔も知らない相手との婚約は避けられそう……なんて言ってる場合じゃないわ)

ダージリン『お見合い、受けてくださって嬉しいわ』

まほ『今日はよろしく頼む』

ダージリン『これ、お土産のうなぎのゼリー寄せよ』

エリカ(初っ端から嫌がらせかしら)

まほ『ありがとう』

ダージリン『マカロンを持って来ようと思ったのだけれど、マカロンを好きなのはみほさんでしたものね』

ダージリン『今後のためにまほさんの好物を教えてくださる?』

まほ『好物か。私はカ――――』

ダージリン『まさかカレーやハンバーグなんていう子供っぽいものではないわよね?』

エリカ(子供っぽくて悪かったわね!)

まほ『アイスバインが一番好きだな、うん』

エリカ(ウソついた!隊長とっさにウソついた!そんなもの食べたことないってこの前言ってたじゃないですか!)

ダージリン『そう、アイスバイン。おいしいですわよね』

まほ『!』

エリカ(えっ食べたことあるの?まずい、このままアイスバインで話が広がったら隊長のボロが出るのも時間の問題……)

ダージリン『あの、こう、サクサクしてて……』

エリカ(してないわよ!あんたも食べたことないんじゃないの!)

まほ『あ、あぁ!そうそう、サクサクしてるんだ」

エリカ(サクサクしてないですから!ダージリンが適当なこと言ってるだけですから!)

ダージリン『趣味のほうは?』

まほ『チェスだな。ダージリンはどうだ?』

ダージリン『私は紅ty――――』

まほ『まさか聖グロの隊長の趣味が、紅茶なんてありきたりな答えではないと思うが』

ダージリン『趣味は修行ですの』

エリカ(あんたもウソついてんじゃないわよ!修行が趣味なんて聞いたことないわよ!)

まほ『そうか修行か、さすがだな』

ダージリン『当然ですわ』

まほ『どんな修行をしてるんだ?よかったら教えてくれ、今後の参考にしたい』

ダージリン『え……亀の甲羅を背負って牛乳配達したり、100倍の重力下で紅茶を飲んだり時間の流れが違う部屋に缶詰めにされたり、ですわね……』

エリカ(紅茶以外丸々ドラゴンボールじゃないの!)

まほ『なら、もうかめはめ波くらいは撃てるようになったんじゃないか?ちょっとやってみてくれ』

エリカ(謝っちゃいなさい!恥をかく前に謝っちゃいなさい!今なら冗談で済むんだから!)

ダージリン『え゛……いえ、ここで撃ってしまったらこの部屋が壊れてしまうのではなくて?』

まほ『大丈夫、この家は特殊なカーボンで守られている』

ダージリン『い、いや……』

まほ『さぁ早く』

ダージリン『う……』






ダージリン『……波ァッーーーーー!!!!!!』

まほ『…………』

ダージリン『……あ、あの』

まほ『……ふっ』

ダージリン『~~~~っ///』

すみません
被っていたみたいなので次から酉変えて続けます

小梅<ダージリンさん……>

エリカ「泣きながら帰っていったわ。私じゃあどうしようもできなかったのよ……」

エリカ「まぁ、この様子じゃあ破談ね。安心したらお腹すいたわ。帰りにハンバーグでも食べていこうかしら」

小梅<待ってください!また誰か来ますよ!>

エリカ「えっ!?ちょっと、お見合いって連続でするものなの!?」

小梅<今度はサンダースのケイさんですね>

エリカ「知り合いばかりじゃない!どうなってるのよ!」

小梅<西住流としては優秀な遺伝子が欲しいんでしょうね。だから今日は戦車道が盛んな各校の隊長が呼ばれてるみたいです>

小梅<隊長たちも西住流宗家に嫁入りして隊長をモノにできるんですから悪い話じゃないでしょうし>

エリカ「なによそれ、ちょっと家元のところに行ってくるわ!」

小梅<あー!待って、待ってください!いま家元のところに直談判なんてしたらアレですよ!それこそ隊長の立場が危うくなって顔も知らない人と婚約させられることになっちゃいますよ!>

小梅<ここぞというときにしましょう!ねっ?そのほうがいいですって!>

エリカ「……そ、そうね。ちょっと頭に血が上っちゃったわ」

小梅<あ、ほら、ケイさんが入ってきましたよ>

ケイ『ハーイ!久し振りね!』

まほ『わざわざすまない』

ケイ『いいわよ、気にしないで。まほの将来のためなんだから!』

ケイ『これお土産のレインボーケーキよ』

まほ『七色のケーキか』

エリカ(なんであんたら初っ端から嫌がらせかましてくんのよ!)

ケイ『ところで、まほってどんな人がタイプなの?』

エリカ(!)

エリカ(も、ものすっごく気になる……!)

まほ『タイプか。あまり気にしたことはないが、あえて言うなら芯の強い人がいい』

まほ『それと普段はしっかりしてる分、ふと気を抜いた時の可愛らしさがあるといいな』

まほ『例えばパジャマがフリフリだったり』

エリカ(気にしたことないって言ってた割に結構がっつり言うんですね……)

ケイ『ふぅ~ん。まるで私ね!やっぱり私たちって結ばれる運命なのよ!』

エリカ(世の中丸ごとひっくり返してもさせてもそんな運命出てこないわよ!)

ケイ『そうと決まればさっそく式を挙げましょ!』

エリカ(なぁに隊長に抱き着いてんのよぉ!嫌がってるじゃないの!)

まほ『ちょ、ちょっと近いぞ……』

エリカ(でも照れてる顔も可愛いです、隊長!)

ケイ『まほ、んー』

エリカ(ちょっ、ちょっと!!キスなんてしたらバミューダトライアングルのど真ん中に沈めてやるわよ!!!!)

まほ『ま、待て、それはダメだ……』

エリカ(そうよ、ダメですよね隊長!)

ケイ『……あ、そうそう!結婚する前に聞いておきたいことがあるんだけど』

エリカ(結婚させないから聞かなくていいわよ、さっさと帰ってちょうだい)

まほ『なんだ?』

ケイ『まほって目玉焼きには何をかけるの?』

エリカ(はぁ?なによそのくだらない質問は……)

まほ『醤油だ』

ケイ『はぁ、オーマイゴッド……』

ケイ『普通、目玉焼きにはケチャップでしょ!?』

エリカ(どうでもいい!死ぬほどどうでもいいわ!)

まほ『ケチャップだと!?そんな、あり得るはずがない!ふざけているのか!』

エリカ(すみません隊長、二人ともふざけてるようにしか見えません)

ケイ『残念だけど、あなたとは結婚できないわ』

まほ『あぁ、私も同じことを思っていた』

ケイ『でも、戦車道は別よ!また今度やりましょ、バーイ』

エリカ(えっ…………)

エリカ(えぇぇぇぇぇぇ!?目玉焼き一つでお見合いって破談になるものなの!?そういうものなの!?)

エリカ(で、でもまぁいいわ。これでサンダースも潰れて残るは4校……)

エリカ(まとめて叩きつぶしてやるから覚悟しなさい!)

エリカ「まぁ、これからは目玉焼きにも敬意を払うわ」

小梅<は、はぁ……>

エリカ「それで次はどこの学校なのかしら?」

小梅<次はアンツィオ高校みたいですね>

エリカ「ということはアンチョビね。いいわ、あのウィッグを引きちぎって耳かじられたドラえもんみたいにしてやろうじゃない!」

エリカ「というか小梅、あんたどこにいるの?」

小梅<えっ、どうしたんですか急に>

エリカ「どうして相手が部屋に入ってくる前から誰が来るのか知ってるのよ。近くで見てるんでしょ?」

小梅<…………>

エリカ「ちょっと」

小梅<ただいま電話に出ることができません>

エリカ「おいコラ」

アンチョビ『ドゥーチェ参上だー!』

まほ『安斎、よく来てくれた』

アンチョビ『ア・ン・チョ・ビ!安斎と呼ぶな!』

アンチョビ『あとこれはお土産のティラミス』

エリカ(へぇ、まともな物を持ってくるやつもいるのね)

アンチョビ『のレシピだ』

エリカ(せめて完成品を持ってきなさいよ!!!!)

まほ『ありがとう』

アンチョビ『……いやぁ、緊張するな~。お見合いなんて小説でしか見たことないぞ』

まほ『恋愛小説が趣味だったな。実際にそういった経験はあるのか?』

アンチョビ『あ、あるわけないだろ!そういうお前はどうなんだ、初恋とか!』

まほ『い、いや私のことはいいじゃないか……』

エリカ(え、この反応なんですか?あるんですか、あるんですか!?)

アンチョビ『いいから話してみろって~。私しかいないんだし』

まほ『ダメだ』

アンチョビ『言~え~よ~西住~!』

エリカ(なにいつの間に布団並べて寝転んでるのよ!修学旅行じゃないのよ!)

アンチョビ『西住が言ってくれたら私の初恋も教えるから。なっ?』

まほ『本当か?ウソじゃないだろうな?』

アンチョビ『ほ、本当だとも、うん……』

エリカ(隊長、そいつウソついてます!目が泳ぎまくってます!)

まほ『…………あれは、子供のころにみほと戦車に乗って散歩していたときだ』

エリカ(えっ話しちゃうんですか?いや、でも隊長の初恋話は確かに気になる……)

まほ『いきなり声をかけられてな。戦車から乗り出すと、そこには銀髪で可愛い服を着た女の子がいたんだ』

まほ『私とみほはその子に、子供だけで戦車に乗るのは危ないと怒られてしまったんだが』

まほ『あのときは何を思ったのか、二人がかりで無理やりその子を戦車に乗せて走り出したんだ』

まほ『最初は降ろしてくれと泣きじゃくっていたものの、いつの間にか泣き止んでとびきりの笑顔を浮かべていたよ』

まほ『……私はその笑顔にすっかり見惚れてしまっていた。別れ際にまた会う約束をしたんだが、結局それ以来会うことはなかったな』 

アンチョビ『名前は聞いたのか?』

まほ『いや……』

アンチョビ『おぉ……甘酸っぱい良い思い出だな。ちょっと胸が締め付けられたぞ』

エリカ(た、隊長にあんな初恋物語があったなんて……)

エリカ(羨ましいぃぃぃ~~~~!隊長の思い出の女の子になりたい!フリフリの服買ってこようかしら……)

まほ『さて、私は話したぞ。次は安斎の番だ』

アンチョビ『おぉっと!もうこんな時間じゃないか!このままではパスタがデロンデロンになってしまう!』

アンチョビ『それじゃあ西住、私は帰らせてもらうぞ!』

まほ『あ、おい待て!話が違うぞ!』

まほ『まったく……』

エリカ「……はぁ」

小梅<どうしたんですか?ため息なんてついて>

エリカ「ため息くらい出るわよ。はぁぁぁぁぁ~、過去に戻って小さい隊長の思い出の人になりたい……」

エリカ「タイムマシンとかどこかにないかしら。あっ、あのドゥーチえもん連れ戻して来れば……」

小梅<ドゥーチえもんって誰ですか!あの人、秘密道具とか持ってないですからね!持ってたとしてもオリーブオイルとかチーズとかそんな感じですよ!>

小梅<ほら、過去ばかり見てたら進めませんよ?そうだ、こうなったら隊長の未来のお嫁さんになっちゃいましょうよ!>

エリカ「お嫁さんになりたい……隊長に抱きしめられたい……でも旦那さんになって抱きしめるのもいいわね……」

エリカ「後ろから抱きしめて恥ずかしさで真っ赤になった耳に息を吹きかけて反応を見たい……」

小梅<あーはいはい。あっ、次は継続からミカさんが来たみたいですよ>

エリカ「ん~……」

ミカ『果たして今日の集まりには意味があるのかな?』ポロロン

まほ『意味があるかどうかは陽が沈むころには分かるだろう』

ミカ『そうだね。おとなしく風が答えを運んでくれるのを待つとしよう』

ミカ『これはお土産だよ』

まほ『これは……?』

ミカ『継続高校の学園艦で太陽の光を浴びて伸び伸びと育った――――』

ミカ『どんぐりの帽子さ』

エリカ(もはやただのゴミじゃないの!)

ミカ『…………』グゥー

まほ『腹が減っているのか。自由に取って食べてくれ』

ミカ『お言葉に甘えさせてもらうよ』

まほ『どうだ?』

ミカ『おいしい』

まほ『そうか。ラーメンもあるぞ』

ミカ『いただきます』

ミカ『これはなんていう食べ物かな?』

まほ『いきなり団子だ、うまいぞ』

ミカ『うん、おいしいね』

まほ『どんどん食べてくれ、おかわりもあるからな』

ミカ『…………』モグモグ

ミカ『……西住さん』

まほ『なんだ?』

ミカ『お持ち帰りしてもいいかな?』

まほ『構わない。なんならそれ用に作ってもらおう』

ミカ『ありがとう。こうして食事にもありつけたし、やっぱり戦車道には人生の大切なことが詰まっているね』

まほ『人生の大切なこと、か。同感だ』

ミカ『ふぅ、ごちそうさま。それじゃあ私は戻るよ』

まほ『あぁ、小腹が空いたら菊代さんに頼んでみんなと菓子でも食べていてくれ』

ミカ『…………』ポロロン

エリカ(…………)

エリカ「…………」

エリカ「タダ飯たかりに来ただけじゃないの!一体何しに来たのよ!?」

小梅<お、落ち着いて!落ち着いてくださいエリカさん!>

小梅<向こうに隊長と婚約する意思も感じられなかったですし、よかったじゃないですか!>

エリカ「ま、まぁ、それもそうね」

エリカ「府抜けた頭が一気に冴えたわ、あんなのただのお食事会じゃない。それにしてもあいつ、涼しい顔して意外と食べるのね……」

小梅<残るは知波単とプラウダの二校ですね>

エリカ「何事もなく終わればいいわね。でもまぁ、西とカチューシャとのお見合いが成立するとは思えないけど」

小梅<油断はしないほうが……>

エリカ「そうね、万が一のことがあれば私もろともこの家ごと吹き飛ばすわ』

小梅<その物騒な考え捨てません?>

エリカ「それで?次はどっちが相手なのかしら?叩きのめしてやる」

小梅<え~っと、あっ、次はプラウダ高校みたいですね>

エリカ「ふんっ、大学選抜戦では連携したけど容赦はしないんだから」

ノンナ『よろしくお願いします』

エリカ(……お)

エリカ(思わぬ相手出てきたあああ!)

まほ『あぁ。カチューシャはどうしたんだ?』

エリカ(そ、そうよ、なんであんたが出てくるのよ!流れ的にカチューシャでしょ!?)

ノンナ『はい、カチューシャは待ちくたびれてお昼寝中です。なので代わりに私が来ました』

まほ『なるほど』

ノンナ『ちなみにカチューシャは同志クラーラに任せていますのでご安心を』

エリカ(誰も聞いてないわよ)

ノンナ『初めに言っておかなくてはならないことが一つ。まずあなたにカチューシャは渡しません。さらに言うと私も西住に嫁ごうとは思いませんので』

エリカ(いったい何しに来たのよ!)

まほ『早速破談とはな』

ノンナ『……まほさんには恋する相手がいたようですが』

エリカ(……え゛っ!?)

まほ『……そうだな。私なりに攻めていたんだが、まったく気付いてもらえなかった』

エリカ(ムキーッ!どこのどいつよ!その朴念仁の唐変木は!この手でぶん殴ってやるわッ!あ゛ぁぁぁぁぁぁ!羨ましすぎて胸が張り裂けそう……)

エリカ(はぁ……たくさんアピールしても振り向いてもらえなかったのはそういうことだったのかしら……)

ノンナ『それは苦労されましたね』

まほ『あいつと顔を合わせて自分なりに近づいたり、みほや君たち戦車道の友人から受けた助言を実行するたび心臓が高鳴って仕方なかったよ』

まほ『心臓が過労で止まるんじゃないかと毎日ヒヤヒヤだったが、確かに楽しかった』

エリカ(知らなかった、隊長にそんな相手がいたなんて……ほんと、誰なのかしら)

ノンナ『そんな相手がいながらお見合いを決めたのはどうしてですか?』

まほ『私は長女として西住流を継ぐ必要がある。叶わぬ恋より、見合いで相手を決めたほうが確実だからな』

まほ『…………まぁ、というのは建前だ。本当はあいつに来てほしい』

ほ『見合いなんかやめて自分と結婚してくれと、そう叫んでこの見合いを潰してほしい』

まほ『なんなら攫ってもらってもいいかもな』

エリカ(……攫っちゃおうかしら)

まほ『まぁ、この見合いも絶対ではない。私と相手が良しとしなければ縁談が結ばれることはない』

まほ『今日がダメでも、また次がある』

ノンナ『来てくれるといいですね』

まほ『そうだな』

ノンナ『遅くなりましたがこれはお土産です。プラウダ名物のリンゴ――――』

ノンナ『を食べているカチューシャの写真です』

エリカ(だからいらないわよ!あんたが持っておきなさいよ!)

ノンナ『それでは私はもう失礼します』

まほ『ああ』

エリカ「はぁーーーー……」

小梅<疲れてるみたいですね>

エリカ「隊長ね、好きな人がいるそうなのよ」

小梅<へ、へぇ~、そうだったんですかー初耳ですー>

エリカ「それなのに家のためにお見合いで相手を決めるなんてあんまりじゃない。隊長だって好きになった人と結ばれたいはずよ」

小梅<そうですね、すっごく結ばれたいと思ってますよ、えぇ>

エリカ「……はぁ」

エリカ「…………もう決めたわ!次の西が万が一ほんのちょっとでもいい感じになったら必ずぶち壊してやる!」

エリカ「そのあとで隊長とどこの誰だか知らない幸せ者をくっつけるサポートをするわ!」

小梅<あーはいはい頑張ってくださいね。あっ、西さん来ましたよ>

絹代『ほ、ほほほ本日はお日柄もよく!』

まほ『落ち着け。気楽にしてくれて大丈夫だ』

絹代『す、すみません!西住さんの着物姿がお美しく、つい緊張してしまいまして……!』

まほ『ふふっ、そうか』

エリカ(な~にちゃっかり口説いてんよぉ!服装までバッチリ決めっちゃって……)

絹代『あっ!これつまらないものですが……』

まほ『これは……?』

絹代『とらやのお菓子です!』

エリカ(…………なんでかしら、まともすぎて涙が出て来たわ)

まほ『ありがとう。今日はなにで来たんだ?』

絹代『愛車のウラヌスを走らせてまいりました!』

まほ『ウラヌス?ああ、あのバイクは西の物だったのか。しっかり手入れされているのがよくわかるよ』

絹代『恐縮です!』

絹代『もしよろしければ西住さんも後ろに乗ってひとっ走りいかがでしょう?』

エリカ(はぁ!?カーボンでコーティングされてるわけでもあるまいし、隊長にそんな危ないことさせられないわよ!)

まほ『いいのか?ならお願いしようか』

エリカ(へっ!?)

絹代『それでは、お手をどうぞ』

エリカ(ちょっ……!)

まほ『あぁ』

エリカ『西絹代!南東に突撃ーッ!』

絹代『――――はっ!突撃ーッ!』

まほ『あ、待て、どこに……』

まほ『行ってしまった……』

エリカ「ふぅ、メガホンを持ってきておいて正解だったわね」

エリカ「でもこれで今回のお見合いは終了。すぐに隊長の好きな人を探さないと……」

エリカ「あなた、何か知らない?……小梅?」

エリカ「おかしいわね、つながらないわ」

エリカ「…………ん?誰か来た?」

今日はここまで
また明日来ます

しほ『それで、全員ダメだったのね』

エリカ(家元……?)

まほ『はい……』

しほ『いい?あなたは西住流の後継者。六人とお見合いをしてその全てが破談という体たらくではどうしようもありません』

まほ『で、ですが……』

しほ『ですがもゴジラもないわ。あなたにはこちらで用意した相手と今日、婚約してもらいます』

エリカ(なっ……!?)

しほ『相手方も是非にと、言っています。さぁ、早く準備をしなさい』

まほ『お母様……』

しほ『まだ想い人が来てくれると思っているの?好意に気付いてもらえない、好かれているかも分からない相手がここに来るはずがありません」

しほ『あなたは時期に西住流を継ぐことになる身。そんな甘い考えはこの機に捨ててしまいなさい』

まほ『…………』

エリカ(ど、どうする……!このままだと隊長が……)

エリカ(い、いいえ、落ち着きなさい逸見エリカ!)

エリカ(どうにかして家元を説得……できるのかしら……)

エリカ(何してるのよ、世界一の幸せ者は!こんなときに一体全体どこで呆けているのよ!)

エリカ(隊長にあんな悲しい顔させて……)

エリカ(隊長に想われてるあんたが羨ましくて仕方ないわ!)

エリカ(私だってずっと……)

エリカ(初めて会った時から、ずっと想っていたのに……)

エリカ(……もっと早くに伝えておけば何か違ったのかしら)

エリカ「…………」

エリカ(隊長、好きです。大好きですっ……)

エリカ(本当に、大好きなんです!ぐすっ……他のやつなんかに取られたくない……!本当にっ、心から!愛してます、隊長!!)

エリカ(ぅ…………)グスッ

エリカ(………………っ)

エリカ(…………ふ、ふふっ。らしくないわよ、逸見エリカ。隊長に好きな奴がいようと関係ない!そうよ、こんなに大好きなんだもの……私のこの想い、告げずに終わっていいわけないわ!)

しほ「行くわよ」

まほ「…………はい」

エリカ「待ってくださいッ!」

まほ「!」

しほ「……逸見さんね。何の用かしら?」

エリカ「そのお見合い、取り止めてもらえませんか」

しほ「あなたには関係のないことです。そこをどきなさい」

エリカ「嫌です」

しほ「……どういうつもりか知りませんが、この縁談は西住流の未来のために必要なこと」

しほ「それを邪魔するというのであれば……」

エリカ「……っ」

エリカ「…………やってやるわよ」

しほ「はい?」

エリカ「上等じゃない!大いに邪魔してやるわよッ!この私をどうにかできるものならやってみなさい!」

エリカ「娘の気持ちを一番に想ってやれないなんて、西住流もたかが知れるわ!」

エリカ「人の恋路を邪魔する親は、虎に殴られて地獄に落ちればいいのよ!」

しほ「…………」

エリカ「隊長!!!!」

まほ「――っ!?え、エリカ!?」

まほ「……綺麗な月だな」

エリカ「はぁ……はぁ……はぁ……」

まほ「それでエリカ、これはどういうつもりなんだ?」

エリカ「……隊長、すみません。私、今日のお見合い全部見てました」

エリカ「隊長がお見合いをするって聞いて、いてもたってもいられなかったんです」

まほ「……それは同情で?」

エリカ「そうじゃありません!……隊長に好きな人がいるのも知ってます。今日その人を待っていたのも知ってます……!」

エリカ「隊長が西住流を継がなくちゃいけないことも、その覚悟があるのも知ってるんです……!」

エリカ「ずっとそばで見ていましたから……ずっとあなたの背中を追いかけてたからっ……」

まほ「エリカ……」

エリカ「それでも、それでもっ!私は……隊長のことが好きなんです!ずっと一緒にいたいんです!!」

まほ「――――!」

エリカ「待っても来ない奴や、顔も知らない奴よりも!この私が絶ッ対に幸せにします!」

エリカ「だから……だから!私と一緒に来てください、まほさん!!!!」

まほ「…………」

まほ「……ありがとう、エリカ。……っ、くっ……」

エリカ「た、隊長!?い、嫌でしたか!?泣くほど嫌ですか!?」

まほ「ふっ、イヤなわけあるか。それに、待っていた人なら来てくれた」

まほ「――――私も好きだよ、エリカ」

エリカ「――――!」

エリカ「ぐず、ひぐっ……隊長ぉ゛……!」

まほ「ほら泣くな。さっきまでの威勢が台無しだぞ」

エリカ「はい゛……」

まほ「それじゃあ、名残惜しいが戻るとしよう」

エリカ「……えっ?戻る?」

まほ「ああ、私の家にな」

エリカ「へっ……?」

まほ「と、言うわけで無事にお互い思いを告げることができた。みんな、ありがとう」

ミカ「どうやら風はいい答えを運んできたみたいだね」

ケイ「ホントよかったわ!今日はお祝いよ!」

アンチョビ「あんな駆け落ちみたいなことを実際に見られるとは思わなかったぞ」

ダージリン「事実は小説より奇なり、ですわね」

カチューシャ「一時はどうなるかと思ったわ。エリカったら心配させないでよね!」

ノンナ「心配も何も、たった今起きたばかりじゃないですか」

絹代「逸見殿!実に大胆な恋愛的突撃でありましたな!」

エリカ「……え?あ、あの隊長、これは?」

まほ「実はな」

エリカ「えっ!?全部作戦だったんですか!?」

まほ「あぁ、すまない」

ダージリン「何度もまほさんから相談を受けた私たちも、まったく進展のない関係に嫌気がさしてしまいまして」

ダージリン「鈍感でヘタレなあなたに発破をかけるために集まったんですの」

エリカ「だ、誰がヘタレよ!っていうかあんたが相手の時は発破もなにもかめはめ波撃ってただけでしょ!」

ミカ「二人のことは、そのうち時間が解決してくれたかもしれない」

ケイ「それじゃあダメよ。何年かかるか分かったもんじゃないわ」

カチューシャ「こうでもしないと鈍感ヘタレエリカは動かないでしょ」

絹代「奥ゆかしいのもまた良いことかと」

アンチョビ「確かに私らのお見合いを全部見といて、何にも気づかない辺りは鈍感としか言えないな」

エリカ「な、なによそれ」

ケイ「私とお見合いしてるときに話した、まほのタイプにぴったりな人がこの中にいるんだけど誰だかわかる?」

エリカ「は、はぁ?」

ケイ「はぁ~。じゃあまほ、私の質問に答えてね!」

ケイ「芯が強くてしっかりしてるのは?」

まほ「エリカだ」

エリカ「え?」

ケイ「気を抜いた時の可愛らしいギャップが魅力的なのは?」

まほ「エリカだ」

エリカ「えっ?」

ケイ「パジャマがフリフリで意外と可愛い物好きなのは?」

まほ「エリカだ」

エリカ「ええっ!?」

ケイ「というわけなんだけど、ちょっとでも自覚はあったのかしら?」

エリカ「…………な、なかったわ」
 

まほ「エリカは普段、副隊長としてしっかりしてくれている。今までもよくやっていてくれたが、全国大会後からはさらに成長したな」

まほ「後輩の教育も叱るだけではなく、そこからどうするべきか教え導くことができている。エリカならば黒森峰の次期隊長として活躍してくれるだろう」

絹代「おぉ!さすが逸見殿!」

まほ「そんなエリカだが、もちろん可愛いところもあるんだ」

まほ「例えば倉庫に迷い込んできた野良猫に話しかけたりな」

エリカ「ちょっ……!なんで知ってるんですか!?」

まほ「私も倉庫にいたんだが話しかけづらくてな。まぁ、じっくり観察させてもらったよ」

カチューシャ「あはは!それ本当にエリカ?」

ノンナ「ちなみにですが、カチューシャはたまにぬいぐるみに話しかけています」

カチューシャ「何で知ってるのよ!」

まほ「まだあるぞ。あれはケイのアドバイス通りにボディタッチを実行したときだ。不意にエリカの腰を触ったら可愛らしい声をあげてな、思わず撫でまわしたくなった」

ケイ「ワオ!あなたいきなり腰に行ったの?大胆ね~!」

エリカ「た、隊長っ!分かりました!分かりましたからもうやめましょう!」

ミカ「パジャマのくだりがまだだよ」

エリカ「余計なこと言わなくていいのよ!」

まほ「合宿でエリカと同じ部屋になったときに初めてエリカのパジャマ姿を見ることができたんだが、すごく可愛かったぞ。あのフリフリの付いた白いワンピースパジャマ」

エリカ「くぅぅ……隊長ぉ、もう勘弁してください……」

ダージリン「全く想像できませんわね」

エリカ「悪かったわねっ!」

アンチョビ「なあ、それじゃあ西住が私に話してくれた初恋の相手って誰だかわかるか?」

エリカ「へ?そんなの知るわけ……って、まさか……」

まほ「そう、エリカだ」

エリカ「えええぇぇぇぇぇっ!?」

まほ「黒森峰で初めて顔を合わせたとき、同じ銀髪にひょっとしたらと思ったんだ。それからしばらくしてエリカの部屋に上がったとき、机の上にウサギのぬいぐるみが置いてあってな、それで確信した」

まほ「私とみほが出会ったあの子も、エリカの部屋にあるものと同じぬいぐるみを抱いてたんだ」

ノンナ「偶然同じものを持っていたとは考えなかったのですか?」

エリカ「あ、あれはお母さんの……」

まほ「手作り、なんだろう?」

エリカ「は、はい」

まほ「あの時もそう言っていたよ」

カチューシャ「マホーシャはこんなにあなたを思ってるのに、エリカってば全然気づかないんだから」

ダージリン「何度アドバイスを送っても、いい返事は帰ってきませんものね」

エリカ「わ、私だってアピールしてたわよ!」

ケイ「例えば?」

エリカ「一緒にお昼ご飯食べたり、練習が終わったらスポーツドリンクとタオルを持って行ったり、目が合ったら笑顔で返すようにしたり……」

ケイ「ちょっとやってみてよ」

エリカ「えっ、こ、こうよ……?」ニタァ

ダージリン「これは……」

カチューシャ「ノンナの作り笑顔のほうがよっぽどマシよ」

ノンナ「どういう意味ですか」

エリカ「あとは……」

ミカ「携帯の待ち受けを西住さんにしたり」

エリカ「そうそう……って、なに勝手に見てんのよ!その弦、引き千切るわよ!」 

アンチョビ「だ、そうだぞ」

まほ「すまない……自分がどう攻め込むかでいっぱいいっぱいだったせいで、エリカの作戦に気付くことが出来なかった……」

エリカ「い、いえっ!大丈夫です、全然気にしてませんから!」

ミカ「自分も小さい頃のことを忘れていたからね」

エリカ「うるっさいわよ!」

ダージリン「こんな格言を知っている?終わりよければ全てよし」ドヤァ

ケイ「さーて、私たちはパーティーの準備でもしましょうか!」

アンチョビ「料理なら任せろ!今日は腕によりをかけて作るぞ!」

ミカ「お持ち帰りは出来るかな?」

絹代「食器の準備はお任せください!」

カチューシャ「オレンジジュースがいいわ!」

ノンナ「歯磨きは忘れないようにしてくださいね」

ダージリン「……ペコが恋しいですわね」

エリカ「あ、あの隊長……」

まほ「うん?」

エリカ「家元はどちらに……?」

しほ「………………」

エリカ「すみませんでしたァッ!!!!」

しほ「顔を上げて」

エリカ「はい……」

しほ「二人がお互いをどう想っているのかは、ある方から教えてもらっていました」

しほ「二人してグズグズしていたことも知っています」

エリカ「う……」

しほ「こんな小細工への協力など本意ではありませんでしたが、西住流のため……いえ、ただ娘のために」

エリカ「…………」

しほ「本来、この作戦は西さんとのお見合いが終わった時点で幕を閉じるはずでした」

しほ「それなのにいつまでたってもあなたが出てこなかったので、仕方なく……本当に仕方なく飛び入りで参加したのです」

しほ「そこで出てこなければあなたはそれまで。まほには諦めてもらうつもりでしたが、あなたはようやく出てきてくれましたね」

しほ「不器用で頭が固いのは自覚しています。私も一人の親。娘のことを大事に思わないわけありません」

しほ「それなのに、虎に殴られて地獄に落ちろとはなんですか」

エリカ「私、とんだ無礼を……!ほっ、本当に申し訳ありませんでした!!!!」

しほ「戦車乗りとして頭に血が上ってしまうのは理解できます。ですが西住の長女と交際することになったのであれば、口の悪さは慎む必要があるわね」

エリカ「それは、はい……気を付けます」

しほ「これからは厳しく指導していくわ。覚悟しておきなさい」

エリカ「――――はいっ!よろしくお願いします、家元!」

しほ「エリカさん」

エリカ「な、なんでしょう……?」

しほ「これからはお義母さんと呼ぶように」

エリカ「え、あっ、は、はいっ!」

しほ「今日は疲れたでしょう、泊まっていきなさい」

エリカ「はい!失礼します!」

しほ「……赤星さん。もういいわ、出てきなさい」

小梅「はい。今日はありがとうございました」

しほ「お礼を言うべきは私です。放っておいたら本当に見合い婚になるところだったわ」

しほ「あの子たちにもきちんと恋愛をしてほしかったの。あなたのおかげよ、赤星さん」

小梅「いえ、私も見ていてもどかしかったですし、なによりいい加減に早くくっついてほしかったので」

しほ「あなたも言うわね」

しほ「これからもあの子たちをよろしくお願いするわ」

小梅「はい、もちろんです!」

しほ「はぁ、みほはこうならなければいいわね」

ダージリン「そう、まほさんにもそんなところが」

エリカ「そうよ、隊長は凛々しくもあるけど何より可愛いんだから」

ケイ「他にはどんなエピソードがあるの?」

エリカ「練習中の無線連絡を噛んじゃったんだけど、それが何度言い直しても直らないからって無理矢理終わらせたり」

まほ「え、エリカ……」

エリカ「喫茶店に行ったときメニューを見て少し考え込んだと思ったら、クリームソーダを頼んでたり」

カチューシャ「ぷふっ、マホーシャがクリームソーダですって!」

ノンナ「カチューシャもよく頼んでいるでしょう」

カチューシャ「言わないでよ!」

まほ「お、おい……」

ミカ「メロンソーダとアイスの境界線にあるシャリシャリにクリームソーダの美味しさが詰まっているんだ」

エリカ「隊長が犬を飼ってるの知ってるでしょ?」

ケイ「エリカのこと?」

エリカ「違うわよ!」

ケイ「AHAHA!ジョークよ、ジョーク」

アンチョビ「ああ、今日来たときにみんなで触らせてもらったけどモフモフで可愛かったな」

エリカ「そう、モフモフなのよ。この前偶然、あの犬に抱き着いてモフモフしている隊長を見ちゃったときは可愛すぎてどうにかなりそうだったわ」

絹代「西住殿にもモフモフしたい欲求があったのですね!」

まほ「エリカっ……もうその辺に……」

エリカ「そうそう、一昨日の学食でピーマンが出たとき――――」

まほ「エリカッ!////」 

まほ「エリカ、起きてる?」

エリカ「はい」

まほ「今日はすまなかった」

エリカ「ふふっ、気にしてませんよ」

まほ「エリカと気持ちが通じるなんて、まるで夢のようだ」

エリカ「私もです、隊長」

まほ「それ」

エリカ「……?」

まほ「……その、エリカも……名前で呼んでほしい///」

エリカ(かわいい)

エリカ「はい、まほさん」

まほ「ん……」

まほ「……エリカ」

エリカ「なんですか?」 

まほ「私たちは……恋人同士でいいのか?」

エリカ「はい、将来的には夫婦ですけど」

まほ「そう、夫婦か……///」

まほ「本で読んだんだが、あっ、いや、テレビだったかな……」

まほ「こ、恋人同士は、ほら、あれを……き、きす……キスをするんだろう?」

エリカ「――――ッ!////」

まほ「……私たちは、しないの……?////」

エリカ「~~~~ッ!」

エリカ「……まほさん。目、つむってください」

まほ「あ、あぁ……」

エリカ「………………」

まほ「………………」

エリカ「…………っ」

まほ「…………んぅ」

エリカ「…………しちゃいましたね」

まほ「……な、なんてことはない」 

エリカ「顔、真っ赤ですよ」

まほ「~~~~!///」

エリカ「もう、こっち向いてください」

まほ「し、知らんっ」

エリカ「…………まほ」ボソッ

まほ「っ!?////」

エリカ「……すみません、まほさん」

まほ「……?」

エリカ「我慢できそうにないです」

まほ「――――っ!?こ、こらっ!エリカっ……////」

まほ「ちょっ、待っ……////」 

まほ「…………」

エリカ「すみませんでしたァッ!」

まほ「……待ってくれと言ったはずだ」

エリカ「はい……」

まほ「やめてとも言ったはずだ」

エリカ「はぃ……」

まほ「はぁ…………ま、まぁ」

エリカ「……?」

まほ「……うれしかったよ///」

エリカ「~~~~!まほさんっ!」

まほ「だが、調子に乗るなッ」

エリカ「は、はいぃ……!」

まほ「……ふっ。今度は負けはしないぞ」

まほ「――――末永くよろしく、エリカ」

エリカ「はいっ!よろしくお願いします、まほさん!」

終わりです
ありがとうございました
エリまほ流行れ

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