みさえ「しんのすけー、今日はパパが出張から帰ってくるわよ」
しんのすけ「おおー、やっとかー。オラもう待ちくたびれたゾ」
しんのすけ「とーちゃんお土産買ってくるかな?」
みさえ「たしか牛タンの味噌漬けがおいしいって電話してきたわねぇ」
しんのすけ「そういえばとーちゃんってどこに徴収しに行ったの?」
みさえ「徴収じゃなくって出張よ。あんた昨日も同じこと聞いたでしょ」
みさえ「パパが行ったのはたしか......そう」
みさえ「M県S市杜王町よ」
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しんのすけ「ひまー、今日はとーちゃんがオシュッチョから帰ってくるゾ」
ひまわり「たいあーい」
みさえ「だからしんちゃん、ちゃんと玩具とかお片付けしなさいよ」
しんのすけ「ほいほーい」
――
―――
ひろし「......ただいま」
みさえ「おかえりなさーい。しんちゃんパパ帰ってきたわよ」
しんのすけ「とーちゃんただいマンモスぅ~」
ひろし「......ああ、ただいま」
ひろし「......しんちゃん」
しんのすけ「......え?」
みさえ「おかえりなさいあなた。先にお風呂入る?」
ひろし「そうだね。出張で疲れたから先に入ろうかな」
みさえ「しんちゃん、あんたも先に入っちゃいなさい」
しんのすけ「う、うん」
しんのすけ(なんか、とーちゃん変だゾ)
しんのすけ(いつもだったらそこはおかえりだろってツッコむか、ただいマンモスってノッてくるのに)
しんのすけ(なんだか雰囲気も違うような。もしかして偽物?)
みさえ「しんちゃん何やってるのはやくしなさい」
しんのすけ(まさかそんな漫画みたいなことあるわけないゾ。きっとオシュッチョで疲れてるだけだゾ)
しんのすけ「さ、さてさて~オシュッチョ帰りのとーちゃんの靴の臭いは~」クンクン
しんのすけ「……臭くない」
――風呂
ひろし「ふう」
しんのすけ(変だゾ。今日のとーちゃん絶対変だゾ。足が臭くないしオラのことしんちゃんって呼ぶし)
ひろし(心なしか筋肉ついてる気がするし足が臭くないし……)
ひろし「しんちゃん。入らないのかい?」
しんのすけ「と、とーちゃん、なんでオラのこと『しんちゃん』って呼ぶの?」
ひろし「っ!」
ひろし「それは……」
しんのすけ「それに足も臭くないゾ。なんだかとーちゃんおかしいゾ」
しんのすけ「とーちゃんって、ホントにとーちゃんなの?」
ひろし(下手を打ったな。クソ)
ひろし(この小僧、わたしのことを疑っている)
ひろし(しかしまだ焦る時ではない)
ひろし(この小僧を今ここで始末するのは簡単だがまだ野原ひろしという男のパーソナリティを完全に把握するまでは活かしておかねば……)
ひろし(この小僧の性格からみるに、どうやらくだけた関係の家族のようだ)
ひろし「そりゃあお前、たまにはとーちゃんだって『しんちゃん』って呼びたくなるよォー。可愛い息子だものなぁ」
ひろし「かーちゃんだってしんちゃんって――」
しんのすけ「かーちゃん?」
しんのすけ「とーちゃんはかーちゃんのこといつも『みさえ』って呼ぶのにどうして――」
ひろし(チッ)
ひろし「かーちゃんってのはほら、とーちゃんのお母さんのことだよォ。ほら、お祖母ちゃんはいつもしんちゃんって呼んでただろォ?」
しんのすけ「そ、そうだっけ?」
ひろし「そうだよォ。ほら、そろそろ出ようか。おいしい晩御飯が待ってるぞ」
しんのすけ「う、うん」
しんのすけ(あれ、とーちゃんって秋田のばあちゃんのこと『おふくろ』って呼んでなかったっけ?」
みさえ「はいあなた、ビール」
ひろし「ああ、ありがとう。みさえ」
みさえ「出張お疲れさま。M県ってどういうところだったの?」
ひろし「……最高の町だったよ。それはもう……」
しんのすけ(っ! とーちゃん、今一瞬だけ悲しそうな顔をしたゾ!)
ひろし「お土産を買ってきたからあとで食べるといいよ」
みさえ「あ、しんのすけ。ちゃんとお野菜も食べなさい」
しんのすけ「ほ、ほーい」
ひろし(なるほど。しんのすけ、ね)
――夜中
ガリガリガリガリ
しんのすけ「ん、何?」
ガリガリガリガリ
しんのすけ「何の音――っ!」
ひろし「」ガリガリガリガリ
しんのすけ(とーちゃん、すごい怖い顔で爪を噛んでるゾ。かーちゃんやひまは気付かずに寝てるけど)
しんのすけ(絶対おかしいゾ。このとーちゃん、絶対おかしいゾ)
ひろし「」ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ
――翌日 アクション幼稚園
トオル「え? しんのすけのお父さんが変?」
しんのすけ「そうなんだゾ。なんか様子が変なんだゾ」
ネネ「変、だけじゃ判らないわよ」
ボー「もっと、くわしく」
しんのすけ「足が臭くないし、話し方もいつもと違うし、ノリも違うし、しかも足が臭くないんだゾ」
トオル(足の臭いはそんなに重要なのか?)
ネネ「もしかして……」
一同「もしかして?」
ネネ「しんちゃんのパパってたしか出張に行ってたのよね」
しんのすけ「そうだゾ」
ネネ「だったらきっと出張先で『何か』あったのよ。出張に行く前は普通だったんでしょ?」
トオル「なるほど。論理的だね」
マサオ「でも『何か』って何なの?」
ネネ「それを今から考えるんじゃない。馬鹿なの? このおにぎりが」
おにぎり「ひどいよネネちゃん」
ネネ「考えられる中で一番有力なのは『女』ね」
しんのすけ「女?」
ネネ「そう。出張先で悪い女に引っかかってそれで変なふうになっちゃったのよ」
トオル「ネネちゃんそれはちょっと……」
ネネ「何よ! よくある話でしょ?」
ボー「それか、もしくは、入れ替わった、か」
一同「!」
おにぎり「ボーちゃん何言ってるのさ。入れ替わったってそんなマンガじゃあるまいし」
しんのすけ「い、いや、実はオラもそう思ってたんだゾ。なんだかとーちゃんがとーちゃんじゃない気がするんだゾ」
トオル「そんなまさか……ね」
ネネ「でもそんなの確かめようがないじゃない。今のしんちゃんのパパが偽物だったら、本物はどこに行ったっていうのよ?」
ボー「それは」
トオル「ボーちゃん言わなくていいよ!」
ボー「ごめん。でも、確かめる方法なら、ある」
トオル「確かめる? いったいどうやって?」
ボー「監視、カメラ、仕掛ける」
ボー「うち、使ってないカメラ、いっぱい、ある」
ボー「それで、しんちゃんのお父さんを、隠し撮りして、ボロを見つける」
一同「ボーちゃん!」
今日はいったんここで終わります
明日以降、時間と需要があればまたノ
酉だけつけときます
早い時間ですか再開します
トオル「そんなことしてもしおうちの人に見つかったら……」
しんのすけ「いや、オラやるゾ」
ネネ「しんちゃん」
しんのすけ「オラの勘違いだったらその時はちゃんと謝って、でも」
おにぎり「勘違いじゃなかったら?」
しんのすけ「オラが、オラが偽物のとーちゃんをやっつけるゾ」
トオル「……よし、判ったよしんのすけ。僕たちも協力する」
しんのすけ「みんな」
トオル「行くぞー。カスカベ防衛隊、ファイヤー」
一同「ファイヤー」
しんのすけ(こうして、とーちゃんのお監視大作戦が始まったゾ」
――一週間後 ボーちゃんの家
トオル「首尾はどうだい?」
ボー「だめ、ボロ、出さない」
しんのすけ「だんだんいつもと同じ感じに戻ってきてる気がするゾ」
しんのすけ「かーちゃんとひまはあんまり怪しんでる様子はないし」
おにぎり「じゃあやっぱりしんちゃんの勘違いだったんじゃ......」
しんのすけ「いや、本物のとーちゃんだったら足が臭いはずなんだゾ。でも今のとーちゃんは臭くない......」
ボー「ぼああ、こうなったら、次の、手段」
ネネ「どうするの?」
ボー「家の中だけ、じゃなく、外でも、監視する」
トオル「尾行するってわけか」
おにぎり「でも大人がお仕事行ってる時は僕たちも幼稚園に行かなくちゃならないじゃあないか」
ボー「だから、幼稚園が、終わった後、駅に集まって、しんちゃんのパパが帰宅するまでの間だけ、尾行する」
ネネ「そんな短い時間でボロが出るかしら?」
トオル「でも今はそれ以外に方法がない。よし、さっそく明日から行動開始だ」
一同「オー」
――翌日 駅
ひろし(最近、爪が伸びるのが早い。早すぎる)
ひろし(早く杜王町に戻りたいというのに、この野原ひろしという男、32年分の家のローンが残っていやがる)
ひろし(しかも係長などという責任のある役職についている。そんなに出世してどうしたいというのだ?)
ひろし(気苦労の方が大いに決まっているのに)
ひろし(クソ。こんなことになったのも全てあの重ちーとかいう小僧のせいだ。クソ)
トオル「今のところ不自然な感じはないね」
ネネ「どうかしら、なんだか覇気があるような気がするわ」
しんのすけ「……」
おにぎり「あ、誰か近づいていく人たちがいるよ」
しんのすけ「あれは……」
ヨシりん「あれ~野原さんじゃあないですかァ?」
ミッチー「こんばんわ~」
ひろし(誰だ?)
ひろし(野原ひろしの知り合いか……まずいな、こいつらに関しては情報がまるでない)
ひろし(しかし、この女の方……ククク、なかなか綺麗な手をしている)グググ、ズキューン
ひろし「こんばんわ。二人はどうしたんだい?」
ヨシりん「それが聞いてくださいよー。僕たち今日ネズミ―ランドに行って来たんですよ」
ミッチー「すっごい楽しかったんです~」
ひろし「ああ、そうかい」
ヨシりん「野原さんにもお土産買ってきてますから、はいどうぞ」
ひろし「ああ、ありがとう」
しんのすけ(みっちーとヨシりんだゾ)
ひろし「済まないが、ちょっとこれから野暮用があるんだ……これで失礼するよ」
ヨシりん「あれぇ、そうなんですかァ? 一緒に帰って、ついでに晩御飯ごちそうになろうと思ったのに」
みっちー「残念ですぅ」
ひろし「……済まないね。じゃあ」
トオル「別れたよ」
ボー「どう、しんちゃん、今の、やりとりは?」
しんのすけ「う、うーん、普通……かな?」
しんのすけ(いつもはもっとキツくあしらってた気がするけど」
ネネ「あ、待って! しんちゃんのパパが二人のあとをこっそり追いかけてるわ」
トオル「なんだって? 追うんだ」
しんのすけ(とーちゃん?)
――――
――――――
おにぎり「ここは?」
しんのすけ「みっちーとヨシりんの家だゾ」
しんのすけ「オラが見てくるからみんなは公園で待ってて」
一同「う、うん」
ヨシりん「おなかすいたね~」
みっちー「ヨシりん何食べたーい?」
ヨシりん「みっちーの作る料理だったらなんでも食べたいな」
みっちー「ヨシりん」
ヨシりん「みっちー」
ひろし「……」ガチャリ
ヨシりん「ん、なんだ? あ、野原さん。どうしたんですか急に? もしかしてご飯奢ってくれr――」
ドグォォォン
ヨシりん「」
みっちー「え? え?」
ひろし「……アパートか。わたしの名前は吉良吉影。君の名前を聞かせてもらえないか?」
みっちー「ハァ、ハァ」
ひろし「『君の名前は?』と聞いたんだがね。わたしは名乗ってみせたんだ……聞かせてくれてもいいじゃあないか」
みっちー「あ、あ、ヨシりんはどこ? どこへ行ったの? みっちーをいったい」
ひろし「質問を質問で返すなーっ!! わたしは『名前』はと聞いているんだッ!」
みっちー「ひィィィィィ、み、美智子」
ひろし「……」
ひろし「美智子、ん~美智子ねぇ」
ひろし「美しい名前を付けてもらってるじゃあないか。気に入ったよ」
みっちー「ハァ、ハァ」
ひろし「ところで美智子さん、君はもうちょっと常識と女性らしい奥ゆかしさを磨いた方がいい」
みっちー「ハァ、ハァ」
ひろし「そんなんだから、あんなふうな頭の軽そうな男に引っかかってしまうんだ」
みっちー「ハァ、ハァ」
ひろし「何が言いたいかというとだね……」
ひろし「しゃべらない君はじつにカワイイ、ということさ」
みっちー「」
しんのすけ(っ!)
しんのすけ(みっちーと、ヨシりんを……あいつ)
しんのすけ(……殺して消した。みっちーは手だけを残して、ヨシりんは完全に)
しんのすけ(これではっきりしたゾ。あいつは、あいつはとーちゃんじゃない)
しんのすけ(人間じゃない。とーちゃんに化けてる)
ひろし「!」
しんのすけ(はっ)サッ
ひろし「……気のせいか。しかしどうしたものかな。美智子さん、君を家に連れ帰りたいが……」
ひろし「野原の家にいれるのはまずいか」
ひろししかし、スガスガしい……なんてスガスガしい気分なんだ」
――公園
トオル「お、おい、しんのすけ、どうだった?」
ネネちゃん「しんちゃん、汗がすごいわよ。それに体もママの玩具みたいに震えてる」
ボー「ビデオ、見せて」
しんのすけ「う、うん」
ボー「こ、これは!」
トオル「さっきの二人が、一瞬で消えた?」
ネネ「なによこれ、手品よね? そうよね?」
ボー「これで、はっきり、した。しんちゃんのパパは……」
ネネ「パパじゃない」
ネネ「ところでしんちゃん、右の靴が脱げてるわよ」
しんのすけ「あ、ほんとだゾ。急いでたから気付かなかった」
ひろし「……」キョロキョロ
ひろし「美智子さん。一緒に野原の家まで帰ってくれますね。家の前まで」
ひろし「中には入れられないが」
ひろし「……うん?」
ひろし「これは、靴? 幼稚園の通園用の靴だ……名前が書いてあるぞ」
ひろし「『野原しんのすけ』だと?」
ひろし「ドア、鍵は閉めていなかった」
ひろし「しんのすけ、あいつ……」
ひろし「まさかな」
ネネ「警察よ、警察に届けるのよ」
トオル「そうだ、はやく行こう。これは殺人事件だよ」
ボー「待って、これだけ、見せても、きっとCGだって、疑われる」
ボー「それくらい、ありえないことが、起きている」
トオル「でもそれ以外に方法がないじゃないか」
ネネ「そうよ。はやくしないとこいつがしんちゃんの家に帰ってきちゃうじゃない」
マサオ(みんな何を言ってるんだ? 一瞬で消えた? 違うだろ? 二人は『爆発』して消滅したじゃないか)
マサオ(そして何よりも驚くべきは、こいつの体から出てきたこの猫のような化け物じゃあないのか?)
マサオ(それとも、みんなには見えていないのかな?)
しんのすけ「オラ、やっつけるぞ……」
トオル「しんのすけ!」
しんのすけ「オラがあいつをやっつけるぞ」
ボー「しんちゃん、焦っちゃ、だめ」
トオル「だめだ、しんのすけ」
トオル「あいつがしんのすけのお父さんじゃない、とにかくやばいやつだと判った以上これはもう僕たちの手に負える問題じゃあない」
トオル「警察に行こう。はやくしないと犠牲者がこれ以上増える可能性が――」
コッチヲミロォ
トオル「え?」
トオル「今、誰か何か言った?」
ネネ「い、いいえ。それより風間くん」
ボー「その服に、ついてる車輪の、跡は?」
トオル「え? うわああ」
???「コッチヲミロッテイッテンダゼ」
ひろし(あのガキども、わたしのことをこそこそと調べて回っているようだ)
ひろし(まさかもう勘付かれるとはな)
ひろし(このタイミングで騒ぎを起こすのは得策ではないが、ここは杜王町とはかなり離れている)
ひろし(子供が数人行方不明になったからといって承太郎の耳には入らないだろう)
ひろし(今回は前のような失敗はしない……確実に仕留めるのをこの目で『確認』するのだ)
ここでいったん休憩します
再開します
マサオ(やはり、みんな風間君の服についている戦車が見えていないのか)
マサオ(どうする……どうする?)
シアーハートアタック(以下SHA)「コッチヲミロォ」
ひろし(いいぞ。まずは一人)
マサオ「風間、服を脱ぐんだ。はやく――」
ひろし「無駄だ。間に合わん」
SHA「!」ギュイーン
ひろし「何だ? SHAが突然軌道を変えた」
マサオ「あ、あれは!?」
熱繰椎造「おいっちに、おいっちに」
ネネ「前に教育実習生として幼稚園に来た熱繰先生だわ」
トオル「ウサギを怖がっていた熱繰先生だ」
SHA「コッチヲミロォ」
マサオ「まずい、熱繰せんせェー、逃げてェー」
熱繰「え? いったいなn――」
ドグォォォン
熱繰「」
ひろし(ちっ、邪魔が入ったか)
トオル「うわぁぁぁ、熱繰先生がぁぁ」
ボー「さっきの、ビデオの、ように、消滅した」
しんのすけ「熱繰先生ぇー」
マサオ(違う、あれは爆弾だ。あの戦車は爆弾なんだ)
マサオ(どういう原理かは判らないが、とにかく自動で相手を追尾する爆弾なんだ)
マサオ(しかも、あれが見えているのは今のところ僕だけ……)
ネネ「あ、みんなあそこを見てっ。あいつがいるわ!」
ひろし「!」
ひろし「……見つかったか」
マサオ(僕にしか見えないのならば、僕……いや『俺』が)
マサオ(俺がみんなを引っ張っていくしかないじゃあないか)
マサオ「みんな逃げるぞ」
ひろし「逃がすか」
ひろし「追え! SHA」
SHA「コッチヲミロォ」
マサオ「ハァ、ハァ」チラ
SHA「コッチヲミロォ」
マサオ「くそ、振り切れない」
マサオ(待てよ、そもそもあの爆弾戦車は何を目がけて動いているんだ?)
マサオ(あと少しで風間君を殺れたというのに、あいつは突然熱繰先生の方に軌道を変えた)
マサオ(なぜだ? それに今こうして町中を走り回っているのにあの爆弾戦車は俺たちだけを追尾してくる)
マサオ(何か理由があるはずだ)
マサオ(熱繰先生、熱くるしい、熱い、……っ!)
マサオ(そうか、判ったぞ)
マサオ(あの爆弾戦車は『熱』を探知しているんだ)
マサオ(突然熱繰先生の方へ行ったのは熱繰先生の方が体温が高かったから、つまり『暑苦しかった』から)
マサオ(最初に風間君を攻撃しようとしたのは風間君が興奮していて体温が『高く』なっていたから)
マサオ(他の人たちには見向きもせずに俺たちばかりを追っているのは俺たちが走っていて体温が『高い』状態だから)
マサオ「そうと判れば、みんな、こっちだ」
トオル「マサオ君、どこに行くんだ?」
マサオ「死にたくなけりゃあ、俺の言うことを聞きなっ」
――
――――
ひろし「やつら、たしかこっちの方へ来たと思ったが」
ひろし「はっ!」
一同「……」
SHA「……」
ひろし「あのガキども、川の中に入っている!?」
――川
マサオ「こうしてよォ、水の中に入って体温を『下げて』しまえば、この爆弾戦車は俺たちのことを見失うよなァ?」
トオル「マサオ君、あいつ橋の上に来たよ」
ボー「こっちの、準備は、おーけー」
SHA「……」
ひろし「くっ、クソガキどもめ……」
ひろし(まさか弱点のないと思っていたSHAがまたしても攻略されるとは……)
ひろし(ふふ、しかし所詮は子供浅知恵よ……)
ひろし(ポケットの中に入っている爪切りを『爆弾』に変えた)
ひろし(キラークイーン、第一の爆弾……)
ひろし(これをやつらに向けて投げつければやつらは木っ端みじんに消し飛ぶ)
ひろし(躱して陸地へ逃げればSHAが再び起動する……ふふふ)
ひろし(どっちに転んでもこの吉良吉影の勝利というわけだな)
ひろし「……勝った」
マサオ「『勝った』と思っているのか?」
マサオ「貴様はチェスや将棋でいう『詰み(チェックメイト)』にはまっているんだぜ?」
ひろし「なんだと?」
マサオ「ボーちゃん、あれを」
ボー「ぼああ」カチャリ
ひろし「なんだ? あのガキども、ライターを出したぞ!?」
ひろし「しかも火を付けて……馬鹿め」
SHA「!」
ひろし「ライターの『熱』に反応してSHAが動き出したぞ」
マサオ「まだ気づかねえようだなァ」
マサオ「この場に一人いねえやつがいるだろう?」
ひろし「なに?」
ボー「……」
トオル「……」
ネネ「……」
マサオ「……」
ひろし「はっ、『やつ』は? 『やつ』はどこだ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
しんのすけ「……」
ひろし「しんのすけ、こいつ、いつの間にわたしの後ろに――」
しんのすけ「ケツだけアタァッッック」
しんのすけ「ぶりぶりぶりぶりぶりぶり」
ひろし「そうか! 一人だけ対岸に渡って橋の上まで登ってきたのかっ」
ドォン
ひろし「ぐはっ」
トオル「落ちたぞ!」
マサオ「今だ! あいつ目がけてボーちゃんライターを投げろッ!」
ボー「ぼああ」ヒョイ
マサオ「爆弾戦車は再び軌道を変えるぜ」
SHA「!」ギュイィィーン
ひろし「待てェ、SHA、止まれっ!」
ひろし「くぅっ、SHA、解j――」
マサオ「もう遅い……みんな伏せろ!」
ドグォォォォォン
ひろし「」
トオル「やったか?」
ネネ「いないわ、あいつがいない」
ボー「僕たち、勝った」
トオル「やったー、あいつを倒したんだ」
ネネ「やったやったー」
マサオ(......)
マサオ(勝った? 違ぇだろ?)
マサオ(たしかにあいつは倒した。でもよ......なぁ? しんちゃん)
しんのすけ「とーちゃん......」
――その夜
みさえ「パパ帰りが遅いわねぇ」
みさえ「残業かしら? 電話ぐらいしてくれてもいいのに」
しんのすけ「……」
みさえ「もう遅いからしんちゃん先にご飯食べちゃいなさい」
みさえ「ママはパパが帰ってから食べるから」
しんのすけ「……」
しんのすけ「うっ……うっ……」
しんのすけ「オラも、とーちゃんが帰ってから一緒に食べるゾ」
その後、SPW財団の力を借りて県外まで追跡の手を広げた承太郎一行は当時、杜王町に出張していた会社員、野原ひろしが行方不明である旨の情報をキャッチした。
その家族に連絡を取ったところ吉良が鳩ケ谷夫妻を殺害しているビデオを入手。
事の顛末を知ることとなった。
しんのすけ「とーちゃん、オラ、やったよ?」
しんのすけ「仇を、とったよ?」
しんのすけ「とーちゃん、もっかい、会いたいゾ」
しんのすけ「……とーちゃん」
おわり
くぅ~疲れました
後半かなり駆け足な展開で雑になってしまいましたがご容赦ください
HTML化依頼出してきます
みっちーの名前は本名が判らなかったので原作っぽい名前を勝手につけました
当初はマサオがオリジナルのスタンド能力に目覚める展開を考えていたのですが
それだとご都合主義が強くなる懸念があったので『見えるだけ』にとどめておきました
原作ネタバレの箇所も多々ありましたが、読んでくれた皆さまありがとうございました
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