男「あのさ」
友「ん?」
男「“一本でもニンジン”って歌あるじゃん?」
友「あー、あったあった! どんどん数字が増えてく歌な。懐かしいな~」
男「俺さ……あれの限界にチャレンジしたいんだよな」
友「は……? 限界ってどういうこと?」
男「ようするに、あの歌の数字をどこまで大きくできるかやってみたいんだ」
友「まーた下らないことを……」
友「でもちょっと面白そうだな……やってみるか!」
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男「まずは、一本でもニンジン♪」
友「うん、基本だな」
男「二足でもサンダル♪」
友「あーそうそう、こんな歌だったわ。すげえ懐かしいんだけど」
男「三艘でもヨット♪」
友「四をヨットって、今思うとちょっと苦しいよなぁ」
男「たしかに」
男「四粒でもごましお♪」
友「ごま塩ふりかけたご飯食べたくなってきた」
男「ちょっとした飯テロソングだな、これ」
男「五台でもロケット♪」
友「ロケット五台って地味にすごいよな。値段いくらぐらいになるんだろ」
男「一台100万円として……」
友「そんな安いわけねえだろ! 億はいくだろ!」
男「六羽でも七面鳥♪」
友「七面鳥食いたくなってきた」
男「クリスマスまで我慢しよう」
男「七匹でもハーチ♪」
男「八頭でもクジラ♪」
男「九杯でもジュース♪」
男「――で、本来の歌ではここで『十個でもイチゴ♪』になるわけだが、ここから限界に挑戦したい!」
友「つまり次は……“十一”を目指すわけだな?」
男「その通りだ」
男「十一か……。十一のつく物とか動物とかってなんかあるか?」
友「じゅういち、じゅういち、じゅういち……うーん思いつかねえ」
男「いきなり難易度高いな……」
友「英語もありなら、セブンイレブンは“イレブン”が入ってるけど」
男「よし、それにしよう!」
男「十軒でもセブンイレブン♪」
友「だいぶ苦しいけど……まあしょうがないな」
男「十二……これは簡単だな。すぐ思いついた」
男「十一本でも十二指腸♪」
友「なんかグロイな。これ子供の歌だし、十二支とかのがよかったんじゃ?」
男「なあに、子供の歌にだってグロ枠は必要だろ」
友(必要かなあ……)
男「次は十三……十三ってなんかあるか?」
友「ゴルゴ13とか?」
男「それだ!」
男「十二人殺してもゴルゴ13♪」
友「もう子供には歌わせられないよな、これ」
男「十四はどうしよう?」
友「ジュウシマツでいいんじゃないか?」
男「即答かよ! やるじゃん!」
男「十三羽でもジュウシマツ♪」
友「悪くはないけど、七面鳥とかぶっちゃうのが痛いな」
男「この際、被りは気にしないことにしよう」
男「十五……これは簡単だな!」
男「14日でも十五夜♪」
友「いやいやいや! 15日じゃなきゃ十五夜じゃないだろ?」
男「いや、十五夜ってのは旧暦の8月15日の夜のことで、新暦とズレがあるから」
男「14日が十五夜になる可能性もあるぞ」
友「へえ~、そうなんだ!」
男「ま、よく覚えておきたまえよ」
友(く、悔しい……!)
男「十六……これも簡単だな」
男「十五杯でも十六茶♪」
友「思いっきり特定の商品名だけどな」
友「まあでも……セブンイレブンとゴルゴ13も似たようなもんだし、いいか!」
男「いいさ!」
男「十七ってなんかあるか?」
友「十七ねえ……」
友「あっ、十七条の憲法はどうだ?」
男「いいね! それでいこう!」
男「十六人で定めても十七条の憲法♪」
男「たしか十七条の憲法を定めたのは、聖徳太子だったよな」
友「今は研究が進んで、実在しなかったみたいな話も出てるらしいけどな」
男「マジで!? ショックなんだけど!」
友「なんでそこまでショック受ける必要があるんだよ」
友「お前、聖徳太子と接点ある人生送ってないだろ。高校でも世界史選んでたし」
男「たしかにそうだけどさぁ……でも子供の頃に偉人だと教わった人が」
男「実在しないとか、実はワルだった、とかって話を聞くと……やっぱりショックだよ」
友「まあ、気持ちは分かる」
友「次は十八だな」
男「十七人いても18号♪」
友「18号ってなんだよ。台風?」
男「ちがうちがう、ドラゴンボールの人造人間18号」
友「なんで18号が十七人もいるんだよ? 一人しかいないだろ」
男「夫であるクリリンがハーレムを作りたくて、クローン技術で培養した……って設定にしよう」
友「お前、クリリンに気円斬喰らわされても知らないからな」
男「次は十九か……なにかないかな」
友「じゅうきゅう、じゅうきゅう、じゅうきゅう……」
男「人造人間19号は?」
友「いや、さすがにダメだろ、それは」
男「うーん……なんかないかなぁ」
友「ジュークはどうだ? 日産の車」
男「おお、いいね!」
男「十八台でもジューク♪」
男「ジューク十八台って、いくらぐらいするんだろうな」
友「ロケット五台に比べりゃ安いもんだろ」
友「次は二十だな」
男「二十……にじゅう……二重!」
男「十九個でも二重丸♪ ――ってのはどう?」
友「お、いいね! なんか久々に無理がないというか、しっくりきた感じがする」
男「だろ? 俺が本気出せばこんなもんさ」
男「さて、二十一か……」
男「にじゅういち、にじゅういち、にじゅういち……」
友「ドラえもんの作者の漫画に、『21エモン』ってのがあったよな」
男「あったあった! ホテルを経営してるやつな! それでいこう!」
男「20世紀に連載してても21エモン♪」
男「次は二十二だ。“にじゅうに”がつく名詞を探そう」
友「にじゅうに、にじゅうに、にじゅうに……う~ん……」
男「なんも思いつかないな」
友「ああ、マジで何も思いつかない」
友「いっそスマホで調べちゃうか? そうすりゃ一発だぜ」
男「――いや、それはダメ! あくまで自力でやる!」
友「よくいった!」
友「よーし、自力で頑張ってみるか!」
男「おう!」
……
……
……
……
男「あ~……なんも思い浮かばない!」
友「どうやら俺らじゃ“二十一”が限界だったようだな……」
男「ずっと考えてたら、もう22時だ……」
友「お腹すいたし、メシでも食おうぜ」
男「そうだな。冷蔵庫になにかないか探してくる」
男「ニンジンしかなかった……」
友「お、いいじゃん! 今からメシ買いに行くのめんどくさいし、それ蒸して食べよう」
男「一本しかなかった……」
友「……」
友「ま、しょうがない! こういう時は歌を歌って元気出そうぜ!」
男「そうだな!」
友「せーのっ!」
二人「一本でーもニンジン♪」
― 終 ―
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