オリジナル、地の文形式、即興リレーです
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「で、どこに向かえばいいの?」
車のエンジンをかけながら、念の為に尋ねておく。
「病院に決まってるじゃない。病人なのよ」
「そうだったね」
「私を疑うの?」
「滅相もない」
病院に向かってしばらく車を走らせる。
交差点をひとつ、ふたつ。信号をみっつ、よっつ。
この角を曲がって――
「車を停めて」
「どうしたの?」
念の為に尋ねておく。
「治ったの。ここで降ろして」
「あー、はいはい」
一応彼女に手を振ってみたが、見向きすらされなかった。
「このまま車を西に走らせなさい」
西?
「西の先に大きな門があるのよ」
「はいはい」
黒猫に言われるがまま、わたしはアクセルを踏む。
だんだんと街が遠ざかっていく。
「もっとよ。もっと速く」
「なんだか街から逃げているみたいだ」
「逃げるのは嫌い?」
「そういえば君も悪魔たちの戦禍から逃れてここに来たんだっけな」
「……無駄口を叩くならもっとスピードを出しなさい!」
どくん、とわたしの身体が揺れる。足が勝手にアクセルを踏み抜く、
悪魔め。また力を使ったな。
よっぽどわたしの言葉が癪に障ったらしい。しかしこの速度は――
「ふん、こわいの?」
「当たり前だよ。やめてくれ」
「街から遠ざかる速度が上がるほど、あなたは死に近づくのよ」
「何が言いたい?」
「さあね。ほら、もうすぐ門よ」
あれが、門……?
「何の入り口なんだ?」
念のために訪ねてみる。
「あるいは出口かもね」
黒猫のかたちをした悪魔が、にやりと笑った。
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