僕っ娘「青春を探した、僕らの何気ない夏の日」 (39)


僕っ娘「ありえないよね」

ハーフ「なにが」

僕っ娘「いやあ、最近おばあちゃん家に遊びに行ったんだけどね」

ハーフ「ああ、そういやお盆だったわね」

僕っ娘「だから、親戚もたくさん集まったわけなんだよ。で、僕の親戚、全員年上なんだ。そうしたら、例外なく始まったよね、毎年恒例の年下いびり」

ハーフ「いや、あんたの家の夏の恒例行事なんか知らないけど」



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僕っ娘「いやあ、僕っ娘ちゃん!彼氏はできたかい?え?まだ?ガッハッハッ!それはいかんなあ!僕っ娘ちゃんの年頃の女の子に、彼氏の一人もいないようじゃあ!青春せんとな!ワシらんときはな!………」

僕っ娘「ね?」

ハーフ「ね、ていわれても、いや大体いいたいことはわかるけど」

僕っ娘「僕はそのとき、鈍器を握りしめていたよ」

ハーフ「ビールの空き瓶ね」

僕っ娘「彼氏の有無で決まる青春なんて、スローイング!&バイバイ!だ!」バイバイ

ハーフ「狭いから暴れないでよ」


僕っ娘「ハーフは青春についてどう思うんだい?もちろん僕の意見に賛成だよね」

ハーフ「私は「やっぱり!ハーフならそう言うと思っていたんだ!」

ハーフ「しゃべらせろ」

僕っ娘「そもそも青春ってどういう定義なのか、曖昧じゃないかい?」

ハーフ「あー、あれよあれ、なんかこうブワーッとした、あれね」

僕っ娘「わからないならわからないって素直に認めなよ」


運動娘「オイース、おーだらだらやってんなー」ガチャ

僕っ娘「やっ、部活あがりかい?」

運動娘「そうそう、いやー疲れた疲れた」

ハーフ「あんたらは当たり前のようにウチに上がり込むわね。許可をとりなさい許可を」

僕っ娘「僕達、顔パスだからね」

ハーフ「顔パンしたい気分ね」


運動娘「いやーしかし、せっかくの夏休みだってのにハーフの部屋でだらだらだら、貴重な青春がもったいねーぞ」ピコピコ

僕っ娘「でたな青春お化け!!」

運動娘「あー?」ピコピコ

僕っ娘「じゃあ青春を具体的に説明してみるがいい!さあさあ!」

運動娘「青春なー、私の場合はこうやってハーフの家でゲームすることだなー」ピコピコ

僕っ娘「情けないっ………それが君の答えなんだね………!」

ハーフ「なんでちょっとドラマチックなのよ」


僕っ娘「ここに一冊の本があるよ」

ハーフ「うん」

僕っ娘「本屋に並べてあった本だよ。ここの帯を見てほしい」

ハーフ「ええと?『この夏一番の青春!』ふうん、青春の教科書みたいなものなのかしらね」

僕っ娘「だろう、だからこそ僕はこの本を読んで青春を勉強しようと思う」

ハーフ「結構ね。存分に勉強しなさいな」

僕っ娘「そういうわけだから、静かにしていてくれ給え」ゴロン

ハーフ「家帰って読めよ」


運動娘「あっ、やられた」ドロロン

ハーフ「じゃあ交代ね………ちょ、なに続けようとしてんのよ、約束がちがう……おい!」

運動娘「わはは、ゆるせ~ゆるせ~」ピコピコ

僕っ娘「………」ムクッ

ハーフ「あら、読み終わったの?相変わらず速読ね」

僕っ娘「これが、こんなのが青春なら、僕はいらない………」

ハーフ「何があったのよ」


僕っ娘「砂糖のように甘い恋愛ストーリー………なめくじみたいな粘着質な交際………挙句の果てには獣のように身体を貪りあう始末…………これが青春なら、僕はいらない………」

ハーフ「あー、まあこれも、青春の形のひとつだから」

僕っ娘「あげる」

ハーフ「あ、うん、どうも…」

僕っ娘「………」ゴロン

ハーフ(ふて寝した)

運動娘「ああー!またやられた!」



ハーフ「もう日が暮れるわよ、そろそろ帰らないと」

運動娘「………」ピコピコ

僕っ娘「………」

ハーフ「ほら、外見て外、綺麗な夕景よ。涎垂れそうなくらい綺麗。だからもう帰りましょう?」

運動娘「………」ピコピコ

ハーフ「ほら、ゲームをやめて。外の世界に飛び出すの。そして帰りなさい」


運動娘「………」ピッ

ハーフ「そうそう、電源を落としてね」

運動娘「………」ノビー

ハーフ「うんうん、長時間ゲームしてたものね、身体もこわばるわ」

運動娘「………」ゴロン

ハーフ「………」


カナカナカナ………

ハーフ「夕日が綺麗ね」

僕っ娘「………」

運動娘「………」

ハーフ「………」


カナカナカナ………

ハーフ「………」

僕っ娘「………」

運動娘「………」ポリポリ

ハーフ「帰れよ」


ゴハンヨー

運動娘「うっひょー!!ごはんだー!!!」バタバタ

僕っ娘「おばさぁーん!今日のご飯なにぃー!?」バタバタ

ハーフ「おぉい!!帰れよ!!!三日連続で同じ釜の飯たかってんじゃねえーよ!!!」

オォーイ!…………



運動娘「今日、外遊び行こうぜ」

僕っ娘「あついから、やだよ」

運動娘「いいじゃねえかよー、たまにはパァーッとプールではしゃいだりしてさー」

僕っ娘「僕はインドア派なんだ。そして、そのことに誇りをもっている。だから出ない」

運動娘「ケチな奴め、だったら、あれだ。青春しに行こうぜ!」


僕っ娘「せ、いしゅ、ん……?」ピク

運動娘「おう、青春、青春」

僕っ娘「馬鹿め!青春なんてものはないと、昨日決断を下したのだ!」

運動娘「ええー?ほんとうかよー、案外そのへんに転がってるかもしれねーぞ?僕っ娘がいつも正しいとは限らないからなぁ~」

僕っ娘「いいだろう!だったら外へ探しに行こうじゃないか!そして青春なんて概念が存在しない現実を、その小麦色した顔に叩きつけてやる!いくぞ!!」バタバタ


ハーフ「ただいまー……うおあ!?急に飛び出すな!びっくりしたー……」

無口「あやうく死亡事故」

運動娘「よう、さっそくで悪いけど外遊び行こうぜ!」

ハーフ「別にいいけど……なによ急に」

運動娘「青春探しに行くんだよ、そんでアイス買って公園とかいこうぜ」

ハーフ「はあ?あんたの青春はこの部屋にあるんじゃなかったの?」

運動娘「細かいことはきにするなよ!青春なんてその日の気分だ!」


シャワシャワシャワシャワシャワ………

僕っ娘「あっつ、帰りたい」

ハーフ「まだ出たばっかじゃない」

無口「今日なにするの」

ハーフ「さあ、どうせ行き当たりばったりでしょ」

運動娘「いつも通りだな!はっはっはっ!」


無口「………」キョロキョロ

ハーフ「どうしたのよ、挙動不審ね」

無口「僕っ娘がいない」

ハーフ「はあ?……ほんとね」

運動娘「あ。あいつ交番に入っていったぞ」

ハーフ「なにやってんのよ」


僕っ娘「はぁ~……すずしい………」

おまわり「ははは、外は暑いからね」

ハーフ「すいません!ご迷惑おかけして………」

おまわり「いやいや、いいんだよ。暑いからね、熱中症にならないように涼んでいきなさい」

僕っ娘「涼んでいくといいよ」

ハーフ「ほんとあんた神経図太いわよね」


ハーフ「邪魔じゃないですか?」

おまわり「平気だよ。今から昼休憩だからね」

運動娘「お!にいちゃんそば喰うのか?私にもくれ!」

おまわり「こらこら」

無口「わっぱみせてください」

おまわり「こらこら」


僕っ娘「ははあ、みんなくつろいじゃって。だめだね。公共の場を私物化しちゃあ」

ハーフ「歯を食いしばるといいわ」パキポキ

僕っ娘「ぼ、ぼぼ僕は、ちゃんと理由があって交番を訪れたのさ!」

ハーフ「ふうん、なによ理由って」

僕っ娘「探し物だよ」

おまわり「うん?なにを落としたんだい?」

僕っ娘「青春って落ちてませんでしたか?」

ハーフ「前歯は折るわ」


僕っ娘「勘弁してください!!前歯だけは、前歯だけは勘弁してください!!商売道具なんです!!」ドゲザ

ハーフ「ドブネズミか」

おまわり「あっはっはっはっはっ!!!」

僕っ娘「…」キョトン

ハーフ「……そんなにこれの醜態が面白かったですか?」

僕っ娘「おい!」


おまわり「いやいや、はっはっはっ!!そうかそうか!!青春を探しているのか!!」

運動娘「気でも狂ったのか?にいちゃん」ズルズル

無口「あ」カチャカチャガチャン

おまわり「いいや、正気だよ。はは、うん、青春の落とし物はなかったよ」

僕っ娘「ああぁー!!!残念だったなぁぁあー!!!!せっかく交番まで足を運んだのになぁぁあー!!!!探し物目的で交番の敷居を跨いだのになぁぁあー!!!!!」

ハーフ「まだ三文芝居をつづける気?」


ハーフ「お邪魔しました」

おまわり「うん、またきてね」

運動娘「また来るぞ!」

無口「はずして下さい」

僕っ娘「ええー…もうずっとここにいようよ……」


おまわり「僕っ娘ちゃん」

僕っ娘「はい?」

おまわり「青春、きっと見つかるから大丈夫だよ」

僕っ娘「分かってないですねぇ、絶対に見つかりませんよ」

おまわり「あはは」


僕っ娘「あっついわ、おい」

ハーフ「私にキレないで神にキレなさいよ」

カップル「」イチャイチャ

運動娘「ひゅー、お熱いねぇ」

僕っ娘「」ニヤァ

ハーフ「何ニヤついてるのよ」


僕っ娘「あのカップル、どう思う?」

ハーフ「どうって……そのへんにいる量産型のカップルでしょう」

僕っ娘「そうだね……取るに足らないただのカップルAさ………だが、僕には、彼らの今の心境が手に取るようにわかる!」

運動娘「いい気分なんじゃないのか?」

無口「または興奮」


僕っ娘「甘いね。この天気を考えてみるといい」

ハーフ「快晴じゃない」

僕っ娘「そうさ、とんでもなく快晴さ……ゆえに!今日はとんでもない真夏日!」

僕っ娘「見ろ!あのカップルの汗の量を!互いが、滝のような汗を流している!」

ハーフ「そうね」

僕っ娘「とう」ベチャ

ハーフ「おい!!汗まみれの手で触るな!」


僕っ娘「ね?気分は良くないだろう?ちなみに僕はちょっと傷ついた」

ハーフ「あ……ごめん……」

僕っ娘「そう!汗まみれの手で触られるのは誰だって不愉快!あのカップルは互いにこう思っているはずさ!

『チッ、汗まみれ身体を密着させてくんなよ……クソブスが……』

『最悪……臭いもきついし、気持ち悪いし……はやくシャワー浴びたいわ……』ってねぇ!」

運動娘「なるほど!じゃあ、あいつらは表面上は仲良くやっていて、腹の中は互いを罵っているのか!」

僕っ娘「然り!」

無口「真理をみた」

ハーフ「なにが真理よ」


僕っ娘「だってそうじゃないか!なんかあのカップル見ていて痛々しいし……………!!!」ダッ

ハーフ「は?なに急に走り出してるのよ」

運動娘「……!!」ダッ

無口「」ダッ

ハーフ「はぁ?なによみんなして……意味わからないわ」

カップル男「ちょっといいか」

ハーフ「駄目です、さようなら」ダッ

カップル男「まてこらぁ!!!」


ミーンミンミンミンミン……

僕っ娘「スイカおいしいなあ」シャクシャク

無口「ハーフは逃げ切れただろうか。種飛ばし」プッ

僕っ娘「いや、もうあれは駄目さ。残念だけど、ご臨終だね」プッ

ハーフ「ぶち殺すぞ」ハァハァ

僕っ娘「ハーフが黄泉から帰ってきた!蘇った!」

無口「HAHAHA」


ハーフ「はぁっ……はぁっ……」

僕っ娘「おぉ?珍しくハーフが弱っているぞ!今がチャンスだ!種ビーム」プッ

ハーフ「」ビキィィ

運動娘「ばあちゃんがもう一個すいか食べていいって!お!おかえりハーフ!」


ハーフ「ほんと薄情よね、あんたたち」シャクシャク

無口「誰しも我が身が大事」シャクシャク

運動娘「でも私はちゃんと心配してたぜ?いいやつだろ~、褒めろよ」シャクシャク

ハーフ「埋めるわよ」

僕っ娘「許してはもらえないだろうか」

ハーフ「駄目よ。庭に飛ばした種の数、全部調べるまでは許さないわ」


リンリンリンリン………

僕っ娘「はぁ~、毎年思うんだけどさ、夏の夜の匂いって、いつも同じなんだよね」

ハーフ「確かにそうね」




リンリンリンリン………

ハーフ「で、結局青春は見つかったの?」

僕っ娘「いいや、全然見つからなかったよ」



僕っ娘「だから明日もみんなで探しに行かないとね!」

ハーフ「………くさいセリフを吐くのね」

僕っ娘「なんだって!?」

運動娘「おーい風呂沸いたってー。先はいるかー?」

ハーフ「僕っ娘を先に入れてあげて。今、とても臭いから」

僕っ娘「なんでだよ!なかなか骨身に染みるいい言葉だったろう!」

エ、ナンデクサインダ?
ソレガサッキネ…
ベツニ、クサクナイッテバ!


僕っ娘「青春を探した、僕らの何気ない夏の日」 終わり


生意気僕っ娘は可愛い、ゆえにオチがなくても許される

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